北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】石清水八幡宮,鳩ヶ峰山上に鎮座する朱色社殿は京都の裏鬼門を護る八幡大神

2021-06-30 20:08:08 | 写真
■八幡大神を奉じ千百余年
 二十二社は上七社の神社とは古くから国家危機や天変地異に際し朝廷よりの勅使を以て国家鎮護の祈祷を行うという。

 八幡大神、これは弓矢を司る武運の神として古くより崇敬された歴史があります。弓矢は武器であると共に凛と張られた弓弦はそれそのものが魔を祓う神具としての由来もあり、さて思い返せば昨今の世の中、疾病や葛藤と戦い抜くには強い心というものは必要と思う。

 平安京遷都に際し当時の京都は、平城京の廃都と長岡京での遷都失敗という次の無い切迫意識があり、平安京の鬼門たる北東には延暦寺を造営、そして京の裏鬼門にあたる南西には八幡宮が勧請される事となり、ここには今も勅祭が執り行われる社殿が鎮座しています。

 石清水八幡宮、朱色の拝殿など山頂の陽射しに一際輝くとともに、京都府八幡市八幡高坊に所在しますこの社殿は近年国宝に指定されまして、とこう概説すると事ですが、わたしたちは徒然草や今昔物語として学校教科書を通じ、実は知らずに親しんでいる寺院の一つ。

 京阪本線石清水八幡宮駅、石清水八幡宮は最寄駅から男山、鳩ヶ峰とも称されます標高143mの山上に鎮座する社殿です。この143mの標高は若干普段着にて詣でますと、夏の日差しでは気温と相談し身構える高さではあるところですが、ケーブルカーが通じている。

 宇佐神宮上宮本殿とここ石清水八幡宮上院社殿、そして伊佐爾波神社本殿と柞原八幡宮本殿は八幡造という、前殿と後殿という前後に相の間で連結させた二棟の建物を一つの社殿とする独特の建築様式となっていまして、石清水八幡宮本殿は国宝に指定されています。

 八幡大神を奉じる社殿とともにその神域は壮大且つ広大で、我が国では大分県宇佐市の宇佐神宮と福岡市東区に鎮座します筥崎宮、そして神奈川県鎌倉市の高名な鶴岡八幡宮とともに日本三大八幡宮に数えられる程です。数えてみますと三山でなく四山なのは気のせい。

 伊勢神宮と併せ石清水八幡宮は二所宗廟として位置付けられており、旧社格は官幣大社、今日では神社本庁の別表神社に列せられていまして、三重県伊勢市は伊勢神宮と京都府八幡市の石清水八幡宮の繋がりを視ますと、京都府と三重県の隣県関係を改めて考えてみる。

 八幡大神を奉じる社殿、この八幡大神といいますのは応神天皇と同一であると考えられ、また誉田別命、比咩大神、息長帯姫命の総称でもあります。この石清水八幡宮の創建は貞観2年こと西暦860年、社殿は令和時代より遡る事千百余年という大河の様な歴史を辿る。

 欽明天皇32年こと西暦571年、八幡神信仰というものは社殿よりまた遥かに遡り筑紫の宇佐嶋、いまの宇佐神宮に降臨したという。貞観2年、王城守護鎮護として和気清麻呂の墓所の在りました神願寺に八幡神を勧請しましたのが、石清水八幡宮の始りといわれます。

 裏鬼門を護る石清水八幡宮は、創建当初、当地を男山としょうしましたことから男山八幡宮とも称されまして、上掲の通り八幡信仰が武運長久を願った崇敬の在り方から勝負事の神様として今も広く知られています。こうした社殿の前では今ならばコロナ鎮撫を、祈りたい。

 石清水八幡宮護国寺、ここは護国寺として造営され、天慶2年こと西暦939年には伊勢神宮に次ぎ奉幣される社殿となりました。そして天永年間の西暦1111年、白河法皇はここを空海の真言宗様式である大塔を、翌年には天台宗様式の宝塔院宝塔を造営し奉じています。

 二十二社は上七社の1つに数えられる石清水八幡宮は、護国寺であるとともに、かつて天変地異に際しては朝廷よりの勅使を以て危機回避へ祈祷を営んだ寺社にあたります。なかなかに遠出できない今日この頃ではありますが、その平癒を、祈りたいところですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】原子力空母シャルルドゴール護衛のイージス艦と空母カブールF-35B搭載試験

2021-06-29 20:20:00 | 先端軍事テクノロジー
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今週は海軍関連の話題を中心に空母護衛や艦載機と最新フリゲイト建造や中古艦供与など11の話題を。日本のヘリコプター搭載護衛艦の様なイージス艦の護衛は貴重という。

 フランス海軍は原子力空母シャルルドゴール艦隊防空に当るフォルバン級駆逐艦の補完にアメリカ海軍の支援を期待しているとのこと。フォルバン級は2隻のみであり、搭載するアスター30艦対空ミサイルは48発、フォルバン級に続いて建造されるアキテーヌ級防空型はアルザス、ロレーヌ共に2021年竣工であり、艦隊防空に限界が生じている状況です。

 シャルルドゴール艦隊防空という問題が浮上したのは、フランス海軍が計画する南シナ海海域への警戒監視任務の際、強力な対艦攻撃能力を持つ中国海軍の恫喝に現在のフォルバン級2隻では限界が指摘される為です。しかしここにアメリカ海軍がアーレイバーク級ミサイル駆逐艦を1隻増援する事で艦隊防空は大きく改善するという、実利優先の視点です。
■空母カブールF-35B運用試験
 イタリア海軍の空母カブールへF-35B搭載が実現します、いよいよハリアーの後継機配備がイタリアで始まる。

 イタリア海軍は空母カブールへのアメリカ海兵隊支援による第五世代機F-35B戦闘機搭載試験を成功裏に完了しました。この一連の試験はアメリカ海軍がパタクセントリバー基地より派遣した支援要員を空母カブールへ乗艦させ五週間にわたる評価試験を実施し、空母カブールの各種装備や要員訓練規模がF-35B運用水準に達していると判断したものです。

 カブール艦上での試験はスキージャンプ台からの発艦試験が115回、垂直着艦試験は120回、そして短距離滑走を含まない垂直発艦試験2回を実施し、この際の飛行甲板への高熱噴射や発着滑走にともなう衝撃への船体強度の検証や各種電子機器への影響は勿論、航法機器や航空管制装置、F-35Bとのデータリンク能力の整合性などの試験も含むものでした。

 F-35Bによる試験はアメリカ海兵隊のアビエイターが操縦しての試験は勿論、イタリア海軍のアビエイターによる試験も含まれており、これら一連の試験は四月にも作戦能力証明を得て、初度作戦能力を獲得します。空母カブールは2004年に竣工、現在は16機のハリアー攻撃機を搭載しますが、これにより15機のF-35Bへ置き換わるのも近いでしょう。
■ギリシャへ暫定艦艇提供
 日本はインドネシアへ護衛艦輸出の交渉が始まっていますが、先ずは旧式艦を輸出してはと思う。

