北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

紀伊沖トルコ海軍艦沈没追悼行事(日本トルコ友好120周年)へ護衛艦せとゆき派遣

2010-05-31 22:50:08 | 海上自衛隊 催事

◆ひえい、こんごう派遣が理想

 呉地方総監部によれば、海上自衛隊は来る6月3日に和歌山県串本町で執り行われますエルトゥールル号追悼行事へ護衛艦せとゆき、音楽隊の派遣を決定したとのことです。

Img_7424_1  日本とトルコ、アジアの東端と西端の両国の関係は非常に古くまでさかのぼることが出来ます。その始まりとなったのは1890年のトルコ海軍艦エルトゥールル号遭難事件を挙げる事が出来るでしょう。イスラム諸国の盟主という地位を担っていたオスマントルコは、帝国主義時代、欧米列強への国威発揚を目的として艦艇の遠洋航海を計画、当時日本からの皇族のトルコ訪問を控え友好関係を模索していた日本へオスマンパシャ提督指揮下のフリゲイトエルトゥールル号を日本に派遣しました。提督以下横浜へ入港するとともに明治天皇に拝謁、日本でも同じアジアの艦艇来航を大歓迎して答えました。

Img_6824  エルトゥールル号は、見事日本トルコ友好関係の第一歩を記したのですが、滞在三ヶ月後9月15日に横浜を出航、翌16日、帰国途上不運にも台風に遭遇、和歌山県串本沖で座礁、沈没という不運に遭います。乗員656名のうち、69名を残し提督以下多数が沈没したエルトゥールル号と運命を共にしたのですが、当時、串本の寒村では少ない備蓄食料を全て生存者に供して村民は生き残ったトルコ海軍の乗員69名を手厚く保護しました。トルコ海軍艦の沈没はトルコ国内のみならず日本でも大きな事件として扱われ、当時に串本村民の献身的な救助活動には称賛が集まりました。

Img_9922  巡洋艦比叡、金剛のトルコへの親善訪問が予定されていた事もあり、明治天皇はエルトゥールル号生存者を巡洋艦比叡、金剛に乗艦させ、トルコのイスタンブールへ帰国させました。当時日本海軍もトルコへの艦隊派遣は初めての試みであり、日本海軍の航海技術と日本国民の高い倫理観が称賛されるとともに、この生存者帰国について、同時に日本国内でもエルトゥールル号の生存者や遺族への弔慰金が広く集められ、トルコへ送り届けられました。このことがトルコ国民への日本への好印象へとつながり、今日の日本・トルコの友好関係へと繋がっていった訳です。

Img_7657  串本町はこの時から友好の地としてトルコ国民に広く記憶される事となり、五年ごとにトルコ領事館員とともに追悼記行事を執り行い、追悼碑や友好記念館などが立てられているとのことです。エルトゥールル号遭難から今年は120周年にあたるということで、来月3日にその追悼式が串本町にて行われるのですが、海上自衛隊からは護衛艦せとゆき(満載排水量4200㌧)が呉基地から派遣される、とのことです。また、儀じょう隊、音楽隊が呉基地から派遣され、追悼記念行事に参加するとのことが報道発表されています。

Img_7700  この式典なのですが、こんごう、ひえい、どちらか参加させることは出来なかったのかな、と思いました。巡洋艦比叡、金剛は、太平洋戦争にて高速戦艦として空母直衛をはじめ多くの海戦に活躍した金剛型戦艦の先代にあたる二隻ですが、偶然にして海上自衛隊には三代目こんごう、ひえい、がそれぞれ呉基地、佐世保基地にて任務に当たっている訳です。写真は護衛艦ひえい。はるな型の二番艦で、今年度を以て護衛艦いせ、に任を譲り除籍されますが、まだ現役ですので、日本トルコ友好となった艦の名を継ぐ一隻として行事に参加してくれれば、と思いました次第。

Img_6906  こんごう、はイージス艦として任務に当たっています。海上自衛隊の護衛艦部隊は任務が増大していて、一方で護衛艦が削減されているのですから、ローテーションの厳しさはもちろん分かるのですけれども、何とかならなかったのか、と。練習艦隊の近海練習航海に護衛艦ひえい、が参加していましたのでそのまま遠洋航海でトルコ訪問があるのでは、とおもったのですがありませんでしたし。日本ではあまり知る人がいないというエルトゥールル号ですが、トルコでは広く知られており、日本への親近感にも繋がっているとのこと。こうした友好関係は得難いもの、大事にするべきでしょう。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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戦死者、遂に一千名を超えたアメリカ軍のアフガニスタン軍事作戦

2010-05-30 23:17:48 | 国際・政治

◆他方日本としては・・・

 報道などによればアメリカ軍のアフガニスタンにおける戦死者が遂に1000名を超えたとのことです。オバマ大統領の撤退期限明示により武装勢力が息を吹き返す形となり、撤退とともに再介入の時期を図らねばならない事となるやもしれません。

Img_6665  一方で兵士を如何に戦闘の損害から防護するのか、という問題がどのように装備体系に影響を与えているのか、日本は有事に備え学び、実現するための予算を確保するべきでしょう。米軍を始めISAFに参加している各国軍でも戦死者は多く、この状況に対応するべく各国は歩兵装備の防御力向上や無人偵察機など各種装備の投入、車両の装甲強化や兵站車両、歩兵用小型車両への装甲化等を推し進めています。

Img_9211  戦車や火砲を大幅に削減した現在の防衛大綱を策定した際には、各種任務に柔軟に対応する普通科部隊の強化を大胆に行う、と部隊削減の根拠を示していましたが、軽装甲機動車の配備が進んだ以外は空中機動能力の充実や装甲戦闘車の増強による機動打撃力確保など具体的施策は行われていない状態です。

Img_1583  2003年に自衛隊イラク派遣を行った時点では、自衛隊装備はこの点で軽装甲機動車の装備など先進的な面を示したのですけれども、今日のアフガニスタンにおける各国装備と比べますと、個人用戦闘防護衣や電子装備による共同交戦能力などで遅れが目立つようになりました。

Img_0481  もちろん、この種の装備は取得費用は安い訳ではなく、ISAFに部隊を派遣する各国では正面装備の配備体制見直しや、アフガニスタン派遣部隊への新型装備の取得費用ねん出の為にかなりの無理を行っている国がある事も確かです。しかし、人員の生命の重さにおいてはこれらの国々と比べ重視されている日本は、ある程度ISAF派遣国の装備体系を意識した普通科部隊や輸送科部隊の近代化を行う必要があるのではないでしょうか。

