北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

浜田防衛相ソマリア沖海賊事案第2次派遣海賊対処水上部隊編成へ準備命令

2009-06-30 22:38:08 | 防衛・安全保障

◆護衛艦『はるさめ』『あまぎり』

 海上自衛隊の赤星海上幕僚長は6月23日の記者会見で、ソマリア沖海賊対処事案の第2次派遣海賊対処水上部隊の概要を発表した、本日30日に浜田防衛大臣より正式に派遣準備命令が発令された。

Img_7202  第2次派遣部隊は、佐世保基地の第2護衛隊群第2護衛隊司令在原政夫1佐を指揮官として編成し、隷下に第6護衛隊の護衛艦「はるさめ」、第2護衛隊の護衛艦「あまぎり」を以て成る部隊で、今回の派遣は海上警備行動ではなく、7月に施行される海賊対処法に基づき派遣される見通しとなっている。

Img_9789  護衛艦はるさめ、は艦長橋向亮介2佐、むらさめ型護衛艦の二番艦で、各種武装を垂直発射器(VLS)に収め、ステルス性の向上を図った護衛艦で満載排水量は6200㌧。護衛艦あまぎり、は、艦長岡田岳司2佐、護衛艦隊用大型汎用護衛艦としては2代目となる、あさぎり型護衛艦の四番艦として建造され、2本のマストが力強い印象を与える艦容、満載排水量は4800㌧。

Img_6043  第1次派遣部隊には、護衛艦さざなみ、護衛艦さみだれ、が派遣されているが、今回は、あさぎり型が派遣されるということで、緊急時には対艦ミサイルを用いて対水上戦闘が可能なSH-60Kが搭載できるのか、機銃と防弾板を搭載したSH-60Jを運用するのかなど、些細な点ではあるが興味が湧く。

Img_7229  他方で、あさぎり型護衛艦は、ヘリコプターが常用1機搭載にて運用しているが、必要に応じて、さらに1機を搭載することが出来るだけの格納庫容量を有している。一方で、あさぎり型の科員居住区は3段ベッドを採用しており、仮にもう一機、予備のヘリコプターを搭載し、海上保安官の同乗を考えた際、居住区に余裕はどの程度残されるのか、という心配もある。

Img_1431  海賊対処法では、日本関係船舶以外の外国船も警護対象となり、警護対象の民間船に近づく海賊船に対しても、武器使用が可能となる。写真では艦橋ダビットの下に12.7㍉機銃の銃座がみえるが、海賊対処任務に派遣される護衛艦には、機銃の銃座数を増強し、防弾板などを追加する改修が行われる。

Img_9077_1  12.7㍉重機関銃、護衛艦に搭載されている写真が手元に無いので、写真は米海軍のミサイル駆逐艦に搭載されている重機関銃であるが、射程1000㍍、発射速度は毎分600発で、このほか、5.56㍉機銃MINIMIなども搭載されるようだ。なお、ソマリアの海賊には、23㍉クラスの機関砲を保有しているという情報があるが、そういった火器は比較的大型であるので、甲板に載せて攻撃を企てた海賊船が万一いたとしても、護衛艦からは76㍉単装砲が対処する事が可能だ。

Img_9381  このほか、護衛艦には、複合艇の搭載も行われており、必要に応じて臨検任務に対応することが可能だ。護衛艦には、対潜、対空、対水上戦闘に対応する各種ミサイルやレーダー、ソナーを搭載しているものの、海賊は潜水艦や爆撃機を有している訳でもない。他方、一見しただけでは武装漁船との区別は付きにくいため神出鬼没である。哨戒ヘリ、レーダー、複合艇、機銃などを駆使し、任務にあたる。

Img_2508  蛇足ながら、第1次派遣隊の護衛艦は、「さざなみ」と同名の駆逐艦漣が、日本海海戦にてバルチック艦隊司令官であるロジェストヴェンスキー中将座乗艦を拿捕した殊勲艦として知られるが、駆逐艦天霧は、真珠湾攻撃に続く1942年のインド洋作戦やミッドウェー海戦に参加、ガダルカナル島艦砲射撃に参加するとともに、後のアメリカ第35代大統領JFケネディ(当時中尉)が指揮する魚雷艇と交戦、これに衝突し撃沈している。その模様は、1963年公開の映画“PT-109”に描かれている。

Img_4867  第1次派遣部隊は、3月30日から延べ32回にわたる護衛任務を実施、計96隻の船舶を護衛している。また、派遣海賊対処航空隊として展開するP-3C哨戒機部隊も6月11日から哨戒飛行を実施している。上陸や休養が限られるなど文字通り厳しい任務であり、第2次派遣部隊への交代を早急に行う必要性があるのは誰の目にも明白だろう。

Img_7415 同時に収束の見通しが無いソマリア沖海賊事案に対し、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援任務への派遣とともに、教育訓練や艦艇のローテーション、さらに弾道ミサイル防衛や通常の哨戒任務と、どのようにして両立させるかを海上自衛隊、政府一体となって検討する必要があるといえるのではないだろうか。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

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協同転地演習2009 自衛隊貨物輸送を支えるJR貨物の老朽貨車

