北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新田原基地航空祭2011詳報① 快晴下の航空祭始動と眺鷲台からの眺望

2012-11-30 23:47:44 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆新連載!南九州の航空祭

 先月完結した護衛艦くらま就役30周年記念公開詳報に続き、今回から新田原基地航空祭2011の詳報を紹介します。

Nimg_7_835 毎年12月に行われる新田原基地航空祭、新田原基地航空祭2012は今週日曜日に行われます。南九州にある新田原基地は、九州新幹線とは九州島の反対側にあり、少々行き難い場所にあります。文字通り始めてゆく航空祭という形ではありましたが、当方が試行錯誤にて撮影位置を模索した様子と共にご覧いただければ幸い。

Nimg_7751 新田原基地そのものは、鳴海章氏の仮想戦記小説最高峰に数えられる原子力空母信濃シリーズでは信濃航空団の拠点として描かれていましたし、小松左京氏の日本沈没と並ぶシュミュレーション小説の最高峰、巨大火山災害を描く石黒耀氏の大作死都日本でも描かれていましたが、実際に行くのは初めて。

Nimg_7765 少々高台にあると聞いたのですが、新田原基地はエプロン地区からは完全に逆光となってしまう、という話は聞いていました。そこで今回は2009年の浜松基地航空祭以来、折畳式自転車により日向新富駅付近から4km程度離れた基地まで展開することとしたのですが、これが想像以上の登り。まあ、京都の原谷ほどではないのですが。

Nimg_7754 全行程ほぼ登り、というのは短距離でも疲れるものですが、基地の滑走路反対側地区は開放されないため、少々遠くとも自転車により移動するしかなく、思いのほか展開に時間を要してしまいました。もっとも、この時の反省から今年の浜松基地航空祭では反対側への展開にタクシーを一部利用したので、教訓は活かされた。

Nimg_7794 オープニングフライトへ向けてU-125救難機が誘導路を進んでゆきます。かなり早く出発したのですが難渋してしまい、到着は0822時です。ただ、ご覧ください、機体のいろと背泳の山々が新鮮に映る素晴らしい順光の情景でしょう、これは言い換えれば写真の滑走路反対側、即ちメイン会場は物凄い逆光、ということ。

Nimg_7817 この撮影位置は眺鷲台と呼ばれており、居酒屋や土産店も小さいながら並んでいます。航空祭以外の比では撮影ポイントとなっているのでしょう、少し高台になっていて、多くの方が自動車にて撮影に展開していました。おそらく航空祭予行ではここからかなりの方が撮影したのかもしれません。

Nimg_7831 オープニングフライトとともに大編隊飛行が行われるため、このための離陸準備が行われるのですが、飛行場全体が徐々に戦闘機のエンジン音により徐々に満たされていくある種の緊張感、そして朝日と少し肌寒い南九州の朝が生む澄んだ空気の中を陽炎を引きつつ進む航空機、この空気、雰囲気、臨場感、なかなか。

Nimg_7832 新田原基地は西部航空方面隊第5航空団第301飛行隊、航空総隊直轄飛行教導隊、航空教育集団飛行教育航空隊第23飛行隊が展開しています。運用する航空機は、F-15戦闘機とF-4EJ改戦闘機、そしてこの基地はある種特殊な部隊の航空基地となっていまして、これも注目するところ。

Nimg_7836 第5航空団は第301飛行隊のF-4EJ改戦闘機を運用しています。航空自衛隊のF-4飛行隊は百里基地とここの二個飛行隊のみですが、第5航空団は現在一個飛行隊基幹という航空自衛隊唯一の一個飛行隊基幹航空団であり、併せて航空自衛隊最後のF-4のみの戦闘機を以て編成される航空団です。

Nimg_7841 滑走路にて離陸直前のF-4。F-4は、岐阜基地の機体を何度も撮影するのですが、岐阜のF-4は飛行開発実験団、実戦部隊のF-4は新田原か百里に行かなければ見れませんので、この303所属F-4を、こうした角度から撮影するのが、この新田原基地航空祭展開の一つの目的でした。

Nimg_7862 J-79エンジン二基に点火し、轟音を響かせながら離陸するF-4,航空自衛隊は1971年にF-4EJの導入を開始しましたので、2011年でF-4導入開始40年、後継機がいよいよ決まる、という時ではありましたが、素晴らしい戦闘機でいつまでも見たい、と考える反面、F-16EでもF/A-18Eでもいいので、さっさと数を揃えることが急務では、というのが当時の考え。

Nimg_7873 第23飛行隊のF-15,第23飛行隊は航空自衛隊最初のF-15飛行隊として発足した第202飛行隊を教育航空部隊へ改編したものです。第202飛行隊も新田原にいましたので、もともと第五航空団は二個飛行隊基幹の編成でした。この第23飛行隊は戦闘機操縦訓練、練習機によりパイロットとなった搭乗員に戦闘機操縦要員としての能力を叩き込む部隊です。

Nimg_7880 第23飛行隊の創設は2000年10月、しかし、元となった第202飛行隊は1964年にF-104戦闘機の飛行隊として誕生しています。映画東京湾炎上では鹿児島県の国家石油備蓄基地へ向かう戦闘機部隊として出ています。第5航空団は松竹の宇宙大怪獣ギララにもF-104が出ていますが、まあそれは別の話ですね。

Nimg_7893 第202飛行隊は1981年に航空自衛隊の戦闘機部隊として最初のF-15配備を受け、ここでF-15要員を養成し、順次各部隊に派遣するマザースコードロンとしての責務を果たしました。そう考えると第202飛行隊と第23飛行隊は記事と要員以上に共通点があるのかもしれません、が、部隊マークは埴輪から都井岬野生馬に替わっている。

Nimg_7900 飛行教導隊、日本のトップガンと呼ばれる最強の戦闘機部隊です。この部隊の任務は、全国の最強搭乗員を集結させ、併せて訓練支援として全国を巡回し敵役を果たすというアグレッサー部隊となっていまして、年間飛行時間は650時間、アグレッサー部隊として独特の迷彩を施し、機体にはコブラが描かれています。

