◆飛行開発実験団の岐阜基地
本日は日曜日に行われました岐阜基地航空祭2010の模様をお伝えします。あいにくの曇り空ではありましたが、飛行開発実験団の機体を中心に迫力の飛行展示が繰り広げられました。
岐阜基地航空祭2010、会場の開場は0830時と聞いていたのですが、先行主力班からの情報によれば0745時の時点で開場とのこと、当方0747時到達の予定で行動中であり、そのまま主力班との合流予定を会場前から会場へと移し、基地へ入る事としました。会場直後、もうそれなりの賑わい。
しかし、地上展示機に目もくれずそのまま前進してゆきますとメイン会場最前列から三列目程度までは埋まっていない状況、目の前にレジャーシートや折り畳み式椅子を持ち込んでいる一行の後ろであれば、立った姿勢での撮影は可能、とのことで、同行の友人とともに別働隊が陣地構築です。
F-2支援戦闘機の離陸、背景の山があってかうっすらとバーナーの焔が見える。今年の航空祭、雨天予報の関係かな、開場時間の調整でしょうか、人口密度は低かったようで、こんな写真の撮れる位置に。安心してカメラバッグから朝食のパンとコーヒーを取り出します。しかし、この時点で帰りの列車まで一瞬と座る事が出来ない一日の始まりとは、知る由も無かった。
F-2の機動飛行。機動性は非常に高く、搭載量もこの種の機体としては破格の8㌧で戦闘行動半径も大きい。この機体は一時期、多くの評論家(ヒョーロン家)に欠陥機とか言われていたのだけれども、強度試験の意味合いや他のあらゆる機種にも当てはまる運用制約を無知から欠陥と誤解したのが始まりなのやも。
次期戦闘機選定がもたつく現状では、対艦攻撃能力が高く、空対空戦闘能力に将来発展余地のあるF-2を一機でも多くそろえる事が焦眉の課題だと思うのだけれども、生産中止決定の時点で既に解決されていた面、機動性や機体強度に問題があるといった欠陥機という誤解は完全に溶けていない点が影響した可能性がある。
一時期は自衛隊装備が高すぎて欠陥、という事をあげ足とり方式で強調して外国製装備の調達を促すブームがあった。これで稼いだ評論家はけっこういたはず、この中で多くは事実誤認を是正せず放置している現状も。日本の防衛に必要な装備を欠陥機へ誹謗中傷し、おとしめた責任があるようにも。
天候偵察へ向かったT-4が着陸、両手を大きく振っているので、航空祭ヲワタwの印かと思いきや航空祭は天候の問題なし、続いてT-7練習機、F-15戦闘機、F-2支援戦闘機が離陸を開始、岐阜基地航空祭2010の開幕です。プロペラ機とジェット機という全く飛行特性の異なる機体の編隊、これが岐阜基地航空祭です。
岐阜基地の飛行開発実験団は航空自衛隊の各種装備に関する評価試験を行う部隊ですので最新装備はいち早く装備されて実用性の徹底的な精査が行われ、旧型装備はその能力を最大限絞り出す不断の技術開発が行われる部隊、すなわち航空自衛隊の各種航空機がほぼそろっている部隊です。
そんなこともあって、入場者が多い、自衛隊の航空祭では入間基地航空祭に次いで入場者が大きい航空祭なのですが、海上はエプロン地区のメイン会場以外にも多く用意されていて、最前列付近での人口密度はこれくらいです。これくらいならば何とかなりそうな雰囲気、というところではないでしょうか。
オープニングフライトに続く最初の編隊飛行は岐阜基地の真骨頂と言うべき顔ぶれで、T-4練習機、F-4EJ戦闘機、F-4EJ改戦闘機、F-15戦闘機、F-2支援戦闘機による編隊飛行。この編隊だけでもこの岐阜基地でなければこれだけ多くの機種による編隊飛行は日本の基地では見られないのではないか、という光景。
編隊飛行を実施した航空機はそのまま機動飛行を実施します。アメリカ空軍特殊戦技学校に留学経験のあるパイロットが一人混じっているとのアナウンスがありましたが、映画のトップガンよろしく、岐阜ですからファントム無頼でもいいのですが、管制塔近くを高速航過したこの機体のパイロットがそうなのでしょうか。
