北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【25】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(4)(2012-10-08)

2024-06-30 20:24:23 | 海上自衛隊 催事
■台湾有事は日本有事
 自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略、この視座に関する重要な部分は抑止力を構築する事で軍事力による現状変更を試みる周辺国に対して堪えがたいリスクを突き付けるところにあります。

 台湾有事は日本有事、という言葉がありましたが日本の防衛について認識しなければならないのはこの点で、過去の戦争を反省し、とか、太平洋戦争の反省、という言葉を安穏と使うならば、まさに、台湾が権威主義国家の圏内に収まるリスクを直視すべきだ。

 太平洋戦争の反省、というならばなぜ日本は本土決戦で敗北したわけでもないにも係わらず無条件降伏というポツダム宣言受諾を強いられたのかという理由を考えねばなりません、それは沖縄陥落によりシーレーンが完全に途絶され、戦争継続が不可能となった。

 海洋自由原則を堅持するのか海洋閉塞主義をとるのか、要するにマハン的ドクトリンかテルピッツ的アプローチか、ということになるのですけれども接近拒否領域阻止というものはどのように解釈しても海洋自由原則と理解することはできません。

 超限戦ドクトリンという、中国は過去に非対称型戦争モデルに関する研究論文を発表しまして、これは別に人民解放軍が採用していると確実に発表されたものではないのですが認知戦の専門部隊が存在するなど、超限戦ドクトリンは少なくとも具現化している。

 シーレーンの視点から考えますと、超限戦ドクトリンでは民間船はもちろん、なにしろ海上民兵を制度化している国なのですから民間船こそがソフトターゲットとして攻撃を受けるため、船団護衛、というわけではありませんが何らかの防衛措置は必要で。

 船団護衛は、これも日本の場合はアデン湾海賊対処任務において痛感したことなのでしょうが、船団を組むための待機期間を商船が待つことは少なく、結局海上自衛隊の護衛船団への参加を要望する国よりも哨戒海域だけをとおる商船が続出しています。

 紅海危機では、これはまだ自衛隊が参加していない任務ですが、フーシ派によるミサイル攻撃や武装ボート攻撃にヘリボーン強襲という事態が発生しますと、まだ運行している船会社は多いことたしかなのですけれども、大手海運の中には航路閉鎖も。

 スエズ運河経由ではなく喜望峰経由として、輸送運賃の値上げを要請するという。日本の場合は、マラッカ海峡ではなくオーストラリア南方航路を航行しマリアナ諸島以東を航行することでかなりミサイル危険海域を回避する事は可能となりますが。

 北太平洋航路、現実的には安全な航路はここだけとなるのかもしれません、中東からのタンカー経路はインド洋から喜望峰とマゼラン海峡を経由する航路、というところでしょうか。しかしそれでいても本州主要港が結局はミサイル圏内に入っている。

 シーレーン防衛、接近拒否領域阻止のミサイル圏外となりますと消去法で選択肢を考えれば北極海航路となりますが、一年間の半分近くを流氷に封じ込められ、しかもロシアのすぐとなりを航行する航路というものにすべてをかけるにはリスクが大きすぎます。

 米中全面戦争となった場合でも、日本が中立を宣言した場合はシーレーンを維持できるのではないか、という視点は少々同盟関係というものを忘れているうっかりさん意見といわざるを得ず、日本運行船がバベルマンデブ海峡でフーシ派に攻撃されたのと同じ。

 シーレーン防衛は北太平洋航路のみに集中する、こうした選択肢しかなくなるのでしょうか。ただ、東南アジアと日本本土を結ぶサプライチェーンを北米経由とするのはあきらかに無理があるもので、京都から大阪に行く際に舞鶴豊岡経由とするようなもの。

 すると、中国側の長距離打撃力を破壊してシーレーンを航行できるような体制を構築するべきか、と問われますとこれも無理があるよう思えます、なにしろ感情に搭載できる装備には限界がありますので、昔話のアーセナルシップを出さねばならない。

 アーセナルシップというのは1990年代から2000年代初頭に構想されたアメリカ海軍の研究で、VLSしか積まないステルス艦を建造して、いわばミサイルの補給艦のように、その艦は運行しているだけですが、ほかの艦艇から発射の管制を受けるという。

 VLSだけしか搭載しない構想で、一応自衛用に艦砲だけは積もう的な案もありましたが、そのぶんVLSは500セルを搭載する計画でした。艦長はミサイル発射を直接命令できないだけにずいぶんとやりがいのない艦になるとはいわれていたものですけれど。

 ミサイルの不足というものは紅海でのフーシ派ミサイル攻撃などで問題が顕在化しているところで、冷戦時代にはソ連軍のミサイル飽和攻撃を警戒してイージス艦などはVLSに折りたたみ式クレーンを内蔵するなど再装填という作業をそうていしていましたが。

 ソ連軍によるミサイル飽和攻撃という脅威が過去のものとなりますとそうした必要性は低下し、いや、船団護衛にあたるミサイルフリゲイトであったOHペリー級からMk13発射装置が取り除かれスタンダードミサイルが撤去されるなど軽武装化がすすみました。

 冷戦後、平和の配当、という言葉がありましたが欧州各国はもう欧州正面での第三次世界大戦はおきないだろうという楽観論、2022年以降は楽観論は消えつつあるが、こうしたなかでの大規模軍縮を進めていて、アメリカもその流れに載ったという構図で。

 アメリカが防衛力を立て直すならば、こうした危惧も過去のものとなるのかもしれませんが、それには、ロッキードマーティンはペトリオットミサイルの生産数を2021年では350発まで縮小していた、2025年までに650発まで増強する計画といい、時間はかかる。

 縮小された防衛産業を再活性するには、ノウハウなども喪失しているものがあります、そして冷戦終結の恩恵を考えず軍事力近代化を進めていたのが中国であるわけですので、もちろん、戦いの主導権を握るドクトリン研究などではアメリカは先行しているが。

 アメリカ軍の増援まで耐えしのぐという発想は、もちろんアメリカの戦力は巨大であるし、なによりアメリカに対抗しようとしている中国の戦力を日本が通常兵器だけで互角の水準まで上ることは次元が異なるほどの難しさがあるのですけれども、一考の時代か。

 独自のドクトリンは、しかし必要であろうという。独自のドクトリンと入ってもアメリカの同盟国であり、アメリカと距離を置くような隔離乖離した防衛力整備ではあってはならないといいますか、逆に非効率ではありますが、右に倣えという時代ではない。

 シーレーン防衛はその一つの検討事例なのですが、すくなくともシーレーン護衛はミサイル防衛と画一化しなければ今日の紅海船団護衛のようにミサイルによる船団攻撃は対応できない時代です、そして本当にミサイルの雨のなかを盾を掲げて進めるのか。

 もっとも、船会社と船舶保険会社は海戦となれば運航停止と保険料大幅値上げを勧告し、輸送航路はそれだけで大打撃を受けるでしょうから、従来型の防衛力を十分整備し、そもそも戦争を封じ込めるような抑止力を構築することこそ、王道なのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【24】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(3)(2012-10-08)

2024-06-09 20:01:08 | 海上自衛隊 催事
■任務達成へのアプローチ
 自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略で観艦式の写真説明をごまかす第三回です。

 シーパワーの概念が中国の接近拒否領域阻止とアメリカのマルチドメインドクトリン、これにより大きく変容しようとしている。そのために自衛隊の任務はシーレーン防衛など代わりはしないのですが、その任務達成へのアプローチは変容を強いられます。

 射程の長いミサイルを爆撃機や潜水艦から撃ち合うという意味だろう要するに、という指摘とともにもう一つ、これは冷戦時代にもソ連のドクトリンとして存在した、という反論が加わるのかもしれませんが、問題はその射程と数が2020年代相応ということ。

