北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十六年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.11.01・11.02・11.03)

2014-10-31 22:38:42 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 Weblog北大路機関をご覧いただきありがとうございます。既報の通り来月末のOCNブログサービス終了とともにWeblog北大路機関は移転を予定しています。

09thimg_0035_2  移転は来月中旬を予定し、新しい移転先としまして、gooブログへの移転を念頭に現在調整中です。2005年7月29日のWeblog北大路機関運用開始以来実に9年間、多くのご高覧とご意見を賜りました。移転先でもどうかよろしくお願いいたします。詳細につきましては第二北大路機関にて随時お伝えいたします。

Gimg_0854 今週末の自衛隊関連行事ですが最大のものとしまして入間基地航空祭が予定されています。都心から西武線で一本、中部航空方面隊司令部が置かれる基地は来場者30万という日本最大の航空祭で会場は大変な混雑となりますが、端の方や保存展示機区画はそれほどでもなく、話題のために足を運ばれてみてはどうでしょうか。

Kimg_84440 陸上自衛隊関連では第13旅団創設記念海田市駐屯地祭が行われます。陸上自衛隊初の旅団として第13師団より改編された部隊で、長い日本海沿岸の海岸線警備等の課題を前に偵察隊や情報能力の強化に努め、山陽山陰地区の防衛警備及び災害派遣を担当する旅団です。

Fimg_6687 小倉駐屯地祭、第40普通科連隊普通科連隊の駐屯地です。第4師団には本年度より最新装備である中距離多目的誘導弾の配備が開始され、朝鮮半島有事の際には半島に最も近い師団の普通科連隊としてその能力強化に努めています。

Himg_3040 峯岡山分屯基地祭、千葉県最高峰である愛宕山山頂に置かれるレーダーサイトを運用する第44警戒隊の創設記念行事です。レーダーサイトの一般公開は航空祭のような派手さはりませんが、装備品展示やレドームを比較的近いところから見る事が出来、場合によっては航過飛行や救難飛行展示なども行われます。

Img_6658 海上自衛隊関連では第1術科学校自衛隊記念日行事として、記念式典に観閲行進や祝賀飛行が行われるほか、 2014みなと八代フェスティバルとしまして熊本県八代港にて 護衛艦じんつう一般公開が行われます。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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榛名防衛備忘録:航空自衛隊E-X,次期早期警戒機に関する幾つかの考察②

2014-10-30 23:30:33 | 防衛・安全保障

◆E-767導入と現在のE-X選定へ

 E-2CからE-767へ。航空自衛隊の空中警戒航空機の転換について。

E2img_9076 航空自衛隊は滞空時間が10時間を超え、加えて地上の管制設備の支援を受けず作戦能力を自己完結させた早期警戒管制機の導入を1980年代末に決定します。そこで自衛隊が導入を期したのはE-3早期警戒管制機でした。日本経済は好調な成長を続けた1980年代、この状況を背景に任務拡大を視野に含めれば必要性が高まったE-3が取得できる程度の経済力があった、というもの。

E2img_3092 E-3の導入を期した自衛隊ですが、E-3はボーイング707旅客機へAPY-2レーダーを中心とした警戒管制システムを搭載したものであり、1980年代にはボーイング社が原型となるボーイング707旅客機の生産を終了してしまいます。現在の最新型はボーイング787ですが当時の最新がボーイング767、単純計算で世代交代を考えればその時点直前まで707の生産が続いていたという方が不思議でした。

E2img_8956 ボーイング社は代替案として当時新鋭でわが国も生産へ参画していたボーイング767を原型とした新型早期警戒管制機を示します。搭載機器はE-3と同型、E-3も初飛行から時間を経ていましたが、アメリカ空軍の空中警戒管制能力の重要性認識を反映しほぼ毎年アップデートが行われるため器材と性能面ではE-3のシステムを超える装備品は当時、厳格には現在もありません。

E2img_0004  707に搭載されていたものを767へ適合させることは新型機の開発を意味し、開発費を全て日本側が負担する事を示したのですが、幸い機内容積は707の倍以上を767は有していたため、余裕があり、長時間運用へ備えての休息区画の余裕等を含め開発することが出来ました。取得費用は550億円です。当時最新の汎用護衛艦むらさめ型は650億円、参考までに。

E2img_3230  こうして航空自衛隊はE-2C早期警戒機とE-767早期警戒管制機を同時に運用するという世界で唯一の空軍となりました。具体的にはE-767が拠点運用方式、E-2Cが進出し前線基地より運用する方式です。E-2Cを運用できる母艦があればE-767を導入せずともシーレーンでの警戒管制が出来たのかもしれません。

E2img_8295  荒唐無稽な案ではありますが、1980年代に自民党部内では護衛艦隊の4個護衛隊群を7個護衛隊群に拡大し、ヘリコプター搭載護衛艦に代え4万t程度の航空母艦を、という勉強会はあった、と仄聞しますが、現実的ではありません。何と言いますか早期警戒機と航空母艦では、母艦の方が高くつく。

E2img_3631  もっとも、高名な識者の中には早い時期からE-767の取得を決定した時点でE-2Cを中古機として海外に有償供与する方式をとれば、その費用を以てE-767を8機程度まで取得できたのではないか、という声があります。しかし、武器輸出三原則の観点から不可能であり、その分複数機種を運用することで防衛費に無駄が生じる事と武器輸出三原則緩和をもっと比較すべきだったのでは、とも。

E2img_8438  更に、日本が1970年代に多くの予算を有していれば、E-3を最初から取得できた、ともいえるのですが、はつゆき型護衛艦2.5隻分、いしかり型護衛艦5隻分、仮に4機のE-3を取得すれば、はつゆき型護衛艦5隻分、いしかり型護衛艦10隻分が飛ぶこととなり、1973年の石油危機以降高度経済成長がひと段落し物価高騰にあえぐ我が国では現実的ではありません。

E2img_8888  閑話休題。そして今回、1981年より導入を開始したE-2C早期警戒機が旧式化し、加えて南西諸島周辺での中国による軍事圧力が増大したことを受け警戒管制能力の強化が喫緊の課題となった反面、既にE-767や搭載するAPY-2レーダーの生産が終了し取得できなくなったため、新しい早期警戒機の導入が必要となった訳です。

