◆嘉手納よりも防衛用航空機発着が多数
美しい海を背景に発着する航空機、素晴らしい。前回の21日掲載分の続き、那覇基地の写真と共に。
E-2C早期警戒機の着陸、新編された第603飛行隊の機体だ。沖縄と北海道はいつ行っても新鮮で、沖縄はオリオンビールが染み透るアメリカンな料理と泡盛の激しさに相方を務める郷土料理と大らかな急ぎ過ぎない時間の営みが嬉しいところ、その沖縄は日本の玄関として中国の軍事圧力に曝される最前線の国境であることをいろいろと考えさせられる。
那覇の方が被写体が多いね、P-3Cの着陸とともに欧州からの自衛隊&米軍機撮影ツアーに訪れた一行の方からお教えいただいた、なんでも朝一で嘉手納基地に行ったがF-15が全然いなかったので、那覇に転進したとのこと。一機もいない方が全部上がっているのか、と違う意味で不安になりますが。
中国軍が南西諸島周辺、特に中国大陸からの軍用機接近が沖縄県北部と鹿児島県島嶼部に対し異常増大している数年間の緊張状態に対し、民間の観光客などの往来は多く、当たり前ですが日中韓に或るのは軍事的緊張の範疇であり、武力紛争という状況には陥っていません。
もっとも、普段の歩道で沖縄が報じられる際に少なくない割合にて基地問題として現地での基地負担が住民へのしかかっている、という視点から報じられるものであるため、そもそも基地は伊達や酔狂で存在するのではなく、相応の必要性があっての抑止力のための配置、という視点が作為か不作為か抜けている。
他方で日本への中国からの圧力は尖閣諸島を念頭に軍事的圧力を掛けているという実情から誤解されがちですが、中国軍機への対領空侵犯措置任務は尖閣諸島周辺は例外というほどに少なく、実際には奄美大島西方沖に向けて飛来していることが防衛省により明らかにされています。
実際には鹿児島県島嶼部に向けられている中国軍機の飛行、沖縄県南部の尖閣諸島への中国大陸からの接近は台湾の中華民国空軍からの要撃を受けるための措置と考えられますが、この現状を受けここ数年間沖縄県で実施されている自衛隊統合演習は本年、沖縄ではなく圧力を受けている奄美大島とその周辺で行われるとのこと。
その昔、在大阪神戸米国総領事で現在国務省本省の要人になられた方の講演会にて在沖米軍や在日米軍の位置づけについて米国政府の率直な視点をお聞きしたところ、利益や価値観を共有できる意味で日本はアメリカのもっとも重要な相方であり、この関係を維持し続けるため、と御話しいただきました。
これは言い換えれば、日本が周辺国の軍事圧力により政治的独立性を喪失し、アメリカに敵対する勢力に組み込まれることを警戒しているという意味であり、強力な競争相手でありライバル関係となるんは歓迎だが、敵対関係は望まず、そのために日本のシーレーンや国土への脅威を日米共に抑止する必要がある、というもの。
対領空侵犯措置任務へ緊急発進したF-15二機がもどってきた、ローリングコンバットピッチを採り着陸態勢へ移行してゆきます。日本との友好関係と同盟関係に依拠した相方としての日本の重要性は、仮に日本が言論団体買収や市民運動等を装った工作活動と軍事行動等により周辺の海洋秩序への軍事的変更を試みる勢力により傀儡化した場合、一挙にアメリカは西太平洋の安定から得る共益を失うことになり、これを避けたいのでしょう。
そこでの在沖米軍の位置づけですが、フィリピンや台湾という日本の周辺国への中国からの軍事的圧力が軍事行動に展開した場合、自衛隊はかりに中華民国政府が求めた場合でも独力で台湾に介入し独立を維持する行動は採れません。ここを置き換える要石という位置づけが米軍、というかたちです。
沖合ではパラセーリングが行われる観光地ですが、ここをアメリカが重要視する点は以上の通りの理由があり、もちろん、自衛隊を大幅に増強し、アジア地域の秩序安定に寄与させる独自の打撃力を整備するという視点で憲法や自衛隊法を切り替えるという選択肢は、理論上有り得ないわけではないのですが、日本の現在の世論には馴染みません。
一方、自衛隊の在り方ですが、ここまで緊急発進が増大し、加えて中国軍の保有する巡航ミサイル数が千数百へと増大し、中距離弾道弾脅威の増大が進む現状を見ますと、対応は現状のままでは不十分です。特に戦闘機数が不十分で、可能ならばF-35導入までの間にF-16EかF/A-18E,もしくはJAS-39等を2個乃至3個飛行隊ほど増強することが可能ならば望ましい。
E-2C早期警戒機、格納庫から展開してきました。現状の予算を考えますと、戦闘機の増勢は非常に難しく、重ねて機種の増大も望ましくはありません。すると行い得る施策ですが、まず、戦闘機数を維持しつつ、戦闘機1に対し2以上の搭乗員と整備員を確保し、一日当たりの作戦飛行回数を増大させる、イスラエル空軍が強大な周辺国空軍へ対抗した方式の施策が代替案として挙げられるでしょう。
更に一つは、基地機能の強化をはかることで、航空団隷下の飛行隊を一つの基地へ集約させず、二個飛行隊基幹と6機から10機前後の分遣隊に分け、もしくは一個航空団の40機ある戦闘機を現状の2個飛行隊基幹から飛行隊定数を削減し3個飛行隊にあらため、千歳と丘珠、三沢と八戸、百里と横田、小松と小牧、築城と芦屋、新田原と鹿屋、那覇と嘉手納、と分散する方法も考えられるやもしれません。
航空自衛隊には過去16機基幹の飛行隊や24機基幹の飛行隊がありましたので、航空団司令部の置かれる基地へ24機の飛行隊を、分遣隊の基地へ16機の飛行隊を置き、各基地に可能な限り掩体を構築し基地防空隊を置く、米空軍によれば一つの基地を機能喪失に追い込むためには15発の巡航ミサイルが必要となるとしていますので、基地が分散すればその分攻撃側が困難となります。
もちろん、こうした施策を行うには戦闘機定数は転換しなくとも対応できますが、維持費と燃料消費は増大、操縦要員に整備員から基地防空隊員などなど大幅に増大します。他方、この方式は要員に余裕をもたせますので、有事の際にはアメリカからF-15CやF-16Cの緊急貸与を受ける事で防衛力を増大、この方式もイスラエル方式ですが、可能です。
防衛力強化といいますと、装備定数の増大が手っ取り早い印象ですが、後方支援能力を軸に運用能力と基地機能を強化することで持てる装備の能力を現状以上に引き出せる可能性はあるのですが、色々と考えつつ、帰りの飛行機の時間が近づいてきました。
旅客機機内から緩和された電子機器離着陸時使用を活かし、着陸してきた海上自衛隊のYS-11を撮影です。嘉手納よりも那覇の方が防衛用航空機発着が多数、海外の方からの率直な話を思い出しつつ、最前線となっているのは沖縄だが、軍事圧力の対象は日本国全体ということが前提で防衛について考えさせられることは多い、こう考えつつ沖縄を後にしました。
北大路機関:はるな
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