北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

2012年も大晦日 それでは皆様一年間ありがとうございました、よいお年を

2012-12-31 23:42:19 | 北大路機関特別企画

◆2012年を振り返り、大晦日は間もなく零時

 大晦日、八坂神社から戻り、本稿執筆時間は2300時過ぎ、今年もほんのわずか、いかがお過ごしでしょうか。

Img_2658  2012年を振り返りますと、劇的な政権交代があり、震災復興はようやく軌道に乗る端緒という印象ですが、北大路機関としては、防衛計画の大綱改訂がどう進むのか、弾道ミサイル防衛に注力しすぎた我が国防衛力の基盤がどうなるか、という不安を残しつつ、一方で観艦式の艦艇の偉容をみれば、これ以上舵取りを誤らないのならばこれまでの蓄積で何とか持つことができそう、と考えるところ。

Img_7975_1  しかしながら、海上保安庁は安易に削れば由とした予算体型が結果的にどういった問題を引き起こすか、というところを端的に見せてくれたように思います。今年初めてゆくことができた勇壮な海上保安庁観閲式は来年、尖閣諸島警備強化を理由として実施されないこととなりました。主権者へ装備の現状について受閲をうけ、その正当性を示す目的なのですから、規模が縮小しようと、一般非公開であろうと実施するべきなのですが、それすらもならない、という状況なのでしょう。

Img_4749  さて、我が国は国際関係の変動期というべき今日、世界政治にどう関与するか、という難題を前に、国際関係を俯瞰すれば我が国は国家と軍事を切り離した関係を構築しようとし、逆に諸国では軍事機構が政治と一体化することで主権者に管理されているという理解を前提としている中で、踏み込んだ国際関係を、特に憲法上の制約からなし得ずいまにいたります。本年はロシア海軍やインド海軍の親善訪問を見る機会に恵まれ、そもそも外交上で平和を維持する予防外交を展開せねばならないのに、その外交力が国際政治において国家機構の軍事機構包含が行われている結果、踏み込んだ関係を展開できないのは、立憲の主旨からみてどうなのか、とも考えた一年でもあります。

Img_8604  一方、我が国自衛隊を様々な行事にて見る機会があった本年ですが、政治の軍事への不理解は、機構破綻というべき状況が迫っていたとしても、この危機に気づくことができないという問題を抱えているのではないか、とも考えた次第で、これは即ち防衛計画の大綱が自民党時代を含め一貫して削減傾向であったことに対し、諸外国も正面装備を削減していることから余りに思慮を欠いて削減を行ってしまったのではないか、ということ。

Img_8286 諸外国、特にNATO加盟国では大胆な正面装備削減を実施してきていますが、その背景は二つあります、一つは情報RMA化に対応する共同交戦能力保持へ、通信基盤と情報優位への様々な装備改編を行う必要があったためで、通信ネットワークの構築と伝送能力強化、そしてこれらの運用基盤となる装甲戦闘車などへの選択と集中が行われており、もう一つはISAFを筆頭に非正規戦への部隊派遣に対応する耐爆車両の充実と普及に予算を投じたためでした。

Img_3587 美しい桜並木と観閲行進ですが対する自衛隊は、予算面で任務増大の中種k源が行われ、厳しい状況にあります。主として弾道ミサイル防衛に予算を投入したため、結果として装備体系は遅々として更新が進まず、防衛産業は破綻寸前、一部では撤退が進められ、離島防衛は装備不足、弾道ミサイル防衛という新しい任務に対し予算的措置を忌避し、もともと余裕なき防衛予算からスクラップ&ビルドを強行、新たに海上阻止行動給油支援や海賊対処任務、計画なきPKO任務の拡大、ここに南方の脅威増大が直撃しているわけです。

Img_3050  我が国は、専守防衛に太平洋以外の対岸からの本土侵攻の脅威が残り、一方で南西諸島での島しょ部防衛の必要性が高まるとともに、重要なシーレーンが新興外洋海軍国の海洋占有という脅威に曝され、本土は弾道ミサイルの脅威が残りつつ、広く世界では海賊対処という任務がのこり、実働部隊として、平時の運用とともに有事の対応を担うにはどれだけの防衛基盤が必要になるのか、討議はこちらも多く検討されませんでした、この中で、一方が足りなくとも他方から増援を得るという動的防衛力が機動力整備を蔑ろに続いている、ヘリコプターと装甲車が不十分という現状はこちらを危惧させられたというところ。

Img_3182  この点で、防衛計画の大綱に示された整備すべき防衛力があたかも予算上整備しうる上限のような、自己軍縮条約のように運用されてしまい、結果、この枠外防衛力をもって補完しようと様々な施策が巡らされたことで、逆に効率化から遠い結果になっているのではないか、という危惧も抱いてしまうところがあります。アメリカの国防権限法のように、どういう任務を平時に行い、いかなる運用を有事に行うかの準備を明示し、結果、大綱の主要装備定数と越えた装備体系の模索は必要ではないか、とも考えてしまいます。

Img_9523  また、平時と有事という概念をある意味で無視した政策は、普天間問題に代表される日米安全保障条約との関係にも表面化しているのではないか、普天間基地や嘉手納基地を回りつつ、考えたのはこの点です。日本本土防衛だけを考えるならば、普天間の海兵隊がなくとも、沖縄の防衛だけは日本の国力と嘉手納基地の能力で不可能ではありません、しかし、台湾という我が国シーレーンと国土に接する友好的な地域が、仮に隣国の攻撃を受けた場合、日本の独力で台湾を救援することは現状では不可能であり、そして政策上行う基盤もなく、憲法上も不可能である、という実状に鑑みれば、日米安保、ほかの対案はありません。

Img_4684  今年は海上自衛隊幹部候補性学校卒業式と、航空自衛隊幹部候補性学校記念行事に足を運ぶことができましたが、同胞である彼らの双肩に我が国への軍事上の脅威からの国民の生命と財産と尊厳がかかっているものであり、その国民がある種、非常に曖昧な防衛政策を続ける為政者を選出してきている現状は、その結果がかの方々一人一人の生命とも直結しているものであり、頼りきっていいのか、背負わせていいのか、これも深く考えてしまいました。

Img_1046  現在の我が国の平和は、ある意味で先の大戦での我が国の奮戦が、結果として我が国との戦争を行うことを大きく躊躇させているのだと思います。言い換えれば、かなり誇張され、近隣諸国の国定歴史教科書に記された内容が少なくない抑止力となっているのでしょう、しかし、これでは先人の蓄えを食いつぶすばかりではないでしょうか、この点、回答は見つからないところですが、来年以降も考え続けることとなるのでしょう、こうしたなか、皆さんもできれば一緒に考えていただけると幸いです。それではみなさま、よいお年を。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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北大路機関の『自衛隊最新装備2012』 最新戦車・装甲車・誘導弾・施設器材・艦艇・航空機

2012-12-30 23:06:15 | 北大路機関特別企画

◆最新装備を報じた2012年を振り返る

 北大路機関といえば、ひゅうが型、AH-64D,F-15近代化改修型、C-2,等など最新装備をいち早くお伝えする努力を行ってきましたが、2012年も多くの新装備をお伝えできました。

Aimg_2122 10式戦車量産車の富士総合火力演習初参加、本年最新の装備は富士学校祭で過去二回に渡り紹介した10式戦車が量産車の戦車教導隊納入により初めて実弾射撃を展示した様子を紹介しましたが、スラローム射撃、蛇行運転の後に連続射撃を行う正確に命中させる、10式戦車は加速性能が過去に例がないほどの性能を富士学校祭にて誇示していますが、自動装填装置と火器管制装置の自動追尾能力が大きく向上している様子を展示、これが21世紀の戦車か、と率直に感心しましたが、その瞬間を撮影できたのも大きな喜び。

Aimg_2525 NBC偵察車、久々に陸上自衛隊に新しい装甲車が導入、軽装甲機動車配備開始以来11年ぶりの新設計装甲車ですが、遠隔化学剤監視能力、核防護能力と生物兵器識別能力を有し、防護板追加により原子力事故事案にも対処できるという新装備、今年の大宮駐屯地祭にて撮影しました。少々トップヘビーというのは気になりましたが、次世代装甲車両体系の基本車両となる最新型の装甲車です。しかし、繰り返しになるのですがやはり車高が少々高い。

Aimg_159_2 中距離多目的誘導弾、富士学校祭と板妻駐屯地祭において今年初公開となった陸上自衛隊普通科の最新装備で、富士総合火力演習では連続射撃を展示しました。射程は8km前後といわれるのですが、87式中MATや79式重MATの後継として普通科中隊対戦車小隊へ配備される装備、発射装置にはミリ波レーダ装置と熱線暗視装置が搭載され、車両乃至人員携行式照準器による誘導が可能、撃ち放し可能な新世代の対戦車ミサイルとして完成しましたが、連続射撃は1秒以下で次弾を発射、技術の進歩を体感したというところ。