E2img_0069  航空自衛隊が2000年頃までにE-767の増備を希望していたならば、レイセオン社等E-767のレーダー機材生産企業がAPY-2の生産継続を決意した可能性はありました。結果論ですが米空軍もE-3の後継機計画であるE-10が2000年代に頓挫し、E-3のシステムを更に近代化を継続するためこのプログラムに関与することでE-767のAPY-2は当面第一線に通用するでしょう。

E2img_3603  近代化改修ですが、E-767は一回当たり100億円以上の能力向上改修を数年おきに実施しています。その都度、処理能力が向上しレーダー情報から探知できる航空機がステルス性の高い目標に対してもその都度対応し、同時処理能力も毎回倍程度に向上しており、この価値は大きい。

E2img_9221  蛇足ながら、実のところ外側が古いのみ、このあたりアップデートに非常な費用を掛けるのは周辺国では理解されないのですが、日米ではF-15やE-767/E-3等で日常的に行われています。これは改修を受けるだけの機体容量の余裕があるためだる一方、外見が古いため旧式機と勘違いする周辺国もある模様で、このあたり抑止力の観点からの留意事項ではありますね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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九州南西諸島で平成26年度方面隊実動演習開始、北部・東北方面隊区からも協同転地演習

2014-10-29 23:21:23 | 防衛・安全保障

◆島嶼部侵攻対処訓練を主眼

 防衛省によれば27日月曜日より自衛隊は平成26年度方面隊実動演習開始を開始した、とのこと。

Fimg_6004  この演習は西部方面総監番匠幸一郎陸将を訓練担任官とし、西部方面隊、中央即応集団、第2師団、東北方面特科隊等から人員16000名、車両3800両、航空機80機を集中し運用することで、方面隊の各種事態における対処能力の向 上を図る事を目的としているもの。

Ndbimg_0791  九州及び南西諸島に対し軍事的圧力がかけられたとの想定ものとで同地域を担当する西部方面隊を主力とし、防衛出動を展開するとともに中央および他方面隊管区よりの部隊を以て統合任務部隊を編成し、迅速な対応を以て事態の拡大を阻止する想定です。

Gimg_8174  加えて来月初旬から中ごろにかけ平成26年度日米共同統合演習キーンスウォード15が南西諸島を含めた我が国周辺海空域において予定されており、日米40700名の参加を以て展開され、平成26年度方面隊実動演習はこの一端を構成することとなるでしょう。

Pimg_4205  演習の概要として、島嶼侵攻対処訓練、兵站施設の開設訓練、航空部隊の展開訓練、射撃訓練等が挙げられ、西部方面区の演習場、自衛隊施設等を演習区域とし27日より来月26日までの一か月間、訓練が展開されます。

Aimg_0625  西部方面隊に加え、東北方面隊が実施する協同転地演習と北部方面隊が実施する協同転地演習が同時に行われ、九州南西諸島での有事に際し、北部方面隊及び東北方面隊の部隊が機動防衛力を発揮し緊急展開、支援に当たる事は特筆されるべきでしょう。

Abimg_0906 北部方面隊協同転地演習として、北部方面総監田揮司良陸将指揮の下第2師団の1コ普通科連隊基幹部隊が人員1000名と戦車3両及び自走榴弾砲3門を含む車両320両、航空機6機を以て九州の大矢野原演習場及び日出生台演習場展開します。

Img_8997 東北方面隊協同転地演習も同時に展開され、東北方面総監 松村五郎陸将の指揮下で南西諸島の奄美大島及び空自福江島分屯基地へ 第4地対艦ミサイル連隊2個中隊及び第5高射特科群1個中隊の人員230名と車両100両を緊急展開させ、長距離機動に必要な統制調整能力の向上を図るとのこと。

Img_9725_1 本年の西部方面隊実動演習は、九州に加え鹿児島県島嶼部である奄美大島や長崎県島嶼部である福江島を舞台として展開されます。これは近年の実動演習が九州と共に沖縄県を中心に展開していたのに対し、中国の軍事圧力が鹿児島県島嶼部へ及び始めている現状を反映させたものと言えるでしょう。

Img_5383 過去数年、自衛隊創設以来の規模で対領空侵犯措置任務緊急発進が増大していますが、その増加部分は中国機によるもので、その増大数は中国が対外的に奪取を公言する沖縄県南部ではなく、鹿児島県島嶼部に向かう経路を採っている統計データが防衛省により発表されています資料より読み取れます。

Img_0435 これは単純に見た限りでは、中国の標的となった沖縄県南部への接近が隣国中華民国空軍の台湾からの緊急発進を受けるため迂回せざるを得ない、との見方が出来ると共に、仮に沖縄県への侵攻を企図する際には九州を含めた自衛隊主力部隊の増援を封殺する必要があり、鹿児島県へ圧力がかけられているという見方もできるわけです。

Gimg_1048 鹿児島県島嶼部への限定着上陸が阻止できなければ九州から沖縄に掛けての増援展開が不可能となり、シーレーン海上交通路が途絶すると共に奪取された当初が更なる我が国中枢攻撃の策源地となり、我が国は太平洋戦争末期以上の緊迫した状況に追いやられる。

Img_2923  この状況を防ぐため、今回の西部方面隊実動演習では、九州の演習場を離島に見立てての例年通りの島嶼部防衛訓練を行うと共に、南西諸島の重要地域だる奄美大島へ地対艦ミサイル及び地対空ミサイルを展開させる体制を演練することとしたのでしょう。

Iimg_0776  歴史上、万全の準備が整う地域は戦場となりにくい実情がります。太平洋戦争における沖縄戦についても、台湾か沖縄へ侵攻する米軍側の意図に対し沖縄の第32軍より第9師団が台湾へ抽出されたため、手薄となった事が沖縄戦に繋がっています。

Miimg_7039  一方で、憲法上の制約から自衛権行使の発動を著しい自制下に置いている我が国は、第一撃を甘んじて耐えなければならない状況下にもあり、この点で第一撃を受けるまでの準備態勢の示威、同じく憲法上の要素から制約される策源地攻撃能力に依拠した、開戦即本土決戦という非常に不利な現況で、即応体制の誇示をもってのみ抑止力を示せるという状態にあるため、この種の演習を継続的に展開せねばなりません。

