北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第三回・・・掩蔽陣地機能は密閉戦闘室と機動力が継ぐ

2015-01-31 23:15:52 | 防衛・安全保障
◆掩蔽陣地を装甲車が受け継ぐ機能
 前回までに陣形の歴史的変化の変遷を示しました。

 即ち装甲車は、防御戦闘において防塁の発展形であり、個人用掩体は装甲車周辺や場合によっては装甲車そのものが掩体や砲兵からの掩蔽に用いられるようになります。興味深いことに建設機械の発展は、掩蔽陣地の急速建設速度を運動戦に間に合わせる速度は持ちませんでしたが、装甲車用掩体を急速構築する速度には対応しています。

 併せて、掩蔽陣地が求めた地下陣地化は、皮肉なことに個人用対戦車火器等第二次世界大戦において掩蔽陣地から投射した装備品の長射程化により地形障害や陽炎の影響が無視できない水準となり、地下では地表からの影響を受けやすくなったため、地表に露出する形となったのです。

 掩蔽後では砲撃などから陣地を防護するために天蓋を防御し曳火射撃に備えていましたが、そのあたりも装甲車は対応しています、むしろ装甲車が密閉戦闘室を採用する背景には、必要故の発展と言いますか、此処にあるという事も見いだせるでしょう。機動運用の際の防御力が最たる部分にあるとも言えるでしょうが。

 装甲車は地表に露出して掩体へ入る状況であっても、天蓋部分は相当旧式の装甲車や空挺用と対ゲリラ戦用の特殊車両などの例外を除けば装甲化されているため、冒頭の部分に示しました装甲車の特色である”歩兵を第一線火力から防護し機動運用するため”という部分が移動可能な陣地としてもちうる、といえるでしょう。

 そして興味深いのは、掩蔽陣地を迅速構築するために進んだ工兵の陣地構築技術は、応急野戦築城資材の技術革新や野戦築城用装備の技術発展という波及効果を及ぼし、装甲車が防御戦闘を展開するために必要な装甲車用掩体程度ならば、油圧ショベルやドーザーにより短時間で建設する能力を有しました。

 防塁が移動可能な形となったのが装甲車、ともいえまして、特に防塁は個人用掩体の拠点として運用できるという部分、そして装甲車には機関銃や装甲戦闘車によっては機関砲と火器管制装置を有しており、装甲車により機動する歩兵分隊は対戦車火器を装備しているため、火力も持つ。

 比較しますと、装甲車と同時期に誕生した戦車、第一次大戦中の戦車は移動砲台としての運用が為されていました、こうした意味では戦車こそが防塁の発展形、と考える事も不可能ではありませんが、戦車が移動砲台という印象を持つのに対し、装甲車は歩兵の拠点となり得るため、やがりこちらが移動可能な防塁といて差し支えありません。

 連絡線となる塹壕も、実は装甲車はその発想そのものを受け継いでいます。塹壕は、その目的が直接照準火器や砲兵火力の脅威下において安全に移動するための陣地であるため、防塁と防塁を移動する手段として、装甲車そのものが機動することで装甲により人員を移動させる、すなわち装甲車の機動力が連絡線たる塹壕の位置にある訳です。

北大路機関:はるな
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平成二十六年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.01.31・02.01)

2015-01-30 22:59:30 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 寒波が波状的に押し寄せる今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。

 来週より海上自衛隊は伊勢湾掃海運連を実施しますが、この関係で海上自衛隊は明日土曜日に三重県松阪港において掃海艇一般公開を行います。20隻以上の機雷戦艦艇が参加する訓練で、全ての艦艇が公開されるわけではありませんが、この季節の貴重な自衛隊関連行事と言えましょう。

 伊勢湾機雷戦訓練は、我が国周辺へ機雷が敷設されたとの想定に立ち、訓練機雷を実際に敷設し、一不明の機雷脅威を掃海艇や航空機が参加し発見し処分するというもので、特に我が国周辺では機雷戦を重視する海軍による脅威があるほか、シーレーンへの機雷敷設脅威があるため、この種の訓練は重要です。

 海上自衛隊基地一般公開は舞鶴基地が土曜日のみ、呉基地は日曜日に訓練支援艦くろべ一般公開、佐世保基地は土曜日と日曜日に護衛艦あさゆき一般公開が行われます。どの基地も時間や天候急変による一般公開変更などは地方隊HPや広報にご確認の上で、お出かけください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
・2015.01.31:松阪港海上自衛隊掃海隊群艦艇一般公開・・・http://www.mod.go.jp/msdf/index.html

◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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富士重工戦闘ヘリコプター訴訟、東京高裁が国に損失分350億円の支払い命令

2015-01-29 23:00:00 | 防衛・安全保障
◆AH-64D戦闘ヘリコプター生産基盤費用
 東京高裁は本日の判決で国から富士重工へ350億円の支払いを命じました。