 砲台に軍艦はかなわない、というのは第一次世界大戦中のガリポリ半島上陸作戦などでイギリスの戦艦3隻があっさりトルコ軍に撃沈されて以来の現実であり、いや1905年日露戦争の旅順要塞攻防戦などでも戦艦では対抗できないから地上攻略を強いられた。

 要塞の理念はこういうものがありますが、しかし現代は、要塞だけでシーパワーそのものを揺るがすほどにその射程が延伸しているという点にこそ問題があり、第二次大戦中にイギリスとドイツの火砲がドーバー海峡を封鎖できなかった時代とは根本が違う。

 専守防衛の理念、これは憲法改正を経なければ不変であるにしても、専守防衛と接近拒否領域阻止の中国ドクトリンとの両立となりますと、先ずアメリカ空母部隊をも飽和攻撃する規模のミサイル攻撃からシーレーンを守りきれるのか、という問題となる。

 限定戦争と全面戦争、するとケネディ政権時代の段階的アプローチ戦略のように、接近拒否領域阻止のミサイル飽和攻撃に至らない段階でのシーレーン防衛を考えるべきなのかという視座を、思考に含めるべきなのかもしれませんが、これはこれで難しさがある。

 アイゼンハワー政権時代の大量報復ドクトリン、一回でも核兵器が使われれば全面核戦争に応じることで、いやアイゼンハワー大統領自身は核戦争回避を模索していたので、一歩も譲らない態度を示すことが核戦争を防ぐ抑止力と考えていたものなのですが。

 ケネディ政権の段階的アプローチは核兵器が使われないかぎりは自らも使わず、限定核戦争の場合は相手の使用した規模に応じた使用としたうえでICBM大陸間弾道弾を一斉に撃ち込んでくるような状況以外では第三次世界大戦は回避しようというものでした。

 大量報復ドクトリン、難しいのは日本の反撃能力整備が結局のところこちらに、日本は核兵器を持ちませんので、こう構造の共通点が生まれてしまう点にありまして、言い換えれば本土ミサイル攻撃を含む時点でアメリカのマルチドメイン戦略にも危うさが。

 板挟みにある、日本の平和政策が試されるというのは、そうたとえば第一次世界大戦において中立国のベルギーがドイツ軍のフランス侵攻の接近経路として利用され中立が破られたように、日本は接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンに挟まれていて。

 陸上防衛に関してその大量報復ドクトリンとの類似性を示しますと、やはりAH-64D戦闘ヘリコプター廃止やMLRSの段階的廃止、90式戦車の退役開始と本土戦車部隊全廃など、段階的アプローチを踏めない装備体系にみずから陥っている現状を指摘したい。

 日本版段階的アプローチ戦略のための、戦争を小規模の撃ちに全力で押しとどめる装備体系を構築しなければ、冗談抜き出相手が限定侵攻として仕掛けた戦争を全面戦争に拡大させるという、日中戦争の全面戦争拡大の歴史さえ踏襲しかねないことになります。

 海上防衛は、この場合どのように応じるべきか。ミサイル防衛の延長として接近拒否領域阻止の枠組みに対してイージス艦で応じるという選択肢はあります、が、果たして迎撃しきれるのだろうかという疑問があります、なにしろ中国ロケット軍のミサイルは。

 2010年の段階では沖縄本島まで届く准中距離弾道弾が150発で先島や台湾まで届くミサイルが600発、と見積もられていましたが、いまは台湾をねらうミサイルが4000発、ここに巡航ミサイルがくわわる。日本本土へと毒ミサイルも第一撃で2500発ほど。

 難しく考えずに言い換えるならば、接近拒否領域阻止の概念を日本も踏襲するものが、結局日本国内でアメリカが構想するマルチドメインドクトリンでもあると解釈が成り立つわけで、すると射程がのびた以外は専守防衛の概念を維持しているというわけで。

 しかし、射程が延びることこそが専守防衛の逸脱になるのではない加藤反論も成り立つわけで、これはいわば、韓国と北朝鮮の陸上国境が52口径155mm榴弾砲だけで反撃能力のような射程になっている状況と、日本と中国の射程延伸が重なっただけ、とも。

 海上防衛、すると、このお互いの射程内、しかし核兵器と異なりほぼほぼ使われる前提の兵器の射程内において海上防衛というものを再構築することとなるのかもしれません。そして確実であるのは、現在の方式と装備体系には限界があるということ。

 もがみ型護衛艦の建造とともにF-35B運用能力いずも型護衛艦付与と、厳しい予算的制約下でも自衛隊、いや日本という国家そのものが地政学上はこの、接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンの板挟みという状況に陥っていることだけは変わりない。

 中立国という視点を挙げれば、たとえば第一次世界大戦においてベルギーの中立政策は、ドイツ軍がフランスに侵攻するさいにドイツフランス国境はフランス軍の防備が堅いためにベルギーを通過するというかたちであっけなく中立は踏みにじられまして。

 NATO本部がベルギーのブリュッセルに置かれている背景の一つはこうした中立政策の変更によるものなのでしょう。ただ、日本の場合は、痛い目にあったので中立政策を見直す、という状況まで待つことは、恐らく比類のない打撃を一度だけ容認することに。

 問題はシーレーン防衛という現実を直視することです。接近拒否領域阻止のミサイル網は変な話相模湾まで延びている状況ですので、鈴木政権時代の1000浬シーレーン防衛という、当時の政権対外公約、先ずこれを実行することからむずかしくなっています。

 有事の際には先ず佐世保基地や呉基地と舞鶴基地、恐らく横須賀基地まで攻撃される。護衛艦は退避できるのかもしれませんが補給施設などが攻撃を受けると再補給の問題が生じます、これはロシア軍がセヴァストポリ軍港で突きつけられているようなもの。

 ミサイル防衛、ペトリオットPAC-3-MSEの性能はある程度証明されていますので、准中距離弾道弾の攻撃を受ける佐世保については、航空自衛隊のPAC-3-MSEを集中させることである程度守れる可能性がありますが、問題は中距離弾道弾の攻撃を受ける横須賀など。

 ペトリオットPAC-3-MSEを航空自衛隊が海上自衛隊基地防衛のためだけに集中する必然性は低いものですから、海上自衛隊が基地防衛をどう考えるかということも突きつけられるのでしょうが、まず日本の防衛はこの段階まで厳しい状況であると認識が必要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【23】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(2)(2012-10-08)

2024-05-26 20:23:00 | 海上自衛隊 催事
■海軍記念日
 明日は海軍記念日です。自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略、という本来は独立した防衛備忘録などで哨戒する話題を観艦式の写真解説に代えて掲載する第二回です。

 日本の海上防衛戦略について。いま振り返ると海上自衛隊創設60周年という2012年は確かに前年に東日本大震災とこれに連動した福島第一原発事故は発生していましたが、それでも総じて考えるならば平和であったなあ、と実感するのです。

 台湾海峡の緊張と南シナ海の緊張、そしてなにより2022年より継続しているロシアウクライナ戦争のような、軍事力による現状変更はその端緒となるクリミア併合さえ2014年の出来事でしたので、景気不景気の波はあっても総じて平和は続くのだろうと。

 ロシアウクライナ戦争を端緒とした国際情勢の緊迫は、逆に欧州をみていいますと戦争準備といいますか、日本以上にもう何も起きないだろうという楽観論が、なにしろ2014年のクリミア併合を経てさえも、もう漠然と共有知として受け止められていた。

 欧州の突発的な緊張の認識にくらべますと、一応2011年の尖閣諸島国有化や、2007年の北朝鮮核実験、いや繰り返すミサイル実験か、緊張というものはある程度となりにありましたのが日本ですから、全く備えはない、とはならなかったことは僥倖ですが。