北大路機関:はるな

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榛名防衛備忘録:航空自衛隊E-X,次期早期警戒機に関する幾つかの考察①

2014-10-28 22:59:01 | 防衛・安全保障

◆自衛隊が80年代に早期警戒機を導入するまで 
 最初に訃報、元タイ大使で外交評論家の岡崎久彦氏が亡くなられました、謹んでご冥福をお祈りいたします。
Gimg_0046_1  さて。次期早期警戒機について、本格的選定が始まるとの報道が幾つか出始めてきました。防衛省は来年度予算概算要求や中期防衛力整備計画に新早期警戒機の取得を盛り込み、早ければ年内に指針を示す、とのこと。概算要求の項目で触れた話題ですが、そこで今回から数回に分け、早期警戒機の位置づけや運用の歴史、更に航空自衛隊の新早期警戒機の候補について掲載してゆくこととしましょう。
Simg_8712_1  早期警戒機、自衛隊では空中警戒機と呼称されますが、航空自衛隊は1976年のMiG-25函館亡命事件発生に際し、低空を飛行するMiG-25を地上のレーダーサイトが捕捉し続けられず千歳基地を緊急発進したF-4戦闘機に対し適切な誘導を行えなかったことを反省として導入されています。
Img_2653a  レーダーの電波は直進します。電離層に反射させより遠距離のものを大まかに把握する技術がありますが、基本的に電波の直進性から反射波を標定するのがレーダーであるため、レーダーは山頂など高い標高の位置に配置されるのですが、地球は丸い為地平線の内側を極超低空飛行する目標は地平線を超えない限り探知できない。
Nimg_8340  航空自衛隊の防空監視所に置かれるレーダーは概ね探知よりが450km以上といわれ、近年は弾道ミサイル等を700km以上の距離を隔て探知するのですが、電波が直進する事は不変であり、それならば低空飛行し接近する目標を掃気に感知するにはより高い場所にレーダーを置けばよい、この視点が早期警戒機導入の背景です。
Img_8956  航空自衛隊は長時間を飛行し要撃管制などの展開へ管制官を搭乗させ適切な情報処理と共に行うE-3早期警戒管制機の導入を希望しましたが、1970年代の我が国に在って一機300億円に達するE-3Aの導入が希望されましたが取得費用の面からあまりに降下であり実現していません。
Oimg_8811  E-3は最低でも一機300億円を超える航空機ですが、1977年度の防衛予算では満載排水量4000t級の護衛艦はつゆき型が117億円にて要求されており、小型護衛艦いしかり型が65億円、当時としては世界的にも大型フリゲイトといえる護衛艦の2.5倍で、小型護衛艦ならば2個護衛隊の所要数に匹敵する費用をE-3は要していました。
Gimg_5245  もちろん、航空自衛隊はローテーションを組み常時1機を上空大気とする運用体制を構想していましたので、1機ではローテーションを組むことは不可能であり、整備予備や待機と交代の機体を想定すれば一箇所を空中警戒に当てるだけでも最低4機が必要、日本海上空と北海道上空を警戒するには最低でも7機が必要となります。
Onimg_2996  そこで航空自衛隊はE-2C早期警戒機の取得方針を定めます。E-2Cは米海軍が空母艦載機として開発した小型の早期警戒機で、E-3のように脅威情報標定や要撃管制等の能力は地上へのデータ送信により地上に任せ、非常に狭い為飛行時間も空中給油を受けない状態でのE-3の半分以下となりましたが、取得費用は三分の一にて対応出来ました。
Eimg_1967  E-2Cは、空母艦載機であったこともあり、航空自衛隊の要撃管制システムへの編入にプログラム改修を筆頭として時間を要し、その運用体制が完全に確立し完成したのは導入後十年を経てのものですが、航空自衛隊は13機を取得、アメリカ海軍を除けば二桁のE-2Cを導入した初めての空軍となります。
Eimg_3302  航空自衛隊は当初8機のE-2C取得計画を立てましたが北海道上空及び日本海というような二か所以上での警戒を想定し、取得数は11機へと拡大し、更に予備機を加え現在では13機のE-2Cを導入しました。E-2Cは青森県三沢基地へ配備、航空攻撃から重要な早期警戒機を守るためシェルターに1機1機を格納しています。
Img_6610  こうして三沢基地は航空自衛隊第三航空団に米空軍のF-16航空団や航空自衛隊の北部航空方面隊司令部をもつ自衛隊最大規模の基地となり、戦闘機だけで日米80機が展開、嘉手納基地の50機や厚木基地の空母航空団の50機を越え、其処に二桁の早期警戒機が配備されることで航空基地としては日本最大の規模を有することとなりました。
Himg_3152  しかし、周辺事態対処などが求められる1990年代を見据え、航空自衛隊の任務範囲拡大やシーレーン防衛への航空自衛隊任務増大等を俯瞰した場合、航空母艦を持たない日本が本土の基地よりE-2Cを運用する事には限界がありました。これが現在のE-767導入へと繋がった形です。

北大路機関:はるな

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平成27年度防衛予算概算要求概要⑲・・・自衛隊の特殊武器防護能力拡充Ⅱ