Nimg_7913 トップガンという部隊なのですが、飛行教導隊と第23飛行隊という教育訓練と教育支援を行う部隊が共にイーグルを装備する教育重視の部隊なのですけれども、併せて防空に当たる第一線部隊がかなり古いファントム、という編成も、新鮮というか不思議というか、何と言いますか、ね。

Nimg_7924
 飛行教導隊は1981年にT-2超音速練習機を装備機として築城基地に創設されましたが、訓練空域が恵まれた新田原基地へ1983年に移駐し、1990年からF-15へ機種転換しました。さて、大編隊飛行へ、機体が続々と滑走路を離陸し大空へ展開してゆきました。新田原基地航空祭2011、いよいよ開始です。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度十二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.12.01・02)

2012-11-29 23:04:45 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今月一杯で原子力空母エンタープライズが除籍されます。そして気は早いですが、来月となる今週末の自衛隊行事紹介を行てみましょう。

Gimg_7807 今週末最大の自衛隊関連行事は、今年最後の航空祭となる新田原基地航空祭です。新田原基地は南九州宮崎県の小高い丘に位置する航空基地で、F-4戦闘機を運用し南九州及び南西諸島北部の防空を担う第5航空団、航空総隊直轄の自衛隊におけるトップガンと呼ばれるアグレッサー部隊である飛行教導隊、戦闘機種転換を担い搭乗員を戦闘要員に育てる航空教育集団直轄飛行教育航空隊が展開している。

Gimg_8190_1 新田原基地航空祭ですが、日向新富駅から、もしくは宮崎市内や高鍋駅を発着するシャトルバスにより移動するか、基地周辺の駐車場を利用することとなります。基地内の駐車場は事前応募制となっていますので、駐車券を持っていないかたは利用できないのですが、基地から数Km圏内にかなりの駐車場が用意されることとなっています。ただ、駐車場は九州全域を含めかなりの車両が航空祭へ訪れますので、宮崎市内からのシャトルバスも便利やもしれません。

Gimg_4314_1 九州は新田原基地航空祭の前日と当日、鹿児島県志布志市において掃海艇いずしま一般公開が行われます。志布志港若林旅客船埠頭において行われ、体験航海はなく一般公開のみとなっていますので時間内であればだれでも自由に見学が可能、掃海艇いずしま、は、すがしま型掃海艇の一隻です。

Gimg_0151 本州ですが、海上自衛隊HPには掲載が無かったのですが静岡地本HPを見てみたところ、海上自衛隊艦艇一般公開として護衛艦さわゆき、が一般公開されます。写真は夏に行われた清水港祭りの様子ですが、さわゆき一般公開は富士市にある田子の浦港中央2号岸壁にて行われるとのこと、こちらは2日日曜日のみの一般公開ですので、ご注意ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報⑪ 訓練展示状況開始!

2012-11-28 23:23:54 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆偵察部隊!情報収集を開始せよ!

 今回からいよいよ真駒内駐屯地祭は訓練展示模擬戦へ展開します。当方も撮影位置を変更しました。

Mimg_0079 状況開始!、陸上自衛隊が誇るOH-1観測ヘリコプターが真駒内駐屯地上空へ進出します。帯広駐屯地の第一対戦車ヘリコプター隊に所属する機体で、この機体は極限まで切り詰めた刀身のような機体は統合光学監視装置により最高度の偵察能力を有し、偵察観測任務中に敵航空機と遭遇した場合は搭載する空対空ミサイルによりこれを排除し強行偵察も可能という凄いもの。

Mimg_0055 OH-1は川崎重工が開発した純国産の観測ヘリコプターで、搭載する三菱重工製TS-1エンジン二基は自重2.5tの機体に1768hpという高い出力を与え、俊敏な機体形状から分かるとおり、非常に高度な運動性能を有しています。このほか、機体各部は複合素材が多用され、強度を維持しつつ着発信管などの脅威からの生存性を考慮したものです。

Mimg_0050 OH-1は、新しく戦闘ヘリコプターとして配備されたAH-64Dとの協同が期待されたのですが、生産数の縮小によりデータリンク能力等の改修が遅れています。ただ、AH-64Dはロングボウレーダーにより索敵能力と情報共有能力が大きいので、それよりは何とか数が配備され、師団を高射特科部隊に先んじて敵ヘリコプター部隊の駆逐に当たる任務も、理想としてあったのですが。それにしてもこの運動性は凄い。

Mimg_2182 仮設敵です。陣地進入するべく重機関銃を振り回しつつ、続々と展開する敵装甲車、仮設敵はOH-1観測ヘリコプターの情報収集により、装甲車両を有する有力な部隊であるという事が判明しました、相手が装甲車両を複数保有するとは厄介です。仮設敵は第11特科隊の運用する73式装甲車がその任に当たっているもよう。

Mimg_2190 我が部隊指揮官は、より詳細な情報を得るべく情報収集と攪乱へ空中機動部隊の投入を決断しました、各部隊はレンジャー資格を有する隊員を養成しており、こうした状況で活躍するのがレンジャー隊員です。ローター音の方向を望見し見えたのは稜線を縫うように低空を接近するのは丘珠駐屯地より展開した第11飛行隊のUH-1J多用途ヘリコプター二機、近づいてくる。

Mimg_0083 UH-1J多用途ヘリコプターはベル社が1950年代に開発した原型HU-1を富士重工がライセンス生産しているもので、やや小ぶりなHU-1Bよりライセンス生産を開始、機体を大型化しエンジンを強化したUH-1Hへの転換を経て、日本独自型としてAH-1S対戦車ヘリコプターと同型のエンジンを搭載し、限定的な全天候飛行能力を付与した機体が、このUH-1Jです。

