北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

令和六年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2025.03.01-2025.03.02)

2025-02-28 20:25:10 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末は北海道以外で戦車を視る事ができる貴重な行事があったり航空祭が有ったりします。

 小牧基地オープンベース、いよいよ日曜日となっています。第1輸送航空隊の基地、C-130H輸送機が配備されている日本唯一の基地であるとともに、世界でも二つしか無いKC-767空中給油輸送機が配備されている基地となっていて、またUH-60J救難ヘリコプターを配備する救難教育隊も展開しています。

 ブルーインパルス、今年はブルーインパルスが飛行展示を行いますのでなかなか混雑するかもしれません。小牧基地航空祭は例年二万から三万、伊丹駐屯地祭が二万前後なのですけれども、ゆったりした航空祭ですが、ブルーインパルスが来ると+五万という大人数が来場することとなります。

 航空祭は三脚と脚立と椅子と折り畳み椅子は持ち込み不可となっています。上下迷彩服も禁止となっていますが、フライトジャケットにパッチを取り付けてマニアなかたがいますが、あれは大丈夫な模様です。火器の使用禁止と注意書きがありました、重火器も軽火器も迫撃砲も禁止でしょう。

 航空祭の飛行展示ですが、戦術輸送機と空中給油機と救難機と戦闘機の飛行展示は0845時から1100時まで、ブルーインパルスは1230時から1345時までが飛行展示となります。ブルーインパルス飛行とともに混雑が頂点となりますから、来場のさいには充分時間に余裕を持ってください。

 西部方面隊創設69周年記念行事、3月2日に開催されます。熊本市東区東町に所在します健軍駐屯地を部隊に開催される行事となっていて、西部方面隊は例年市街パレードを実施、今年も西部方面隊は市街パレードを実施します。記念式典が0930時から、市街パレードの観閲行進は1100時から行われます。

 10式戦車にAAV-7水陸両用車、19式装輪自走榴弾砲に12式地対艦誘導弾システム、11式短距離地対空誘導弾システムと03式中距離地対空誘導弾システム、96式装輪装甲車に軽装甲機動車と16式機動戦闘車、AH-64D戦闘ヘリコプターとUH-60JA多用途ヘリコプター、西部方面隊は装備の近代化がもの凄い。

 健軍駐屯地は少し小高いところにありまして、健軍の熊本市電電停あたりからですと、駐屯地の背景に雄大な阿蘇山、日本最大で世界有数のカルデラがみえます。阿蘇山のエネルギーはASO-4の噴火では米ロが保有する戦略核兵器を噴火の最初の数分で凌駕するエネルギーを湛えているといい、風景も雄大という。

 多用途支援艦げんかい苅田港一般公開、3月1日と3月2日に予定されています。1日と2日の公開時間は同じで時間は1030時から1200時までと1300時から1630時です。福岡県京都郡新浜町という、福岡県に京都あったのかという。苅田港南港7号D岸壁が会場です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・3月2日:小牧基地オープンベース
・3月1日・3月2日:多用途支援艦げんかい苅田港一般公開
・3月2日:西部方面隊創設69周年記念行事

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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岩手県大船渡市三陸町山林火災-消防飛行艇を改めて検討すべき【1】US-2,毎時毎時75tの水散布が可能

2025-02-28 07:00:10 | 防災・災害派遣
■消防飛行艇!
 消防飛行艇の話題を出しますと又かと思われるかもしれませんが山林火災では通常の消防車が入れない地域で延焼を食い止めることの難しさがあります。

 消防飛行艇を改めて検討すべきと考える。岩手県大船渡市の山林火災は、アメリカのカリフォルニア州での山林火災やハワイ州での山林火災において発生した事案のように、山間部の集落に到達し、死者が出ている他、多数の民家が延焼する状況となっています。日本の林野火災で複数の住宅が被害に見舞われる事例は稀有でしたが、それが実際に起きた。

