北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

F-35戦闘機価格高騰と納期遅延、衆院予算委員会で田中防衛大臣は機種変更可能性に言及

2012-02-29 23:31:09 | 防衛・安全保障

◆田中大臣の個人的放言?防衛省方針?

 田中防衛大臣は本日行われた衆議院予算委員会において次期戦闘機に選定されたF-35について、価格高騰や納期延長が行われる場合機種変更を考えていると述べました。

Img_8891f 価格高騰と納期延期を理由として挙げていますが、正直な印象としては、覚悟もなく開発難航中のF-35を選定したのか、ということ。なぜならば、元々F-35は取得費用が2800万ドル程度の安価なステルス機として2010年の米空軍部隊運用開始を念頭に開発が進められていました。現在でも評価試験が進められている段階で、少なくとも昨年に決定した段階で計画はかなり遅れている、ということは自明でしたし、米空軍の機体単価は既に1億2200万ドル、必要装備品込機体単価は1億8400万ドル、今更価格高騰となっているのではありません。納期にしても米空軍で初度作戦能力獲得は2017年の予定、昨年一月に当時のゲーツ国防長官が発言しています。航空自衛隊への納入が予定の2016年は無理、分かり切ったことと言わざるを得ません。

Img_9488f 携帯電話じゃあるまいし機種変更は簡単ではありません。パネッタ国防長官は1月末に国防費削減を提唱しF-35の取得も延期する方針を示していますが、こちらも歳出に占める国防費の三割以上という異常な数値を見れば予測できたことです。このF-35は国際共同開発計画として開発が進められています。国際共同開発として関与の段階がわけられており、アメリカを中心に高度な開発参加国にイギリス、主要開発参加国にオランダとイタリア、開発関与国にカナダ、トルコ、オーストラリア、ノルウェー、デンマークが関わっているのですが、全ての国が開発費高騰に悩んでいるのです、日本はこれを知る立場で採用したのですから、ここで価格高騰と納期延期を理由に挙げては、何を今さら言っているのか、と、別の理由があることを勘ぐられてしまうでしょう。

Img_7839f F-35は元来、垂直離着陸が可能なAV-8攻撃機の後継機として超音速飛行能力とステルス設計を含めた次世代戦闘機として開発がすすめられ、この派生型として垂直離着陸に必要な諸装備を省き戦闘行動半径を拡大させる型式を開発し、空軍のF-16戦闘機や海軍の空母艦載機F/A-18Cなどの後継機に充て次世代の戦闘任務を全て一機種に統合する統合打撃戦闘機として開発が始まりました。一般に通常の戦闘機を開発し、派生型に垂直離着陸型を開発しているので遅延と難航していると誤解されていますが、逆で問題はより深層にあるということ。

Img_8712_1f 全ての任務に対応するべくすべての機材を搭載した結果機体は重量が増大し複雑化し高価格化、そして元来は米空軍最強とされるF-22戦闘機の数的不足を補い、世界各国の空軍の主力となりうる取得価格を実現するために小型の機体として開発していますので容量不足が発生します。当然これはエンジン推力不足に繋がりますし、多機能を求められすぎたレーダーや火器管制装置は限界を超えてこちらも開発難航へ、開発参加国が多く既に天文学的な費用が投じられていることから開発中止さえもできない状態、それがF-35というもの。

Img_9902_1f ここで大きな疑問は、F-35に関する田中防衛大臣の発言は、機種変更という方針が防衛省の意志なのか、航空自衛隊を含めた石なのか、内局の意志なのか、それとも田中防衛大臣の個人的な意見なのか、というところです。通常であれば防衛大臣の発言は防衛大臣の発言であり個人的な大臣発言、というものはあり得ないのですけれども、残念なことに防衛関係において知識不足と誤解に偏見と見識違いと放言や失言に無責任発言と加えて責任感の欠如が見受けられる現状、こちらも一種の放言という可能性もあり、報道の続報を待ちたいところ。

Img_8807_1f 加えて大きな問題は、機種変更は正式な契約を結ぶ今年八月までに機体の納入時期と機体価格が示されない場合、という発言が行われたことです。後継を待つF-4戦闘機はEJ型が今年初飛行から41年、米海軍でF-4が空母運用を開始してから51年、半世紀以上前の設計の航空機で機体は既に深刻な老朽化を迎えています。元々米空軍のステルス戦闘機F-22の導入を期して交渉に時間をかけたことで後継機選定は数年遅れ、F-35に決定する間にさらに数年を要しています。ここで更に重ねて白紙から機種選定をしよう、とは。選定が数か月で完了したとしても、ライセンス生産の方向が示されたF-35と異なりライセンス生産を行うか有償軍事供与かを最初から国内の防衛産業と決めねばなりませんし、F-4の後継機だけを取得するのか、F-15Jの後継機に充てるかもまた変わってきます。

Img_8956f 次期戦闘機選定はF-35,そして欧州共同開発のEF-2000,米海軍空母艦載機F/A-18Eですが、消去法でF/A-18Eしか残らないでしょう。欧州共同開発ユーロファイターEF-2000は現在最新型であるトランシェ3の開発が欧州経済危機により停滞しており、採用しようとすれば日本が開発費を捻出しなければならなくなります。また、EF-2000の主開発企業であるBAE社は技術提携を持ちかけており、2010年代に引退を始めるトーネード攻撃機の後継、将来航空攻撃システムFOASの開発を行う方針が、少なくとも2005年頃までは進められていたのですが、イギリス国防費削減により完全に頓挫しており、技術提携の意味が霧散しました。もっとも、トランシェ3に代えるトランシェJを日本が開発し、欧州向けの機体生産も一部三菱重工で行い、部品供給を日本国内で行うことで欧州向け部品プールを日本から出荷する、最低でも偵察航空隊所要や教育航空隊所要含め140機程度を導入する、というならば、また話は別なのですが。

