■軍事原則では都市部は包囲が基本
ロイターコラム“巨大都市競合地域“メガシティ”という新たな戦場”について、熊本地震により掲載が伸びましたが、2016-04-11日付記事の前篇に引き続き掲載です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/92/5db5abb28063efe890d00265df5bfc69.jpg)
市街地戦闘は室内制圧の様子など、近接戦闘訓練展示として各国軍隊や法執行機関の訓練風景が報道公開されることもありますが、高層ビルなどは部屋数が多すぎますし、一度に大部隊を室内掃討へ集中投入しますと、建物ごと自爆されかねない、という問題点も生じてしまいます。実際、多くの市街戦等を経験するイスラエル軍は、建物ごと自爆する攻撃により掃討戦に多くの犠牲を強いられました。
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ロイターコラムの米軍はメガシティでの消耗戦に近い戦闘に曝される、という指摘ですが、この限界点については、米軍自身がイラク戦争大規模戦闘終了後のイラク治安作戦において経験している一方、その先頭形態の主力が軍事機構の大規模な衝突ではなく法執行機関型の近接戦闘能力が最も重要視されるものであり、更に法執行機関の一つの目的である犯罪の抑止、一罰百戒、の概念が実のところ非対称型の戦いにおける非正規戦力への解決策になる、との視点も、やはり軍事機構には充分付与されていません。
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法執行機関型の戦闘が求められると同時に、相手も法執行機関が取り締まるべき対象と同様の経路から戦闘要員を養成するため、宣撫工作や心理戦闘、相手の社会基盤そのものに内部化し、友好勢力を成長させ、取締りの勢力を創出させる、いわば19世紀型植民地経営の際の植民地警察に当たる機構を創出させる、また、非正規戦闘といいますか、非対称戦では住民協力が不可欠です。
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住民が支持される施策を行い、且つ住民から信頼される軍政を敷くのであれば、広大な市街地から通報により敵主力の位置を知る事が出来ます、が、完全な掃討を完了する前に撤退するのではないか、という危惧を含め、信頼を獲得できなければ、これは過去のヴェトナム戦争において南ヴェトナム政府を支持した人々が北ヴェトナムの攻撃へ南ヴェトナム政権崩壊後どのような境遇となったのかを考える場合、一時的で遠からず撤退する事が見えている集団を支持する可能性は、ほぼないといっても過言ではないところ。
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統治機構を見定め正統性を付与し支援する、住民を支持させる政治体制として民衆を友軍に付かせ都市という広大な錯綜地形へ敵の潜伏場所を干上がらせる、という視点が必要で、このためにはいわば軍政の能力が、この種の市街地戦闘には求められ、併せて敵主力の撃破に特化した従来型編成の陸上戦力には無い発想を、横断的に行使する機能は求められるわけです、他方、米軍を見ますと過去に植民地経営を実施した事例が殆どなく、この点に限界があるといえるでしょう。
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アメリカの軍隊が出る幕なのか、収斂する結論はこの視点をアメリカがどのように考えるかにあります。実際問題、冷戦時代においてもメガシティ、とまでは行かずとも100万規模の大都市での戦闘は世界中で発生していましたが、アメリカ軍が直面した市街戦は、ヴェトナム戦争のフエ市街戦くらいでしょう、グレナダ侵攻やパナマ侵攻では大都市が戦場とはなりましたが、敵中枢打撃により短期間で終結しました。
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朝鮮戦争のソウル市街戦はかなりの激戦であったと戦史に残るのですが、ここを上記事例に含めなかったのは何故か、それよりも市街地戦闘は第二次世界大戦においてスターリングラードを始めアメリカが参加した戦争の片隅に出てくるものの含めなかったのは、と問われるでしょうが、視点として重要視したいのはこの部分です。ソウル市街戦の主体となったのは韓国軍であり、スターリングラード市街戦ではソ連が主力となりアメリカは軍事物資により支援しただけに過ぎません、第二次世界大戦での大規模な市街地戦闘と云えばマニラ市街戦、というところでしょうか。
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大都市での戦闘をアメリカが多くの場合回避できたのは、他の当事国へアメリカ軍が打撃力と軍事物資支援に特化しておくことで直接の戦闘を回避した、という視点が見えてきます。すると、ISILに対する今後危惧される大規模な市街戦に対しては、独裁国家であるという難点に目を瞑るならば、シリアのアサド政権を支援するという選択肢、も含めるべきか、と。
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実際問題、イラクにおいてもかつてイラク国内での治安はフセイン政権時代には確実に履行されていたものが、イラク戦争後に破綻したことによって悪化しました。故に“建前と本音”として、民主化を型どおりに抑えるのではなくその過渡期を示し、法執行機関養成支援等を通じ、最悪の事象であるテロの抑止を実現する、という施策も検討されるべきだと考えます。
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テロ拡散防止と大量破壊兵器拡散防止を第一に掲げ、その為であれば政治形態の多様性を尊重する、つまり建前と本音を使い分ける、というもの。かなり突飛な視点と思われるでしょうが、冷戦時代にアメリカはチリのピノチェト政権、ニカラグアのソモサ政権、イランのパーレビ王政、南ヴェトナムのゴディンディエム政権、カンボジアのロンノル政権、イラクのフセイン政権、独裁国家に対しても反共政策を条件に支援を行った事例があります。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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ロイターコラム“巨大都市競合地域“メガシティ”という新たな戦場”について、熊本地震により掲載が伸びましたが、2016-04-11日付記事の前篇に引き続き掲載です。