 林野火災の問題点は、この二十年間で少子高齢化に伴う過疎化が大きく進展し、消防団の人員不足による初期消火の難しさ、また山間部特有の航空機以外での火災延焼地域への接近の難しさ、広範囲に同時に延焼する今回の事例を視た場合に痛感する消防水源確保の難しさが挙げられます。もっとも消防水源確保の難しさは1995年に神戸でも指摘された。

 US-2飛行艇、別の機種で例えばボンバルディアCL-415飛行艇のような機種でもいいのですが、消防飛行艇の利点は湖や海を消防水源と出来る事にあり、飛行艇が発着できる湖が限られる事から、海での発着能力が高いUS-2は、速度と航続距離の面からも、一旦任務飛行を開始した後には火災現場から15km以内に海が有れば毎時5回は散布が可能です。

 CL-415で6.1t、US-2を消防飛行艇とした場合で15tの放水が可能です。CH-47輸送ヘリのバンビバケットで最大8tの散布が可能ですが、バンビバケットは空気抵抗が大きく消防水源が火災現場近くにない場合は4tから6.5tに制限されるという。そしてくみ上げですがUS-2は海上を滑走しつつ20秒で給水が可能、補給時間が極めて短い。

 毎時75tの放水を行えると仮定して、1個航空隊6機の可動を維持することができるならば、これが現在のUS-2の状況をみると簡単ではないのだけれども稼働率低下は分母となる機体の少なさが起因している訳で、毎時450tの放水が可能、モリタ水1-A水槽付消防車が2tの水を搭載できますので、消防車225台分の水を第一線に散布可能です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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ロシアウクライナ戦争開戦三年【5】ポピュリズムの台頭と貧富の格差という問題がアメリカ政治の混乱

2025-02-27 20:00:46 | 国際・政治
■ポピュリズムの台頭
 ぜんかいのつづき。

 現在のロシアウクライナ戦争は、こうした条件の下にうまれた権威主義国家が、諸国家間が国家間の民主的手続きにより対応に一致した主導権を発揮できる国を欠いて遅れを来している最中に、まず2014年のクリミア併合、その直後のドンバス戦争、その放置を背景に広がしました。

 ポピュリズムの台頭とともに貧富の格差という問題がこの拡散に拍車を掛けたのが現在のアメリカ政治の混乱です。もっとも、福祉政策よりも自由主義を制度として優先度の高い位置に起き続けたアメリカでは、この現状を根本から安定に回帰させる枠組みがなく、戦争の抑止に主導権を発揮できない。

 第三世界、最近はグローバスサウスと表現するようですが、多極化時代はもう一つ、この地域の経済的発展とともに、制度を支える主権者の教育制度などを整備する前に資源開発などにより工業化の端緒をつかんだことで、こうした地域において権威主義的国家体制の萌芽がみられることです。

 開発独裁、こうした言葉をつかえばこの問題はかなり根深いことであることを認識されるのかもしれませんが、権威主義国家への入り口は、情報通信技術の発展、優れた技術が安価に他国から流入する、この過程とポピュリズムと絡み合うことで容易に流れを国際公序から逸脱した方向へ進む。

 国際公序は、一方で、民主主義国家では持ち合わせている価値観、共有知、と表現することも出来るようですが、ある程度価値観の共同体を構成していますので、ここに、秩序か自由か、という権威主義国家と民主主義国家の構造、対立構造とはではいかずとも、一線が引かれるという。

 冷戦構造ではありませんが、この一線が、国際間の緊張関係を生む一方、現在のロシアウクライナ戦争では支援する諸国家の混乱、選挙での変容をみれば分かるとおり、ポピュリズムのドミノ倒しが生じ、宥和主義、1930年代の欧州のような無関心を起点とした疑似平和論が台頭しつつある。

 宥和主義について、世界は宥和主義を1930年代に試した結果、避け得ぬ利益の衝突まで進む対立構造を解決できない状態に陥り、ほかに選択肢がない状況二追い詰められたのが第二次世界大戦でした。今度は宥和主義を世界大戦に持ち込まない処方箋を考えているのか、これが懸念で。

