北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成24年度日米共同訓練国内における米陸軍との実動訓練 10月24日~11月7日実施

2012-09-30 23:27:52 | 防衛・安全保障

◆饗庭野演習場、ストライカー装甲車演習参加!

 平成24年度日米共同訓練国内における米陸軍との実動訓練の概要が発表されました。指揮官は第10師団長松村五郎陸将、在日米理う軍司令官マイケルTハリソン少将との発表です。

Nimg_2369 本年の日米共同訓練は陸上自衛隊第10師団と米陸軍第25軽歩兵師団が参加し、実施されます。第10師団は名古屋に司令部を置き、四個普通科連隊と特科連隊に戦車大隊を編成に有する師団で、第25軽歩兵師団は戦車に代え攻撃ヘリコプターを配置し高度に自動車化された師団ですが、2004年の師団改編により第1ストライカー旅団戦闘団、第二ストライカー旅団戦闘団、第3歩兵旅団戦闘団、第4空挺旅団戦闘団、航空旅団という機械化部隊と空挺部隊を統合した理想的な機動力を持つ旅団となっています。

Nimg_6053 訓練は滋賀県の饗庭野演習場において実施されます。第10師団からは久居駐屯地の第33普通科連隊を中心に600名の要員が参加、演習へは89式小銃やMINIMI機銃、9mm拳銃や12.7mm重機関銃に加え、81mm迫撃砲、01式軽対戦車誘導弾、そして第10戦車大隊の74式戦車と第10飛行隊のUH-1多用途ヘリコプターが参加するようです。おそらく、普通科連隊からの参加規模から高機動車や軽装甲機動車も参加することとなるのでしょう。

Nimg_2388 ストライカー装甲車を米陸軍は持ち込みます。第25軽歩兵師団からはハワイ駐屯の第2ストライカー旅団戦闘団より第1-14歩兵大隊を基幹とした750名の部隊が参加し、M-16小銃、MINIMI機銃、M-240軽機関銃、M-82対物狙撃銃、M-24狙撃銃、AT-4対戦車ロケット、60mm迫撃砲、81mm迫撃砲、ストライカー装甲車が参加するとのことです。ストライカー装甲車とは、装甲戦闘車と野戦高機動車の中間を担う八輪式装輪装甲車として今世紀に入り米陸軍に大量配備された装甲車です。

Nimg_2272 日米共同訓練ですが、陸上自衛隊から600名、米陸軍から750名という規模で米陸軍がストライカー装甲車を持ち込む、というのはかなり稀有な事例のように思います。歩兵大隊基幹というと、装甲車の車両数の規模はそれなりのものとなるわけで、道路上を迅速に起動しこれまでの重装甲部隊では対応できなかった機動力を有する装甲車両群による緊急展開を念頭に部隊の前方展開を改める具体的施策となったこの車両が我が国の演習場地形においてどのような運用が為されるのか、かなり興味の湧くところ。

Nimg_6624 実は、とある安全保障系の研究所、その主任の方に陸上自衛隊の師団を機甲師団以外全て米陸軍のストライカー旅団に置き換えたほうがいいのではないか、というお話を伺ったことがありました、イラク戦争の翌年の話です。しかし、一個ストライカー旅団には400両以上のストライカー装甲車があり、仮に機甲師団以外に14個旅団所要と中央即応集団所要を導入する場合、所要数は単純計算で6000両となり、耐用年数を考えれば年間300両以上で中期防あたり1500両の装甲車を自衛隊が導入することは現実的なのだろうか、という討議をおもいだしました。

Nimg_2254 別の方で、研究者でありながらいわゆる通の方では、連隊戦闘団を戦車と航空機を統合した40個のMEU海兵遠征隊編成に切り替えてはどうか、という話しもありましたが、・・・、まあ、それはさておき。訓練は饗庭野演習場及び今津駐屯地において10月24日から11月7日にかけ実施されるとのこと。陸上自衛隊及び米陸軍がそれぞれの指揮系統に基づき共同した運用を行うという訓練、連携要領の実動を通じた運用などを演練すると発表されており、その成果が抑止力として機能するところを願います。

北大路機関:はるな

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尖閣諸島防衛への一視点④ 北朝鮮ミサイル事案への沖縄救援隊という実績

2012-09-29 23:37:58 | 防衛・安全保障

◆陸上部隊は最後の備え、本土からの緊急展開

 前回の紹介で我が陸上自衛隊の運用するミサイル部隊が着上陸を大きく制約するという能力を紹介しました。

Simg_2185 南西諸島有事ですが、那覇駐屯地に司令部を置く第15旅団は第51普通科連隊と第6高射特科群のみを有し、戦車部隊や特科部隊を有していません。急患輸送用にヘリコプターには見るべき有力な装備があるのですが、それにしても総数としては多くはなく、広大な南西諸島を防衛警備するには十分ではありません。しかし、これら部隊は九州と本州、それに北海道からの増援部隊により比較的短期間で沖縄と八重山諸島を防衛するに十分な程度に部隊は強化されることとなるでしょう。

Simg_4568 これには実績があります。昨年度実施された自衛隊統合演習では北海道東千歳駐屯地に司令部を置く第7師団の装甲化部隊が、90式戦車に89式装甲戦闘車を中心に民間の高速カーフェリーをチャーターし、北海道から九州大分港へ緊急展開の要領を実動演習により修得しました。高速カーフェリーにより重量50tの90式戦車を輸送しうる、という実績は、二日間から三日間程度で北海道室蘭港や苫小牧港から沖縄方面へ部隊を急速展開できるという事を実証したことになります。

