◆あきづき就役と南西諸島防衛を強化
長崎新聞によれば護衛艦あきづき、が3月14日頃に自衛艦旗授与式を迎え、佐世保基地へ配備されるとのことです。
あきづき佐世保配備。23日に第二北大路機関にて長崎新聞から引用記事を紹介していましたが、あきづき佐世保配備となるようです。あきづき型は一番艦あきづき、二番艦てるづき、が進水式を終えて艤装工事中で、一番艦は公試を実施中、まもなく就役するとみられ、その配備先が注目されてきました。
佐世保基地は、第二護衛隊群の護衛艦くらま、以下多数の護衛艦が配備されており、護衛艦の数では横須賀基地とともに日本最大の海上自衛隊護衛艦母港としての地位を担っています。特に南西諸島近海での中国海軍の活発な動きは、護衛艦の哨戒によって事態の悪化を阻止せねばなりません。
新型護衛艦はその能力と共に大型化しており、これは必然的に航続距離などの面で長期間の任務に対応することを意味しています。初代秋月は旧海軍の防空駆逐艦、海上自衛隊では二代目となりますが、先代は護衛艦隊旗艦を務めた一隻、就役後の我が国の防衛に貢献することを最大限期待したいですね。
しかし、あきづき型護衛艦は、はつゆき型あさぎり型、むらさめ型たかなみ型と護衛艦隊のワークホースとして建造されてきた汎用護衛艦ではあるのですが、FCS-3という防空能力に長けた多機能レーダーと戦闘情報処理システムによる高度な防空能力を備えています。
海上自衛隊の護衛艦は、艦隊中枢として対潜戦闘と指揮を担うヘリコプター搭載護衛艦、イージスシステムやターターを搭載し艦隊を航空脅威からミサイルにより防空するミサイル護衛艦、そして対空対潜対水上と突出はしなくともが均衡のとれた汎用護衛艦、沿岸警備用の小型護衛艦に区分できました。
あきづき型は、FCS-3の搭載により限定的な艦隊防空が可能で、これを僚艦防空能力としています。ミサイル護衛艦が搭載するスタンダードSM-2ミサイルは最大射程100km、対して汎用護衛艦が搭載する最も射程の長いミサイルはESSMで射程50~60km、やや古い護衛艦が搭載するのはシースパローで射程15~20kmです。
この高度な防空能力は、イージス艦の護衛に使われる、とされてきました。イージス艦は高度な防空能力を有していますが、日本のイージス艦には北朝鮮や中国の弾道ミサイルから日本を防護するミサイル防衛任務が任されており、高い角度を飛翔する弾道ミサイルを警戒するイージス艦の低空に生じるであろう隙に対処する任務があるためです。
弾道ミサイル防衛能力付与は、イージス艦に対しても射程が1000kmを超えるSM-3を搭載しデータリンクや処理性能を改善する改修を必要としました。これまで、こんごう型護衛艦の4隻すべてに対応すべく改修工事が行われてきましたが、来年度予算からは、あたご型護衛艦への改修も開始、海上自衛隊は近い将来6隻の弾道ミサイル防衛対応艦を運用することになるわけです。
佐世保基地には、イージス艦こんごう、ちょうかい、あしがら、が配備されているのですが舞鶴基地にもイージス艦みょうこう、あたご、が配備されており、北朝鮮の弾道ミサイル配備を考え舞鶴に配備されることもあっていいのかな、と考えていたのですが佐世保配備、となっていました。イージス艦は佐世保に三隻、まあ妥当ともいえるでしょう。
ただ、驚いたのは今月二十日に舞鶴基地から護衛艦あまぎり、が佐世保基地へ転籍していた、と同時に報じられていたということです。あまぎり、海賊対処部隊として舞鶴から派遣される際には見送りに行ったものですが、佐世保へ移ることとなったとは。先代の駆逐艦天霧はのちの大統領ケネディ中尉指揮の魚雷艇を真っ二つにしたことでも知られる一隻です。
舞鶴、昨今は南西諸島への脅威が強調されているようですが、日本海での北朝鮮工作船の問題、先日も北朝鮮からの不審な漂流漁船の事案があり、北朝鮮工作員の接近という問題は根本的に解決されてはいません、南西諸島は長大ですが、同じく日本海の海岸線も長大です。
しかも日本海沿岸は島嶼部ではなく本州、北朝鮮工作船の情報は海上警備行動はじめて発令された以前からその存在については指摘されていましたし、地続きであるので上陸されれば奥深くへ浸透されるということが忘れられているのではないでしょうか。
護衛艦16隻体制による南西諸島防衛強化は、日本にとり必要な命題ではあるのですが、北方のロシア海軍の再生の動きや中国海軍の小笠原諸島とグアムの間での活性化、更に日本海の北朝鮮への警戒の重要性とソマリア沖海賊対処任務に昨今はイランのホルムズ海峡封鎖示唆に対しペルシャ湾海上警備行動の必要性が出てきています。
全てにおいて重要、結果は護衛艦そのものが不足、という言葉は短絡的ととられるやもしれませんが、しかしこれを置いて現状の問題を解決する手段もないように思えてしまいます。あきづき型の就役は海上自衛隊にとり大きな一歩となるでしょうが、併せて、あきづき型は先進的な設計を断念しコスト低減を重視した設計を採用しました。
しかしそれでも建造費は大きく、続く中型でコスト重視の新型艦が要求されるといわれながら財政難で実現せず、旧式艦の延命が続いています。海外での任務は増大、北方脅威から西方シフトと呼ばれた時代は十年前の話で現在は北方脅威再建と日本海に東シナ海で三方脅威の時代、この状況下での護衛艦の不足は、なんとかならないものでしょうか。
北大路機関:はるな
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