 62機の調達を計画し、13機に突如修正、62機分に分散する生産基盤整備費用は支払わない、この姿勢に対し生産ラインを整備するために国が支払うべき費用はしっかりと支払ってもらわなければ私企業として成り立たない、富士重工AH-64D戦闘ヘリコプター訴訟は、このように始まりました。陸上自衛隊は96機を導入しましたAH-1S対戦車ヘリコプターの後継機としてAH-64D戦闘ヘリコプターの導入を決定、アメリカボーイング社製ヘリコプターを日本国内の富士重工へライセンス生産させることとし、AH-64D戦闘ヘリコプター62機を配備し5個飛行隊と教育所要へ充てる方針を示します。

 日本国ににおいてライセンス生産を行う背景には、直輸入の場合は定期整備などにおいて予備部品が必要となた場合、到着まで数か月から最長で数年間が必要となり、その間に機体が部品待ちとして飛行不能となります。条件にもよりますが、直輸入の場合、NATOのように域内で部品集積地を配置しない場合は半分程度に稼働率が落ちてしまい、必要な稼動機が50機であった場合は100機を買わなければなりません。しかし国内でライセンス生産し、予備部品をすぐに発注し供給を受けられる体制を構築しておけば、例えば戦闘機の場合九割程度の稼働率を維持でき、ここにライセンス生産の意味を見出す事が出来るでしょう。

 しかし、ライセンス生産を行うためには生産基盤、生産に必要な部品を調達するための治具を購入しなければなりませんし、ライセンス生産が認められない部品などは直輸入しなければなりません。自衛隊は毎年数機づつ十数年をかけて調達しますので、それまでに直輸入では生産元が生産終了してしまう可能性が高く、富士重工ではこういった状況を回避するため62機分の部品を取得しました。仮に毎年数機づつ防衛省が要求したとしても毎年富士重工が数機づつボーイングへ要求していても、部品が到着するまで下手をすれば数年を要し、場合によっては所謂絶版もありえるので、一括発注しか方法はありません。

 こうした費用は防衛省が最初に予算を計上して支払うのが真っ当なのですが、防衛予算の上限が厳しく、この必要な数百億円の費用を62機に分散して支払うこととしたのですが、AH-64Dの一機当たりの費用が防衛予算の限界と弾道ミサイル防衛などの諸政策へ新しい負担を強いられる状況下では捻出できなくなり、13機で調達を終了することとしました。弾道ミサイル防衛だけで一兆円以上の費用を要し、しわ寄せの一つが戦闘ヘリコプターに押し寄せた形ですが、毎年1機2機と調達数は少なすぎたため、富士重工の生産ライン維持費などが価格に上乗せされ、より高くなる悪循環です。

 毎年5~6機は調達しなければ非効率なのですがその予算を捻出できず、11機調達したところでボーイング社が改良型のAH-64Eを開発、この時点では仕様変更で絶版になりAH-64Dが買えなくなるところを富士重工が部品を先に調達していてくれたので間に合った、と思うところなのですが自衛隊はE型の開発でD型を旧式とした意見も生じ、もともと自衛隊の調達したD型はE型に近い空対空戦能力付与など高性能仕様ですので言掛りとも思えるのですが、ここで一説には500億円近い損失が出た富士重工は、いわば特別仕様の建売住宅を施工中に引渡直前でキャンセルされるようなもの、補填してもらわねばなりません。国も2機を追加発注するなど和解を模索しましたが、生産ラインを何年も放置してはその分の補てんを何処から受けるのかも問題となるため、そして2010年1月に富士重工は国を提訴した、ということ。

 東京高裁の判決は、これが認められたもので、第一審の東京地裁では富士重工の訴えを棄却しましたが、二審の東京高裁は、元々最初に支払うべきものを国が予算の限界などから富士重工の厚意に頼っていたもので、これにより生じた損失は補填されなければならない、というもの。契約上の立場を利用し不利な契約を迫ると共に損失や一方的な契約破棄を行い損失を補てんしないという姿勢、民間企業で同様の行為を行えば下請法に違反し、これを国が行おうとしたのですから、ある種当然の判決、というもの。

 しかし、防衛省は富士重工という重要な防衛産業を自分で手放してしまいました。富士重工はUH-1多用途ヘリコプターをB型からH型にJ型と生産し続け、機体要因の事故が皆無という高い信頼性を誇りますし、AH-1S戦闘ヘリコプターのライセンス生産も痰と医師、高い稼働率を誇ってきました。この関係が係争状態となって以降、富士重工側がUH-1Jの一括調達終了後に追加発注の有無を打診したところを無視したことでUH-1Jが生産終了、今日のUH-X選定難航に繋がっているという防衛政策上の大きな失策と言わざるを得ません。加えて更にベル社と富士重工の関係性を無視してボーイング社製AH-64Dを採用しライセンス生産を行ったことで、ベル社と富士重工の関係が悪化しAH-1Zを富士重工で生産する事が難しくなり、AH-1S後継機選定はAH-64EかEC-665くらいしか無くなってしまったため、余りに影響は大きすぎました。