Aimg_8380 07式機動支援橋、施設大隊に装備し、陸上自衛隊の主要装備全てが通行可能、ええと最近というか今月上旬まで勘違いしていましたが90式戦車も渡れます。2010年頃から施設学校祭にて展示されていたようですが、遅まきながら今年善通寺駐屯地にて初めて撮影しました。渡河に際し対岸へ支柱を先に私、その支柱をレールのように橋桁を通すことで迅速に架橋する装備で、橋脚を用いず架橋が可能です。この方式は長さに限界を強いるのですが流速と水深や川底の状況に関係なく架橋できる優れもの、ようやく撮影できました。

Aimg_3346 120mm重迫撃砲RTから発射されたIR照明弾、富士総合火力演習夜間演習での写真で、富士山の稜線が見えるほどの長時間露光にて撮影したのですが、このようにしか映りません、通常の照明弾よりも遙かに暗い、しかしIR照明弾は新装備で、熱線暗視装置越しに見た場合非常に高い暗視能力を発揮できるとのことで、偽装の看破や停止状態の車両表面などを発見することが出来るという、照明弾と言えばルーメンでしか考えていなかった当方、勉強不足を思い知らされた最新装備です。

Aimg_0673 海上自衛隊の最新装備。護衛艦あきづき、観艦式での撮影です。あきづき型の一番艦で今年三月に就役しました。国産多機能レーダーFCS-3の搭載と射程60kmのESSM対空ミサイルにより限定的な艦隊防空を可能とする最新鋭の護衛艦です。満載排水量は7000tに達し、汎用護衛艦としては最大の規模です。あきづき、長崎にて建造中の様子を対岸のグラバー園から撮影し、幾度もお伝えしましたが就役後の様子をしっかりと撮影できたのは観艦式が初めてです。佐世保にて建物越しに見えたのですけれどもこちらのほうがらしく撮れている。

Aimg_4332 掃海艇えのしま。こちらも観艦式で撮影できました。今年三月に就役したばかりの最新で、海上自衛隊は従来掃海艇を機雷に探知されず、至近爆発に際し衝撃を吸収する木造掃海艇を建造し続けてきましたが、艦齢延長を期してFRP製掃海艇として建造されました。もそもと30mm機関砲の搭載など検討されたのですが、運用と予算の観点からひらしま型掃海艇をFRP製としたものに落ち着き、S-10掃海器具を搭載しています。木造掃海艇は20年ほどの寿命だったのですが、FRPとしたことで30年を運用可能とのこと。

Aimg_0154 特別警備隊複合艇、海上自衛隊江田島基地に拠点を置く海上自衛隊の特殊部隊で通称SBU,創設は2001年なので、ようやく撮影できたのか、呆れた方もいらっしゃるかもしれませんが、江田島の海上自衛隊幹部候補生学校卒業式に護衛艦くらま参加、と聞き急遽広島から江田島へ渡り、近海練習航海部隊と外洋練習航海部隊の出港を撮影しようとしていたところ、特別警備隊の複合艇が三隻出港しました。選抜と基礎課程のほか応用課程二年を経て配属されます。隊本部のほか四個小隊編成で各小隊は二個班約20名から編制されているもよう。

Aimg_1405 MP-5短機関銃、訓練用擬製銃ですが。こちらも江田島の幹部候補生学校卒業式の際に撮影したもの。MP-5は自衛隊で特殊作戦群などで運用しているとは言われていたものですが、初めて見ました。県道からこれが見える江田島は凄い。少なくとも二名が携行していますので、私物というのは考えにくく、恐らく実際にMP-5を保有しているのでしょう。警察もSATや機動隊銃器対策部隊が、海上保安庁も特殊警備隊SSTが保有しているようですが、SBUのMP-5は写真としては珍しいと思います。事実撮った私も一言、やったぜ。

Aimg_6818 P-1哨戒機量産機、着々と実用化に向け進展する国産新哨戒機の量産機、四号機の初飛行を岐阜基地にて撮影しました。米国ではP-3C哨戒機の後継としてボーイング737を原型としたP-8哨戒機を開発中ですが、同機は対潜哨戒に必要な低空飛行能力や機動性に限界があり、こうした場合では無人機を管制し対処するという事、新設計のP-1はP-8が洋上監視機というべき性能に対し純然たる対潜哨戒機を軸とした多機能哨戒機で、専用設計のため機首に搭載できるセンサーも大きく、部隊配備が待ち焦がれる国産機のひとつ。

Aimg_7583 無人機(UAV)、岐阜基地航空祭にて撮影したもので無人機システムの研究、として富士重工が進める無人偵察機です。F-15から空中発信し、偵察を行ったのちに飛行場に着陸し再利用が可能な無人機、これまでも岐阜基地航空祭では展示されてきましたが、今年の岐阜基地航空祭で展示されました無人機には機体下部に偵察用カメラアイが装着されていました。航空法の関係で発展が制約されてきた無人偵察機は、現在、全力でその装備化へ向け陸上自衛隊や航空自衛隊において進められています。

Aimg_7590 MV-22オスプレイ。『自衛隊最新装備』という区分からは離れてしまいますが今月普天間基地にて撮影しました。ローター角度を自由に変換できるティルトローター方式を採用し、長大な航続距離を誇る航空機として旧式化したCH-46中型ヘリコプターの後継に配備が開始されました。試作機は開発上の問題に突き当たりましたが、制式化後MV-22の事故発生率は少なく、非常に小さなエンジン音に驚きました。自衛隊にも必要な機体ですが、一機当たりCH-47やAH-64Dの倍で、これらを充足させたのちの話として、あれば便利と言えるやもしれません。

Aimg_8552 EA-18G電子戦機。EA-6に代わる米軍の新しい電子戦専用機として開発されたもので、部隊配備は2008年、2009年には初度作戦能力を付与されている機体ですが、日本に配備開始となったのは今年3月25日の厚木到着からで、4月28日の厚木さくらフェスタでも展示されていたとのことですが、当方は今月、嘉手納基地にて初めて撮影しました。電子妨害は防空網制圧と護衛任務に加え、電子偵察などにも対応する航空機で、主翼の翼端には電子戦装置が搭載されているのが分かるでしょうか。

Aimg_6969 強襲揚陸艦ボノムリシャール、ワスプ級の六番艦で、満載排水量は40500t、海兵遠征隊の兵員1900名、戦車装甲車30両、車両80両、火砲8門を輸送する強襲揚陸艦、エアクッション揚陸艇とヘリコプター42機にハリアー攻撃機6機を搭載、もしくはハリアー攻撃機20機を搭載し軽空母としても運用可能で、今年四月末に前のエセックスと交代し佐世保配備となったもの、五月に佐世保で撮影しました。新型のMV-22運用機材を搭載しており、これにより海兵隊の即応性は高まったとのことです。思いつく限り、北大路機関としては2012年にこれだけの装備を撮影し、紹介できました。来年はどうなるでしょうか、新鮮な情報をお送りできるよう努力いたしますので来年もまた、よろしくお願いいたします。

北大路機関:はるな

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北関東~北九州 第1師団・第12旅団・第3師団・第10師団・第13旅団・第14旅団・第4師団

2012-12-29 22:50:16 | 北大路機関特別企画

◆2012年を振り返り:本年も多くの行事を撮影

 2012年を振り返り、という仰々しい表題ですが、気づけば北関東から北九州までの全ての師団・旅団司令部行事を廻った一年でした。そこで本日は、記念行事の装飾が施された司令部駐屯地の様子を一挙に紹介しましょう。

Dimg_5931 第12旅団は、群馬県榛東村の相馬原駐屯地に司令部を置き、北関東及び甲信越地方を防衛警備管区とする旅団です。この日は生憎の雨天で、駐屯地は本数の非常に少ないバスにて高崎駅から一時間という少々不便な場所にあり、空中機動重視の旅団ながら雨天の視界不良で祝賀飛行は出来ませんでしたが、榛名山と旅団を撮影でき、装甲車の配備が本格化した旅団の観閲行進など、見どころは多かったです。

Dimg_5435 第1師団、第1師団は東京練馬に司令部を置き、首都圏及び富士東海を警備管区とする師団で、首都防衛の重責を担う師団です。練馬駐屯地祭の実施日は、桜がちょうど満開の季節を迎えたこともあり、桜並木と観閲行進という、非常に理想的な写真を撮影できたのが印象として強く残りました。しかし、訓練展示では水を撒いていないグラウンドにヘリコプターが着陸し、強風が凄かった。第1師団管区では、北富士駐屯地祭、駒門駐屯地祭、大宮駐屯地祭、富士駐屯地祭へあしを運びました。