Simg_3931 着上陸以前に予防的に離島に部隊を集中できたならば、特に拠点となる島より部隊を機動運用させる姿勢を示すことで、相手に対し上陸の柔軟性、実施するうえで必要な必要兵力の負担をひき上げることを強いるわけで、結果的に着上陸を断念させることとなるのです。この場合、尖閣諸島は地形と面積から大部隊を展開させることに適していませんが、尖閣諸島を射程に収め得る地対艦ミサイルを八重山諸島に展開させることで目的を達するため、逆に尖閣諸島制圧上の要件を握る八重山諸島の地対艦ミサイルを防護する必要がでるということ。

Simg_9886 併せて、沖縄本島へ習志野の第1空挺団や宇都宮の中央即応連隊より機械化部隊を緊急展開させることは、沖縄県民に対し、第二次大戦中の沖縄戦において上陸以前に台湾防衛へ沖縄の師団を引き抜き、本土から増援部隊を展開させないという手段を以て沖縄を見捨てた、正確には沖縄32軍の牛島中将と八原高級参謀からの重ねての要請に対し、大本営の服部参謀が梅津参謀長へ増援部隊派遣は本土防衛を手薄とする理由から見送ったという苦い歴史を払拭する最初の一手となるのではないでしょうか。

Img_5529 戦車が沖縄へ展開されるのか、という点にはいろいろと考えるものがあるのですが、昨年度の自衛隊統合演習は離島を想定した地位への戦車部隊の展開を主眼としているわけですので、沖縄ではなく九州を想定戦域としている可能性は低い、すると、戦車の沖縄展開を考えている余地は充分ある。そして、なによりも、沖縄本島や八重山諸島に戦車が展開した場合、直接的に海上を機動する能力の有無にかかわらず、相手に対して戦車部隊に対抗する対戦車能力を準備しなければならず、相手への不確定要素を増やす事になるわけです。

Simg_2429 しかし、空挺団の沖縄展開や中央即応連隊の展開、第七師団の北海道から沖縄までの展開は展開能力に限界がある、と指摘する声もあるやもしれません。確かに、輸送機や輸送艦はこれらを輸送するには全く持って不十分です。しかし輸送機は航空優勢の競合地域へ運用する手段であり、輸送艦は港湾施設を用いえない状況において運用する、有体に言えば輸送艦は輸送船を接岸可能な港湾を奪取する部隊の輸送手段である、ともいえるものでして、民間の船舶と協力すればそこまで難しい話ではありません。

Simg_6695 これは自衛隊統合演習d民間のチャーター船を利用した、という旨を示しましたが、協同転地演習における師団規模の部隊の移動等に民間の輸送手段はかなり重宝されています。おおすみ型輸送艦は、各種車両を60両も搭載すれば満杯です。装甲車や火砲に戦車は陸上自衛隊の正面装備ですが、これらの装備を運用するにはその何倍もの支援車両を必要とするものでして輸送は不十分、戦闘車両だけでは短期間で行動継続が不可能となるわけです。他方で、民間の輸送船、カーフェリーや車両貨物船は一隻当たりもっと大きな輸送力がある。

Simg_8272 民間船舶の輸送力が誇示されたのはl今年四月に発生した北朝鮮ミサイル事案に対して編成された沖縄救援隊の実績があります。那覇駐屯地の第15旅団は人員2100名を以て編成されていますが、本土から派遣された沖縄救援隊は900名規模でした。弾道ミサイル迎撃へのペトリオットミサイルPAC-3部隊や、弾道ミサイルの有毒な推進剤漏洩に備えての化学防護部隊に、警備部隊を併せ、900名、となったわけです。無論、900名の規模には航空自衛隊の要員が含まれており、単純に第15旅団と比較はできないのですけれども。

Simg_4521 自衛隊は必要であれば、900名の部隊を石垣島、宮古島、与那国島、沖縄本島に迅速に展開させる事が可能だ。これを北朝鮮弾道ミサイル事案での沖縄救援隊は誇示したわけですね。そして、自衛隊の即応力と動員力の高さは、奇しくも昨年の東日本大震災における10万名の被災地派遣を迅速に実施したことが何よりも証明しました。必要ならば自衛隊は全部隊の半分を、周辺地域への警戒監視を維持しつつ展開することが出来る、厳しい動員ではありましたが、周辺国は災害派遣で10万を即時動員した実力は有事にも発揮されると考えるでしょう。

Simg_8181 特に沖縄本島であれば、在日米軍、在沖海兵隊のキャンプを根拠地として使用することが出来、現在は縮小編制の第3海兵師団と第31海兵遠征群が展開しているのみですので、かなりの規模の陸上自衛隊を収容することが出来るでしょう。キャンプハンセンやキャンプシュワブのヴェトナム戦争における米軍収容能力は短期的に数個師団を展開させ、キャンプフォスターの車両整備能力、那覇軍港とブルービーチの接岸と荷役能力にはかなりの余裕があります。

Simg_4016 一旦、カーフェリーや車両貨物船などの民間輸送船や民間の旅客機により沖縄本島に九州に本州と北海道から部隊を展開させ、そこから海上自衛隊の輸送艦や航空自衛隊の輸送機により八重山諸島に展開させる、こうした手法を採れば、輸送機や輸送艦でなければ実施できない任務でもあり、距離的にも直接輸送艦を本州と沖縄の往復に用いるよりは時間を節約することも可能でしょう。南西諸島有事には主たる任務は海上自衛隊の制海権維持と航空自衛隊の航空優勢確保となるのですが、その後ろの陸上自衛隊の後ろ盾は我が国の覚悟を示すこととなるのは間違いありません。

北大路機関:はるな

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巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑱ 大規模広域災害対策の主管官庁画定を