 このほか、250機の調達計画を立てつつ30機少々の生産に終わった川崎重工製OH-1や150機程度を導入し多用途ヘリコプターを一新するべく三菱重工がライセンス生産を実施しているUH-60JAなど、陸上自衛隊の航空機調達計画は、2000年代初頭に北朝鮮ミサイル危機w契機として日本本土を狙う弾道ミサイルを迎撃可能な体制を構築する必要が生じ、弾道ミサイル防衛が新しい自衛隊の任務に加わったころから調達計画に歪が生じています。財務省が予算を認めないためだ、という非難もあり得るかもしれませんが、防衛当局である防衛省が現行予算では不可能として予算増額を要請しなかった不作為の責任もあります。調達計画を立てた以上は責任を以て調達すべきで、この当然の判断が交際により下されたといえるでしょう。

北大路機関:はるな
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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第二回・・・防御陣地と防御戦闘の発展史

2015-01-28 22:16:30 | 防衛・安全保障
◆防塁・城壁・塹壕・塹壕陣地・掩蔽陣地
 装甲車は何故必要なのか、という特集、第一回は本論に入ったところで終わりましたが、本日はここからすすめます。

 城壁という防衛手段が古来の戦史における防御の基本形を為していましたが、これを覆したのが、火砲の出現です。攻城兵器が発展を続けるとともに城壁に対し有効的に破壊できる技術革新が城壁の位置づけを大きく転換させます。大火力の火砲が射程内に入るまで城壁に依存することは無意味ですし、幾重に城壁を巡らせる代案が検討されるも城壁造営には過度な財政負担が加わり現実的ではありません。

 16世紀、火砲の出現により戦場は城壁から野戦へ転換します。城壁は塹壕へと発達し稜線に防塁を建設し砲兵の火力を避ける運用が一般化します。防衛線という概念は野外へ展開しました。しかし17世紀に携帯火器が発展し、痰ある塹壕では体を為さなくなりました、マスケット銃など小銃火力が増大化するとともに塹壕による砲兵火力からの退避だけでは近接した歩兵により射撃され制圧されやすくなるため、斜射や側射により塹壕間が相互補完する必要が出てきます。つまり、城壁という概念は防衛線という概念に置き換わったという事ですね。

 稜郭陣地は、塹壕とその拠点となる防塁を連携するようその周囲を塹壕により連絡する陣地が構築されるよう進化した結果誕生したものです。これにより、18世紀には稜郭陣地を念頭に運動戦や迂回戦術と連絡線遮断といった現代戦術の根幹要素が大きく発展をみた、といえるやもしれません。

 しかし、稜郭陣地は、火力の命中精度という面での発展により一掃される脅威に直面し、防塁等は地下化し位置を掩蔽しなければ生き残れなくなりました。こうして、塹壕は一本の溝から第一次大戦期に見られるような個人用掩体と連絡線の連続により構成される塹壕陣地へと姿を変えてゆきました。

 第二次世界大戦期には、航空機の出現により陣地をある程度秘匿する必要性が高まり、個人用掩体と連絡線により構築される塹壕陣地は意味をなさなくなり、秘匿性を掩蔽により高め、第一次大戦中に萌芽し大きく実用性を増した戦車を移動する火力拠点として用いる掩蔽陣地が一般化し、特に東部戦線において多用されています。

 この掩蔽陣地は、第二次世界大戦後の機械化部隊一般化に対して、やはり陳腐化するようになりました、具体的には掩蔽陣地構築に要する時間は、地下陣地など建設へ必要な労力が限りなく増大したためです。一方で機械化の普及は特に建設機械の発展により難易度は下がっており、戦線の展開と陣地構築技術の発展は短期間、競争することとなります。

 結果的に、運動戦という概念の下に堅固な掩蔽陣地の建設は追随を断念します。これは運動戦の展開に機械化とともにヘリコプターによる空中機動が戦線と策源地を結ぶ連絡線遮断に用いられる蓋然性が高まり、陸と空から掩蔽陣地の急速建設という概念は陳腐化へ追いやられた、という形に他なりません。

 装甲車はこうした陣地構築の歴史の中に歩兵戦闘の延長線上として位置しています。城壁という初期の概念は、防塁と野戦陣地の防衛線に概念が置き換わり、この概念は初期には塹壕、続いて火力発達は個人用掩体と連絡線により構築される塹壕陣地へ展開し、塹壕陣地がそのまま防御力を増す掩蔽陣地へ、発展していきましたが、これが運動戦のなかで陳腐化した、という流れの中で用途を得ました。