あいにくの曇りという天気もあって、岐阜基地航空祭2010では南側会場からの順光状態での撮影は断念しました、どう頑張っても順光状態で青空と航空機の撮り合わせは不可能でしたからね。しかし、空気中の湿気が多いからか、機動飛行の機体からヴェイパーをはっきりと捉えられたというのはよかったです。
着陸するF-15を流し撮り。手ぶれ補正レンズ、いわゆるISレンズやOSレンズの普及で1/25程度でも連写すればかなりの確率で成功する流し撮り撮影が可能となりました。フィルム時代と比べて装弾数というかCFカードの撮影枚数も増加しているので、これは技術の進歩ゆえの一枚。
ドラッグシュートを展開させて急速減速するF-2B、逆光の位置からの撮影なのですが、デジタル一眼レフで撮影する場合は、露光を二段階か三段階上げて撮影すると、空は完全に白くなってしまうのだけれども、機体の塗装は判別できる程度になります、PLフィルターはあまり意味が無いみたい。
着陸後に誘導路を往くF-2支援戦闘機初号機、背景に見える山頂の設備は第4高射群のペトリオットミサイル陣地。航空祭は、多人数で行くのが一番でしょうか、こういう写真が撮れる場所に陣取ったのですが、お手洗いなどで移動する際、撮影位置を維持する仲間、というのは重要です。後から来て勝手に割り込みする人は実際多いですからね。
C-130H輸送機による不整地発着訓練展示。こればかりは、南側会場からですと遠すぎてほとんど見えませんし、航空宇宙博物館側から撮影しますと、山影になってしまい何も見る事が出来ず、ただ離陸したC-130Hを眺めるだけになってしまいます。今年は撮れそうだ、不整地着陸展示。
不整地着陸展示、そもそもC-130H輸送機は米軍の最前線への戦術輸送を想定して開発された輸送機で、荒れ地に胴体着陸して荷物を下ろした後軽くなった機体から無理やり脚を出して離陸、というような運用も想定されているほど頑丈な機体、そういう状況を想定して無舗装滑走路で発着を行う訓練で、無舗装の訓練用滑走路がここ岐阜にしか無いという点を活かした展示。
F-4の列機と整備車両、そして着陸態勢に入るC-130H輸送機、最前線のような一コマ。・・・、なのですが、このあと肝心の不整地着陸訓練は、ブルーインパルスの影に不整地発着用の滑走路がありまして、見えるのはブルーの機体の背景に巻き上がる砂埃ばかり、見えませんでした。縁が無いのかな。
着陸した輸送機がそのまま地上の支援車両に支援されて展示位置へ戻ります。通常は自力で移動するのだけれども、砂ぼこりとともに小石や芝生が風圧によって舞いあがって飛んでしまうため観客のいる航空祭では安全性に配慮してこのようにエンジンを止めて移動するとのことでした。
多機種大編隊、岐阜基地名物の始まりです。航空自衛隊では異機種大編隊と呼称しているのですが異機種による大編隊だけなら、三沢でF-2とF-16の大編隊や、百里でF-15,F-4にRF-4の大編隊もあります。しかし岐阜のは機種の多さが根本から違う、そういう事で個人的には多機種大編隊、と呼んでます。
二機編隊で離陸するF-4,岐阜基地航空祭では毎年、如何に力強い離陸と編隊を撮影するか、というのが一つのテーマとして取り組んでいるのですが、今年は逆光のメイン会場だったのだけれども、位置が離陸点に近かったという事もあって、このように飛び立つ瞬間を写し込む事が出来ました。
F-2支援戦闘機の編隊離陸。築城基地や三沢基地へは遠い事もあり、F-2といえばこの飛行開発実験団とそうに見慣れているのだけれども、実戦部隊のF-2をもっと撮りたい!、というのはかなり贅沢なものだのだ、と先日東北方面隊50周年行事の霞目飛行場で聞きました。なるほど、その通り、ほとんどここだけしか見れない編隊だ。
F-15戦闘機の離陸。大型の機体に入手可能な最大限のエンジンを搭載して大型機と高い空戦機動を実現した機体、大きな機体には多くの電子戦装備と武装を収容できるので、導入開始から間もなく30年を迎えますが、まだまだ将来発展の余地がある機体で、航空自衛隊の明日を担う事にもなる戦闘機です。