2014-10-27 23:10:19 | 防衛・安全保障

◆部隊防護から国民保護の特殊武器対処へ
 厚生労働省によれば本日夕刻、羽田の東京国際空港にてリベリアからの帰国邦人に発熱があり、エボラ出血熱を想定し対応中とのこと。さて、前回、人員等除染能力に従来の人員除染と装備品除染へ加わる形で様々な能力が付与されるとしました。
Oimg_2782  特に国民保護の観点から能力の強化が為され、精密機材除染として新たに付与される能力は従来の特殊武器攻撃難い人除染という段階を踏んでの能力を以て部隊行動能力を維持し敵の化学剤生物剤攻撃に続く企図する行動を撃破無力化するという段階から、国民保護能力を期した救助活動を想定したもの、と説明しました。
Oimg_5095  歩行不能者除染、並んで新たに付与される能力は化学剤や生物剤により歩行不能の重篤状態となった人員救護を目的とするものです。歩行不能者の救出には微塵装備などでの作業を行う研究予算が今年度概算要求に盛り込まれていましたが、この研究と開発が一つ進むかたちです。
Himg_1247  歩行不能者、戦闘時に化学剤攻撃を受けての部隊での発生であれば部隊内で防護準備を完了した要員が人力搬送し、対特殊武器衛生機能を有する部隊へ中和剤や解毒剤等の治療を施し、装備によっては化学剤や生物剤状況下において十分行動できるため戦闘を継続します。戦車や普通科及び特科と施設科はこうした能力を持っています。
Phimg_1256  しかし、一般国民の居住地域への特殊武器攻撃が行われた際には、その地域は例えば弾道ミサイルやゲリラコマンドーによる攻撃に曝された際、適切な対処能力を持っているとは中々考えられません。従って、防護能力を有する要員により即座に搬送することは難しく、消防警察の能力でも限界は否めないでしょう。
Img_4450  ここで自衛隊は、汚染地域へ防護装備を有する普通科部隊をはじめとする防護部隊を展開させ、汚染地域での致死性物質が充満している地域ではトリアージの関係上優先度は下がる事となりますが、その外郭に展開する避難地域において救急措置及び応急治療を行うとともに安全圏へ搬送することとなるかたち。
Mmimg_2023  現在の装備でも個人防護機材は、少なくとも補給処備蓄分を含め全員に行き届いており、防護服は十回程度の除染洗濯により化学剤防護に必要な繊維劣化が生じるため長期的には不十分という指摘も為されるのですが、2001年の9.11米本土同時多発テロにおける米軍州兵のように全員分の防護服がそもそも無い、という状況ではありません。
Gimg_5354  しかし、現在の防護装備を以てしても対応できないのは、安全圏へ搬送する際の除染です。人員に対する除染は自衛隊では個人用除染装置、正確には中和剤を含む温水シャワーを高圧で使用することにより中和し無毒化しますが、今回想定する歩行不能者は自力での中和能力を有していないというところが相違点として大きい。
Img_4393h  また、自衛隊の師団や旅団は数千名規模ですが、化学剤などの汚染が大都市に対して行われた場合、師団や旅団は隷下の連隊戦闘団が100km四方程度の隊区をもち機動運用することとなるのに対し、大都市では1km四方に一個旅団や一個師団全員に脾摘する市民が居住することは珍しくありません、これは何を意味するか。
Fimg_6253  それは避難地域から搬送される歩行不能者の数が現在の自衛隊が自隊行動を維持するための特殊武器防護能力が想定する除染規模をはるかに上回っている可能性があるという事です。神経剤のような攻撃用化学兵器は短時間で分解しますが、糜爛剤などの地域汚染剤は付着すれば数週間威力を出し続けます、此処が脅威の大きなところ。
Img_9799  化学剤が歩行不能者衣服などに付着し、そのまま後方の医療機関などに搬送された際、衣服についた微量の化学剤であっても皮膚に触れる事で重篤な状況を引き起こします。もちろん、攻撃用の神経ガスよりは糜爛剤は毒性は低いのですが持続するため、自衛隊はじめ各国軍隊では靴底や車輪部分の除染を念入りに行うのはこのため。
Img_1905  したがって、歩行不能者を大量に受け入れた場合の組織的な大量の歩行不能者除染を行う能力が歩行不能者除染には含まれます。搬送と除染、歩行不能者除染とはこうした現在の自衛隊に無い大量の除染を行うための能力整備である訳です。もちろん、この種の能力を消防が整備されれば、人員規模の面から心強いのですが、現状では致し方ないところでしょう。
Fsimg_5972  またもちろん、この能力は福島第一原子力発電所事故型の対応にも寄与する能力です。福島第一原子力発電所事故では高射性降下物圏外へ移動する際中に被爆された方が居ます。被ばく線量は即座の人員除染を必要とするほどのものでは幸いありませんでしたが、我が国がエネルギーを自給できない島国である以上、また周辺国に核開発を行う国がある以上、必要な能力整備です。

北大路機関:はるな

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豊川駐屯地創設64周年記念行事(2014-10-04)PowerShotG-16撮影速報

2014-10-26 23:27:55 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆豊川駐屯地祭遅れながらの第一報

 本日は今月4日に行われました豊川駐屯地祭の様子を。

Ciimg_4072 豊川駐屯地は愛知県の静岡県境にほど近い豊川市、有名な豊川稲荷近くに駐屯地を構え、第10特科連隊、第10高射特科大隊、第49普通科連隊、第6施設群、などが駐屯しています。愛知静岡県境は同時に中部方面隊と東部方面隊の境界でもあり、災害派遣などを考えますと重要な駐屯地です。

Ciimg_4077 第49普通科連隊の観閲行進、豊川駐屯地祭は名古屋の友人のお誘いがあり、その方とは小松基地航空祭にて合流に失敗したことから久々に並んで撮りましょう、と展開へ。豊川駅前にて集合し、3名にて撮影位置を考え、結果観閲行進を最も撮りやすいところにしよう、と。

Ciimg_4091 第1中隊の高機動車、中隊は自動車化された機動力を以て狭隘地形の国土に特化した防衛戦闘を可能としています。第49普通科連隊は第10師団の師団改編に伴う2004年3月に編成完結し、これをもって師団は4個普通科連隊を基幹とした戦車4個中隊と特科5個大隊の即応近代化師団へと改編が成りました。

Ciimg_4098  第2中隊の高機動車。連隊は即応予備自衛官を基幹としたコア化編成をとり長らく第10師団の一員として運用されてきましたが、今年3月の師団改編を以て中部方面混成団隷下に移動、同時に重装備の効率化へ旧式化する79式対舟艇対戦車誘導弾12基を有した対戦車中隊を廃止、今に至る。

Ciimg_4103 第4中隊の軽装甲機動車、連隊は連隊本部及び本部管理中隊、第1中隊、第2中隊、第3中隊、第4中隊、重迫撃砲中隊、を基幹とし、4中隊のみ軽装甲機動車を運用中です。軽装甲機動車は四輪駆動、一個小銃班を2両に分乗させ、機銃と対戦車火器等を機動運用し、運動戦や進出掩護等に当たります。

