北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

普天間飛行場移設問題 鳩山首相の五月末合意期限まで残り一ヶ月

2010-04-30 23:53:29 | 国際・政治

◆問われる政府与党の責任

 普天間飛行場移設問題の合意期限を鳩山総理は五月末までに、と発言しており、その起源は一ヶ月後に迫っている、という状況です。しかし、普天間問題は軟着陸できるのでしょうか、非常に不安です。

Img_8569  移設先の腹案をお持ちと言う事ですから、徳之島という距離的にも航空機運用上でも海兵隊が許容出来ず、徳之島の面積的にも合意するうえでは必要とされるであろう海兵隊地上戦闘部隊の収容が不可能な案が実は単なるフェイクであり、最近は聞かれなくなった勝連半島ホワイトビーチ沖に長大な滑走路三本を有する巨大埋め立て基地を建設して普天間飛行場と航空自衛隊那覇基地までもを収容する施設を建設する案というのは費用的にも建設期間的にも環境負荷的にも冗談だろう、というように考えているのですがどうなのでしょうか。このまま普天間飛行場を運用継続、という案が自民党時代では考えられなかったのですが現状の民主党政権下では最善となっているようにも思えるようになってきました。日米交渉というものの入口に普天間問題という障壁がありまして、もともとは全然大きくない解決済みの障壁だったのを掘り起こしてしまい、日米関係は普天間問題が解決できない限り何一つ具体的に進めないという状況に陥っています。対米交渉一つ出来ない日本を諸外国も外交交渉を展開するにはその評価を考え直す必要があり、外交が出来ない政府となりつつあります。

Img_9781  名護市辺野古沖が実現すれば最も理想的なのですけれども、名護市の自民党時代における日米合意の実現、埋め立て案が環境負荷の面では最も小さいのかも知れません。環境負荷を小さくすれば名護市辺野古沖でも住民の理解を得られるだろう、という期待から杭打方式で会場滑走路を建設する案を検討しているとのことですけれども、海流は変化しないものの日光は差し込まなくなりますので珊瑚礁への影響は結局出てしまいます。もっとも、予算を増加して滑走路に光ファイバーでも敷設して日光を海面下に照射できるというのならば話は別なのですが、杭打方式で沖合に出せば、その分海面に掛ける負荷は大きくなりますし、これで住民の理解を得られる、という考えは非現実的でしょう。まともな案が無いまま無計画にいろいろと進めていますので与党への不信感は大変なことになり、内閣支持率は20%に急落、総理は与党党首として支持率を回復させようにもこれといった目玉政策はもう無く、考えられるのは幹事長を更迭して党から除名処分にでもしないかぎり支持率回復の兆しは見えてきません。

Img_9053  この状況下にあって、沖縄の海兵隊によるポテンシャルが低下しつつある中で中国海軍は南西諸島近海での大規模な海軍演習を展開、これに脅威を感じたのか台湾政府は大規模な本土防衛演習と長距離弾道弾の開発を再開し、台湾海峡に火種が生まれつつあります。朝鮮半島では韓国哨戒艦沈没事案の背後に北朝鮮による魚雷攻撃説がいよいよ濃厚となり、他方北朝鮮は五月中にも日本海に向けて中距離弾道弾の発射試験を実施する構えを見せています。日米間の揺らぎはそのまま極東の軍事情勢に衝撃を与えており、言い換えれば在日米軍により日本周辺情勢は抑止力の均衡の中で発展を遂げる事が出来たという事を象徴的に示すこととなりました。沖縄の基地不要論を叫ぶ方々には在日米軍が沖縄に居なくとも自衛隊を抜本的に強化し沖縄の15旅団を師団に増強、航空団二個体制を確立させ、台湾を含め日本が責任を持って防衛する、という一言くらいは欲しいもの。

Img_8215  日米間の合意に至るのが五月末まで、という事なのですが、五月末までに具体的な交渉を経て、ということは非常に難しい、という印象です。腹案を出すにも住民との意見調整を行う時間は最早殆ど無く、ようやく来月四日に沖縄を訪問する鳩山総理ですが、土下座してでも現状の移設合意がある名護市か普天間飛行場がそのまま維持された場合での宜野湾市から合意を受けるのでなければ、日本案を集約してアメリカとの交渉のテーブルに着くことすらも不可能、という状況でしょう。現実的にこれが出来なければ総辞職するか、支持率が限りなく0に近い状態での政府、という形にならざるを得ないでしょう。あと一ヶ月、しかし、具体的な案は名護市の案を除けばあて馬ばかり、これを背景に日本の周辺情勢はどんどん緊迫度を増しています。こうしたなかで、文字通り与党としての責任を問われている、という状況になっている訳でどうにかならないのか、焦燥感を感じます。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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アクラ級攻撃型原潜北海道沖に出現、宗谷海峡を通過! 第2航空群P-3Cが確認

2010-04-29 23:14:00 | 防衛・安全保障

◆ロシア軍の我が国周辺における状況

 中国海軍の活動にばかり注目されがちですが、我が国周辺状況を俯瞰しますとロシア軍の動静も慎重に観てゆく必要があります。

Img_6732_1  統合幕僚監部は、軍用機に対する緊急発進や日本周辺での脅威となり得る艦船の動向を発表しています。ここには中国海軍艦艇や空軍機の動向とともにロシア海軍艦艇、軍用機の情報も発表しています。今月は15日、16日に航空機が我が国防空識別圏内に進入し、戦闘機を緊急発進させて対応、26日と27日に潜水艦を含む水上戦闘艦の行動が確認されたとのことです。この中にアクラ級攻撃型原潜の行動が発表されていました、アクラ級は海上自衛隊最大の潜水艦の二倍以上あり、中国海軍の漢級原潜とは静粛性や攻撃力等で比較にならないほどの性能を有しています。本日はこの話題。