 共有知、問題は東西冷戦時代の二極主義時代は、自由主義と共産主義の対立であり、ロールズとカントにケインズの理論vsマルクスとレーニンとスターリン理論、理論同士の対立でした。ソ連に興味は無くとも共産主義が何もかは理解できたわけで、互いが標榜する価値観が客観視できた。

 理論の対立が過去の東西冷戦の背景にあったのですが、一方で、現代の権威主義との対立はどのように理解するべきか。プーチン主義と理解しようともトランプ主義と理解しようとも体系化された理論ではないので泥縄式に切り替わる理論では賛同も批判も体系化できません。

 朝三暮四のポピュリズムというものは大概そういったものなのでしょうが、体系化できないために、一人の指導者が権力を独占し邪魔な意見を実力にて排除する構図が成り立ち、一方で、こちら”側”あちら”側”で考えて対立構造を民主主義的に固定化すると、制度は回避できぬ衝突に向かう。

 大国の論理といえるものですが、危惧するのは現状を看過し、仮にウクライナが不利な条件で停戦した場合、十年以内にロシアの第三次侵攻が開始され、今度こそ欧州は世界大戦に向かう危機に見舞われるということです。回避できぬ衝突というものの具体的事例はこの点を挙げる。

 平和の配当、という冷戦後の論理により欧州各国は大規模な軍縮を行って30年後のロシアウクライナ戦争、わかい欧州市民は冷戦を知りません、冷戦に対応する抑止力構築と維持の難しさを知りません。もっとも、もともとの先端工業国集積地域、軍需産業の再興は軌道に乗りつつあるが。

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岩手県大船渡市山林火災が大規模延焼ー26日2200時の時点ですでに民家84軒が被害

2025-02-27 07:00:49 | 防災・災害派遣
■自衛隊災害派遣
 消防飛行艇のような広範囲から空中消防能力を集中できる体制が必要だ、山間部の山林火災はちょうど大原の話題を紹介しましたのでこういう状況はちょっと恐ろしいものです。

 岩手県大船渡市の山林火災が大規模な延焼を続けています。26日2200時の時点ですでに民家84軒が焼けており、大船渡市によれば消防が徹夜で消火作業を実施しているとのこと。山林火災が此処まで民家を延焼させた事例は日本では例が少なく、しかし糸魚川大火のようにいったん火が付いた火災が大規模に延焼する事例は過去いくつか。

 大船渡市と三陸町の広範囲に避難指示が出されており、いっぽうで既に84軒が焼けているものの、人的な被害については警察が確認中であるとしています。この火災について、岩手県に加え、宮城県と山形県の消防による緊急消防援助隊が編成されており、既に現地での消火活動にあたっており、しかし大船渡市は被害全容はつかめていないとしている。

 岩手県は今回の火災について災害救助法の適用を決定し、避難所設営に県と国が費用を負担するなど避難の支援を強化しれいます。また岩手県は自衛隊へ災害派遣要請を行い、これを受け陸上自衛隊は岩手駐屯地より県庁と大船渡市役所へのリエゾン派遣として車両8両と隊員31名を派遣したほか、ヘリコプターによるしょうあ活動の準備を進めている。

 東北方面航空隊の駐屯する仙台市の霞目駐屯地ではヘリコプターを複数待機させているとのこと。陸上自衛隊のヘリコプターは予算不足から東日本大震災の任務時と比較しかなりの機数が削減されており、現在漸く予算が拡充した為に2030年まえには一定数が回復されると期待されています、ただ東北方面航空隊も削減されている事は現実です。

 大船渡市や三陸町は2011年東日本大震災において沿岸部が津波被害により壊滅的な状況となっており、漸く復興したところではありますが、ここで内陸部に火災が発生し少なくない民家が焼けている事に心が痛みます。林野火災が受託地に延焼する事例はアメリカなどで増加傾向にありますが、こうした広範囲の火災対策を今後検討すべきでしょう。

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【京都幕間旅情】宝泉院,雪景色とともに御抹茶と和菓子が供せられ湯気さえその静けさに透きとおる