 フランス政府はフリゲイト売却および暫定艦艇提供についてギリシャ政府との間で会談を行いました。これは3月25日、ギリシャを訪問したフランスのフロランス・パルリ国防大臣がギリシャ政府との会談に際し提示したもので、フランス政府はギリシャ建国200周年記念に際しギリシャへ供給するラファール戦闘機を飛行させるなど、関係を強めている。

 アミラルロナルク級、フランス政府がギリシャへ輸出を構想しているフリゲイトは提督級と呼ばれる最新型の水上戦闘艦でフランス海軍の防衛介入水上戦闘艦構想として建造が進められている満載排水量4460tのフリゲイトで、フランスでは現在5隻の建造を計画、一番艦アミラルロナルクは2023年竣工予定で、5番艦までが2029年に就役する計画です。

 ギリシャ海軍はアミラルロナルク級4隻と、その竣工までに暫定的なフランス海軍中古艦の提供を提案されていて、アミラルロナルク級は76mm艦砲とエクゾセ3Cミサイル8発、16発のアスターミサイルや2MU90対潜魚雷、またNH-90ヘリコプターを1機搭載可能で、乗員は140名、更に10名の海兵隊員が乗艦し長期間の哨戒任務に当る設計です。
■カサール級ミサイル駆逐艦
 ギリシャへの暫定艦は日本の護衛艦はたかぜ型の同世代に当るカサール級ミサイル駆逐艦が検討されているもよう。

 フランス政府がギリシャ政府と行ったフリゲイト売却および暫定艦艇提供について暫定艦艇はカサール級ミサイル駆逐艦とが含まれると判明しました。これは仮にギリシャ政府がフランス海軍が売り込むアミラルロナルク級を採用した場合に引渡しまで最短七年を要する為にギリシャ海軍の戦力を維持する暫定艦が必要であるため、提案されたものです。

 カサール級ミサイル駆逐艦は1985年と1988年に2隻が竣工したミサイル駆逐艦でターターミサイルシステムとMk13ミサイル発射装置を搭載、満載排水量は5060t、ディーゼルエンジンにより推進します。暫定艦に含まれたのはフランスが防空艦を提案した為で、フランスにはこの他に防空艦は最新のフォルバン級2隻しか無く、こちらは提供できません。
■ジョルジュレイグ級駆逐艦
 フランスはギリシャへジョルジュレイグ級駆逐艦も輸出するといい、在庫一掃という印象が無くもありませんね。

 フランス政府がギリシャへアミラルロナルク級フリゲイトを輸出する交渉でフランスがつなぎに提案する水上戦闘艦にジョルジュレイグ級駆逐艦が含まれていると判明しました。アミラルロナルク級フリゲイトは建造に時間が掛かる為、防空艦に加え対潜艦を提示した為ですが、供与できる艦がフランスにはジョルジュレイグ級駆逐艦しかあありません。

 ジョルジュレイグ級駆逐艦は1979年から1990年にかけ7隻を建造した駆逐艦で満載排水量は4830t、海上自衛隊の護衛艦あさぎり型に匹敵する大きさです。100mm艦砲とエクゾセミサイル8発、固有の対潜兵装は魚雷のみですがリンクス対潜ヘリコプター2機を搭載しています。またフランスはギリシャ海軍旧式艦の近代化改修支援も提案しているもよう。
■アルジュバイル級コルベット
 アルジュバイル級コルベットはアバンテ2000型コルベットのサウジアラビア仕様で護衛艦いしかり以上あぶくま未満という大きさ。

 サウジアラビア海軍が発注したアルジュバイル級コルベット三番艦のハイルがスペインのサンフェルドにありますナバンティア造船所にて3月29日、進水式を迎えました。進水式は30日予定でしたが荒天を避けた形。ハイルはサウジアラビア北部の年名で、サウジアラビア海軍は本型を5隻導入する計画です。アルジュバイル級はアバンテ2000型の一つ。

 アバンテ2000型コルベットはスペインのナバンティア社が輸出用に開発した小型水上戦闘艦で建造費は5隻で20億ユーロ、満載排水量は2419t、タレスSMART-SMk-2レーダーを搭載、武装はOTOメララ社製76mm艦砲一門とエリコンミレニアム35mm機関砲一門、及び12.7mm機銃二丁を搭載し、航空機格納庫と飛行甲板を有し最高速力は24ノットです。
■巡洋艦フィリピンシー
 巡洋艦は大きいとはいえCOVID-19が一旦まん延すると厄介だ。

 アメリカ海軍ミサイル巡洋艦フィリピンシーがCOVID-19被害から作戦能力を回復しました。これは公開中のフィリピンシー艦内において大規模な感染拡大が発覚し、急遽緊急入港が必要となる事案がありました、フィリピンシーは2月26日、友好国バーレーンが寄港を許可し、第五艦隊支援とバーレーン保健省当局の検疫及び医療隔離支援を受けている。

 フィリピンシーの感染拡大規模がどの程度であったかは発表されていませんが、作戦航海に支障が生じる規模であった事は確かであり、感染者と濃厚接触者の隔離に寄港を必要としていました。しかし入港と共に乗員の半数以上がモデルナ製コロナワクチンの接種を受け、一部の乗員は二度目の接種も受けられたとの事、改めてこの感染症の危険が分ります。
■海洋観測艦VC-11184
 日本ではミサイル防衛へイージス艦を動員しますがミサイル開発にはこうした専用艦という選択肢もあるのですね。

 インド海軍は弾道ミサイル追跡用の海洋観測艦VC-11184を受領したとのこと。海洋観測艦VC-11184はインド国内のヒンディスタンシプヤード社において2014年から建造が進められており、2020年10月より公試が行われていたが、建造計画全般は新型コロナウィルスCOVID-19により遅延していた。建造費は2億3000万ドル規模であったとされている。

 海洋観測艦VC-11184は全長175mといい、排水量は公開されていないが10000t以上あると考えられ、Xバンド周波数帯域のAESAレーダーとSバンド種は数帯のAESAレーダーを搭載、インド海軍とDRDO国防研究開発機構で共同運用される。弾道ミサイル追跡艦はアメリカ海軍やロシア海軍、フランス海軍や中国軍で運用されているが、インドが加わる。
■MMSC多機能フリゲイト
 ギリシャ海軍の将来水上戦闘艦計画は大規模という印象でエーゲ海を巡るトルコとの緊張は財政問題を度外視させているもよう。

 ギリシャ海軍はMMSC多機能フリゲイト建造へLCS沿海域戦闘艦の経験を有するアメリカのロッキードマーティン社との間で交渉を進めているとの事です。これは3月20日にロッキードマーティン社が発表したもので、建造されるMMSC多機能フリゲイトはLCS沿海域戦闘艦の派生型になるとのこと。LCS沿海域戦闘艦の輸出は初の事例となる。