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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第一回・・・防御戦闘と攻勢戦果拡張

2015-01-27 22:38:28 | 防衛・安全保障
◆装甲機動旅団&航空機動旅団
 榛名防衛備忘録:戦車は何故必要なのか?、防御戦闘と攻勢戦果拡張。元は装甲車の話題とする予定でしたが戦車を最初に書きましたのであのように。

 装甲車は何故必要か。北大路機関では昨年度末に掛け、自衛隊の新しい編成体系への提案として、現在の師団旅団数を抜本的に見直し、一万名規模の大型師団、海外ではこれは平均的な師団人員より少々少な目ですが、大型師団を各方面隊に各1個配置し、練度指揮官と事態対処を分ける体制を提案しています。

 即ち、方面隊と師団を方面総監がフォースユーザー:事態対処責任指揮官、師団長を陸上総隊隷下におくかたちでフォースプロバイダー:練度管理責任指揮官とする方式を示しており、師団を一個で方面隊管区へ対応可能な能力を持つ広域師団と位置付け、師団は装甲機動旅団と航空機動旅団へ再編する提案を示しましたしだい。

 この広域師団を構成する装甲機動旅団と航空機動旅団ですが、装甲機動旅団は現行旅団編制を基本とし、方面施設部隊の戦闘工兵機能や方面特科部隊の全般支援火力部隊を集約し戦車を一個大隊集中配備する編成、航空機動旅団を現行旅団編成を念頭に方面航空隊の航空機を包括所管することで、空中機動力と航空打撃力を付与する、新装備調達ではない管理替えによる強化を提示しました。

 その中枢部分として、新規調達が必要な装備に装甲機動旅団普通科連隊には戦車中隊と連携可能な装甲戦闘車を2個中隊置き機械化大隊を編成する、航空機動旅団には航空機からの補給により段列を空中機動化し高速前進させることが可能な四輪駆動装甲車を必要とし、装甲機動旅団と航空機動旅団の軽装甲機動車と連携させる提案を示しています。

 これは同時に、四輪駆動装甲車と装甲戦闘車の新規調達が必要、言い換えればそれ以外のヘリコプターや戦車に多連装ロケット発射器などは既存装備を管理替えするだけなので、新規調達はこれだけあれば十分という意味なのですが、この装備群の必要性を繰り返しています。何故装甲車が後半に装備される必要があるのでしょうか、この点について今回から紹介してゆきます。

 装甲車の軍事的な本質ですが、これは歩兵を第一線火力から防護し機動運用するため、と一般的に説明されます。この説明はある意味正統の説明というものですが、併せてこれは古来からの陸上戦闘における陣地の概念が発展したもので、城壁や塹壕といった防御拠点の概念が単純に新し技術により進化しただけのものと理解すべきでしょう。

 城壁、古来の陸上戦闘における防御拠点は城壁であり、城壁の前衛として広大な地形と要所を舞台として展開される会戦が戦われていたわけです。城壁都市、欧州などにおいては都市全てを城壁により防護することで都市と周辺を確実に区分していまして、日本では城下町がその役割を担っていました。

城壁の位置津消え、陣形や防御陣地などが大きく転換し、これは戦術面の要求と新装備による戦術の変化を受けての転換を含めてですが、装甲車両が装備面だけではなく戦術面の基本に練り込まれてゆき、野戦築城などにも包含されてゆくこととなります。このあたりについては次回に掲載することとします。

北大路機関:はるな
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自衛隊アフリカ中東方面作戦能力整備の必要性、相次ぐ邦人襲撃事案受け検討すべき

2015-01-26 23:36:03 | 防衛・安全保障
◆インド洋方面統合任務部隊
 平和国家を自称する我が国ですが、自国民の安全に責任を持てないようでは国家たる資格を持たず、平和という名の逃避以外何物でもありません。

 シリア邦人人質事案を筆頭にアルジェリアガスプラント邦人企業襲撃事件やアフガニスタンイラクでの邦人襲撃や人質事案、相次ぐアフリカや中東中央アジア地域でのわが国民への攻撃に対し、我が国は国家としてその国民の安全へ責任を持つ必要な措置を採る事が求められるでしょう。

 小国であったとしても自国民が危険に曝されたのならば、友好国や同盟国の軍事力と協同し最大限の措置を採ります。しかし我が国は憲法上の制約と、その厳しい制約下においてもアメリカ以外の諸国との軍事協同も集団的自衛権の行使を憲法上禁忌としているため、果たし得ません。