Img_9011_1  もちろん、日本の防衛に関する基本は専守防衛、例えば地雷防護一つとっても、対処の為に底部の形状を工夫して車高を高くするよりは、自衛隊が防御地雷原を構築することや相手が撤退時に敷設した地雷に対処する必要はあるのですけれども、住民がゲリラ戦を行い砲弾等を利用した即席爆発物を仕掛けるという状況は考えにくいですし、日本で運用する事を考えればすべて応用できるとは言いません。

Img_1524  しかしながら、輸送車両に対する防御力の付与、部分的にイラクでは実施されたようなのですけれども、本格的な防弾装甲を有する輸送車両、というものは日本でも特殊部隊による対遊撃戦を想定した状況下では必要となりますし、国際平和維持活動における非戦闘地域での支援などでも必要性は高いでしょう。戦闘による戦死者0という記録を維持するべく、必要な予算は確保されなければなりません。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十二年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報4

2010-05-29 21:43:11 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 北大路機関広報、本日一日遅れでの掲載ですが、基本的に第二北大路機関に掲載した情報を更に紹介したものです。

Img_2926_5  明日実施される最大の自衛隊行事と言いますと、北海道の東千歳駐屯地で行われます第七師団創設記念行事東千歳駐屯地祭でしょう。戦車連隊三個を基幹とする日本唯一の機甲師団、第七師団は日本にこれだけの戦車があったのか、という驚きと防衛への自身を与えてくれる行事の一つです。

Img_2850_3  90式戦車、89式装甲戦闘車、99式自走榴弾砲、87式自走高射機関砲、施設作業車、等など日本の自衛隊を代表する装備を一度に見せてくれるものですし、なにしろ師団行事ですから走る車両の数が違います。旧軍の飛行場跡地の広大な駐屯地で足を運ぶ方を圧倒する式典が行われます。

Img_2258_2  京都府宇治市では大久保駐屯地祭が行われます。中部方面隊直轄の第四施設団が各種施設車両を駆使して式典、観閲行進、訓練展示を実施します。近鉄大久保駅から徒歩ですぐ隣、かなりの広さのある駐屯地で式典が行われ、渡河ボートの体験試乗等が行われまして、非常に興味深い行事です。

Img_5363_2  武山駐屯地、神奈川県横須賀市のこの駐屯地には第一教育団、少年工科学校、第31普通科連隊が駐屯していまして、あすはここで武山駐屯地祭が行われます。第一機甲教育隊の90式戦車を始め、思った以上の規模の部隊が展示を行いまして明日の自衛隊を担う新隊員教育隊の自衛隊体操展示も迫力です。

Img_6072  大分県の湯布院駐屯地でも駐屯地祭が実施されます。湯布院は温泉の町という印象が強いかもしれませんが、西部方面特科隊の203㍉自走榴弾砲やMLRS(多連装ロケットシステム)等強力な火力を発揮する近代装備が配置されている駐屯地でもある訳です。203㍉自走榴弾砲の空包射撃は大迫力。

Img_9382  高遊原分屯地では西部方面航空隊創設記念行事が行われます。方面航空隊は対戦車ヘリコプターや多用途ヘリ、輸送ヘリコプターを運用して方面隊の任務を支援する部隊で、この分屯地には第八飛行隊も駐屯しています。AH-64Dの配備も始まっていて各種ヘリコプターによる編隊飛行やなどが期待されますね。

Img_6820  名寄駐屯地祭、最北の普通科連隊駐屯地である名寄には雪上戦に強い第三普通科連隊と北方有事の際に即応して出動できるよう偵察隊や特科大隊等が駐屯、ホークミサイルも配置されています。写真は教導団のものですが、96式装輪装甲車により装甲化された第二師団隷下の精強な普通科連隊です。

Img_0294  千葉県房総半島南端にある館山航空基地ではチビッコヤング大会が行われます。第21航空群が展開するこの航空基地ではUH-60J救難ヘリコプターやSH-60J/K哨戒ヘリコプター、CH-101輸送ヘリコプターなどが配置されています。地上展示に加えて体験飛行などが行われる予定。

Img_48672  高尾山分屯基地、島根県にあるこの分屯基地は第7警戒隊のレーダーサイトが置かれています。首都圏の中央線で一本にて行くことのできる場所ではありませんので要注意。近接戦闘の展示で知られた分屯基地で、日本海のむこう側からの危険な軍事的冒険に備える防空監視所の一つです。

Img_9341_1  高蔵寺分屯基地開庁記念行事、愛知県春日井市のこの分屯基地は入間基地第四補給処の高蔵寺支処が置かれている分屯基地です。五年に一度しか一般公開されない施設ですので、そういう意味では注目の行事、と言えるのかもしれませんね。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

5月30日:名寄駐屯地創設記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
5月30日:第7師団創立記念・東千歳駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/7d/
5月30日:第1教育団創立記念・武山駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/index.html
5月30日:館山航空基地ちびっこヤング大会・・・http://www.mod.go.jp/msdf/
5月30日:高蔵寺分屯基地開庁記念行事・・・http://www.mod.go.jp/asdf/
5月30日:第4施設団創立記念・大久保駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/index.html
5月30日:高尾山分屯基地開庁記念行事・・・http://www.mod.go.jp/asdf/
5月30日:湯布院駐屯地創立記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/
5月30日:西部方面航空隊創立記念・高遊原分屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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速報!鳩山総理、普天間飛行場を名護市辺野古に移設 社民党との連立解消へ

2010-05-28 23:43:22 | 国際・政治

◆福島大臣罷免 新しい日米合意へ

 鳩山首相は本日、懸案でした普天間飛行場移設問題について、現行の日米合意に基づく名護市辺野古に移設する旨、閣議決定した事を記者会見で発表しました。なお、予定を変更して自衛隊行事予定は暫定的に予備ブログの第二北大路機関に掲載しました。

Img_9933  民主党政権は社会民主党、国民新党との間で連立政権という形を執っていたのですが、今回、基地の国外移設を提唱する社会民主党を鳩山首相は説得することが出来ず、閣議決定に署名を求めたものの閣僚である福島党首がこれに応じなかったことから、罷免する事となり、こうして連立政権から社会民主党は締め出された形となりました。

Img_280_7  鳩山首相の日米合意に関する記者会見は福島党首の説得に要した分数時間遅れる事となりましたが、日米合意を日米同時発表させるべく、今回もアメリカのホワイトハウスは日本国内の合意を待ちました。こうして、臨時閣議を経て本日2100時に鳩山首相は記者会見へと臨んだ訳です。

