◆MSC-SUGASHIMA CLASS
機雷とは、重量で500~1000kg、例えば潜水艦の魚雷一本に代えて二発搭載でき、場所によっては敷設も容易だ。他方で、一旦敷設されると、掃海が完了するまでの間、非常に危険な障害物となる。
機雷は、最も効率性が高い兵器の一つに数えられ、例えば、日本の主要港湾施設沖合に航空機や潜水艦により機雷が敷設されれば、掃海が完了しない限り日本経済は多大な被害を受けることとなり、国家機能そのものが麻痺してしまう。ペルシャ湾、ドーバー海峡、マラッカ海峡、北米東岸などに大規模な機雷敷設が行われれば、世界経済にも大打撃となる。このため海上自衛隊は継続的に掃海艇や掃海艦などを整備し、海上交通の維持に努めている。
今回、名古屋港に、すがしま型掃海艇3隻が揃って入港したとのことで、見学に足を運んだ。本日は、この一般公開についてお伝えしたい。今回名古屋港に入港したのは、横須賀地方隊第41掃海隊に所属するMSC-681すがしま、MSC-682のとじま、MSC-683つのしま、の三隻である。
すがしま型掃海艇は1991年のペルシャ湾機雷掃海任務の戦訓を反映し、国産の掃海器具よりも技術的に進んでいる外国製掃海器具を採用しているのが特色だ。1999年から12隻が建造された掃海艇で、基準排水量510㌧、満載排水量590㌧、全長54㍍、幅9.4㍍、喫水3.0㍍。ディーゼル機関2機を搭載し二軸推進、機関の出力は1800馬力あり、最大14ノットを発揮することができる。乗員は45名となっている。
挨拶し見学のために甲板へ。そこに置かれていたのは20㍉多銃身機銃JM61。航空機用のバルカン砲の艦載用で、射程は4500㍍、発射速度は毎分450発となっている。機雷は自由に漂流する“浮遊機雷”、海底に錨などで繋ぎとめられて水中に浮いている“繋留機雷”、海底に置かれている“海底機雷”、そして自ら目標に向かって移動する“移動式機雷”に分けられる。
機関砲は繋留機雷を係維掃海具で浮上させたさい、銃撃して処分する際に用いる。ちなみに、機雷の起爆方式は、船舶と接触すると起爆する接触型、船舶から発せられる音に感応して起爆する音響型、船舶の素材である金属に反応して起爆する磁気型などがあり、掃海艇は様々な方式で設置され、多種多様な方式で起爆する機雷を相手に一つ一つ処分してゆく。
掃海艇の艦橋に進む。艦橋の上にはOPS-39航海レーダーが設置されている。掃海艇そのものが磁気を帯びて磁気機雷にやられないよう、掃海艇の船体は木製で、掃海艇そのものがエンジン音を響かせて機雷にやられないよう掃海艇は機雷掃海時にはディーゼルエンジンを停止し、補助電気推進に切り替えて運用される。
掃海艇が機雷に接触してやられないよう、イギリス製の可変深度ソナーである2093型機雷探知機が装備されている。使用可能深度は300㍍まで、使用可能速力は12ノットまでとなっている。すがしま型掃海艇は、艦橋の前、上甲板に機雷探知機室が置かれているのだが、傍目からみると、艦橋からの視界を妨げているのでは?という素朴な疑問があった。しかし、機雷探知室は船体の縁の線に沿っており、視界は良好、ということが今回乗ってみてわかった。
なお、掃海艇は、小型であることも含め、波浪には護衛艦と比べると弱い。そのためだろうか、舵手の目の前には吊革(?)が配置されている。すがしま型掃海艇に続き、ひらしま型掃海艇が建造されているが、どちらも波浪には苦しめられるとのこと。ううむ、水平線が見えない揺れ、確かに酔うだろうなあ、・・・、御苦労さまです。
双眼鏡、護衛艦のものよりも少し小ぶりだ。すがしま型掃海艇は、煙突が二本となった構造が特色だが、これは艦橋からの後方視界確保という狙いがあった。しかし、実際に運用してみると、そこまで後方視界が確保されたわけではなく、すがしま型の次に建造された、ひらしま型掃海艇から、再び煙突は一本という設計に戻されている。
士官室、艦橋の下に配置されている。ちなみに、掃海艇にも護衛艦のCICにあたる部署がある。これは機雷戦情報室といい、艇内に設けられている。すがしま型には対機雷戦情報処理装置NAUTIS-Mが搭載され、掃海任務に完璧を期す。士官室の下には科員居住区が配置されている。
科員食堂。テレビが置かれており、その上には神棚もみえる。椅子は金属製でかなり重量があり、これは海上自衛隊の艦艇全般にいえることだが、波浪に伴う動揺によって、物品などが散乱し破損しないよう何らかの措置が取られている。地震対策には参考にしたいというのは、個人的な感想。
自販機も置かれている。自販機は、やはり護衛艦のものと比べると小ぶりだ。なお、磁気を帯びないために木製となっているが、意外なところも木製となっているのに気づく。加えて木製となっていることで、老朽化は比較的早い。このため、最新型の掃海艇はFRP製となる予定だ。
PAP104自走式機雷処分具、フランス製だ。レールに載せられて二基が上部構造物に搭載されている。一種の水中ロボットで、水中速力6ノット、運用深度は最大300㍍で、動力は電池式。機雷を発見すると搭載する炸薬重量100kgの処分用爆雷を用いて処分する。後部の掃海ダビットにより海中に降ろされ、運用する。
水中処分員用の各種装備が置かれていたが、目についたのは超音波探知機。東宝のパニック映画“東京湾炎上”で藤岡弘がタンカーにて使用したものだ。テロリスト役を演じた水谷豊の演技も含め大好きな映画なのだが、映画の中で重要な役割を果たした装備の実物、映画では横須賀の水中処分隊が出ているという場面なので、まさに、この探知機だ!。もう、小生、感動。
1975年の東宝映画、“東京湾炎上”は、東京湾の超大型タンカーアラビアンライトがテロリストにシージャックされ、タンクに爆雷が仕掛けられたという作品。タンカーが爆破されれば首都圏はコンビナートへの誘爆で壊滅的打撃を被る、テロリストの要求を前に政府の決断は、そしてタンカーの乗員はどう立ち向かうか!、原作は田中光二、“爆発の臨界”。
訓練用機雷も展示されていた。形状は、ペルシャ湾掃海任務で回収したイタリア製海底機雷“マンタ”とよく似ている。マンタは、当時、新型の機雷で、敷設深度2.5~100㍍、機雷としては小型だが、炸裂すると中型の水上戦闘艦までは大きな打撃を受けるという機雷だ。このほか、訓練用機材などが一般公開されていた。
HARUNA
[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]