Img_0402f 即ち日英第六世代戦闘機開発を行う可能性は今世紀前半には無いといっていいでしょう。こうなりますと、欧州機はまず部品プールなどNATO共通運用基盤の恩恵に与れない我が国としては、少々リスクのある機体というだけではないでしょうか。しかし、大臣の意志なのか防衛省の意志なのか航空自衛隊は聞いているのか、どうなのでしょうね。当方としては、F-35の開発遅延は織り込み済みで2010年代末に引き渡し、部隊運用開始が2020年代と見込んでいたので、それまでF-4の延命か、繋ぎの航空機導入か、と考えていましたが、F-35は開発が難航している機体とかなり前、少なくともここ四年から五年は言われていましたので、そこまで言われている情報を勘案せず導入を決定したという点、残念でなりません。

北大路機関:はるな

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アフリカ中近東船団護衛 高まる脅威と任務増大へ“船団護衛P-3C航空隊”再編成の必要性

2012-02-28 23:23:06 | 防衛・安全保障

◆ホルムズ海峡危機ペルシャ湾船団護衛任務の想定

アフリカ及び中東地域での海上護衛任務増大に対し、海上自衛隊の哨戒機部隊に冷戦後廃止された船団護衛任務用の航空隊を再度編成してはどうか、と考えます。
Img_9535_1p 現在海上自衛隊は、100機を導入したP-3C哨戒機を東西冷戦構造の終焉に伴い、実運用機を80機程度とし、20機を待機状態として運用しています。冷戦時代には北方を睨む八戸航空基地、首都圏と太平洋正面の対潜哨戒を担う厚木航空基地、九州周辺海域と太平洋を警戒する鹿屋航空基地、そして南西諸島の警戒監視を一手に任された那覇航空基地に二個航空隊を配置、この四基地に八個航空隊を展開させると同時に、有事の際に我が国へ向かう船団を直接潜水艦脅威より護るべく船団護衛任務に充てる二個航空隊を配置していました。
Img_6654p これが上記の通り冷戦構造終結後、船団護衛にあたる航空隊が削減されたわけです。これは決して船団護衛任務が軽視された、ということではなく、それまでに運用していたP-2J哨戒機やS-2哨戒機と比較してP-3C哨戒機の対潜哨戒能力は非常に大きく、各航空基地へ展開する20機の哨戒機を以てその周辺の潜水艦の行動をほぼ制圧できる見込みが立ったため、船団護衛として上空に張り付ける必要がなくなった、という事情はあります。上空から潜水艦を探知するソノブイを散布し、音響情報を上空から収集、同時に機体の磁気探知装置による潜水艦の行動による僅かな磁気の異常や合成開口レーダーによる潜望鏡深度を進む潜水艦の兆候など精密と複合的に分析することで、よく表現された内容では一機で四国と同程度の海域を哨戒可能、とまで言われていたほどですから。
Img_9566_1p しかし、今日、哨戒機の行動範囲は日本の四か所の航空基地を大きく超えています。ジブチ共和国に現在海上自衛隊は航空施設を完成させ、ソマリア沖海賊対処任務へ3機のP-3C哨戒機を派遣しています。欧州全域から派遣できる哨戒機を掻き集め海賊への対処へNATOが取り組んだものの総数は3~5機程度、ここに確実に3機のP-3C、世界の基準では最も高性能な航空機を常時配置した、ということは大きな意味がありました。ソマリア沖海賊対処任務に加えてジブチ航空拠点から遠く離れたホルムズ海峡での船団護衛任務、海上自衛隊のP-3C哨戒機部隊は転換期を迎えつつあります。いや、既にソマリア沖における紹介任務を実施している時点で一つには迎えた、と言えるのかもしれませんが。
Img_1361p 80機のP-3C哨戒機、これでも一応膨大な規模とはいうことができます。アメリカは現在運用しているのが165機、アルゼンチン4機、オーストラリア18機、ブラジル9機、カナダ20機、チリ3機、ドイツ8機、ギリシャ6機、イラン2機、韓国8機、ニュージーランド6機、ノルウェー4機、パキスタン10機、ポルトガル5機、スペイン7機、タイ3機。アメリカと比較した場合にのみ、80と165ですから一見海上自衛隊は少なくも見えるのですが、全世界を相手に165機なのですから海上自衛隊としては世界の半分程度は哨戒出来る、と言えるやもしれません。
Img_6052p このほかに世界には何種類か対潜哨戒が可能な哨戒機があります、アメリカ製S-2,ロシア製Il-38,ロシア製Tu-142,フランス製アトランティック、イギリス製ニムロット等。しかしS-2は空母艦載用の小型機でアルゼンチン4機、ブラジル3機、空母には載せていませんが台湾が24機、ウルグアイ1機。イリューシンのIl-38はP-3Cに対抗してソ連が導入した航空機でインド5機とロシア30機。爆撃機ベアを改造したTu-142はインド4機、ロシア33機。ダッソーアトランチックではフランス22機、イタリア18機、パキスタン2機。そして世界最初のジェット旅客機コメットを改造したイギリスのBAEニムロッドMRA4は9機。あとは中国が対潜哨戒飛行艇としてSH-5というのを4機保有しているくらい。
Img_1148p 欧州全体でP-3Cは30機、他の機体が49機ですので合計79機と海上自衛隊の80機をやや下回ります。ロシアは爆撃機改造の航続距離が大きなものがありますが63機、中国に至っては一応国産の新型を開発しているとも言われますが現状では4機と、物凄く少ない実情。なにぶん、P-3Cは2~3機の取得費用で4000t級大型水上戦闘艦と同程度の取得費用になり、物凄く高価ですので、日本のように第二次世界大戦中に潜水艦により海上交通路を徹底して破壊され、餓死寸前まで追いやられたという血の滲む経験が無ければなかなか100機、という数字は為し得なかった、と言えるでしょう。
Img_2284p 100機あったP-3Cについて、20機が削減されましたが6機が電子偵察機や特殊用途用の機体に改造され94機が配備、このうち80機を運用し、残る14機を休止状態としているのが現在の海上自衛隊です。この意味は、まず運用に必要な要員を別の任務に充てることで人員不足の中での充足率の完結をめざし、加えて休止する14機分の運用費用や定期整備にかかる費用を削減することが出来るほか、休止状態の機体を順次実任務の飛行時間が大きな機体と入れ替え続けることで飛行耐用時間を節減し長期間運用が可能となる、こういった利点があります。
Img_5987p しかし、この14機のなか、10機を以て一個航空隊を再度編成し、アフリカ沖での船団護衛任務に充ててはどうか、ということは艦が和えとして自然ではないでしょうか。現在はジブチへのP-3C哨戒機派遣は全国の部隊からP-3C哨戒機を集め、実施しています。現状の派遣規模であれば、対応できるのですが海賊対処任務に加えてホルムズ海峡での船団護衛任務の可能性が出ているため、特にホルムズ海峡はジブチ航空拠点からかなりの距離があり、実質厚木航空基地から沖縄南西諸島を警戒監視するようなものとなりますので、2~3機の増強では対応することが出来ません。ところが、ジブチ航空基地に新しく海上自衛隊航空隊を配置したならば、10機のP-3C哨戒機が配備されれば話はかなり変わってくるでしょう。
Img_4341p もちろん、ソマリア沖海賊対処任務であれば万一の事故に際しては護衛艦からの救難を受けることが出来ますが、ホルムズ海峡となれば話は変わってきますので、新たに救難ヘリコプターを増強しジブチ救難隊、というような部隊を置かなければならなくなるやもしれません。派遣する航空機が多くなれば必然的に補給物資の日本からの空輸にも問題は出てくる。ただ、船団護衛の任務について、その重要性がかなり大きい、ということもまた事実、こうしますと冷戦後、船団護衛任務に充てる航空隊を廃止しているのですが、既存の航空哨戒体制からは一歩進んだ船団護衛任務が、冷戦時代全く考えられなかったアフリカおよび中東において発生しているという現状、何らかの手を打たねばならないともいえるわけです。