2012-09-28 23:54:07 | 防災・災害派遣

◆防災に邁進し防衛が疎かになる状況への対応

 今回を以て“巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える”を完結とします。十八回にわたり、いろいろと考えたのですがお付き合いありがとうございました。

Img_1732 我が国では内閣府に防災担当大臣が置かれており、中川正春代議士が現在防災担当大臣を務めていますが、防災担当大臣は各省庁の横断的な防災対策を行うことが責務であり大規模災害に際しての主管官庁は首相を本部長とする対策本部、内閣府が指揮を執るという方式を採っています。しかし、この方式は充分なのでしょうか。

Img_1285 南海トラフ地震は、想定される最大規模の発災となれば、おそらく人類が経験した元も大きな地震災害となる可能性があります。想定範囲も東海道と紀伊四国を中心に京浜地区から九州地区までの被害を想定せねばならない巨大災害となり、中京と阪神地区にも大きな津波被害が及ぶ、というもの。

Nimg_0354 実のところ、これまでの枠組みの延長線上での防災対策が、南海トラフ地震に対応しうるのか、というところがそもそもの疑問であるわけです。現在提示されている死者数32万は、東日本大震災の16倍、広島核攻撃の死者数の2倍以上となり、素早い避難と事前の防災により八割を減じることが可能、と言われますがその場合でも東日本大震災の三倍以上になる。

Img_6595 国土交通省の建造物強度向上や防災道路などの建設は防災に資するものですし、様々な地方自治体の事前備蓄なども防災と減災に資するものとなるのでしょうが、しかし、危機管理の組織として有事の際に自己完結能力を以て対応できる組織と言えば、自衛隊を置いてほかにないというのが現状でしょう。

Img_0282 防災専管の国土防災隊を創設してはどうか、という視点もあるやもしれませんが、消防や警察が自己完結能力を有さない理由に平時の火災や治安維持に不要な長距離輸送能力や野営能力と整備能力を持つことが非効率である、組織の目的に合致しない、という理由から回避されたわけで、平時の依存すべきイン裏が機能しない大規模災害の条件が軍事機構同士による戦闘と共通点が多い、という背景から転用された、というものでした。

Oimg_3632 特に東日本大震災では、衛星通信システムによる孤立地域からの中央との通信維持、水上戦闘艦の航空機運用能力と情報集約能力に補給能力、空中早期警戒管制機による被災地上空の航空管制など、防災という観点からは中々想定できなかったものが大きな能力を発揮できていることを忘れてはなりません。

Img_7102 こうしたなかで、充分な資材と能力に人員規模を有する防災機構を創設することは、結果的に限られた国家予算の中で防衛予算を含め共食い状態となり、相互に共倒れとなる状況も考えられるのでして、もちろん、防災主管官庁を創設して有事の際にPDWなど携帯火器で自衛能力を付与させ後方支援に充てるという方式はあるやもしれませんが、やはり指揮系統の複雑化を生むこととなるでしょう。

Img_7007 以上の点を踏まえれば、緊急時に指揮機能を中心とした体制を構築し、これをもとに防衛省自衛隊に必要な部隊を抽出させる方式を採ることも考えられるのですが、軍事機構の兵站や戦闘序列画定に必要な指揮系統の維持など、自衛隊を熟知した、具体的には実部隊の運用経験で方面隊レベルの経験を持つ指揮官でなければ難しいものがあります。

Pimg_7860 この点こそが、指揮と実働の分離と統合という、米国の国土安全保障省方式を我が国において応用しにくいものです。もともと国土安全保障省は冷戦時代の米ソ全面核戦争を念頭に置いた民間防衛を主眼とした機能ですから、軍事機構と行政機構の一帯を前提とした制度、仕組み、方式、概念、法基盤、文化を包含したものに依拠するものですが、この分化がそもそも日本にないということ。

Img_1624 実は、法制度だけであれば、国会において与党が本格的に着手すれば為し得る部分ではあるのですが、精度の運用や仕組みといういわば、ソフトな部分において、特に文化というよう場部分、個々人の心象などは法整備が容易に置き換えられるものではなく、憲法上の理由と過去の歴史からの反省もあり、我がくにでゃ軍事機構と行政機構に大きな違いがある。

Img_5259 こうしますと、どこが大規模広域災害における主管官庁たるべきか、という点について、実動部隊は大規模広域災害が及ぼす際に必要とされる能力と重なる大規模野戦や制海権確保に航空優勢確保を想定している機構を延長上として用いることが、少なくとも、少なくとも短期的には有利であり効率的である、という事が言えるやもしれません。

Img_5777 もちろん、防災は自治体が主体となるべきものであり、事前防災は国土交通省による交通網や建造物の強化や厚生労働省による広域緊急医療体制の構築、経済産業省による企業の防災対策や事業継続能力強化の支援、文部科学省による地震観測体制の強化や防災教育の充実は必要なのですが、起こった後、その一定期間においては防衛省自衛隊を主管官庁とする権限と予算という視点は必要ではないかと考えるもの。

Gimg_6289c 大規模広域災害対策の主管官庁は防衛省である、という視点から物事を考える必要はないのか、言い換えれば、防衛省の位置づけについて、制度面や法制度や文化等の面から、もちろんこれは時間を要するものではあるのですが、変化、そう変化を視野に含め物事を考える必要はないのか、と考えます。

Img_1584 ただ、前述のとおり、国土交通省による交通網や建造物の強化や厚生労働省による広域緊急医療体制の構築、経済産業省による企業の防災対策や事業継続能力強化の支援、文部科学省による地震観測体制の強化や防災教育の充実、これは我が国全体を自衛隊、それ以外、この視点で見れば、後者の方が大きいことが全てを示すというもの。