 MMSC多機能フリゲイト建造は8隻が見込まれており、LCS沿海域戦闘艦に対艦ミサイル等を搭載した重武装型が提案されている模様、ロッキードマーティン社はギリシャ海軍の運用する在来型水上戦闘艦艇と云うべきMEKOフリゲイトとの協同が可能であるとともにLCSは高速で軽金属を多用する設計ですが、ギリシャ国内で生産できるとしています。
■MCM機雷戦艦用無人艇
 水中無人機母艦と云うべきMCM機雷戦艦用の無人艇が確定したもよう。

 オランダ海軍とベルギー海洋軍が導入計画を進めるMCM機雷戦艦用無人艇についてECAグループのインスペクター125の搭載が決定しました。MCM機雷戦艦は複数の機雷掃討艇と無人航空機を運用する無人機母艦というべき新しい掃海艦艇で、自らは危険海域まで進出する事無く各種無人機を管制するという新しい時代の機雷戦艦艇となっています。

 インスペクター125は全長12.3m、エンジン二基とウォータージェット二基が装備されており最高速力は25ノットと既存の無人掃海装置と比較し格段に速く、シーステート4の海象下で48時間の任務遂行が可能という。船体は機雷の爆発に耐え、機雷掃討用にはAUV自律型水中無人機、T-18/LARS曳航ソナー、ROV遠隔操作探査装置を搭載しています。

 MCM機雷戦艦用無人艇を発進したインスペクター125は25ノットで機雷原へ前進、到着するとT-18/LARS曳航ソナーを8ノットて展開、発見した機雷を機雷処分弾薬で破壊します。MCM機雷戦艦はオランダとベルギーが二カ国で12隻を導入する計画ですが、インスペクター125は17隻の導入が予定されており、一隻あたり複数隻を搭載する計画です。
■イランホバークラフト部隊
 日本のLCACのようなものではなく数名用の哨戒艇の様なもので速力はありますので、各国艦艇の周りに展開します。近年はカスピ海資源を巡ロシアと緊張が続く。

 イラン海軍は3月下旬に国産ホバークラフト部隊を新編する、海軍のホセインカンリディ提督が発表した。ホバークラフトは大型のものではなく、イラン海軍が現在多数を運用する武装モーターボートを補完するものとみられ、イラン海軍では水陸両用部隊の偵察用や対戦車ミサイル等を搭載しホルムズ海峡などでの哨戒任務に充てるものと考えられる。

 国産ホバークラフト部隊は、イラン海軍が掲げる海軍近代化の一環と位置付けられ、ここ最近、イラン海軍はタンカーの上甲板に鉄板を敷き航空母艦完成を宣言、ミサイル艇やフリゲイトを国産化し空母機動部隊の建設を急いでいる。ホバークラフトの用途は今一つ未知数だが、イラン政府はこれまでに海軍装備を100%国産装備で固める意向を示していた。

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【防衛情報】AH-1Z沖縄防衛訓練とMi-28NM能力向上型,スリオン戦闘型とT-129輸出開始

2021-06-28 20:11:39 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は戦闘ヘリコプター特集です。わが国もAH-1S後継機を遠からず再検討する時機が来ており参考となる情報を幾つか見てみましょう。

 アメリカ海兵隊は日本の沖縄本島において第267海兵攻撃ヘリコプター飛行隊“スティンガー”による島嶼部防衛評価訓練を実施しました。これは2021年4月に実施されたミッションリハーサル演習の一環として実施され、第3海兵遠征軍担当管区の島嶼部が敵対国家により占領され孤立化した際の海兵回転翼航空部隊による反撃要領を検証したものです。

 第267海兵攻撃ヘリコプター飛行隊はAH-1Zバイパー攻撃ヘリコプターとUH-1Yヴェノム軽輸送ヘリコプターを装備し、普天間飛行場へ前方展開しています。訓練では島尻郡渡名喜村入砂島が敵に占領されたと想定、沖縄本島近くの伊江島ヘリパッドを想定前進基地とし、伊江島から反復攻撃により敵指揮所や装甲車両等を無力化する能力を検証しました。
■スリオン戦闘支援ヘリ
 日本のAH-1S後継とUH-1J後継の混迷に対して開発企業を国策で決定し協力企業を海外から募る方式で韓国は成功しています。

 韓国防衛事業庁は韓国国産ヘリコプタースリオンの戦闘支援ヘリコプター型を新たに開発する方針を発表した。これは防衛事業庁が4月26日に公式発表したもので、韓国海兵隊が要求する攻撃ヘリコプター導入計画の選定結果だ。韓国海兵隊は独自の航空戦力を模索中であり、各国攻撃ヘリコプターを候補とし、一年間に及ぶ選定調査を実施していた。

 スリオン戦闘支援ヘリコプターは現在韓国軍が調達するスリオンヘリコプターへスタブウイングと20mm機関砲を追加するもので、スタブウイングには射程6km程度の対戦車ミサイル8発とハイドラ70ロケットポッド、及び空対空ミサイル等を搭載、一方で機体形状をは現状の多用途ヘリコプター型を維持し、タンデム構造等の本格的な攻撃型とはしない。

 韓国海兵隊戦闘支援ヘリコプターへはベルテキストロン社のAH-1Zバイパー、ボーイング社のAH-64Eアパッチガーディアン、トルコ航空宇宙会社のT-129マングスタ、シコルスキー社のUH-60武装型、等も候補とされているが専用型の攻撃ヘリコプターは高く、断念された。開発調達費用は14億4000万ドルで最大24機を調達、2031年に配備を目指す。
■Z-19攻撃ヘリ長距離射撃試験
 自衛隊には攻撃ヘリコプター懐疑論があるようですが結局のところヘリコプターに自己完結装備をシステムとする選択肢への懐疑はヘリコプター懐疑論に繋がる無意味なものとも思えます。

 中国人民解放軍は無人航空機とZ-19攻撃ヘリコプターを連携させた長距離射撃試験を成功させました。これは第71集団軍隷下の空中機動旅団が黄海海上において実施したもので、無人機が先行して海上目標を索敵、続いて発進したZ-19攻撃ヘリコプターが視程外からミサイルを発射させ命中させたとのこと。Z-19はタンデム型の中国製攻撃ヘリコプターだ。

 Z-19攻撃ヘリコプターによる長距離射撃試験の背景には、現在中国軍は075型強襲揚陸艦の量産を進めており、これは多数のヘリコプターを搭載可能、更に水陸両用作戦能力を進める中国は空中機動旅団の増強を進めており、海上での作戦能力強化を示す一例といえよう。なお、Z-19攻撃ヘリコプターがどのていどの距離の目標を攻撃したのかは不開示だ。
■フィリピンのT-129輸入計画
 A-129マングスタ攻撃ヘリコプターは偵察ヘリコプターとして考えるならば割切った設計は評価でき、日本のOH-1もこの方向で発展を模索すべきだったようにも。