 観艦式ひとつとって、これだけの艦艇を動かせる状況にあるのですから相応に脅威が増大しても対応できているという背景なのですが、それにしても、ここまで米中の緊張と台湾海峡問題の切迫度というものはこの日護衛艦ゆうだち艦上では、現実味がない。

 自衛隊観艦式はこのつぎの2015年観艦式を最後に巨大台風や記録的悪天候と新型コロナウィルス感染症などをうけ2014年、じゃあない2024年までいまなお実施できていません。ただ、悪天候では仕方ない、という言葉だけでは説明できないものもありまして。

 予備日を十分とれない、一発本番というわけではないのですけれども、この観艦式は前の一週間の土曜日日曜日の予行と本番前一週間の予行と数日間行われていましたが、2018年観艦式は土日で本番と前日予行の二回のみしか設定されていませんでした。

 2021年観艦式は、CO0VID-19新型コロナウィルス感染症、の影響というよりも2021年に東京五輪をおこなう関係上、中央観閲式を行えない関係から年度単位で陸海空自衛隊行事を動かす必要が生じていて2022年の開催となりましたが、これも悪天候が響く。

 予備日を十分かくほしないというのは別に準備の手配をわすれていたウッカリさんというわけでもなく単に実任務の増大、警戒監視とミサイル防衛に海賊対処任務、艦艇を二週間近く延々と観艦式支援に当てられない、という状況の裏返しにほかなりません。

 地方隊展示訓練も艦艇の実任務が多く、いや2016年熊本地震によりすべての展示訓練が中止されて以降、2022年に舞鶴展示訓練が一回行われたのみでほかはすべて中止となっています。2023年に佐世保が護衛艦いせ一隻のみの展示訓練を計画していましたが。

 こうしたなかで日本の防衛戦略を根本的に見直しが迫られているのではないかという視座です。とまあこう書きますと、今まさに見直しているさなかではないか、と反論といいますか指摘といいますか注釈といいますが、一言あるのかもしれません、しかし。

 反撃能力整備というようないまの防衛戦略の転換にとどまらない、何か根本的な戦略の見直しが必要になっているのではないかということです。憲法改正とか核武装とか原潜保有とか徴兵制とか残業代導入とかそういうことも些細なようにしかおもえない。

 日米同盟、しかしアメリカの増援まで日本が耐え抜くという前提での防衛戦略というものが今後中国の軍事力さらなる強化をまえに成り立つのかということです。いいかえれば、アメリカの増援というものを念頭に日本の防衛戦略が練られてきた土台そのもの。

 安保ハンタイ、と口角泡とばして叫ぶものではありません、いやむしろ視点とはその真逆で日米の対等な防衛協力がなければ、アメリカだけの戦力では今後日本を守るというよりも国際公序を維持できないようになるのではないかという危惧という。

 独自防衛という甘い考えでもなく、です。独自防衛というものは不可能でないにしても効率が悪く、具体的にはその必要なリソースの確保に日本経済が耐えられないことと、独自防衛は国際協調から一歩引くことも意味し、その説明の努力も必要だ。

 防衛へのリソースというものは、基本平和が続きますと防衛への関心が薄れてしまうもので、そのために、それはテレビで何かやっていれば自衛隊モノをみるというような水準を超えるものではなかなかありません、何か動くことを期待できないのですね。

 防衛戦略の視点に戻しますと、やはり課題となるのは隣国の接近拒否領域阻止の戦略です、これこそ専守防衛の在り方か、とおもわれる名前ですが、実体は日本列島を含めたマリアナ諸島までをミサイルと爆撃機や潜水艦により聖域化するという様式で。

 絶対国防圏としてアメリカ軍をマリアナ諸島より遠くで防ぐという帝国陸海軍の太平洋戦争における戦略と似たものなのかもしれませんが、マリアナ沖海戦で瓦解した絶対国防圏とことなり、中国の戦略はミサイルや爆撃機と潜水艦でかなり現実性がある。

 接近拒否領域阻止の概念と日米同盟の問題で難しいのは、これを中国が本気で整備している現状、まずこの具現化のための中国本土のミサイル網を日本本土から破壊しなければ第七艦隊の空母部隊は日本本土へ到達が難しい、という日米同盟の根幹の揺らぎ。

 マルチドメインタスクフォースという、アメリカの対抗策では大陸に対して同盟国へ射程の長いミサイルを持ち込んで、これはフィリピンと日本本土、あとは韓国を含めるのだろうかという点に加えてアメリカ領グアムとサイパン、ここから撃ち合うもの。

 中国本土との撃ち合いの場合は、なにしろ中国本土には核ミサイル部隊が展開していますから場合によっては戦術核が使われかねない点を、アメリカはどのように段階的アプローチを試みるのかは未知数ですが、核兵器国同士のミサイル戦は過去に例がない。

 ロシアウクライナ戦争では度々プーチン大統領が核兵器に言及していますが、これもウクライナが核兵器を持っていないためにロシアとのミサイル戦をおこなっても核戦争に発展しないわけで、NATOが仮に地対地ミサイルを整備した場合はその限りなのか、と。

 接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンの衝突は、もう少し核戦争の懸念というものに想像力を膨らませてみるべきではないかという懸念をもつとともに、しかしするとシーパワーというものの土台さえ揺らぐような戦略の転換だと認識が必要でしょう。

 海上防衛、日本の場合はシーレーン防衛と着上陸阻止に2010年代からミサイル防衛が任務に加わりましたが、この部分の変容をどのように受け止めかつ変革を行うのかという厳しい判断がそろそろ考えなければならないようにもおもうのですね。

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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【22】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(1)(2012-10-08)

2024-05-12 20:24:59 | 海上自衛隊 催事
■日米同盟と米中対立
 今回から自衛隊観艦式の写真と共に本来であれば独立した特集記事とする予定でしたマルチドメインドクトリンへの一視点を文章として掲載します、解説を書くのがしんどくなったとかではない、多分ね。

 アメリカの認識は大丈夫なのか、台湾有事に関する図上演習を行った際に日米は最終的には勝利するがアメリカは航空母艦2隻を失い日本も護衛艦11隻程度を失う、こうした研究結果が2023年に発表されまして詳細は非開示ながら日本の研究者を驚かせました。

 図上演習、ただ当時は詳細が非開示であり、軍関係者と保守系シンクタンクなどが専門分析を行ったことがだけが示唆されていたものの、なんとか勝てるのか、という安堵と、恐らく造船能力を考えると中国のほうが艦隊の建て直しは早い、という危惧などなど。

 日本からは笹川平和財団など参加者があったのですが、あれからまもなく一年というところで徐々に情報が出始めていまして、その詳細は少なくとも両国は全面戦争に達せず、限定戦争の方式をとり台湾海峡有事に日米中が衝突していたという点が示されている。

 戦場の霧、といういま実際に最前線では何が起こっているのかということが指揮官にはわかりにくい部分がなにしろ図上、一目瞭然となっていたことが日本側からみますと、現実として可能なのかという疑問符を投げかけるものではあったという。

 オシントにシギントにコミント、情報収集能力も実際には戦闘を左右するのですがあまりこの点は、アメリカの情報収集能力への自身の現れかのかもしれませんが、日本の視点から見ればその能力を過大評価していないかという疑問符などもついていて。

 短期決戦として一定以上の損失が中国側に積み重なれば中国側が断念するという想定でもあり、いやこれ図上演習ですので年単位の長期戦を想定しないこととしなければ関係者が帰宅することもできませんので仕方ないようにみえますが、違和感のひとつ。

 限定戦争であるためにアメリカは中国本土の基地や施設を叩くことはなく、逆にグアムや沖縄や九州の基地施設を中国が叩かない、報復により全面戦争に展開することを互いが回避するであろうという認識だそうですが、空母いぶき漫画ではあるまいし。