2009-06-29 22:47:50 | 防衛・安全保障

◆貨車の面からみた北方機動

 協同転地演習自衛隊鉄道貨物輸送。昨日は、JR貨物による自衛隊輸送、というかたちで掲載したのだが、本日は、もう少し踏み込んだ面から掲載してみたい。

Img_9323  私鉄、特にパノラマカーを中心に撮影し、ブルートレインばかりを追いかけてきた小生、自衛隊機材鉄道輸送とはいえ、貨物列車だけを撮影に足を運ぶのは初めてで、貨物時刻表というものの存在も数年前まで知らなかったほど。そんななか、貨物輸送にも詳しい方にお教えいただいた内容を中心に掲載。餅は餅屋、という気もするのだけれども、本ブログにて掲載。

Img_9254  今回の自衛隊貨物列車は、牽引がEF-65電気機関車PF1094で、牽引した自衛隊装備が、78式戦車回収車1両、資材運搬車6両、小型ドーザ6両という編成。ちなみに、貨車の中には、協同転地演習以外ではほとんど見かけないようなものも運行されており、老朽化も著しいとのことだ。

Img_92601  78式戦車回収車を運搬するチキ7000。チキ7000は35㌧の積載が可能な汎用の長物車であるので、全備重量38.9㌧の78式戦車回収車は本来搭載できないのだが、履帯やカバー、ドーザーブレードなど取り外せるものはすべて取り外して35㌧に収めた模様。これは、言いかえれば74式戦車であっても砲塔を取り外せば運搬は可能なのだろうか。

Img_9259  チキ7129貨車。東高島駅常備の貨車ということが書かれている。東高島駅は横浜にあるJR貨物が管理する貨物駅だ。JR貨物には、チキ5500型として、37㌧ロングレール輸送用の貨車があるのだが、路盤が一応この重量には対応しているというのならば、技術的には空虚重量36㌧、全備重量38㌧の74式戦車も搭載できるのかな、とも思う次第。

Img_9278  資材運搬車を輸送するのもチキ7000型。資材運搬車は、全長4.3㍍、幅2.15㍍、全高2.185㍍で重量は5㌧。資材運搬車の前後のスペースを見ると、もう一両充分搭載できそうな印象だ。ちなみに、78式戦車回収車は、全備重量38.9㌧、全長7.95㍍、幅はスペードを取り外した状態で3.18㍍、全高2.4㍍となっている。

Img_9277  チキ7000型は、新興駅常備車両。新興駅は、横浜市のJR貨物が管理する貨物駅で、東高島駅と同じく、東海道本線貨物支線の貨物駅。ちなみにJR貨物ではチサ9000型という、74式特大トラックの搭載も可能な貨車が運用されており、こちらのほうが北方機動の際には有用な装備とも思えたりする。

Img_9337  トラは、名古屋臨海鉄道東港駅の無蓋貨車。昨日掲載した記事にも載せたが、鉄鉱石や砂利などを輸送する貨車、しかし、鉄道車両の台車などの部品も輸送することがあるようだ。運搬している小型ドーザは、重量が3.79~5.13㌧。排土板やバックホーの取り付けにより、全長や重量が変化するとのこと。

Img_93381  ご覧のとおり木製で、老朽化はかなり進んでいるようだ。C.ジョニー氏曰く、車両の老朽化がこのまま進んだ場合は、鉄道輸送を今後も実施するならば防衛予算により私有貨車を調達する必要が出てくるのかも、とも。ちなみに陸上自衛隊には、1960年から1966年までの間、鉄道任務にあたる第101建設隊という部隊があった。

Img_9307  第101建設隊は、その短い部隊史にて、国鉄払下げの9600型蒸気機関車を用いた運転や整備の訓練、ポイントや信号機操作、車両連結、測量や線路建設と保線作業、鉄道用の架橋工事などの訓練を実施、新潟38豪雪や新潟地震などの災害派遣に伴う線路復旧とともに、島松、霞ヶ浦、古河、桂などの補給処での専用線工事なども実施したとのこと。ちなみに、朝霞駐屯地には、鉄道輸送訓練の機材などが置かれているのだとか。そこまではいかずとも、鉄道網が整備された日本。鉄道を用いた自衛隊輸送は、もっと活発に行われてもいいのかな、とも思った次第。

HARUNA

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協同転地演習自衛隊貨物輸送 第10師団、東海道本線を北方へ!

2009-06-28 23:18:00 | 防衛・安全保障

◆JR貨物による自衛隊車両の輸送

 陸上自衛隊協同転地演習、旧称北方機動演習が実施中である。本日は、JR貨物の協力を得て第10師団の車両を搭載した貨物列車が東海道本線を行く様子を紹介したい。

Img_9230  EF-65電気機関車の牽引で東海道本線を北海道に向かう自衛隊貨物輸送。傍目にはEF-65が牽引するJR貨物による普通の貨物列車なのだが、よくみると、その牽引する車両は、無蓋貨車に載せられた第10師団の各種車両である。清州駅にて撮影で、昨日停車していたのが新快速から見えた編成、稲沢貨物ターミナルより出発した貨物列車だ。

Img_9253  本来であれば撮影ポイントは、いつもお世話になる方々のご指南を仰ぐのだが、まきなみ、しきなみ、あやなみ、イラストリアスなどの関係の所用があるとのことで、今回、地理に疎い小生一行二名で展開。まきなみ、しきなみ、あやなみ、イラストリアス、海上自衛隊護衛艦と海上保安庁巡視船と英海軍空母の合同海賊対処演習でもあったのだろうか(違)。

