
8月27日、懸念された台風の影響も無く、陸上自衛隊富士総合火力演習が開催された。
今回は、特にその前段演習に的を絞りお伝えしたい。
富士総合火力演習とは、陸上自衛隊富士学校により実施される国内最大規模の公開実弾演習である。その目的は、富士学校学生を対象に現代火力戦闘の様相を教育することにあるが、国民にも広く公開されている。しかし、その入場券は倍率が十倍以上と入手が困難なほど人気を得ている。

今年度の富士総合火力演習は、イラク復興人道支援派遣やロンドン同時多発テロ、防衛大綱改訂という激変する安全保障環境・国際情勢の下で実施され、マスコミからも大きな注目を集めていた。
さて、本演習は装備品実弾射撃展示を実施する前段演習と、シナリオ方式で展開する後段演習に分けて行われる。

前段演習は特科火砲の射撃展示より開始され、99式自走榴弾砲、牽引式榴弾砲FH-70、203㍉自走榴弾砲などが射撃展示を行った。砲兵戦における火力行使は、攻撃準備射撃やかく乱射撃など、現代の地上戦闘には欠かせないものである。
演習場の制約から3000㍍の射撃が限度であるが、99式自走榴弾砲は、通常榴弾でも最大射程で30kmを誇り、自動装填装置を併せ、世界有数の能力を有している。

特科火砲に続き、普通科部隊により迫撃砲の射撃展示、対戦車誘導弾の射撃展示が実施された。64式対戦車誘導弾・79式対舟艇対戦車誘導弾・87式対戦車誘導弾、そして写真の96式多目的誘導弾の射撃展示が行われた。同誘導弾は射程10km、光ファイバーにより熱画像誘導を行う最新装備だ。
わが国は一貫して対戦車ミサイルは国産の方針を貫いており、その技術的蓄積がこうした高性能なミサイルを完成させる。

続いて、ヘリコプターによる空中機動が展示された。写真のUH-60JAは最新鋭の多用途ヘリコプターで夜間飛行が可能となっている。他にAH-1S対戦車ヘリコプターやCH-47J輸送ヘリコプターが飛行を展示した。空中機動は、地皺の多いわが国を少数の部隊で防衛するには最適な部隊である。
方面隊のヘリコプター部隊の他、近年では師団飛行隊に対しても多用途ヘリコプターの配備が開始されており、大規模災害やゲリラコマンド侵攻に備えている。

ヘリボーン展示に続き、進入してきたのは96式装輪装甲車である。この他、軽装甲機動車も登場し射撃展示を行った。これらは、現在もイラク復興支援任務にも派遣され使用されている。冷戦後、北海道以外にも脅威が及ぶに至って、路上機動性を重視した装備品として全国の普通科部隊に配備が進んでいる。
装輪装甲車部隊は、降車戦闘・乗車戦闘を展示した。
従来は、自動擲弾銃を装備しているが、今回はイラク派遣車輌と同じように、重機関銃を装備した96式が使用されていた。

この車輌は、乗車戦闘や積極的な戦闘への参加を目的として開発された、89式装甲戦闘車である。
35㍉機関砲と79式重MATを搭載し、七名の普通科隊員を輸送しつつ、降車戦闘を強力な火力により支援する事が可能である。
車体側面には銃眼が設けられており、89式小銃を突き出して発砲することも可能だ。なお、銃眼から射撃する為、車内は背中合わせに座席が設けられている。

90式戦車が演習場に進入してくる。
50tの巨体を1500馬力のエンジンは70km/hで機動させ、複合装甲は戦車砲弾の直撃にも耐えるとされている。自動装填装置により速い発射速度を誇る120㍉滑腔砲は、連続発射により想定される全ての戦車の正面装甲を破壊することが可能である。
北海道以外では、90式戦車は、この富士教導団に配備されているのみである。

前段演習の最後は空挺部隊の降下により終了した。
高度3000㍍を飛行するCH-47Jより降下した空挺隊員は、パラグライダー方式の落下傘により精密に観客席前に降下、観客から惜しみない拍手が起こった。この方式の降下は精密に地域を選び降下する事が出来、夜間隠密降下などで用いられる方式である。隊員は、習志野の第一空挺団より参加した。
以上で前段演習の詳報を終え、近日UPする後段演習に続きます。
お楽しみに。
HARUNA