2025-02-26 20:25:00 | 写真
■宝泉院
雪景色の庭園拝観のたのしみ。

宝泉院、雪景色を求めて探訪しました。そして大原は静かなものです。静けさ、考えてみると大原には民宿も色々ありますので、いっそ逗留してみたいとも思ったりするのですが、なかなか。しかし、この不思議な風情は愉しいのかもしれません。

吹雪、そう、この少し前までは吹雪いていましたが、京都の雪景色というのは足早なのですね。それは朝確かに積もっていたが諸事を済ませてさて散策へと気分高めますと、いやいや昂ぶった気分はしかし、情熱以上に気温という熱にほだされてどんどん解け。

比叡山などをみますとその解け往く様子は目の当たりになりまして、東山あたりから西山を見ますと、そう、高雄は雪景色ですが嵐山は雪化粧、そして吉峰のあたりはもう雪は無く、天王山あたりは緑あふれるという雪解けの過程を一望できるほど。

福井の小浜や岐阜の高山、茨城の大洗に静岡の須走、逗留してみますといいなあ、という場所はあるのですが、観光過多とともに物価高騰の流れは次第に地方都市にも浸透してきていますので、こういうものを免れるには精神的な時の移ろいを愉しむしか。

観音崎、横須賀なんかで逗留して時間を過ごしていますと、物価高騰の関係のない、組み立て式安楽椅子に身を任せて文庫本などを片手に行き来する艦船を借景として過ごしますと、こういう休日の過ごし方も好いなあ、と思ったりするのですね。

高山なんかは完全に観光地になっていますので、そうかCOVID-19のときにこういう場所でもう少し過ごすべきだったのかという愚痴を言いますと、台湾海峡有事を待つんだな、と急にお店で現実、リアリズムを突き付けられて驚いたりしましたが。

盤桓園の庭園拝観では、御抹茶と和菓子が供せられまして、これは拝観料のなかに含まれているのですが、型通りではありますが先ず、その器というものを、しかしこの季節ですと変わりゆく湯気さえもなにか芸術的な余韻を残すのですが眺めまして。

御抹茶を、ずずいと頂くとともにやはりというか、抹茶の奥深い苦味に和菓子の一片がよくよく考えられた調和というものを奏でてくれまして、ふうと吐く息も白息となりまして虚空の借景の中に溶け込んで行くという。こういう時間の過ごし方が愉しい。

五葉の松、実に樹齢700年といいますので室町時代から当院を見られて逆に見続けている銘木に、雪の季節では雪化粧するものです。拝観者が少ないという事は、読書も含めて自由な時間を過ごしても憚られない風情、いや空気というべきか、満ちている。

盤桓園、もう少し早く来ていればふぶく様子を動く情景のように眺めることができるのだろうか。いや吹雪の最中にはここまで歩いてくるというのはどういう景色の中を歩くのだろうか、と色々考えたりもするのですけれども。

実光院とともに大原寺勝林院の塔頭の一つとなっています当院、この一角は三千院は有名なのだけれども、落ち着いて考えれば梶井門跡が当地に遷ってきたのは割と最近ですので、大原といえばこの一帯、声明の里というのは本来なのですよね。

大原は平安朝末期から隠れ里のような風情を保っていた、宝泉院はそういった情景に在りまして、盆地のような地形ではあるのですけれども、静けさという余韻がたまるような盆地には、雪の日こそ静けさが増して湛えているようにも、思えるのです。

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【京都幕間旅情】宝泉院,雪深い大原は声明の里に盤桓園の冬風景と静寂を求めて

2025-02-26 20:00:07 | 写真
■大原探訪
 京都はまた三連休に雪景色となりました。

 宝泉院、雪が降りましたならば、どこかの庭園でゆっくりと時間を過ごしたい、こう考えていましたけれども、京都の雪は足早です。すると、ゆっくり過ごすためには、北に向かう他ない、昔は北大路通が京都の北辺だったそうですけれども。