Img_6043  26日、グリシャⅤ型フリゲイトが宗谷岬沖西南西210kmの日本海上を北東に向かい航行しているのを八戸航空基地を発進した第2航空群のP-3C哨戒機が発見しました。警戒を継続したところ、同艦は宗谷海峡を東航したことが確認されたと発表されました。このグリシャⅤ型とともに翌27日、ロシア海軍のアクラ級攻撃型原潜が北海道宗谷岬沖東北東170kmのオホーツク海を西へ向かい航行しているのを、第2航空群のP-3Cが再度確認したのです。グリシャⅤ型とアクラ級攻撃型原潜はその日のうちに宗谷海峡を西航したのが確認されています。

Img_6988  ロシア海軍の動向としては2月27日に対馬海峡を満載排水量8500㌧のウダロイ級駆逐艦が航行して以来の事ですが、今回確認されたアクラ級はロシアでも最新鋭の攻撃型原潜です。ロシア海軍の原子力潜水艦には全面核戦争において潜水艦発射弾道弾を運用する戦略ミサイル原潜、射程の長い巡航ミサイルを運用し、米海軍の航空母艦など戦略目標を攻撃する原子力ミサイル原潜、そして専ら敵の潜水艦を攻撃する事を第一任務とする攻撃型原潜に分けられるのですが、アクラ級は1990年から就役が始まっており、攻撃型原潜の中で最新型となっています。

Img_6048  アクラ級は最高速力は28ノット、アメリカ海軍のロスアンジェルス級攻撃型原潜後期型よりも水中では静かに航行できる静粛性を特色としています。水中排水量9100~9500㌧、650㍉魚雷発射管と533㍉魚雷発射管を計8門搭載、魚雷や対艦ミサイルなど40発を搭載しています。650㍉魚雷は空母攻撃用に開発された超大型魚雷で核弾頭か450kg弾頭を搭載、射程27浬、速力50ノットで目標を撃破します。AIP推進方式の、そうりゅう型が水中排水量4200㌧、原子力潜水艦は原子炉が稼働している限り無限の水中行動能力があり、酸素までも海水の電気分解で得られ、食糧さえ続けば数ヶ月間の行動が可能です。ロシア海軍の行動は極東海域でも低調ではありますが、大型艦を運用しており、中国海軍以外にも脅威があることを示しています。

Img_9149  航空機について、今月の動向を見てみましょう。15日、ロシア空軍のTu-95爆撃機二機が千島列島沿いに南下、襟裳岬沖で転進し東京に向かう経路で飛行、航空自衛隊から戦闘機が緊急発進して対処しました。Tu-95は房総半島沖で転進、小笠原諸島に沿って飛行し北硫黄島北方において転進、根室半島沖までを同じ経路で飛行したのち、大きく転進、択捉島国後島間を通過し、そのまま宗谷海峡上空を飛行、ロシア沿海州方面へ飛び去りました。いわゆる東京急行という経路で、千歳、三沢、百里の航空機が対処したのでしょう。

Img_8282  続いて16日、今度は沿海州側から日本海へIl-20哨戒機が飛行、防空識別圏内へ進入、航空自衛隊は緊急発進を行いました。若狭湾へ一直線で飛行したのち日本海の公海上で対馬へ向かう経路に転進、隠岐島と竹島の間を飛行し山口県沖で再度転進、隠岐島沖で今度は能登半島方面へ転進し日本海沿岸を飛行、秋田県沖で北海道方面へ転向し北海道沖を飛行、そのまま沿海州へ戻りました。双方ともに領空侵犯には至らず、最初の海軍艦艇動向も領海侵犯には至っていませんが、マスメディアは周辺の軍事情勢について報道するとしても中国軍か北朝鮮軍の動向ばかり、何も報じないよりはまともではあるのですが、北方にも脅威がある、という事への認識は忘れてはならないと言えるでしょう。(参考資料・・・統幕HP:http://www.mod.go.jp/jso/press2010.htm)

HARUNA

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平成二十二年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報5

2010-04-28 23:32:47 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 明日29日は祭日、首都圏と阪神地区でそれぞれ駐屯地祭が行われます。ようやく暖かくなってきた今日この頃、お時間のある方は足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

Img_9866_1  明日行われる行事の中で一番の注目は下志津駐屯地祭でしょう。下志津駐屯地祭、高射学校祭、つつじ祭、様々な名前で親しまれている行事で千葉県四街道市に所在する駐屯地です。高射学校は、その名の通り高射特科職種の装備研究や専門教育を行う陸上自衛隊の教育機関で隷下の高射教導隊に様々な装備を保有しています。

Img_9824  03式中距離地対空誘導弾:通称中SAMをはじめ、87式自走高射機関砲、改良ホーク2型/3型、81式短距離地対空誘導弾:通称短SAM,93式近距離地対空誘導弾:通称近SAM.それに低空レーダ装置などの装備が観閲行進や訓練展示で登場します。87式自走高射機関砲などは、第7高射特科連隊、第2高射特科大隊など配備が北海道に集中しているので首都圏で見るにはここだけ、という装備で、03式中SAMも新鋭、一部の駐屯地でしか見ることが出来ない射程60kmのミサイルです。

Img_9958  訓練展示では、四街道市でミサイルを発射するわけにはいかないので、射撃に代えて発煙筒等を用いた攻撃要領などの展示のみが行われます。駐屯地はJR四街道駅から徒歩で20分ほど、当時は成田エクスプレスや113系を撮りつつ歩いて行きましたものの、本年ではシャトルバスの運行が予定されているとのことです。

Img_0704  信太山駐屯地祭2010、こちらも見逃せません。大阪府唯一の普通科部隊駐屯地として知られる信太山駐屯地には第3師団隷下の第37普通科連隊が駐屯しており、この連隊は映画ガメラⅢにて奈良県内に出動し巨大生物に対し64式小銃、62式機銃、84㍉無反動砲で果敢に立ち向かった部隊として有名です。今日では装備は89式小銃、MINIMI,01式軽対戦車誘導弾へと近代化されているのですけれどもね。