Gimg_5108 この視点から、少なくとも変化を念頭に、防衛省自衛隊を災害発災後における大規模広域災害対策の主管官庁である、という制度、これは法制度や予算制度を含めてですが、裏付けを持ち、防衛省の位置づけを考えることが、もちろん防災と共に防衛を含めて能力全般を底上げすることになるのだろう、と。

Img_3076 危機管理主管官庁としての意味合いを有する、という事は、特に防衛面と防災面での必要とされる能力の共通性を以て両立する、という事が主眼であり、いわば防衛のみ重視または防災のみ重視という片手落ちとはならないものが前提である、これを忘れて議論するべきではありません。

Img_3393 防災にのみ重視して防衛が、という視点ではなく防災能力は本土直接武力侵攻に際しての後方支援能力維持に資する、という見方や戦闘支援能力の維持に資する、という視点を以て考えるべきで、防災、発災後の対処能力を主眼とした装備品を有事の際に戦闘支援に運用する、というもの。

Gimg_7354 特に巨大な南海トラフ地震への備えを各部分から自衛隊が対処能力を整備する、という姿勢で参画しなければ、限られた国家予算において必要となる防災予算のしわ寄せを防衛予算が正面から受け、正面装備や部隊維持に影響が出るという見方も必要で、そういういみからも防災攻勢というべき一歩進んだ政策も必要となるのではないでしょうか。

Img_0097 こうした物事の考え方は、予算という観点からは壮大な無駄の示唆ではないか、という視点もありましょうが、建前としても想定される32万の犠牲者を少しでも減らす、という視点は、決しておかしいものではありませんし、事業評価の面からも救える人数という意味での計算は誤ってはいないという信念があります。

Himg_9479 なによりも、先進国で東日本大震災でも瞬時にして19000名以上が犠牲になるような状況、というのは、第二次世界大戦後では中々考えられるものではありません。ましてや、32万という南海トラフ地震の想定となりますと、そして被害総額は数百兆円規模となりますと、もはや、これは、というほど。

Img_11_6_7 併せて、防災に邁進しすぎ防衛が疎かになることはあってはならない、という、本記事と加えて類する主張への指摘は、限られた国家予算を念頭に自衛隊以外の官庁が多くの予算を防災として投入するしわ寄せを防衛省が予算面で受けた場合の方が影響は大きいのではないでしょうか。防衛にしても防災にしても国民の生命財産に直結するもの、その視点から、大規模広域災害への防衛省の位置づけに再考を要するのではないか、こう考えを記し、まとめとしたいと思います。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.09.29・30)

2012-09-27 23:28:04 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 下総航空基地、ううむ、行きたいのは山々なのだけれども・・・、ううむ。

Img_9845 今週末実施される最大の行事は仙台駐屯地にて実施される東北方面隊創設52周年記念行事です。毎年霞目飛行場地区において実施される行事ですが、本年は仙台駐屯地にて実施となります。東日本大震災に立ち向かった東北方面隊の司令部である東北方面総監部が置かれているのがこの仙台駐屯地です。

Nimg_3730 北部方面隊管区の陸上自衛隊行事は第5偵察隊と第27普通科連隊一部中隊の駐屯する別海駐屯地祭、北部方面鉱区隊の駐屯する丘珠駐屯地祭、第1戦車群が駐屯する北恵庭駐屯地祭が行われます。第1戦車群はいよいよ来年度の改編により廃止される部隊、第1戦車団以来の伝統の部隊です。

Img_6381a 中部方面隊管区では、北陸方面隊と一部で称される北陸三県を担う第14普通科連隊の金沢駐屯地祭、中部方面後方支援隊の置かれる桂駐屯地祭、第14旅団隷下の第14特科隊の松山駐屯地祭、弾薬補給処が置かれている三軒家駐屯地祭等が実施されるようです。三軒家や桂は規模は大きくないが珍しい行事、という印象でしょうか。

Eimg_7294 西部方面隊管区では小郡駐屯地祭が行われます。小郡駐屯地は、九州北部豪雨災害において災害派遣に活躍した第5施設団が置かれている駐屯地です。西鉄小郡駅からシャトルバスが運行されているのですが、同じ西鉄沿線には第4師団司令部の福岡駐屯地もあったりします。

Img_6247 海上自衛隊関連では下総航空基地祭、教育航空集団司令部が置かれ、厚木移転までは海上自衛隊の航空作戦部隊の司令部である航空集団司令部が置かれ、移動通信隊等も配置される基地の一般公開と、徳島航空基地の一般公開が行われます。下総航空基地祭、行きたかった。なお、台風により行事変更の可能性があるとのこと。

Himg_8976 海上自衛隊の艦艇一般公開の予定は今週末は二つで、一つが山口県周南市晴海ふ頭において土曜日と日曜日に実施される砕氷艦しらせ一般公開、もう一つは和歌山県日高港塩屋第一岸壁において土曜日と日曜日に行われる護衛艦せんだい一般公開、以上の二つ。

Img_3090 航空自衛隊記念行事では土曜日に恩納分屯基地観月会が予定されていたのですが、沖縄への台風17号接近により中止となったとHPに記載がありました。台風はかなり大型で日本列島へ接近する経路を進んでいますので、ご注意ください。また、自衛隊関連行事は、特に台風の影響について海上自衛隊行事と航空自衛隊行事は影響が大きいため、部隊HP等でご確認ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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調整中

2012-09-26 23:08:30 | インポート

調整中

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日露捜索救難共同訓練、明日実施 海上自衛隊護衛艦ウラジオストク寄港