 フィリピンはトルコのTAI社よりT-129攻撃ヘリコプター6機の導入計画を進めています。T-129攻撃ヘリコプターはイタリアのアグスタ社が開発したA-129マングスタ攻撃ヘリコプターのトルコライセンス生産型でT-129として採用、エンジン出力を強力なアメリカ製とし一部電子機器をトルコ製に改めました、偵察及び対戦車攻撃を任務としています。

 A-129の系譜であるT-129はタンデム複座型の構造を採用し全長13.45mで最大離陸重量は5000kg、最高速度は278km/hと巡航速度は269km/h、航続距離は561kmでフェリー航続距離は1000kmという敢えて平均的な構造として費用を抑えています。トルコではAH-1W攻撃ヘリコプターの後継として採用、AH-1Sと同じ20mm機関砲や対戦車ミサイルを積む。

 フィリピン軍は長年放置されてきた国軍近代化に全力で取り組んでおり、当面は6機を調達、最大で4機を追加調達する構想です。T-129はヘルファイアミサイルやTOWミサイル、スパイクERミサイル等の運用に対応し、ハイドラ70ロケット弾も搭載します。エンジンはアメリカ製LHTEC-T-800-4A双発、こちらもアメリカ国務省が輸出を許可しています。
■Mi-28NMナイトハンター
 Mi-28NMナイトハンター、ロシアがアパッチに対抗すべく開発している攻撃ヘリコプターです。

 ロシア国防省はMi-28ハボック攻撃ヘリコプターについて現在運用中の機体を最新型のMi-28NM型へ近代化改修する方針を発表、5月19日付タス通信が報じました。カモフ製Mi-28NMはナイトハンターの愛称で知られ、次世代レーダーシステムを搭載するとともに無人航空機との連携、オプトエレクトロニクスターゲットシステムに統合化しています。

 Mi-28NMはH-025レーダーステーションを追加しエンジンをKlimovTV3-117VMAからVK-2500Pへ換装、ミサイルも射程の大きな9M127-1Ataka-VMに対応しています。Mi-28はMi-24ハインドの後継として開発され、最大離陸重量は11.5tと攻撃ヘリコプターの中では破格に大きく2.3tの兵装を搭載、2A42/30mm機関砲始め強力な武装で知られています。

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【日曜特集】航空自衛隊60周年小松基地航空祭(11)ブルーインパルスの極意(2014-09-20)

2021-06-27 20:11:02 | 航空自衛隊 装備名鑑
■ブルーインパルス青空に鋭く
 ブルーインパルスの飛行展示は奥深く冷静に撮影してみますと次はこの角度から等々その探究は進みます。

 レインフォールのT-4練習機五機とF-15J,昔の下向き空中開花を受け継ぐ。レインフォール、傘を思い出させる展示ですが、考えれば不吉な名前ですよね、特に北陸の天候は変わりやすい、学生時代に金沢大学の友人は落雷でPCを研究成果ごと二台破壊されたほど。

 ブルーインパルスの撮影は難しい、いや奥が深いというべきでしょうか、何しろ曲技飛行ですので編隊の密集を超望遠で追いたいところですが、急に散開しますと広角レンズに即座に付け替えねばならない、そして見る角度で印象が一新する、簡単そうで奥深いのだ。

 飛行展示は雲量によって印象が違いますが展示区分も違ってきますので、長期予報というものの短期予報は勿論、当日の雨雲の動きと曇天なのか晴天なのか、快晴なのか風速はどうか、こうしたものも考え、場合によっては予行のうちに撮影してしまう方も多いという。

 ブルーインパルスバックトゥバックをT-4練習機二機編隊で展開し背面をこちらに。しかし雨天も怖いのですが、小松航空祭は何故か雨天予報、それもものすごい豪雨とか警報が想定されるほどの状況でも、何故か晴れるという不思議が。これを"小松マジック"という。

 バーティカルキューピッドのT-4練習機ハートマークがイーグルの頭上に描かれる。ブルーインパルスを撮影するのに超望遠は考え物でして、広角が足らなくなる。このときにも18-200mmとかではなく15-85mmのレンズを装着しておけば良かったかもしれませんね。

 編隊はどこだ、T-4練習機、右か左か前かいや後ろだ、ワイドトゥデルタループへ。ブルーインパルスを撮影していますと、通常の飛行展示では飛行していない方角からど、っと飛来して参りますので方角には気をつけなければなりません。後ろからもブルーは来る。

 ワイドトゥデルタループで広がった編隊が青空の頭上を往く。ブルーインパルス傾向と対策に予行をみておく、というものがありますが、もう一つは周りの子供の視力に期待する、お父さん肩車でみている子供の注意力はとても頼りになる、集中力も短時間はすごい。

 ブルーインパルスが五機デルタ編隊で下方へレインフォールを描く。レインフォール、しかし改めて晴天が求められる航空祭にしては挑戦的な名称とおもう。そして北陸地方の天候は特に変化しやすいとはいうものの、不思議と小松航空祭は晴天に恵まれるという。

 T-4練習機がレインフォールからデルタ編隊で上空へ上昇してゆく。青空、ブルーインパルスが主役で登場する東宝映画に"今日もわれ大空にあり"というものがありましたけれども、その通りの構図、小松航空祭が晴天に恵まれる背景には"小松マジック"というジンクスが。

 ブルーインパルスのスタークロスがF-15上空に、広角が足りないね。この航空祭の晴天は、白山の"くくり姫"菊理媛神が航空祭を楽しみにしているためではないか、とかなり真剣に考えています。小松マジックもすごいほどに天候が回復し、逆に雨天が殆ど聞かないという。

 オポジットコンティニュアスロールで二機のT-4が左右ですれ違う。白山くくり姫、白山比め神社にまつられており全国白山神社の総本山なのですが、そもそもこの小松基地が白山山麓に位置している。神社までは北陸鉄道鶴来駅から徒歩25分という。行ってみたいです。

 ブルーインパルスのT-4練習機コークスクリューがF-15上空で繰り広げられた。コークスクリュー、二機のT-4練習機が一機の飛行する経路の周辺をスクリューのように蛇行して回り続ける飛行展示です。みる角度と位置によってずいぶん印象が変わるものでもある。

 コークスクリューでF-15の背景に、しかし徐々に頭上へ向かってくる。正面から撮影すると見栄えがすごいのですが、このF-15を目の前にした飛行展示ですと、いや、航空祭なのだから地上の情景と絡めた方が角度よりも重要だろう、なんて、おもってもしまいますね。

 F-15を目の前という撮影位置で良かった、小松らしい構図となりますからね。この構図、まずどういった地上展示機の配置なのかは当日到着するまでは、いや前日に空港から見ておく選択肢も無いには無いのですが、基本は判りませんので、直感で選ぶ位置の勝利です。

