◆6300系は京都本線特急の象徴的存在
ヘッドマークを先頭に京都本線を快走する阪急6300系は、いよいよ明日が阪急京都本線から6300系特急が引退して、嵐山線の運行に移行する日です。
阪急京都本線といえば、6300系特急から9300系に移行しつつある路線です。しかし、かつては2800系が2扉クロスシート特急として活躍していた路線です。しかし、さかのぼればもともとは新京阪電鉄が高速線用路線として建設した路線で、京阪電鉄といえば、ロマンスカーという名前の生みの親、今は小田急が固有名詞の如く使っている名前ですけれども、そのロマンスカーP6が鉄道省特急燕号と壮烈な競争を行っていた路線、そういうことで、京都本線の特急にはクロスシートの車両が当然のように充当されることとなり、6300系が開発されました。
6300系は、特急用車両として設計されていて、全長19000ミリ、車体幅2800ミリと阪急電車としては当時最大の車両となっていました。重量は37トン。先代の2800と比べた場合、同じ2扉クロスシート車でしたが、通勤輸送を考え扉は大型化していて、両開き形状を採用しています。一方で扉は車端部分に寄せられていて、客室部分は実質的に大型化しています。窓は二枚連続窓が採用されていて、2800系よりも上に大型化していて、車窓の眺望を向上させています。車内はゴールデンオリーブの転換式クロスシートで統一、ただし運転台後方だけは二人用ロングシートとなっています。
車内はほかには木目調でおちついたデザイン、外部塗装はマルーンの阪急カラーに上部をアイボリーという塗装を阪急電車として初採用、標識灯と尾灯のまわりにステンレスの飾り帯を有しているのが6300系の外見上の特徴になっていて、鉄道友の会から1976年にブルーリボン賞を受賞しています。1987年には車内にカード式公衆電話を設置、サービスの向上につとめ72両が生産されました。
車体は鋼製、動力は動力車各車に140乃至150kwのものを四基搭載しています。ブレーキの空気ブレーキ装置HRD1Dは電気指令式ブレーキで高速運行から素早い停車を実現させています。また、減速の抵抗で発電し架線に電気を戻す回生ブレーキも搭載しています。制御装置は直流モーターの界磁制御回路にサイリスタを用いてチョッパ制御をする界磁チョッパ制御方式の車両として設計されていて、当時としては高性能なICを多用した三重系無接点制御装置を採用して整備性を向上させています。台車はFS369で、容量の大きい空気バネ方式、この採用で車内の動揺を軽減する設計となっています。
6300系といえば西京極駅。誰がそう決めたのかと問われればわたしです。異論は認めます。桂駅と烏丸駅・河原町駅を利用することが多いので、その中間にある西京極駅は、手頃なカーブが河原町駅方向から延びていて、梅田方面を見れば理想的な直線が続いているのです。撮影には理想的。ちなみに京阪では出町柳・三条と東福寺・伏見稲荷駅を多く利用するので、鳥羽街道駅のカーブが個人的にお気に入りです。西京極駅を特急や快速急行、通勤特急は通過してゆくのですが、西京極と鳥羽街道の共通点は、白線のかなり内側からの方が、危険なホームの白線寄りよりもいい写真が撮れるので、安全、ということでしょうか。もう一つは、そこまで人がいない、ということですね。ちなみに、6300系が通過する時間帯はこの西京極にも多くのカメラマンが集まっていましたので、十分にここで撮る機会のあった私は、6300系の京都本線での撮り納め、という意味合いで撮影しました。もしかしたら、いやなんでもないです。
最後に乗ろう、と考えた時、とりあえず、先行する9300系の特急を利用し茨木市駅まで前進しました。高槻も考えたのですが、茨木市に一歩先に足を運び、6300系に乗り換えることにしました。6300系は、片側2扉車なのですが、扉の数とは対照的に乗り降りする阪急電車ファンの方は多く、時間がかかるのでしょうか、と思いつつ実際に到着するとそれほどの混雑でもありませんでした。大阪梅田と京都河原町は特急や通勤特急で片道ざっと45分、最後の1編成になってしまった6300系の京都本線特急運行なのですけれども、待っていればちゃんとやってくるのですし、一日あたり阪急電鉄によれば15本の特急を6300系で運行、桂の車庫との間で回送電車や普通電車として運行する便数も加えればかなりの数になるので、一日一本のブルートレインや、500系のぞみ号一往復の撮影に比べれば余裕があるのですよね。
また、名鉄パノラマカーの最後と比べれば、八両編成で収容力はありますし、展望席に人が集まるというようなこともありません。・・・、嵐山線に充当される6300系リニューアル短縮編成が将来、最後を飾るときのことは予測できませんが。さすがに着席することはできませんが、吊革も取り付けられた、通勤輸送も考慮した特急車両、電車に揺られながら十三に向かいます。