 戦場の霧については、アメリカの視点からしますとロシアウクライナ戦争やハマスイスラエル攻撃とモスクワテロ事件にイランイスラエル本土攻撃を的中させたという自信の現れなのでしょう。けれども情報を実際に活かせたのはイランの例だけにみえます。

 オシントにシギントにコミントについては、これも実際にどこまで実践で機能するのかは、電子戦技術いついて中国は2000年代と2020年代を比較すると西側でいうならば1980年代と2030年代くらいの開きを実現していますので安易に優位を自負できるのか。

 短期決戦については、重要でロシアがなぜ大損害を被っているにも係わらずウクライナから撤退しないのかという点と重なり、民意ではなく権威主義国家の政策決定とそこで失策を認めた場合の政権、というよりも頂点の一人が有する権力基盤への響き。

 長期戦となっているのは、民主主義国家では政権は選挙により倒れるが権威主義国家では政権はある日突然倒れる、それは離反や造反により物理的に倒れることを意味していますので、一回軍事的な失敗を冒せば政変にさえつながりかねない事への理解です。

 限定戦争についても、結局その線引きは曖昧であり、いやだからこそ日本はミサイル防衛に、従来の防衛力を事実上瓦解させるに等しい巨費を投じてまで、整備してきたことを忘れてはなりません、本土は安泰というのは余りに楽観的要素ではないのか。

 マルチドメインドクトリンというアメリカ自身の陸軍などの変革をみますと既に中国本土を叩くことを事実上ドクトリンに内部化していますので、するとこちらも叩かれる想定が必要で、特に基地など補給施設を使えるかどうかが、無視できない不確定要素だ。

 想像力という視点をもう少し日米は腹を割って話し合うべきではないかと思うのです、アメリカは合理主義の国ですので合理的よりも世俗と文化の要素が多い選択肢を選ぶ権力者や国家と、場合によってはその国の世論さえも、分析に失敗していないか。

 太平洋戦争などは日米共通の話題となるところでしょうし、前のトランプ大統領が、真珠湾を忘れない、と公言した半年後には護衛艦かが表敬訪問という時代となっていますので、かが艦名は真珠湾を叩いた空母加賀、遺恨を越えた研究はもっと可能だろうと。

 軍事的に対抗できない国が軍事行動のような自殺行為を起こすはずがないという合理的な解釈は、自暴自棄になった国が何を起こすかまでの想像力が及ばなかったことといえるわけでして、この点でよみに大きく失敗していたのでした。

 沖縄戦の米軍死者数はバルジ大作戦ともよばれるアルデンヌ冬季攻勢での米軍死者数を上回り、しかし沖縄戦に参加した米軍師団は6個ですがアルデンヌ冬季攻勢の参加師団は33個という、追い込まれた軍隊の死闘を予見できなかったのもアメリカだ。

 石油禁輸という、実質的に日米開戦の直接要因になった施策についてもアメリカ政府は日本でガソリン車保有者が人口の4%であることから日本国民を敵に回さない経済制裁として慎重に選んだ結果として石油を対象としたのですが。

 石油禁輸で国民の財産という認識があった海軍の艦隊が稼働できなくなるかもしれないという危機感が太平洋戦争に向かわせる世論の支持に大きく影響するところまでは、やはりここでもアメリカは予測できなかったのです。今回の図上演習とにている点が。

 コメの自由化、いやアメリカに関しては1990年代まで日本の農業政策を相当誤解していまして、石高など日本にとり麦や大豆とは比較にならない一種の信仰とさえいえるコメの部分で日本にアメリカが最大限譲歩していればとまで考えることができなかった。

 コメでアメリカが日本のこだわった完全自給率100%を支持し唯一の例外としていたならば、なにしろコメがあればあとは副食とさえ考える価値観があり、そのほかの分野で、自動車や牛肉や半導体などで大幅な譲歩を引き出せたかもしれないというのに、とね。

 中国とアメリカの軍事面での緊張を考えますと、もうすこし哲学的な意味で中国といいますか、いやアジアを理解するならば日本的な感覚を理解することによってだけでも、ちょっと考え方の違う国というか文化圏があるのだ、と理解の一助となるような。

 日本と中国は防衛戦略でも絶対国防圏という認識と接近巨費領域阻止という概念はかなり共通性がありますし、台湾問題については段階を独立に進まねば、これも中華民こくという独立国なのだからおかしな話ですが、建前と本音を分けられる可能性は、ある。

 太平洋をハワイで中国とアメリカで分割しようという案を中国から突きつけられ、海洋自由原則でそもそもアメリカのものではないという認識のアメリカを困惑させたのが10年ほどまえですが、このあたりのすり合わせも、もう少し精力的に行うべきなのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【21】元日能登半島地震発生と防衛力整備(2012-10-08)

2024-01-14 20:24:22 | 海上自衛隊 催事
■イエメンから能登半島
 自衛隊観艦式特集の前回に危惧していましたイエメン沖有事は一昨日現実のものとなりましたが前回はまったく想定していなかった事態が起こりました。

 自衛隊観艦式の写真を紹介しつつ結局は時事の話題を、松田優作さんが探偵物語の次回予告に押し込んだように列挙しているのがこの日曜特集観艦式、なのですけれども、今年最初の日曜特集としまして、どうしても外す事が出来ないのは元日の能登半島地震でした。

 舞鶴の連中は凄いなあ、と妙に感心したのは津波警報が福井県と兵庫県に発令されているものの、福井県と兵庫県に挟まれた京都府日本海側は何故か津波注意報でして、角度から丹後半島のあたりは兵庫県異常に直撃を受けそうなものなのですが大丈夫かなと危惧した。

 丹後半島。この地域にはまだ被害はない。こんな字幕付きで紹介されたのは1973年の映画日本沈没その劇中でしたが、一方で懸念したのは舞鶴基地などは、湾の奥にあるとはいえ潮位変化は大丈夫なのかという、海上自衛隊基地故の心配でしたが、現実は真逆という。

 舞鶴基地は災害派遣準備を進めていたのですね、わたしなのは緊急出航し津波を避ける必要がないのかとか、舞鶴航空基地の機体を空中退避させるか艦上に載せてしまう必要はないのか、と考えたのですが津波注意報ということで退避させず災害派遣準備を進めていた。

 警備隊なんかはSB-25を湾口あたりに展開させて潮位変化を監視していたのでしょうか、地形から湾口に入った津波が基地に到達するまで、なにしろ日露戦争でロシア軍の攻撃を想定して守りを固めた湾の奥の基地なのですから、緊急退避時間はあると想定したのか。

 災害派遣を優先した、この様子は津波注意報、能登半島などは大津波警報、発令している最中に災害派遣準備を進める様子が、舞鶴地方隊SNSなどに掲載されています。有事即応というが、正月準備の門松を取っ払っての即応性の高さにはびっくりだの一言につきる。

 情報収集の難しさは、しかし痛感しました。石川県の馳知事は上京中で地震発生と共に首相官邸入りし災害派遣への情報収集を行ったといいます、この点で出来うることはすべてやっているというところなのでしょうが、情報収集の航空機がかなり減っている現状です。

 RF-4戦術偵察機、これも耐用年数限界という事は理解しているのですが、特にRF-4EではなくRF-4EJのほうのポッド式偵察装置を、これはフィルム式で使い難いものだという事は認識しているのですが、新型にせずF-2あたりに搭載することはできなかったか、と。

 RF-2を今更三菱重工に生産ライン再開させてという仰々しい話ではなく、戦術偵察ではなく、例えば教育訓練部隊としてF-2Bを運用している松島第4航空団のF-2B,東日本大震災では津波被害を受けた基地だ、ここに偵察ポッドを搭載する運用は出来なかったのか。