Img_9256  78式戦車回収車。無蓋貨車に載せられているが、カバーが被せられ、履帯が取り外されている。一瞬73式装甲車かとおもったのだが、発煙弾発射器の位置が違い、しかも駆動転輪の位置が違う。特大トラックでも運搬可能な73式装甲車ならば別として、74式戦車の車体を改修した78式戦車改修車は重量があり、しかも幅が広い。

Img_9263  74式戦車は、日本の在来線軌間1067㍉では、鉄道輸送は不可能といわれていたのだが、履帯とそのカバーを取り外したならば、写真のように鉄道貨物輸送に対応するようだ。74式戦車の場合はどうなのか、ちょっと興味が湧く次第。他方、よく部品などを取り外し、創意工夫で搭載したものだ、と後方支援連隊の奮闘には驚かされた。

Img_9276  資材運搬車。今回の貨物輸送でいちばん数が多かったのは、この資材運搬車。野戦築城などの機材や資材を運搬するための車両で、各普通科連隊の本部管理中隊施設作業小隊などに配備されている。こうした鉄道貨物輸送では、戦車大隊本部などに配備されている73式装甲車などが輸送される事例が多かった。

Img_9356  これは装軌式、つまり一般にキャタピラ式と呼ばれる車両が長距離での自走移動に向いていない、もしくは多くの後方支援を必要とすることから貨物輸送を行っており、61式戦車も1067㍉軌間での輸送が可能なよう設計されていた。しかし、近年、高速道路などを高速で自走出来る96式装輪装甲車などが配備されており、鉄道輸送されることが少なくなったのだろうか。

Img_9337  電気機関車を先頭に、78式戦車回収車、資材運搬車、そして写真の小型ドーザという編成。無蓋貨車、特に写真の小型ドーザを搭載している貨車の“コトラ”は珍しいらしいのだが,本来、鉄鉱石や石炭などを運搬する無蓋貨車に、施設車両、つまり車両が載せられているのも珍しいといえよう。

Img_9330  自衛隊貨物輸送の編成。ブルートレインを撮影するときのように、電気機関車を中心に撮っていたのだが、考えてみれば、後ろからのアングルの方が、他の貨物列車との差異が端的に出ているといえるかもしれない。清州駅通過後、しばらく停車したのち、東海道本線を東京方面へ、移動していった。

HARUNA

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第一次陸上自衛隊協同転地演習開始 6月24日~8月2日

2009-06-27 23:00:55 | 防衛・安全保障

◆陸上自衛隊最大規模の演習

 6月24日から8月2日にかけて、陸上自衛隊では第一次協同転地演習を実施している。協同転地演習とは、北方機動演習の演習内容を改めたものである。

Img_4322  現在発売中の月刊世界の艦船誌通巻710号167頁によれば、今回の協同転地演習を第一次協同転地演習とし、演習計画に基づき、中部方面隊管区から北部方面隊管区へ、陸上自衛隊の装備や車両の長距離移動が実施されているとのこと。これを通じて、日本全土への有事の際の緊急展開の実施手順を取得する目的がある。

Img_74241  協同転地演習の実施に際して、陸上自衛隊車両は、鉄道、車両による自走、航空機、艦船による移動訓練が行われ、海上自衛隊からも、おおすみ型輸送艦が1隻参加しているとのこと。例年通りであれば、北海道の浜大樹海岸にLCACなどを用いた戦車や車両など各種装備品の揚陸訓練も行われる。

Img_7856  鉄道輸送では、貨物列車が使われる。本日、名古屋の今井商店破産整理の売り出しへ、長躯名古屋へ展開したのだが、東海道本線新快速の車内より名古屋近傍の稲沢貨物ターミナルの奥に資材運搬車を積載した貨物列車が停車していたのが望見出来た。奥の方だが、自衛隊貨物輸送というものを偶然見ることができ、少し驚いた次第。

Img_8623  このほか、北方機動演習の際には、民間のRORO船や通常の旅客機なども輸送に参加しているので、今回の協同転地演習でも、行われるのだろうか。特に民間のRORO船であれば、保有数も輸送能力も海上自衛隊の輸送艦よりも大きなものが多く、旅客機の便数も航空自衛隊の輸送機よりも多い。

Img_9017_1  もともと協同転地演習の前身、北方機動演習は、冷戦時代、戦略的に重要な宗谷海峡と津軽海峡を睨む北海道に対し、その軍事的圧力が強まった場合に、本州の中部方面隊、西部方面隊などから師団規模の増援部隊を展開させる目的で開始されたものであるが、冷戦後、脅威対象の多極化に対応するべく、北方に囚われない戦略展開の能力を錬成する目的で名称が改められた背景がある。

Img_9781  同時に北海道には、北部方面隊が運用する広大な演習場があり、本州や九州、四国などでは難しい火砲の長距離射撃訓練などを実施することが可能であることから、広大な演習場を駆使し、より高度な展開や射撃訓練を行う目的がある。少数の陸上部隊により広大な日本本土を防衛するという任務上、大きな意義を持つ演習といえよう。

HARUNA

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防衛産業と武器輸出三原則② 防衛産業の根底を支える中小企業

2009-06-26 23:11:31 | 防衛・安全保障

◆輸出だけでは解決できない問題

 防衛大綱の改訂が年末に行われるとのことで、装備品定数の見直しから、策源地攻撃まで、加えて防衛費縮減に伴う防衛装備品調達減少のなかで、防衛産業を維持させる手法として、武器輸出三原則の運用を見直し、一部防衛装備品の輸出を検討するという提案が為されている。