 左京区大原勝林院町、大原のバス停からあるくこと15分ほどでしょうか、ここには宝泉院という庵があります。連休に訪れた大寒波、今期最強、という寒波の次に来ました寒波にマスコミなどは今季最長、と急遽名を改めたものですが京都では。

 大原にやってきたのは、京都に在って古都らしさを湛えている一画であるとともに、北辺は鞍馬や比叡はじめ多くの峰々に遮られる事で寒さを籠めていまして、住むには寒いだろうなあと思うのですけれど、その寒さは雪景色をやはり湛えています。

 慈覚大師円仁が当地に承和2年こと835年、声明の聖地としまして開きました勝林院を開いたといいますが、宝泉院はその塔頭寺院としまして嘉禎年間に造営されたという。なお、嘉禎年間は西暦では1235年から1238年までの期間を示していますが。

 宗快法印、宝泉院を開きましたのは鎌倉時代に声明目録を著すなど声明というものを体系づけることとなりました宗快法印という僧侶によるもので、了性坊、という名の庵として造営されたところを安土桃山時代に幸淵という僧侶が改めた、という。

 声明、しょうみょうとよみます、せいめいではない。これは唐朝にあって仏典の読経に独特の旋律をつけて唱えるもので、いわば音楽という。音律という言葉がありますが、宝泉院には律川という小川がながれていまして、ここに日本における音の基点が。

 石盤という宝泉院声音の起源というべき石が、これは明治時代のものということだそうですが、サヌカイト鉱石による音源の石盤が置かれている事でもしられまして、しかし、庭園というものを眺めて楽しむには音よりも静けさというもののほうが好ましい。

 額縁の庭園、こう呼ばれている書院は、時間をゆったり過ごすのに気持ちが一新します。ここ、目の前に桜も植えられていますし、春の開花の季節は勿論、紅葉の季節にも借景を含めて素晴らしいものが在るのですが、興味深いのはこの大原のおくぶかさ。

 宝泉院、有名な三千院よりも奥深いところにありますので、雪は降るこの季節にはどうしても行き来が難しくなるところなのだけれども、その過疎さが、オーバーツーリズムの悪弊から大原の地を護っているように見える、鞍馬や貴船よりも護られていて。

 盤桓園、鶴亀庭園、宝楽園という庭園が並ぶ様子がおもはゆい。盤桓園は、ばんかんえん、と読むのですが。なにしろ拝観者が少ないものですから、すうっと抜ける冷気は、毛氈と畳が仄かな温かさに凛とした冷気だけを湛えて、なにより静けさを満喫したい。

 音の寺院というべき宝泉院は、しかし先ず音律の前に白紙の無音というものを考えて当地に造営されたというべきなのだどうか。魅入って庭園に思想と瞑想の愉しみという過ごし方もいいのですが、わたしの場合はその先にいろいろな理論や物語を組みつつ。

 盤桓園は、立ち去りがたい、という意味を有しているとも。そしてなにより雪景色だ。雪というものは何気ない風景でも印象を一新させ、しかし一瞬で溶けて去ってしまいますので、なにかこう、桜花の満開のような、そんな風情をもっているようおもうのだ。

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ロシアウクライナ戦争開戦三年【4】グローバルな安全保障問題に対応できる防衛力が望ましい

2025-02-26 07:01:44 | 国際・政治
全方位的な防衛基盤
 本日は226ですが話題は現代の問題を。

 ロシアウクライナ戦争、開戦を回避するには権威主義国家が一旦決断を下した場合、国際法上の適法性や安保理決議などを経ず、いわば決定した時点で、どのようにそういった口実に対する合理的な対応を行おうとも回避する事はできません、唯一回避するには有志連合による多国籍部隊による抑止行動により、力で封じ込める覚悟しかない。

 わが国の場合は、こうした情勢の背景となる、つまり同条件ならば起こり得る権威主義国家とその関心となる地域、核心的利益というべきか、当て嵌まる地域があります。こうした地域で緊張が起こった場合、予防外交の話し合いではなく、それ以上に踏み込んだ決断を行わなければ懸念が現実となる可能性がありますが、その為に投じ得る防衛力は。