北大路機関:はるな

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ホルムズ海峡危機ペルシャ湾海上護衛任務 難しい集団的自衛権行使と交戦規定

2012-02-27 23:45:46 | 防衛・安全保障

◆護衛艦・哨戒機より第一に早期警戒管制機派遣を

P-3C哨戒機100機体制を断念して70機体制としていれば、30機分の取得費用でAV-8Bが40機ほど揃ったのかな、と思っているところですが。

Img_6430p ペルシャ湾船団護衛の可能性が少しづつ現実味を帯びてきました。核開発疑惑への査察拒否への経済制裁へ、反発するイランが提示したホルン図解教封鎖。ホルムズ海峡をイランが武力封鎖した状況に際して、日本は福島第一原発事故以降の原発停止によるエネルギー不足をペルシャ湾湾岸諸国からの石油と液化天然ガスに依存していますので、タンカーの護衛は必要な命題です。

Img_6989p ここで提示されたのが、タンカーの護衛艦による護衛、そしてP-3C哨戒機派遣によるイラン海軍の行動監視任務を行うという構想。現在、ソマリア沖海賊対処任務として護衛隊司令を指揮官に2隻の護衛艦、そして航空部隊として3機の哨戒機をジブチへ派遣し任務にあたっていますが、これに加えて派遣する、という構想になるのでしょう。

Img_3550 しかし、かつて100機あった対潜哨戒機、冷戦後船団護衛任務にあたる二個航空隊を防衛計画の大綱改定に伴う部隊縮減で廃止してしまいました。回転翼航空機は維持されているものの、P-3C,現在は80機が日本周辺海域の哨戒任務にあたっていますが、昔はこの高性能な機体が100機、二個航空隊20機のP-3Cが船団護衛任務用に残っていれば一個航空隊を丸々ジブチへ派遣、機動運用できたのに。

Img_6314p 問題は法律面で船団護衛における攻撃の排除は個別的自衛権の行使という言い分は成り立つでしょうが、哨戒機による情報収集、そして船団護衛任務中に別の船団への攻撃が行われた場合、データリンクを結んでいる時点で集団的自衛権の行使に当たる可能性があり、派遣する以上は憲法九条の許容された自衛権の行使の範囲内で集団的自衛権と類似する任務を遂行できるという特別立法は不可欠でしょう。

Img_5896 それだけではなく実質的な危険、ソマリア沖海賊の武装は小銃と機関銃に携帯ロケット砲程度ですが、イラン海軍は少数でも水上戦闘艦や潜水艦を有し、ミサイル艇や地対艦ミサイルを保有、護衛艦は攻撃任務ならば瞬時に殲滅が可能ですが、攻撃を封じられた護衛となると難しい。

Pimg_1400p 特に護衛艦は対地攻撃能力となるトマホーク巡航ミサイル等の装備を専守防衛の観点から許されなかったこともあり、反撃には艦砲として搭載している76mm単装砲か127mm単装砲のみ、発射速度や射程は大きいのですが、対地攻撃となると制約があるところ。もっとも、ここ十五年間に建造されている護衛艦はトマホークミサイルを搭載可能なMk41垂直発射装置を対潜対空誘導弾搭載用に有していますので、米国に緊急供与を打診するという提案はあるやもしれませんが。

Pimg_7303 ミサイル艇等の強襲に際してはSH-60K哨戒ヘリコプターによるヘルファイア空対艦ミサイルでの掃討、艦砲による対水上射撃での無力化が行われることとなりますが、文字通り撃沈か被弾かは判断が数秒、戦後初めて明確に戦闘を行う事態に至りますが、そもそも即座の対処として交戦規定を明確明瞭に示さなければ任務が遂行できない可能性があります。

Img_9314 立法措置までは時間を要しますが、そのために無理な任務を行うことは、貴重な艦とそれ以上に稀有な優秀な隊員を危険に曝すことになり、交戦規定がないままに派遣する、攻撃を受けた際に全力での反撃を行うことが出来ないような法整備のまま、身動きがとれないホルムズ海峡のミサイル脅威前に出す事だけは、絶対に在ってはなりません。

Img_0069p 現実的選択ですが、情報収集での連携を行う、それもP-3Cのように脅威へ接近することなく戦域情報を収集できる手段として、E-767早期警戒管制機の派遣が検討されるべきと考えます。4機のみの虎の子ではあるのですが、APY-2レーダーの高空目標への索敵範囲は1000km、イラン軍のあらゆる脅威の射程外から任務が可能です。