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【京都幕間旅情】特急南風・特急しまんと-本州岡山と四国高知結ぶJR四国2000系気動車

2021-06-27 18:25:29 | コラム
■JR四国2000系気動車時代
 JR四国2000系気動車時代の特急南風と特急しまんと併結運用の情景です。

 南風。特急南風として活躍する2000系気動車。この特急南風という列車は本州岡山駅から四国各地へ歩み進める際にお世話になります列車で、JR西日本の岡山駅からJR四国の高知駅へ宇野線と本四備讃線、予讃線と土讃線との実に179kmを運行している列車です。

 四国というのは特急王国です。豪華な響きではありますがJR各社の中でも赤字が響く状況であり普通列車や快速列車の利便性を低く抑えて特急料金を頻繁に支払わせる事で赤字を相殺しようと努力しているのかと思う様な乗り継ぎの不便さを感じる事も数多あるものだ。

 2000系気動車、隣にJR西日本旧型車が並ぶと際立つ。1989年にJR四国初の特急車両として開発され、80両が量産されました。車体には四国の峻険な地形を高速踏破すべく振り子式制御装置が搭載、2000年までの主力を担うべくJR車両ながらキハのような種別ではなく2000系、と冠した。

 アンパンマン列車、この2000系気動車には高知県出身の漫画家、やなせたかし氏が高知にて立ち上げた“まんが甲子園”などに関連しラッピング列車として運行されていまして、万人から愛されるアンパンマンの描かれた車体を目にしますと、自然に笑み零れたもの。

 しまんと。高松駅と宿毛駅を結ぶ特急が連結されていました。不思議に想ったのはこの連結は別に瀬戸大橋を渡った高松駅で増結したのではなく、最初から岡山駅にて連結しているのですね。終点の宿毛駅は高知駅から更に進んだところ。高松駅から四時間以上かかる。

 2000系気動車は、しかし2021年3月を最後に特急南風号運用から退き、後継には2019年に登場した2700系気動車が当り、その最高速度は2000系の120km/hから130km/hへ強化されています。一方、2000系は今も特急あしずり、特急宇和海として活躍中です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【土曜特集】榛名から鹿島へ(5)練習艦隊かしま旗艦,大阪港天保山岸壁入港(2008.03.22)

2021-06-26 20:18:25 | 旅行
■日本海側を太平洋側へ転進
 舞鶴基地から一路転進した先は大阪港、日本海側から太平洋側へ同じ日に二つの自衛隊一般公開を撮影してみたかった。

 練習艦かしま。ここは大阪港天保山埠頭です。さて。この日の目的は練習艦隊近海練習航海部隊が大阪港へ入港するとの事でしたが、一般公開が午後からという事でしたので、一つ午前中に日本海の舞鶴基地へ展開し取って返して午後から太平洋側へ行こう、という。

 あさぎり。練習艦やまぎり、が練習艦かしま隣に入港しています。この年度の練習艦隊編成は練習艦隊旗艦に練習艦かしま、そして隷下に練習艦しまゆき、練習艦やまぎり、練習艦あさぎり、と四隻を以て編成されていました。練習艦やまぎり型、と呼ばれていました。

 かしま、あさぎり。あさぎり型護衛艦はこの2008年、日本周辺海域はまだ平和でしたので一部が護衛艦から練習艦へ種別変更されていました。これが南西方面の中国軍事圧力増大を背景に護衛艦へ戻され、艦番号も護衛艦時代のものにもどされましたのはご承知の通り。

 自衛艦旗と練習艦隊。上空を往くのは飛行船で前回掲載したもの。近海練習航海部隊大阪入港、実は入港を真面目に大阪港で撮影する事も考えたのですが、どうぜならば午前中と午後に日本海側と太平洋側を梯子してみるのも良いだろうと思ったもので、いい思い出だ。

 はるな、かしま。日本海と太平洋、やろうと思えば東舞鶴駅と大阪港駅ですのでそれ程むずかしくは無い距離ではあるのですけれども、そういえば何度もやるような行程ではないのですよね。新田原と佐世保とか、三連休を観艦式駐屯地祭航空祭というのはやったけど。

 やまぎり艦上よりSH-60J哨戒ヘリコプターを眺めます。2008年は護衛艦はつゆき型が未だ護衛艦隊の護衛隊群に残っている時代で、一番艦はつゆき、二番艦しらゆき、が護衛艦さわゆき、と共に横須賀地方隊へ配備されている時代でした。三隻並ぶと凄い迫力でした。

 天保山の大観覧車とSH-60J哨戒ヘリコプター。この時代は平和でしたので、実は護衛艦むらさめ練習艦転籍も検討されていたといいます、同型艦9隻でしたので1隻転籍すれば8隻を2隻づつ4個護衛隊群に配置できる、という配慮もあったとのことでしたけれども。

 はつゆき型護衛艦は佐世保地方隊の第23護衛隊に護衛艦いそゆき、はるゆき、あさゆき、と配備されていまして佐世保地方隊には更に第26護衛隊へ護衛艦あぶくま型おおよど、せんだい、とね、6隻があったのですが南西方面の緊張はこの規模でさえ不足になったのです。

 格納庫から練習艦隊を眺めます。2008年は近海練習航海がその1とその2、と二回立て続けに行われていまして、遠洋航海までに幹部候補生として日本を一周した上で新任幹部として幹部候補学校卒業後に日本を一周する、教育を重視できる余裕と平和が在りました。

 艦橋と観覧車。2008年はどのくらい余裕が在ったかといいますと、この時代には毎年全国の地方隊で展示訓練、小規模な観艦式というべき行事が執り行われていまして、後方を重視するだけの艦隊の余裕と艦艇の余裕がありました。最後に展示訓練が行われたのは昔だ。

 76mm艦砲と桜島の倉庫群。地方隊展示訓練が行われたのは2014年でした、2016年にも実施予定でしたが、同年の熊本地震災害派遣により艦隊訓練計画と実任務の余裕が泣くなあり、自衛艦隊司令官の“艦隊を休ませよ”により中止、その後今まで行われていません。

 やまぎり見学を終えて練習艦かしま、あさぎり撮影へと歩みを進めます。もう少し練習艦やまぎり撮影を続けたいところですが時計を見ますと既に1532時となっていまして、急がなければ見学時間が終了してしまうのですね。舞鶴はるな撮影に時間を使いすぎたのかも。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和三年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.06.26-2021.06.27)

2021-06-25 20:18:25 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末も行事は行われません。そこで例年であればそろそろ美保基地航空祭の季節ですので最早懐かしい美保航空祭の写真とともに最新の情報を。

 今週末も自衛隊関連行事は行われません、一応事前予約制の艦艇広報などは募集対象者を念頭に細々と行われているのですが、なにしろ2mの社会的距離を確保する事も容易ではない実状がありますので、どうにかして感染拡大を抑える、そしてワクチン接種率を高め集団免疫を構成するほかありませんが、どちらにしてもこれは一朝一夕には実現しません。