Dimg_8712 第10師団は、東海北陸地方を警備管区とする師団で、師団司令部は名古屋市守山区の守山駐屯地、警備管区は中京地区という年部に北陸という山間部を抱える師団です。司令部となりに名鉄守山自衛隊前駅がるため、行きやすい駐屯地という印象で、50周年行事でした。守山駐屯地祭の当日は小雨が舞う中の行事ですが、ご縁あって2005年から毎年足を運ぶ行事ですので、雨宿りしつつ撮影する場所があり、今年もいい写真を撮ることが出来、嬉しい限り。

Dimg_1655 第3師団、伊丹市千僧に司令部を置く師団で、京阪神地区という首都圏に次ぐ大都市を警備管区の中心とし、近畿紀伊地区全域を防衛警備管区として重責を担う師団です。本年は予行日も一般公開を行ったため、予行日と本番を併せ二日間に渡り、師団の行事を撮影することが出来ました。師団管区では、大津駐屯地祭、今津駐屯地祭、姫路駐屯地祭へ足を運んでいます。千僧駐屯地祭、訓練展示は予行日にスタンド席から、此処は当日一般公開されないのですが、そして翌日は反対側から撮影しています。また来年も予行を公開していただけると幸い。

Dimg_1854 第13旅団、司令部は広島県の海田市に置き、山陽山陰地区の防衛警備及び災害派遣に当たる部隊です。海田市駐屯地は、想像していた駐屯地よりもはるかに広大で、驚きました。陸上自衛隊の師団で最初に旅団に改編された部隊です。また、行って気づいたのですが13旅団13周年と13が揃いましたね。

Dimg_7956 第14旅団は、第2混成団を拡大改編し誕生した旅団で、四国全域を防衛警備管区とする旅団です。司令部は善通寺駐屯地に置かれ、四国の駐屯地祭には今年初めて足を運ぶこととなりました。四国ですが、やはりこちらも駐屯地は広大で、第2混成団時代の司令部庁舎が資料館として開放されており、明治以来の貴重な品々を観ることが出来たほか、行事の規模も大きく、行って良かったです。

Dimg_5016 第四師団は、福岡市の福岡駐屯地に司令部を置き、九州北部を防衛警備管区とするほか、対馬壱岐五島地区という離島防衛を担う師団です。こちらも九州の駐屯地祭は実は初めてで、以上の第12旅団から第4師団まで、北関東から北九州までの全ての知育の管区師団及び旅団の司令部行事を撮影することが出来、2012年という一年間はなかなか貴重な一年間を過ごすことが出来た、これが実感です、詳報はなかなか進みませんが、来年もお楽しみに。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度十二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.12.31)

2012-12-28 23:01:35 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今年も残すところ僅かとなりました、本年の定期掲載は本日で終了、明日から特別掲載とする予定です。

Dimg_7997 本年最後の自衛隊行事は、横須賀基地にほど近いヴェルニー公園において大晦日から元旦に掛け行われる横須賀カウントダウンとなります。こちらは横須賀市主催の行事に海上自衛隊が協力するという形で、詳しい情報は横須賀市HPのスカナビI/横須賀観光インフォメーションに記載されているとのこと。

Dimg_7592 年末恒例となった舞鶴基地一般公開ですが、北吸桟橋の一般公開は今月いっぱい行われないと横須賀地方隊HPに記載がありました。海軍記念館の一般公開は別ですが、舞鶴基地に並ぶ門松で飾られた護衛艦を眺めつつ大晦日や新年を、と計画の方はどうかご注意ください。

Dimg_0058 佐世保基地一般公開は29日土曜日、30日日曜日、ともに中止となっており、新年は最初の週末から一般公開がおこなわれるとのこと、こちらも弓張岳展望台などから俯瞰する年末に母港に戻った艦艇が並ぶ姿は壮観でしょうが、基地の一般公開は行われませんので、足を運ばれる方は注意が必要でしょう。

Dimg_7422_1 呉基地も毎週日曜日に一般公開を行っていますが、30日日曜日の一般公開は中止となっていますので、アレイからすこじま散策など、呉に足を運ばれる方は他の観光をお勧めしたいところ。自衛隊位関連行事は上記の通りで、駐屯地祭や航空祭は行われません。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報⑬ 機動打撃と戦果拡大

2012-12-27 22:56:54 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆戦車前進!、普通科前へ!

 遠距離火力戦闘により敵砲兵及び敵陣地に対し一定の損害を与えた攻撃部隊指揮官は、いよいよ直接火力戦闘への展開を決断しました。

Mimg_2266 命令一下、第11戦車大隊の90式戦車が随伴の装甲車と共に攻撃前進を開始しました。90式戦車は、高機動力高防御力を志向した第三世代戦車の要件となる1500馬力エンジンと複合装甲を備え120mm砲を搭載した国産戦車で、砲塔には第11戦車大隊を示す“士魂”が記されています。

Mimg_2262 90式戦車は特科隊の75式自走榴弾砲を追い越し戦闘加入してゆきます。90式戦車は対戦車戦闘を展開する直接照準射撃用の高初速戦車砲を搭載、一方75式自走榴弾砲は長距離の間接照準射撃を行う榴弾砲を搭載、一見詳しくない方には用途の違いが分かりにくいのですが、並べると運用思想の相違が分かるでしょうか。

Mimg_2294 戦車の前進を支援するべく第11施設中隊の96式装輪装甲車が70式地雷原爆破装置を搭載し、随伴します。戦車の前進に際し、字際が散布されている地域に接すれば機動打撃の重要な要素である衝撃力が削がれてしまいます、叩きつける鉄の衝撃が重要な要素である機動打撃には施設科部隊も機械化されていなければなりません。

Mimg_2300 機動打撃に合わせ航空部隊も再度展開、観測ヘリコプターOH-1は必要ならば敵観測いヘリコプターを空対空ミサイルにより撃破することも可能であり、UH-1J多用途ヘリコプターはレンジャー隊員の投入や重機関銃による支援など、様々な任務に対応できるのですが、脆弱性もあるのでこれは訓練展示の演出と割り切るべきやも。

Mimg_2309 96式装輪装甲車にて機動運用される70式地雷原処理装置は、ロケット弾により100m距離の人員用通路を地雷原爆破により啓開、対戦車地雷除去用の梱包爆薬敷設の端緒を切り開きます。地雷原を処理する以上、施設科部隊は時に戦車より前に出る必要があり、もっと装甲車両は必要です。

Mimg_2321 咆哮を上げる75式自走榴弾砲、施設科部隊の地雷処理支援を開始です。地雷は防御に際し、陣地前に機動打撃の速度を削ぎ、反撃の機会を作る防御地雷運用が正規戦では常道ですので、施設科部隊の地雷除去作業に際しては特科部隊を中心に火力支援を行い敵防御陣地の行動を封じねばなりません。

Mimg_2313 地雷原は処理されました。陸上自衛隊にはこのほか、主に方面施設部隊に装備され、対戦車地雷を直接処理する92式地雷原処理車が装備されています。しかし、このほか、土手や建物の瓦礫を利用した障害物が考えられ、最前線でこれら障害を処理するためには排土板を備えた施設装甲車が必要と考えます。この種の車両には施設作業車の装備が北部方面隊の一部に行われていますが、まるで足りない。

Img_2329 90式戦車が障害除去を終えた地域において再度機動打撃へと戦闘加入します。90式戦車は、我が国地形で運用するべく重量を第三世代戦車として最も軽量な部類に入る50tに抑えており、重量を抑えつつ防御力を各国第一線主力戦車との戦車砲を用いての殴り合いへ耐えるべく様々な新機軸を盛り込み、完成しました。

Mimg_2326第18普通科連隊の96式装輪装甲車も戦車部隊に協同し、75式自走榴弾砲の火力支援下に機動打撃へ展開します。75式自走榴弾砲と重なり、何やら写真では新型車両にもみえてくるのはご愛嬌、なお陸上自衛隊は本車の支援用に開発された重装輪回収車を用いて新型火砲である火力戦闘車を開発中です。

Mimg_2330_2 戦車長は直接周辺を警戒しつつ戦闘行動を展開します。90式戦車は、自動装填装置の採用により4秒間に1発、1分間に15発の連続射撃を可能としますが、この自動装填装置の採用により発射速度という打撃力を強化すると共に砲塔内容積を効率化、必要な装甲面積を人員防御用に割り切ることで、軽量ながら重装甲という難題を解決した凄い戦車、強い頼もしい。