Mimg_0092 大きく旋回し、いざ降着地点へ。11名の人員を輸送可能なUH-1Jは、空中機動に加え偵察オートバイの空輸や負傷者の搬送、弾薬などの物資輸送から重機関銃を搭載しての火力支援任務等にも対応します。写真は89式小銃を携行した隊員がいましも降着しようとしているところ。

Mimg_0059 上空を警戒するOH-1、万一この瞬間に敵攻撃ヘリコプターが襲撃してきた場合でも空対空ミサイルで排除できます。観測から上空掩護まで大活躍のOH-1は、当初計画では250機が全方面航空隊と全師団飛行隊に配備される計画でした。これが実現すれば、陸上自衛隊航空は大きく躍進することが約束されていたのですが、冷戦終結とともに配備数は大きく下方修正、1997年から量産開始となりましたが、現在までの生産数は34機と僅か。

Mimg_0093 UH-1JはOH-1の支援下にそのまま観閲台正面へ、ヘリボーンといえばヴェトナム戦争時代は大編隊を組んでの大隊規模空輸が行われましたが、ヴェトナム戦争は40年前の戦争、前線へ今日大編隊を組んで飛行すれば優秀な防空火器、携帯地対空ミサイルなどで大損害を被りかねません。

Mimg_0098 現代の空中機動は、大部隊を展開させる場合敵後方地域か敵前方の要所へ実施しなければなりませんが、情報収集や攪乱、着弾観測要員を少数前方展開させる、という意味でこのような空中機動は小規模であっても有用です。UH-1Jより着陸する刹那ももどかしく、勇躍展開する降下要員、背景には“祝 第11旅団創隊3周年”の文字が。

Mimg_0102 降着要員を展開させ、迅速に離脱するUH-1J,このUH-1Jは航空科隊員に絶大の信頼を以て運用されています、その理由は陸上自衛隊がHU-1Bを導入したのが1962年、即ち半世紀前まで遡るのですが、パイロットが胸を張って語るのはUH-1について機体由来の事故が皆無、ということ。即ち確実に操縦すれば絶対に落ちないという半世紀にわたる信頼の積み重ね。

Mimg_0111 降着した隊員は89式小銃を四方に構え警戒に当たります。89式小銃は、我が国の豊和工業が64式小銃により得た技術基盤を元にアーマライト社製AR-18をライセンス生産、西側のカラシニコフと呼ばれる頑強で信頼性の高いAR-18に技術的着眼点を加え開発した頑丈な小銃です。降着した彼らの重要な任務は、続いて展開するヘリボーン空中機動部隊の降着区域の周辺を警戒し、後続部隊の降着を掩護することにあります。

Mimg_0113 二機目のUH-1Jからラぺリング降下により更なる部隊の降着展開が開始されました。HU-1Bが90機、UH-1Hが133機、UH-1Jが130機生産され、日々進化しています。同じくUH-1シリーズを運用する米海兵隊では、より進んだUH-1Yを開発しましたが、我が国では川崎重工が後継機を開発する方針で進められています。ただ、入札問題などで前途多難ではあるようですが。

Mimg_0125 続々と降着する様子、改めて思ったのは、この撮影位置へ陣地転換して正解だった、という事。前回までの位置は観閲行進を撮影するには最高の位置だったのですけれども、訓練展示を撮影する場合は真後ろから拝む形になってしまう、もっとも攻撃側の視点から見れる、という考えもあるやもしれませんが。

Mimg_0129 即座に戦闘加入します。89式小銃のみの身軽な装備、実際には戦闘防弾チョッキなどを着用して、展開することとなります。戦闘防弾チョッキは砲弾片防御のものから小銃弾防御のものへ、そして暗視装置など装備品はどんどん大きく重くなるのですが、隊員の肉体と体力は飛躍的な進展はなく、この点、どう戦闘能力を維持するかは人間工学的な、技術的な進展を待ちたいもの。

Mimg_0143 第11偵察隊の偵察オートバイが空中機動部隊の降着要員からの情報を受け、更に詳細情報を求め前進する様子、偵察オートバイはXLR-250,偵察任務へオートバイを運用する国はあまり多くありませんが、連絡任務等では運用される事例も多い模様、自衛隊では特に斥候に重点を置き、オートバイの運用を続けておりこれからも続くこととなるでしょう。

Mimg_0153 自衛隊では、敵の有無を確認することを斥候、実際に戦闘を交え、その反応を見ることで敵勢力の能力を図ることを偵察、としています。偵察オートバイの隊員は写真にあるように胸元に89式小銃を携行しており、必要ならば車上から射撃することも可能で、脅威と遭遇すれば、その機動力を活かし、一挙に後方へ引く。

Mimg_0158 87式偵察警戒車、小松製作所が国産した装輪装甲車で、25mm機関砲と照準用の微光増倍式暗視装置を搭載する装甲車です。偵察オートバイや機銃を搭載したジープから始まった偵察隊ですが、これでは戦闘を交えての偵察は難しい、このため開発されたのは、この装甲車で、加えて地上監視レーダ装置などの装備が出来るほか、降車する斥候員も乗車しています。

Mimg_0155 87式偵察警戒車が支援しつつ、偵察オートバイの前進、偵察隊の象徴的な一枚が撮れました。偵察隊は、指揮通信車、偵察警戒車、小型トラック、偵察オートバイ、地上レーダ装置などをもって情報収集にあたります。軽快な装備を有する印象ですが、職種は機甲科ですので、装備開発や戦術研究などは富士学校が行っています。

Mimg_0160 偵察に当たる装甲車として、今日的には微光暗視装置だけでは監視機材として能力不足を感じるのですが、陸上自衛隊には携行可能な暗視装置として三脚上で運用するJGVS-V7が配備されていますので、斥候員が車内にJGVS-V7を携行して、降車運用、という方式は、あり得るのかもしれません。