Pimg_7860 これで護衛任務が完遂できないというならば、可能であればF-2支援戦闘機を同時に派遣し、上空警戒を行う、という選択肢があります。ASM-3空対艦ミサイルやAAM-4空対空ミサイル、この任務のために開発されたような戦闘機、仮にイラン空軍がF-14戦闘機を出してきたとしても、駆逐艦が出てきたとしても船団に近づく前に撃破されることになるでしょう。

Img_6803_1p KC-767空中給油輸送機と共に派遣できれば、完全というところ。最適なのは無人偵察機による哨戒です。仮にRQ-4でもあれば、36時間の哨戒飛行が可能ですので、ジブチ航空拠点から2機体制で哨戒任務が可能、100km以上先の水上目標も探知可能な広域偵察能力、大半の地対空ミサイル射程外である10000m以上を飛行します。東日本大震災でもそうでしたが、配備されていればどれだけ安全、そして人命を救えたか。

Img_5626p 派遣任務は、特に現在の防衛計画の大綱では日本の防衛計画にアフリカと中東の二か所の沖合で重要な船団護衛任務を行うことは想定していませんでした。かなり厳しい任務となりますが、日本が存続するうえで必要な任務、建前を捨て政治が行うべき義務と自衛隊の能力を最大限発揮することが望まれます。日本が生き残るために。

北大路機関:はるな

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ホルムズ海峡危機 イラン海峡封鎖時には自衛隊によるタンカー護衛と哨戒機派遣を検討

2012-02-26 23:22:10 | 国際・政治

◆ジブチ⇔ホルムズ海峡=東京⇔尖閣と同距離

 ホルムズ海峡危機ですが、イランが封鎖へ実力行使へ出た場合には自衛隊を派遣すると政府は発表しました。

Img_0714 私事ながら当方、同時多発テロに起因するアメリカの対テロ戦争とともに、日本が明確に指示を表明し、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援へ第一次派遣艦隊として佐世保基地を護衛艦くらま以下三隻が出港する報道を思い出しました。そして今回の報道、海上自衛隊が哨戒機と護衛艦を派遣してイランと軍事力で対峙する可能性、大石英司先生のシミュレーション小説”第二次湾岸戦争”は中学のころに読みましたが、まさか湾岸戦争の第一線、自衛隊が本当に参加することになるとは。

Img_7675 政府は海上自衛隊へホルムズ海峡を航行するタンカーへの護衛艦による護衛、そして本日新たにイラン海軍の動向を監視するべく哨戒機P-3Cの派遣を行う検討を行っている、こう発表しています。護衛艦は海賊対処任務により不足気味ではあるのですが、加えて哨戒機となりますと、海賊対処任務へジブチへ航空基地を創設しソマリア沖へ飛行させていますが、ジブチ航空基地からホルムズ海峡へはアラビア半島サウジアラビア上空を経由したとして距離は実に東京と尖閣諸島間に匹敵し、P-3Cの行動半径には含まれているものの、哨戒飛行時間は限られ、これは非常に無茶な要求と言えます。

Img_7941 開発中のP-1哨戒機であれば、行動半径は8000km、巡航高度が非常に高く一機当たりの哨戒範囲が広くなっています。海上自衛隊は日本周辺の哨戒任務、それも台湾海峡周辺を任務範囲に含めるか否かを念頭に航空部隊を編成してきましたが、海賊対処任務によるソマリア沖、そしてこれに加えてホルムズ海峡での航空哨戒任務が任務に加えられる、というのでしたが、防衛計画全般を大きく見直した、海外での任務を念頭とした部隊編制というものも、本土防衛とともに考えてゆかねばならなくなるのでしょうか。

Img_9551 自民党時代ではイランアメリカ関係の悪化に際しては石油開発などでイランと親密な関係にあった日本が仲介役を果たしてきましたが、現在の民主党政権は放置、結果類焼に至りつつあるもよう。何故ホルムズ海峡危機か、それはイランがアメリカの経済制裁へ対抗しホルムズ海峡の軍事的な閉鎖を示唆していることに起因します。その背景とは、について。イランは80年代から核物質の生成を続けています。このイラン核開発疑惑を契機として、アメリカは核開発施設への査察受け入れを強硬に主張しているということ。

Img_9536 核開発施設に対する査察が受けいられれない現状への対処法としてイランの石油に関する取引停止とイラン国内の金融機関による石油代金の決済を停止させる経済制裁を検討しているという構図があります。そしてイラン政府の関連団体であるテロ組織により恒常的に攻撃を受けているイスラエルは、イラン核開発による核兵器がイランが国是としてイスラエル消滅を提示している通り、明らかに自国へ向け使用されるとの懸念から近く航空攻撃などの選択肢を検討とされ、危機は高まるばかり。

Img_7783 このホルムズ海峡は、これまでも繰り返し掲載してまいりましたが、日本にとり重要な石油の輸送海上交通路で、ペルシャ湾とインド洋アラビア海を結ぶ唯一の海峡、ペルシャ湾にはアラブ首長国連邦、バーレーン、カタール、クウェート、イラクとサウジアラビア産油地帯の石油積み出し港があります。加えて現在ペルシャ湾地域から液化天然ガスの輸入も多くを依存しているので、日本にとり、特に原子力発電を東日本大震災福島第一原発事故以降停止させている現状では日本の経済的産業的、そして社会的な生命線にほかなりません。

Img_1658 こうした観点から、政府としては石油の確保を行うべく哨戒機を派遣しなければならない、という状況は理解できなくもないのですが、能力的に難しいことはどうにもならない。行って帰るだけであればP-3Cは行動半径が6500kmあるのですが、行くことは哨戒飛行を行うためなのですから、哨戒時間は海域までの距離が大きいだけに短縮されることを意味します。すると、海賊対処任務へは3機の哨戒機を派遣しているのですが、距離が大きくなれば6機から8機程度を派遣しなければ哨戒任務を行うことが出来なくなることを意味するところ。

