◆機動防衛力と基盤防衛力
本日の記事は前回、昨日記載した記事の継続として。基盤的防衛力は更に基盤として根付かせるという視点と共に掲載します。
本部管理中隊・第一普通科大隊・第二普通科大隊(予備)・重迫撃砲中隊。前回の編成では現役自衛官編制の四輪駆動装甲車・軽装甲機動車化された一個大隊と予備自衛官と教育部隊主体の高機動車主体の一個大隊に重迫撃砲中隊を置く編成を提示してみました。即ちこれはコア化部隊に他なりません。この編成案背景について先ず提示してみましょう。
五個方面隊に、方面空中機動混成団と方面装甲混成団を新設する、という提案を行いましたが、これには各方面隊に二個普通科連隊分の人員を抽出する必要があります。そこで実員を増勢出来ないという現状を見ますと、残念ながら師団普通科連隊から人員を抽出するほか方法はありません。
しかしながら、現状の普通科連隊の定員でも実質一個大隊基幹程度の人員しかなく、辛うじて重迫撃砲と充実した中隊本部機能に本部管理中隊の能力により連隊規模を維持しているという実情がありますので、これ以上人員を抽出する事は出来ない、という難題があり、解決策を探さねばなりません。
それならば部隊は動員を前提とした編成に転換し、いわば基盤的部営力をコア化部隊と受微部隊に区分得ることで規模を維持する方策、即ち即応予備自衛官と予備自衛官だけでもその編成に無理やり組み込み、平時の普通科連隊の定員を確保する事は出来ないか、としたもの。
四輪駆動機動装甲車を装備する普通科中隊二個と軽装甲機動車中隊一個を第一大隊の装備とする提案、これは現状の普通科連隊よりも人員面ではかなり削られることとなってしまいましたが、完全に装甲車を充足した場合かなりの打撃力を発揮することが出来ます。
更に連隊が運用される際、機動運用を念頭としていますので有事の際には近傍の管区連隊より第一大隊を編入し、二個大隊編制に増強し任務に当たる事も出来、こうした場合に備え、各大隊は平時から基幹連隊番号に応じた、部隊番号を付与し運用する必要が出てくるでしょう。
部隊を具体的に提示しますと首都の第1普通科連隊であれば常備大隊を第011大隊とし予備大隊を第012大隊、大阪の第37普通科連隊であれば常備大隊を第371大隊として予備大隊を第372大隊とするなど、編入に備えナンバー大隊化する方策もあり得るかもしれません。
ただ、予備自衛官の訓練水準を高め、予備自衛官の能力を高める施策を講じる事が大きな前提となります。第一線や知己警備の支援に用いる制度になりますので、応召率を高め練度を高める、この案では予備自衛官の訓練期間として定められた年間五日間の訓練では十分な能力を維持できません。
予備役と組み合わせることで、部隊の地域との関係はより深化することとなりますが、どの程度の訓練が必要となるのか。即応予備自衛官の年間30日間の訓練期間は無理としても、もと自衛官の経験者としても毎月一回程度、週末の一泊二日程度と連休期の練成訓練を含め年間、最低でも15日間の訓練が無ければ、部隊水準を維持できなくなるでしょう。
ただ実質、予備自衛官に年間15日間の訓練召集を行うことは現実的なのか、という疑問符もあり、即応予備自衛官制度の拡大や予備自衛官定数を削減したうえで訓練日数を高めるコンパクト化を行うのか、即応予備自衛官補という仮称で呼び自衛案よりも訓練日数の大きな自衛官予備運用方式を構築するか、いずれにせよ何らかの措置を採らなくてはならなくなるでしょう。
この案において方面混成団は、陸曹教育隊を除き司令部機能のみを維持し、防衛出動に際してのみ、第二大隊を各連隊から切り離し予備自衛官部隊を留守部隊として運用と補給と統括し、予備師団司令部という位置づけの下集中運用を行う司令部とするもの。
即ち、有事の際に管区連隊が所属する師団とともに全部隊が転地し機動運用、第一線の統合運用司令部に配置された場合、管区連隊の運用から第二大隊のみが切り離され、駐屯地に残ることとなります。そうしますと、第二大隊は駐屯地業務隊と基地通信分遣隊と共に方面混成団の隷下に自動編入されるというもの。
ここで方面混成団は多数の予備自衛官大隊を指揮統制し、補給と整備支援なども担い、留守部隊の司令部機能を担う、という運用に移行します。留守部隊とはいえ、即応予備自衛官中隊が高機動車により機動運用するのであれば、中々侮りがたく、第二戦線を構築する敵の動向に大きなにらみを利かせる事も可能です。
加えて、方面空中機動混成団、方面装甲混成団、師団・旅団が機動運用を展開しますので、全陸上自衛隊としてはその能力はおおきく高まります。この案の最大の問題点は、旅団の存在をどうするか、というものです。ここで旅団警備区を統合する形にて、旅団を師団へ再編成することはできないものでしょうか。
師団。可能であれば、北関東第12旅団に第1師団警備区の一部を編入し旅団を師団化、北海道の第5旅団と第11旅団の警備区を統合し第5師団を再編、山陽山陰第13旅団と四国第14旅団を統合し第13師団を再編、第11旅団の司令部機能と装備品により第15旅団を強化し那覇に第11師団を置く、等の改編は必要となるかもしれません。
論理的にはまだ改良の余地はありますが、連隊の連隊長の地位と自治体との関係や指揮階層の問題をかなりの部分で対応でき、有事の際の遊兵部隊の存在を省く、一つの方策となり得るのではないか、と考え、このように提示してみました。もちろん、二個大隊化というのは妥協の末の私案であり、即応予備自衛官と予備自衛官の訓練体系を考えなければ無意味ではありますし本意でもありません。
北大路機関:はるな
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