Ciimg_4110  中部方面混成団へ移管となった連隊ですが、即応予備自衛官基幹編成は維持し、教育団を拡大した方面混成団隷下に置くことで即応予備自衛官教育訓練を一括化し第一線師団へ現役人員のみを充当し即応性を増すと共に、隷下の中隊を豊川駐屯地に集約している運用を改め、師団管内の幾つかの駐屯地へ移駐させました。

Ciimg_4116  重迫撃砲中隊の120mm迫撃砲RT及び牽引車。中隊の分散は集合運用を考えますと不利ではありますが、中隊単位にて師団普通科連隊駐屯地へ分散させることで、有事の際に普通科連隊が隊区を越えた機動運用を行う際、即応予備自衛官基幹中隊を方面混成団隷下にて召集し訓練態勢に移行することで、展開した普通科連隊は後詰めの部隊を持つことが出来、この視点から転換されたのでしょう。

Ciimg_4127  第10特科連隊。こちらも三月の部隊愛編の際、5個大隊基幹から3個大隊基幹へと縮小改編されました。特科連隊は、普通科連隊の連隊戦闘団編成時に編入される2個中隊基幹の直掩特科大隊を3個乃至4個、そして師団の全般支援火力として4個中隊を基幹とする第5大隊から編制されていました。

Ciimg_4139  対砲レーダ装置JTPS-P16、敵の砲弾を感知し弾道計算の上射撃位置を評定し確実に反撃する重要装備。情報中隊に装備されるもので、このほかに対迫レーダ装置JMPQ-P13を保有、更に無線探知標定による指揮所攻撃や観測ヘリコプターや前進観測部隊支援での施設や集積地攻撃など、自衛隊の野砲部隊は非常に優れた観測手段を以て高い打撃力を維持しています。

Ciimg_4154  特科連隊の編成は連隊本部及び本部中隊
、情報中隊、第1大隊隷下に本部管理中隊及び第1中隊と第2中隊、第2大隊隷下に本部管理中隊及び第3中隊と第4中隊、第3大隊隷下に本部管理中隊及び第5中隊と第6中隊、となっており、従来編成の大隊には大隊本部が置かれているのみですが、現在は本部管理中隊を置き支援機能を強化しているとのこと。

Ciimg_4158  特科連隊はFH-70榴弾砲30門を装備しています。改編前は60門を装備していましたので火力数としては半減していますが、欧州共同開発の長砲身砲は最大射程30kmを発揮、半自動装填装置により緊急時射撃能力毎分6発を投射可能で、補助動力装置による自走も可能な優秀砲、しかし遠くない将来に国産自走榴弾砲火力戦闘車に代替されるもよう。

Ciimg_4171  高射特科大隊の観閲行進、情報小隊の対空レーダ装置 JTPS-P14、低空レーダ装置 JTPS-P9が行進しています、これら装備により師団は50kmから条件によっては100km先の目標を探知し警戒可能です。低空レーダ装置には新型のJTPS-P18の導入も計画されていましたが、民主党政権時代に他予算への転換もあり実現していません。

Ciimg_4180  第1中隊の93式近距離地対空誘導弾、中隊には12両程度が装備されています。大隊の編成は大隊本部及び本部管理中隊、第1中隊、第2中隊、よりなり第2中隊は師団策源地等の戦術防空、第1中隊は小隊毎に第一線の連隊戦闘団などへの防空に当たります。射程は5km程度ですが、各種レーダ装置による脅威情報を師団防空システムが処理し対処するため、防空能力は部隊として非常に高い。

Ciimg_4192 81式短距離地対空誘導弾、第2中隊の装備です。SAM-1Cという改良型に当たり、射程16kmのレーダー誘導型と従来装備の射程8kmである赤外線誘導型を併用します。四連装発射装置2基とレーダーを装備する射撃統制装置搭載車両により1セットを構成し、中隊には4セット程度が配備されているもよう。

Ciimg_4194 第10後方支援連隊第2整備大隊特科直接支援中隊及び高射直接支援隊、重装備の後方支援に当たる部隊で春日井駐屯地の連隊本部から派遣され駐屯しています。豊川駐屯地にはこのほか、中部方面後方支援隊第306普通科直接支援中隊および第104施設直接支援大隊第1直接支援中隊が駐屯しています。後方支援部隊を第一線部隊に密接させることでより効率的な整備支援を行うことが狙い。

Ciimg_4198  第6施設群、大久保駐屯地の第4施設団隷下の施設群です。編成は群本部及び本部管理中隊、第369施設中隊、第370施設中隊、第371施設中隊、第372施設中隊、という編制で豊川駐屯地に群本部、本部管理中隊、第370施設中隊、第371施設中隊が駐屯、このほかは鯖江駐屯地に第372施設中隊、岐阜分屯地に第369施設中隊が駐屯しています。もともとは地区施設隊として部外工事などを請け負っていた部隊が改編され現在の体制となりました。 

Ciimg_4201  群隷下の中隊は機能別編成を採っており、第369施設中隊は築城機能中隊、第370施設中隊は障害機能中隊、第371施設中隊は機動支援機能中隊、第372施設中隊は交通機能中隊、というかたちで、それぞれ野戦築城や補給路維持に地雷処理や防御障害構築等を担う分担です。

Ciimg_4205  74式戦車、今津駐屯地の第10戦車大隊よりの参加です。戦車大隊も三月の部隊改編により4個戦車中隊基幹から2個戦車中隊基幹へと縮小改編されました。豊川駐屯地の車両ではありませんが、部隊行事ということで支援に今津駐屯地より展開しました。こうして観閲行進は終わり、訓練展示は当方一行、反対側から撮影することとし移動しました次第です。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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日露捜索救難共同訓練、ウラジオストック港内及び同港沖にて10月26日・28日に実施

2014-10-25 23:02:24 | 防衛・安全保障

◆護衛艦はまぎり派遣へ

 防衛省によれば海上自衛隊は明日26日と28日に日露捜索救難共同訓練を実施するとのこと。

Msimg_6895 訓練はウラジオストク港内及び ウラジオストク沖において実施され、海上自衛隊は第15護衛隊司令吉川 尚徳1等海佐を指揮官とし護衛艦「はまぎり、を派遣します。捜索救難訓練及び海賊対処等の実施が予定されており、ロシア連邦海軍との共同訓練は1998年の第一回より数えて15回目になります。