 東京都では本日新たに562名の感染が確認されました。緊急事態宣言が沖縄県をのぞき全国で解除されています。そしてまん延防止等重点措置に一部が切り替えられていますが、実際のところ日本国内でのワクチン接種状況をみますと、安心できる状況とは全くなっていないように思えるのですが、もう少しリスクの根本、人流を抑えられない物でしょうか。

 デルタ株、COVID-19変異株デルタの感染力について、社会的距離を2.5m採ることで30分間会話した場合のリスクを5%以下に抑えることが出来る、これはスーパーコンピューター富岳を用いた飛沫拡散リスク計算についてNHKが2021年6月23日2318時に報道したリスク管理の指針です。この5%以下のリスクをどう考えるか難しいですが、指針の一つ。

 日本人は自然免疫が云々という都市伝説はもう止めにしましょう、日本で感染を抑えているのは感染者すが少ないためです。欧州の感染者数は人口の15%、これでは路上に飛んだ飛沫が消滅する前に舞い上がり吸い込み感染する、対して日本は人口比で0.6%、これならば雑踏を避ければ回避出来得る。七人に一人感染と二百人に一人の感染とはそういうこと。

 陽性十ヶ月目の陰性で退院。AFP通信ロンドン発2021年6月25日1013時報道によれば、イギリスのイングランド西部ブリストル在住72歳男性が感染から幾度か重篤と回復を繰り返しなかなかウィルス反応が陰性とならなかったが43回目のPCR検査で遂に陰性となった報道がありました。半分冗談で半年寝ていれば治るといわれましたが、そう甘くない。

 ブレインフォグ、脳の霧。これはCOVID-19後遺症の一つとしてあげられていまして、血栓が生じているか全身同時炎症というサイトカインシンドロームによる脳損傷なのか、原因は現在確たる結論はだされていませんが、思考がまとまらない、脳に霧がかかったような後遺症が確認されている、こう日本経済新聞2021年4月23日付記事などが報じている。

 脳の霧はCOVID-19に限らず脳神経の症状として所謂コロナ前の時代より確認は為されているのですが、原因が不明であるだけに治療方法も確立していません。そして思考がまとまらない、頻繁な物忘れ、論理を組み立てられない、会話の前の内容を忘れ意見交換が出来ない、即ち日常生活さえ成り立たなくなるという後遺症が、全員ではないが報告される。

 特効薬はありません。関節リウマチ治療薬アクテムラがアメリカFDA食品医薬品局で緊急認可された、抗マラリア薬ヒドロクロロキシンが効果的だ、こうした報道を見ますと一見して治療薬が完成したのだと誤解しますが、報道が示す当局発表や論文を丹念に見ますと、投与した患者群の致死率と非投与患者群の致死率に若干の違いがある、程度のものを含む。

 抗マラリア薬メフロキン、抗マラリア薬ヒドロクロロキシン、関節リウマチ治療薬アクテムラ、効果があるとか重症化を防ぐという論文や報道がありますと、その後の検証作業が、なにしろ世界中で患者は多い、行われますが現在のところ芳しい成果はありません。なにか1945年8月の広島で原爆治療に新薬“虹波”軟膏が画期的と報じられた歴史を思い出す。

 感染を抑えて、この遅滞戦術とともにワクチン接種を進め、集団免疫を構成するほかありません。逆に感染拡大をワクチンで抑える事は別の危険を引き起こします、それはコロナウィルスはウィルスであり、細菌感染症ではない為です。実際のところ細菌とウィルスを混同する方が多く、コロナ菌という表現を見るたびに、理科教育の重要性を痛感しますが。

 デルタ株に代表される変異株は、ウィルスが単体生物ではなく核酸が人体などの細胞に入り込んで初めて増殖を始める過程でウィルスが変異するのですから、ワクチン接種を進めていてもその最中に感染が続けば、ワクチンにより構成される免疫を阻害する変異株だけが生き残り、感染を広める。ウィルスの自然淘汰と更なる感染の広がり、当たり前の話だ。

 肝練りとして戦国時代に薩摩藩士は囲炉裏端に火縄銃をわざと暴発させるよう仕組み囲むように酒宴を開き胆力を高めたという。長州藩士はフグを肝共々ブツ切りで鍋にして度胸試ししたという。コロナ軽視というものはこうした過去の風習を視ているようで、改めて、その外出、本当に必要火急ですか、不要不急ではないのですか、と考えて欲しいですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都幕間旅情】彌伽宜神社-大森神社,軍港都市舞鶴鎮座の四世紀創建社殿は製鉄と水を祀る

2021-06-24 20:04:59 | 写真
■霊水湧く東舞鶴歴史情緒
 舞鶴と云えば田辺城中心の西舞鶴こそが中心であった時代が長いのですが東舞鶴にも滔々と歴史が紡がれています。

 彌伽宜神社、“みかげじんじゃ”と読むこの社殿は軍港都市である舞鶴市の東舞鶴駅より徒歩十五分、舞鶴市森井根口に鎮座しています。東舞鶴駅は舞鶴基地最寄の駅でかつては更に中舞鶴へ路線が伸びていましたが廃線となり、基地まで徒歩25分の立地にあります。

 大森神社としても親しまれる彌伽宜神社は、東舞鶴駅から府道28号を基地とは逆の山手に向かった立地にありまして、列車運行間隔が微妙に長い舞鶴線や小浜線の列車を無為に改札前で待つのではなく、東舞鶴駅指呼の立地の社殿に詣でよう、と歩みを進めた次第です。

 夏の祭事は大名行列等、ちゃった祭りと舞鶴グリーンフェスタとともにこの東舞鶴界隈では、最近は艦隊これくしょん砲雷撃戦が加わりましたか、賑やかに執り行われますが、普通の終末の際には敢えての観光客も舞鶴基地の方へ行ってしまい、静寂が保たれています。

 天御影大神と誉田別大神の二柱を奉じる社殿、その創建は崇神天皇御宇11年の西暦311年頃に遡るといい、崇神天皇は神話上の神武天皇以降、考古学上実在が確認されている最古の天皇となっています。市内由良川河畔の志高遺跡は縄文時代初期のものといい、納得も。

 御霊水がいまもこんこんと湧き出す境内には、この御霊水こそが延齢泉として尊ばれ此処に神社が鎮座している由来という。実はこの境内とその周辺“蛇切石”という歴史遺構が伝承されていまして、海沿の内陸部には在りますが、ここは水に纏わる神社なのだな、と。

 本殿の直下に井戸があるといいまして、境内にはこの水を湛えた池、そして池の中央に水神社の祠が鎮座しています。もっとも参拝したこの日には大量の藪蚊が大蛇の如く蜷局を撒き、境内ゆえに殺傷も憚られ、写真を撮影しつつ逃げまわっていたのですけれども、ね。