2012-09-25 22:27:07 | 海上自衛隊 催事

◆明日から韓国釜山でもPSI訓練が開始だが・・・

 明日9月26日、ロシア海軍と海上自衛隊はウラジオストク港内及び近海において日ロ共同訓練をおこなうとのこと。

Img_0965 実施される訓練は捜索及び救難共同訓練で、海上自衛隊は第7護衛隊司令白根勉1佐を指揮官に護衛艦ありあけ、護衛艦おおよど、乗員300名を派遣します。部隊は20日木曜日に佐世保基地を、21日金曜日に大湊基地を出港、23日日曜日にウラジオストクへ寄港しました。明日26日に出港し、訓練を実施します。

Rimg_1920 実は近年の中国海軍の急速な海軍力の増強と方向性の見えない外洋進出に、日本やアメリカと共に重大な関心を持っているのがロシア海軍で、特に1969年に中国軍によるロシア領内への侵攻を筆頭に両国関係には国境問題を軸として緊張関係があります。今回は定期的な訓練ではありますが、何らかのメッセージを送る効果は期待できるでしょう。

Mimg_19420 護衛艦おおよど、は28日に大湊へ、護衛艦ありあけ、は29日土曜日に佐世保へ帰港予定です。ロシア海軍は太平洋艦隊よりミサイル駆逐艦やフリゲイトを参加させるとのことで、ロシア海軍との共同訓練は定期的に実施されており、最初の訓練が実施された1998年から数えて今回で13回となりました。

Rimg_2707 対して、同じく明日から大量破壊兵器拡散防止イニチアチヴに基づくPSI多国間実動訓練が開始されるのですが、韓国側は日韓関係の緊張を理由に派遣される護衛艦あまぎり、の釜山寄港を拒否し、沖合での訓練のみ参加するよう求めてきました。日韓関係と同じく日ロ関係でも領土に関する見解の相違はあるのですが、訓練目的を損なわせる韓国の対応と比してロシアの対応について、考えさせられるものがあります。

北大路機関:はるな

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第10師団創設50周年記念守山駐屯地祭 PowerShotG-12撮影速報

2012-09-24 23:08:37 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆第10師団、混成団からの改編より半世紀

 今年で八年連続の撮影となりますが、守山駐屯地にて行われた第10師団創設50周年記念行事へ昨日行ってまいりました。

Mimg_3680 第10師団、名古屋市の守山駐屯地に司令部を置くこの師団は1962年に第10混成団より第10師団へ師団改編を受けてより50周年を迎えました。東に首都東京第1師団、西に京阪神第3師団、ここに中立つ第10師団は京浜京阪神地区への増援という位置づけと共に中京地区を筆頭に東海北陸地方の防衛警備及び災害派遣を担う重要な師団です。

Mimg_3697 第10師団の観閲行進、G-12により予備の撮影を行いつつ、主力はEOS-7Dと、50周年という事でEOS-50Dに120-400mmの超望遠レンズを取り付け、実に三機体制での撮影となりました。当日の天候は生憎の雨天ではありましたが、幸い屋根のある場所から撮影できましたのは幸運そのもの。

Mimg_3716 50周年を迎えた第10師団ですが、金沢の第14普通科連隊、久居の第33普通科連隊、守山の第35普通科連隊、豊川の第49普通科連隊に各四個普通科中隊と重迫撃砲中隊に対戦車中隊を有し、四個戦車中隊基幹の第10戦車大隊と全般支援大隊を含む五個大隊を持て編制される第10特科連隊を中心とした、今日の本州九州地区では最大規模の火力と編成を持つ師団となりました。

Mimg_3757 この第10師団なのですが、来年度予算において第10師団の即応近代化師団への改編が盛り込まれています。恐らく戦車大隊は二個中隊程度にまで小型化され、特科連隊も特科隊と縮小されるのか、大隊数が縮小されるのでしょう、第49普通科連隊も即応予備自衛官主体の編成であり、中部方面混成団へ編入される可能性もあるやもしれません。

Mimg_3768 高機動車部隊。陸上自衛隊はほんの二十年前までは機械化さえ途上と言われた組織ではありましたが、考えれば地対空ミサイルと空中機動部隊の普及は高く、そして対砲レーダ装置や低空レーダ装置など電装品では充実しており、地形防御の依存率という面で普通科の装甲化が、そして予算調達の特殊性から戦車が旧式化していた以外はかなり進んでいたわけなのですよね。

Mimg_3776 この軽装甲機動車は2002年に中部方面隊で最初に第10師団の第33普通科連隊が14両を受領し、運用を開始しました。これを機に106mm無反動砲や64式小銃は普通科部隊より89式小銃や79式対舟艇対戦車誘導弾や87式対戦車誘導弾に01式軽対戦車誘導弾へ更新された、という。

Mimg_3780 第10偵察隊。この第10師団ですが、10年後にはどうなっているのでしょうか、74式戦車が10式戦車に置き換えられ、普通科連隊には中距離多目的誘導弾の配備が開始、高射特科大隊や偵察隊にも近接戦闘車導入の予兆が見え始め、特科部隊はコンパクト化されつつも火力戦闘車導入へ進み始め、普通科の装甲車導入は次の段階へ、という事になるのでしょうか。

Mimg_3793 長く北大路機関をご覧の方はお気づきかもしれませんが守山駐屯地祭は北大路機関のWeblog開始間もない2005年より連続して掲載していまして、今回で八年連続にて足を運んだことになります。73式小型トラックの旧型はすべて姿をけし、短SAMの新型化や通信機材の更新など、傍目にいろいろと師団の歴史を見てきたわけで、そういった意味でも今回の行事は感慨深いものがありました。昔の火箱師団長がそのまま中部方面総監を経て前に陸幕長に着任されましたね。