 結果、我が国は独力でアフリカ方面や中東方面及び中央アジア地域での防衛力展開を行い、邦人保護を展開できる体制を構築する必要があります。特に東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故を契機として我が国内の原子力発電がほぼ全面的に停止されている現状で、化石燃料を交易により入手可能な体制を維持することは、国民の生存権にも繋がり、その重要産出地域であるアフリカや中東地域での邦人企業活動は、重要性が増しています。

 現在自衛隊は、ジブチ共和国へソマリア沖海賊対処任務に対応するジブチ航空拠点を整備し、P-3C哨戒機の運用を展開中です。加えて、ソマリア沖海賊対処任務として護衛艦二隻をアデン湾からアラビア海に掛けての海域に遊弋させており、船団護衛の活動実績を積み重ねてきました。

 護衛艦は沿岸地域での火力投射に大きな能力を有しており、あたご型護衛艦、あきづき型護衛艦に搭載されるMK-45-Mod4は5インチ砲ながらロケット補助推進のERGM誘導砲弾により100kmに達するほか、こんごう型護衛艦、たかなみ型護衛艦に搭載されるOTOメララ社製127mm単装砲は装弾筒付砲弾によりロケット補助を用いず120kmの射程を有しGPS誘導方式により高い精度を有する新型弾薬を開発中と伝えられます。

 陸上自衛隊は来年度予算にMV-22可動翼機の取得を開始することになり、仮に艦砲の支援とMV-22の行動半径を重ねあわせたならば、紛争地域においての邦人救出に一定の能力を保持できることとなります。仮に、輸送艦やヘリコプター搭載護衛艦を増勢し、インド洋方面での遊弋を常時展開できる体制を構築出来たならば、沿岸部付近での支援能力と邦人救出能力は、机上の憲法論議から、実際の作戦能力へ大きく昇華するといえる。

 ジブチ航空拠点を現状では万一の際の作戦拠点として運用し得ますが、加えて、現在アメリカ本土において実施している派米訓練、日本国内の演習場では13kmまでの射程でしか訓練が出来ない事を受けての長射程射撃訓練を、ジブチ国内のフランス軍演習場を借用し実施できる体制をもち、転地訓練として小規模でも国内で不可能な射撃訓練を行うよう調整が出来たならば、万一の際に訓練部隊を緊急対応部隊に転換し、この種の任務の主管を担う特殊作戦群の支援に用いられるでしょう。

 もちろん、この種の邦人保護任務を行う際には、情報収集などの能力が必要であり、護衛艦から運用する計画のMQ-8無人ヘリコプターやRQ-21無人機は現状よりも高い情報収集能力を付与するでしょうが、全般としてアメリカからの情報支援が必要になります。

 また、航空打撃力を保険として得られない以上、全般的な作戦能力として不完全なものではありますが、海上自衛隊の護衛艦と航空拠点、陸上自衛隊の訓練地としての展開や可動翼機の艦艇からの運用、航空自衛隊の空輸支援と潜在的に航空支援、この体制をアフリカ方面統合任務部隊として準備することは、検討すべきと信じるしだい。

 既に邦人被害が立て続けに続いている現状、被害が発生する前であれば万一に備えるという建前を強調し、被害が発生する以前の反論として考えすぎであり憲法上難しいとの構図が成り立ったでしょう。しかし、現状前述の通り被害が続いているわけなのですから、平和憲法に明記されている国民の生存権と財産権を守るための努力を行わねばなりません。日本国憲法は103の条文からなり、9条だけが全てではない、この為の準備を行うべきでしょう、一朝一夕にこの種の能力は整備できませんが、端緒に就くか否かは大きな違いです。

北大路機関:はるな
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ISIL邦人人質殺害は事実ならば許されない非人道行為、軍事手段を除く全ての対応が必要

2015-01-25 22:43:28 | 国際・政治
◆特定危険指定暴力団指定と指名手配を
 非常に残念な状況ですが、2億ドルが要求されたシリア邦人人質事案は人質二名のうち一名が殺害されたとの発表が誘拐を行ったISILにより行われました。

 如何なる理由があろうとも、彼らが行った行為は殺人であり、許されるものではありません。人質のうち殺害された一名は自称民間軍事会社の経営者であり、現地での戦闘行為に参加していたとの情報がありますが、現地の交戦団体に所属し公然と戦闘行為を行っていたことから交戦団体間でのハーグ陸戦条約及びジュネーヴ文民保護条約により戦時捕虜としての資格を有しており、一方的に殺害を行うことは認められません。

 今回の行為は強盗傷害と誘拐と監禁、殺人と恐喝そのものであり、邦人を対象とした犯罪行為であるため我が国に管轄権があります。ISILは日本国内においても戦闘員の募集を行っており、我が国内でのテロの脅威があるだけではなく、邦人位置情報等をISILに提供するなど協力者の存在も指摘されています。