Msimg_6929 ロシアの外交関係はウクライナ騒乱への介入を機に欧米との関係が劇的に悪化し、我が国を含め主要国は対ロ経済制裁を含む措置を採っている現状です。一方で、ロシアを完全な孤立状態と追いやらぬよう、現在は延期されている日ロ首脳会談などの模索などが行われており、緊張緩和の一手段としてこの共同訓練が一助となる期待もあります。

Msimg_6870 訓練に参加する護衛艦はまぎり、は、23日に母港である大湊基地を出航し、本日25日にウラジオストック基地へ入港、28日にウラジオストック基地を出港し訓練等を展開したのち、30日に大湊基地へ帰港します。なお、今回はロシア海軍艦艇の海上自衛隊基地への親善訪問の予定は現在のところ発表されていません。

北大路機関:はるな

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平成二十六年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.10.25・10.26)

2014-10-24 23:07:07 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 霧島連山が不穏な動きを示し気象庁が火山警戒情報を発令する中、皆様如何お過ごしでしょうか。

Gimg_0225 今週末は茨城県百里基地において航空観閲式が挙行されます。招待状が無ければ百里基地内へ入る事はできませんが、茨城空港周辺では80機の編隊飛行や機動飛行等を見る事が出来、お時間がある方は三年に一度の航空観閲式へ足を運ばれてみてはどうでしょうか。

Gimg_6386 今週末は九州の自衛隊行事が盛んです。西部方面混成団本部が置かれ、西部方面普通科連隊、水陸機動と空中機動を併せた両用作戦能力を持ち、新防衛大綱において新編が予定される水陸機動団の基幹部隊となる連隊の創設記念行事が相浦駐屯地にて行われます。

Gimg_1348 都城駐屯地祭も行われます。なお、都城駐屯地は本日火口周辺警戒情報が出された霧島火山に近く、即座の噴火へ展開するかは未知数ではありますが仮に噴火が始まれた災害派遣要請が出される可能性があります。こうした視点からお近くの方は駐屯地の部隊を見てみるというのもいいやもしれませんね。

Gimg_6800 湯布院駐屯地祭、名前だけで温泉に入りたくなるこの駐屯地には203mm自走榴弾砲やMLRSを装備する西部方面特科隊が駐屯する九州有数の火砲の街です。自衛隊最大の口径を誇る203mm榴弾砲の空包の迫力を是非どうぞ。

Gimg_2381 久留米駐屯地祭、こちらも九州の大砲の駐屯地で、第4特科連隊、第4高射特科大隊など第4師団隷下部隊が駐屯しています。FH-70を装備していまして、相浦が土曜日、その次の日に久留米か湯布院という大砲の部隊の駐屯地どちらかを、という選択肢が思い浮かぶところですね。

Gimg_1691 通信学校祭、神奈川県の久里浜駐屯地において行われます。通信科職種の各種装備等を見る事が出来、装備品展示では通信の専門の方からいろいろと知る事が出来るやもしれません、また、年に拠りますが観閲行進なども行われるとのこと。

Gimg_5951 宇治駐屯地祭、京都の駐屯地です。補給処が置かれている駐屯地ですので、様々なフォークリフトなどが見れますが、観閲行進などは余り期待できず、装備品展示中心となります。非常に余裕あるというかゆったりとした駐屯地祭とのことで、お近くの方はどうぞ。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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那覇基地、高まる脅威への防空最前線となった陸海空自衛隊南西諸島防衛の一大拠点Ⅱ

2014-10-23 23:53:16 | 防衛・安全保障

◆嘉手納よりも防衛用航空機発着が多数

 美しい海を背景に発着する航空機、素晴らしい。前回の21日掲載分の続き、那覇基地の写真と共に。

Onimg_321_2 E-2C早期警戒機の着陸、新編された第603飛行隊の機体だ。沖縄と北海道はいつ行っても新鮮で、沖縄はオリオンビールが染み透るアメリカンな料理と泡盛の激しさに相方を務める郷土料理と大らかな急ぎ過ぎない時間の営みが嬉しいところ、その沖縄は日本の玄関として中国の軍事圧力に曝される最前線の国境であることをいろいろと考えさせられる。

Onimg_286_9 那覇の方が被写体が多いね、P-3Cの着陸とともに欧州からの自衛隊&米軍機撮影ツアーに訪れた一行の方からお教えいただいた、なんでも朝一で嘉手納基地に行ったがF-15が全然いなかったので、那覇に転進したとのこと。一機もいない方が全部上がっているのか、と違う意味で不安になりますが。

Onimg_1388 中国軍が南西諸島周辺、特に中国大陸からの軍用機接近が沖縄県北部と鹿児島県島嶼部に対し異常増大している数年間の緊張状態に対し、民間の観光客などの往来は多く、当たり前ですが日中韓に或るのは軍事的緊張の範疇であり、武力紛争という状況には陥っていません。

Onimg_2_795 もっとも、普段の歩道で沖縄が報じられる際に少なくない割合にて基地問題として現地での基地負担が住民へのしかかっている、という視点から報じられるものであるため、そもそも基地は伊達や酔狂で存在するのではなく、相応の必要性があっての抑止力のための配置、という視点が作為か不作為か抜けている。

Onimg_3_241 他方で日本への中国からの圧力は尖閣諸島を念頭に軍事的圧力を掛けているという実情から誤解されがちですが、中国軍機への対領空侵犯措置任務は尖閣諸島周辺は例外というほどに少なく、実際には奄美大島西方沖に向けて飛来していることが防衛省により明らかにされています。

Onimg_1_489 実際には鹿児島県島嶼部に向けられている中国軍機の飛行、沖縄県南部の尖閣諸島への中国大陸からの接近は台湾の中華民国空軍からの要撃を受けるための措置と考えられますが、この現状を受けここ数年間沖縄県で実施されている自衛隊統合演習は本年、沖縄ではなく圧力を受けている奄美大島とその周辺で行われるとのこと。