Mimg_0137 偵察隊の前進と共に、空中機動により降着した部隊はそのまま後方攪乱任務へ向かいます。少数の部隊であっても、前方観測員など特科部隊の着弾修正などを行う要員が展開しますと、携行できる装備は限られますが、情報こそが最大の武器となり、相手に大きな打撃を与えることができる。

Mimg_0171 偵察オートバイは、偵察警戒車と共に前進し、車体を防盾として警戒に当たります。ただ、オートバイでは携行できる監視機材が双眼鏡程度、進んでも小型の暗視装置程度ですので、将来的に情報収集がどのように展開するのか、現状では人間の五感に頼るものですので、この点どう進むのか、興味は尽きません。

Img_2200 25mm機関砲を以て前方を監視する87式偵察警戒車、自衛隊の偵察部隊能力を大きく進めたこの装備ですが、元来偵察は軽戦車の任務でした。機甲師団である第7師団の第7偵察隊は現状で74式戦車を運用しているのですが、一方近年では機動性の高い装甲車によりいち早く進出し偵察を行う、という運用へ展開している方式も各国で構築されており、どの方式が良いのかは一概には言えないのですが。

Mimg_2187 偵察部隊は前方に敵装甲車を発見しました。これが敵戦車ですと、かなり危険な状況となります。このため、更に最新の各国陸軍装備体系を見ますと高度な監視機材を装甲車に搭載し、監視という手段での情報収集を行う、ドイツのフェネクやスイスのイーグル、という装甲車などもあります。陸上自衛隊では40mm程度の大口径機関砲と高度なセンサーを搭載した折衷案、近接戦闘車偵察型を開発中のもよう。

Mimg_2201 87式偵察警戒車が25mm機関砲を仮設敵の73式装甲車に向け、対装甲戦闘を開始します。米軍などでは、M-1A2戦車を始め各車両がFBCB2データリンクシステムで結ばれ、全部隊情報収集&総部隊情報共有が行われています。陸上自衛隊では偵察隊を緊急展開部隊として位置づけ、威力偵察に当たる部隊には情報共有能力と共同交戦能力に優れた10式戦車を充当するために、戦車大隊の地位を再度強化の方向へ転換する、という事も選択肢としてあるべきでしょう。

Mimg_0169 偵察警戒車の支援下で後方へ一時撤退するオートバイ、仮設敵の規模が判明しました、次は火力戦闘部隊の任務、偵察隊の接敵とともに訓練展示模擬戦は火力戦闘部隊と機甲部隊の展開へと進みます。第11旅団は冷戦時代に北海道にて札幌防衛の重責を以てソ連軍と対峙した重装備の第11師団が旅団へ改編された旅団、師団から旅団へコンパクト化されましたが、その能力は高く、北海道南部の防衛警備に当たると共に有事の際には全国展開を期する部隊、その火力戦闘部隊の訓練展示は次回、お楽しみに。

北大路機関:はるな

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日米共同統合実動演習キーンソード2012完了 演習内容の一部が報道

2012-11-27 23:57:12 | 防衛・安全保障

◆異例の報道非公開下での大規模演習

 11月16日に終了したキーンソード2012演習の詳細が朝雲新聞より報じられていましたので本日はこの話題を。

Gimg_1585 今回のキーンソード2012演習は、報道公開があまり行われない近年では異例と言える対応で行われていましたが、その実施規模は昨年度と同程度、昨年度のキーンソード2011演習が過去最大規模ということでしたので、併せて過去最大規模と言える規模の日米共同統合実動演習となりました。

Img_84451 自衛隊からの参加規模は3万7400名、米軍からは1万名が参加した規模となり、主たる演練項目は、陸海空における作戦、基地警備訓練、統合共同輸送、捜索救助活動訓練が実施されると演習開始当初に報道公開されましたが、このうちいくつか詳細が報じられたのが今回です。

Img_90_00 岩崎統幕長は6日に原子力空母ジョージワシントンを視察、岩崎統幕長はF-15戦闘機パイロットを経て空幕長から統幕長に着任された方ですが、このジョージワシントン視察には航空総隊司令官の斉藤治和空将と第1護衛隊群司令の酒井良海将補が随行、艦上において米海軍第70任務部隊JRハーレイ司令官と会談を行った、とのこと。

Gimg_2360 9日には米軍の横浜ノースドックにおいて第27普通科連隊の日米共同輸送訓練が行われました。横浜ノースドックは新港埠頭の対岸に見える米軍の補給拠点で、第27普通科連隊は眞部和徳1佐指揮下で帯広の第5旅団に所属し、釧路駐屯地に駐屯する普通科連隊です。

Kuramaimg_3350 この前日である8日には佐世保基地において武力攻撃事態を想定した共同基地警備訓練が実施されています、なお、この訓練は昨年その開始式が報道公開され、集約チョッキを着用した佐世保警備隊の隊員が整列している様子がありましたね。この基地警備訓練には佐世保地方隊の佐世保基地隊と米軍基地司令部の警備部隊が参加し、行われました。

Img_0356 今回の訓練では沖縄県太平洋側の離島を訓練地とし、実際に奪取されたことを想定しての部隊揚陸と奪還までの一連の実動訓練を行う計画がありましたが、近隣諸国に無用の刺激を与えることを避けたいという政治的理由、一部には内閣府の一部には国務省からの、と報じられた事由により中止されています。

Img_0198 昨年のキーンソード2011演習では離島奪還訓練に際し、九州の日出生台演習場を離島に見立て、陸上部隊の長距離機動訓練などを演練しました。本来であれば、これら過去の訓練を元にした実績に依拠し、離島への実動訓練を行うべきなのですが、前述の事由があります。ただ、来年には硫黄島あたりに移し実動演習が行われる可能性は残る。

Timg_7675 本演習が終了したのとほぼ同時期に、中国海軍が空母からの固定翼艦載機試験発着に成功した内容が報じられ、ソ連海軍ミンスク極東配備以来の空母脅威が生じたこととなり、来年度からは海上自衛隊においてもこれまで米海軍との間で演練した対航空母艦対処の実動訓練などの成果が反映される訓練体系となるのでしょうか。