 しかし、我が国は邦人殺害事件に対し、自衛隊による軍事報復を行う選択肢を現在のところ採る事が出来ません。現行憲法では国際紛争ではないことから自衛隊を投入できるという解釈も有り得ないわけではないですが、現行法では根拠となる法がありません。能力的にもF-2を派遣し有志連合の航空打撃作戦に参加、という選択肢は規模は別として参加することは不可能ではありませんが、邦人殺害の当事者を捕捉し攻撃することは技術的に簡単ではなく、軍事報復は現段階では行うべきではないでしょう。

 そこで、ISILを改正暴力団対策基本法に基づく特定危険指定暴力団指定を行い、その指導者であるバクダディ氏と今回の殺人を実行した氏名不詳の男を指名手配する方策を採る事が妥当だと考えます。暴対法では暴力団の定義を、2条2号に”その団体構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体”、としており定義上は暴力団に当てはまります。30条の8には”指定暴力団の構成員等が凶器を使用して人の生命又は身体に重大な危害を加える方法による暴力行為を反復継続するおそれがある場合、当該指定暴力団等を特定危険指定暴力団等として指定する”、とあり、定義に当てはまります。

 日本の暴対法に基づく特定危険指定暴力団指定を都道府県公安委員会行う、という事は一見無意味に見えますが、改正暴対法では”事業者が反社会的勢力の活動を助長し、運営に資することとなる利益を供与すること”が禁止されるため、ISILとその協力者が日本国内での行動を大きく制約し、戦闘員を斡旋する集会や目的とした宿泊施設を使用することが出来ず、戦闘員や活動資金を金融機関により送金することも法律上不可能となります。加えて、今回の邦人殺害に加担し我が国政府に2億ドルを要求する恫喝を行いましたISIL、その指導者であるバクダディ氏と今回の殺人を実行した氏名不詳の男を指名手配することは、我が国は軍事報復以外の面で全面対決する姿勢を示したことにもなるでしょう。

 こうした意見を提示することは勇気が必要な事ですが、政府は敢えて軍事報復ではなく、司法により今回の事件に対し強く要求するべきです。一方でISILは戦闘員として交戦団体に所属し軍事行動に参加した民間軍事会社経営者に対する殺害は許されないものの、戦闘行為の延長であり国家承認は受けていないものの国家を自称する交戦団体の司法行為の延長と強弁できる可能性はあります、しかし、同じく殺害を予告している邦人ジャーナリストについては拘束さえ違法です。万一、さらなる凶行が重ねられるならば、全国に指名手配のポスターを司法施設や公共施設に掲示し、国内で逮捕できる可能性は無いものの、日本は全面的に凶行を許さず、犯罪者として厳正に対処する姿勢を示せるのです。

北大路機関:はるな
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榛名防衛備忘録:戦車は何故必要なのか?、防御戦闘と攻勢戦果拡張

2015-01-24 22:50:04 | 防衛・安全保障
◆装甲機動旅団・航空機動旅団
 四輪駆動装甲車、北大路機関では繰り返しその必要性を提示していますが、今回は何故装甲車が必要となっているのか、について少し。

 戦車、陸上戦闘における機動打撃力の根幹です。日本本土に仮に戦車が装備されていないならば、着上陸を行う敵は一定期間補給が途絶、我が方の海上防衛力や航空防衛力により補給を寸断されたとしても、そもそも地上戦闘において最も物資を消費するのは対機甲戦闘と対砲兵戦であることから、物資の消費を最小限として素早く進出することが可能でしょう。

 そしてこれは重要都市や重要地形等を占拠し、持久戦の構えを取った上で、政府間の講和を提示し、我が方はこれ以上占領地を確保しないので、現在占領している地域だけ割譲したい、もしくはその価値に同等の政治的譲歩を迫る、ということが考えられるわけです。

 もちろん海空優位論者の方にはこうした意見は好まれていません、我が国に侵攻を試みる空軍力を根幹から破壊できるような、第三次中東戦争期のイスラエル空軍のような優勢が、戦闘機換算で1000機程度を維持する、第四世第戦闘機2000機程度の脅威を排除できる能力が無ければ実現しません。

 それだけではありません、第三次中東戦争ではイスラエル本土に脅威を及ぼすエジプト空軍爆撃機の排除が最優先でしたので、同等の脅威を及ぼす我が国周辺国の弾道ミサイル部隊を撃破できるだけの航空打撃力乃至弾道ミサイルが整備され、敵艦隊を港湾ごと無力化できる勢力を我が方が整備できるならば話はべつですが、こんなことは絵空事といわざるをえないところ。

 こういいますのも、我が国周辺は世界でも有数の兵力集中地域であり、軍事的に難しく、一人も上陸させない制空権の維持ではなく、航空優勢の確保が念頭となりますし、何より上陸させないためには自衛権の先制行使、先にこちらが侵攻の兆候を察知し、制圧できなければならず、憲法上の問題も無視できません。