Img_6618 タンカー護衛への護衛艦派遣としても、今回はソマリア沖で行っている海賊への対処ではなく、正規軍への対処、しかも地対艦ミサイルシルクワームをイラン軍は運用していますので、護衛艦が自衛戦闘を行うだけではタンカーの護衛は不可能で、どうしてもイージス艦かターターシステムを搭載するミサイル護衛艦、最低でも僚艦防空能力を持つ最新の汎用護衛艦でなければ対応することはできません。狭い海峡ですので身動きが難しいですし、せめて上空の航空自衛隊戦闘機による護衛かトマホークミサイルが必要なのでは、と。

Img_3305 まだまだ増派は検討段階にしか過ぎないのですけれども、可能性として派遣航空機数が増大することは、自動的にジブチ航空拠点への補給物資が増大することを意味します。しかし、この話は、いやこの話も、というべきでしょうか、こちらで何度も繰り返してきたのですが、専守防衛として自衛隊の展開能力を整備してきましたので、元々海外での任務を想定していなかったことから戦略輸送能力が非常に限られており、増大する輸送需要を補うだけの余力、これが整備されない中では、少々無理な話なのではないのか、と。

Img_0406 そうなりますと、輸送能力というもの、海外任務の増大に合わせて強化されたものにしてゆく必要がありますし、いままで考える必要が全くなかった戦力投射能力、今回のイランによる緊張への哨戒機派遣という展開が十年前には全く考えられなかったのですから、さらに十年後にはF-2飛行隊かF-15飛行隊を海外へ派遣して戦力投射、というものが考えられるようになるかもしれません。場合によっては、数年後には支援戦闘機の海外派遣部隊が考えられるかもしれませんし、護衛艦に固定翼航空機搭載が真剣に議論されていることになるやも。

Img_7955 部隊編制も、現在の自衛隊の編成に加えて、中東方面統合司令部というような司令部を新たに編成し、国内の部隊から抽出した部隊を統合運用する、こうした必要性も出てくるやもしれません。ただ、現在は南西諸島防衛という新しい任務への対応へ自衛隊の能力を改めて再考する必要性が出ており、加えて朝鮮半島の緊張、北方脅威の再興という安全保障環境にあるのですから、予算的には厳しいものがあるといえます。多国間安全保障体制を憲法九条の枠を超えて考えてゆかねばならないのかもしれませんね。

Img_8106 正直なところ、此処までのリスクを冒さないことを考えて、原子力発電所の全面際あ道を行ってはどうなのか、とは思います。もともと我が国が原子力発電を歓迎した背景には、第二次世界大戦への日本の参戦、南方への侵攻が資源を求めてのものでしたから、原子力発電として資源の備蓄能力を高めれば、国際情勢に左右されて軍事的な関与を避ける、という観点から進められたのですからね。日本は採りうる選択肢が無限大にあるのですが、国民の安全と繁栄を担保するという前提では選択肢が限られてゆきます。しかし、向き合ってゆかねばならないことは確かと言えるでしょう。

北大路機関:はるな

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防衛省入停、三菱プレシジョン・三菱スペースソフトウェア・三菱電機特機システム・太平洋無線

2012-02-25 22:30:18 | 防衛・安全保障

◆水増請求定義に妥当か?公平化を図れるのか?

 防衛省の防衛装備品について1月末に発覚した三菱電機地対空誘導弾と特科情報装置の水増し請求疑惑に続いて新たに四社が加えられ入札停止となりました。

Img_7403h 三菱プレシジョン、三菱スペースソフトウェア、三菱電機特機システム、太平洋無線、以上の四社が装備品の水増し請求の疑惑があり、防衛省により事実関係の判明と再発防止策が徹底されるまでの期間に入札停止処分となりました。特に事実解明へ向けて防衛省はこの四社に対しての特別調査を実施するとのこと。防衛省発表では三菱電機に関しても再発防止措置が採られるまでの間入札を停止する、としているのですが、防衛省発表を確認しているところ再開された、という話は出ていません。

Img_9177h どういった水増し請求がどの程度の金額で行われていたか、装備品水増し請求の内容を列挙しますと、三菱プレシジョンはF-15戦闘機用シミュレーション装置維持費の2009年度契約分2000万円の一部、三菱スペースソフトウェアはペトリオットミサイル品質確認試験の契約額2000万円の一部、三菱電機特機システムはレーダー部品修理に関する2009年度契約5億3000万円の一部、太平洋無線では航空機自動方向探知装置修理としての2010年度契約160万円の一部とのことです。

Img_6565_1h 今回の水増し請求は、まず、防衛省が金額の上限を示して契約を行い、仕事量が契約の上限金額を下回っていた場合には残金を返金するという方式なのですが、契約金額上限となるよう三菱プレシジョン、三菱スペースソフトウェア、三菱電機特機システム、太平洋無線の各社において、契約作業と無関係である作業員をシフトして作業を行っているようつじつまを合わせ、返還すべき金額を圧縮していた、というもの。上限を超えていないのであれば、特に生産ライン維持費など人件費以外にも費用を要するのですし、問題なのでしょうか。

Img_7482h もちろん、不正という契約になっているならば致し方ないのですが、防衛省の生産基盤維持費の計算方法が、適切であるのかという疑問があるのです。防衛省の管轄ではなく私企業に整備を委託しているのですが、作業手数料に関する人件費と材料費以外に、国有地で工廠を開いているのではないのですから、生産基盤の維持費や工場の運営費というものがかかります。ここが請求する手順について、どうもよくわからないのですが、ここを補うためにこうした手順を採っている、という話、ではないのかな、と。

Img_2645h そして何よりも疑問なのは、公平性を担保できるのか、ということです。特に現在はF-35戦闘機の問題がりますので、防衛省の内弁慶は避けねばなりません。今回は、防衛省が監査、特別監査を行うことが出来る工場でしたから、勤務に関する情報開示の要求や、作業手順に関する特別調査の実施を行うことが出来ましたが、同じことをロッキード社のパームデール工場に対して行えるのでしょうか。即ち、日本の防衛省が支出した金額のうち無関係の費用、日本の戦闘機と無関係の仕様に関する開発に支出されていないのか監査できるのか。