 F-2の生産数削減が在ったのは2000年代の石破長官時代ですから今更ではあるのですが、もっとこう当時の時点でRF-2のような発想で、当時検討されたRF-15の後の計画失敗などは予見できなかったのは仕方ないにしても、なにかこう情報軽視の流れは無かったか。

 OH-6D観測ヘリコプターについても、OH-1観測ヘリコプターの調達中断を受けOHそのものが全廃の流れにあり180機もあったOH-6が後継機無くして全廃となったのは、なにか自身が有ればすぐ離陸した情報収集機だけに、これも問題ではなかったか、と思うのだ。

 H-145M多用途ヘリコプター、ドイツ連邦軍が先日PAH-2戦闘ヘリコプターの後継に金魚のような愛くるしいH-145Mを大量調達する決定を行いましたが、自衛隊の陳腐化というならばOH-6とAH-1の後継にBK-117を同数の270機ほど入れていたら、こう痛感する。

 ヘリコプターのついてはもう一つ、詳しそうな人のヘリコプターの不足を被災地への空輸そのものの事と誤解している方が多いようですが、申し訳ないがあの地形はヘリコプターの発着が地上の二次被害を誘発する、現場にないのではなく適した機体が日本にないのだ。

 被災地にヘリコプターが足りないのではなく自衛隊の方にヘリコプターが足りない、どうも今回の能登半島地震に際してそごうが在ったように思うのは、ある程度自衛隊を見てきた人たちと、今テレビで見てSNSで持論を示す人の同じ言葉と違う意味、同床異夢です。

 自衛隊をある程度観てきた人たちの印象としては、自衛隊行事に自衛隊ヘリコプターの参加が年々減っていて、その上で国有資産台帳や防衛予算等を併せてみている方には、ヘリコプターの調達が鈍っている故に機数が減勢しているという事を知っているわけですが。

 被災地にヘリコプターが足りないと主張している方は、単に政権や政治を叩きたい方が相当数混じっているといいますか、ヘリコプターを増やすには自衛隊の予算を増やさなければならないという認識を持っていない方も交じっているのかな、と印象を受けるのです。

 A-129なんかをイタリアでは偵察戦闘ヘリコプター、と定義していますが、データリンク能力が高い専用の戦闘ヘリコプターに、スタブウイング部分にヘリテレ中継装置を搭載し映像情報収集機として運用、多用途機は輸送に重点化するなど、なにか考えねばならない。

 海上輸送群。今ないものを無い物ねだりする事は出来ないのですが2027年には陸上自衛隊に海上輸送群が新編されます、LST戦車揚陸艦型の輸送船を複数保有するようで、その任務は南西防衛、なのですが、これが間に合っていれば、能登半島への物資搬送に役立った。

 海面隆起という、場所によっては地形が4mも隆起したといいますので、今回海上輸送は困難を極めまして、輸送艦おおすみ搭載LCACエアクッション揚陸艇が活躍した、既に退役した輸送艦のと、など有れば役だったのかもしれないが、両用戦艦艇が全くたりていない。

 輸送艦は8隻必要だ、という“もう一つの新しい88艦隊”という提案を東日本大震災の少し後に特集で掲載した事を思い出しますが、巨大災害への対処能力整備というものをもう少し重点化してかつ具体的に示したうえで、非軍事作戦能力を構築すべきではないのか。

 MOOTW非軍事作戦能力という、軍隊の戦争以外の軍事作戦という明確な任務区分が有るのですが、先ず政治が、有事、戦争以外の有事なので災害、こうした徐強で自衛隊に求める能力、どの程度の物資を度の距離度の時間で運ぶかなどを平時の内に研究すべきです。

 オペレーションリサーチにより、それを行うには今の法律でどこ其処に限界があり、かつ艦艇と航空機がこれだけ不足する、というような具体的な数字を示して、その上で必要な装備を積み増すか、被災地に我慢を強いる前段階としての周知を行うか、必要だとおもう。

 非常事態法制にもかかわるので憲法改正が必要だ、と反論するならば憲法改正を急がなければなるまい、何のための憲法と人権なのかという事になるのだから。超法規を念頭とした例外状態を有事法制として盛り込んで付随的違憲審査権発動まで運用するとしてもいい。

 例外状態を是認した法整備など立憲主義に反するというならばそれこそ憲法改正を急ぐべきか、国の在り方として人命以上に重要なものに憲法を挙げている国はどうなのかという事になる。震災は次必ず来るし、南海トラフ地震という規格外の脅威もあるのですからね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【20】この十一年で激変した日本と世界の安保情勢(2012-10-08)

2023-12-17 20:00:28 | 海上自衛隊 催事
■現在のイエメン沖緊張
 2012年の観艦式当時にはイエメン沖で護衛艦に向けて弾道ミサイルが発射されタンカーがミサイル攻撃を受けるという状況は中々考えられなかったものですが、今現在その状況が持続中です。

 汎用護衛艦は最終的にDDGへ収斂してゆくのではないか、ミサイル防衛専用艦を機転に次のDDG,こんごう型ミサイル護衛艦後継艦は満載排水量で15000tを超えるという、かなり大型の艦艇となるようです。これはSPY-7レーダー電源の発電量という関係もある。

 こんごう型護衛艦は建造当時満載排水量9500tであり、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦と比較したばあいでも、はるな満載排水量が6800tですので二間割り大きな護衛艦となりましたが、あさひ型護衛艦の満載排水量が7000tに達していて、時代を感じさせます。

 15000t、満載排水量でありいままで自衛隊の艦艇の大きさで慣れした心が大きさや、ひゅうが型護衛艦と比較しましたならば、それほど意外な規模ではないことは確かなのかもしれませんが、いよいよDDGのDD,つまり艦隊駆逐艦という表現を超えてゆく印象だ。

 むらさめ型後継艦、DD,この区分がDDGへ収斂してゆくのではないか、という視点ですけれども、これには任務の多様化とともに脅威度合いの増大が挙げられます。先日、イエメン沖において任務に当たる海賊対処部隊が弾道ミサイルにねらわれたことは記憶に新しい。

 弾道ミサイルは艦船にねらって撃っても、当たるわけがない、と反論があるのでしょうが、対艦弾道弾という装備体系、特にクラスター弾頭をそなえて一発あたりの制圧範囲が広いミサイルに対しては、この論調は通用しないよう危惧するのですね。そして。

 対艦弾道弾の問題は目標評定能力に左右され、目標の位置がわかるのであればそもそも弾道弾が必要はないという反論が成り立ちましたが、これは従来型の大規模戦争を念頭とした概念であり、海賊対処任務の場合は異なり、相手はAIS船舶位置情報を使う。

 AIS船舶位置情報は海賊やテロなどから船舶を守るという用途の物なのですが、なにしろテロ組織が弾道ミサイルを使い1000km単位で攻撃を行うことは想定していませんでした、せいぜいハイジャック機で体当たり攻撃を行うという想定のものでしたから。

 ミサイル攻撃に護衛艦むらさめ型では対応できず、という平時の任務にも支障がおこるということ。もっとも、世界中探して弾道ミサイルに対応できる水上戦闘艦のほうが、なにしろデアリング級やアキテーヌ級といった防空駆逐艦でも難しいのですけれど。

 中国の水上戦闘艦が基本的に長距離艦対空ミサイルを搭載した広域防空艦となった、これも次の護衛艦を考える上で無視できません、ESSMミサイルの射程が50kmあり、僚艦防空能力という概念が定着しつつあるものの、それでさえ射程がみじかい。

 スタンダードSM-2水準のミサイル搭載が、最低限必要となるのではないか。ただ、こうは表現するもののスタンダードミサイルと運用するにはターターシステムなどの搭載が必要となります、しかしながら、国産艦対空ミサイルの長射程化が進んでいる。