多機種大編隊の飛来。C-1FTBとF-15戦闘機、F-4戦闘機、F-2支援戦闘機、T-4練習機が参加。昔はここにF-2がいなかった分、T-33練習機やT-2練習機が参加したりして、それこそ凄い編隊になっていたとのことです。実のところ当方が初めて岐阜航空祭を見たのは90年代の半ばなのですが、ね。
多機種大編隊が接近するとレンズを広角ズームにするか、望遠ズームにするか非常に迷います。70-300mmでは厳しいものがあるのですが、今回手元にあった望遠ズームは120-400mm、諦めて予備と18-200mmで撮影しました、この高倍率ズームレンズ導入前は18-55mmで頑張ってた。
ピュラミーデ!、錐型編隊飛行が今年度の多機種大編隊における新技。編隊が立体になっていて、飛行とともにその形状を流動化させるというもので、この飛行には高い技術と、それからアナウンスによれば根性が必要とのことです。平面から立体化された変態というのは航空自衛隊でもブルーインパルスを除けば珍しいかもしれない。
多機種大編隊を終了するとそのまま編隊を解いて次々と会場手前で機種ごとに旋回して着陸態勢へ入ってゆきます。ブルーインパルスの列機を俯瞰しつつF-15三機による普段の岐阜基地では見られないような急旋回、最大能力旋回に近い角度で切り返して、一路着陸進路へ入ってゆく。
着陸して、その瞬間に制動を掛けるべくドラッグシュートを展開したまさにその瞬間のF-2B。このまま減速して、誘導路付近に来るとドラッグシュートは切り離します。切り離したドラッグシュートはそのまま待機している車両の要員が回収、こういう役目も航空自衛隊では欠かすことのできない重要な仕事です。
更にC-1FTBによる機動飛行、C-1は川崎重工を中心に国産されたジェット輸送機で、搭載量や航続距離などではC-130H輸送機に劣るものの、機動性でははるかに凌駕しており、入り組んだ地形と高山部が続く日本列島での戦術輸送運用を最大限に考慮した機体。来年にはXC-2が編隊に参加するやも。
小牧基地の救難教育隊による救難飛行展示。UH-60J救難ヘリコプターとU-125救難機が連携して遭難者を発見し、救出するまでの一連の過程を展示します。これも南側会場や誘導路周辺からは全く見えない展示なので、岐阜基地航空祭にてはっきりと見るのは久しぶりかもしれません。去年は少しメイン会場で見れましたけど。
航空救難団。高速でU-125が遭難現場に進出してヘリコプターへ遭難者の位置や周辺の状況を提示、この情報に基づいて最適な航路を選択し、現場に進出したのちに救難に当たるという救難隊、この能力の高さが全ての部隊の隊員に万一の際の安心を与え、士気を高めることに繋がってゆきます。
救難飛行展示を終えて着陸態勢に入るUH-60Jと地上の要員を一コマにいれてみました。UH-60Jですが、現在空中給油受油装置の搭載が計画されており、将来的にはKC-130空中給油機より空中給油を受けることでその行動半径は今までよりはるかに広がる事となるでしょう。
どうでもいいのですが、救難展示が行われている時間帯に、当方は、とある事情で荷物を友人に預けて後方に出ていたのですが、戻ってみると、人が多すぎて、どこがどこだかわからないことに。会場にも迷子を知らせるアナウンスが終日鳴り響いていて、16歳の少年から80歳の老人まで迷子になっていました。俺も危なかったのか(違)。
ブルーインパルス飛行展示。いよいよ航空祭も終盤となりまして、最後は松島基地より展開したブルーインパルスが締めくくります、まずはパイロットが機付長以下整備員とともに待つ機体へ向かうウォークイン。ブルーインパルスは今年で創立50周年、半世紀の伝統と技術の蓄積がこれから披露される事になります。
飛行前点検を終了し、いよいよフライトスーツを装着したパイロットは機体に乗り込み、エンジンが唸りを挙げて始動、機体は地上でも編隊を組むように誘導路を進みます、これを編隊精神といい、常に行動に取り入れることで精緻を極めた飛行展示が平穏無事に行えるのだとか。
ブルーインパルスの離陸。航空祭ではブルーインパルスの飛行展示有無で来場者が二割から三割程度変動します。言い換えれば、この飛行展示が行われる瞬間こそ、航空祭会場の熱気と混雑に人口密度が最高潮になる瞬間なのだといえますね。この時も後ろを振り返ると凄い事に、目の前には割り込みもありました。