Img_1730h_2 この点が重要で、日本国内の企業にのみ非常に苛酷な採算性を求め、海外の企業に対しては国民の血税を流出させ続ける、というのでは全く無意味の事となります。まず第一に、上限金額以上の整備費や調達費用を防衛省に要求した、とすれば悪質な水増として市場から排除するべきですが、金額内で要求項目のない必要経費を求める、という構図があったならばこれは水増とは言えません。また、厳しくすることは一考の余地があるとして、同じ厳しさの監査を海外の防衛産業に対して行えるのか、公正を保てるのか、ということ。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十三年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.2.26)

2012-02-24 23:12:13 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今週末は自衛隊行事として行われるものは無いようですが、掃海艇について二つほどあります。

Img_8551 掃海艇、掃海艦、いわゆる機雷戦艦艇ですが、二つほど。一つは佐世保や呉に舞鶴といったように週末一般公開を行っている基地はあるのですが、ここに海上自衛隊阪神基地が加わります。毎週というわけではないようなのですけれども、毎月第二日曜日と第四日曜日を掃海艇一般公開の日、このように発表されました。

Img_9246 第一回となる2月26日は、うわじま型掃海艇まきしま、が一般公開されます。時間帯が区切られているので注意が必要で、第一回は0900~0945、第二回が1000~1045、第三回が1400~1445、第四回が1500~1545、毎回十五分前までに受付へ、ということでこの中間の時間帯に行きましても基地に入れないことがあるので注意とのこと。

Img_4754 阪神基地ですが、最寄駅から徒歩で向かうことが出来る佐世保基地や少々遠いですが行ける呉基地と舞鶴基地に対して、もちろんJRと阪急に阪神と駅は多いのですが、駅からのバスの本背ううが限られているということで行きにくいのが難点、シャトルバスの運行はありませんが、魚崎車庫前バス停と魚崎浜東バス停が近いというので、時間と地図をご覧になって計画されては、と思います。

Img_8769 もう一つ、2月27日に日仏親善訓練が行われます。佐世保基地を親善訪問している仏駆逐艦(通報艦)ヴァンデミエールが護衛艦あまぎりそして米掃海艦ディフェンダーとともに九州北西海域において親善訓練を行い、通信訓練や戦術運動訓練、ヘリ発着訓練などを行うのですが、日米仏三カ国合同訓練は初めての実施とのこと。ディフェンダーは佐世保に前方展開していますので、訓練は一般公開されませんが出港などは見ることが出来るやもしれません。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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日米共同訓練、米海兵隊第12海兵航空群岩国基地から百里基地へ移転訓練

2012-02-23 23:22:22 | 防衛・安全保障

◆明日まで航空自衛隊第7航空団と戦闘機戦闘訓練

 防衛省によれば今月13日から明日24日まで、米海兵隊が百里基地へ移転訓練を実施しているとのことです。

Img_9936 移転訓練を実施しているのは岩国航空基地海兵隊第12航空群に所属するF/A-18戦闘攻撃機が6機とAV-8B攻撃機3機程度。この訓練実施は防衛省が3日に発表、16日付朝雲新聞に掲載されていたもので、こちらに紹介するのが遅れてしまいましたが、茨城県の百里基地にて、明日まで普段は目にすることのない航空機が飛んでいる、ということに。

Img_2639 航空自衛隊は今回の移転訓練と共に日米での戦闘機戦闘訓練を実施しており、百里基地の第七航空団よりF-15戦闘機6機、F-4戦闘機5機、更に偵察航空隊からRF-4E偵察機3機を参加、加えて中部航空警戒管制団を支援にあて、百里基地沖の太平洋上において訓練を実施していると発表しました。

Img_9119 訓練移転計画は日米共同訓練という位置づけにありますが、同時に海兵隊航空基地周辺での訓練騒音被害の全国分散を図る目的もあるとのことで、同時に特に垂直離着陸機という航空自衛隊の装備形態に無い航空機との共同訓練や、米海兵隊にも要撃戦闘に重点を置く航空自衛隊との共同訓練はそれなりの意義があることでしょう。

Img_3163 また海兵隊のF/A-18は近接航空支援に際しての目標情報や戦果評価に関する高空偵察任務を有していますので、航空自衛隊のRF-4偵察機との運用研究、特にRF-4はF-4戦闘機と共に近く後継機を選定しなければならない航空機ですので、運用面としてどういった性能が必要となるのかの見極めは、訓練を通じ得ることが出来る重要なものと言えるやもしれません。

北大路機関:はるな

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南スーダンへ陸上自衛隊PKO部隊第一次派遣部隊本隊120名が到着

2012-02-22 23:53:58 | 防衛・安全保障

◆ハイチPKOへは第六次隊が到着

 報道によれば南スーダンPKOの第一次派遣部隊本隊120名が現地へ到着したとのこと。

Img_5874 南スーダンは派遣決定当初は部族衝突など懸念すべき事項が非常に多かったのですが、幸いここのところ治安状態も安定化しており、すでに到着した施設器材などと共に宿営地の設置が大車輪で進められていて、いよいよ自衛隊のアフリカ大陸での新しいPKOは軌道へ乗りつつあるというところ。

Img_1416 一方で、大震災からの復興への目途が全くつかないハイチPKOへは第六次派遣部隊が現地へ到着したとのことで、当初は数か月間の計画であったPKOの計画はどんどん延期されて今日に至るのですが、自衛隊は大隊規模の部隊を必要とするPKOを同時に中米と阿附リアで展開するという状況になりました。

Img_2242 陸上自衛隊の派遣とともに、これを支援する航空自衛隊、海上自衛隊も輸送支援任務にあたっており、同時にアフリカ沖では海賊対処任務が水上戦闘艦部隊と航空部隊により実施、この任務を遂行するうえでの必要な補給支援も行われ、重ねてゴラン高原などへの派遣も実施されています。