Img_98220  しかし、今回は名護市辺野古に移設することが決定したのですけれども、言い換えればそれだけで、日米合意では遅滞無く代替飛行場の建設方式を、埋め立てかその他か決定する事、環境アセスメント評価を予定通りに行う事、という事が盛り込まれており、まだ全てが解決したわけではありません。

Img_00034  普天間飛行場には海兵隊のヘリコプター部隊が展開しているのですが、この飛行場が太平洋戦争の沖縄戦において焦土となった旧市街地に造成された戦時の応急飛行場であったことで、戦後住民が基地周辺に戻ってきたため頭上を飛行する航空機の騒音や墜落の危険性に対し不安の声が高まりました。

Img_0542  そこで政権交代を果たして昨年の九月に発足した民主党鳩山政権は海兵隊飛行場の国外か県外への移設を提唱したのですが、海兵隊航空部隊は沖縄の第三海兵師団と不可分の運用が為されていて、航空部隊だけを沖縄から遠く離れた場所へ移設することは出来ないという事が難点となりました。

Apkoimg_9912  海兵隊を何処か他の地域に移設できないか、ということになったのですが、海兵隊とともに航空部隊を移転させる以上、その海兵隊部隊の地上訓練を行う演習場が無ければ移設そのものが成り立たず、関西空港等単なる空港だけでは移設できない、近くに演習場、それも沖縄の北部訓練場のような大型の演習場に隣接している地域への移設が模索されました。

Img_1362  移設先を模索している最中、中国海軍が沖縄近海において大規模な艦隊演習を実施、海上自衛隊が警戒へ出動したのですが砲の照準を向ける、艦載機を護衛艦に異常接近させるなど挑発的な行動を繰り返し、日本周辺には脅威が健在であるという事が明確に示される事となった訳です。

Img_3386  そもそもなぜ沖縄に海兵隊が展開しているのか、沖縄は中国が武力統一を行う可能性がある台湾、台湾海峡に程近く、第三次大戦の引き金となるだろうと警戒されていた朝鮮半島にも近い場所にあります。海兵隊はヘリコプターを中心として機動運用されますから、沖縄に位置することで台湾、朝鮮半島への軍事行動を防ぐ抑止力となっていた訳ですね。

Img_31_36  こうしたことから、逆に海兵隊は直接日本を防衛している訳ではないので、海兵隊は日本には必ずしも必要ではない、という論調も生まれました。しかし、台湾有事に介入できず台湾が占領されれば、台湾を拠点として脅威が日本へ向かう可能性も出てきて、その場合日本は沖縄を最前線に中国と防衛力で向かい合わなければならなくなる訳です。

Img_1275  さて、普天間をどこに移設しようか、と既に日米合意があるにもかかわらず最高賞の構えを行った事でアメリカの日本への信頼は急速に低下してゆきました。そもそも自民党時代にはアメリカのテロとの戦いをインド洋海上阻止行動給油支援により協力していたのですが、民主党政権が樹立して以来これを打ち切ったのですから元々関係は冷え込む進路にあったのです。

Img_3975  元々鳩山内閣は、インド洋海上阻止行動給油支援ではなく、実際にアフガニスタンの復興に資するような直接的な人道支援をアフガニスタン国内で行う計画でした。アフガニスタンは内陸国の山国ですから民主党ではアフガニスタン国内で日本の給油支援が評価されていない事を気にしていた訳ですね。

Img_0386  ところがアフガニスタン情勢は悪化の一途をたどり、流石に鳩山首相を始め民主党が構想していたような自衛隊や民間人の人道支援の為の派遣、という事は到底不可能であった訳でして、戦車や野砲といった戦闘部隊でも派遣しなければ生きて帰る事も難しいような状況となっていました。

Img_6686  さて、アフガニスタンへは高山部への空中機動部隊の派遣や航空自衛隊輸送機の派遣などいろいろな選択肢があったのですが民主党は全ての選択肢を放棄し、日本はテロとの戦いから撤収する、という流れを形成しました。こうして日本はアメリカから不信感を更に深める結果となってしまった訳です。

Img_0088  普天間問題について、幾つかの解決への期限が鳩山首相により区切られたのですが、どれも破られ、その都度、腹案がある、期限は月末、期限は法律で決まったものではない、期限を区切ったつもりは無い、と続け、県外移設が可能であるが如く幾度も国会答弁や記者会見に臨みました。

Img_9059  遅延に遅延を重ねた移設予定候補の絞り込みは、外相から嘉手納基地統合案が提示され、これは嘉手納基地の面積、特に有事の際のキャパの問題と海兵隊回転翼機、空軍固定翼機との運用特性の相違から現実的ではない、と撥ねられたものの首相以外から案が提示されるようになり政府部内が一枚岩でないことが露呈します。

Img_4338  これを皮切りに移設先候補地の乱立が始まり、九州の大村航空基地を拡張して移転する案、佐賀空港を海兵航空基地へ転換する案、静岡県の東富士演習場に海兵航空基地を移設する案、沖縄県外の鹿児島県徳之島への移設案、離島である馬毛島の私有地を基地化する案、中にはハウステンボスの転用案まで出たとのことでした。

Img_8455  政府部内での意見調整を行えないまま、個別に様々な情報が飛び交い、この結果、政権の指導力に疑問がもたれた事で内閣支持率は低下するとともに、予定地の候補として挙げられた自治体からは、住民や首長の意見を聞かずに一方的に突如挙げられた事で、次々と反発の声が上がります。

Img_0421  特に沖縄県には米軍基地が集中していることは確かなのですけれども、北部訓練場が含まれる事で面積は多いものの、第七艦隊と第五空母航空団を抱える神奈川県、第五空軍司令部と横田基地を抱える東京都、海兵航空団が置かれている山口県、戦闘航空団の置かれた青森県など、沖縄以外にも負担はあった訳です。

Img_0026  こうした中で社会民主党は与党の一員として必死にグアムへの移転を模索していたのですが、そもそも沖縄本島よりも遥かに小さなグアム島にはアンダーセン空軍基地を筆頭に数多くの米軍基地があり、しかも訓練受け入れを行っている関係もあり、これ以上受け入れられない、という声が伝わってきます。