Jimg_9422 さて、以上の通り演習は完了したのですが、前述の通り報道公開はほとんど行われませんでした。この点についてですが、我が国の防衛態勢は万全であることを積極的に公開し、軍事演習には国民が過度な外圧への影響と反発を抑止し冷静な判断を主権者として行使できるよう行う機能はあるべきと考えます。

Img_0435 これは、例えば周辺国の我が国領土への軍事的野心を表面化させる行動のみが報じられている昨今、わが国民は我が国が劣勢にある、と誤認しがちである状況が成立しているわけです。何故ならば、我が国は憲法九条との関係から軍事力による抑止力を表だって教育や政治の場で誇示していませんでしたから。

Mimg_1330 この点で、少し考えれば東西冷戦構造下において我が国が太平洋正面における自由主義圏の防壁として役割を果たした背景で、一定の防衛力と抑止力があったことは理解でき、現在の周辺国と当時のソ連との脅威度が軍事的にどちらが高いかは考えられるものなのですが、具体的に我が国の防衛力はどの水準にあり、どういった問題があるかは広く周知し普及されているとか言いきれません。

Img_2358 我が国の防衛力が充分脅威に対応できるという範囲内で、なお問題がある、という視点ではなく、周辺国に対し劣勢である、という認識の下で主権者が判断を行うとすれば、結果として過度に攻撃的な政策を支持する事とも成り得るため、防衛力と演習はもっと積極的に公開され、国民が防衛力を理解し、討議し十分な水準とするための資材とするべきだと考えるのですが、どうでしょうか。

北大路機関:はるな

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姫路駐屯地創設61周年記念行事(2012.11.25) PowerShotG-12撮影速報

2012-11-26 23:43:41 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆第3特科隊・第3高射特科大隊の観閲行進

 日曜日の姫路駐屯地祭、この観閲行進の模様をG-12で撮影した写真から紹介しましょう。

Himg_9546 姫路駐屯地の観閲行進は徒歩行進を行わず、全て車両行進により展開されます。これは、特科部隊が基本的に車両により機動展開を行うためで、併せて特科部隊は目標を直接視認せず戦闘を展開する間接照準射撃を行うため、各種装備は高度に情報化され、連携しているのも特色です。

Himg_9545 観閲行進の先頭は第3特科隊副隊長の行進、後方には観閲行進への待機車両が並んでいます。副隊長は今回の姫路駐屯地祭観閲部隊指揮官を兼任しています。第3特科隊は師団特科連隊をコンパクト化したもので、2006年の第3師団改編に伴う第3特科連隊の改編により誕生しました。

Himg_9557 第3特科隊本部及び本部管理中隊の観閲行進、82式指揮通信車です。もともと82式指揮通信車は特科大隊の情報通信用に開発され、現在は普通科連隊本部や偵察隊などに232両が生産されました。今日的には通信能力は各種通信機六基を搭載しますが、画像データ通信能力を欠くため、近く新型車両への行進が求められるところ。

Himg_9564 本部管理中隊の観閲行進。本部管理中隊は特科隊が任務遂行を行う上で必要な様々な支援、例えば通信支援をおこなう通信小隊、指揮所設置や独立した最小限の任務を行う作業支援を行う施設小隊といった様々な機能を有する小隊から編成されています。

Himg_9568 情報中隊の観閲行進、写真はJTPS-P16対砲レーダ装置、現代の砲兵戦は相手の火砲を直接破壊せねばなりません。この為にレーダ装置で砲弾の弾道を測定し発射位置を評定、砲弾を叩き込み、火砲そのものを無力せねばならず、JTPS-P16は50°の幅で40km以内を飛翔する砲弾など同時に18発を追尾し、発射位置を評定します。情報中隊には対迫レーダ装置とこの対砲レーダ装置が各一基装備され、この装備密度はかなり高いといえる。

Himg_9571 第1中隊のFH-70榴弾砲、第3特科隊は、本部管理中隊、情報中隊、四個特科中隊という編成です。特科連隊時代は直接支援にあたる特科大隊三個と全般支援にあたる第五大隊という45門のFH-70榴弾砲を装備していました。見ての通り特科大隊を基本単位とした編成なのですが、特科隊への改編で特科中隊が基本単位となったことがわかります。

Himg_9578 第2中隊のFH-70榴弾砲、観閲行進へは各中隊から2門が参加しています。特科連隊時代は1300名の定員があったのですが特科隊になり人員は500名程度に縮減されたとのことです。これにともない火砲数も20門に縮減された、ということですが縮小ではなくコンパクト化、とのこと。ちなみに観閲台後方が火砲置き場となっており、後ろには12門ならんでいました。

Himg_9587 第3中隊のFH-70榴弾砲。FH-70榴弾砲は半自動装填装置により高い発射速度を持ち、短距離自走能力をもつ優秀な牽引砲として欧州共同開発され、第二次大戦時の火砲近代化型を置き換えることが期待されたのですが、高性能化を目指し過ぎ自走榴弾砲並みのコストを要するようになったため普及しませんでした。しかし、大柄な自走榴弾砲では機動力を発揮できない日本の地形に合うことが注目され、479門もの多数が陸上自衛隊に配備されました。

Himg_9601 第4中隊のFH-70榴弾砲。最大射程30kmを発揮するFH-70榴弾砲は対砲レーダ装置と野戦特科情報処理システムとの連携により、少数であっても分散し的確に目標に砲弾を投射することが可能で、いわゆる情報RMAと呼ばれた陸軍デジタル化も、砲兵部隊のデータリンクを全陸軍規模に普及させたもの、と理解することもできます。新しく火力戦闘指揮統制システムFCCSも開発され、無駄な火力を効率化することがコンパクト化の主眼です。