ブルーインパルスの飛行展示がいよいよ始まるのですが、いよいよ始まったのは雨天の方も同じ。この日は曇りのち雨だったのですから予報は的中しまして、ブルーインパルス飛行展示も垂直系の展示ではなく、視界が悪い状況でも可能な平面系を中心としたものになっていました。
いよいよう点となるのですが、実はブルーインパルス、飛行展示が始まれば後ろに引いて人口密度の低い地域から広角レンズで撮影した方が良い写真が撮れたりする、他方、広角レンズは水滴が写り込みやすい、防滴&防水装備は万全なのですが、取り付ける時間も無く、けっこう際どい状況でしたが撮影は続けました。
着陸したブルーインパルス。EOS-40Dはライブビューア撮影機能があるので、カメラを高く掲げて一枚。昔は勘に頼って撮影していて、かなりの頻度で失敗したのだけれども、便利になった。もっとも、60Dはチタンボディーの不採用や連写速度低下等、よくなったのは軽量化だけなので、興味はないのですが。
航空祭全ての飛行プログラムが終了しました。そして帰り始めた人で三柿野駅とか、凄い事になっているのでしょうね、特別車だけのミュースカイも延長運転してたけれども、指定席券買った人、間に合ったのかな?往復券も早朝に販売していたけれども、帰り道が固定されてしまうので当方は買いませんでした。最寄駅は、名鉄で三柿野、六軒、各務原市役所前の三駅とJR蘇原駅。
XC-2の初地上展示。ブルーインパルス野飛行展示終了とともに会場から帰路に就く観客が多いため少しは会場にて様子を見るのが一番、ここで地上展示機を撮影。日本が世界に誇るXC-2ですが、しかし機体側面の補強がかなり凄く、この胴体部分を担当した某重工も川重と違い不得意はあるのだな、と。
地上展示機が撤収準備を始めています。雨が降り始めたのですけれども、この地上展示の外来機については、帰投のための離陸を撮影しようと、最前列付近には結構な人だかりが出来ているのですけれども、当方一行は地上展示機の撮影へ専念します。特に格納庫内の。雨宿りも出来ますし、ね。
CCV試験機。F-2開発のFSX計画においてアメリカよりデジタル操縦系統のフライバイワイヤが突如供給されない事となり、計画は頓挫か、と危惧されたのですが、技術研究本部がT-2練習機をもとにこのCCV試験機により技術開発を行っていたため、なんとかなりました。常に同盟国に支援を得られるとは限らない、自主開発努力の重要性を示す端的な事例です。
空対空小型標的。本年の最新装備と言うとXC-2とともにこの装備が挙げられます。空対空ミサイルの射撃訓練に使われる小型標的で、遠隔操作やフレア等の妨害装置を搭載可能、しかもこれまでの標的機よりもコストが安く、同じ予算でより多くの実弾射撃を戦闘機パイロットに行わせることが可能、開発は川崎重工。
F-2支援戦闘機。JDAMとAAM-4が取り付けられています、このほか赤外線誘導爆弾やASM-2空対艦誘導弾、AAM-5空対空ミサイルなども展示。新装備のレーザーJDAMや開発中の超音速対艦ミサイルXASM-3のモックアップを期待したのですが、残念ながら今年度は展示されていませんでした。
小牧基地へ戻るC-130H輸送機。小牧は名鉄で利用してもあまり時間のかからない近距離にある基地、近いのですぐ戻れるという心の余裕からか、いよいよ本降りか、という雨の中でも多くの来場者が手を振っているのに応えるように離陸後再度基地上空に飛来し、翼を振ってフライパスを行ってくれた。
E-2Cが三沢基地へ帰ってゆきます。外来機は続々と帰投を開始しまして、我々一行も帰路に。名鉄線は混雑が凄かったためJR高山線を利用して一旦岐阜へ出ることになり、最後は全員で列車のボックスシートに座りデジカメの液晶で戦果確認。最後になりましたが、当日お世話になりました皆様、ありがとうございました。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)