Img_0536  続々と行進する高機動車、軽装甲機動車。信太山駐屯地は、駐屯地の地形が独特で、観閲行進では高台にあるモータープールから写真のように勾配を降りて観閲台正面を進む、という経路が採られています。スタンド席の設定はありませんが、土手の斜面のようになっていて、前の人を気にせず、行事の様子を見学することが出来ます。

Img_0664  訓練展示模擬戦の様子。2006年の撮影なので64式対戦車誘導弾が写っているのですが、この年は桜の開花時期と駐屯地祭が重なり美しい写真を撮ることが出来ました。駐屯地へは信太山駅から徒歩15分ほど、当方が行ったときは要所要所に案内の隊員さんが立っていました。また2006年はシャトルバスが運行されていたように記憶します。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 4月29日:高射学校祭・下志津駐屯地創設55周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/
  2. 4月29日:信太山駐屯地創設53周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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三沢基地・新田原基地でトラブル:航空自衛隊航空機不具合・在日米軍戦闘機緊急着陸

2010-04-27 23:28:51 | 防衛・安全保障

◆いずれも重大事故に発展せず負傷者なし

26日から27日にかけて、米空軍のF-16が青森空港へ緊急着陸、航空自衛隊のT-4練習機が新田原基地滑走路上でタイヤ脱落、三沢基地のF-2に脚部トラブルが発生するなどトラブルが相次ぎました。

Img_6609 東奥日報より引用・・・F2戦闘機が尻もち事故/空自三沢:27日午前9時45分ごろ、航空自衛隊三沢基地で点検中だったF2戦闘機の引き込み式主脚が突然折りたたまれ収納、機体が尻もちをつく事故があった。パイロットなどにけがはなかった。空自は操作ミスや故障の可能性を含め、事故原因を調べている。機体の詳しい損傷状況は「確認中」とし、明らかにしていない。県は27日、同基地に原因究明と再発防止を要請したhttp://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2010/20100427213951.asp

Img_8814  新聞記事を参照した限りでは、格納庫、三沢基地ですから航空機掩体の可能性もありますが、この内部で整備を行っていたところ、油圧系統に誤信号か誤操作、もしくは損傷があって脚部が折り畳まれた、という事故のようですね。機体が尻もち、とありますから胴体部分の脚部が折り畳まれたのでしょう。整備員や搭乗員が下がってくる機体に挟まれて、というような負傷者もいなかった、とのことですが、これが誤操作以外の原因となれば、F-2は原因が究明されるまで飛行停止となる可能性が、早急な原因の究明が望まれます。F-2は三沢基地の他、築城基地、松島基地、岐阜基地などで運用されています。

Img_8641 読売新聞より引用・・・米軍三沢基地F16、青森空港に2機緊急着陸:緊急着陸した米軍のF16戦闘機。滑走路の安全が確認され民間機は運航(26日、青森空港で)=三上津与美撮影 26日午後4時頃、青森市大谷の青森空港に米軍三沢基地所属のF16戦闘機2機が相次いで緊急着陸した。 けが人はなかったが、滑走路の安全確認のため、到着便に17分の遅れが出た。 青森空港管理事務所などによると、2機のうち1機のエンジントラブルが原因。僚機のもう1機も5分後に緊急着陸した。2機は飛行訓練を終え、同基地に帰還する途中だった。(2010年4月26日20時32分  読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100426-OYT1T01190.htm

Img_0054  在日米軍機でもトラブルです。こちらも三沢基地所属の機体で問題があったのはF-16戦闘機、エンジントラブルとありますが、米空軍では多少でも機体が異常を示す信号を搭乗員に伝えた場合確認よりも緊急着陸を優先させる運用を採っていますので、これがどの程度の事故か、という事は不明です。青森空港は三沢基地とは別の場所にある民間空港で、緊急着陸した機体がどの程度の時間を経て、三沢基地へ帰投したのかが、トラブルの度合いを測る方策といえるでしょう。しかし、残念ながら引用した記事にはそこまでの記載はありません、航空専門誌の掲載を待ちましょう。

Img_9601 宮崎日日新聞より引用・・・空自機タイヤ脱落、火花散らし着陸:新田原基地:2010年04月27日 26日午前11時20分ごろ、新富町の航空自衛隊新田原基地で、着陸した練習機の左タイヤが突然外れた。 練習機は火花を出して滑走路上で停止。搭乗していた同基地の自衛官2人にけがはなかった。 同基地によると、事故機は第5航空団のT4練習機で、着陸した直後、何らかの原因で左主脚のタイヤが脱落。練習機は滑走路上で停止したが、火が出たため隊員が消火活動を行った。http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/index.php?itemid=25600&catid=74

Img_8849  九州新田原基地ではT-4練習機がトラブルです。安全が確認されるまで航空自衛隊全てのT-4に飛行停止措置が採られているとのこと。岩国でのブルーインパルス飛行展示へは影響が出るのでしょうかね。着陸後にタイヤが外れた、ということですが、着陸中に外れていれば大事故に繋がるところでした。パンクとは表現されていないのですが、消防車が出動、とあるものの、報道写真などを見る限り脚部が折れたのではなく、やはり脱落、念のため放水、という措置が採られたようです。自衛隊では航空機運用時、滑走路付近に航空機火災用消防車を常駐させ不測の事態には即座に駆けつけ、消火することが出来る体制を整えています。以上の通り、事故が相次いだのですが幸い負傷者は無く重大事故へはつながりませんでした。それにしても航空機トラブル、というのは何故か一定の時期に一度起こると連鎖するのですよね、危険とともにあるだけに安全第一を願いたい次第です。

HARUNA

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統合幕僚監部、平成21年度対領空侵犯措置任務回数の概要を発表

