■特報:世界の防衛,最新論点
今回は各国砲兵装備の最新動向についてまとめてみました。冷戦後に各国の砲兵削減と共に砲兵の運用上の位置づけと射程延伸が装備の在り方を含め転換点を迎えようとしています。
日本の陸上自衛隊は富士教導団特科教導隊へ新しく開発した19式装輪自走榴弾砲の配備を開始しました、この19式装輪自走榴弾砲は装備実験隊において評価試験が行われており、2019年には富士総合火力演習へも参加しています。今回配備されたのは特科教導隊第4中隊で、この中隊は昨年度まで最大の火砲である203mm自走榴弾砲を装備していました。
19式装輪自走榴弾砲は旧式化したFH-70榴弾砲を置換える国産の装輪自走榴弾砲ですが、特科教導隊では第1中隊と第2中隊がFH-70榴弾砲を装備しており、19式装輪自走榴弾砲配備開始ののちにもこの2個中隊の編成は維持されています。なお師団特科連隊に配備されたFH-70に対し、19式装輪自走榴弾砲は師団特科を置換える方面特科連隊へ配備される。
203mm自走榴弾砲は冷戦時代に旧式化した第二次大戦型の203mm榴弾砲と155mmカノン砲の後継として投入され、方面特科群や特科団などに91両が配備されましたが、方面隊の全般火力は平成時代にMLRS多連装ロケットシステムへ置き換えられ、そのMLRSも部隊再編により廃止される大隊が出ています。特科教導隊改編は象徴的な転換点といえます。
■MAN-HX-3装輪自走砲
装輪自走砲が従来型の自走榴弾砲を圧倒する時代は近いのかもしれません。
ハンガリー軍はドイツのラインメタル社が発表したMAN-HX-3応用型装輪自走砲の導入計画を発表しました。MAN-HX-3応用型装輪自走砲はMAN社が開発した新型トラックであり、もともとは戦車輸送車等に用いられる10輪型大型輸送車となっている、ラインメタル社はこの大型の車体であれば自走榴弾砲を車載するよりもそのまま自走砲化したかたち。
MAN-HX-3応用型装輪自走砲はMAN-HX-3大型輸送車の荷台部分に砲塔を直接搭載していますが、これは本来であれば自走榴弾砲を車載する空間に砲塔を載せる為に事実上、艦砲並の大きさまで許容する冗長性があります。この自走榴弾砲の特筆すべき点は、現在搭載されている火砲は52口径ですが将来的に60口径の長砲身砲搭載も可能となっています。
MAN-HX-3応用型装輪自走砲は砲塔システムが無人化され、その操砲は車体装甲区画の装甲キャビンより可能となっています。52口径砲の主砲は射程80kmを発揮しいますが60口径砲では100kmに達するという。ハンガリー軍は2019年にドイツよりPzH-2000自走榴弾砲24門を導入しており、野戦砲兵火力の強化を進めている証左といえるでしょう。
■PzH-2000自走榴弾砲
PzH-2000自走榴弾砲をドイツが捨てるというので飛びついたのがリトアニアです、自衛隊の99式自走榴弾砲と同じ52口径砲だ。
リトアニア軍はドイツよりPzH-2000自走榴弾砲18門の導入計画を完了しました。バルト三国の一角を占めるリトアニアはロシア軍の軍事圧力に曝されています、それはロシアの飛び地カリーニングラードに隣接する地域、スヴァルキギャップに位置する為であり、この軍事圧力に対応するべく、リトアニアは北大西洋条約機構NATOへ加盟しています。
PzH-2000自走榴弾砲について、リトアニアは2015年にドイツ連邦軍より余剰となった火砲21両の取得を発表します、そして2両を訓練用とし、更に3両を予備部品として温存する方針としました。ただ、車両そのものは管理するクラウスマッファイ社よりアップデートが必要と伝えられ、訓練用の2両については2018年に譲渡されましたが、その後には。
52口径155mm砲を搭載する世界でも最有力の自走火砲の一つであり、ドイツよりPzH-2000自走榴弾砲18門の導入は時間を要しましたが2022年に完納となりました。リトアニア軍はこれにより初の自走砲により砲兵大隊を編成する事となり、またリトアニア軍はこの指揮通信用にM-577指揮通信車やBPz2支援車輛なども併せて導入しています。
■カエサル2装輪自走榴弾砲
19式自走榴弾砲を含めすべてのとトラック自走砲の始祖がうまれかわる。
フランスのネクスター社はカエサル装輪自走榴弾砲改良型に新たにアルクス社製車体の採用を発表しました。カエサル装輪自走榴弾砲改良型はカエサル2とされ、現在製造されている拡大改良型では車体部分が大型化し戦術輸送機での空輸能力が断念されていますが、カエサル2はアルクス社製六輪トラックを用いる事で軽量化と防御力強化を両立します。
アルクスは1966年にルノートラックディフェンスとして創業しましたが2001年からはスウェーデンのボルボ社傘下に売却されています、しかし2018年にルノーグループに再度売却され2020年にフランス政府の規制により国防関連企業への外国会社持ち株規制が加わり、この結果としてスウェーデンのボルボからは切り離され、ルノー完全子会社化されました。
カエサル2はエンジンを460hpへ強化するとともに変速装置などを更新し、またNATO防弾規格レベル2の車体装甲を付与する計画です。フランス陸軍ではカエサル装輪自走榴弾砲の老朽化を受け、2024年までに新たにカエサル2を109両新規生産し置換えるか、既存のカエサル76両を近代化改修しつつ33両の新規調達を行うか決定しなければなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今回は各国砲兵装備の最新動向についてまとめてみました。冷戦後に各国の砲兵削減と共に砲兵の運用上の位置づけと射程延伸が装備の在り方を含め転換点を迎えようとしています。