 蛇切石の伝説とは、中世以前に美しい人間の姿を纏った蛇の姉妹と若者の交流と誤解に基づく対立を伝えるもので、最後に村の人々と対立した姉妹の片方は討伐されてしまい、祟りを恐れて切り分けて供養した、という。山麓の蛇伝説とは概ね水害を意味する事が多い。

 延齢泉という清水が湧く境内は、恐らく過去には丹波の山々から大雨の際には洪水を招き、これが伝承として残っているのでしょう。しかし清水が湧く一角は同時に農業にも不可欠な水源である事も意味し、東舞鶴周辺にかつて集住の始りを思わせるものと云えましょう。

 白鳥街道という西国巡礼街道が中世の頃から丁度舞鶴線と小浜線の位置に重なるように伸びていまして、彌伽宜神社は国宝絵画と西国札所三十三巡りで知られる舞鶴市東端の松尾寺へ至る中継地となっていました。此処の村落は宿場町であったのだと考えられましょう。

 天御影大神と誉田別大神を奉じる社殿は、もう一つ、この神々が製鉄を司る神である事を付け加えますと、歴史を感慨深く見直す事が出来ます、日本製鉄発祥の地は出雲地方と伝わりますが、出雲地方とこの舞鶴は山陰道を経て実は通じているのですね。そしてひとつ。

 横山別所鉱山や別所暮谷鉱山と舞鶴には中世から鉱山があり、製鉄と所縁はあったのですが日立造船舞鶴工場としまして、日本海側最大の建造ドックを有する舞鶴は造船の街でもあるのですね。現在はジャパンマリンユナイテッドですが、境内には日立造船奉納品も。

 舞鶴海軍工廠の造船施設を継承した日立造船は、ユニバーサル造船と変わりまして現在はジャパンマリニュナイテッド、社名は変わっていますが金属加工を奉じる神社という事で近年も砕氷艦しらせ等、自衛艦を建造しています現代の舞鶴と所縁ある神社なのですね。

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【防衛情報】アメリカ陸軍ストライカーMGS型2022年全廃とM-1A2-SEP-2-V3戦車新動向

2021-06-23 20:00:26 | 国際・政治
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はアメリカ陸軍特集です。空軍のF-22戦闘機2030年代廃止決定や海軍の沿海域戦闘艦運用終了に海兵隊のM-1A1戦車全廃等と変革が続く中での陸軍の動向や如何に。

 アメリカ陸軍がストライカー105mm機動砲を全廃するという驚きの転換を発表しました。陸上自衛隊では16式機動戦闘車の配備が進み、装輪戦車元祖というべきイタリアでは120mm戦車砲を搭載したチェンタウロ2が採用されたばかりです。そこで今回はアメリカ陸軍の新しい潮流をM-1戦車とストライカー装甲車の視点から見てみる事としましょう。
■ストライカー機動砲全廃へ
 ストライカー105mmMGS機動砲の全廃発表は余りに衝撃的でした、もっとも自動装填装置の不具合を目の前で見た事がある故にやはりかという印象ですが。

 アメリカ陸軍はストライカー105mmMGS機動砲について廃止、2022年内にも後継装備を調達せず形式消滅させる。ストライカーMGSは自動装填装置を用いた機動砲で2000m圏内で旧ソ連製T-72戦車の正面装甲を貫徹する能力があるが、車内には105mm砲関連装備が満載され汎用性が無いと共に、105mm砲は治安作戦などには威力過大となっている。

 ストライカー機動装甲車については、現在搭載するコングスベルク社製RWS遠隔操作銃搭へ12.7mm機銃と共にジャベリン対戦車ミサイルの連装試験が進められており、またストライカードラグーンとして30mmRWS搭載型が配備されている。30mmRWSはストライカーには巨大だが後継装甲車を大型化させる構想もあり、MGSの時代は終わったようです。
■MGS機動砲を代替する装備
 ストライカー105mmMGS機動砲をどのような装備が置換えるかについての指針です。少々心配な要素が多い。

 アメリカ陸軍のM-1128ストライカー105mmMGS機動砲廃止について。2000年代に画期的な装備として調達されたM-1128ストライカー機動砲ですが、2022会計年度より廃止開始されるのは少し早すぎると驚かされました。ただ幾つかの問題が指摘されています。第一には肝心の105mm砲に関する自動装填装置の陳腐化、そして装填不良の問題が一つ。

 M-1128ストライカー105mmMGS機動砲についてもう一つの問題は、機動砲部分の製造が終了し長期間を経て稼働率を維持する為の保守整備や予備部品などの枯渇が始まるためです。アメリカ陸軍はジャベリン対戦車ミサイルや30mm機関砲により任務は代替できると考えているもよう。ただ、今後増加するであろうアクティヴ防御への有効性は未知数です。
■M-1A2-SEP-2-V3寒冷地試験
 日本の90式戦車と違いアメリカはストライカーMGSに見切りをつけてもM-1戦車はまだまだ使うもよう。

 アメリカ陸軍はM-1A2-SEP-2-V3の寒冷地試験を完了させました。世界中で任務を展開するアメリカには重要な試験です。SEPとはシステムエンアンスメントパケージの略称、M-1A2-SEP-2-V3は改良を重ねるM-1エイブラムス主力戦車の最新改良型で、今回の試験はアメリカ本土に唯一のアラスカ州CRTC陸軍寒冷地テストセンターにて実施されました。

 M-1A2-SEP-2-V3は欧州や中東での戦闘を想定し、陸軍ではユマ試験場において徹底した実験を行っており、これは105mm砲を搭載する草創期のM-1戦車以来40年間に昇ります、寒冷地試験は北極圏での戦闘を想定し2020年1月から一年間にわたり実施されているもの。特に補助動力装置APUや繊細なFCS火器管制装置などが充分機能するかが確認されます。

 CRTC寒冷地テストセンターでは様々なトラブルも確認され、センター内を流れるデルタ川徒渉に際して戦車が踏み砕いた川の流れが戦車砲に到達したとともに川から出た瞬間に砲身内で凍結、また大量の降雪は照準装置等に積雪地の自動車にままあるトラブルを再認識させるなどの問題が発生していますが既存のまま対処可能な範囲内で有ったとの事です。
■PrSMミサイル400km試験
 アメリカ陸軍は58口径155mm榴弾砲により100kmの射程を目指している最中ですがPrSMミサイルはより遠距離を狙います。

 アメリカ陸軍が開発を進めるPrSM陸軍プレジションストライクミサイルについて開発を担当するロッキードマーティン社は400kmの射撃試験を成功させたとの事です。実験は5月14日、ニューメキシコ州のホワイトサンズミサイル試験場にて実施され、HIMARS高機動ロケット発射システムから射撃されたミサイルは正確に目標付近に着弾したとのこと。