2010-04-26 23:44:09 | 防衛・安全保障

◆2009年度は299回のスクランブル発進

 平成21年度の対領空侵犯措置の概要が統幕から発表されました。発表は15日でやや遅れたのですが詳細などの所感について本日掲載します。

Img_90491  対領空侵犯措置とは、日本の領空に接近する飛行計画を提示していない国籍不明機が、領空から一定の距離をおいて設定されている防空識別圏内に進入した際に、そのまま進めば我が国領空に侵入する可能性が出てくるため、これを防ぐために要撃機を発進させ、対処する任務です。したがって、対領空侵犯措置の回数がそのまま領空侵犯に発展したわけではありません。ちなみに領空侵犯まで発展した事例は1966年以来34回、最近の領空侵犯事案は平成20年2月9日の伊豆諸島へのロシア軍爆撃機による領空侵犯が挙げられます。

Img_3120  平成21年度の対領空侵犯措置として緊急発進を実施した回数は299回、20年度の237回よりも増加していますが19年度の307回よりは若干減少しています。東西冷戦がもっとも加熱していた1980年代、毎年の緊急発進回数は900回前後で推移していたのですが東西冷戦の終結とソ連邦の解体移行、90年代には入り300回台となり、減少傾向が続きます。16年度は141回で50年代の水準となり17年度229回、18年度239回、19年度307回、20年度237回、そして21年度299回、という推移となります。

Img_6603  緊急発進の回数で注目すべきは那覇基地の南西航空混成団による緊急発進の度合いが上昇したことでしょうか。航空自衛隊は北部航空方面隊、中部航空方面隊、西部航空方面隊と南西航空混成団が対領空侵犯措置にあたるべく待機しているのですが、北空は千歳基地と三沢基地、中空は百里基地と小松基地、西空は築城基地と新田原基地、基本二つの基地に航空団がひとつづつ置かれていて、新田原基地をのぞき航空団には二個飛行隊が配置されているのですが、南西航空混成団は那覇基地に一個飛行隊が展開しているのみとなっています。

Img_6631  21年度は、北空の緊急発進回数が111回とトップなのですが、続いて南混の101回が続きます。那覇基地の一個飛行隊が101回対処していることになるわけですね。続いて中空の55回、西空の32回、と続くわけです。過去基本的に緊急発進回数では北空がトップなのですが、概ね中空と南混が同回数、続いて西空、という数の水位でした。ちなみに20年度は、北空121回、中空46回、南混42回、西空32回、となっていました。この数字をみると、那覇基地にもの凄い負担がのしかかっていることが見て取れれます。こうした状況が続くのならば、南西諸島の防空体制や基地配置は見直す必要があるのかもしれない、そういう印象です。しかし、細部をみると意外な事実に気付かされます。

Img_8895  緊急発進の対処国について、トップはロシア軍で197回、20年度の193回とほぼ同数でした。続いて中国軍機の38回、こちらは21年度の31回よりやや増加しました。急増したのは台湾機で、25回。これは17年度の2回、18年度の8回、19年度の3回、20年度の7回と比べますと非常に増大しており、こちらが那覇基地の緊急発進回数増大の背景にあるようなのですが、発表によれば新しい民間機航空航路が設定されたための増大であり、我が国周辺情勢との直接の関連は薄かったようですね。もうひとつ、過去数年間日本の防空識別圏に入ることがなかった北朝鮮機に対する緊急発進が8回となっており、数年間0であったのが8回、というのは大きな増大といえるかもしれません。

Img_0025  要撃対象の飛行経路は、ロシア機が沿海州を発進し、太平洋側から東京に向かって南下、中には伊豆諸島付近の公空をすすみ、南西諸島沖縄本島南方で旋回、先島諸島の周囲を一周して帰投する飛行経路や、同じく沿海州の基地を発進し北海道周辺を飛行、中には日本海側を能登半島にむけ飛行し、竹島以西の日本海側へ抜ける経路、ほかには対馬海峡を越えて飛行する事例もあったとのことです。特筆するべきは10月16日にTu142哨戒機が実施した対馬海峡への進出で、これは7年ぶりの事例とのことです。そして1月28日にはTu95爆撃機が与那国島と台湾島の中間空域を飛行、この空域へのロシア機の進出はは今回が初めてと発表されました。

Img_2748  中国、台湾機による対領空侵犯措置の増大は、民間機によるものが増大分の多くを占めているようで、その飛行経路は先島諸島北方の東シナ海上空を中国大陸の海岸線に沿って飛行していたものの割合が多かったとのことです。しかし21年度終わり頃に東シナ海上空の防空識別圏内に中国空軍のY8早期警戒機が侵入、Y8が防空識別圏内に侵入し緊急発進したのは初めての事案とのことですが、その後もY8への緊急発進は実施されているとのことです。北朝鮮軍機への緊急発進は、年度初め頃に八回連続で生起しており、日本海中部まで進出しましたものの、それ以上日本本土への接近は無かったとのことです。

Img_9349  回数としてはゆるやかな増加傾向にあり、台湾からの航空機や北朝鮮機にたいする緊急発進の事案増加、那覇基地への負担、ということも列挙したのですけれども、慎重にその動向を分析しますと、増加した台湾機による増加は民間旅客機の新航路設定によるもの。北朝鮮機による久々の防空識別圏内侵入は年度初旬に集中しており継続しての事案ではないとのこと、那覇基地への集中は前述の民間機によるものが多数あり、周辺情勢の影響は21年度の数字をみる限りは一定以上大きいわけではないということもできるでしょう。しかし、南西諸島は中国大陸と台湾を結ぶ空域に非常に近い位置にあるのだ、ということは認識させられる数字が出ていますね。この種の数字は単年ごとにみるよりは、中長期的にその動静を分析しなければ結論は出せませんので、今後の状況も冷静に情報を見守ってゆきたいと思います。

HARUNA

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地方隊沿岸警備体制再構築の必要も? 韓国哨戒艦天安沈没事案