Mimg_2332 戦車は陸上装備体系において最強度の防御力と非常に大きな打撃力を有し、高い機動力を有する装備体系の頂点に或る装備ですので、陸上戦闘は相手の戦車を如何に無力化するか、という難題を解決せねばなりません。航空機は悪天候に弱く加えて地域占有が不可能、ミサイルは最低射程距離や電線に木々といった障害物で容易に無力化されるため、戦車には戦車で、対応せねばなりません。

Mimg_2333 戦車が航空部隊の支援下に攻撃前進を開始しました。正面装甲はチタン合金とセラミック等を併せた複合装甲により防護されており、対戦車ミサイルの装甲を溶かす極高熱ジェットを高熱に最も強いセラミックが、戦車砲弾の音速数倍という衝撃と貫徹を硬度が最も高いチタン合金が、それぞれ貫徹を防ぎ、その前後に挟まれた合成樹脂により致命的衝撃を削ぎ、乗員を守る。

Mimg_2335 90式戦車は70km/hの速度を発揮可能で、これは国産の1500馬力エンジンと変速機を含めた精巧だが頑丈、という足回りによるもの。そして砲は安定装置により最高速度で走行しつつも照準を保持でき、火器管制装置は一度捕捉した戦車などの目標を自動追尾することが可能、走りながら自動装填装置により連続射撃を行うことが可能、頼もしい国産戦車です。

Mimg_2345 96式装輪装甲車が戦車に続きます。戦車の弱点は歩兵の肉薄、先の大戦では我が国もこの戦術により多数の戦車を撃破しましたし、世界の地域紛争では対戦車火器により戦車の被害が数多く報じられ、これを防ぐためには歩兵には歩兵で、その接近を装甲車に随伴する普通科部隊が排除せねばなりません。

Mimg_2355 降車戦闘、戦車が砲撃により無力化した敵装甲車と敵陣地へ向け、96式装輪装甲車から次々と普通科隊員が89式小銃を手に降車しました、歩兵への長距離での戦車脅威から戦車が防護し、精度の高い戦車砲と、肉薄した普通科部隊の敵陣地への正確な同軸連装銃による支援、このように歩兵陣地への攻撃を直接火力支援する戦車、これが協同戦闘です。

Mimg_2359 普通科部隊前へ!、89式小銃を連射しつつ、戦闘に最後の決着をつけるべく普通科部隊の突撃が開始されました。侵略とは、突き詰めれば我が方の土地を収奪し、占領することにあります。従って、戦闘の決着とは我が領土を占領する敵を直接陣地から引き摺りだし、土地を奪還することにあります。

Mimg_2357 降車した小銃班では班長が鋭い号令を飛ばし、部隊を前進させてゆきます。土地の奪還とは嫌がる敵を陣地から引きづりだし、この為には小銃と銃剣が交わる究極の近接戦闘となり、従って普通科が直接戦闘靴で相手の一歩を踏みしめ、掻き出さねばなりません、即ち、戦闘に最後の決着をつけるのは生身の人間、ということ。

Mimg_2367 一際大きな爆発音が仮設敵陣地の方から響きました、特科部隊の突撃支援射撃、その最終弾落下です。ここまで、敵陣地は特科火砲と戦車砲の制圧により、普通科部隊の突撃への防御行動を阻害され、最終弾落下と共に普通科隊員は敵陣地へ肉薄、いわゆる突撃が開始されました。

Mimg_2360 最後の戦闘の決着は普通科、この為に陸上自衛隊普通科では、小銃射撃と銃剣術を最も重視し、併せて体力練成を行うとのことです。現代戦の花形は戦車と航空機であることに異論はありませんが、最後は人と人との激突、小銃射撃は確実に一発必中の連続を図り、銃剣術は一人と一人の戦闘を最後に決し、生き残るための奥義です。

Mimg_2363 普通科隊員が戦車の列線を超越しました、もう戦車砲は使えません、発砲焔とともに砲弾の装弾筒が音速の数倍で弾道周辺に飛び散り、人命に危険を及ぼすためで、ここから戦闘の決着までの瞬間、決して長くはない生命を左右する重要な時間が、個々人の普通科隊員と、相互に支援する小銃班、小隊、中隊の協同により決する。

Mimg_2366 上空を航空部隊が警戒します。空中機動は今位置、携帯地対空ミサイルなどの防空火器が大きく性能向上するとともに広範に配備されているため、補給や、強襲ではなく前進拠点への部隊輸送など、その役割は変化しています、しかし、地形を超越し空中機動を行う意義というものは、薄れていません。

Mimg_2373 最後は体力、平時からの鍛錬が、実戦ならばこの瞬間にものを言うというところ。89式小銃とMINIMI分隊機銃を以て突撃を行った普通科部隊は敵陣地へ到達、反撃を封じ、これを排除すると共に遁走する敵に対し、即座に戦車装甲車とともに戦果拡大へと移ります。攻撃は成功しました。

Mimg_2374 状況終了、撮影は観閲行進の撮影位置から陣地転換したため、望遠レンズにて列の後ろの方から、殆ど勘を頼りに撮影しましたが、まあまあの写真に仕上がりました。北部方面隊隷下部隊の模擬戦は第七師団の東千歳駐屯地祭以外ではこの真駒内駐屯地祭が当方にとって初めて、訓練展示は決して長い時間ではありませんが、こうして見返すと迫力は凄い。来年掲載となる次回からは装備品展示やその他の模様を紹介しましょう。

北大路機関:はるな

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第二次安倍内閣発足 自民公明連立新政権へ期待したい防衛安全保障政策

2012-12-26 23:49:12 | 北大路機関特別企画

◆東日本大震災後の苦境の日本と危機突破

 本日、政権交代が為され第96代内閣総理大臣に安陪晋三自民党総裁が指名されました。

Img_4837 安倍内閣への期待は、低迷する経済を公共事業、金融緩和などの手法を用いてGDPを成長軌道へ戻すことが第一です。何故ならば、防衛費は経済が回復しなければ増額を政治主導で行ったとしても、長期的には国家財政の負担が大きくなり、長い目で見た場合には、かえって破綻への方向へ進んでしまうためです。

G12img_3782 アベノミクス、と呼ばれる一連の経済政策ですが、震災復興と国土強靭化計画を筆頭に我が国は集中した公共事業により成長を取り戻すこととなるでしょう。1929年の世界恐慌に端を発するアメリカのニューディール政策は長期的には景気回復に寄与せず、第二次世界大戦への参戦への財政出動がアメリカ経済を回復させました。

G12img_7385 ある種、国家総動員型の戦争は究極の景気回復となるのですが、我が国は南海トラフ地震という未曽有の脅威に国土を脅かされているという前提に立っています。自然災害との闘争は、国家間の武力衝突と異なり悪意はなく、しかし、予兆なく突然仕掛けてくる戦争、この為の国土強靭化計画は投入した金額は直接人を殺すことなく、むしろ有事の際に人命を救います。

G12img_9019 東日本大震災は一夜にして、イラク戦争米軍戦死者の四倍に迫る多数の人命を奪いました、米軍戦死者は8年間で4792名でしたが、死者行方不明者18800名、災害関連死者数1407名、災害は下手な戦争よりも恐ろしい被害を生む、これへの対処への集中投資は、単なる公共投資の枠を超えた正当性をもつということ。

G12img_3686 一方、国土強靭化と併せ検討願いたいのは国家強靭化、即ち軍事力による直接及び間接的脅威への対応です。我が国は重ねての防衛計画大綱の改定により、欧州の軍縮とそれに合わせた重装備削減の意味を理解せず、地上防衛力の大幅な削減を行いました、欧州は軍備管理の生家もさることながら情報RMAによる選択と集中に合わせ装備の先鋭化を行いコンパクト化を行ったのに対し、我が国は単に数を減らした部分が大きかったわけです。

G12img_9527 例えば、新防衛大綱及び前防衛大綱では柔軟性が大きい普通科の重視を掲げつつ、戦車及び火砲を削減した一方、情報RMA化の重要な情報共有手段と優れた監視能力を兼ね備えた戦車に代わる機械化部隊の主役として各国で配備が進む装甲戦闘車の普及は自衛隊においても必須であるにもかかわらず、現状は見ての通りです。

G12img_1020 併せて防衛費縮減を理由とした航空機を筆頭に急激な調達数削減が量産効果悪化による価格高騰を招き、更に生産数が縮小するという悪循環を生んだ結果、少なくない防衛産業は撤退を検討もしくは決意し、一部の防衛産業は謂れなき損害に損失を蒙り国家を提訴するに至っています、このままでは防衛力の一角を担った防衛産業が破綻してしまう。

G12img_1250_2 この点で、政権交代後の新政権は防衛力の再構築を期待したいところです。特に普通科重視の防衛大綱は、間違ってはないものの狭隘な我が国道路事情は装甲車両の大型化を拒絶します。他方、装甲車両の電装品が占める取得費用での比率は情報RMA化以降情報共有能力付与と、共同交戦能力付与により高く推移し、現状では大型化できない結果での航行防御力の犠牲下に高度な電装品を搭載し続けざるを得ないという状況に至りました。