Mimg_3814 観閲行進の最後を飾る第10戦車大隊の74式戦車、この部隊もWeblog北大路機関が始まったころは乗員は自衛用にM-3短機関銃を装備し、大隊本部はなんと60式装甲車を運用、それが73式装甲車となり、いまは96式装輪装甲車です。今後、防衛警備任務と共に東海東南海地震を睨む第10師団は多くの試練と苦難が予測されますが、師団全員一致団結の下、住民国民と共に頑張ってほしいですね。

北大路機関:はるな

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ヘリコプター護衛艦くらま就役30周年記念一般公開⑩ くらま出港後の佐世保基地

2012-09-23 22:41:10 | 海上自衛隊 催事

◆米海洋観測艦入港と護衛艦接岸作業

 護衛艦くらま特集は十回にわたり掲載しましたが、今回は護衛艦くらま出港直後の様子を紹介しましょう。

Kimg_9215_1 長崎へ向け佐世保を出港した護衛艦くらま、その向こう側に今しも佐世保へ入港せんと進んでくる艦影が見えます。海上自衛隊西方の要である佐世保は同時に米海軍の極東地域における拠点の一つでもあり、米海外基地としては軍港機能が横須賀と並び大きいものがあり、入港する艦艇もさまざま。

Kimg_9030_1 米海軍海洋観測艦ボーディッチ。1994年から2001年にかけ六隻が建造されたパスファインダー級海洋観測艦の三番艦で、海上輸送司令部隷下に配属され、対潜戦闘の展開などに重大な要素となる海底形状や潮流に塩分濃度など海洋情報を収集する支援船です。

Kimg_9025_1 満載排水量は4700t、全長100mで乗員は約50名、白い塗装から特殊な艦であることは分かったのですが、変な情報収集艦では、と一瞬心配になったりも、こういいますのも弾道ミサイル追跡用の情報収集艦オブザベーションアイランドやインヴィンシブルなども佐世保に入港することはありますから、ね。そういう艦が来ているならば我が国周辺が緊張状態にあるということになる。

Kimg_9236_1 海上保安庁巡視船ちくご。佐世保の第七管区海上保安本部に2010年配備となった最新鋭巡視船とから型の一隻で総トン数335t、最高速力35ノット以上を発揮し、中型巡視船としての汎用性と不審船対処能力を併せ持つ巡視船で、500t級巡視船が担った救難任務へも対応するという新世代の巡視船、現在同型船は18隻が就役、4隻が建造中とのこと。

Kimg_9257_1 佐世保基地が見えてきました。早朝に入港を開始した護衛艦はるゆき、いそゆき、は接岸作業をほぼ完了し油船より給油を受けている模様です。土曜日と日曜日に艦艇広報任務を経て佐世保帰港ということになるのですが、乗員の方は代休を取ることはできるのでしょうか、そんなことを考えてしまう劇用の朝です。

Kimg_9262_1 来年度予算概算供給では今年度予算と並び従来型護衛艦の延命改修予算が要求されているのですが、これを考えますと一番艦はつゆき、など除籍されてしまった護衛艦も一定期間はモスボール保管等を行いべきだったのかな、と思うことも。無論、艦艇の奥係留場所が不足しているので、これを先に解決せねばなりませんが。

Kimg_9277 立神桟橋に停泊するのは、護衛艦ありあけ、さみだれ、ミサイル護衛艦こんごう、補給艦はまな。写真がななめとなっているのはご愛嬌、動く足場を撮影地として、いやそうでない場合も含めてなのですがどうしても傾いてしまう、三脚を使用すると周辺に迷惑、水平計測装置などは一眼レフに役立たず、難しいものです。

Kimg_9280_1 護衛艦じんづう、接岸の様子。護衛艦ゆうだち、は満載排水量6200t、じんづう、の2900tよりもかなり大型の護衛艦で、こうして横に並びますと大きさの違いが一目瞭然となっているのがお分かり頂けるでしょうか。この位置はちなみに先ほどまで護衛艦くらま、が停泊していた場所ですね。

Kimg_9291_1 そして港へ、当方も帰着です。三日間にわたり、護衛艦くらま就役30周年記念一般公開を撮影し、出港の様子も撮影することが出来ました。この二週間後には長崎にて定期整備中の、くらま、を撮影するのですがこれはまた別の話、佐世保をよく知ることが出来、いろいろと貴重な瞬間に出会うことが出来た三日間です。連載十回に渡りお付き合いいただき、ありがとうございました。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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尖閣諸島防衛への一視点③ 88式地対艦誘導弾射程180km/八重山諸島尖閣諸島間170km

2012-09-22 23:58:01 | 防衛・安全保障

◆高性能極めた国産ミサイル群

 陸上自衛隊は冷戦時代、太平洋岸において唯一ソ連と境界を接していた西側の国であり、各種ミサイルが重視、その性能は冷戦後20年を経た今日でも物凄いものがあります。

Simg_1591 陸上自衛隊が誇る最も新しい誘導弾を、中距離多目的誘導弾を紹介しましょう。富士教導団と第3陸曹教育隊に配備が開始されたばかりですが、普通科中隊対戦車小隊に配備されるものです。中距離多目的誘導弾は射程8km、世界で最も新しい世代の対戦車誘導弾です。ミリ波レーダーを搭載し、目標を熱線画像誘導装置で識別もしくはレーザー誘導による複合誘導が可能であり、発射後ロックオン能力があることから可搬式レーザー誘導装置を用いた見通し線外誘導が可能というもの。

Simg_5142 百聞は一見に、とはよくいうもので、連続射撃が可能という事でしたが、富士総合火力演習にて実施した中距離多目的誘導弾連続射撃には驚かされました、次弾発射までEOS-7Dの毎秒7枚という高速撮影能力を持って図った上で初めてわかるのですが0.5秒程度しか要しておらず、此処まで連写可能な誘導弾、特に誘導装置の能力の高さには驚かされ、この中距離多目的誘導弾が量産され、掩砲所に秘匿しての見通し線外射撃を行えば、離島防衛はかなり容易となる、そう実感しました。