Img_5285  そもそも日本の自衛隊装備に競争力があるのかと問われれば、三菱重工が開発中の新戦車の価格は概ね7億円とされ、ドイツ製レオパルド2A6の価格が、2007年の時点で発注をかけた場合20億を越えてしまうといわれ、韓国製最新鋭戦車K-2の価格は13億円程度であることを考えればかなり安価に収まっている。

Img_5305_2  なかなか宇宙に人工衛星を打ち上げられないテポドン一発300億円といわれるので、発射コスト100億円前後で、宇宙に4~6トンを送り出せるH-2Aの方が価格では競争力がある。この他にも詳細は後日掲載するが、ミサイルやレーダー等の装備品、また艦船の価格でも日本製の装備品は国際競争力を有しているといえる。

Img_6135  もっとも、防衛装備品はすべて安価かと問われれば一着50万円といわれる戦闘防弾チョッキや10万円といわれる鉄帽など、個々の面を精査すれば、量産効果が出ていない負い目か、高い装備もあるのだが、一方で安い装備も存在するという実情もあるのだ。海外の要求性能と合致していないのでは、とか、運用体系が根本から異なる、というような点から、輸出すれば防衛省からの発注では維持できない防衛産業の維持には寄与するのではないかという視点が出てくるのもうなづける。

Img_5164_1  他方で防衛産業維持の観点からの輸出という方策を採る場合、単に輸出ということだけでは対応できない点が出てくる。日本最大の防衛産業である三菱重工は、年間の総売上高3兆4000億円しかし、防衛装備品の占める割合は一割未満である。これは軍需産業としては、この比率は意外と低い。

Img_0591  世界最大の軍需産業として知られる、と同時にトヨタ自動車などと比べると企業規模は小さいのだが、ロッキードマーティンの防衛装備品(軍需品というべきか)への需要は全体の売り上げに対して92%が軍需。世界二位で旅客機と共に戦闘機も生産するボーイング社なども48%、イギリス最大手にして最後のイギリス製造業ともいわれるBAEシステムズ社で95%だ。

Img_7223  対して、日本最大の軍需三魚である三菱重工は前述のとおり10%、日本二位の川崎重工も年間総売上高1兆3000億円であるが、防衛装備品の占める割合は6%、主要防衛産業十位までの企業では、このほか2%台や、1%未満の企業が多く、一般に防衛産業として認知されている企業は、防衛装備品への依存度が極めて低いのが特色だ。

Img_0013  防衛装備品への時依存度が低い大企業であれば、これは過去に日産自動車のように撤退した事例もあるのだけれども、企業体力が相応に大きく、加えて事業の分野が多岐に及ぶことから、防衛装備品の調達数減少は、打撃ではあっても、企業の存続が危ぶまれる、持ちこたえられないほどのものではない。

Img_1351  他方で、町工場がそのまま戦車や航空機、電装品などの主要な、そして民生品では他に代替品が無いような装備品を生産している、いわば、防衛産業の下請け企業的な存在といえる会社の場合、企業規模の関係上、総売上高は大きくないものの、防衛装備品への時依存度は高い、という事例がある。

Img_3502  冷戦終結後、軍需産業の民需転換などが叫ばれ、幾つかの試みがなされたものの、既に寡占市場となっている産業に新規に異なる業種からの参入というのは容易なことではなく、結果的に民需転換を行うのではなく、合併と資本提携により企業体力を高めるという形で業界再編を乗り越え、今日に至っている。

Img_1052  日本の場合、独自外交を進めるため、そして外交上、武器輸出を行わないという選択肢を採り、国際競争からあえて防衛産業を遠ざけ、今日に至る。この中で、例えば国外の装備品の共同生産というかたちで、部品単位での輸出、これは既に汎用品の分野ではかなり広範に行われているようだが、汎用品以外で、防衛装備品に不可欠な特殊用途の備品を生産する中小企業を如何に維持するかが、本質的な問題となる。

Img_0811  中小企業については、下請けである以上、海外から部品を調達しての多国間国際分業により生産を行おうにも、基本的に日本の装備品は少数多年度調達が前提であり、継続的に部品の供給を受けられなければ、全体の生産計画にも響く。これは、長期的視野に立てば企業経営に大きな不確定要素を付け加えることになる。

Img_0801  つまり、安易に部品だけを海外からの供給に依存するということは、途中で供給が滞るかもしれないというリスクや、部品供給に起因する装備品の稼働率確保という観点からも、実は望ましくない結果につがなるものである。即ち、広大な面積を有する日本列島を領域とする国家の国民と社会生活を守る為には、現状の予算規模、人員規模、装備定数はぎりぎりの均衡点の上で成り立っていた訳である。稼働率を高く維持することで、少ない装備と人員を最大限の抑止力に結び付けてきた訳だ。

Img_4735  縁の下の力持ちというべきか、これら中小企業を対象とした場合、安易な業界再編というのは、ちょっと現実性が無いわけであるし、さりとて国有化するわけにもいかない。一方で、技術や生産基盤の集合体である企業がいったん失われてしまえば、その再建には大きな負担を税金から行う必要が出てくる。