十三で神戸本線に乗り換えて、西宮北口で今津線のりかえか神戸三宮、もしくは塚口から伊丹線に、という経路で移動したいところですが、今日は別、切符は梅田まで買ってありますので、ここでほかの阪急電車を眺めつつ、戻ってくる6300系特急を撮影して、行き違いに梅田へ向かうこととしました。
阪急電鉄HPに発表されていた6300系の運行は午前と午後に分かれていました。早朝に桂の車庫を出発、朝0730に河原町を特急として発車して00817に終点大阪梅田に到着。0824に梅田から折り返して0912に河原町へ。河原町を0920に梅田に向けて出発し1004に到着。梅田を1010に河原町へ向けて発車して1053に終点。
河原町から1100に梅田に向け出発して1144時に到着。1150時に梅田から折り返して1233に河原町。1240時河原町出発、終点梅田に1324。ここで最後の折り返しをおこなって、その後車庫に入ります。この情報をもとに撮影に赴いたのですが、最終日である明日も同様の見込み、御参考に阪急HPとともにどうぞ。
午後の運行は、京都河原町を1609に出発して大阪梅田に1654到着。梅田から折り返して1700発車、1744京都河原町到着。1749河原町出発で梅田に1834到達。梅田を1840の発車で1924河原町。折り返して河原町を1929に出発、梅田に2014到着。2020に梅田を河原町に向けて出発して到着は2104。
2109に折り返し河原町を梅田に向けて2154到着。2200に最後の特急として梅田を出発、2246に河原町駅に到着し、河原町駅からは桂行き普通で出発、終点桂で車庫に入る、という一日の運行が行われる旨、阪急電鉄HPには掲載されていました。時間の都合にあわせて、撮ったり乗ったりができるわけですね。
十三駅で一通り写真を撮り終えて、大阪での所用も済ませましたので、京都に戻ることに。大阪では買うものがあったのですが、梅田駅というのは阪急が造り上げた一つの街ですね、少々身の回りが荷物で重くなっていました。ちょうど時計を見てみれば時間は先ほど見送った河原町への6300系特急が戻ってくる時間帯でした。
そこでやはり、梅田駅で6300系を待ちます。河原町駅は新京阪の時代に建設された高速線なので、阪急の神戸本線や宝塚本線とは地下部分が路線にあるなど、少し違った雰囲気なのですが、神戸本線の特急、宝塚本線の急行、そして京都本線の特急が十分に一度同時発車します。
十分おきなので、乗り過ごしても次の特急がすぐにやってきてくれるのですけれども、同時発車、というのは何故なのでしょうかね、ダイヤを組む上での趣味なのでしょうか、発車すると十三駅、この駅はWeblog北大路機関発祥の地なのですけれども、併走していきます。この様子はなかなか壮観で、ついつい見入ってしまいます。一般の人でも、同時発車には、おお、と思うことがあるそうなので、電車好きには、一本といわずどれだけでも時間を過ごせてしまいます。私も同様に、ちょうど晴れたいい天気の下で電車を幾本か眺めていました、9000系と9300系も洗練されていて、なるほどなあ、と物思いに耽っていると十五分ほどでしょうか、すると6300系がやってきました。普通電車の発車と時間が重なってしまいましたが、ちょうど普通電車は阪急電鉄最古参の2300系、いい具合に並んでくれました。
梅田駅に到着した6300系はあることを行います。河原町駅では、6300系は到着するとそのまま乗客を降ろし、梅田駅に向かって特急や通勤特急として出発していきますが、梅田駅では条約をいったん完全におろすと扉を閉めます。そして車掌さんの釦操作一発でクロスシートの無期を一斉に転換させるのです。これは、無人の車内で同時に座席が動きますから、はじめて見た人は少々驚くようです。
名鉄の7000系なんかは、新岐阜の終点で車掌さんが車内を歩きつつ、一つ一つクロスシートの方向を歩きながら切り替えていきますが、阪急特急では一発です。一発のはずなんですが1975年から阪急の看板特急として頑張ってきた車両というだけあって、完全に起き換わらない座席もあるようです。こういう座席は車掌さんが気づけば手動で向きを変えてくれますし、そこまで気にならない乗客の方はそのまま座席に座ってくれます。
6300系はクロスシートが売りなのですから、そのまま座席に収まって、終点までのんびり車窓を楽しむのが王道なのでしょうけれども、梅田や河原町から乗車して、混雑している中で茨木市や高槻、淡路で乗り換える人には不便かもしれません。昔はそうした駅には特急は停車しなかったので、のってしまえば、そして座れれば京都か大阪まで車窓を楽しめたのですね。しかし、停車駅が増加した今日では、乗り降りに2扉車は不便だ、という話には説得力があります。