G12img_3782_2 それならば、元々陸上装備体系の頂点に位置する防御力と打撃力に監視能力を備え、高い不整地突破能力など機動力を有する戦車を、情報収集など情報優位の先兵として利用し、割り切った性能の装甲車両と協同する、という、島国ならではの戦車重視姿勢など検討されるべきで、野党時代に自民党が幾度か発言した防衛大綱及び中期防衛力整備計画の再構成は切望するところ。

G12img_1227 併せて南西諸島防衛における空中機動部隊の重要性は大きく、島嶼部防衛と本土防衛を区分し、機甲戦力を重視すると共に緊急展開部隊としての空中機動部隊の構築を期し、調達中断に近い戦闘ヘリコプターの取得再開や空輸能力の必要水準画定など、メリハリ利く防衛力が整備されなければなりません。

G12img_6462 航空防衛力については、次期戦闘機選定の遅れと、次期戦闘機として遅れて選定された新戦闘機F-35の開発の遅れにより、初飛行から半世紀以上を経たF-4EJを改良し、飛行時間や整備効率などを実任務と共に維持を重要な課題として今日に至ります。しかし、在日米軍への配備が五年後、自衛隊の実運用まで、まだまだ時間を要するでしょう。

G12img_7248 これは見通し無き政治主導により、自民党政権時代にときの防衛庁長官により生産が中止されたF-2の影響が大きい。仮に必要とされるF-4EJ二個飛行隊分をF-2により暫定代替し、F-35配備開始後、一個飛行隊を解体し既存の三個飛行隊のF-2を18機編成から24機編成とすれば無駄は無く、もう一個飛行隊を偵察航空隊などへ改編することはできたはずです。今や覆水盆に返らずですが、再発防止を含んだ長期展望に依拠する装備計画は考えられねばなりません。

G12img_6342 他方、北朝鮮ミサイル事案と共にその都度浮かぶ策源地攻撃能力ですが、航空自衛隊は航空優勢確保を念頭とした装備体系を有し、航空阻止や航空打撃戦を大きく検討してきませんでしたし、全ての飛行隊が対領空侵犯措置任務に対応しています。将来的には、憲法九条とも絡む問題ですが、この視点を航空阻止専門の飛行隊創設など、考えられるべきでしょう。そして九条改憲ありきではなく、その必要から改憲の是非、と物事は進むべき。

G12img_4954 海上防衛については、海洋の自由が確保されてこそ、我が国は経済成長の端緒を見出すことが出来ます。一方で、予算不足は旧式護衛艦の代替艦建造を許さず、充足率の低下は艦艇稼働率に相当の無理を敷いています。政治主導により画定された防衛計画の大綱を維持する予算を政治が確保し得ない、とはなんとも変な話ではありますが、責任ある政治、というものは行動で示されるべきでしょう。

G12img_5417 当方は繰り返し、八八艦隊として、ヘリコプター搭載護衛艦八隻イージス艦八隻の護衛艦隊の必要性を示していますが、この視点は我が国隣国の中に海洋進出と共に海洋の占有という国際公序への重大な背信行為を企図する国への明確なメッセージとなります。無論、これは一案ではありますが、海洋の自由を維持し、我が国領域の保全に寄与する具体的な施策が見たい。

G12img_4118 併せて防衛力と防衛交流ですが、本年は日中国交正常化40周年であると共に日台断交40周年となりました。人口2300万と世界24位のGDPを有する台湾を独立国として扱わない現状は果たしてどうなのか、周辺国との平和共存を実現するには、こうした、これまでの古い自民党が忌避してきた問題についても一考の余地はあるのではないでしょうか。

G12img_4857 この点で、我が国は憲法九条に基づく平和主義を教条的に扱いすぎたのではないかという懸念を抱くほどに、実のところ外交から強制力というものを排除しすぎた結果、非常に曖昧な世界政治への関与を行わざるを得なかった部分が少なからずあるように思います。無論、国家の仕組みを明示した、構造がconstitutionであり、憲法がConstitutionなのですから、運用にこそ問題はあるのですが、そもそも立憲の原点に立ち戻った世界政治への関与はあり得ると考えます。

G12img_1970 箇条書きに他ならない散文的な表現の羅列とはなりましたが、新内閣は危機突破内閣を自称しています。一方で主導権無き政治主導からの政権交代ではありますが、三年間の主導権無き政治主導は我が国に多くの歪みを残し下野しましたが、残した課題は膨大、文字通り課題は山積していますが、この突破を心から応援したいところです。

北大路機関:はるな

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尖閣諸島防衛への一視点⑥ 護衛艦隊八八艦隊化による南西諸島DDH巡回体制が必要だ

2012-12-25 23:49:30 | 防衛・安全保障

◆ヘリコプター搭載護衛艦8隻&イージス艦8隻

 尖閣諸島への領空侵犯、尖閣諸島に近い先島諸島は中国の膨大な規模を有する短射程弾道弾の射程圏内にあり、ここに戦闘機部隊の基地を建設することは非現実的、と前回解説しました。

Nimg_4991 それよりは自由に洋上を航行する護衛艦から航空機を緊急発進させた方が良い。尖閣諸島を含む沖縄県南西海域への領空侵犯事案及び国籍不明機接近ですが、この今後予断を許さない状況変化への自衛隊が採り得る選択肢は、ヘリコプター搭載護衛艦、即ちDDHの増勢による南西方面哨戒任務の態勢構築にある、と考えます。一定数のDDHが確保できたのならば、常駐に近い体制でのDDH展開は可能でしょう。

Nimg_0819 八八艦隊、北大路機関では2010年から定期的に“八八艦隊”の必要性を提唱してまいりました。ヘリコプター搭載護衛艦八隻とイージス艦八隻を整備する、というもの。これは、現在ある護衛隊軍護衛隊を全て同じ編制と出来ないか、という視点から導き出した案です。現在の護衛隊群は、2008年の護衛艦隊改編により、護衛艦隊を構成する四個護衛隊群の群編制が、それまでの能力別三個隊編成から機能別二個編成となり、各護衛隊群は、DDHを中心とする護衛隊、ミサイル護衛艦DDGを中心とする護衛隊へ改編されました。

Nimg_4258 DDH護衛隊は、ヘリコプター搭載護衛艦一隻・ミサイル護衛艦一隻・汎用護衛艦二隻を併せた四隻を以て編成、DDG護衛隊はイージス艦としてミサイル護衛艦一隻・汎用護衛艦三隻の四隻を以て編成、護衛艦隊隷下の護衛隊群はこの二個護衛隊を保有し、護衛艦隊全体では、DDH護衛隊四個とDDG護衛隊四個が整備されています。

Nimg_0830 DDHは現在、ひゅうが型護衛艦、ひゅうが、いせ、に加え新たに平成22年度護衛艦として22DDHの建造が進められており、全通飛行甲板を有する空母型護衛艦として更に二隻が建造されることとなっています。このDDHを中心とする護衛隊は非常に大きな対潜掃討能力に加え、多数の航空機運用能力を以て多用途任務への対応が期待されています。

Nimg_8517 DDGを中心とする護衛隊四個は、こんごう型ミサイル護衛艦、こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい、の四隻が弾道ミサイル迎撃能力を有するMD対応改修を受けているため、イージス艦の多目標同時対処能力を活かした広域防空任務として艦隊防空を担うと共に、我が国本土を狙う弾道ミサイルに対し、長長射程のSM-3によるミサイル防衛任務が期待されているところ。

Nimg_0256 一方、海上自衛隊にはイージス艦として、あたご型の、あたご、あしがら、が運用されており、これはDDH護衛隊へ配備されています。当初計画ではMD対応改修が予定されていませんでしたが、計画は改められ能力付与へと転換、結果、DDH護衛隊においてもミサイル防衛任務への対応が求められることになるでしょう。

Img_4550 海上自衛隊はイージスシステム搭載のミサイル護衛艦六隻のほか、従来型と言われるターターシステム搭載艦として、ミサイル護衛艦はたかぜ型を二隻保有、現在延命改修予算が認められたため艦齢は30年以上の運用が見込まれていますが、将来的にはイージス艦へ置き換えられ、弾道ミサイル防衛へも対応が求められることと思います。つまり、全ての護衛隊群護衛隊へイージス艦が配備される。