Img_6844  武器輸出三原則に論点を向ける前に、国策としての防衛産業の基盤となる中小企業への補助、そして技術の喪失や流出を防止するための議論が重要なのではないか、という点。さらに、製造用工具などを企業の“自腹”、つまり社会的公益性に依拠した善意に依存してきたのであるが、これからはこうした工具や生産ライン整備費用などを、国が捻出するという構造が必要になるのではないだろうか。

HARUNA

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制式名称はRF-15J? 航空自衛隊RF-4E後継 次世代偵察機の展望

2009-06-25 23:36:10 | 先端軍事テクノロジー

◆偵察番長?無人偵察機を随える戦術偵察機

 F-15戦闘機は、近代化改修計画を経て当分、日本の防空に重要な役割を果たしつつ現役で運用される見通しとのことだが、F-15初期の機体の中には近代化改修に対応していない機体がある。

Img_8226  この初期型のF-15Jを偵察機として改修し、老朽化が進むRF-4Eの後継機に充てようという構想が進められている。偵察型に転用される機体は、近代化改修に対応していない非MSIP機で、この中の十数機が偵察機に改修されるとのことだ。偵察機に転用された場合、恐らくRF-15Jが制式名称になるものと思われる。

Img_9608_1  航空自衛隊では、偵察飛行を行う部隊として百里基地の第501飛行隊を展開させ、偵察専用型のRF-4Eを運用していたが、F-4EJ戦闘機について、90年代前半に近代化改修に対応していない機体を偵察機に転用し、RF-4EJとして運用しら事例が過去にある。初期型のF-15Jを偵察機に改修するというのは、先にF-4EJで実施した手法を踏襲することになる訳だ。

Img_8169  RF-15Jの試作開発は現在進められており、基本的にF-15Jに対し、外装式の偵察ポッドを搭載することで偵察機とする計画とされる。基本的に、F-15Jに偵察用機材を搭載するわけであるから、F-15Jが有する広大な戦闘行動半径と空中での高い運動性能は維持されることとなる。これだけでもRF-4と比べてポテンシャルが高まることとなる。

Img_8211  外装式の偵察ポッドを搭載する運用であれば、新型の偵察機材が開発された際にはいち早く換装することが出来るし、実用上昇限度は約20000㍍、もともと搭載量の大きいF-15Jであるから、高度な偵察機材を搭載すれば、高高度偵察機として、遠距離目標に対しても偵察を行うことは可能となってくる。

Img_9787  さて、先月から岐阜基地にて、無人機を主翼の下に搭載したF-15Jが幾度か目撃されており、航空雑誌の写真投稿でもその様子が掲載されている。技術研究本部が中心となり開発されている無人器は、無人偵察機として、年度内に硫黄島での実験が開始されるとのことだ。胴体下部に偵察機材が搭載され、偵察を行う。

Img_9745  RF-15Jについて、岐阜基地で実施されている前述したF-15Jへの搭載試験と併せて考えると、偵察機としての運用の際に主翼の下から、無人偵察機を発進させ、強行偵察を行う、という運用が行われる可能性がある。主翼の左右に一機づつ、ということは最大で二機の無人偵察機を運用することができ、RF-15Jも偵察任務に当たることが出来る、ということになる。

Img_3409  空対艦ミサイルASM-1/2や開発中のASM-3を最大四発搭載することが可能なF-2支援戦闘機は、一部で通称:対艦番長、としてその名を馳せ、親しまれているが、RF-15Jが二基もの無人機、それもかなり大型の無人偵察機を搭載できるならば、その愛称は、やはり偵察番長、というべきだろうか。

Img_0712   平時の際の偵察や情報収集に用いるのであれば、速度よりも滞空時間に優れた機体、そして各種センサーを搭載した写真のEP-3のような機体の方が運用の柔軟性と要員の負担軽減につながる。しかし、RF-15Jにしても、それから無人偵察機にしても、主翼のアスペクト比が大きいRQ-1やMQ-9といった機体と比べ、速度を重視したような形状となっている。

Img_9594_1 超音速での運用が可能な偵察機を開発する背景には、いわゆるテロとの戦いにおいて運用されるRQ-1プレデターのような、比較的低速の航空機では、生き残れないような状況での運用、つまり中射程以上の地対空ミサイルを運用する正規軍に対して強行偵察を行おうという運用の要求があるからに他ならない。

Img_0495  他方で、有人偵察機は、撃墜された場合などのリスクは大きい。しかしながら、無人偵察機では運用の柔軟性で今日ではまだ有人機に見劣りする面があることも事実だ。そうした状況を踏まえたうえで、こうした強行偵察を行わなければならない大規模な通常戦力による武力紛争が発生する可能性のある地域は限られており、この限られた地域に日本は接しているからこそ、偵察番長を創らなければならない国情がある訳だともいえるだろう。

HARUNA

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リニア中央新幹線建設ルートの模索③ 伊那谷ルートは全般的にマイナス面が大きい

2009-06-24 20:23:20 | コラム

◆リニア新幹線を考える

 リニア新幹線の建設ルートについて、最短距離で結ぶことが運賃と所要時間、建設工費を一割から二割低減させ、開通までの時間も短縮できる点を第一に記載した。

Img_6318  第二に、これは昨日の記事であるが、新幹線と在来線の競合では並行する在来線特急は勝てない、中央本線との競合を避けるルートを選択しなければ、中央本線の特急あずさ、しなの、の旅客がリニア新幹線に流れてしまい、結果的に廃止に追い込まれる可能性を提示した。これは同時に中央本線特急停車駅で、かつリニア新幹線停車駅が整備されない区間での過疎化を防ぐためにも必要な措置ではないか、という論理を提示した。