2010-04-25 23:29:50 | 防衛・安全保障

◆合同調査委員会、外部爆発による沈没と発表

 韓国哨戒艦沈没事案、沈没した天安は対艦ミサイルを搭載していましたからコルベット、と表現するべきなのでしょうが、艦尾に続き本体も海底から引き揚げられました。この結果、韓国海軍を中心とした合同調査委員会の調査結果として外部からの爆発により沈没した、ということが発表されました。

Img_6870  黄海に隣接するのは佐世保地方隊管区なのですが、今回の韓国コルベット沈没事案は、事故で無かったのならば自動的に日本の沿岸警備の状況について、少なからず影響を及ぼすこととなります。外部からの爆発、ということはこれまで原因と考えられていた機関爆発や搭載する兵装の暴発による沈没、という事案ではないということになります。つまり、機雷もしくは魚雷により沈没した、ということになるわけです。同士討ちでなければ、これは韓国と敵対する国の敷設した機雷、もしくは魚雷により攻撃された、とうことに結論づけることができます。

Img_6260  この点が意味することは分かりますでしょうか、老朽化ではなく、第三国の意思が介在している可能性が高くなっている訳なのですが、この敵意が韓国海軍艦艇に対して向けられたということは、同じく韓国と協調する対外政策を撮っている国、すなわち我が国の艦船に対してもその敵対的な意思が向けられる可能性はあるという事となります。そして敵対する国が北東アジア地域の黄海に隣接する国なのであれば、同じく日本海側にたいしても同様の行動を行う能力を有している、ということにもなるわけです。現場海域が日本から遠い、ということで一概に結論は出せなくなる訳で、警戒を要します。

Img_6160_1  今回の事案が、機雷、韓国もしくはそのほかの国が敷設した機雷で流出した浮流機雷、もしくは特定の目的を持って海流に載せられた浮遊機雷であれば、日本近海に到達する可能性は非常に低くなります。前者は事故、後者であれば一種のテロとなり、事案生起現場海域周辺に海上自衛隊を含む各国の掃海部隊を展開させ、他に同様の機雷脅威がないのかを捜索する必要があります。今回炸裂した機雷のほかに別の機雷による脅威があるのならば、商船の航行も多い海域です、恐らくスエズ運河やペルシャ湾で実施された国際掃海任務と並ぶ大規模な掃海任務となるでしょう。

Img_6098_1  他方、魚雷であった場合は、更に別次元の大きな問題となります。魚雷を投射する手段としては魚雷艇、潜水艦、潜水艇によるものが考えられますが、沈没したコルベット天安、そしてその僚艦は接近を感知していなかった、とされますので、明白にレーダーで確認することが出来る魚雷艇、そして北朝鮮海軍が運用している大型のロメオ級潜水艦をソナーで感知できない、ということは考えにくい事です。可能性としては、特殊な機雷を用いた方式もありえるのでしょうか、もうひとつは水中排水量277トンのミゼットサブ、サンオ級潜水艦が用いられた可能性です。26隻が建造されたとされるこの小型潜水艦の一部には533ミリ魚雷発射管を搭載しているものがあり、航続距離は大きくないものの、ゲリラ的に運用されれば脅威となり得ます。

Img_5423  そしてもう一つ、黄海側で生起した事案は、人為的に行われたものであれば、前述のように日本海側でも行われる可能性があり、もちろん、日本近海まで来れるのか、という意味でミゼットサブは浮上航行したとしても魚雷艇よりも航続距離は短いのではありますが、母船の支援を受けるなどすれば航続距離は延伸しますし、何らかの手段を用いての外国艦船への攻撃を加える、という意図があれば、これは脅威となります。したがってもちろん、即座に、という訳でもないのかもしれませんが、佐世保地方隊警備管区、舞鶴地方隊警備管区にも脅威が及ぶ可能性があるわけです。

Img_6079  海上自衛隊は増大する世界規模での脅威に対抗するべく、ブルーウォーターネイビーとして大型護衛艦の整備を進めてきましたが、同時に、かつての、可変深度ソナーを搭載した、ちくご型護衛艦や駆潜艇など沿岸警備に向いた護衛艦は現役を退いて久しいです。しかし、たとえば、浅海域での任務を想定している掃海艇に対潜擲弾を搭載するなど、ミゼットサブに対しての方策は幾つか考えられるのですが、考慮、というものは必要となるでしょう。湾口を防護する近距離用ソナーと爆雷を搭載した哨戒艇、沿岸監視体制の充実、浅海域への防護用水中マイクロフォン網構築、水中工作員対処のための地方隊警備隊の増強など、考えられる対処法もあり、危惧が現実となるまえに、検討する必要があるのではないでしょうか。

Img_5351  海上自衛隊はいかに立ち向かうか、という事と同時に、機雷もしくは魚雷による攻撃説、そして可能性は薄まりつつある老朽化による船体破壊、この二つの事案の推移を冷静に見守る必要があるでしょう。機雷、魚雷ともに用いられれば破片が残留しているはずなのですから、証拠の探索を相当慎重に行うべきでしょう。この点、現在はオーストラリア、スウェーデンが専門家チームを参加させているようですが、日本も専門家を派遣し、調査に協力するべきでしょう。危機とは突如として起こるように見えて前兆と予防策はあります。しかし、如何にして早期に感知するかは、努力を要し、努力の方位によっては危機を解決する手法に繋がっている事もある訳です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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明日は第8師団創設46周年記念行事・北熊本駐屯地祭が開催されます

2010-04-24 23:48:34 | 北大路機関 広報

◆北熊本駐屯地は創設53周年

 韓国哨戒艦沈没事案に伴う沿岸警備強化の必要性を提示する記事が消えてしまいましたので、本日はその冒頭に掲載する予定だった部分を再度書きました。

Img_06992  明日は第8師団祭が行われます。第10師団の写真にて代用するのは申し訳ないのですが、九州の駐屯地祭、一度足を運びたいと思いつつもその距離もあってなかなか実現しません。しかし、装備はかなり進んだものを配備されていて、戦車大隊や特科連隊の規模もかなりの規模となっているのだとか。