Img_2168 それならば、護衛艦隊に八個ある護衛隊の能力を均一化する観点からDDG護衛隊に対してもヘリコプター搭載護衛艦の配備を行う方向で調整し、現在四隻が運用されるヘリコプター搭載護衛艦を、八隻体制へ将来的に拡充したならば、ヘリコプター搭載護衛艦八隻イージス艦八隻からなる八八艦隊、かつて帝国海軍が夢見た超弩級戦艦八隻大型巡洋戦艦八隻を以て編成する八八艦隊には及ばないものの、かなり広い任務に対応する護衛艦隊と改編できるのではないでしょうか。

Nimg_2500 広い任務とは、尖閣諸島周辺に遊弋し、大陸側からの領空侵犯など対両工侵犯措置任務へ対応することを含みます。現在は、那覇基地より航空自衛隊第83航空隊のF-15Jが対応しているのですが、那覇基地から尖閣諸島まで360kmあり、もちろん音速の二倍以上の速力を誇るF-15Jには決して大きすぎる距離ではないのですが、即応性は現地にDDHが展開していた方が高いことに違いありません。

Nimg_7055 ヘリコプター搭載護衛艦は、全通飛行甲板を採用することで、様々な航空機への運用に対応します。現在は潜水艦対処や索敵に小型艦艇対処を行うSH-60J/K哨戒ヘリコプターと掃海任務に輸送任務等に対応するMCH-101掃海輸送ヘリコプターの搭載を軸に必要に応じ様々な航空機を搭載する、としていますが、搭載機種により究極の多用途艦になるということ。

Nimg_2125 現時点では具体的政策への検討に反映されていませんが、AV-8ハリアーのような航空機を運用することは可能でしょう。現在ハリアーはイギリスの早期退役分が米海兵隊に取得され、機体そのものも生産終了からかなり経つため入手は何年飛べるのか状態不明の中古機のみと、どの導入に関して現実性を欠くのですが、この後継機となるF-35B,垂直離着陸も可能なF-35Bを、甲板などの改修とともに搭載することは可能と考えます。

Img_1244 もちろん、ヘリコプター搭載護衛艦は、米正規空母ニミッツ級ほど大きくはありません、ひゅうが型で満載排水量19000t、22DDHは大型化しましたが25000tから27000tです。しかし、艦内格納庫は、ひゅうが型でSH-60J/K並列三機の収容が可能であり、諸外国の航空母艦や軽空母に倣い甲板係留を行えば、SH-60J/KやMCH-101を搭載しつつ、5~8機のF-35Bの搭載は、物理的に可能です。ちなみに、かつてハリアー運用艦の代名詞であったイギリスのインヴィンシブル級軽空母の平時におけるハリアー定数は5機でした。

Img_5765s 艦隊防空のみでしたらイージス艦が最も妥当ですが、国籍不明機に警告と強制退去、場合によっては強制着陸を命じられるのは航空機だけ、ミサイルは撃墜か否かの二択しかありません。領空侵犯を行った場合、撃墜も選択肢にはあるのですが、撃墜が国際法上の自衛権発動要件になるかは微妙であり、言い換えれば撃墜行動を以て相手に自衛権発動要件を与えることにもなり、結果、各国は対空ミサイルだけではなく航空機を領空侵犯対処に用いているのです。

Aimg_3277 ここで気になるのが、八隻で十分なのか、という事です。ただ、ヘリコプター搭載護衛艦による先島諸島周辺巡回、海上自衛隊は小泉内閣時代のインド洋対テロ海上阻止行動給油任務に六隻しかない補給艦をローテーションで派遣してきました。距離的にも先島諸島は佐世保基地など本土の主要基地から近く、沖縄には沖縄基地隊の置かれる勝連基地があり、実現可能性は八隻ならば充分ではないでしょうか。

Aimg_3329 自衛隊は現在統合運用の試みが進められていますが、対領空侵犯措置任務にあたるバッジシステムと海幕情報システムを連動させ、護衛艦から航空機を緊急発進させ、対処する、こうした運用も可能性は検討されるべきです。特にこうした任務は、対空ミサイルでは警告を行えないため、鉄壁の防空力を有すると表現されるイージス艦では対応できません、八八艦隊だからこそ、ということ。

Nimg_1782 これはヴェトナム戦争中に米海軍がヴェトナム沖に複数の航空母艦展開海域を設け、様々な突発的事態へ艦載機を出動させる体制を構築したヤンキーステーションを思い出させるもの。併せて現在中国海軍は航空母艦の実戦化を急いでおり、恐らくその能力とは別に砲艦外交的な運用が為されることでしょう、これは軍事的威力が絶無でも政治的威力は大きいため、DDHの運用はこの圧力への対抗手段ともなることは、忘れてはなりません。

Nimg_2162 もちろん、制約は大きいです。簡単に海上自衛隊へF-35B,と書きましたが、まず取得費用は大きい。しかし、この機体にしかできない任務という観点から必要ともいえます。しかし、重ねて、今度は海上自衛隊にはP-3Cといった固定翼機以外、戦闘機のような装備は教育体系にない。

Nimg_7997 それだけではなく、搭乗員養成に必要なT-4練習機も、もちろん訓練体系もありません。これを一から構築することは並ならぬ努力と予算と人員と政治の理解が必要ということになります。そして、予算的裏付けを行うべく、政治主導と財務当局との調整が無ければ、計画が破綻するだけではなく、海上自衛隊の装備体系にも大きな影響を及ぼしかねません。

Nimg_3143 ただし、これしか方法が無いのではないか、とも言えます。差k島初頭、石垣島か下地島に航空基地を建設する、という代替案はあり得るのですが、前述の通り膨大な中国短距離弾道弾の射程内にある先島諸島では、最初の一撃、発射から十数分で滑走路が破壊され、基地機能は喪失する。

Nimg_7098 基地のあらゆる機能を地下シェルターに収め、予備滑走路を大量に確保し、高射隊複数の高射群を新編すれば、多少は維持できるのかもしれませんが、例えば先島諸島で最も航路の余剰がある下地島空港は海抜7.5m、地下10mに施設を置けば高潮時や沖縄トラフ地震時に全滅しかねませんので、飛行場全体を10m程度、弾道弾に耐えるには通王の土砂ではなく、コンクリートで嵩上げせねばなりません。

Img_6803_1p そして、標高45mの宮古島空港、標高24mの石垣島空港ならば物理的に航空機を津波から防護しつつ地下施設を構築できるのですが、いずれも周辺が住宅街で航空航路が過密状態でありながら拡張できず問題でなっている場所ですし、これをクリアしたとして宮古島にしろ石垣島にしろ、これをどう有事に際して補給維持するか。ガダルカナル強行輸送のような困難を抱えていることは確かで、空輸支援だけで基地を維持するに十分な輸送機数と、基地一個まるごと地下に構築する予算、1個高射群まるごと新設しての配置、いったい幾らかかるのでしょうか。

Nimg_8112 見積もりは当方では出来かねるのですが、一兆円二兆円、そんな予算があれば中距離弾道弾の射程内にある那覇基地や、米軍が有事の際には基地機能喪失による放棄の可能性を示唆した嘉手納基地を中距離弾道弾の脅威から守らなければ、南西諸島全般の防衛、我が国のシーレーン全般の維持に支障を来すことを忘れてはならない。

Nimg_8988 それならば、先島諸島へは地対艦ミサイル連隊や航空自衛隊宮古島分屯基地への基地防空隊創設などにより防備を固めると共に、無謀な施策を提示し、南西諸島の南端い航空基地の維持などの一人消耗戦を演じれば仮想敵の思うつぼ、現実的に有事に機能する装備体系を構築せねば、自衛隊全体の任務遂行に支障を来してしまうでしょう。

Nimg_8382 基地機能の絶対維持ではなく、都市防空ならば、第15旅団の新設される高射特科連隊に、連隊本部のレーダー支援を受けずとも運用できる野戦防空部隊を創設して必要に応じ派遣し防空に充てるという方法でも対応できるのですし、宮古島分屯基地へ、那覇の高射隊を一部派遣するかたちでも対応できます。

Nimg_2367 少なくとも先島諸島に戦闘機の飛行隊を配備するという案は仮想敵に貴重な一個飛行隊を初動戦果に献上するようなもので、しかも航空基地を普通科連隊駐屯地よりも敵に近い地域へ、戦闘機部隊を展開するなんて冗談でしょう、というくらいですが、有事の際には第15旅団から部隊を展開させる、という運用を行うのですから実質先島諸島に戦闘機を配備する、ということは冷戦時代に名寄以北に千歳基地を移駐するようなことになってしまう。

Nimg_2271 冷戦時代、航空自衛隊は千歳基地以北に戦闘機を置きませんでした、開戦第一撃で破壊される場所に戦闘機を置いてはならない。中には、冷戦時代道央に自衛隊が集中していたのは内陸誘致戦略のため、という指摘をなさる方もいるようですが、あれは陸上自衛隊の運用、航空自衛隊は内陸誘致戦略をとっていません。