Simg_1123 88式地対艦誘導弾、通称SSM-1,このミサイルを南西諸島島嶼部に配備すれば、洋上の制海権のかなりの部分を制圧することが可能となります。尖閣諸島は、八重山列島宮古島から170kmの距離を隔てて居るのですが、この宮古島や石垣島などに88式地対艦誘導弾を配備すれば、この射程は180kmに達するもので、射程だけでは尖閣諸島に接近する艦艇を全て制圧可能です。島嶼部は線量よりも補給の維持が労力が大きいのだと、太平洋戦争の島嶼部戦は戦訓を残しました。補給が維持されなければ軍隊も維持できないという実情は今も同じで、海上封鎖をSSM-1により行われる危険がある限り、南西諸島への侵攻は難しいのです。

Simg_8988 88式地対艦誘導弾、これは冷戦時代にソ連の第上陸部隊を洋上で撃破するために開発された誘導弾で、大雪山など道央に展開し、周辺海域全てを射程に収めるというもの。連隊単位で行動し、4両の六連装発射装置を有する射撃中隊四個を持って行動するため、発射装置は16両、同時に96発を射撃可能で、発射後はミサイルに搭載されたデジタルマップに従い地形に隠れるように目標へ接近、撃破します。こんな装備が何個連隊も置かれており北海道、ということなのですが、沖縄救援隊としてこれら装備が展開すれば、なかなか島に近づけないということ。

Img_8037 航空攻撃により撃破されてしまうのではないか、という高付加価値目標となった88式地対艦誘導弾なのですが、実は冷戦時代にもこの点は考えられており、この為に開発されたのが坑道掘削装置です。三池炭鉱所により開発されたこの装備は、ミサイルを地下に隠す装備で、戦術核を含め各種脅威にさらされていた88式地対艦誘導弾を防護します。八重山諸島等に単会した場合でも地下に掩砲所を構築して秘匿してしまえば、航空攻撃や弾道ミサイル攻撃からの防護が可能となります。

Img_8571 唯一にして最大の問題は、ミサイルを誘導する索敵標定レーダ装置が捜索能力が100km以下、ということです。標定装置も連隊本部に配備されているのみという状況ではあるのですが、部隊以外に潜水艦や哨戒機などからのデータ情報共有が可能とのことですが、無人偵察機などの運用を考える必要があります。なお、88式地対艦誘導弾は後継となる12式地対艦誘導弾への代替が開始されます。こちらは射程が250km程度とされ、島嶼部防衛の切り札的装備としての能力が発揮されるでしょう。

Simg_5929 離島防衛には03式中距離地対空誘導弾のような装備があり、方面高射特科部隊に配備されています。射程は60km程度、低空侵入する航空機への対応能力と限定的な短距離弾道弾への対応も可能とされ、陸上自衛隊では近く巡航ミサイル防衛能力を強化する方針を打ち出していますので、中国軍が運用を開始しているDH-10巡航ミサイルに対する対処能力も有することとなり、国産ミサイル群による列島ミサイル要塞化、というような方式が現実となります。

Simg_1284 これら部隊の展開は陸上自衛隊と航空自衛隊合同の北朝鮮弾道ミサイル事案に対しての沖縄救援隊編成と派遣という実績があり、こんかいもなされることとなります。北朝鮮弾道ミサイル事案に際しては、ペトリオットミサイル部隊と護衛部隊に化学防護部隊が派遣されています。有事の際には沖縄救援隊を編成し派遣する、この実績がありますので、南西諸島有事の際にはこの方針に沿った沖縄救援隊を輸送艦や民間船により派遣することとなるのでしょう。尖閣諸島有事に際しては、我が国がこうした能力を有するというだけで、実施如何に関わらず八重山列島も攻撃対象となり得ますので、部隊を展開させなければなりません。

Simg_6391 このほか、93式近距離地対空誘導弾や96式多目的誘導弾のように高機動車に搭載された機動性の高い装備品が陸上自衛隊にはあります。これらはCH-47J/JA輸送ヘリコプターにより空輸展開が可能ですので、島嶼部防衛に際しての能力はかなりの能力を発揮します。ただ、問題が無いわけでもありません。88式地対艦誘導弾は中隊規模の単独誘導を余り考えていません、これは一定数を集中させる前提の装備であるから、標定装置が元々多くないのです。また、93式のようなそうびも師団対空戦闘システムとの連携が前提です。

Simg_5702 これら装備は、連隊戦闘団が師団や旅団の一員として運用することを念頭に置き装備されています。そして師団対空戦闘システムは分散運用を想定していません。このほかに、特科火砲も対砲兵戦を展開するには情報中隊の支援が不可欠ですね。中隊規模での分散戦闘を師団や旅団のネットワークから省く場合これら装備の能力はかなり制限されてしまいますが、まさか、中隊ごとで任務に当たる際に一個中隊に通信中隊をつけてやるわけにもいきませんので、独立運用のありかたを考えてゆくことも今後の課題でしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望⑤ 有事にはサービス停止の危惧