Himg_9604 第3高射特科大隊の観閲行進。第3高射特科大隊は大隊本部と本部管理中隊に加え、近接防空を担う第一中隊と拠点防空を担う第二中隊より編成されています。元々は第3特科連隊の第6中隊という位置づけでしたが1992年の師団改編で高射特科大隊として独立しました。今年は第3高射特科大隊創設20周年という記念すべき年です。

Himg_9615 情報小隊の低空警戒にあたる対空レーダ装置JTPS-P9と対空レーダ装置JTPS-P14.二基のレーダ装置は最大100kmの目標を警戒、得た情報は師団対空戦闘情報システムDADSにより処理され、戦闘を展開します。なお、P-9はJTPS-P-18に更新される計画でしたが、情報漏洩事故防止への業務用パソコン一斉調達により取得費用が削られ、制式化から30年以上を経た今日でもなかなか更新することが出来ません。

Himg_9624 第1中隊の93式近距離地対空誘導弾、射程5kmの91式携帯地対空誘導弾8発を、複合光学センサーにより照準し射撃するもので、情報小隊のレーダー情報をDADSにより共有し、脅威度の高い目標を優先して迎撃します。中隊には12両が装備され、各小隊4両が普通科連隊戦闘団への近接防空支援にあたる。分かりにくいですが、レーダーと情報処理システムとミサイルの関係は、護衛艦のレーダーと射撃指揮装置とミサイルを分散しているようなもの、というとわかりやすいでしょうか。

Himg_9630 第2中隊の81式短距離地対空誘導弾、これは東芝が苦心の末開発した国産初のミサイルシステムで、索敵追尾距離50kmというレーダを搭載した射撃統制装置一両と四連装発射装置二両によりシステムを構成し、多目標同時対処が可能、8km以内、改良型であるC型は15kmの射程を持つとのことですが、目標を迎撃します。中隊には4セットが配置され、師団補給拠点や火力戦闘部隊等の拠点防空にあたります。

Himg_9639 第3後方支援連隊の観閲行進、連隊本部は千僧駐屯地に置かれていますが、第二整備大隊特科直接支援隊と高射直接支援隊が姫路駐屯地に駐屯しています。これは各種装備の高度化に際し、稼働率を維持するには部隊駐屯地に駐屯し部隊を直接整備支援することが必要だ、という判断に基づくもの。

Himg_9648 観閲行進の最後を飾るのは新隊員で、配属されたばかりの新鋭、と解説されていました。前期教育を修了し、部隊での専門教育を受ける後期教育中の隊員たちです。こののち、姫路駐屯地祭は、訓練展示模擬戦へと展開しました。G-12のEOS-7Dと協同した活躍はここまで、こののちはEOS-7Dの出番です。

北大路機関:はるな

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第3特科隊・第3高射特科大隊 姫路駐屯地創設61周年記念行事(2012.11.25)

2012-11-25 22:29:25 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■姫路駐屯地祭へ行ってきました

 本日姫路駐屯地祭へ行ってまいりました。写真は未整理ですが取り急ぎご報告までに。

Img_9531_2 姫路駐屯地は第3師団の火力戦闘部隊である第3特科隊と師団対空戦闘を一手に担う第3高射特科大隊が駐屯している駐屯地で、伊丹駐屯地の第36普通科連隊とともに兵庫県の防衛警備及び災害派遣にあたる部隊で、高台にある駐屯地からは世界遺産姫路城を眺めることができます。

Himg_9539 整列した隊員を前に部隊巡閲を行う第3特科隊長兼ねて姫路駐屯地司令の天本博文1佐。駐屯地は姫路駐屯地という事で姫路駅から最寄りか、と思いきや播但線に乗り換えなければなりませんが、此処の本数が少なくて少々難渋します。前回は諸般の理由で巡閲に間に合いませんでしたが、今年は、車両展開に同乗させてもらい、余裕を以て間に合いました。

Himg_9598 FH-70の行進、本日の姫路駐屯地祭は記念式典として訓示と巡閲に続き人員250名と車両50両による観閲行進、火砲を主力とした訓練展示とレンジャー展示が行われました。50両、というと実感がわかない方がいるやもしれませんが、一枚目の写真にある車列がその半分程度で、観閲行進で行進をすると、中々すごい。

Img_9654 訓練展示の主役はFH-70榴弾砲で、偵察隊と情報小隊の支援で状況を把握すると展開した高射特科部隊の支援下で次々と空包射撃を行ってゆきました。ただ、撮影位置は今年、前回足を運んだ二年前よりも来場者が多く人口密度も過密で、確保に難渋しました。写真は、状況終了直後の模様だったりする。

Himg_9730 駐屯地は理想的な快晴に映える紅葉と迫力の発砲焔に沸き上がり、会場は多くの来場者で賑わっていました。レンジャー展示は毎年工夫と研究を積み重ねて、子供たちにもわかりやすく見応えのあるものでした。ところで、この89式小銃、なんとなく親近感湧いてきませんか?、被筒のあたりをみますと、ね。そんなこんなで撮影を完了し、撤収しました次第です。

北大路機関:はるな

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米軍日本国内不祥事報道への一考察 営外居住者という現状の無視に疑問

2012-11-24 13:26:21 | 防衛・安全保障

◆帰宅できない?外出禁止と営外居住者

 先日来、国内の報道で在日米軍兵士に夜間外出禁止令が出ている、という報道がなされています。しかし、これは米軍兵士が基地の外に居住している、という現状を踏まえていません。

Img_1802 10月19日より、在沖米軍兵士二名が沖縄県での集団婦女暴行事件に関与したとして2300時から翌0500時までの時間帯に夜間外出禁止を通達し、那覇市内などではこの徹底を期して米兵による巡察も行われています。ただ、飲酒し酩酊状態の米軍兵士が他人宅に上がり込む、昨日は横浜市内にてネットカフェ内を全裸で歩くなどの報道がありました。

Gimg_8737 ここで、夜で歩くとはケシカラン、という報道や識者のコメントなどが出されているのですが、在日米軍兵士には営外居住者がいる、という実情をかなり無視しています。即ち、2300~0500の時間帯に外出禁止となっている状況を、基地の敷地より外に出てはならない、と解釈している方が多いのではないでしょうか。