Img_1703 陸上自衛隊の規模を考えた場合、可能である、という人的基盤は何とかなるとは考えるのですが、自衛隊の編成は専守防衛で、加えて今回は地球の裏側同士というほどの遠隔地での任務実施であり、補給基盤が非常に長大化してしまっている、ということはどうしても気になるところ。

Img_8285 今回に始まったことではないのですが、今後の自衛隊による海外での国際貢献任務はどのように推移するかについて考えたうえで、空中機動能力や装甲車はもちろん、艦船や輸送機と、これを支える人的基盤と部隊編成、予算と後方支援に関する考え方の根幹まで、もちろん国土防衛を軸にではあるのですが、考えなければ、しわ寄せが大きくなることでしょう。

北大路機関:はるな

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東日本大震災災害派遣の検証②:想定外の作為と不作為 福島第一原子力発電所災害派遣

2012-02-21 23:21:38 | 北大路機関特別企画

◆万全の想定外への備えが担った自衛隊の任務

 想定外の作為と不作為、全開に続き今回は不作為と逃れるのではなく敢えて批判の危険と共に万全の準備を行ったことが結果的に国家を破たんの向こう側へ最後一歩のところで留めた事例を考えてみましょう。

Img_0282_1h原子力災害ですが、こちらは想定外、ではなくある程度想定されていたことにより対応できた部分があると考えます。十年ほど前に国民保護法などとの関係上、中部方面隊を主力として初めての原子力災害対処訓練が行われています。この訓練を実施するにあたって、電力会社は原発は絶対の安全がある、として訓練の実施に対し頑強に反対したとのことですが、自衛隊側の強い要望により実施されたと聞きます。 こうして原子力事故への頭上での研究と共に実動訓練を行ったことが今回の事態に対応するうえで大きく寄与したことは間違いありません。

Img_4393h 当時の時点では、特に中部方面隊管区には原子力発電所が集中している地域があった、という点。福井県の若狭地区原子力発電所集中地域を防衛警備管区として受け持つのと同時に、特に十年前の時点での、北朝鮮武装工作員の有事における日本浸透の可能性、有事におけるか攪乱工作の標的としての日本海側における原子力発電所という問題を含んでおり、特に特殊部隊による強襲を受けた場合、福井県警の対応能力を上回り、発電施設が軍事的な破壊工作に曝された場合について、万全の安全を確保できるという論理は電力会社の側にもなかった、ということがこの訓練実施を後押ししたのでしょう。

Img_2780h 加えて装備と編成体系でも、最悪の場合を想定外と言い換えない慎重な準備がありました。福島第一原発への自衛隊派遣について、これを支援する形で米海兵隊のNBC防護部隊であるCBIRFが昨年4月2日から横田基地へ前方展開し、福島第一原発が最悪の場合へと落ちった場合への準備を開始しました。この過程で中央即応集団中央特殊武器防護隊との訓練を実施していますが、主たる訓練は除染であり、決して自衛隊に対し抜本的に優位にあるとは言い難いものだったと聞きます。少なくとも日本へ持ち込まれた装備の範疇で、ということにはなるのですが、ね。

Img_2585h 確かに米軍の化学剤へ備える気密テントの冷房能力や、個々人の戦闘靴や眼鏡内蔵型防護マスクなど、自衛隊よりも進んだ装備品はあったとのことですが、これは予算の範囲内であり、能力的には同程度の部隊、しかし米軍は自衛隊が原子力災害派遣で想定していない砂漠地帯や酷寒極地などでの運用を想定しているゆえのものであり、基本的に自衛隊の中央特殊武器防護隊が行った装備体系は間違っていないことをしましたともいえます。もっとも、CBIRFの創設は我が国における地下鉄サリン事件という大都市部でのNBC兵器を用いたテロなどに対処する目的で創設され、この背景に中央特殊武器防護隊の前身である大宮化学学校第101化学防護隊が参考の一部とされたので、当然と言えば当然なのですが。

Img_0289_1h 思い起こせば地下鉄サリン事件に際しても、化学学校は試薬としてサリンと同等の薬剤を用いて、実際に陸上自衛隊の防護装備ではどの程度化学剤に対応できるのか、神経ガスによる攻撃を含めた化学剤による攻撃を受けた場合、地域除染にはどの程度の時間がかかりどの程度で危険が中和されるのか、車両の汚染が安全な程度に中和されるのはどの程度か、戦闘防護服による安全性の維持はどういう姿勢でどういう行動にて任務を継続した場合、どういった時間まで安全性を確保できるのか、等など、文字通り想定外という単語を使えない程にあらゆる可能性に立脚した試験を行っているから、対応できた、ということが今日言えるでしょう。

Img_1371h 放射性物質は遮蔽すれば問題なく、除染すれば取り除けるのですが中和はできない。しかし、どの程度ならば危険性を容認できるか、ということを念頭に置いていたからこそ、例えば福島第一原発冷却能力完全喪失に際して輸送ヘリコプターからの放水支援を行う際に、明らかに想定して準備していただろう搭乗員のタングステン防護衣や機体の鉛遮蔽版を以て管理された危険へ対処することが出来たのですし、放射線防護学に立脚した冷静な事前の試算と研究があったからこそ、緊急時の被曝許容量を予め準備し、対応できた、ということは言える、そう考えるのですがどうでしょうか。

Img_4090h 加えて、陸上自衛隊ではチェルノブイリ原子力発電所事故におけるソ連軍の対応を相当綿密に研究しており、無謀ということはなく管理された危険の中で危険を冒す、機縁に臨むからこその危険の表面化を管理する徹底した研究があったことも忘れてはなりません。具体的にはソ連軍は原子炉安定化作業に用いた車両と航空機のかなりの数を遺棄し今に至りますが、どういった車両であれば除染に対応するか、という計算さえも用意されていたからこそ、現在のところ派遣された車両は全て除染され、明日あるかもしれない次の任務に向け整備され訓練に用いられています。

Img_4128h 結果的な話、ということになるのでしょうが、自衛隊の原子力災害への準備は、一定の水準であった、と様々なところで耳にします。もちろん、核分裂は収束した核燃料の臨界状態により引き起こされるものですから、物理的に核燃料を分離できない限り臨界は止まらず、特に溶解し制御棒を挿入できなくなっている以上、これは現時点でも福島第一原発のすべての原子炉において回収されていない核燃料が臨界を続けており、遠い将来、溶解した燃料棒を回収する技術が確立するまで続くことは間違いありません。