 国産艦対空ミサイル長射程型、A-SAMとして過去開発されていた物を延伸させているようで、いちおう伝え聞くところではESSMよりも射程を伸ばしているようですが、重ねてある程度の弾道弾対処能力を付与した発展型をここから開発する選択肢も。

 DDではなくDDGへ収斂する、対艦弾道弾という脅威も、既に地対艦のみならず艦載型開発が進められているため、その脅威度は現実の段階まで迫っています、むらさめ型護衛艦の後継艦は必然的にかなり大きくならざるをえないのかもしれませんね。

 しかし岸田政権、この話題を執筆しているのは十二月中旬なのですが、方向性が鈍っていまして、現在のイエメン沖の状況をみますと、虎の子のイージス艦を派遣しなければ、イエメンのフーシ派からの商船やタンカーへの弾道ミサイル攻撃を阻止できない状況という。

 海賊対処法、現行法ではイラン沖日本タンカー襲撃事件を受けて中東情勢の情報収集任務が新たに加えられていますので、従来のソマリア沖よりもやや北方において警戒任務に当っていたところ、あけぼのミサイル事案という概況になりました。状況は深刻です。

 イージス艦を派遣すれば良いのか、と問われますと、先ずイージス艦は海上自衛隊には8隻のみであり、これは本土ミサイル防衛と周辺情勢緊迫化を受けてそう簡単に本土から派遣できるものではありません、ローテーションを考えれば常時1隻遊弋は大変なのだ。

 安倍政権時代、この自衛隊観艦式の様子は正に安倍政権時代でして、考えるとヘリコプター搭載護衛艦くらま、というのは長期政権であった安倍政権時代にほぼ観艦式の観閲艦を務めていた、佐世保の護衛艦ですのでこれはちょっと意外な事なのですよね。

 くらま話題はさて置き、ここでも繰り返すのですが2012年の観艦式での背景となった国際情勢と今の2023年の国際情勢は余りにも差があり、なにしろ今年はイスラエルとスーダンで邦人救出への邦人輸送任務を一年間で二度も実施しました、これは過去に例がない。

 安保関連法として、安倍政権時代に整備された自衛隊の活動範囲に関する新しい法整備では、一例として“ホルムズ海峡が機雷封鎖”され“タンカーが航行できない”事態を一例として想定していました、1980年のタンカー戦争のような事態を想定していたわけだ。

 ホルムズ海峡機雷封鎖を例に出した事でイラン政府から間接的な講義が在った事は報じられましたが、タンカー戦争、イランイラク戦争では実際にイラン軍がタンカーへの無差別攻撃を行い、当時の橋本龍太郎運輸大臣が自ら先頭に巡視船派遣を主張したほどでしたが。

 バベルマンデブ海峡のタンカーにフーシ派ミサイル命中、この数日間の情勢変化を受けても、これこそ安保法適用の事態が近づいているのですが、政府は情報収集強化さえ命じていません、それこそ哨戒機の増強やミサイル警戒へ早期警戒機派遣も検討が必要な段階だ。

 政治とカネ、いま岸田政権はこの問題で官房長官を事実上更迭するという、これは末期状態だぞ、こう解釈しても仕方がない状況となっています。しかし、その為にイエメン沖の現状をほぼ現場任せで政治主導を発揮しないのは国全体を蔑にしている状況ではないか。

 内閣総理大臣は単に観艦式で観閲艦に陣取る仕事ではない、自民党よりも日本国家を優先しなければなりません。それが、なんというか岸田総理は、安倍政権時代の岸田外務大臣気質が抜けていないように思えるのですよね。だから自分を外交重視と勘違いもしている。

 COP28や中東歴訪、その最中に現在のパーティー券問題が表面化し、初動で対応しなければならないところを外遊、これは恰も外務大臣時代にこうした危機が生じても安倍総理が十全対応していた故に外務大臣に徹している事が出来た、そんな名残で行動していないか。

 ボクは原発に詳しいんだ、とかつて危機管理の第一線をかき回した総理がいました、いや政治への情熱は凄かった、と知る方は仰るのですけれどもどこか現状の岸田総理はその雰囲気を継いでしまっているようみえる。その最中でも中東では事態が進行中なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【19】こんごう型後継-日米韓駆逐艦共同開発の論調(2012-10-08)

2023-10-29 20:22:15 | 海上自衛隊 催事
■いまの駆逐艦は凄いぞ
 ミサイル防衛専用艦改めイージスシステム搭載艦をアメリカも採用しようという流れなのでしょうか。

 アメリカと日本と韓国の駆逐艦を統合共通設計とできないか、アメリカではこうした論調があるようです。日米間の駆逐艦共通化、日本の場合は駆逐艦ではなく護衛艦ですが、その論調の背景にはやはりといいますか中国海軍に対応するインド太平洋戦略がある。

 いまの駆逐艦は凄いぞ最高だ、という台詞がSF映画にありましたが、日本の場合は実際に全通飛行甲板型護衛艦という、DD艦隊駆逐艦の符号を有する艦艇としては満載排水量で三万tちかい“駆逐艦”なんてものが存在する、ただアメリカはもう少し違うものを。

 こんごう型ミサイル護衛艦の後継か、若しくは汎用護衛艦として一時代を築いた護衛艦むらさめ型の後継艦などを想定しているのでしょう。韓国は長らく陸軍国ではありましたが、先ごろセジョンデワン級ミサイル駆逐艦の4番艦が公試開始の一方が記憶に新しい。

 海上自衛隊の場合は今後、ミサイル防衛専従艦改めイージスシステム搭載艦が建造、基準排水量1万2000t前後のかなり大型の水上戦闘艦を整備します、長期の警戒監視とミサイル防衛を見込んだ結果であり、満載排水量は1万7000t規模くらいとなるのでしょう。

 ひゅうが型護衛艦が基準排水量1万3500tで満載排水量が1万9000tですので、こうした全通飛行甲板型の護衛艦と比較しますと、多少は収まっているような印象が生まれるのですが、それでも、これぞ水上戦闘艦、という艦容を備えた艦艇の中では破格の大きさ。

 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の後継艦研究がアメリカでは開始されています、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦で対応できるものではなく、空母打撃群を防衛する防空中枢艦は相応の指揮能力と司令部機能を求められるため、やはりどうしても大型艦が、と。

 セジョンデワン級、しかし問題はセジョンデワン級4番艦の公試を開始したばかりの韓国で、イージスシステム搭載艦の大きさ、有名なドクト級揚陸艦に排水量で迫る水上戦闘艦となると大きすぎるとともに、4番艦はバッチ2の1番艦、設計は変えられない。

 まや型護衛艦として日本はイージス艦の整備をひと段落していて、いや決してイージスシステム搭載艦が、こんごう型代替艦になるという決定は無い故に、どう展開するのかは分からないのですが、インド太平洋を中心に考える日米と歩調は合うのか、という疑問も。

 むらさめ型後継艦が大型化する可能性、ここで考えるのは海上自衛隊幹部学校記事など内部での自由な議論に、オールイージスという、汎用護衛艦の艦隊防空能力を抜本的に強化しなければ中国海軍の海軍力増強に対応できないという危機感に基づく提言が。

 蘭州型ミサイル駆逐艦から始まった艦隊防空艦整備は、既にDDGに当たる広域防空艦が基本であり、江凱Ⅱ型フリゲイトなど艦隊護衛艦の段階でスタンダードSM-2ミサイルの射程を凌駕する長射程の艦対空ミサイルをVLS垂直発射装置に常備し、普及する。

 あさひ型護衛艦の満載排水量は7000tに達しており、イージス艦フリチョフナンセン級よりも五割大型であり、アルバロデバサン級ミサイル駆逐艦より若干大型となっている、続く汎用護衛艦が、これまで通り一割五分大型化すると、イージスシステム搭載は。