Img_0697f 当たり前のことですが、在日米軍として日本に駐留する方の中には結婚や家族を呼び寄せるなど、基地の敷地外に住居を持つ方がいます。自衛隊でも妻帯者という場合や幹部や陸曹など条件を満たせば営外居住として駐屯地や基地ではなく自宅から通勤する事例があり、官舎が駐屯地や基地の敷地外にある事例も多いわけで、例えば第1師団の練馬駐屯地などは、師団司令部と道路の向かいにありますね。

Gimg_2674 営外居住、これは日米地位協定により旅券やビザを介さず在日米軍兵士は日本国内とアメリカの管轄権が及ぶ米軍基地とを行き来するためで、外出禁止を基地から外に出ること、という解釈で徹底してしまうと、営外居住者は帰宅できなくなる、という別の問題を作り出してしまうわけです。

Img_7092 もう一つ、米軍住宅と呼ばれる基地敷地外の米軍兵士向け住居と基地との移動です。在沖米軍などではかなり広範に建設され、神奈川県、東京都、青森県、長崎県などにあります。此処との行き来もありますので、外出禁止が求めた綱紀粛正を外部の方が勝手に拡大解釈しないように理解する必要があります。

Img_0482 ただ、不祥事はあってはならない、という点は読み違えてはなりません。酔った勢いで他人の家屋に押し入る、というのは、まあ、当方の部屋の入り口を帰ったぞー、と叩く見知らぬ来訪者という経験はあるのですが、押し入れば住居不法侵入です。招いた招かないの言い分はありますが、この上の暴行事件などはあってはなりません。

Iimg_1655 他方、一つ分からないのは外出禁止という在日米軍の指針は、外泊をどう扱ているのでしょうか。実は昨日の横浜市内での漫画喫茶にて米兵が全裸で不祥事を起こした、という報道ですが、漫画喫茶は簡易宿泊施設という一面がありますので、全裸は公然わいせつにあたるものの夜間外出禁止の通達は反していないといえるでしょう。

Img_2850 実際、ヴェトナム戦争中には南ヴェトナムの首都サイゴンでは戒厳令か夜間外出禁止令が出されていました。しかし、営外居住やホテルへの宿泊は外出と見做されておらず、加えて深夜営業店への入店も、騒ぎなどを起こさない限り夜間外出禁止の対象とはならなかったため、外泊がどういう扱いとなっているのかはきになるところ。

Dimg_7209 ただ、米軍の綱紀粛正への取り組み姿勢は評価されるべきと思います。我が国では公務員不祥事も毎日のように報道されますが、警察庁の機動隊員がわいせつ目的誘拐で松戸署に検挙されたり愛知県警の警察官が自宅で偽札をつくったり、大阪府警では未成年者への準強姦と不祥事の連続に警察官の夜間外出禁止令を出したという話は聞きませんし、ほかの官庁についても同様です。これを考えたならば在日米軍ならではの苦しい取り組みの現状が見えるでしょう。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.11.24・25)

2012-11-23 23:52:53 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 最初に重要なお知らせ、コメント欄ですがこれまで全コメントへのお返事掲載を念頭に対応してまいりましたが、このためコメントの公開が遅れるという本末転倒な状態となっていました。そこで、Weblog北大路機関は今回からコメントは即時公開へと変更させていただきました。ご了承ください。

Gimg_37560 さて、紅葉が深まり特別夜間拝観などが行われる今日この頃ですが如何お過ごしでしょうか。今週末は自衛隊行事が幾つか行われますが、その数もいよいよ少なくなってきています。今週末行われるのは芦屋基地航空祭2012、姫路駐屯地祭、別府駐屯地祭です。芦屋基地航空祭は明日行われます、土曜日に行われますので芦屋基地航空祭へ足を運ばれる予定の方は日程にご注意ください。芦屋基地は第13飛行教育団の展開する基地で、T-4練習機を運用するほか、ブルーインパルスが現在展開中の基地です。

Gimg_5528 別府駐屯地創設55周年記念行事。別府駐屯地は第4師団隷下の第41普通科連隊が駐屯する駐屯地です。土曜日に行われる芦屋基地航空祭は芦屋と言っても阪急線沿線ではなく福岡県芦屋市、ここで土曜日に航空祭がおこなわれますので日曜日に別府駐屯地へ、というのもいいあもしれません。寒くなると無性に別府や湯布院、という単語が恋しくなるところですが、別府も湯布院も駐屯地があります。別府駐屯地は別府駅が最寄り、駐屯地祭の帰路に温泉というのもいいやもしれません。

Gimg_7384 姫路駐屯地創設61周年記念行事、兵庫県の姫路駐屯地には第3特科隊をはじめとした第3師団の火力戦闘部隊が駐屯しています。地図王では姫路は遠いという印象を与える立地ではありますが、山陽本線の姫路までは京阪神から多数の新快速が運行されており、実は非常に近いところです。姫路駐屯地祭はFH-70榴弾砲の展示に加え、レンジャー展示として式典がすべて完了した午後から他の駐屯地では見られない訓練展示が行われ、これも非常に見どころと言えるでしょう。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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地球上限界規模の地震はマグニチュード10.0前後(東北地方太平洋沖地震の32倍)

2012-11-22 23:04:56 | 防災・災害派遣

◆アラスカ沖から日本列島沖にかけてのプレート境界

 想定外、という単語を用いないために地球が起こし得る最大の地震の規模はどの程度か、この問いに一つの回答が出されました。

Eimg_60150 NHKの報道によれば東北大学の松澤暢教授が21日の専門家会合において、地球の大きさやプレート境界に蓄積しうる弾性限界などを元に地球上において発生しうる地震の最大規模のものを計算した一つの結果として、最大規模のものはマグニチュード10.0前後に達するとのこと。このマグニチュード10.0、これは東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の32倍前後という規模となり、歴史上最大の地震とされる1960年チリ沖地震のマグニチュード9.5をも上回る規模となるもよう。