Img_3973h従って、自衛隊の能力は隊員の安全を確保したうえで住民避難を支援し、特に被曝状態にある避難民の除染を行う、電力会社の原子炉冷却作業を行う基盤を構築することにあります。もしかしたらば、原子炉安定化能力も自衛隊に求められなかったか、と問われれば、あるには越したことがないでしょうが、自衛隊は原子力潜水艦のような原子炉を持ちませんし、発電用原子炉を元にした模擬訓練施設を建築できればそれはよかったのでしょうが、原子炉攻撃を行う可能性の訓練などと言いくるめるのはやはり限界があり、このあたり上限でしょう。もちろん、ここで福島第一原発の津波対策が東北電力女川原発と同程度に維持されていたならば、もちろんここまで大事にならなかったのでしょうし、津波により全ての補助電源を失うという全電源喪失を想定していなかったことは、今日の破たん寸前の我が国を生み出しているのですが、対して自衛隊はよくその求められた任務を果たしました。

Img_4413h かつて、我が国では核戦争への準備を行うことが核戦争への恐怖心を低減させ、結果的に核戦争を誘発させるという逆因果関係ともいえる論理が平然と教育はもちろん国会の場でさえも通っていた時代があります。こうした時代があったことを背景に、しかし有事の時、まさしく今回の事故のような自他愛を考えることも出来れば核攻撃という事案も含めることが出来るのでしょうが、備える、という重大な決意と共に教育と研究、装備品開発と部隊の編制、人員訓練と運用研究を行っていたことが、今回の事態に際し自衛隊は想定外の文言を使うことなく、対処できた、そう考える次第です。

北大路機関:はるな

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22DDH起工! 平成22年度護衛艦(19500t型)IHIマリンユナイテッド横浜工場にて起工式

2012-02-20 22:24:39 | 先端軍事テクノロジー

◆満載排水量は24000t乃至27000t

 朝雲新聞によれば、しらね型護衛艦を置き換える平成22年度護衛艦について神奈川県のIHIマリンユナイテッド横浜工場において起工式を迎えたとのこと。

Img_9098i 新護衛艦、写真は最新鋭の護衛艦いせ、ですが、現在日本最大の護衛艦ひゅうが型は基準排水量13950tと満載排水量19000tに対し22DDHでは基準排水量19500tで満載排水量は24000t、任務によっては25000tから27000tに達する空前の護衛艦となる模様で、艦載機も護衛艦ひゅうが型ではSH-60Kなど航空機約10機に対し、22DDHでは14機となるとされています。朝雲新聞によれば常備航空機はSH-60Kが7機とMCH-101が2機となっていて、航空機運用能力が大きく強化されます。一説には飛行甲板も強化されているという話もあるほど。

Img_5004i飛行甲板にはヘリコプター発着スポットが五機分配置されていて、全長も護衛艦ひゅうが型よりも50m延長されているのですが、特に飛行甲板上にはミサイルを運用するVLSが配置させていないことから、ひゅうが型護衛艦では特に飛行甲板後部のVLSにより制限されていた航空機の飛行甲板係留が行うことが可能で、完成予想図にも飛行甲板に係留航空機が描かれています。米ニミッツ級原子力航空母艦の格納庫収容能力は全体の四割とされ、この数字を参考に甲板係留を考えた場合30機以上の搭載も可能となるやもしれません。

Img_2679i ひゅうが型護衛艦は国産多機能レーダーFCS-3を搭載、後部16セルのVLSに発展型シースパローESSMを最大64発を搭載し、20mm高性能機関砲CIWSや短魚雷発射管を搭載していますが、新しい22DDHにはFCS-3よりミサイル管制装置などを簡素化した国産のOPS-50を搭載、他方VLSを断念しシーRAM近接防空艦対空ミサイル10連装発射装置と20mm高性能機関砲を各二門搭載する、航空機重視とは対照的に個艦防空能力へ割り切った装備となりました。

Img_9032i ひゅうが型は全通飛行甲板型大型駆逐艦、満載排水量で19000tありますので全通飛行甲板型航空巡洋艦とすべきやもしれませんが、22DDHは近年の多機能航空母艦の一類型にある戦力投射艦というべき性能を有しています。これは第一に陸上自衛隊の同乗者を含め970名を定員としていることで乗員は470名とされますので500名の部隊を乗艦させることが可能。加えて新たに埠頭などから火砲や車両を搭載可能なサイドランプを設置する構造、必要に応じて陸上部隊の投入を支援できる設計を採っているのが特色と言えましょう。

Img_4112i しらね型護衛艦は基準排水量5200t、満載排水量7200tと1980年代の護衛艦としては破格の大きさではありましたが、ひゅうが型の19000tと大型化し、航空機運用を重視した結果20000tを超える大型艦となったわけですが、新護衛艦は再来年早春に進水式を迎え公試も再来年度には恐らく開始、2015年には就役することになります。2040年代から2050年代までは現役に置かれる護衛艦となり、長大な飛行甲板に搭載され運用される航空機はどういった機種となるのでしょうか。

Img_7715i 22DDHは二番艦の予算も平成24年度予算に盛り込まれており、護衛艦しらね、くらま、を2017年までに置き換える構想、同時に護衛艦隊には護衛艦ひゅうが型二隻を含め四隻の全通飛行甲板型護衛艦が揃うことになります。気になる艦名は、このあたりが決め手というべき一隻、現在の大型護衛艦が旧国名を採用していますので連合艦隊旗艦を務め第二次大戦を戦い抜いた戦艦長門、世界海戦史に特筆された空母機動部隊である南雲艦隊の一員として戦った空母加賀があり得るのでしょうか、そして二番艦に呼称を戻し空母赤城の名を継いでくれれば、とおもうのですが、どうなるのでしょうか、いまから注目してゆきたいところです。

北大路機関:はるな

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