Img_8469  本日、すなわち第三回は、昨日の記事を補完、もしくは延長するもので中央本線の維持を考えると、やはり長野県は南アルプスルートにて建設工事を行うべきだ、という論理を補強したい。前回は、特急あずさ、特急しなの、の存続にかかわる問題であると表現したが、可能性として中央本線そのものから、JRが一部撤退し、第三セクター鉄道となる可能性がある。

Img_8448  具体的な事例としては、東北本線の一部が、東北新幹線が開通した1982年の6月23日(昨日は東北新幹線開通記念日だったのだ)を契機として、長距離輸送需要が在来線である東北本線から東北新幹線に移行し、結果、今日では東北本線の盛岡駅から八戸駅まで、JRが撤退し、この区間は、IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道という第三セクターによる経営が行われている。

Img_0345  東北本線の“寸断”というような状況は、いわて銀河鉄道、青い森鉄道の路線を経由するJRの特急列車について、JRの特急料金に加え第三セクター鉄道の特急料金が加算されるため、寝台特急あけぼの、はこの区間を迂回、北斗星はJR特急料金を特例措置で割り引くという非常措置を採っている。前者は迂回されることで地域に、後者は加算されることで利用者に、それぞれ負担を強いているということだ。

Img_2928  また、北陸新幹線長野区間開業により、信越本線の横川駅と軽井沢駅間が廃線となり、軽井沢駅と篠ノ井駅間は、しなの鉄道という第3セクターが運行する形態となっているし、九州新幹線の開業により、鹿児島本線も全線からJR九州が撤退、第三セクター方式により運行されている。間接的にではあるが、新幹線に追いやられる形で九州ブルートレインが廃止され、観光需要にも、プラス面もあるのだけれども、地域によってはマイナス面が表に出たところも多いようだ。

Img_9770 しなの鉄道は、当初は黒字ではあったものの、今回論じているようなリニア新幹線のへ旅客流出などにより特急が廃止されれば利用者の減少に直結することを意味する。現時点でも2007年に約12%の運賃値上げを実施するなど、利用者への負担増という状況が出ており、見通しは必ずしも明るくない。

Img_1244  結果、中央本線とリニア新幹線との補完関係がうまくいかなければ、中央本線が第三セクター化するという可能性も真剣に考えなければならない。併せて、リニア新幹線に旅客が流れることによって、あずさ号、しなの号が廃止となれば、路線全体が赤字となり、その負担が長野県の財政に重くのしかかる可能性も出てくる。従って、中央本線と重複する伊那谷ルートは問題点が多いのだ。

Img_7351  現在、北陸本線特急で活躍する681系や683系のように在来線特急であっても、路線が整備されていれば、160km/hでの運行が可能な特急車両も整備されていることだし、実際北越急行線では160km/h営業運転が行われている。例えば南アルプスルートが採用された場合、伊那か飯田に駅が建設されることとなる。辰野駅から中央本線の塩尻駅などの乗り入れる特急を運行、併せて路線の改善を行えば、結果的に長野県における利便性を向上させることもできる。

Img_97871  このほかに、この区間を、例えばセントラルライナーのような電車や、普通に指定券不要の快速をクロスシート方式の313系により運行し、リニア新幹線リレー快速を運行するのも、一つの方法としてあり得るかもしれない。なんとなれ、長野県における中央本線のポテンシャルは大きい。リニア新幹線も、この本線と共存共栄できるかたちを模索するべきと思うのだが、どうだろうか。

HARUNA

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リニア中央新幹線建設ルートの模索② 南アルプスルート以外なら“しなの”“あずさ”廃止も

2009-06-23 16:17:21 | コラム

◆リニア新幹線を考える

 リニア新幹線は、はたして自治体に好影響を与えられるのか、光の部分だけが強調されているようだが、特に長野県のルートに関して、南アルプスルート以外では、長野県全体にとって不利益が生じる可能性がある、本日はこれについて深く考えてみたい。

Img_7630  中央新幹線、通称リニア新幹線はこれまでの新幹線とは世代の違う高速鉄道として建設される構想であるが、現在、JR東海と長野県との間で、最短距離での建設を行うか長野県の諏訪を経由するかで、論争が続いている。昨日は、東京と名古屋を移動する視点にたち、諏訪を経由した場合は、運賃、所要時間が一割以上増加する、という問題点を指摘した。本日は、長野県の立場に立ち、諏訪経由のルートは果たして長野県全体の鉄道輸送にどのような影響を与えるかについて論じる。

Img_5096  現在、最も大きく議論されているのは、東海道新幹線の、のぞみ号をより上回る速度での運航を目指し、東京から名古屋まで南アルプス地下において大深度地下トンネル工事を行い最短距離で運行することにより、所要時間、運賃、工期を短縮しよう、というJR東海に対し、長野県の人口密集地域を経由する大深度地下工事を経ず大きく迂回することで人工5万名の諏訪市などにリニア新幹線の駅を建築し、地域振興に充てよう、という長野県側の要望である。

Img_9802  ここで考えなければならないのは、長野県が求める諏訪地区経由の伊那谷ルートは、東京から甲府、塩尻、中津川を経て名古屋に至る、中央本線とかなりの部分で重複しているということである。中央本線は、中央線特別快速として東京から高尾まで運行されている区間では、リニア新幹線が品川から神奈川県を経由して整備される構想となっているため、重複とはならないものの、甲府から塩尻に至る路線、そして塩尻から中津川、名古屋に至るルートでは、重複する部分が多くなってくる。