 日本で建造し、アメリカ海軍のアーレイバーク級駆逐艦を補完する艦隊防空艦を、FMS域外調達の逆方式でアメリカに供給し、コンステレーション級ミサイルフリゲイトとともに運用する選択肢はあるのかもしれませんが、向こうの識者の視座、実に興味深い。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【18】むらさめ型護衛艦後継将来護衛艦はどうなる(2012-10-08)

2023-10-15 20:23:49 | 海上自衛隊 催事
■日曜特集-観艦式
 観艦式を撮影する際には次乗れるのははるか先なのかもしれないという緊張感と共に充分な機材と事前研究と共に撮影に臨むのですが。

 日曜特集が撮影速報の最中で掲載できない為に、ある程度執筆時間に余裕がある際に限定して、日曜特集は毎回24枚の写真を掲載していましたので撮影速報の12枚に併せて日曜特集を12枚に切替えて、二つの記事で、水曜日の京都幕間旅情のように載せてみましょう。

 2012年、自衛隊観艦式の荒天中止や一般公開見合せなどが続いていますので、現在の海上自衛隊とは随分変わっているのですが、ヘリコプター搭載護衛艦の全通飛行甲板型護衛艦への転換という2012年当時も、大きなダイナミズムを有する変革期の只中にありました。

 イージス艦への転換、考えてみますと全通飛行甲板型護衛艦の転換と同時に海上自衛隊は艦隊防空に、ミサイル護衛艦あまつかぜ竣工以来、ターターシステム搭載艦を艦隊防空の主軸としてきましたが、1993年にイージス艦こんごう竣工以来、艦隊防空に一大転換が。

 こんごう、1993年竣工ですので海上自衛隊イージス艦も艦齢30年を前に、そろそろ後継艦の建造が具体化してゆかなければならない時節なのですが、先ずは本土ミサイル防衛のミサイル防衛専従艦建造が進められる事となり、これは新しいレーダーを搭載するという。

 SPY-7レーダー、元々陸上用のものでありアメリカ海軍がイージス艦に新しく装備しこの程遂に竣工が始まったSPY-6搭載イージス艦とは別物となります、SPY-7はアメリカ宇宙軍がアラスカに配備したものが9月に不具合起こし問題となったばかり、日本はどうなる。

 まや型護衛艦はぐろ竣工により護衛艦隊に残った最後のターターシステム搭載艦しまかぜ練習艦転籍が行われています、その次の将来イージス艦がSPY-6を搭載しアメリカ海軍との相互互換性を維持するのか、SPY-7という未知のシステムに踏み出すのか、関心事です。

 むらさめ型護衛艦、問題は海上自衛隊にオールイージスという、つまり汎用護衛艦も含めて広域防空艦に転換しなければ、大量の艦隊防空艦に長射程対艦ミサイルを備えている中国海軍に対するプレゼンスを維持できないという視点が有り、ここも関心事と云えますが。

 FFMからFFGへ、もがみ型護衛艦というこれからの観艦式の風景を一新させる将来艦が、後期艦建造において大型化するため、艦隊防空を一部担うようになります。そうしたなかで、次世代護衛艦の指揮運用能力など構成要素の研究が開始されており、きょうみぶかい。

 もがみ型護衛艦後期艦が大型化するものの、DD、汎用護衛艦にはAI人工知能による作戦指揮支援機能、AIは既にSH-60K哨戒ヘリコプターに類似のものが搭載され海上自衛隊では運用に内部化されているものなのですが、次世代に相応しい先進性が垣間見える。

 あさひ型護衛艦として汎用護衛艦がかなり大型化していますが、本来小型艦と位置づけられたFFMの後期艦がかなり大型化している、そして、そのFFMの改良型が護衛艦隊にも配備されるような錯覚もあるのですが、いや、FFGさえ護衛艦隊には不充分なのか、と。

 はるな型ヘリコプター搭載護衛艦は満載排水量6800t、これも初めて見ました際には大きな護衛艦とおもったものですけれど、汎用護衛艦がこの大きさに達している、むらさめ型護衛艦で満載排水量は6200t、すると次の汎用護衛艦はDDGなみの9000t規模もあり得る。

 こんごう型護衛艦の後継艦が、ミサイル防衛専用艦を踏襲して大型化するならば、汎用護衛艦も大型化する可能性がある。いや大艦巨砲主義という安易な発想ではなく、それだけ我が国周辺情勢が緊迫化している裏返しでもあるのですが、凄い時代に生きていると思う。

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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【17】八月は新しい88艦隊-難しい反撃能力議論(2012-10-08)

2023-09-03 20:23:21 | 海上自衛隊 催事
■新しい88艦隊
 八月は新しい88艦隊として目一杯かきましたので九月に質疑的な備忘録を。

 観艦式の際の写真とともに、先月末まで六回にわたり掲載しました新しい88艦隊という毎年恒例の話題へのちょっと幾つかありました反響のようなものを紹介しまして、これは特集ではないのですけれども、2012年の平和な時代の観艦式とくらべてみましょう。

 反撃能力という観点から、仮にどのような国であっても日本への大規模なミサイル攻撃、特に東京や大阪などの主要都市への無差別攻撃が行われ、且つ継続的に攻撃の懸念がある場合には反撃能力を行使する覚悟か、すべて撃ち落とす防空能力抜本強化が必要だ。

 専守防衛の観点から考えるならば、防空能力抜本強化、というところになるのかもしれませんが、ロシアウクライナ戦争においてウクライナへ撃ち込まれた巡航ミサイルや自爆用無人機と弾道ミサイルの数は最初の一年間で8000発、いまや一万の大台となった。

 防空能力抜本強化、これはいうだけならば文字数漢字八文字で簡単なのですが、迎撃ミサイルを数万発単位で準備し発射器も一千基近く準備するという必要性を考えますと、とてもではありませんが、自衛隊とは別のミサイル防衛隊という数兆円の予算が必要です。

 反撃能力はこうした観点から、ほかに選択肢がないという、つまり専守防衛のためだけに無尽蔵に迎撃用の地対空ミサイルを購入し続けることに国民の理解が得られない現実から出た代替案、という視座なのでしょうが、権威主義国家を相手とする視点が抜けていた。

 ロシアウクライナ戦争を見る限り、指揮中枢への打撃を考えればモスクワとサンクトペテルブルクを叩かなければ意味がない、この現実に対応するようにウクライナ軍はモスクワと周辺部への無人機攻撃を開戦一年後から本格化させています。さて日本の場合は。

 大西洋まで護衛艦隊を派遣させ、スタンドオフミサイルやトマホークミサイルにより反復攻撃を行う必要性、こうしたものを提示した訳です。これは同時にグローバルな規模での海上打撃力を誇示することで、相手に日本への無差別攻撃を思い止まらせる狙いも。

 反撃能力を考える必要性はわかるが憲法改正の方が先ではないか、憲法を改正に反対するのではなく現行憲法のままここまでの反撃を行うには無理がある、こうした意見はありましたし、確かに解釈改憲には限界があるのではないか、と考えさせられる点でもある。

 能力公使をどの時点で行うのか。もう一つの視点は、自衛隊は多くを反撃能力の整備へ既存のリソースを集約しており、所謂伝統的な専守防衛の能力を抑えている。もちろん侵略されれば即座に反撃能力を行使すべきだ、という無茶な視点は友人知人ではいない。

 グレーゾーン事態でいきなり上海に巡航ミサイルを撃ち込めば全面戦争になるし、特殊部隊が原発周辺で遊撃戦を展開したからといってラジンを空爆するわけにもいかない。では沖縄以南で食い止めるか九州上陸まで待つか、本土決戦か、と明確な分水嶺がないのだ。

 反撃能力公使の要件を法整備する必要までは相手に手の内を見せる事にもなるので反対だけれども、どこまで政治主導で行うのか、政治の決断はどのように立法府が追認するのか、逆に考えればそのための非常事態法制を無しに装備だけ整備しても、とも危惧する。

