舞鶴基地の護衛艦
舞鶴基地は第三護衛隊群の護衛艦5隻、地方隊の護衛艦6隻と掃海艇3隻、ミサイル艇3隻、輸送艦1隻、補給艦1隻の母港である。今回は3月に小生が展開した際の在泊護衛艦について掲載する。
舞鶴基地といえば、第三護衛隊群旗艦の護衛艦『はるな』である。誰が何と言おうと舞鶴の主である(笑)。ちなみに蛇足ながら小生の愛犬(♀)は榛名、鞍馬というなまえである。
舞鶴基地唯一の蒸気タービン推進方式の護衛艦で満載排水量6800㌧、全長153㍍の本艦は日本初のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)として1973年に就役し、同型艦『ひえい』とともに三機の哨戒ヘリを搭載する本艦は1980年に改良型の『しらね』型が就役するまでの間日本最大の護衛艦であった。また、ASW(対潜戦闘)を主たる任務に掲げる海上自衛隊にとり潜水艦の天敵ともいえる航空機を搭載した重要な戦力であった。
『はるな』型は背負式に搭載した特長的な5in砲で知られ、この艦容は『しらね』型にも受け継がれている。当初はDDH二隻で一個護衛隊を形成し、これにDDAやDDKを充て護衛隊群を編成していたが護衛艦八隻ヘリ八機からなる八八艦隊に改編された後は護衛隊群旗艦という位置づけとなった。
1987年から1989年にかけ二隻は電子装備に関する近代化改修を受け、艦齢を24年から32年へ八年延長、今日に至る。なお、本艦も退役が迫っており(恐らく2009年)、2003年度と2006年度に後継の全通飛行甲板型ヘリコプター護衛艦が建造される事となっている。蒸気タービン艦が三年間隔でオーバーホールが必要で、ガスタービン艦の四年間隔と比較しライフサイクルコストが高い事が上げられる。
写真はミサイル護衛艦(DDG)『しまかぜ』、『はたかぜ』型の二番艦で満載排水量は5900㌧、全長は150㍍、初のガスタービン推進方式DDGで、1988年に就役した。
主兵装であるスタンダードSAM発射機を艦首部分に置き、波浪から守るべくブルワークを加えた艦容で、小説『亡国のイージス』の『いそかぜ』は本型をモデルとしている。後部甲板を広く開けたことでヘリによる物資補給が可能となり、特筆すべき点も多いが、イージス艦に至る過渡的な設計であったことは否めない。また搭載するスタンダードSM-1の射程も18~38kmと限定的でイルミネーターの数と同じ同時ニ目標しか対処できず、そのポテンシャルも低下している。
今年三月に就役したばかりの最新鋭護衛艦『すずなみ』、『たかなみ』型護衛艦の最終艦(五番艦)で満載排水量は6300㌧、『はつゆき』『あさぎり』『むらさめ』と建造された汎用護衛艦(DD)の最新型である。汎用護衛艦中最大の本級は寸法や排水量ともにDDHやDDGに匹敵する。限定的な多目標同時対処能力を有する国産射撃指揮装置FCS-2を搭載し、MK-41VLS(垂直発射機)32セルを搭載する。ステルス性にも配慮があり、将来的にはESSM(発展型シースパロー)を64発搭載することになり、文字通り初期のDDGを遥かに凌駕する対空戦闘能力を有する事になるが、本型に更に抜本的なステルス性を追求し、洋上作戦能力を高めた新型護衛艦(20DD)が来年度予算で要求される見込みとなっている。
写真は舞鶴地方隊第24護衛隊の『みねゆき』(DD124)と『はまゆき』(DD126)である。『はまゆき』は『すずなみ』就役と同時に護衛艦隊から地方隊に移管したもので、護衛艦隊最後の『はつゆき』型である。
『はつゆき』型は満載排水量4000㌧。また、性能や艦設計など非常にバランスが取れており、ガスタービン推進、対潜・対艦・対空の各種ミサイルを搭載し、対潜ヘリコプターを搭載するという今日の汎用護衛艦の基礎を築いた護衛艦で、1982年から1987年にかけて12隻が建造された。
なお、地方隊配備の護衛艦にはヘリコプターを搭載しないため、本年三月を以て『はつゆき』型のヘリコプター配置は終了したが、着艦支援器材などは艦内に保管されており、必要に応じてその能力を再生可能である。
本型は、艦橋構造物から一段下にCICを内蔵し、ダメージコントロールに留意した設計となっているが、艦内容積の関係でデータ相互交換可能なリンク11を搭載できず、受信専用のリンク14を搭載している。
『はやぶさ』型ミサイル艇『うみたか』。
満載排水量240㌧、1999年3月の北朝鮮工作船侵入事案を契機に建造されたミサイル艇で、舞鶴の第二ミサイル艇隊に三隻が配備されている。また、リンク11を搭載しており高い共同交戦能力を有する。
速力は実に44ノットに達し、工作船に対抗するべく、12.7㍉機銃や高速複合艇などを搭載している。
『うみたか』の後方に並ぶ『はつゆき』型と比較すると本型の大きさがわかる。近年ではミサイル艇を400~500㌧クラスに拡大させ、速力を犠牲にしてでもコルベット的運用を視野に入れて設計しているが、本型はあえて高速性を重視した設計である。
なお、一部にミサイル艇を護衛艦の代用として地方隊の主力装備とさせる構想があるようだが、ミサイル艇は対空ミサイルなどの自衛手段に限界があり、また対艦ミサイルの射程に見合う索敵手段を有しないことも特筆すべきで、護衛艦との協同運用を模索するか、米軍が建造する沿海域戦闘艦(LCS)のような艦艇を模索するべきといえよう。
『あぶくま』型護衛艦『あぶくま』。
満載排水量2900㌧、対艦・対空ミサイルを搭載し、船体部分に傾斜をつけるなど護衛艦として初めて対レーダーステルスを設計に盛り込んだ事が特筆される。対空レーダーは『はつゆき』型と同じOPS-14を搭載している。6隻が建造されたが、これが地方隊向けのDE(小型護衛艦)の最後の建造となった。装備はヘリや対空ミサイルを搭載しないことを除けば『はつゆき』型に準じるが、CICの機能などに限定的な部分があるという。
『はつしま』型掃海艇『あわしま』(MSC-670)と『うわじま』型掃海艇『ながしま』(MSC-680)。
初めて自走式機雷処分具を搭載した『はつしま』型(満載排水量520㌧、1976~1987年に23隻建造)、そして中深度掃海器具・掃討装置を加えた『うわじま』型(満載排水量570㌧、1990~1996年に9隻が建造)が並ぶ。
各国が汎用性を希求しFRP製掃海艇二尉こうする中、日本では耐衝撃性やダメージコントロール性能に優れた木製掃海艇を建造している。
写真は舞鶴地方隊の支援船。
YTとは出港入港時に支援を行う曳船を示し、YWとは艦艇に飲料水などを供給する水船、YO及びYGとは艦艇に燃料を補給する油船、YBとは艦艇に溜まった廃油を回収し陸上施設に運ぶ廃油船、YLとは糧秣や消耗品を運搬する運貨船、YCとはクレーンを搭載した起重船、YFとは沖止めした艦艇から陸上に乗員を輸送する交通船を示している。また湾内の浮遊物を回収するYDという作業船などが配備されている。
以上が3月18日、舞鶴基地に停泊していた艦艇である。現在実施中の集合訓練には23隻が参加しており、これに関する興味も尽きないが、参加される方は本情報をご参考にしていただければ幸いである。
HARUNA
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