Nimg_3184 短距離弾道弾は年々増大しています、しかし、那覇基地ならばその射程外にあり、無意味な前線飛行場に、前線運用に向かない航空自衛隊の戦闘機を保全し維持するための予算を投じるならば、その予算で早期警戒管制機の増勢や空中給油輸送機の部隊増強など、先にやらねばならない項目は数多くあるのです。

Img_5162 短距離弾道弾の脅威ですが、ヘリコプター搭載護衛艦であれば、動くことのできない陸上の航空基地と異なり自由に航行することが可能です。また、前述のようにイージス艦全てが弾道ミサイル防衛対応となる展望があり、全ての護衛隊に配備されているミサイル護衛艦は将来的にイージス艦となるのですから、中国が開発を進めているという誘導方式が不明ではあり、実用性に疑いはありつつ不気味な新兵器、対艦弾道弾へも生存性は高まるでしょう。

Img_1609 併せて自虐的と批判されるかもしれませんが、海上にヘリコプター搭載護衛艦が航空基地としてF-35Bを運用するのであれば、中国の短距離弾道弾は海上に向けられます、これは即ち、国民の生活する先島諸島へ向けられ得る弾道弾を護衛艦が引き受けられるわけで、身を以て国民の生命財産を守る、ということにもなるわけです。

Nimg_5240 現状の二倍ものヘリコプター搭載護衛艦、建造費だけで四隻ならば4400億円に達し、艦載機も各艦5機で航空隊を編成したとしても予備機を含め50機、5000億円に達します。現在の護衛艦は、旧式艦の代替艦建造もままならないにもかかわらず、余りに非現実的ではないか、という批判は反論のし様もありません。はつゆき型、あさぎり型、あぶくま型、これら後継艦は一隻700億円前後、毎年一隻、可能ならば二隻必要なのですから。

Nimg_3101 しかし、護衛艦の建造もさることながら、現実的に大陸からの圧力が増大し、航空母艦による恫喝が行われる近い将来、我が国が主権を維持し、海洋自由航行による繁栄を享受するにはどうするのか、こうした視点から、考えるべき部分は多くなっているのだ、そういえるのではないでしょうか、明日発足する安陪内閣には、こうした視点を大事にしてほしい、切に願う次第です。

北大路機関:はるな

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望⑩ 戦時備蓄と国産能力

2012-12-24 23:37:22 | 防衛・安全保障

◆輸入転換の致命的弊害と政策としての輸出

 脅迫されてこその言論、とは尊敬する先輩のお話ですが、尖閣諸島防衛に関する連載で駅のホームでは気を付けるよう、との書き込みを頂きました、しかし、本日も連載記事です。

Dimg_0493 富士学校祭にて人気を博した90式戦車体験乗車、戦車の迫力を体感する瞬間のスナップですが皆様お気づきでしょうか、背景の黒い山を、筒状の容器が文字通り山と積まれていますが、そうです、これは砲弾コンテナです。富士学校は教育訓練へ多数の弾薬を消費する事で知られていますが、遠くから望見できる砲弾コンテナの山、凄い。

Dimg_6051 本連載のコメントでもご指摘を頂きましたが、有事とは文字通り弾薬の消費合戦となり、これは精密誘導火器が普及しているという今日にあっても弾薬消費が平時とはけた違い、それも数桁違い、という状況から抜け出すことはできません、戦車は毎年の射撃競技会や点検射撃等に弾薬を消費しますが、それにしても50発程度、しかし、50発は戦車にとり定数弾薬前後でしなありません。

Dimg_5297 一方、120mm砲弾や105mm砲弾のような戦車砲弾は、NATO規格です。155mm砲弾もNATO規格砲弾が運用を前提としていますし、長距離打撃ロケットのMLRSや広域防空用ペトリオットミサイル、護衛艦のハープーン艦対艦ミサイル、シースパロー艦対空ミサイル、127mm砲弾や76mm砲弾もNATO規格で、これも米軍の秋月や針尾島弾薬庫に数万t単位で備蓄されています。

Dimg_5141 しかし、国産の高性能な地対艦ミサイル、対戦車ミサイルなどは、ヘリコプターに搭載する一部を例外として海外製の、特に米軍が備蓄している誘導弾と共通性はありませんし、発射器は海外製ミサイルの搭載や誘導に対応していません、即ち、事前備蓄を行う義務を怠れば、即座に有事の際に備蓄を使い果たしてしまう、ということ。

Dimg_1779 我が国のミサイルは、国産装備に関して、三菱電機や東芝と川崎重工等が性能面では世界最高水準のものを国産していますが、生産数は、短射程空対空ミサイルや中射程空対空ミサイルで毎年20~30発程度、予算が要求されています。発射機とともに初度調達品にミサイルが含まれているので、年間生産数はもっと多いのだと考えることも出来るのですが、20年程度備蓄しても、×20でも多いといえる数字でしょうか。

Dimg_9360 F-4EJやF-15Jは短射程空対空ミサイル四発と中射程空対空ミサイル四発の計八発を搭載可能で、F-15だけで約200機、教育所要や在場予備機を無視した単純計算なのですが一回の出撃で短射程空対空ミサイル800発、中射程空対空ミサイル800発の計1600発を携行してゆくとなります。F-2支援戦闘機も飛行隊配備数が54機、それぞれASM-2を四発搭載できますので、三回出撃を見込んだ場合で648発必要になる。

Dimg_8882 大きな問題ですが、空対艦ミサイルは別として空対空ミサイルは国産のAAM-3やAAM-4、最新のAAM-5のほか、アメリカ製のAIM-9やAIM-120等の運用を念頭としていますので、国内備蓄が枯渇すれば、安保条約に基づく相互協定に基づき、緊急取得することも出来ます。しかし、前述の通り、国産独自の誘導弾については、この手法は出来ません。

Dimg_8743 国産装備ですが、解決策としては、輸出を戦略的に行う、という方策があります。一部には戦略的とは具体性を欠いた政策の方便としてとらえるむきもあるようですが、本論で述べる戦略的とは、経済効率を無視して、という意味を以て用いています。即ち、経済効率からは、国産である必然性は無いのですけれども、輸出用の在庫というかたちで過剰在庫を意図的に抱え、有事の際には国内用に用いる、ということ。

Img_9725_1 この方式は、イスラエルが用いています。イスラエルは周辺国との関係から即応体制を維持していますが、同時に過去には国際関係の影響から海外武器を取得することが出来なくなった事例があり、その経験上兵器の国産化を進めてきました。このなかで、兵器の輸出を重点的に進め、平時の国産能力を高めると共に有事の備蓄を進めてきました。日本にもこの方式は参考とならないでしょうか。

Img_7964 もちろん、経済効率は結果的に無視されることになります。メーカーに輸出できるか非常に怪しい装備品を備蓄させる事は出来ませんので、国が一括して取得するか、損失補てんなどを行い企業に損害の及ばない法体制を構築し、取得した装備品を国が主体となって海外への供給を管理する、という方策などが必要となるでしょう。

Dimg_9421 戦時備蓄と国産を考えた場合、以上のような手法が必要となるのですが他方で、誘導弾は国内で生産し供給を受けることが出来る、という基盤に依拠して防衛政策、弾薬備蓄はもちろん、防衛予算での調達体制を構築していますので、これは自動的に輸入に依拠することは出来なくなった、ということにもなります。

Nimg_1403 どういう意味か、それは毎年20発程度の取得で各種ミサイルを備蓄してゆく、という方式を採っているため、例えば海外製装備に転換する場合も、これを一挙に毎年数千発規模に展開させる、という事は出来ないという意味です。ミサイルの調達ですが、空対空ミサイルなどは海外の事例を見れば一括数百発、対戦車ミサイルであれば一度の契約で千発単位、という契約が行われているのは報道される通り。

Mimg_5979 日本とは桁の違う数量調達は、生産期間が限られる可能性があり、輸入は海外に業に多年度継続調達を行わせられない、という問題に依拠していますし、追加調達できない可能性もあり、これが多数調達に反映されるわけです。この方式、大量調達で安く取得できるならば良策にも思える施策ですが、ミサイルには耐用年数があります、過剰備蓄は有事さえ起きなければ、という視点にもつながるでしょう。

Iimg_9050 これは有事への視点が無い、という位置論で切り捨てられるほど、我が国は予算面で有事を想定していなかったことは東日本大震災で証明されているわけで、こうなれば次善の策として国産能力を維持し、年々備蓄数を増勢してゆく、という手段以外にとれることはないでしょう、言い換えれば海外製を取得すれば結局多数を備蓄できず、少数で有事の際に瞬時に備蓄を枯渇させてしまうだけなのですから。