 限定戦争と全面戦争の区分をしっかりつけなければ、相手が我が国一部にたいしての限定戦争を試みているのに、射程の部分から全面戦争の入り口を潜ってしまう装備に偏重することで、日本の防衛行動が、相手国策源地攻撃など、全面戦争の入り口をこちらがわから超えることになり得る、故に全方位的な防衛基盤を構築する必要がある。

 オレンジプランや帝国国防方針のような概念から離脱して、すべての状況に対応しうる防衛力整備が、今後は必要となる、つまり想定を想定外が無いほどに積み重ねることも重要ですが、装備体系と作戦体系のマルチパーパス化を進め、例えば南西防衛や本土着上陸と云った、仮定ではなく、グローバルな安全保障問題に対応できる防衛力が望ましい。

 具体的には、限定戦争、日本以外の地域での限定戦争において対応できる防衛力があればある特定地域において放置した場合は第三次世界大戦へ直結する様な懸念が生じた場合に、引き離し任務や安定化任務、停戦監視任務などに充てる事で、局地的緊張を放置した場合に第三次世界大戦という形で日本の安全保障へ影響する事態を回避できる、ということ。

 欧州を見ますと、欧州正面の緊張とは一見無関係に見えるイタリアが先月、ラインメタル社の協力を得て大規模な装甲戦力近代化方針を発表したばかりですし、オランダの戦車部隊再建、独仏次世代戦車開発が合弁企業発足に進む一方でフランスの既存戦車近代化計画は十年近く前倒しが発表されるなど、この分野では既に大きな動きがあります。

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ロシアウクライナ戦争開戦三年【3】多極化時代-ロシアウクライナ戦争勃発とその長期化に繋がる視座

2025-02-25 20:25:15 | 国際・政治
■多極化時代
 ロシアウクライナ戦争の長期化は、その背景となる要因が世界規模で同じことから条件が揃えば朝鮮半島や台湾海峡や東南アジア北部などにおいても同様の事態が生じるという事を理解すべきです。

 多極化時代、このことばは1980年代より既に使われていましたが、2020年代半ばは顕著さを増しているように思えます、その背景として北朝鮮を筆頭に核兵器拡散の流れ、トルコの航空母艦建造や中東欧諸国の国防近代化、なにより中国の経済と海洋における台頭を挙げます。

 単極主義、2000年代まではアメリカの東西冷戦後における規範形成の主導権を一例として、多極化時代とは真逆の方向へ進んでおり、一方でそのアメリカが示した国際公序、自由主義と民主主義や配分的正義と原初状態での平等という価値観は、国際政治に世界政治という視座をあたえた。

 世界政治ということばは一時期模索されたものの、権威主義国家の台頭を背景にいつのまにか使われなくなりましたが、アメリカの価値観の延長線上での非国家アクター、多国籍企業や非国家組織、地域共同体枠組と同盟条約以外の国際協調の枠組みが、国際政治に影響を与える様なる。

 条約のような確たる制度への法的位置づけという国家の行動を制約するものから、原則宣言や議定書など、批准も離脱も自由度をました枠組みが国家間の位置関係に自由度を持たせましたが、それがかえって国家方針に冗長性を与え、結果として縛られない関係が多極化を押し進めた。

 単極世界の価値観において多様化を生む多極化世界という、政治システムの序列のようなものが形成されてゆくのかと2000年代には考えられ、世界システム論という巨視的歴史理論の延長線上、世界政府は生まれないが国際公序は一つに収斂しうるという理論が議論されたのは十数年前です。

 巨視的歴史理論の理解は、しかし権威主義国家が民主主義から生まれるという過去の歴史、全体主義の起源、というような歴史をもう少し理解する必要がありました、なぜならば制度全体を理解しないままに一部の先導者、先駆者、扇動者が方向性を制度化し国際公序から離れる事が可能なのですから。