Img_0054  政府部内では、台湾海峡や朝鮮半島への緊急事態に日本では責任を持てず海兵隊の抑止力を必要とする事から沖縄への移設もやむなし、という方向へと流れてゆきます。しかし、その決定を行うまでに民主党は当初の日米合意で移設が行われる予定の名護市長選挙に移設反対の候補を支持、結果僅差で反対派が当選する事となり、名護市への移設は難しくなりました。

Img_0025  沖縄県勝連半島、ホワイトビーチ沖合に広大な埋め立て地を築き、長大な滑走路を数本持ち、那覇基地の航空自衛隊とも共同利用できる巨大海上基地を建設できないか、という案が浮上しました。物凄い環境負荷を与えることだけでなく、そもそも普天間飛行場代替施設の完成予定日までに実現できる可能性が無かったことから案は流れます。

Img_0311  埋め立てるのが問題なのならば、内陸部のキャンプシュワブの陸上部分に短い滑走路を建設して運用する、という案が検討されましたが、それでは短い滑走路しか建設できず、ヘリコプターを輸送機で空輸した場合やティルトローター機を運用できないという事とその場合住宅が言おう空を飛行するという事で、この案は流れます。

Img_8240  それならばいっそのこと普天間飛行場の滑走路を短縮して、そうすれば必然的に住宅街から滑走路は離れるので問題は無いのでは、という意見が出されたのですけれども、いくらなんでもそれでは飛行場を移設した事にはならないだろう、という事で、やはり非現実的でした、この案も流れます。

Img_0056  そこで、やはり名護市辺野古沖に建設するしかない、という事となり、しかしながら攻めて自民党時代の合意案とは異なる方法で建設できないか、という、最早殆ど執念と言います海自と言いますか、アリバイ工作と言いますか選挙対策と言いますか、面子と言いますか、方策がいろいろと検討されました。

Img_3109  海上に建設するのならば、普通は埋め立てなのですけれども、それでは珊瑚礁が大変なことになるというので、杭打ち方式で海面と滑走路を放して構造物を建設する案が提示されます、それでは光合成が出来なくて結局サンゴ礁は全滅しますからガラス製滑走路や光ファイバーを通す案が出るのですけれども、これはテロ攻撃に弱いという事で流れます。

Img_2249  海に浮かんでいれば問題は無いだろうという事で浮体構造物メガフロートを海上に浮かべる案が提示されるのですけれども、こちらも弾道ミサイル攻撃を受けて大破した場合の修理が現在の技術では不可能だし、さすがに沖縄の台風には浮体構造物は耐えられないだろう、という事で、こちらも流れます。

Img_09_96  辺野古沿岸部に埋立方式で滑走路を建設したい、という方針を漸く定めた事で、鳩山首相は沖縄へ飛び、知事や県民の説得を試みます。しかし、散々ひっかきまわされ、そして県外移設が実現するだろうからと支持したにもかかわらず、やっぱり県内でお願いします、という発言は受け入れられませんでした。

Img_0801  首相は全国知事会を招集して、米軍基地置負担を沖縄県外に求めるべく働きかけましたが、沖縄には自衛隊の施設が無い分米軍の施設がある訳で、誤解を恐れずに記せば自衛隊演習場を含めた防衛用地全体で沖縄県が占める負担は、言われるほど大きく無い、という事が確認される形となりました。

Img_0712  また、既に沖縄の米軍基地からの訓練を受け入れている自治体も多い訳なのですから、これ以上は、という事にもなった訳です。まあ、航空自衛隊や陸上自衛隊の訓練をテニアンにでも移転すれば話は別なのでしょうけれども、現時点でこれ以上を受け入れる訳には、という話になった訳です。

Img_20_16  その最中で、朝鮮半島の黄海で韓国海軍の水上戦闘艦が北朝鮮の潜水艇により撃沈されるという事態が発生し、この結果韓国と北朝鮮の間での緊張は極度に増して、それを打開する方策が見つからないまま現時点で状況は進展中、日本の周辺情勢が想定外に悪化してしまった訳です。

Img_8446  こうして、鳩山首相は現行案以外に解決策が無い事、日本周辺情勢がどうにもならない程度に悪化していることから今回の決断へと至った訳です。ただし、前述の通り今回は日米合意に至ったということ、そして連立が解消したということだけで、完全な解決はもう少し時間が必要です。ともあれ、一歩は前進したという事は特筆すべきというべきでしょう。

HARUNA

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5月27日は海軍記念日(1905年5月27日の日本海海戦に因む)

2010-05-27 23:09:17 | 北大路機関特別企画

◆海上防衛力が最重要と考えるのですが・・・

 本日は海軍記念日ということで、いつも掲載しているよりももう少しマクロな話を記載するという前置きで、毎回お馴染みの内容を思いつくままに掲載していきます。思いつくままに記載した文章はだいたい非公開なのですが、今回は掲載です。

Img_0138_1  日本海海戦は、制海権の確保が戦争の趨勢を左右するとしたマハンの理論といやいや地上軍の決戦が無ければいかなる場合でも、と記したコーベットの理論で、マハンが正しい事を示したのですが、その後海軍力を整備し、世界を相手に挑んだ日本が敗戦に追い込まれたのも海上護衛戦を完遂できずに物資が欠乏、戦争継続能力を喪失したことによるものが大きいでしょう。こうした中で戦後から今日、将来にわたるまで日本は諸外国との交易による利益によって国家を運営してゆくという方針が変わらない限り、海洋の自由を維持するという任務が日本の死活的利益に繋がるのだろう、と考えます。この点で海上自衛隊の重要性は大きいのですけれども、一方で、イギリスがリデルハートの言葉を持ち出すまでも無く、海洋国家が対岸に脅威を確認してからの備えでは遅い、という概念があるのですけれども、台湾軍、朝鮮軍、関東軍を大陸に駐留させていた当時とは異なり、今日では日本に敵対的、非友好的、不明瞭等何れか政策を執る国を対岸にもっていますので、陸上自衛隊の重要性も大きい訳です。また、かつての大戦では沖縄を始め島嶼部以外での非戦闘員への被害は航空爆撃によるものが多数を占めていましたから防空は死活的に重要で、航空自衛隊の能力も高ければならない訳です。