 PrSM陸軍プレジションストライクミサイルは陸軍の各種装備射程延伸施策の一環として行われており、開発リスクを低減する為にロッキードマーティン社が過去に開発したATACMS陸軍戦術ミサイルシステムの射程を延伸する形で行われています。ただ400kmの射程は今後延伸される計画であり2021年後半にも改良型の発射試験が行われる予定です。
■オリジン次世代車両計画
 既存装備の近代化を図る一方で画期的な将来車輛の模索も進んでいるようですね。FCS計画など突如反故にされるものも過去には多く今回は成功するのか。

 アメリカ陸軍は無人戦闘車両によるプロジェクトオリジン次世代戦闘車両クロスファンクショナルチーム実証実験を2020年11月に実施したと発表しました。これは第3機械化歩兵師団が協力し実施、各種無人車輛等との連携要領を演練したとのこと。プロジェクトオリジンにはイギリス製スパキャット軽全地形車両を無人化した車両なども投入された。

 プロジェクトオリジン実証実験では、八輪駆動の軽全地形車両にM-2重機関銃やジャベリン対戦車ミサイル、40mm自動擲弾銃や発煙装置を搭載した車両が参加、歩兵部隊の前進を煙幕と重機関銃により支援し、仮設敵戦車部隊に対してジャベリン対戦車ミサイルの機動運用を行い対処したとのこと。評価試験はジョージア州フォートベニングで実施された。

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のしろ(FFM-3 NOSHIRO)もがみ型護衛艦三番艦命名・進水式を三菱重工長崎造船所で挙行

2021-06-22 20:21:37 | 先端軍事テクノロジー
■ちくご型護衛艦11番艦継ぐ
 長崎にて新しい護衛艦が進水式を迎えました、中々に長崎まで遠出できない最中ですがその護衛艦の概要を視てみましょう。

 もがみ型護衛艦3番艦が三菱重工長崎造船所にて本日進水式を迎えました。新護衛艦の艦名は護衛艦のしろ、旧海軍の阿賀野型軽巡洋艦能代を継ぐと共に大量建造され戦後の日本沿岸防衛に大きな功績をのこした護衛艦ちくご型護衛艦11番艦のしろ、を継ぐ護衛艦の誕生です。昨年に先行して二番艦くまの、が進水式、気付けば新型艦も三番艦命名ですね。

 ちくご型護衛艦の名を継いだ護衛艦のしろ、冷戦時代に大量生産された護衛艦の艦名を継承する、これは先行して建造されている護衛艦くまの、も先代は護衛艦ちくご型の艦名でして、海上自衛隊の新しい護衛艦もがみ型量産への意気込み、と受け取る事が出来るかもしれません。もがみ型は現在6番艦まで予算認可となっており、当面は22隻を建造します。

 のしろ。どのような護衛艦かと云いますと、対水上戦闘と対潜戦闘を担うと共に機雷掃討による航路防衛や水陸両用作戦支援を通じての我が国島嶼部防衛、まさに多用途に用いられ、更に将来的には長距離防空能力を付与させ、護衛艦隊に配備される艦隊護衛艦に伍する運用が見込まれています。そして幾つかの点で画期的な護衛艦として計画されています。

 画期的な点は幾つもあるのですが、コンパクト護衛艦。計画当時こう呼ばれ、小型艦と勘違いする方が多いようですが、当初は基準排水量2000t規模の船体をウォータージェットで40ノット高速航行するアメリカのLCS沿海域戦闘艦のような構想がありました、コンパクトと云うのはその名残、実際には、はつゆき型、あさぎり型を上回る事となりました。

 もがみ型護衛艦は比較的大型の水上戦闘艦です、満載排水量は5500t、基準排水量でも3900tです。日本では世界最大の駆逐艦こと満載排水量27000tの護衛艦いずも型など怪物級の護衛艦が並んでいますが、ドイツ最大級のザクセン級フリゲイトが5670t、フランス最新鋭のアキテーヌ級が6100t、イギリスが計画中の31型フリゲイトが5700t、つまりは大きい。

 FFM,もがみ型護衛艦は艦隊駆逐艦を示すDDでも護衛駆逐艦を示すDEでもなく、フリゲイトを示すFFにMという機雷戦とも多用途とも受け止められる区分となっています。それもその筈、配備部隊は護衛艦隊でも地方隊警備隊でもなく、掃海隊群へ大量配備される事となっています。そして部分的に掃海艇の機雷掃海任務を置換える護衛艦となるもよう。

 オーガニック方式、水上戦闘艦にUUV水中ロボット等を搭載し機雷掃海に充てる運用の用語です。FFMはこの方式で機雷探知装置や機雷処分弾薬等を搭載するべく、多目的区画を採用しています。もっとも水上打撃力も相応に高く、17式艦対艦ミサイルと127mm艦砲、SEARAM個艦防空ミサイル等を搭載、後日搭載で開発中のA-SAM艦対空ミサイルを積む。

 90名で運用可能、もがみ型は自動化を大幅に進めた事でも知られます。乗員数は90名ですので一直あたり30名で運用できる事を意味し、これは護衛艦あさぎり型の定員220名と比較し四割程度です。少子高齢化とともに財政再建を名目に自衛官の曹昇任枠限定と中国脅威増大を受け実任務増大、ますます厳しくなる勤務環境において省力化は重大要素の一つ。

 あさぎり型護衛艦8隻の乗員数で、もがみ型であれば20隻を運用できる事となります。そして海上自衛隊では複数クルー制を、もがみ型から採用する計画で、これは護衛隊を構成する3隻の護衛艦に4隻分の乗員を確保し交代させる新方式を導入します。個人的には乗り心地の良い護衛艦を建造し、曹候補士制度を復活させ若者を大事にした方が良いと思う。

 安価に収めている。これも特色の一つでしょうか。建造費は2隻で1000億円程度、毎年2隻建造を念頭に置いています、イージスシステム搭載まや型ミサイル護衛艦の三分の一、1990年代に9隻が量産された護衛艦むらさめ型が650億円でしたので、デフレの影響を差し引いたとしても、ここまで建造費を抑える事が出来たのはまさに日本の造船能力の強み。

 多用途に活躍し、乗員を大幅に縮小し、建造費も安価である、これが新しいFFMの特色と云えます。そして、例えば、搭載する多機能レーダーOPY-2はP-1哨戒機用に開発されたHPS-106レーダーの発展型である、などなどこれまでに日本が国産開発した各種装備技術を応用する事で、安価に抑えている、こうした背景も理解しておくべきなのでしょうか。

 のしろ、続いて岡山でも間もなく4番艦が命名式と進水式を迎える事となります。なにしろ22隻の量産計画、中々に日本の財政状況は厳しいですが6番艦まで予算が認可され、7番艦と8番艦の概算要求が数週間以内に提出されると考えられています。この整備が完了すれば、いよいよ護衛艦隊用汎用護衛艦の更新も始り、防衛力整備は転換点を迎えています。

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