Onimg_1408 その昔、在大阪神戸米国総領事で現在国務省本省の要人になられた方の講演会にて在沖米軍や在日米軍の位置づけについて米国政府の率直な視点をお聞きしたところ、利益や価値観を共有できる意味で日本はアメリカのもっとも重要な相方であり、この関係を維持し続けるため、と御話しいただきました。

Onimg_2904  これは言い換えれば、日本が周辺国の軍事圧力により政治的独立性を喪失し、アメリカに敵対する勢力に組み込まれることを警戒しているという意味であり、強力な競争相手でありライバル関係となるんは歓迎だが、敵対関係は望まず、そのために日本のシーレーンや国土への脅威を日米共に抑止する必要がある、というもの。

Onimg_1436 対領空侵犯措置任務へ緊急発進したF-15二機がもどってきた、ローリングコンバットピッチを採り着陸態勢へ移行してゆきます。日本との友好関係と同盟関係に依拠した相方としての日本の重要性は、仮に日本が言論団体買収や市民運動等を装った工作活動と軍事行動等により周辺の海洋秩序への軍事的変更を試みる勢力により傀儡化した場合、一挙にアメリカは西太平洋の安定から得る共益を失うことになり、これを避けたいのでしょう。

Onimg_2794 そこでの在沖米軍の位置づけですが、フィリピンや台湾という日本の周辺国への中国からの軍事的圧力が軍事行動に展開した場合、自衛隊はかりに中華民国政府が求めた場合でも独力で台湾に介入し独立を維持する行動は採れません。ここを置き換える要石という位置づけが米軍、というかたちです。

Onimg_2752 沖合ではパラセーリングが行われる観光地ですが、ここをアメリカが重要視する点は以上の通りの理由があり、もちろん、自衛隊を大幅に増強し、アジア地域の秩序安定に寄与させる独自の打撃力を整備するという視点で憲法や自衛隊法を切り替えるという選択肢は、理論上有り得ないわけではないのですが、日本の現在の世論には馴染みません。

Onimg_2637 一方、自衛隊の在り方ですが、ここまで緊急発進が増大し、加えて中国軍の保有する巡航ミサイル数が千数百へと増大し、中距離弾道弾脅威の増大が進む現状を見ますと、対応は現状のままでは不十分です。特に戦闘機数が不十分で、可能ならばF-35導入までの間にF-16EかF/A-18E,もしくはJAS-39等を2個乃至3個飛行隊ほど増強することが可能ならば望ましい。

Onimg_2975 E-2C早期警戒機、格納庫から展開してきました。現状の予算を考えますと、戦闘機の増勢は非常に難しく、重ねて機種の増大も望ましくはありません。すると行い得る施策ですが、まず、戦闘機数を維持しつつ、戦闘機1に対し2以上の搭乗員と整備員を確保し、一日当たりの作戦飛行回数を増大させる、イスラエル空軍が強大な周辺国空軍へ対抗した方式の施策が代替案として挙げられるでしょう。

Onimg_3097 更に一つは、基地機能の強化をはかることで、航空団隷下の飛行隊を一つの基地へ集約させず、二個飛行隊基幹と6機から10機前後の分遣隊に分け、もしくは一個航空団の40機ある戦闘機を現状の2個飛行隊基幹から飛行隊定数を削減し3個飛行隊にあらため、千歳と丘珠、三沢と八戸、百里と横田、小松と小牧、築城と芦屋、新田原と鹿屋、那覇と嘉手納、と分散する方法も考えられるやもしれません。

Onimg_2996 航空自衛隊には過去16機基幹の飛行隊や24機基幹の飛行隊がありましたので、航空団司令部の置かれる基地へ24機の飛行隊を、分遣隊の基地へ16機の飛行隊を置き、各基地に可能な限り掩体を構築し基地防空隊を置く、米空軍によれば一つの基地を機能喪失に追い込むためには15発の巡航ミサイルが必要となるとしていますので、基地が分散すればその分攻撃側が困難となります。

Onimg_3177 もちろん、こうした施策を行うには戦闘機定数は転換しなくとも対応できますが、維持費と燃料消費は増大、操縦要員に整備員から基地防空隊員などなど大幅に増大します。他方、この方式は要員に余裕をもたせますので、有事の際にはアメリカからF-15CやF-16Cの緊急貸与を受ける事で防衛力を増大、この方式もイスラエル方式ですが、可能です。

Onimg_3222 防衛力強化といいますと、装備定数の増大が手っ取り早い印象ですが、後方支援能力を軸に運用能力と基地機能を強化することで持てる装備の能力を現状以上に引き出せる可能性はあるのですが、色々と考えつつ、帰りの飛行機の時間が近づいてきました。

Onimg_1525 旅客機機内から緩和された電子機器離着陸時使用を活かし、着陸してきた海上自衛隊のYS-11を撮影です。嘉手納よりも那覇の方が防衛用航空機発着が多数、海外の方からの率直な話を思い出しつつ、最前線となっているのは沖縄だが、軍事圧力の対象は日本国全体ということが前提で防衛について考えさせられることは多い、こう考えつつ沖縄を後にしました。

北大路機関:はるな

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噴火活動と自衛隊、霧島山新燃岳の大規模噴火時における避難支援事例より