Img_2109 もっとも、海外製装備の中で、全ての装備体系を米軍と合致させるならば、この問題は回避できるわけで、装備体系としては航空自衛隊などがこの方式に近い装備体系と運用概念を持っているようにも見えます。ただ、この手法は米軍の運用体系と、特に陸上自衛隊と海上自衛隊に大きな差異があることから適用には限度があるのですが。

Img_1405 こうしてみてゆきますと、海外製装備を特に誘導弾の面で取得できる土壌が無い、、もちろん、TOWを千発、スパイクMRを二千発、AIM-9を三千発、とか年ごとに取得できる文化が定着したならば話は違ってくるのですけれども。一方で、誘導弾の性能に関しては、誘導方式などが世代的に優れた技術を実用化していますので、性能面では優れている、という事もいえるのですが。

Dimg_8620 国内仕様について、車両では道路法の車幅2.5m規制という逃れられない特殊性があるので、海外製の3m前後の装甲車などは導入できない、という視点を示しました。自衛隊なら巧くやってくれる、というお言葉もいただきましたが質問です、この写真は2.48mの車両同士の通行なのですが、各車が3m幅だったばあい、衝突しないためにはどうすればいいでしょうか。模範解答は運転しないこと、日本で使わないでしょう、だから使えない。

Img_2653 この特殊性ですが、同じく誘導弾では特殊性がある装備体系を構築してきたのですが、運おうでゃ日本の方が先進的だが生産数が多くない、という部分を除き、運用面での制約は大きくありません。結果的に多数を備蓄できない態勢を構築してしまっているのならば、輸出用という構図を加え最低必要定数を大きくし、結果有事に備える方策にもなる、という方法がありえるではないでしょうか。

Dimg_4173 制度論を少し俯瞰すれば革新的転換は簡単ではありません。海外製調達は備蓄の問題から国産品とは根本的に異なる装備数を取得することは難しいのです。無理に政治主導で制度を転換させようとすれば、三年間の民主党政治が多く多用した手法ですので、結果がどうなるか、お分かり頂けるやもしれません、精度は必然性が手構築されたものですから。
Dimg_6524 これまで防衛産業は稼働率等の面から重要性を指摘してきましたが、同時に防衛産業の調達方式が国内の視点から、という認識の下で防衛当局はもちろん、財務当局からも認識され、一つの常態化しています。そうした意味で、国産能力は戦略的に利用されるべきですし、戦時備蓄の観点からも国内防衛産業と国内、つまり日本国家は共存共栄せざるを得ない実情があり、大切にしなければならない、そう考える次第です。

北大路機関:はるな

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新田原基地航空祭2011詳報③ 空往く大編隊F-4EJ戦闘機&F-15J戦闘機&T-4練習機

2012-12-23 23:34:19 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆大編隊基地上空航過!

 沖縄特集により若干空きがありましたが、天皇誕生日奉祝を期して新田原基地航空祭の特集記事です。

Nimg_7981 重なる様々なエンジン音が待機を震わせます、航空祭のオープニングフライトを飾った航空救難団新田原救難隊の飛行に続き、新田原基地の戦闘機と練習機という各種航空機が編隊飛行により基地上空へと近づいてきます、快晴に恵まれ、かなり遠距離からちかづいてくるのが確認できました。

Nimg_8175_1 最初は点というか、陽炎のようになにかが空を動いているのを目の錯覚か、と超望遠レンズ越しに見るのですが、これが点と点との集まりという事が分かり始め、徐々に航空機の編隊が近づき、カメラを持たず航空祭を楽しむ方々も空を指さし、接近を撮影ポイント全体の共有知として認識してゆく。

Nimg_8179_1 編隊飛行の先頭を往くのは第五航空団第301飛行隊のF-4EJ改要撃機三機編隊、F-4通称ファントムは遠くからでもそれと分かる機体のシルエットで、南九州新田原基地唯一の実戦部隊で、対領空侵犯措置に当たる実戦部隊のF-4です。そろそろ後継機がどうなるのか、F-35が気になりますが、それはともかく、撮影した2011年はF-4EJ型初飛行40周年という記念すべき年でした。

Nimg_8187_1 実戦部隊のF-4の三機編隊飛行を見るのはこれが初めてでした、当方が足を運ぶ航空祭は小松基地、岐阜基地、小牧基地、岩国基地、入間基地、横田基地、岩国で新田原のF-4が二機編隊で航過飛行を行いましたが、このほかは実験部隊のF-4ばかり、観艦式では近年F-4は参加しませんし、当方が小松に脚を運んだ頃には既にF-15へ機種転換終了後、初物は嬉しい。

Nimg_8192_1 F-15イーグルの三機編隊、航空教育集団飛行教育航空隊第23飛行隊のF-15,元々この飛行隊が第202飛行隊としてF-4と共に第五航空団二個飛行隊を構成していましたが、防衛計画の大綱改訂に伴う戦闘機要撃飛行隊の再編によって教育航空部隊へと改編され、今に至ります、考えてみれば、この第23飛行隊は日本唯一のF-15による教育飛行隊、ということになる。

Nimg_8194_1 航空自衛隊は全ての要撃飛行隊が防衛管区を持つ運用体制となっており、基本的に予備の飛行隊がありませんでした、脅威や損耗の増大により増援が必要となった場合は各飛行隊から少数を抽出して対応するしかなかったのですが、第23飛行隊は有事の際に航空総隊に運用を一時的に移管し、増援が必要な地域へ全国に機動展開する予備として運用できるやもしれません。

Nimg_8198_1 第五航空団の指揮連絡や維持訓練等に活躍するT-4練習機、国産練習機として200機以上が生産されたジェット練習機です。操縦性が良く取得費用も手ごろな国産機なのですが、初飛行は1985年ですから、そろそろ後継機というものを考えなければならない時期が近付いているのかもしれませんね。

Nimg_8199_1 航空自衛隊は第四世代戦闘機までの送受要員を想定しT-4の要求仕様を定めています、当時は第四世代機が最新型であったわけですが。この点、次期練習機はグラスコックピットの採用を筆頭に第五世代戦闘機の要員養成に対応する機体が求められ、場合によっては戦闘機の航空部隊の戦闘飛行隊改編を見込み、ある程度高等練習機として戦闘機要員養成を重視した性能が必要となるのでしょう。

Nimg_8201_1 飛行教導隊、全国の戦闘機部隊に対し仮設敵を担う精鋭部隊で、通常の戦闘機部隊では200時間前後と言われる飛行時間に対し、650時間程度飛行し、技量を磨いているとのこと。しかも、本人が希望して転属するのではなく、優秀な搭乗員を飛行教導隊が選抜し、引き抜く態勢を取っているのだとか。

Nimg_8210_1 編隊が去ってゆきます、前述の戦略予備、という考え方はこちらの方が妥当でしょうか、全国の飛行隊を空戦機動力の観点から鍛え上げるために最優秀の乗員を集めているのですから、こういったかたちで、F-4EJ改三機、F-15六機、T-4三機の十二機編隊にて新田原基地航空祭編隊飛行が完了しました。

Nimg_8211_1 写真で紹介すると長くなりましたが、飛行は一瞬でした。第一回でも掲載しましたが、初めての航空祭で道路状況なども分からず、遮二無二順光の撮影位置まで折り畳み式自転車により展開しましたが、この情景を撮影できただけでも目的の一つが達成、早い時間帯の編隊飛行でしたが、間に合ってよかった。

北大路機関:はるな

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尖閣諸島は日米安保適用地域 アメリカ連邦議会国防権限法可決

2012-12-22 23:13:58 | 国際・政治

◆尖閣諸島は日本施政下

 アメリカ連邦議会は、中国が領有権を主張する我が国の尖閣諸島について、日米安全保障条約の適用地域であるとして国防権限法へ明記しました。

Img_9085_1 国防権限法は国防予算の根拠となる法律で、アメリカ政府としてはこの国防権限法を以て現在の尖閣諸島は日本施政下にあるため、これが第三国の一方的行為により変更されることはない、としました。これは尖閣諸島に対し軍事行動が行われた際には、自衛隊と共に米軍が行動を行うことを意味します。

Img_6921_1 日米安全保障条約第五条には我が国施政下の地域に対する攻撃に対して防衛義務が生じるとされており、これは集団的自衛権の行使と共に同盟条約と憲法のどちらが優位かについての討議の場となってきた条文ではありますが、今回はこの条文により尖閣問題が最悪の状況へ転換することに一定の抑止力を発揮できるといえるでしょう。

Img_1977 併せてこれを以て軍事行動の実子を奨励するものではなく外交上の解決を求めている付帯と共に明記されているとのこと。アメリカ政府はこれまで、領土問題に対し一方への姿勢を外交上示すことは稀でしたが、今回は施政権が及んでいる、という部分が重視され、国防権限法への盛り込みとなりました。

北大路機関:はるな

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