Img_5889  この点を踏まえて何処に重要性を見出すか、となると、やはりどれも同じ重要性を持っている訳なのですよね。一方で他国領土を自国の領海法に組み入れることで制海権というものを自国固有のものとしようとする試みの国があるのですけれども、そうした国の挑戦に対しては海洋の自由こそが自由な交易と諸国民の利益に資する、と考える国と同盟関係を結び、日本は対応している訳です。この点で日本は憲法9条の精神を尊重し、他国領土への介入を行わず、海洋の自由を希求することで国家の安定を図る防衛政策を堅持するべきでは、と考えます。と言いますのも領土的や陸上での活動を考えれば日本に対して負の印象を持つ国が今なお諸外国に考えられるからです。考えすぎかと思われるやもしれませんが、必ずしもそうではありません。欧州安全保障に関する研究を進めていますと、強大な地上軍と核兵器を運用し、広い緩衝地帯に地上軍を張り付けていたソ連が独ソ戦の厳しい教訓からドイツの再軍備と東西統合後のドイツが再びソ連の重大な脅威となることを過度に警戒していた、という実態が政策や政策決定者の言葉から読み取れるのです。この点は主観的なものですから事実関係の羅列や政策の提示だけで説得できるものではないのかもしれません。

Img_6710  しかしながら、脅威を与えない、という点は重要なのでしょうけれども日本が国家として成り立たない程度に諸外国から圧力を受けることがあってはならない訳で、特にこの点に留意して本Weblogでは“八八艦隊構想”として全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦8隻と弾道ミサイル防衛対応型ミサイル護衛艦8隻を基幹として護衛艦隊を強化し、護衛艦から運用できる固定翼航空機を運用し洋上防空や対艦攻撃に用いることのできる体制が必要、と過去に提案しました。また、太平洋側からの脅威に対抗するために那覇基地の第83航空隊を第9航空団に格上げし、浜松基地・徳島航空基地・硫黄島航空基地等に一個飛行隊を基幹とする航空隊を置くべき、という提案も過去に記載しました。いわば自国の防衛に徹するために支援戦闘機の飛行隊を造成することや航空自衛隊の規模そのものを拡大して、将来増えるであろう脅威に何とか日本の主体的な外交政策を展開する方法を防衛面から考えてみたのですけれども、その為には防衛大綱の水準で防衛能力の規模を強化する明記が必要ですし、定員や予算措置についても広い面から議論を行う必要があります。しかし、防衛力増強という提案は選挙公約では支持を得られないばかりか、防衛費削減による福祉の向上が支持を得られるという現状がある訳でして、こちらも民主党が一石投じてくれる事を期待、つまり子供手当を筆頭としたばら撒き型福祉は必ずしも支持される訳ではないという事の証明が得られるのではという意味なのですが、一方で防衛費を削減したうえで頭上を弾道ミサイルが通過すれば騒ぎ、隣国が地下核実験を行えば喚き、そして日本防衛力はこれで大丈夫なのか、という議論が巻き起こるのですけれどもやはり選挙では防衛費削減を支持するという状況、この矛盾性に不安を感じてしまう訳です。これは、突発的な事態に際して、いきなり論理が飛躍して暴走してしまうのではないか、と。

Img_7893  安全保障問題について議論する中で那覇市を軍事力に依拠する防衛の問題に移っただけで憲法問題という最初の障壁に視野狭窄となってしまうという難点は過去に幾度か記載しましたが、これについては過去のイラク派遣に際して、当時の小泉首相は憲法の前文を引用することで憲法九条を乗り越えようとしました。いわば、憲法の平和主義の精神は尊重しつつも、平和主義の中で行い得る防衛力の役割について述べられたのですが、その後も現在与党に入られた当時の野党の方々は憲法を持ち出し、防衛力に関する独自の視点を展開しています。しかし、考えれば平和主義は手段であって目的ではなく、日本国憲法についても条文は平和主義以外にも多種多様な進歩的人権の保障を謳っている訳でして、諸外国からの実力により憲法に認められた人権ごと憲法を停止に追いやられるような状態から守るのも防衛力の役割ですし、憲法そのものが自衛の為の機能を有している、と考えれば憲法九条の問題と現実の安全保障上の問題は必ずしも矛盾しない、という論理にはなるはずな訳でして、差し迫った脅威を前に違憲か合憲か改憲か護憲かという話題そのものがナンセンスなように感じる訳です。特に南西諸島から小笠原諸島にかけての中国海軍による演習、韓国艦撃沈事件に端を発して急速に緊張の度合いを高めている朝鮮半島情勢、普天間問題に伴う海兵隊抑止力の変動を見越した台湾海峡の緊張、これらは現実に差し迫っているのですからね。

Img_7981  こうしたうえで、日本が主権を貫くうえで必要な防衛力というものはどういうものなのか、どういった脅威を将来想定し日本はどのような外交政策を展開するのか、日本の死活的利益とは何か、周辺国とどのように信頼を醸成し友好関係を結ぶのか、どういった状況で有事に至る危険性があるのか、予防外交に対して主体的に関与する方法とは何か、日本が必要とする地域的枠組みや国際機構のあり方はどういうものか、ということについて広い意見があってもいいと思うのですが、対外関係についてやはり憲法上の問題、集団的自衛権の問題を含め横たわり、それよりも議論が奥に深められない、という状況を生んでいます。個別具体的な政策に対して合憲か違憲かを判断するのは司法権か行政権であるわけで、視野狭窄に陥ることなく闊達な議論こそが必要、と思うのですけれども、そうしたマクロな視点にはいかず、朝鮮半島情勢については首相の発言は空転、安全保障上の最大の課題はいつの間にかミクロな視点である普天間問題で固定され、普天間問題が解決すれば日本の安全保障上の全ての問題が解決されると錯覚させる状況が醸成されています。とまあ、海軍記念日なのですが、内容が毎度のところに収斂したところで本日の記事の締めくくりと致します。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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訂正:ロシアミサイル巡洋艦の日本海集合は訓練参加が目的

2010-05-26 23:27:51 | 防衛・安全保障

◆極東地域のヴォストーク2010演習

 申し訳ない、ミサイル巡洋艦モスクワの対馬海峡通過という記事を昨日掲載し、その内容を原子力ミサイル巡洋艦ピョートルベリキーの対馬海峡通過を併せ、朝鮮半島情勢をにらんだものでは、と記載しましたが、演習目的である、とコメント欄で月虹様からお教えいただきました。

Img_7398  北方艦隊と黒海艦隊の旗艦が相次いで対馬海峡を通行し日本海に入ったという情報に少々驚き、そこで確認を採らないままに朝鮮半島情勢と関係があるのでは!?、という記事を掲載しまして、誤解を受けられた方がいるのでは、と本日は訂正記事を掲載いたしました次第。お教えいただいた話では、海軍以外にも陸軍と空軍の極東とシベリア軍管区が参加するかなり規模の大きな演習のようです。謝罪して訂正します。