2014-10-22 23:19:50 | 防災・災害派遣

◆一方でカルデラ噴火の可能性も残る日本列島
 御嶽山の火山災害は積雪期に入ることで火山泥流の可能性はやや低まりました。
Img_1950  御嶽山山頂付近での困難な自衛隊と警察消防による行方不明者捜索ですが、御嶽山が積雪期に入り山頂付近での降雪状況が始まり、火山性ガスの危険性も顕著であることなどから、苦渋の決断として16日を以て行方不明者捜索は積雪期の終了に至るまでの期間、休止することとなった旨報じられました。一方火山災害へ関心高まる中NHKが本日報じた大規模噴火に関するもので“日本の広い範囲が火山灰で覆われ、火砕流が100キロ余り先まで達するような巨大噴火が、今後100年間に起きる確率はおよそ1%だとする研究結果”というものが。
Img_7982  この報道はNHKが神戸大学大学院の研究グループがまとめましたものを報じたもので、具体的事例として阿蘇山の大規模噴火などを提示し、過去の噴火では九州全域のみならず火砕流が山口県にも達したことを紹介したもの。御嶽山では現在でも7名の行方不明者が残っているとされ、発見を期して捜索が継続されてきましたが、火山灰の堆積によりこれ以上の捜索も難しく、其処へ積雪となりました。今後は捜索部隊への撤収要請などを経て、噴火活動への警戒監視体制の強化による今後の噴火活動への対処を軸とする事が予想されるところ。
Img_5294  喫緊の課題は御嶽山ですが、最も警戒された水蒸気爆発が引き金となり数千気圧の岩盤に閉じ込められた深層マグマが依拠に吹き出すという最悪の事態は想定せずとも当面は済むようになったのですが、火山活動はこのまま沈静化に向かうのか、マグマ噴火へと続くのかについては現在のところ流動的ですが、危惧された最大規模の噴火は想定せずに済む状況で、積雪期を迎えその後の行方不明者捜索の在り方などが今後の焦点となるところでしょう。一方で、噴火が最大規模となっていた場合や噴火当日の被害が拡大し数日間推移していたらばどうか。
Img_8454  さて、御嶽山が今後の展開により参考点を含むであろう2011年の霧島山新燃岳噴火災害の事例より参考となる事例についてみてみましょう。子の提示については大規模噴火の際における自衛隊行動指針を円滑に遂行する上での留意事項に対するものと、火山災害に対する自衛隊の行動能力の現実的な限界などについて示されています。陸上自衛隊に対する災害派遣要請の基準ですが、ガイドラインにおいては以下の二点を留意し想定していまして、噴火活動がより活発化した場合、降灰による土砂災害が発生した場合、指針として示されたものは以上の通り。
Img_0481  このなかで、陸上自衛隊の災害派遣活動に伴い検討が必要な事項としまして、災害派遣要請系統についてでは、県知事から各隊区担当部隊へ指揮系統を確立するとしたうえで、但し宮崎県においては災害派遣地域が第24普通科連隊と43普通科連隊の両隊区に及ぶ場合、第8師団長に要請する、としました。現在第24普通科連隊は即応予備自衛官基幹部隊として分散配置への改編準備が進められていますが、なお、この時点では駐屯地に中隊を集約し災害派遣に対しては気化に要因のみで、防衛出動に対しては動員を前提としているコア化編成を採っていました。
Img_226_0  避難支援時の車両運行に伴う検討事項では、第一としまして、装甲車等による一般道の通行。第二には、避難対象地域近傍における装甲車等の駐車場の提供。第三には、避難支援時における、自治体職員等の自衛隊との同行。第四に留意事項として降灰によるヘリコプターの運航制約、というものが挙げられています。口述しますが噴火初動の段階で御嶽山ではヘリコプターが展開していたものの、航空機と火山灰の関係を考えますと二次災害を避ける観点から非常に慎重にあるべき事例、というものでした。
Mimg_2182  装甲車等による一般道の通行は、当時災害派遣に車幅の大きな73式装甲車などの装備が北部方面隊より管理替えとして西部方面隊の災害派遣待機部隊へ配備されており、火山噴火災害に際しては徒歩退避が火山弾等の飛来により非常に危険であったことから危険であったための措置です、この点については御嶽山の富士教導団普通科教導連隊隷下の車両が第12旅団隷下日時的に管理替えとなって実現しました89式装甲戦闘車派遣と同じです。
Gimg_2585  加えて車幅の大きな装甲車の通行を予め退避計画に盛り込んだ背景には、自家用車との事故や交通渋滞の危惧があった点、挙げられるでしょう。この点が道路交通法の難しいところで、車両限界は2.5m、対して73式装甲車の車幅2.9m、車両限界を超えた装甲車両は防衛出動のような武力攻撃事態を除けば所轄警察署長の許可が無ければ一般道の地涌通航に制約が掛かり、出動に際してこうした問題が表面化しないようにあらかじめ、派遣を念頭に置いた時点にて予め盛り込んでいたわけですね。
Nimg_3558  避難対象地域近傍における装甲車等の駐車場の提供と避難支援時における、自治体職員等の自衛隊との同行、この二点は土地収用など、これも武力攻撃事態等の際に部隊の集結や陣地構築の際の民有地利用や接収などの問題で、財産権侵害の危惧などと解釈される方もいるようですが、武力攻撃事態法制定以前においてはこれら行動に先んじて会計科隊員による交渉が必要、こうした手続きにより人命救助が妨げられぬよう現行法に準拠し予め平時法制下での有事というべき災害への対処の一例と言えるところ。
Phimg_2777  県知事から各隊区担当部隊へ災害派遣を要請する際、ということですが、第24普通科連隊と43普通科連隊の両隊区に及ぶ場合、第8師団長に要請、という部分は指揮系統一元化の意味から重要です。なお、御嶽山火山災害において私事ながら長野県知事より旅団長へ、と災害派遣の記事に当方の誤記がありました、その背景についてですが、当方、新潟中越地震の事例から旅団への災害派遣要請は旅団長へ、と複数隊区にまたがる災害とそうでないものを誤解して掲載しご指摘を頂きましたのは過去記事の通り。
Img_8985  降灰によるヘリコプターの運航制約、についてですが、霧島山新燃岳噴火災害では新田原基地などに火山灰の影響がおよび、航空機エンジンやピトー管などへの損傷による飛行障害を警戒し、小松基地などに訓練移転を実施した事例がありました。エンジンを噴煙以外にも肉眼で確認しにく火山性エアゾルを吸い込めばエンジン内で溶解しエンジンを閉塞させエンジン停止へ、ピトー管が詰まれば計器類が使用不能となりどちらも飛行性能を左右する深刻な状況を誘発するため、下手をすれば不時着や墜落につながる、通常火山灰の影響下では航空機は飛行できません。
Img_0560  今回の御嶽山噴火災害では噴火数時間後には山小屋へ着陸を試みるべく陸上自衛隊のヘリコプターが噴煙柱付近を飛行していましたが、水蒸気爆発の影響であり火山性エアゾルなどの数値が低いとして飛行したのか、UH-60JAの双発高出力エンジンを頼ってのものかは未知数ですが、新燃岳噴火災害でもUH-60JAが派遣されており、状況次第では空からの救援は行えない、という状況は留意しておくべきでしょう。

北大路機関:はるな

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