■東富士演習場へ
第一次報告までに、富士総合火力演習の情報をお伝えしたい。特に、注視すべき点を幾つか列挙するのが今回の記事である。
今年度の富士総合火力演習プログラムには、近接航空支援が従来のF-4Ej支援戦闘機に代わり、国産のF-2支援戦闘機が初めて飛来すると記載されていたが、残念ながら雲が低く視界不良である為、対地攻撃の展示に航空機は飛来しなかった。なお、写真は管制式で揮発油を爆破しているもので、実際に航空機から爆弾を搭載しているものではない。ちなみに、昨年度も近接航空支援に飛来するF-4EJが視界不良で飛来できなかったこともあり、来年度こそF-2の雄姿を東富士にて見たいものである。
2005年度末に富士重工から陸上自衛隊へ納入されたAH-64Dアパッチロングボウも、富士総合火力演習に対する去就が不明であったが、残念ながらこちらも飛来せず、AH-1S対戦車ヘリによる飛行展示と機関砲射撃に留まっている。2004年度は不明だが、少なくとも2003年に小生が展開した際にはTOW対戦車ミサイルの射撃展示があったのだが、機関砲の射撃のみというのはやや残念であった。蛇足ながら、機関砲の曳光弾は真横からだと非常に映りにくい。
昨年度からの変更点としては、リペリングにUH-1J/Hが用いられなくなったという点だろう。偵察部隊や偵察オートバイの展開にUH-1HとUH-1Jが各一機参加したが、リペリングに関して今年度はUH-60JAのみであった。昨年はUH-1とUH-60JAが参加した。UH-60JAは夜間飛行も可能である高性能ヘリコプターであるが、その高い価格から年間配備数が非常に限られている事で知られる。写真はAH-1Sの支援とともに進入するUH-60JA。
演習とは関係ないが、演習前の点検射の最中、偵察警戒車が一両スタック、若しくはエンストしてしまったと、演習後C.ジョニー氏より聞いた。その回収に向かったのが写真の90式戦車回収車のようで、出遅れた小生一行は残念ながら“車輌の回収”という写真を撮る事が出来なかった。土浦駐屯地祭でそうした模様は訓練展示として実施されるそうで、来月の桂駐屯地祭でもそうした訓練展示を見る事が出来る可能性がある。
96式多目的誘導弾(MPMS)の発射風景。?、と思われても致し方ない。この白い車は新兵器ではなく、発射風景の様子を流している。実は当日、雲が低い為、光ファイバーを用いての映像にて、ミサイルを誘導する方式を用いているMPMSは誘導が不能であり、発射展示を行わず、過去に録画した映像を放映することで対応していた。残念ではあったが、その代わりといっては何だが、01式軽対戦車誘導弾は二発発射されている。
飛翔する87式中距離対戦車誘導弾。主に普通科中隊の対戦車小隊に配備されている対戦車ミサイルで、人力携行が可能という。レーザー誘導方式であるため、濃霧の際にはレーザーが乱反射してしまう可能性が上げられるが、この程度の悪天候はものともせず、見事目標を射抜いた。飛翔速度が速く、写真は発射後ロケットモーターに点火する直前の遅い飛翔速度の状態にて撮影。一見倒木にも見えるがミサイルである。一見、タバコの投げ捨てにも見えるがミサイルである。一見葉巻型UFOにも見えるが・・・。
写真は90式戦車。日本国内では行進間射撃を行えないとされていたが、昨年度の富士総合火力演習では実施しており、今年度も実施した。これは、行進間射撃用の訓練砲弾が開発されたことで、より実戦的な射撃展示が可能となった。砲安定装置自体は各国の第三世代戦車に搭載されており行進間射撃は可能であるが、自動装填装置を搭載する90式戦車は走行中にも砲弾の装填が可能である。M-1戦車などでは砲安定装置を切らなければ尾栓が振動してしまう為、装填が困難であるのと対称的だ。
昨年度との相違点としては、小さなものではあるが装備品展示に88式地対艦誘導弾が展示されたことが挙げられる。特科教導隊のマーキングが記されていた。隣のMLRSだが、こちらも国内で発射可能な演習弾が開発中と公表されており、いつか総合火力演習で射撃展示が行われる日が来るかもしれない。
HARUNA
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