Img_7463  昨年度にはバルト海で実施され、バルト海のカリーニングラードへの上陸演習を実施するなど、かなり規模は大きかったようです。同時に原子力巡洋艦ピョートルベリキーの昨今の行動について調べてみたのですが、2000年に巡航ミサイル原潜クルスク捜索に参加、2001年8月にロシア海軍大演習に参加、2002年に北方艦隊旗艦として北方艦隊大演習に参加、2003年6月に北方艦隊・バルチック艦隊合同演習に参加、2008年に大西洋・インド洋で作戦任務に従事し、同年ベネズエラ、フランスを訪問、かなり活発に行動していたのですね。

Img_0249  また、昨年11月にはロシア太平洋艦隊のワリヤーグが東南アジア諸国を歴訪したようで、同艦もスラヴァ級、対馬海峡を航行していました。9月には太平洋艦隊のロープチャⅠ型戦車揚陸艦、ロープチャⅡ型戦車揚陸艦がソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦に護衛され、宗谷海峡を通行していますし、ロシア海軍は一定の水準を保っているという事を踏まえれば、極東地域での演習という事も当然考えられた訳でした。

HARUNA

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スラヴァ級ミサイル巡洋艦モスクワ(黒海艦隊旗艦) 対馬海峡を通過!

2010-05-25 12:52:37 | 防衛・安全保障

◆朝鮮半島情勢睨み?巡洋艦日本海へ集結

 統合幕僚監部24日報道発表によれば、22日土曜日0900時頃、ロシア海軍のスラヴァ級ミサイル巡洋艦を九州北部沖の対馬海峡で発見、対馬海峡を北上した事を確認したとのことです。

Img_1174  確認したのは佐世保基地の護衛艦きりさめ(DD104)、で第七護衛隊に所属する護衛艦です。スラヴァ級ミサイル巡洋艦は1982年から就役が始まったミサイル巡洋艦で、現在ロシア海軍は三隻を保有していて、太平洋艦隊旗艦にも同型のワリヤーグが配備されています。防衛省が発表した写真には艦番号121とあり、これは黒海艦隊旗艦であるモスクワ、であることが確認できました。満載排水量11490㌧、全長186.4㍍の大型巡洋艦で、黒海艦隊旗艦なのですが東アフリカ沖やインド洋でも任務に当たっているようです。ワリヤーグが海上自衛隊創立50周年記念国際観艦式に参加していますが、最大の特色は巨大なSS-N-12サンドボックス対艦ミサイル連装発射器を両舷に各4基、計16発を搭載しているところでしょうか。射程550kmのこのミサイルは、強力なラムジェットエンジンにより超音速巡航が可能です。このミサイルは基本的に米空母を一撃で機能不随に追い込むことが目的なのですが、改良型には対地攻撃型が開発されており、弾頭重量は1000kgと西側のトマホークより二倍、ハープーンよりも四倍以上の炸薬を持っています。また、キーロフ級とともにスラヴァ級はSA-N-6艦対空ミサイルを搭載しています。射程90km、有効射高30000㍍、限定的な弾道弾迎撃能力をもつミサイルで、陸軍にもS-300として採用されており、ピョートルヴェリキーには改良型のSA-N-20が搭載されたといわれています。攻撃力、防御力ともに大きいものなのですね。

Img_0790  先日北方艦隊のキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦ピョートルヴェリキーが対馬海峡を通過した事と併せ、一ヶ月間に二隻ものロシア海軍大型巡洋艦の対馬海峡通行は極めて異例です。太平洋艦隊以外のキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦やスラヴァ級ミサイル巡洋艦が一ヶ月間に二隻、となりますと、これはソ連崩壊以後では異例の規模で、ソ連海軍が健在であった頃にも非常に稀有な事例といえます。そもそも、ソ連崩壊以後は太平洋艦隊の行動も極めて小さくなり、かつては海上自衛隊を遥かに圧倒して、アメリカ海軍の第七艦隊と、空母キエフを先頭に対峙していたのですけれども、今日的にはロシア連邦の財政難から水上戦闘艦は次々と除籍され、水上戦闘艦の数でも能力でも海上自衛隊の方が優勢となっています。また稼働率も低下し、太平洋艦隊もウラジオストク基地をはじめ海軍基地にて保守整備を優先して、太平洋に出る事はあまりありませんでした。そこに日本海へ北方艦隊旗艦のピョートルヴェリキーと黒海艦隊旗艦のモスクワ、が入っている訳です。二隻とも、米海軍空母機動部隊への攻撃を期して建造された強力な艦、空母を除けば第二次大戦後建造された最も大きな水上戦闘艦に数えられる艦です。まさか、海上自衛隊がかつて実施していたように集合訓練を行っているとも思えませんし、意図が気になります。

Img_6082  ミサイル巡洋艦モスクワの極東回航ですが、考えられるのは北方艦隊のピョートルヴェリキーとともに太平洋艦隊に協力し、朝鮮半島情勢に対処する事でしょうか。朝鮮半島情勢は韓国艦撃沈以来緊張収束の見通しは全くなく、米韓合同演習の実施や、国連安保理決議が行われれば報復措置に出るとした北朝鮮の姿勢など、緊張度合は増す一方です。既に昨年、北朝鮮が弾道ミサイル実験を行った際に、ロシア政府は弾道ミサイル迎撃能力のあるS-400地対空ミサイルの極東配備を発表しています。S-400はロシア版ペトリオットとして知られるS-300の後継で、モスクワとサンクトペテルブルクに続き配備となります。朝鮮半島情勢が最悪の状況に陥った場合には、ロシア国内へも難民流入や北朝鮮空軍機の越境、更には核兵器が使用される可能性や核関連施設が航空攻撃により破壊され、放射性物質による広域の汚染という可能性があります。現在の国際関係を見る限り、ロシア軍が北朝鮮軍の南進を支援する、というラリーボンド「侵攻作戦レッドフェニックス」のような状況は現実的にあり得ませんし、中国も森詠「日本朝鮮戦争」のように北朝鮮の高官亡命を受け入れる可能性はあるのですけれども、軍事的支援という事はあり得ません。一方で自国への被害が及ぶ事は当然憂慮する必要がありますので、備えを行っているとのことでしょう。

HARUNA

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北澤防衛大臣、北朝鮮による韓国艦撃沈事案受け自衛隊に警戒と情報収集を指示