 二極主義の東西冷戦をへて単極主義となりましたが、この一連の流れとして国際政治への参画アクターが多極化したことで世界政治、と説明されるべき国の際という制度が変容しましたが、この流れを世界システム論から説明した場合、逸脱行為に対する制度としての抑制も低下することを示します。

 権威主義国家はこうした流れの元で生まれました。一方、最大多数の最大幸福、こう説明された民主主義制度は、結果的に収斂する先は最大幸福という視座となるのでしょうが、政治システム論や政治過程論をみればわかるとおり、支持と政策と出力はどうしても時間と遠回りを要する。

 政治過程論を、選挙を省いて一定数の支持層を階層の上位に設定し施策を民主主義的過程を踏まえず進めるものが権威主義国家となるのですが、この仕組みを図式化しますと単純、つまり、権威主義国家は指導層が目的を達成するために回り道を必要とせず、短期間で目的に取り組めます。

 さて、げん状に目を戻しますと、多極化時代、つまり単極主義時代のアメリカが有したポテンシャルが、アメリカにしか供給できないものが限られ、またアメリカにしか供給できないものの供給をアメリカ自身が世論として拒むようになり、この結果、多極化が様々な分野で続く循環が成り立ちました。

 民主主義国家は、ポピュリズムが台頭した場合には理知的な考える政治と市民の参画という枠組みよりも、朝三暮四的な多少矛盾していてもわかりやすい制度に支持を集める傾向が有り、この点はアメリカだけで無く2000年代初頭に我が国でも政権交代の際に痛感させられたところですが。

 全体主義の起源、この視座は戦後間もない頃の戦前を検証した理論でしたが、実のところこの背景となる要素は、ジニ係数などにみる過度な貧富拡大や教育、そしてなによりファクトチェックされた情報の過疎地域が拡大することで現代においてもそのまま当てはまることに気づくところです。

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ロシアウクライナ戦争開戦三年【2】重戦力への回帰-機械化部隊への防衛力の転換を決断する必要

2025-02-25 07:01:44 | 国際・政治
■重戦力への回帰
 ロシアウクライナ戦争開戦三年を受けまして我が国防衛政策についても転換期を迎えている一方でその必要性に十分認識が足りていないのではないかという視点から。

 重戦力への回帰、といいますか、回帰しようにも装備面では冷戦時代にこれをある程度成り立たせていたのは北海道正面だけでしたので、具体的には、旧陸軍時代も含めて史上初といわざるを得ないのかもしれませんが、機械化部隊への防衛力の転換を決断する必要があるようにおもう。

 装甲装備としては、つい先日、フィンランドのパトリア社が自衛隊向けパトリアAMV装甲車のロールアウト式を行いましたが、軽装甲機動車後継のハーケイかイーグルⅣかの選定共々、普通科部隊に行き渡るように現行の810両の量産計画に甘んじること無く、機械化部隊を強化すべき。

 10式戦車についても、連隊戦闘団という編成、原点に回帰して本州への戦車配備を再開するとともに、次期戦車について、従来型の大規模武力衝突を念頭とした装備を開発し、本土決戦主義に甘んじず、第三次世界大戦回避のためのステイクホルダーとしての日本の能力を考えねばなりません。

 世界平和が日本国内だけで自己完結するほど日本には影響力は無く、結果的にどの国も当てはまるとおり、普通の国家として世界平和の維持に貢献するならば、そのための有志連合が組まれた際に参画できるような、そうした防衛力整備が求められる、という認識で考えるのですね。

 勝利か全滅か。日本の防衛政策で問題なのは、従来型の防衛力重視への反論を叫ぶ方ほど、実は基盤として本土決戦主義に陥っているのではないか、ということです。これは、繰り返しになりますが、反撃能力整備とともに反撃能力偏重主義になっているという現状への警鐘を含めて。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ロシアウクライナ戦争開戦三年【1】世界が壊れるのを避けるためにも日本の外交政策としてロシアの行動を絶対に追認することは出来ない

2025-02-24 20:05:54 | 国際・政治
■開戦三年
世界が壊れるのを避けるためにも日本の外交政策としてロシアの行動を絶対に追認することは出来ない.