さて、乗車です。目的地は京都河原町から一つ手前の烏丸、始発の梅田駅から殆ど終点まで乗車するわけです。もっとも、時間帯が時間帯ですから混雑しているわけでもなく、もし途中の駅で降りようと思えば、この乗車率ならば苦労はないのですけれども、ね。6300系に乗り込みました。久しぶりにリラックスしての乗車です。夜間を除けば、ここまで落ち着いて阪急特急のクロスシートに身を委ねるのは久しぶりのことです。車窓を楽しめる、つまり明るい時間というと、どうしても向かい側から6300系がやってくるのではないか、と気になってきますから、なかなか落ち着けないわけです。電車好き、といっても電車の旅といいますか、移動は正直に満喫できないこともあるのですよね。しかし、この日、といいますか、この時点で京都本線の運行に就くことができる6300系は、今乗っているこの一編成のみですから、向こう側から6300系がやってくる、ということはないわけです。よかった、これで久しぶりに6300系の車窓を楽しむことができる。
6300系、親子連れも乗り込んでいました。お父さんとご子息、一つ前の座席に座っていましたね。お子さんにしてみれば、古い6300系よりも新型の9300系の方に興味があるようです。しかし、特急河原町行きが梅田駅を出発すると、個々の小さな発見を口にしてくれますので、純粋に電車を楽しむ姿、というのはこちらにも新鮮ですね。そして、私は久しぶりに、というわけでもないのかもしれませんが、6300系の車内で一眠りしました。
この日1609の運行からヘッドマークが搭載されての運転です。市内で所用を済ませたら夕食は桂でとろう、そんなことを考えつつ、淡路をでて、次は茨木市、という案内放送は聞いたような気がします、気づいたときには、もう桂駅に到達していました。これです、こういうのが本来の6300系ののり方なのでしょうね。ここで烏丸に到着すると降車しました。折り返しの6300系を撮ろう、という目的のためですが、久々に6300系に乗りリラックスできたので気分は上々です。
9300系の座席も素晴らしいものなのですけれども、やはりね、頻繁に乗り降りをするための車両なので、乗り心地のいい通勤車が特急に充当されている、というところなのですが、6300系は特急車なのですよね、このあたりが違うなあ、と思ったところです。そして、特急車は通勤に向かない、というところなのでしょうか。6300系よりも古い2300系や3300系、5300系が元気に京都本線を行き来しているところをみると痛感します。ところで、9300系って、名鉄7700系の座席ににている印象があります。
どうでもいいことですね。名鉄7000系パノラマカー亡き後最後の急行車として奮闘する名鉄5700系や京阪8000系テレビカーも片側2扉で通勤輸送に向かない、という指摘がありそうですが、これら車両は車体のやや中寄りに扉を配置しています。しかし、6300系は車端部、ここが違いです。もっとも、5700系も3150系のような3扉中途半端セミクロスシート折衷車へ、8000系も次の特急はテレビカーがリニューアルとともに廃止されるとのことですから、果たして次世代は2扉か3扉か、気になるところですけれどもね。
6300系は特急の停車駅が多くなったので使い勝手が悪くなった、と書きましたけれども、昔の阪急特急は停車駅がすごく少なかったのだそうです、もう、茨木市も高槻もどんどん通過、という勢いでした。1991年の時点での停車駅は京都本線の場合、河原町、烏丸、阪急大宮、十三、阪急梅田。通勤特急には停車駅に高槻市が加わります。それが今日では、大宮は抜けているものの桂、長岡天神、高槻市、茨木市、淡路が加わっているのですね、通勤特急では淡路が無くなりながら西院、大宮に停車します。もっとも、当時は20分乃至15分間隔の運転でしたので、10分間隔運転になった時点で変化した、といえるのですが。
これは最高速度110km/hの阪急電鉄が、130km/h運転を開始したJRの新快速にたいして速度では対抗できないので、停車駅を増加させて利便性を向上させるほかなかった、ということが挙げられます。10分間隔で運行させるならば、利用者は15分間隔の新快速よりもことらを選ぶでしょうし、運賃も大阪と京都で390円と、JRの540円よりも安くなっています。こうして、輸送需要の変化に対応できるのかという点と、特急運行に長期間使われたことで老朽化している部分もおおくあるようで、遂に明日、京都本線の運行から引退します。しかし、阪急が観光地として錬成した嵐山と京都本線桂駅を結ぶ嵐山線を観光電車としてリニューアルした短縮編成が投入されて、しばらく頑張るようです。
阪急京都本線特急といえば、6300系から9300系に移行します。3扉車で普通電車や準急にも充当されるので、ちょっと風格では不足分があるようにも。いろいろと通勤車両としては言われることがある6300系ですが、何度も大阪へ神戸へ向かう時に利用した身としては、京都の河原町や烏丸から着席して移動するには素晴らしい電車でした。良い時代の良い電車、という感想とともに、思いつくままに書き、今週に撮影した6300系の写真を並べました本日の記事を締めくくりたいと思います。
HARUNA
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