2012-09-21 23:24:29 | 防衛・安全保障

◆情勢悪化理由にサービス停止という事例

 防衛産業は国内基盤を有している場合、有事の切迫した状況下においても海外企業よりもサービス維持の余地が大きい、この点を一つ示してみましょう。

Img_2653 これは例えば、の話なのですが、我が国が将来引き輸出三原則を緩和し、防衛装備品が順調に海外へ展開できた、という仮定での話です。防衛装備品の本体以外に整備支援契約を締結することが、精密装備を含む場合多いのですが、販売したA国が近隣諸国との間で武力紛争に巻き込まれたとしましょう、A国国内がB国から爆撃に弾道弾攻撃から陸軍侵攻に海上封鎖と攻撃を受け被害が出ている中、当然外務省からは渡航中止勧告が出され、場合によっては自衛隊が邦人救出任務を実施するまで悪化したとします、防衛産業はA国での整備支援を維持することは現実的に可能なのでしょうか。

Img_2035 A国防衛軍は、今引き上げられては肝心な時に動かない、何とか留まってほしい、と嘆願し、しかし日本国政府は退避を勧告し輸送機をチャーターしている状況、こうなってしまっては、あらかじめ契約を締結する場合に非常時条項を明記しておき、これに従ってサービス要員を退去させるほかないでしょう。気合いのはいったブラック企業でも紛争地において人命が失われる可能性が高い中で、会社のために残り、そこで使命を果たせ、という事は出来ません。軍隊は命令に基づき動き、企業は契約に基づき活動する、その端的な事例と言えるもの。

Eimg_6470_1 この喩えですが、日本の防衛装備品を海外の防衛産業に依存した場合、そしてA国を我が国に置き換え、日本有事の際に我が国へ弾道ミサイル攻撃が行われ、実際に被害が出ている状況下において海外装備品の整備基盤を海外に依存している場合、情勢悪化を理由にサーボビス要員が引き上げてしまい、その装備品の稼働に影響が生じる可能性があるわけです。もちろん、莫大や違約金も支払われる余地が残るのですが、違約金ではなく防衛装備品は平時よりも有事に稼働が重視されるもの、補填は出来ません。

Img_9097 2004年10月、サウジアラビア国内でテロ事件が発生、二名の外国人が死亡し数名が重軽傷を負う事態となりました。犠牲者はBAEシステムズのサウジアラビア派遣社員で、サウジアラビア軍に納入された装備品の後方支援を担当したサービス要員で、このテロはBAEシステムズ社員を標的としたテロであったと後に判明しています。これによりBAEシステムズは必要な安全措置が採られない地域での支援を行う事への難色を示しましたが、これが戦時であればユーロファイタータイフーンを始めかなりの装備品の運用に影響が出た可能性があります。

Img_2816 実はこうした事例は他の場合にもありまして、メーカー名は伏せられていますが2003年にペルシャ湾で発生したイギリス海軍の航海用レーダー故障事案に対し、レーダーメーカーと整備支援を行う協力会社はペルシャ湾での修理は社員の派遣を含め不可能である、として拒否した事例がありますし、アフガニスタンでのISAF派遣国の航空機部隊に対し、実施される整備支援が制約されているという事例があるわけです。特に専守防衛を掲げ国土戦を想定する日本では、海外の整備支援を受けるという事は相当の勇気が必要ではないでしょうか。

Img_5280 国内企業ですと、まあ、工場がミサイル攻撃を受けて操業停止、という可能性は残るのですが、違約金を支払って従業員を海外退避、という可能性はかなり低いでしょう。自国政府から海外退避命令、というのも、まあ、小説の日本沈没のような状態でも想定しなければ中々現実的には考えられません。特に日本有事、という事なのですから、日本企業であれば、今後日本での営業を継続するという意思があるならば、契約以上の、勿論軍隊のような命令というようなところまでは法的強制力を欠いているとしても、一定の水準での支援は期待できる。

Oimg_5098 まあ、更に実感できる事例を出せば福島第一原発事故と東京電力の関係です。電力自由化が求められている中で、もし福島第一原発事故が発生した際に原発を管理している企業が東京電力ではなく海外の企業だった場合はどうなるでしょうか、その企業の母国政府が退避勧告を出し、メルトダウンが高い確率で発生するとした場合に、東京電力ほど必死に作業を行っただろうか、という可能性の話です。やっただろう、という視点に賛同するには2010年メキシコ湾原油流出事故とその原因となったイギリスBP社の対応を考えてしまいます。

Img_3088 それならば、有事の際に故障しても必要な数を確保できるように予備の装備を大量に備蓄しておけばよい、という論点はいただけません。海外製装備が国産装備よりも安価であるのだから導入する、という視点で物事を考えているという事なのです、安いのだ、しかし稼働率が有事の際に国産装備品の半分程度になってしまうので、二倍の数を導入します、となっては、例えその海外装備品が国産装備の半額以下であったとしても、維持費も必要となりますし、平時には運用要員も必要、結局は高くついてしまう、これでは意味が無い。

Img_1659 南アフリカ共和国がこの視点を考える上で非常に明快な事例を提示してくれています。人種隔離を行うアパルトヘイト政策により海外からの装備品の供給を絶たれると共に整備支援も受けることが出来なくなった南アフリカですが、周辺国との緊張関係が続いており各種装備品の稼働率を低めることはできません。そこで独自の装備体系を自力により整備することとし、今では世界有数の装備を国産開発するに至っています。イスラエルも一部に似た経緯で国産率を高めています。この点で我が国も考えるところがあるのではないでしょうか。

Simg_6527 我が国は専守防衛と日米同盟を除く他国との同盟条約を排する独自の防衛政策を採っています。専守防衛は必然的に国土が戦場となる前提を有しているわけであり、同盟条約を制限する政策は共通運用基盤のような防衛装備品の海外での整備の可能性を排除してしまっているわけなのですから、独自の政策を採る以上、有事における装備品の稼働率を維持するためには、やはり独自の整備基盤を有して防衛力を維持する必要が出てきてしまうということ。有事の際に、国土が戦場となる想定下において、国内防衛産業とは防衛力の一部に他ならないという事がわかるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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