Img_3749  普通科部隊にも対戦車中隊が置かれているという事ですし、西方重視、ということなのでしょうか、中部方面隊でいうところの第10師団のように重火力と機動力を両立させる編成、というものなのでしょうかね。第8師団のHPはこちらです→http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/8d/

Img_90412  師団HPをみてみますと、北熊本駐屯地には一般駐車場はもうけられないとのことで、JR光の森駅から北熊本駐屯地までシャトルバスを運行するとのことです。行事予定をみますと、観閲式、喇叭演奏、模擬戦、観閲行進、という流れに。観閲行進の前に模擬戦を行う、というのは珍しいですね。

Img_1130  駐車場案内をみてみますと、駐屯地のなかには一般用駐車場はないとのことですが、光の森駅前に約600台が収容可能な場所が確保されているとのことです、パーク&ライド、シャトルバス乗り場からも近い場所に駐車場があります。会場では、記念式典のほかに戦車試乗を始め、様々な催しが行われるとのことです。

HARUNA

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平成二十二年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報4

2010-04-23 22:43:28 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 中国海軍による沖縄近海での行動について統合幕僚監部から発表があり、南方に風雲急を告げる今日この頃ですが、本日は自衛隊関連行事について紹介します。

Img_1476  今週末に行われる行事の中で最も大きな行事は四国の善通寺駐屯地で行われる第14旅団創設記念行事でしょうか。新しく徳島駐屯地が新設され、旅団のヘリコプターを運用する第14飛行隊が新編、高知駐屯地も移設が完了し、第50普通科連隊が移駐しました。旅団創設から四周年、いよいよ航空機部隊が隷下に置かれた訳で、今年度の行事はヘリコプターの活躍に期待したいです。

Img_6465  八戸駐屯地は第4地対艦ミサイル連隊、第5高射特科群、第9対戦車隊、第9施設大隊、第2対戦車ヘリコプター隊、第9飛行隊が駐屯する駐屯地として知られていましたが、第9師団が師団改編を受けましたので、駐屯部隊や装備がどう近代化されたのか、その変化には興味がわきます。

Img_5149   弘前駐屯地は第39普通科連隊と第9偵察隊の駐屯する駐屯地、なのですが、第9師団HPをみてみますと広報が削減されたのか行事予定が21年度のまま、先日コメントでお教えいただいたのですが第12旅団は行事関係のHP情報を更新していないのではなく、広報関係の方が縮小されてしまい行進のやりくりに苦労しているとのことでした。

Img_5373 第12旅団の広報関係の人員削減、第9師団もそうなのでしょうか、苦しい人員のやり取りが見てとれました。その第12旅団では、先週誤報をお伝えしましたが今週末こそ駐屯地祭が実施の予定。高田駐屯地は新潟県上越市に位置し、第12旅団隷下の第2普通科連隊と方面隊直轄の第5施設群が駐屯している駐屯地です。

Img_1939  久居駐屯地祭が三重県で実施されます。近鉄久居駅からすぐ目の前に見えるのが駐屯地、中部方面隊で最初に軽装甲機動車が配備されたのがここの第33普通科連隊です。駐屯地に隣接する訓練場で行事が行われるのですが、昨年は火炎放射器が訓練展示模擬戦で使用され、迫力がありました。

Img_6451  加えて和歌山駐屯地祭、和歌山と言う事で一度足を運びたい行事なのですが和歌山市ではなく日高郡美浜町に置かれている駐屯地、最寄駅からバスで30分と距離もあり、ちょっと京阪神地区から朝一で向かうのは厳しい駐屯地です、第304水際障害中隊が駐屯しています。航空自衛隊関連では九州久留米市で高良台分屯基地祭が行われます。ペトリオットミサイルを運用する第8高射隊が展開。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 4月24日:高良台分屯基地開庁記念行事・・・http://www.mod.go.jp/asdf/wadf/
  2. 4月25日:弘前駐屯地創設42周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/
  3. 4月25日:八戸駐屯地創設54周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/neahq/
  4. 4月25日:多賀城駐屯地創設55周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/neahq/
  5. 4月25日:高田駐屯地創設60周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/
  6. 4月25日:久居駐屯地創設42周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/
  7. 4月25日:第14旅団創設4周年記念善通寺駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/14b/
  8. 4月25日:和歌山駐屯地創設48周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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沖ノ鳥島に補助飛行場(沖ノ鳥島航空基地)の建設を! グアムとの連絡を強化

2010-04-22 23:21:27 | 防衛・安全保障

◆グアム海兵隊部隊と沖縄本島の中間地点

 韓国海軍哨戒艇沈没事案が魚雷のものであるとした韓国海軍の発表をロイター通信が報じましたが、本日は半分普天間問題を交えた記事。

Img_8754  沖ノ鳥島に航空基地を建設、と言いましても離島防衛を強化するために沖ノ鳥島に航空基地を建設して守備隊を常駐させる、という提案ではなく、普天間飛行場移設先の飛行場として沖ノ鳥島を埋め立てて広大な航空基地を建設する、という提案ではありません、もっとも結果的に離島防衛には寄与するのですけれどもね。沖ノ鳥島、東京都小笠原村の無人島ですが、この場所は沖縄本島とグアム島の中間地点にあります。昨今、中国海軍艦艇が遊弋することで有名な島ですが、ここに離島防衛ではなく、米軍移転の観点から、航空基地を建設する必要があるのでは、というのが本日の提案。

Img_2851  普天間移設問題について、社民党はグアムへの移転を繰り返し主張しています。しかし現実的に見た場合、グアムでは島の面積から受け入れられないグアム島は549平方キロ、面積は沖縄本島の1207.8平方キロの半分以下となっていて物理的に受け入れられないのです。そこで社民党が人口密度の低いマリアナ諸島テニアンを提示しているのですが、テニアンの面積は101平方キロ、沖縄の十分の一以下、隣のサイパン島も面積は115平方キロ、二島併せても面積はグアムの半分以下でしかありません。海兵隊ヘリ部隊を移転するとすれば演習場が必要となるのですが、これらの島で沖縄の北部訓練場と同じ78平方キロの空き地が見つかるとは思えません。現実問題として東アジア地域の安全保障に激変を生じさせる覚悟が無ければ沖縄からの海兵隊ヘリ部隊、そして一体運用される海兵隊戦闘部隊の移転というものはあり得ない訳です。