2010-05-24 22:13:40 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆点検・情報収集・警戒監視を指示

 韓国艦撃沈事案について、防衛大臣より指示が出された旨、防衛省HPに掲載されていました。20日のものでやや遅れましたが紹介します。

Img_6025  韓国大統領の発言では、今後北朝鮮が韓国の領域に対して武力攻撃を行うのであれば自衛権を行使する、と発言。これは今回は自衛権を行使しない、という意味にも受け取れるですけれども、一方で韓国政府は米海軍との海上封鎖を想定した合同演習を行う、という発表を行っています。まだまだ収束の見通しは立っていませんね。

Img_6256_2  韓国哨戒艦沈没事案に係る防衛大臣の指示について・・・平成22年5月20日:韓国哨戒艦沈没事案に関する韓国側の調査報告発表についての総理大臣コメントを踏まえ、本日午後、防衛大臣から省内関係幹部に対し、以下の指示があったのでお知らせします。○自衛隊の態勢について改めて点検すること○引き続き情報収集に努めること○警戒監視活動に万全を期すこと http://www.mod.go.jp/j/press/news/2010/05/20b.html

Img_7579  自衛隊の態勢について改めて検討する事、という事は恐らく即応体制や部隊稼働率、応急出動に対する準備体制の点検、ということでしょうか。平和ボケと言われる日本なのですけれども陸海空自衛隊は全ての戦闘部隊や戦闘支援部隊は有事の際に即応できるよう定期的に点検を行っています。この態勢を改めて点検するという意味でしょう。一方で、朝鮮半島情勢は突如更に緊張を増すことも考えられますので、勤務体制にも影響が出てくるのかもしれません。

Img_6304  引き続き情報収集に努める事、というのは防衛駐在官による情報収集や外交ルートを含め収集される情報の分析、情報本部が実施している公開情報や通信電波の傍受、日本周辺で恒常的に行われている哨戒飛行等公海等で行われている任務を引き続き実施してゆく、ということでしょうか。

Img_6108 警戒態勢に万全を期す、ということは自衛隊基地の警備態勢や護衛艦などの航行時に警戒を促す事、という意味なのでしょうか、それより一歩進んで陸上自衛隊による沿岸警備態勢の点検、ということは含まれている可能性もあります。工作船が過去に浸透した事案も多々ありますので、相応の準備は行っている事でしょう。

Img_5840  現時点での防衛大臣支持は以上の通りですが、仮に韓国が海上封鎖演習を実施するなどを行った場合、これに対応して日本海や太平洋に対して北朝鮮がミサイル実験を行う可能性があります。現在、北朝鮮は空軍の稼働率が非常に低く、海軍には満載排水量1000㌧以上の艦艇は3隻しかありません、人民軍は野砲火力で秀でたものがありますが、これを用いた場合、恐らく不通の戦争になってしまいます。この点、弾道ミサイル実験は現実的選択肢となるでしょう。

Img_5861  また、工作員浸透に対する警戒も充分行われる必要が出てくるでしょう。海上保安庁、海上自衛隊合同で沿岸警備の強化を行うとともに、現時点では警察庁から指示は出ていないようですけれども、朝鮮半島情勢がひっ迫すれば全国の米軍基地に対して管区機動隊を中心に警備が強化される可能性もあります。

Img_6270  しかし、本来は日本は有事の際に利害が関係する事もあるのですけれども、当事国ではない訳です。本来は警戒体制と情報収集体制を確立するとともに、一歩引いて平和的解決の為に周辺国との協調を確立することが本来の役割だとも思うのですが、日本が先頭に立って安保理に、等首相の発言がこういう時に限ってブレません。こちらについては、北澤大臣が指示を出す訳にもいかずこちらの方も不安ですね。

HARUNA

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パシフィックパートナーシップ2010参加、輸送艦くにさき呉基地を出航!

2010-05-23 23:19:55 | 国際・政治

◆MOOTW=友愛ボート

 本日、鳩山首相が提唱した友愛ボート構想の実現へその第一号となる輸送艦くにさき、が呉基地を出航しました。首相は沖縄問題に忙殺され呉基地には足を運びませんでしたが隊員家族に見送られての出航です。

Img_7537  今回海上自衛隊が派遣されるパシフィックパートナーシップ2010はヴェトナム、カンボジアで二週間づつの医療支援と文化交流を行う事が目的です。このパシフィックパートナーシップは、訓練ではなく実任務で、アメリカ軍が主催する軍事組織による戦闘以外の任務MOOTW(Military Operations Other Than War)にあたります。くにさき派遣は5月23日の出航ののち7月15日に帰国する予定です。医療支援は内科を中心として行われる事となっており、報道によれば乗員160名と陸海空自衛隊の医官と歯科医官を中心とした医療支援チーム約40名が輸送艦に乗り組んでおり、現地で医療と災害救援関係のNGOメンバー22名が乗り込む事となっています。

Img_7456  輸送艦くにさき(LST4003)、は三隻が建造されたおおすみ型輸送艦の三番艦として2003年に就役しました。海上自衛隊第一輸送隊に所属し、全長178.0㍍、全幅25.8㍍、基準排水量8900㌧、満載排水量14000㌧。ディーゼルエンジン二基を搭載して機関出力は26000馬力、最高速力は二軸推進で22ノットとなっています。もともとは艦内に二隻搭載するエアクッション揚陸艇を用いてのドック型揚陸艦としての機能を有する輸送艦ですが、災害派遣に威力を発揮し、同型艦は既に国内だけではなく海外への派遣実績もあります。国際緊急援助隊としても派遣が考えられており、人道支援ではトルコ地震に伴う緊急人道物資の輸送、そしてインド洋大津波への派遣などが記憶に新しいところでしょうか。防災訓練への派遣も積極的で、特に首都圏直下型地震へは本型が優れた医療能力を持っている事もあり病院船として期待されています。数々の震災を通じて、陸上自衛隊の野外手術車への給電能力や航空機燃料搭載能力を強化させる改修が行われています。