Eimg_6025 マグニチュード10.0の巨大地震を地球上で引き起こし得るプレート境界は、北米アラスカ沖に端を発し、ユーラシア大陸カムチャツカ半島沖を経て日本列島沖に達する全長8800kmのプレートであり、このプレートが20mずれ動くことでマグニチュード10.0の巨大地震が発生するとのことです。揺れは20分から60分程度持続し、揺れが到達し収まる以前に地域によっては津波が到達することとなり、津波は環太平洋を反響し数日間に渡り大規模な津波が沿岸を押し流す、という被害が想定されるようです。

Eimg_2960 8800kmの断層が動くことで生じる巨大津波は、東京湾や大阪湾の湾口から侵入し東京と大阪に被害を与えると共に、地形が外洋に面している上海や香港などの大都市は歴史上かつてない被害を受ける事になり、ロスアンゼルスや湾奥に所在するサンフランシスコへも被害が及ぶほか、長周期振動は対策を施していない日本周辺国の超高層建築物を直撃することとなり、大きな被害が生じるほか、多数の島嶼がその全域を津波により浸水することとなることが予想されます。

Eimg_2867 ただし、松澤教授は、今回のマグニチュード10.0の想定について、過去日本酒編ではマグニチュード8までを想定すればよいと考えた上で9.0が生じたため、日本近海で起きる最大規模の地震への想定が甘かったのだという反省から、ごくわずかであっても可能性がある地震の脅威を最大規模で算出するという計算の結果、この数字が出た、としています。こうした観点から、予知に偏重するのではなく過去の地震被害を検証することで防災と減災の在り方について考える指針として最大規模の地震の想定はいかされるべきやもしれません。

Eimg_2902 喫緊の防災上の課題は南海トラフ地震であり、これが南海トラフ地震を契機として南海地震及び東海地震と同時期に連動する三連動型地震の発生が我が国防災政策最大の課題となっており、活断層の存在は僅かな可能性であっても大きなリスクと解釈され、今日に至ります。今回の10.0という想定は、被害を起こさないという無理な施策を試みるのではなく、リスクを管理することで被害を抑える、という観点からも考えられるべきでしょう。

北大路機関:はるな

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平成24年度日向灘機雷戦訓練・掃海特別訓練、艦艇26隻規模で開始

2012-11-21 23:05:09 | 防衛・安全保障

◆11月20日~11月30日に日向灘にて実施

 防衛省によれば昨日20日から30日までの予定で平成24年度日向灘機雷戦訓練と掃海特別訓練が開始されたとのことです。

Img_8543m_2 訓練統裁官は掃海隊群司令德丸伸一海将補で、今回の訓練へは掃海母艦1隻、掃海艦2隻、掃海艇21隻、掃海官制艇2隻、そして航空機2~3機が参加して行われ、上記海上自衛隊の艦艇と航空機に加え、米海軍からも水中処分員数名が参加し、実施されます。米海軍からは第五機動水中処分隊ギャレットパンコウ大尉が指揮官として参加するもよう。

Img_7364 訓練の主要項目は、訓練機雷を実際に日向灘に対し敷設する機雷敷設訓練、そして特定海域の何処かに敷設された訓練機雷を掃海艇の探知器材により捜索し処分するまでの一連の流れを演練する掃海訓練、そして水中処分員による潜水訓練を行うと共に日米の相互研修を行うと発表されていました。

Bimg_7132 機雷は係留式の触発信管を備えた最も従来から使用されているものに加え、磁気や音響に反応するもの、近年には海底に設置し潜水艦を狙うものや船舶の接近に反応し魚雷を投射するものなどがあり、従来の掃海器具を曳航する掃海だけでなく、機雷処分器具という無人潜水艇を用いた機雷掃討を行わねばならない時代となっています。

Img_6148_1 このように種類が多く、そして配置されるのが海中で確認が難しいため処分に手間がかかる機雷は、別名最も効率の良い兵器とも言われるのに加えて、敷設そのものは機雷敷設艦のほか、潜水艦や航空機から投射し敷設するものがありますし、効率は落ちますが通常の船舶であっても敷設することは不可能ではありません。

Gimg_6772 我が国は先の大戦においてB-29が投下した機雷により主要港湾のほぼすべてを封鎖され、日本海や瀬戸内海の通行さえも閉塞された苦い経験があり、戦後は日本側が敷設した防御機雷の浮流機雷も発生するなど、その海上交通を長期間に渡り脅かされた経験があり、海上自衛隊も任務を機雷掃海隊として創設された、という歴史があるほどです。

Gimg_6703 海上自衛隊は掃海艇を中心とした対機雷戦艦艇の規模において世界有数の規模を有しています。これは過去の歴史に加えて加えて、東西冷戦時代においては我が国の当面の脅威となったソ連が、その海軍戦略において機雷を重視する姿勢を示し、潜水艦からの機雷敷設はもとより水上戦闘艦い対しても機雷敷設能力を付与するなど、我が国としては機雷対処能力をかなり高い水準としておく必然性がありました。

Mimg_5991 今日としては、我が国を取り巻く脅威において機雷による重大な脅威は二つあります。一つは台湾海峡有事において中台が敷設する膨大な数の機雷の一部が浮流機雷となり我が国海上交通路を破壊する危険、そしてもう一つは中東地域において重要な海上交通路であるホルムズ海峡をイランが機雷で封鎖するという脅威です。

Bimg_7579 掃海特別訓練は低位的に実施されていますが、先ほど示したように、こうした脅威に備えると共に必要であれば専守防衛の観点から重要海域を機雷封鎖し潜水艦の侵入や着上陸を阻止するという観点から機雷に対し運用と対処の面で能力を高めておく必要性は大きいといえるでしょう。

北大路機関:はるな

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