日本の陸上自衛隊は富士教導団特科教導隊へ新しく開発した19式装輪自走榴弾砲の配備を開始しました、この19式装輪自走榴弾砲は装備実験隊において評価試験が行われており、2019年には富士総合火力演習へも参加しています。今回配備されたのは特科教導隊第4中隊で、この中隊は昨年度まで最大の火砲である203mm自走榴弾砲を装備していました。
19式装輪自走榴弾砲は旧式化したFH-70榴弾砲を置換える国産の装輪自走榴弾砲ですが、特科教導隊では第1中隊と第2中隊がFH-70榴弾砲を装備しており、19式装輪自走榴弾砲配備開始ののちにもこの2個中隊の編成は維持されています。なお師団特科連隊に配備されたFH-70に対し、19式装輪自走榴弾砲は師団特科を置換える方面特科連隊へ配備される。
203mm自走榴弾砲は冷戦時代に旧式化した第二次大戦型の203mm榴弾砲と155mmカノン砲の後継として投入され、方面特科群や特科団などに91両が配備されましたが、方面隊の全般火力は平成時代にMLRS多連装ロケットシステムへ置き換えられ、そのMLRSも部隊再編により廃止される大隊が出ています。特科教導隊改編は象徴的な転換点といえます。
■MAN-HX-3装輪自走砲
装輪自走砲が従来型の自走榴弾砲を圧倒する時代は近いのかもしれません。
ハンガリー軍はドイツのラインメタル社が発表したMAN-HX-3応用型装輪自走砲の導入計画を発表しました。MAN-HX-3応用型装輪自走砲はMAN社が開発した新型トラックであり、もともとは戦車輸送車等に用いられる10輪型大型輸送車となっている、ラインメタル社はこの大型の車体であれば自走榴弾砲を車載するよりもそのまま自走砲化したかたち。
MAN-HX-3応用型装輪自走砲はMAN-HX-3大型輸送車の荷台部分に砲塔を直接搭載していますが、これは本来であれば自走榴弾砲を車載する空間に砲塔を載せる為に事実上、艦砲並の大きさまで許容する冗長性があります。この自走榴弾砲の特筆すべき点は、現在搭載されている火砲は52口径ですが将来的に60口径の長砲身砲搭載も可能となっています。
MAN-HX-3応用型装輪自走砲は砲塔システムが無人化され、その操砲は車体装甲区画の装甲キャビンより可能となっています。52口径砲の主砲は射程80kmを発揮しいますが60口径砲では100kmに達するという。ハンガリー軍は2019年にドイツよりPzH-2000自走榴弾砲24門を導入しており、野戦砲兵火力の強化を進めている証左といえるでしょう。
■PzH-2000自走榴弾砲
PzH-2000自走榴弾砲をドイツが捨てるというので飛びついたのがリトアニアです、自衛隊の99式自走榴弾砲と同じ52口径砲だ。
リトアニア軍はドイツよりPzH-2000自走榴弾砲18門の導入計画を完了しました。バルト三国の一角を占めるリトアニアはロシア軍の軍事圧力に曝されています、それはロシアの飛び地カリーニングラードに隣接する地域、スヴァルキギャップに位置する為であり、この軍事圧力に対応するべく、リトアニアは北大西洋条約機構NATOへ加盟しています。
PzH-2000自走榴弾砲について、リトアニアは2015年にドイツ連邦軍より余剰となった火砲21両の取得を発表します、そして2両を訓練用とし、更に3両を予備部品として温存する方針としました。ただ、車両そのものは管理するクラウスマッファイ社よりアップデートが必要と伝えられ、訓練用の2両については2018年に譲渡されましたが、その後には。
52口径155mm砲を搭載する世界でも最有力の自走火砲の一つであり、ドイツよりPzH-2000自走榴弾砲18門の導入は時間を要しましたが2022年に完納となりました。リトアニア軍はこれにより初の自走砲により砲兵大隊を編成する事となり、またリトアニア軍はこの指揮通信用にM-577指揮通信車やBPz2支援車輛なども併せて導入しています。
■カエサル2装輪自走榴弾砲
19式自走榴弾砲を含めすべてのとトラック自走砲の始祖がうまれかわる。
フランスのネクスター社はカエサル装輪自走榴弾砲改良型に新たにアルクス社製車体の採用を発表しました。カエサル装輪自走榴弾砲改良型はカエサル2とされ、現在製造されている拡大改良型では車体部分が大型化し戦術輸送機での空輸能力が断念されていますが、カエサル2はアルクス社製六輪トラックを用いる事で軽量化と防御力強化を両立します。
アルクスは1966年にルノートラックディフェンスとして創業しましたが2001年からはスウェーデンのボルボ社傘下に売却されています、しかし2018年にルノーグループに再度売却され2020年にフランス政府の規制により国防関連企業への外国会社持ち株規制が加わり、この結果としてスウェーデンのボルボからは切り離され、ルノー完全子会社化されました。
カエサル2はエンジンを460hpへ強化するとともに変速装置などを更新し、またNATO防弾規格レベル2の車体装甲を付与する計画です。フランス陸軍ではカエサル装輪自走榴弾砲の老朽化を受け、2024年までに新たにカエサル2を109両新規生産し置換えるか、既存のカエサル76両を近代化改修しつつ33両の新規調達を行うか決定しなければなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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