Img_9820_2  しかしながら、グアムと沖縄の連絡を強化することで、普天間飛行場の機能移転は望めないものの、他の部隊の移転を促進することが、交渉によっては可能となるかもしれません。現在進められている米軍再編に基づく沖縄からの海兵隊グアム移転ですが、海兵隊は有事の際に沖縄への展開を行うことを前提として移転されることとなっています。普天間飛行場代替施設に一定の面積が求められているのも、増援の海兵隊部隊を受け入れる能力というものを見込んでの要請となっています。ここに、グアムと沖縄本島の中間地点にある沖ノ鳥島に空中給油機を含めた航空機の給油拠点を構築すれば、グアムと沖縄本島の連絡をさらに密接とすることが出来、海兵隊が導入するMV-22ティルトローター機は空中給油を受ければ航続距離は3500km以上、CH-53Eのフェリー航続距離は2000kmとなっています。グアム国際空港と那覇空港の距離が3406kmとのことですから、中継地点に沖ノ鳥島を利用できれば、グアムと沖縄の連絡が容易となる訳です。

Img_9564  建設する航空基地は、南鳥島航空基地の1380㍍滑走路と同規模が妥当でしょうか。南鳥島には海上自衛隊と海上保安庁、気象庁職員の11名が駐留していて、海上自衛隊は着陸する航空機への管制支援と燃料補給、そして滑走路の維持管理を行っている。滑走路の維持管理は主に草刈りとアフリカマイマイの駆除、海がきれいで海上自衛隊では南極と並び人気が高い基地とのこと。MV-22であっても、フェリー航続距離の場合1380㍍規模の滑走路でしたら対応できるでしょうし、南鳥島へは航空自衛隊のC-130H,海上保安庁のYS-11が補給へ発着していますから、この規模の滑走路は自動的にKC-130の運用にも対応します。

Img_07161  沖ノ鳥島は環礁の島で、満潮時も露出する北小島と南小島から構成されていて、コンクリート護岸工事で守られた島ですが、南北1.7km・東西4.5km。水深は2㍍前後ですから、滑走路をはじめとする構造物の建設は可能でしょう。なお、現在は無人となっていますが、1988年にコンクリート護岸工事を行うとともに気象観測施設も建築されています。そして1940年には旧海軍が飛行場の建設を構想していました。戦局悪化により実現しませんでしたが、この沖ノ鳥島に飛行場を建設しようとした事例は、実際に過去にあった訳です。

Img_4338  米軍グアム移転の促進以外に、島嶼部防衛の観点から見た場合もグアムと沖縄本島の中間に航空基地があることは少なくない意味となります。中継地と言う事で定期的に米軍機が発着する場合、その米軍機が飛来する拠点という事実だけでも大きな抑止力となりますし、なによりも現時点で完全な無人島となっている状況が防衛という観点から問題があります。海上保安官と海上自衛官十数名が滑走路とともに駐留することは意義がありますし、加えて沖縄の負担軽減を促進出来る可能性を含め、滑走路建築には意義があるのではないでしょうか。なお、この工事には埋め立てを伴いますので、東京都の石原知事が建設許可を出すのか、という事が敢えて言えば大きな問題となるのでしょうか。

HARUNA

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中国海軍、沖縄南方南西諸島を通過したのちに沖ノ鳥島近海を遊弋

2010-04-21 22:57:16 | 国際・政治

◆危機管理は大丈夫?自民党の指摘で事実認める

 先日、南西諸島を通過した10隻の中国海軍艦艇についてですが、その後の動向には注意を払っていたものの、防衛省HP,統幕HP,海上自衛隊HPには発表はありませんでした。

Img_1286  中国海軍は南西諸島を通過し太平洋に出たのち、どの方面へ向かったのか、その情報が産経新聞や毎日新聞に掲載されたのはそれから暫く後でした。以下、産経新聞と毎日新聞より引用です。沖縄通過の中国艦艇、その後に沖ノ鳥島近海へ ・・・2010.4.20 01:30:沖ノ鳥島 今月10日に沖縄近海を通過した中国海軍の艦艇がその後、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)近海に入り、同島を基点とする日本の排他的経済水域(EEZ)内で島を1周するように航行していたことが19日、わかった。複数の日米軍事関係筋が明らかにした。沖ノ鳥島は島ではなく、EEZの基点とならない「岩」だと主張している中国側による日本への示威行動とみられ、日本政府は中国艦艇の航行記録を慎重に調べている。中国艦艇は、東海艦隊(司令部・浙江省寧波)のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦2隻、フリゲート艦3隻、キロ級潜水艦2隻、補給艦1隻など計10隻で編成。10日に沖縄本島の南西約140キロの公海を東シナ海から太平洋に向けて通過した後、11日に沖縄南方海域で洋上補給を行うと、13日ごろに沖ノ鳥島周辺海域に到達した。防衛省関係者によると、現在も太平洋上で演習を継続しているという
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100420/plc1004200131001-n1.htm