 ロシアウクライナ戦争は開戦三年目となりました。こうした中で停戦交渉というものの可能性が現実味を帯びてきています。具体的にはその停戦交渉はいまのところロシアとアメリカ政府の、つまり当事国の頭越しに行われている段階ですが、いままで無かった動きが顕在化したといえます。

 第三次世界大戦の入り口に立っている、重要な視座はロシアウクライナ戦争の今後の方向性というもので、仮にロシアに有利な条件を示すこととなれば、権威主義国家は次の機会にもこうした動きを踏襲することで、第二次世界大戦がそうであったように、超えるべきでは無い一線を超えかねない。

 日本は、どういう姿勢でこの概況を見守るのか。重要な点は此処です。何もしないことを平和主義と言い換えられるほどに安穏とした時代ではないということは云うまでもありませんが、少なくとも日本国内の法整備は、入り口の段階とはいえ、世界政治へ関与しうる体制へ転換はできています。

 台湾海峡、軍事力による現状変更というロシアの行動を追認できない最大の理由は、この前例を容認してしまいますと、日本の場合はもう一つの権威主義国家により台湾海峡有事が現実のものとなってしまう可能性があり、南西シーレーンの遮断に繋がることから、その影響度は無視できない。

 朝鮮半島、軍事力による現状変更を追認できないも云う一つの理由は、北朝鮮の派兵により、その見返り措置として何らかの軍事技術や先端装備品、ミサイル技術と第4.5世代戦闘機などが供与された場合、核武装を達成した北朝鮮により朝鮮半島情勢へ影響が及ぶ可能性も無視できません。

 可能性を過度に強調すべきではない、という視座も、進歩的な視座をもつ方々から反論として沸き起こることは想定の上ですが、ロシアがウクライナへ侵攻することは無いだろう、という大勢の意見が2022年2月初頭まで存在したことも事実で、しかしその結果がどうなったかはご承知の通り。

 日本の外交政策として、ロシアの行動を絶対に追認することは出来ない、という主張はこのように、これを赦すならば日本周辺における緊張に直結する事態をも結果的に追認せねばならず、専守防衛ニッポン、周辺事態が現実となってから慌てることとなっては、おそいのです。

 外交政策は上記の通りですが、防衛政策はどうあるべきか。防衛省では、ウクライナPKO任務の可能性を、ある程度、想定外、から除いて研究単位で進められ始めている、これは今朝の産経新聞報道にありました。多分にアドバルーン的な報道ではあるのですが、アドバルーンが上がった。

 防衛政策、非常にミクロ的な視座ですが、NATOに加盟していない日本は、NATO加盟国軍隊の兵力引き離し任務に反対するロシアに対して、韓国軍や中国人民解放軍にインド軍などと並んで派遣した際に大きな混乱を引き起こさない重要な国家アクターとなります。まずはこの視座を。

 NATOに加盟していないものの、日本の防衛力は従来型の大規模戦闘を念頭とした編成を、島嶼部防衛など限定戦争の可能性に切り替えるとともに、この五年間は従来型の重戦力位置づけを更に下げ、逆に12SSM-ERに代表される反撃能力整備へ防衛力整備の重点を転換してきています。

 12SSM-ERは、射程も長く重要な装備ですが、キエフからモスクワまで直線距離で770km、しかしPKO任務に射程900kmの12SSM-ERを持ち込んだとして、停戦が破られた!だたちにクレムリンをミサイル攻撃だ!、という選択肢はありません、それをやると永田町になにかが飛んでくるゆえ。

 安全保障の基盤は遺憾ながら、冷戦後の信頼醸成と国家間対話に基づく武力紛争抑止と紛争解決という国際公序が破綻し始めており、綻ぶ現在の情勢において重視されているのが、軍事力と集団安全保障による武力紛争勃発への封じ込め政策というものです。すると日本の施策は大丈夫か、となるのです。

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