 戦車については、我が国への武力攻撃を展開する企図を行い勢力に対して決定的な不確定要素を与えます。我が方の戦車を排除し、短期間、我が方の海上防衛力や航空防衛力により海上交通路が寸断し上陸部隊が孤立、仮に海上や航空での優勢を我が国より再度奪取した場合を想定しても、それまでの期間に上陸部隊が我が方の陸上部隊からの反撃により海岸に追いやられる状況に陥らない確証を得られなければ、着上陸侵攻は企図したとしても実行に乙瀬ないでしょう。

 一方で、我が国への侵攻を企図する勢力にとり、我が国戦車の最大の不確定要素は、侵攻を企図する側が敗走した場合、我が国に戦車があるという事実は逆に我が方の戦車が相手へ着上陸し、首都や重要地域を抑えられるのではないか、という心理的な負荷を与える事にもなるでしょう。我が国は平和憲法がある、という国是ですが、侵攻を企図する側の行動が憲法そのものを切り替える端緒となりえる可能性、平和憲法を論理の中枢におかず物事を図るわが国民以外の視点からは、攻めて失敗すれば攻め返される、という視点が成り立ち、こちらも心理的な抑止力と成り得るわけです。

 そしてもう一つ、我が国は海洋国家であり、この為に機甲戦力の重要性が高まるのです。一種説明が無ければ、海洋国家ならば軍艦だろう、と返答がありそうなものではありますが、かつての海洋国家イギリスは強力な艦隊に連動した陸上部隊により世界の制海権を維持しました。その背景には、海洋国家の緊要地とは港湾であり、港湾と良港適地を制圧したならばそもそも相手は海洋への接近経路を絶たれる、という論理を堅持しました。

 この成果は、同時期に海洋国家を志したフランスとドイツが大陸国家視点からの緊要地として港湾ではなく内陸部を含めた地域制圧を企図し過度に軽装備の大兵力を展開させ、人的資源の限界に早々と直面したため、イギリスほどの領域の拡大を果たせませんでした。イギリスは港湾を確保、経済流通を含め海上交通を維持できる体制を確保し、この地域を制圧できない可能性に直面した場合には港湾を破壊し素早く撤収しているため、人的損害を回避できています。港湾の占領と占領維持不能の際には破壊、という手法はローマ帝国が行っていまして、かの時代には港湾機能に造船業者等を含めていた、とも。

 もちろん、日本も大英帝国の方式を踏襲すべきというわけでは全くありません、海洋国家を企図するならば、港湾などの重要地域がもつポテンシャルを理解すべきであり、同時にこれは我が国周辺で西太平洋を自国の勢力下に置こう為政者さえ公言する隣国にとり、我が国港湾を制圧もしくは破壊する重要性を示す事にもなり、併せて同様の行動を行う側にとれば、我が国が如何に平和政策を維持しようとも、我が国に侵攻した場合に反撃を受け、自国の港湾などを脅威にさらされうる、ということ。

 これが、抑止力、というものなのですが。単純に戦術的価値から戦車の重要性を考えがちですが、同時により広い視野から戦車の位置を、戦略的に見た場合、我が国への軍事的冒険を阻止する大きな意義がある訳です。そして、その戦車を常に最新型を開発し得る国産技術、運用体系なども、この抑止力を構成するものと言えるでしょう。

北大路機関:はるな
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平成二十六年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.01.24・25)

2015-01-23 21:32:39 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 中東邦人人質身代金要求事案が暗礁に乗りかけ、国内での対テロ警戒体制が強化される中ですが如何お過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事ですが、今週末の駐屯地祭や基地祭に航空祭などは行われません。また、艦艇寄港に伴う一般公開なども今週末は予定されていないようです。しかし、海上自衛隊基地一般開放は一部で行われますのでこちらの情報を紹介しましょう。

 佐世保k地艦艇一般公開情報では土曜日と日曜日に護衛艦あさゆき一般公開が予定されています。舞鶴基地ですが、岸壁内からの見学可能日に土曜日24日のみが記載され、25日の一般公開は記載されていませんのでご注意ください。呉基地日曜日一般公開は護衛艦いなづま一般公開が予定されています。

 この他自衛隊関連行事や基地一般公開とは異なりますが横須賀市などではトライアングルによる軍港めぐり遊覧船が運航され、佐世保でもパールシーリゾート遊覧船などが基地近くを航行、瀬戸内海汽船による呉湾おさんぽクルーズなどが運行されていますので、こちらもお勧めです。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

・ 今週末自衛隊行事予定は無し

◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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国際貢献と航空部隊、国連安保理決議に基づく国際有志連合への参加可能性