Img_7487  おおすみ型は空母型船体となっていますが、上甲板前部は車両を搭載することが出来るようになっており、艦内とはエレベータで繋がっています。上甲板後部は飛行甲板となっていて、中型ヘリコプターまでは艦内へ収容することが可能です。ただし、陸上自衛隊の多用途ヘリコプターを搭載した際には艦内の車両甲板、ここはもともと90式戦車を一個中隊輸送するためのスペースなのですが、ここと上甲板を繋ぐエレベータの寸法が限られており、ローターを取り外す必要がありました。もっともローターを折り畳めるSH-60J/K哨戒ヘリコプターならば搭載できそうな気もするのですが、試験を行っているかは分かりません。おおすみ型の乗員定数は135名、しかし今回は乗員160名、と発表されていますから、指揮官と幕僚が乗り組んでいるのでしょうか、上甲板に防錆措置を施したヘリコプターでも搭載しているのでしょうか。そして艦内には前述の広大な車両甲板とエアクッション揚陸艇二隻を格納する区画、ここはコンテナ物資等の輸送区画にも流用できるのですが、他に乗員以外の上陸要員区画も配置されています。

Img_7439  友愛ボート構想は昨年11月に鳩山首相により提唱されたもので、災害派遣や医療活動へ実任務として参加することで国際緊急援助活動での医療や輸送分野での能力を向上させることも今回の狙いです。しかし、今回は民間NGOとともに平時のMOOTW任務に派遣されることとなるのですが、14000㌧といえば東南アジアでタイ海軍の空母チャクリナルエベト(11485㌧)、インドネシア海軍のドクタースハルソ級揚陸艦(11400㌧、4隻が就役)を超えるかなりの大型艦です。海上自衛隊のプレゼンスを東南アジアの南シナ海を含め中国海軍が進出しつつある海域に展開させるという点で意義は大きいですね。 鳩山首相の行った政策の中では評価できないものや疑問符が付くものも多いのですが、プレゼンス発揮と友好国との関係強化を行う今回の友愛ボート、MOOTW任務として考えた場合かなり評価することが出来るのではないでしょうか。

Img_7401  友愛ボート第一号、ということなのですが、これは継続的に行われる、という意味なのでしょう。個人的には災害派遣や武力紛争時の人道介入を行う多国間合同演習として“友愛演習”というものを東南アジア地域や南太平洋地域で実施しては、と思ったりします。“友愛演習”というと、ロシア語でザーパトでしたか、・・・、まあ、そういう名前の演習が過去にも行われているような気がしまして、十万人以上が参加し東欧で民主化運動が行われた際にソ連主導で十万以上のWPO軍を集結させ介入準備を行うという、目的も目的だったのですが、そういうものではなく、日本のプレゼンス発揮を目指して、“友愛演習”というものが検討されてもいいのかな、と。多国間での災害と紛争対処の訓練を行う事で、対中関係に対しても一定の機能が期待できますし、一向に具体的ビジョンは見えてきませんが、鳩山首相が一時期提唱していました東アジア共同体構想にも、各国の軍隊や人道団体との関係強化と信頼醸成には役立つようにも思えます。これはまた別の機会にちょっと考えてみたいですね。

HARUNA

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キャンプシュワブ沿岸部へ普天間飛行場機能移設 方針を固めた鳩山首相

2010-05-22 23:24:56 | 国際・政治

◆現行の日米政府間合意を尊重

 鳩山首相は22日、岡田外相、北澤防衛相、平野官房長官との会議の後に沖縄の普天間飛行場移設問題について、現行の日米合意に沿って名護市キャンプシュワブ沿岸部への移設を行う方針を固めた旨発表しました。

Img_17941  岡田外相はこの決定をアメリカのルース駐日大使に伝え、ようやく一歩前進しました。キャンプシュワブ沿岸部への移設は現在の日米政府間合意を逸脱しない内容となるようですが、従来検討されていた通りの埋立方式では環境負荷が大きいとして、杭打ち方式それも一部では太陽光が珊瑚礁に届くようガラス素材を用いた飛行場という案も話されているのですが、他にはメガフロートなどを用いて環境負荷を局限化しようという案もでています。滑走路が現状のV字型とするか、一本型滑走路とするかは現時点では未定ということになります。

Img_2197 これについては11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)までに結論を出す方針で進められるようです。海兵隊によれば杭打ち方式は水中工作員による破壊工作へ脆弱性を抱えている事、メガフロート案は弾道ミサイル攻撃により破壊された場合復旧に時間を要する事等を提示し難色を示しています。軍事機能を発揮する訳ですから現時点から脆弱性を低減するべく水中監視センサーシステムや攻撃を受けた場合に破壊されにくいような装甲メガフロートを開発したとしても、移設期限までには間に合わない事になりますから、今後の討議に注目すべきでしょう。

Img_1969  徳之島、大村、新田原、関空、富士と移設案は悉く地元自治体の反発にあい、もちろんこれは政治主導を掲げるあまり、少ない代議士だけでは地元との発表前の調整や協議を行う事が出来ず、いきなり移設先候補として発表し、必然的に拒絶されたことで移設候補を絞ることすらできず、沖縄県外への移設が安全保障上難しく、日米合意を一蹴するにはあまりにリスクがある、という状況から今回の決定に繋がったものと思われます。しかし爪痕は大きく、自民党が実現させるべく合意へ繋げた沖縄本島嘉手納以南米軍施設全面返還や在沖海兵隊グアム移設事業は、工法の議論や今回の決定までの時間浪費に伴う予算執行の面から遅延する可能性が高くなっています。

Img_2114  23日にも鳩山首相は沖縄入りを目指すとのことで、仲井間知事との間での会談を予定しています。沖縄県内からは最低でも県外へ、という公約を破られたことへの反発は当然予想されますし、連立与党を組む社会民主党は国外移設を軸として提唱しているため、今回の鳩山首相の発言に対しても仕切り直しを求めています。名護市キャンプシュワブ沿岸部への移設という方針が決まっても、埋め立て工事には県知事の許可が必要となりますし、工法に関する日米合意は参議院選挙の後となります。現状ではまだ未知数の部分がありますが、選択肢にキャンプシュワブ沿岸部を含め、それを最有力案として進めたことには意義を見出すことが出来るでしょう。

Img_0431  北朝鮮による韓国艦撃沈事案について、事故当時は黙殺していた鳩山首相は20日に韓国による北朝鮮制裁決議案国連安保理提出へ「日本として先頭に立ってその方向で努力したい」という発言を行い、22日の札幌における民主党北海道連パーティへテレビを通じて挨拶、「国際的に連携ししっかり戦っていかなければならない」、「北朝鮮が二度とこのようなことを起こさないような国際的環境をつくることも大事だ」とし、南北朝鮮問題に油を注ぎました。この結果如何によっては、在日米軍の抑止力を痛感する事態にも発展しかねず、こちらにも注視してゆく必要がありそうです。

HARUNA

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