Img_1174  産経新聞だけで判断するには、情報源として少し不安が生じます。果たしてどこから入手した情報なのか、という事を考えますと、もう少し情報が欲しいところでした。本来、この種の情報は防衛省か統幕がHPにおいてPDF文書として情報を公開するのですが、それがありませんでした。しかしながら、産経新聞以外にもこの種の情報を得ていたようで、続報は続きます。こちらは毎日新聞から引用です。中国軍艦:沖ノ鳥島西方海域で活動中 公海南下した艦隊・・・今月10日に沖縄本島と宮古島の間の公海を南下した中国海軍の艦隊が、その後、日本最南端・沖ノ鳥島(東京都小笠原村)付近を航行していたことが分かった。防衛省によると20日現在も同島西方海域で活動中という。 防衛省によると、中国艦隊は今月7~9日、東シナ海中部海域で訓練を実施。沖縄本島・宮古島間をキロ級潜水艦を含む10隻の艦隊で通過した後、13日ごろに沖ノ鳥島付近に到達した。09年6月にも中国の駆逐艦など5隻が沖ノ鳥島の北東260キロ付近の海域に進出しており、防衛省は一連の動きが中国側による日本への示威行動の可能性もあるとみて警戒を強めている。【樋岡徹也http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100420k0000e010056000c.html

Img_1094  しかしながら、この種の情報を補完する情報源、北澤防衛大臣への記者会見ではことなった反応が返ってきました。防衛省HPでは防衛大臣の記者会見について、主だった内容が定期的に掲載され、一つの重要な一次資料となります。それでは引用してみましょう、徳之島移転案の質疑応答もありますが、今回こちらは割愛します。大臣会見概要 平成22年4月20日(08時55分~09時01分)・・・Q:10日に中国海軍の艦艇が沖縄近海を航行する事案がありましたけれども、「沖ノ鳥島の周りの排他的経済水域を1周した」という報道がありますが、事実についてお願いします。A:それはまだ確認しておりません。そういう事実があったかどうかということは報告を受けておりません。http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2010/04/20.html 以上です。これは二つの疑問を生じさせます。まず、情報が海幕から防衛大臣へ上がっていなかったのか、ということ。または、防衛大臣が記者へ意図的に回答を留保したのか、ということ、この二つです。前者の可能性ですが、仮に前者の説が正しいのならば本日21日に改めて会見、もしくは発表が為されていたはずです。何故ならば、情報が大臣に挙がっていないという事があったならば、こちらの方が問題となる訳で、危機管理意識が相当欠如していなければ本日訂正されているはずだからです。すると、消去法で、上記前者以外の裏側があることとなります。

Img_7128  この事案については自民党の佐藤議員が民主党の長島防衛政務官への外交防衛委員会での質疑によりようやく情報として認められました。これについては産経新聞が報じています。中国艦艇 現在も沖ノ鳥島近海に 防衛政務官:2010.4.20 12:46 防衛省の長島昭久政務官は20日午前の参院外交防衛委員会で、10日に沖縄近海を通過した中国艦艇のその後の動向について「沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の西方海域で引き続き活動している」と述べ、艦艇が同島の近海にいることを明らかにした。その上で、「自衛隊の艦艇や航空機が必要な警戒監視体制を継続している」と述べた。一方、中国艦艇が同島を1周するように航行していた問題には「防衛省として事実は確認していない」と述べるにとどめた。佐藤正久氏(自民)への答弁http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100420/plc1004201247018-n1.htm この記事を読む限り、報道されたような沖ノ鳥島を一周していたのかについては回答を曖昧なものとしている一方で、中国海軍艦艇が沖縄南方海域の南西諸島排他的経済水域を通過し太平洋に展開したのちに、小笠原諸島方面へ前進し沖ノ鳥島周辺を遊弋していたことは長島政務官が認め、結果的に北澤防衛大臣へ情報が上がっていなかったか情報を公表しなかったことを認める形となりました。

Img_9049  統幕HPについてですが、本日、報道発表として以下のような発表が掲載されていました。中国艦艇搭載ヘリによる護衛艦「あさゆき」への近接飛行事案について 平成22年4月21日防衛省 :件名について、下記のとおりお知らせします。  1 日時平成22年4月21日(水)15時37分頃から40分頃 2 概要  本日4月21日(水)15時37分頃から40分頃の間、沖縄本島の南方約500キロにおいて中国艦艇部隊を警戒監視中の護衛艦「あさゆき」に対して、中国艦載ヘリが水平約90メートル、垂直約50メートルの距離に接近し2周ほど周回したhttp://<wbr></wbr>www.mod<wbr></wbr>.go.jp/<wbr></wbr>j/press<wbr></wbr>/news/2<wbr></wbr>010/04/<wbr></wbr>21d.htm<wbr></wbr>l 4月13日に掲載した記事では、護衛艦すずなみ至近距離まで、中国海軍の艦載ヘリコプターが異常接近した情報を掲載しましたが、今回も警戒中の護衛艦あさゆき、に対してヘリコプターを異常接近させています。どの艦の艦載機であるかは、上記のとおり発表されていないのですけれども、少なくとも本日の時点まで中国海軍の艦艇が日本近海に遊弋している状況にある事が発表されているわけです。もうひとつは、すずなみ、ちょうかい、とともにやはり別の護衛艦も展開し警戒監視任務にあたっていた、という事も言える訳なのですけれどもね。

Img_0983  今回の事案は、中国海軍が3月に続き今月にも艦艇を展開させている、ということで、これまで以上に中国海軍の行動が活発化しており、今まで以上の頻度で中国海軍艦艇が日本周辺に出現した事が、今後、中国海軍がその増強する勢力をどの方面へ向けてゆくのか、という事にも興味は集まるのですけれども、それ以上に防衛大臣記者会見において何故事実とは異なる、もしくは事実を隠ぺいするような回答を出したのか、という事、野党である自民党議員に指摘されるまで政府が情報を発表しなかったのは何故か、という点の方が考えるべき点は大きいかもしれません。冷戦時代において、日本海に出現していたソ連海軍艦艇に関して、防衛省はその位置や索敵手段を暴露しないという目的から、発見した情報を必ずしもすべてを開示してはいませんでした。しかしながら、今回の中国艦艇の行動については、南西諸島を横切った時点で情報を発表していたのですし、その後の動向を開示しないという必然性は高くはありません。実のところ、情報伝達や情報開示への理解と言う面の方が、中国海軍の動向以上に問題を内包しているのではないか、そう考えてしまう訳です。

HARUNA

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