 当然これは考えておくべき視点なのだけれども、これまで、なにしろ有事法制というものが認識され整備され始めたのが小泉内閣時代なのですから、後手に回りすぎている、という認識を持たねばなりません、そして棚上げしたままの防衛力整備にも違和感があるのだ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【16】八月は艦艇広報と五山送り火と(2012-10-08)

2023-08-20 20:22:28 | 海上自衛隊 催事
■八月は反撃能力
 八月は艦艇広報と五山送り火とそしていろいろな事がある一ヶ月なのですが反撃能力がどのように来年度予算概算要求に記されるかが関心事です。

 八月という事で新しい88艦隊という毎年の特集を掲載していますので、自衛隊観艦式も、考えてみればここで用いました初公開の北大路機関写真をアーカイブ方式で88艦隊特集に用いているのだから、こちらの方が源流なのだけれども、特別企画と関連します。

 新しい88艦隊という想定は、この始まりは一応専守防衛を念頭とした防衛戦略に依拠した概念として論理構成しています。しかし、一応、政府の反撃能力という防衛力整備の指針が示されますと、自衛隊の戦力投射を行う相手は非常に遠い場所ともなりうるわけだ。

 艦隊、海上自衛隊の能力として特筆したいのは護衛艦や潜水艦という装備はその装備一つとってシステムを構成していますので、戦力投射、遠隔地への独力展開が友好国や同盟国の基地提供という制約に陸上自衛隊や航空自衛隊ほどしばられない、ということです。

 大西洋へ護衛艦隊を展開させる、この視座は反撃能力という防衛力整備に加え、2022年の新しい88艦隊の日、考えれば昨年もロシアウクライナ戦争という新しい88艦隊の背景が、大きく転換していたところなのですけれど、二年連続での世界政治の影響を受ける。

 権威主義国家に対する策源地攻撃は末端部分の部隊をどれだけ叩いても、逆に権威主義国家の支持層と被支配層という、今の日本ではなかなか理解できない感覚の命題を前に、信仰するのは一部の指揮官は前者であるが大半は後者という現実をみなければならない。

 着上陸した相手を徹底して叩いても、逆に被支配層という権威主義国家において政権選択に実質関与できない少数民族を中心に損耗を重ねたところで、逆に進行する側には国内不満分子を日本側が粛清の代行をするという結果になりかねず、逆効果ともいえる。

 策源地攻撃と過去に呼ばれた反撃能力を行使するためには、日本の隣国にロシアが居る限り、どうしてもモスクワとサンクトペテルブルクに対してわかるかたちでの力の行使を行わなければ、日本との和戦を決する政策決定に影響力を及ぼせないという現実がある。

 反撃能力整備というダイナミズムの中において既存防衛力組み換えが今後重要な視点となってゆくでしょう。ただ、反撃能力整備という視点は防衛省自衛隊からの視点ではなく政府が国家防衛戦略に明示したものであり、これがどう防衛力整備に繋がるのか、と。

 政治主導による国家防衛戦略なのですから、政治は、自衛隊が有事の際にどのような任務にあたるのかの概略を示す必要があります、無論細部は自衛隊に任せるべきであり、防衛出動命令の発令、Q号指令が発せられた先には政治は関与すべきではありません、が。

 専守防衛を念頭に防衛力整備が続けられたため、装備体系や訓練体系と戦術研究から教育は勿論のこと基地や駐屯地の配置まで政治は関与すべきではないと考えるのですが、反撃能力という国家防衛戦略の概念は、政治主導のものであり、概略は示すべきです。

 2012年自衛隊観艦式の当時には、政権は安倍内閣であり、保守政権である認識はありましたが、いまの岸田政権のような保守政権の中でも、専守防衛を超えて本土以外の場所での戦闘を第一とすることはなかなか想定できませんでした、これは転換が難しい一歩だ。

 太平洋戦争を真剣にその敗戦を反省し、戦争の災禍から国民を守るという視座に立つならば、専守防衛という戦略は批判されるべきで、戦闘は日本本土へ戦果が及ぶ前に抑止する、少なくとも軍事力を使ってでも戦争そのものを開戦を封じ込める努力が必要です。

 しかし、日本に攻撃できないように相手本土、指揮中枢と航空基地や軍港とミサイル関連施設などに対して反撃能力を加える、特に指揮中枢は大都市に置かれており、政策決定当事者への攻撃は控えるとの指針は示されていますが、段階的悪化を留意しているのか。

 反撃能力は上記視点に基づいて、その上で反撃能力と陸上自衛隊や航空自衛隊の位置づけというものが随分と変わってくる点にどう対応するのか、わかりにくいのです。政府は陸上自衛隊全ての師団と旅団を機動運用部隊に指定する、としましたが、無理がある。

 地域配備師団は戦車大隊と特科部隊を手放していますので、もちろん軽装備の部隊でもアメリカ陸軍のように戦闘ヘリコプターが配備されるならば怖いものはないのですが、政府は戦闘ヘリコプターも廃止する方針、どういった戦闘を想定するのかわかりません。

 普通科連隊を地域配備師団の場合は地対艦ミサイル連隊へ組み替えてしまったほうがいいのではないか、地対艦ミサイル連隊は人員450名、しかしミサイルは発射装置16基と3斉射分の弾薬を一基数として配備されます、地対艦ミサイルは射程を延伸する計画だ。

 地対艦ミサイル連隊に普通科中隊と施設中隊に情報隊を加えた沿岸戦闘連隊、というような部隊に改編しなければ、政府がもう本土を戦場とする戦いは行わないという方針を示したのだから、反撃能力で一発でも多くのミサイルを発射する必要が生じます。

 偵察部隊についても、いまアメリカ海兵隊がコットンマウス偵察車などを試験していますが、海兵隊は水陸両用部隊から島嶼部防衛部隊へ大規模な転換を行っており、従来の装甲車の延長線上にある水陸両用装甲車で洋上偵察を以下に行うかに悩まされている最中で。

 政治が反撃能力整備を示して、それも従来の策源地攻撃ではなくかなり深部まで叩くという方針を示したのですから、その為には大掛かりな編成の組み換えが必要であり、それは天文学的な予算をも同時に、一時的であれ、必要となるのですが、政策がみえない。

 航空自衛隊については、次期戦闘機としてイギリスとイタリアとともに共同開発計画を進めていますが、反撃能力の一翼を担うかどうかでは根本から設計要素が異なり、F-15EX戦闘爆撃機か、オーストラリアが導入を一時検討していたB-21爆撃機の視野も要る。

 日本本土へ侵攻する航空部隊を撃滅する必要が生じることは確かですが、洋上での防空戦闘を行うのか基地を叩くのかでは全く必要な能力が変わりますし、敵爆撃機を阻止ししても弾道ミサイルや大量の自爆用無人機の飽和攻撃に都市部を焼かれては結果は同じ。

 現在の防衛力の延長線上に策源地攻撃を考え、基本的に専守防衛政策を踏襲するならば、想像できる範囲内での防衛力再編により対応できるでしょう、過去22年間のミサイル防衛により疲弊した防衛力を先ず再建し、その上で再編に当たればよいのだから、しかし。

 防衛予算概算要求がまもなく示されます、恐らく金額は過去最大規模となり、主として金額面での議論が交わされる事でしょう、ただこれは表面的なものであり、その予算が必要となった背景の是非を、多少知識が必要ですが、踏み込んでみてゆかねばならない。

 八月は概算要求の月であると共に五山送り火と終戦記念日の月です、特に終戦の日は不戦を平和への道と理解している方が多いようですが、そうでなく過去の戦争は政治をおカミの決め事として無関心が醸成した結果のようにも思える故、関心が必要だと思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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