Img_8241  在来線と新幹線の競合、新幹線は、その速い速度と多数の運行本数により、大都市間の交通の主流としての地位を不動にした。他方で、これにより、これまで多くの在来線特急が廃止の道をたどってきた。代表的なのは九州ブルートレインなど、多数の寝台特急であり、今年三月、最後の九州ブルートレインである寝台特急富士・はやぶさ、が廃止されたことは記憶に新しい。

Img_8204  たとえば、北陸本線特急の雷鳥、サンダーバード、しらさぎ、といった特急体系は、北陸新幹線金沢開業後、そして金沢から大阪までの区間が開業したならば、最終的に廃止される可能性が高い。もちろん、新幹線として、らいちょう、の名前は残る可能性はあるものの、北陸本線特急の継続には不透明な点が残る。北陸新幹線沿線が興隆を極めるのと対照的に、北陸新幹線と並行する北陸本線沿線の今後については、逆に過疎が進むのではないか、という問題が挙げられる。リニア新幹線と中央本線が並行線となれば、こうした危惧が生まれてくることも考えねばならない。

Img_5432  リニア新幹線が中央線と並行した場合、競合する特急は二本。特急しなの、ワイドビューしなの号は、振り子式制御う方式を採用した最高速度130km/hでの営業運転が可能な高性能の383系電車にて運行されており、名古屋駅を経て金山、千種、多治見、恵那、中津川、南木曾、上松、木曽福島、塩尻、松本、明科、聖高原、篠ノ井、長野を結んでいる特急で、一日一往復は、大阪から京都を経て長野までの長距離を運行している。

Img_7749  特急あずさ号は、新宿駅より三鷹、立川、八王子、大槻、塩山、山梨市、甲府、韮崎、小淵沢、富士見、茅野、上諏訪、下諏訪、岡谷、塩尻、松本という区間を運行しており130km/hでの営業運転が可能な新型のE257系、同じく130km/hでの営業運転が可能で、振り子式制御装置も搭載された高性能な車両E351系特急車により運行されている。

Img_7722  伊那谷ルートで押し通した場合、東京を出発し、甲府を経由、そして諏訪に至るという中央本線と重なる区間があり、とくにリニア新幹線の運行がJR東海により運行されることとなる為、JR東日本により運行されている特急あずさ、については、廃止される可能性、もしくは大幅に運行本数を減らされる可能性が高い。即ち、諏訪、塩尻、松本の区間を快速などで代替すれば、あずさ号を維持する必然性は低く、高尾から東京までの区間は通勤輸送需要が逼迫していることから、リニア新幹線に流れる旅客数によって存続は危機にさらされることとなる。

Img_1961  ワイドビューしなの、についてもリニアとの関係上、問題がある。伊那谷ルートであれば、同じく松本の南に諏訪があることから、中津川、名古屋までの区間で、中央本線と重複することとなるので、旅客乗降数の多い駅において、在来線特急からリニア新幹線にシフトしてしまい、自動的に特急しなの、についても存続の危機に立たされることとなる。

Img_85481  リニア新幹線が建設され、仮に長野県が駅施設建設費を負担し、複数の駅が出来たとしても、しなの、あずさ、が利用客数の減少により廃止されれば、結果的に現在の特急停車駅であり、且つ、リニア新幹線が停車しない地域と、リニア新幹線の停車する地域との間で、深刻な地価の下落、過疎化が進展する可能性は高い。

Img_8553  南アルプスルートにてリニア新幹線が建設されるならば、特急あずさ号は中央本線の甲府でリニア新幹線と連絡するものの、松本市への旅客需要がリニア新幹線に流れることは無いため、継続して運行することが可能となる。特急になの、はどうか、中津川と名古屋の区間では中央本線を重複するのだが、特急しなの、については、中津川と名古屋間での輸送需要よりも、諏訪以北の輸送需要の方が大きいことから維持される可能性が高い。

Img_6818  他方で、南アルプスルートが選択された場合、伊那地域にリニア駅が建設される可能性があるが、この地域の特急は大丈夫なのか。特急伊那路として、373系特急電車により飯田線において豊橋駅から豊川、新城、本長篠、湯谷温泉、水窪、平岡、温田、天竜峡、飯田の間で運行されている特急があるが、こちらは、リニア新幹線が南アルプスルートを経由した場合でも、もともと本数が非常に少ないことと、リニア新幹線の経路とはかなり離れていることで、維持される可能性は高い。

Img_7699  長野県の社会生活や経済活動に、あずさ号、しなの号が果たしてきた役割は大きいはずである。しかし、あずさ号、しなの号ともに、旅客輸送の中心がリニア新幹線に移行してしまえば、その維持が難しくなってくる。全国の整備新幹線計画と共に延伸する新幹線、そして逆に並行する在来線が大きく減退し、在来線沿線に経済的や社会的な著しいマイナス面も生じていることは、忘れてはならないようにも思う。

Img_6325  もっとも、リニア新幹線停車駅以外の在来線特急停車駅沿線の住民が、特急が仮に廃止された場合でも、その社会生活や経済活動に大きな影響が無いと、支持するのであればこの限りではないが、リニア新幹線伊那谷ルートの選択は、長野県に大きなマイナスとなる可能性があることも認識する必要があるように思う次第。そして、もうひとつ、大きなリスクが存在するのだが、これは次回議論したい。