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市街地戦闘は室内制圧の様子など、近接戦闘訓練展示として各国軍隊や法執行機関の訓練風景が報道公開されることもありますが、高層ビルなどは部屋数が多すぎますし、一度に大部隊を室内掃討へ集中投入しますと、建物ごと自爆されかねない、という問題点も生じてしまいます。実際、多くの市街戦等を経験するイスラエル軍は、建物ごと自爆する攻撃により掃討戦に多くの犠牲を強いられました。
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ロイターコラムの米軍はメガシティでの消耗戦に近い戦闘に曝される、という指摘ですが、この限界点については、米軍自身がイラク戦争大規模戦闘終了後のイラク治安作戦において経験している一方、その先頭形態の主力が軍事機構の大規模な衝突ではなく法執行機関型の近接戦闘能力が最も重要視されるものであり、更に法執行機関の一つの目的である犯罪の抑止、一罰百戒、の概念が実のところ非対称型の戦いにおける非正規戦力への解決策になる、との視点も、やはり軍事機構には充分付与されていません。
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法執行機関型の戦闘が求められると同時に、相手も法執行機関が取り締まるべき対象と同様の経路から戦闘要員を養成するため、宣撫工作や心理戦闘、相手の社会基盤そのものに内部化し、友好勢力を成長させ、取締りの勢力を創出させる、いわば19世紀型植民地経営の際の植民地警察に当たる機構を創出させる、また、非正規戦闘といいますか、非対称戦では住民協力が不可欠です。
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住民が支持される施策を行い、且つ住民から信頼される軍政を敷くのであれば、広大な市街地から通報により敵主力の位置を知る事が出来ます、が、完全な掃討を完了する前に撤退するのではないか、という危惧を含め、信頼を獲得できなければ、これは過去のヴェトナム戦争において南ヴェトナム政府を支持した人々が北ヴェトナムの攻撃へ南ヴェトナム政権崩壊後どのような境遇となったのかを考える場合、一時的で遠からず撤退する事が見えている集団を支持する可能性は、ほぼないといっても過言ではないところ。
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統治機構を見定め正統性を付与し支援する、住民を支持させる政治体制として民衆を友軍に付かせ都市という広大な錯綜地形へ敵の潜伏場所を干上がらせる、という視点が必要で、このためにはいわば軍政の能力が、この種の市街地戦闘には求められ、併せて敵主力の撃破に特化した従来型編成の陸上戦力には無い発想を、横断的に行使する機能は求められるわけです、他方、米軍を見ますと過去に植民地経営を実施した事例が殆どなく、この点に限界があるといえるでしょう。
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アメリカの軍隊が出る幕なのか、収斂する結論はこの視点をアメリカがどのように考えるかにあります。実際問題、冷戦時代においてもメガシティ、とまでは行かずとも100万規模の大都市での戦闘は世界中で発生していましたが、アメリカ軍が直面した市街戦は、ヴェトナム戦争のフエ市街戦くらいでしょう、グレナダ侵攻やパナマ侵攻では大都市が戦場とはなりましたが、敵中枢打撃により短期間で終結しました。
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朝鮮戦争のソウル市街戦はかなりの激戦であったと戦史に残るのですが、ここを上記事例に含めなかったのは何故か、それよりも市街地戦闘は第二次世界大戦においてスターリングラードを始めアメリカが参加した戦争の片隅に出てくるものの含めなかったのは、と問われるでしょうが、視点として重要視したいのはこの部分です。ソウル市街戦の主体となったのは韓国軍であり、スターリングラード市街戦ではソ連が主力となりアメリカは軍事物資により支援しただけに過ぎません、第二次世界大戦での大規模な市街地戦闘と云えばマニラ市街戦、というところでしょうか。
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大都市での戦闘をアメリカが多くの場合回避できたのは、他の当事国へアメリカ軍が打撃力と軍事物資支援に特化しておくことで直接の戦闘を回避した、という視点が見えてきます。すると、ISILに対する今後危惧される大規模な市街戦に対しては、独裁国家であるという難点に目を瞑るならば、シリアのアサド政権を支援するという選択肢、も含めるべきか、と。
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実際問題、イラクにおいてもかつてイラク国内での治安はフセイン政権時代には確実に履行されていたものが、イラク戦争後に破綻したことによって悪化しました。故に“建前と本音”として、民主化を型どおりに抑えるのではなくその過渡期を示し、法執行機関養成支援等を通じ、最悪の事象であるテロの抑止を実現する、という施策も検討されるべきだと考えます。
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テロ拡散防止と大量破壊兵器拡散防止を第一に掲げ、その為であれば政治形態の多様性を尊重する、つまり建前と本音を使い分ける、というもの。かなり突飛な視点と思われるでしょうが、冷戦時代にアメリカはチリのピノチェト政権、ニカラグアのソモサ政権、イランのパーレビ王政、南ヴェトナムのゴディンディエム政権、カンボジアのロンノル政権、イラクのフセイン政権、独裁国家に対しても反共政策を条件に支援を行った事例があります。
北大路機関:はるな くらま
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