HARUNA

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リニア中央新幹線建設ルートの模索① 運賃・距離・工費・所要時間に1~2割の差

2009-06-22 21:53:45 | コラム

◆リニア新幹線を考える

 リニア新幹線構想が経路を巡り揺れている。JR東海は、大深度地下工事技術に目途がついたことから、南アルプスの地下を掘削し、東京と名古屋を最短距離で結ぶ構想だ(リニアの写真が無いので長野を通る北陸新幹線の写真で代用)。

Img_0203  このリニアを用いての中央新幹線構想で、現在検討されている経路は、木曾谷ルート、伊那谷ルート、南アルプスルートの三ルートである。木曾谷ルートは、東京名古屋間334kmを46分で結び建設工費は5兆6300億円。伊那谷ルートは東京名古屋間346kmを47分で結び建設工費は5兆7400億円。南アルプスルートは東京名古屋間286kmを40分で結び建設工費は5兆1000億円と見積もっている。

Img_0225  また、JR東海によれば、リニア新幹線が運行するすべての都道府県に、1駅づつ駅を建設するとのことだ。南アルプスルートであれば、最も少ない資材で完成させることができ、東京名古屋間の新幹線運賃との差額も千円から二千円程度という範囲内であるから、のぞみ号と比べても大幅に速度は向上している。

Img_0227  毎時10往復の運行を計画しているということであるので、のぞみ号は、リニア新幹線に特化し、他方、東海道新幹線は、のぞみ号中心ダイヤから、ひかり号、こだま号に再びシフトすることになることから、静岡県をはじめ、東海道新幹線の、のぞみ号停車駅以外の駅を多く有する地域での利便性が高まることにもなる。

Img_0160  JR東海は、建設費を全て自社負担する構想だ。最短の南アルプスルート以外の二ルートであれば、所要時間は、一割から二割近く増加することとなり、当然運賃も増額することとなる。特に、伊那谷ルートを経由した場合、距離は二割増加することとなり、建築工費も一割以上増額することになる。結果、運賃は最大で二割程度の増額を見込まなければならない可能性が浮上する。

Img_8020  しかしながら、リニア新幹線を地域振興の起爆剤としたい観点から、長野県の村井仁長野県知事は、伊那谷ルートの建設を支持する見解を示し、諏訪市を経由し、最大で2から3の駅をJRの負担で建設を求めている。リニア新幹線でも、のぞみ号運行はノンストップであろうが、それ以外は、ひと駅増えることで所要時間は6分、つまり最短ルートよりも一割五分増えることを意味し、長野県に三駅を建築した場合所要時間は最大三割増えることを意味する。

Img_7995  地域振興の観点から、リニア新幹線を政治的に誘致したいという意思や、新幹線用地の土地などの関係から、過去の新幹線計画でも見られた状況ではあるものの、大本は、のぞみ号の高速化、つまり京阪神、名古屋、首都圏を高速で結ぶことを意図した計画であるため、所要時間を一割以上増加させる施策は、果たして、と思う事が無いでもない。

Img_0204  さて、今回は、運賃・工費・所要時間の観点から、一割以上が増加してしまい、結果的にリニア新幹線のポテンシャルを大きく減退させかねないという問題を提示した。続いて、次回は、もうひとつ、中央新幹線は、長野県の福祉を増進させる位置づけに就くことが果たして可能なのか、別の視点からみてみたい。

HARUNA

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海上自衛隊下総航空基地 基地・滑走路ウォーキング実施

2009-06-21 23:04:58 | 北大路機関 広報

◆6月27日実施、27日申込締切

 千葉県柏市に所在する海上自衛隊下総航空基地は、教育航空集団司令部が置かれ、海上自衛隊の航空教育部隊における中枢として機能している基地だ。その下総航空基地において、滑走路ウォーキング大会が実施されるとのこと。

Img_7849  教育航空集団の下総教育航空群には、P-3C哨戒機を運用する第203教育航空隊、そしてYS-11TAを運用する第205教育航空隊がおかれている。滑走路ウォーキング大会ということで、飛行展示や装備品展示は行われないものの(ウォーキング大会中に飛行展示を実施すれば滑走路で大変なことが起きる)、普段は絶対立ち入ることのできない滑走路上を歩き、格納庫前に並ぶ航空機なども望見することが出来る機会だ。

Img_0558  実施日は、今月27日、1000~1300時まで。ただし、雨天や強風時には中止となる予定で、この場合、下総航空基地HPで0700時までに発表されるとのこと。0930時までに下総航空基地正門に集合、隊員の案内で滑走路を8km、ウォーキングすることができる、ただ、基地の特性上、途中退場は出来ないので、体調が万全な小学生以上の方で、参加中禁煙禁酒、という条件がある。

Img_0415  下総航空基地では、記念写真の撮影が可能(ただし撮影禁止地区有)、弁当の持ち込みのほか、基地内のコンビニエンスストアーでも弁当が購入でき、昼食をとることが出来る。参加には、申し込みが必要だが、参加人数に制限は無く、平日0830~1200と1315~1700時までの間、電話受付、もしくはEメールで応募することが出来る。詳しくは、下総航空基地HP:http://www.mod.go.jp/msdf/simohusa/event/walking.htmをご覧いただきたい。

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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