2015-01-22 22:47:17 | 国際・政治
◆P-3CからF-2へ
 本記事は今週初頭に掲載する予定でしたが、諸般の事情から掲載を遅らせました。

 オランダ空軍はISIS対策にF-16を派遣しているのだが、日本政府は強い要請があった場合F-2支援戦闘機をISIS攻撃に参加させる可能性は全くないのか?、昨年那覇基地を撮影中にオランダ人マニア集団との雑談でこうした話題が飛び出し、ISISかISILか一瞬考えたのですが、丁度その瞬間に中国機の接近に伴う対領空侵犯措置緊急発進へ向かうF-15が離陸した直後でしたので面食らったことがありました。

 海上自衛隊はジブチへソマリア沖海賊対処任務としてP-3C哨戒機を派遣し、ジブチ航空拠点を建設、基地業務の一部を担うことで恒久的に海賊哨戒情報を海賊対処多国間有志連合へ提供しています、P-3Cで海賊情報を供しているのですが、位置情報を共有すれば我が国P-3Cに捕捉された海賊船の行く末は明らかで、海賊対処にP-3Cを派遣するならばISIS対策にF-2を派遣出来ないか、ということです。

 Self-defence in international lawとRight of collective self-defenseの問題を含めているお話しで、我が国では集団的自衛権の論争が盛んですが、軍事における情報の重要性を踏まえれば海外からの視点としては、事実上行使されているものを後付で国内法の実態に合わせようとしているように見えるのでしょうか。

 日本に生まれ、日本国憲法がある種共有知として国際政治や安全保障を思考する際の大前提となっているところではありますが、流石は欧州から日本へ足を運ぶ筋金入りマニア、Article 9 of the Japanese Constitutionなど、一種の教養として知っているようで、当方は学部生時代へ遡れば比較憲法学の講義でドイツやフランスは知識としてあるもののオランダ憲法は専門外、勉強不足を痛感した次第で、当面の可能性は低い旨伝えまして、仮に国連決議などを経て有志連合が組まれるならば、logistics supportとしてcombat service supportに直結しない分野ならば有り得るかも、と後方支援を示した次第なのですが。

 その後考えてみますと、そもそもF-2は支援戦闘機ながら主任務は対艦攻撃が大きく、三個飛行隊のみのF-2はF-2としてそれこそ沖縄近海を中心に大きな任務があり、対地攻撃任務で派遣できるのはF-4くらいかな、と思っていたのですが、トルコ空軍がF-4をISIS攻撃へ派遣、F-4でも2014年時点で実戦に耐えるのかと驚きつつ、可能性は考える必要はあるのか、と。

 日本が既に海賊対処任務にてP-3C哨戒機を派遣しています、P-3C哨戒機は海上自衛隊が100機を導入したため軽く見られがちですが、4000t級の護衛艦はつゆき型が建造費150億円の時代に100億円を投じ導入された航空機、電子機器の塊という高性能機で、潜水艦索敵と洋上監視能力が非常に高く、なるほど海外の視点からはP-3Cを派遣出来て何故F-2を派遣できないのか、という視点もあり得るのだ、と考えさせられました。これを考えますと、空輸支援や空中給油支援等を、P-3Cを既に派遣している日本へ戦闘機支援任務を各国が強く要請する可能性はあり得る、のかもしれません。

 流石に戦闘機を派遣、ということは考えにくいところです。欧州各国が攻撃機を主体としたのに対し航空自衛隊は戦闘機を主体、冷戦時代に数万のソ連軍戦車部隊を正面に見据え航空阻止と近接航空支援を主眼とした多目的戦闘機の重要性が認識され攻撃機は専用の可変翼機から練習機転用まで用意され、戦闘機脅威は可能な限り戦闘機に期待すると共に攻撃機で敵飛行場を破壊すればそちらの方が確実、とおもわれていた欧州に対し、日本は脅威対象との間に海があり、航空優勢確保が大前提であると共に専守防衛を国是としていたため大陸の基地攻撃を考えていなかった関係もありますが、対地攻撃を行うことが可能な機体が少ない。

 将来的に海賊対処任務が継続されたならば、P-3C哨戒機に代えてP-1哨戒機が派遣されることも出てくるでしょう、軍事における情報の優位は軍事への知識が大きければ大きいほど意味が分かるのですが、海外からの視点ではP-3Cが派遣できるのならば戦闘機を派遣してほしい、との声は高まる可能性は否定できません。この場合、派遣の可否を国内で論じる事は重要ですし、国際社会の自衛隊に対する期待の大きさも理解する必要はあるのですが、同時に仮に派遣できないとの立場を示すならば、何故P-3Cを派遣し情報収集と情報共有が可能であり、反面戦闘機から対地攻撃を行うことが日本の国内法上難しいのか、この視点を説明できる体制を構築する必要があると考えます。

北大路機関:はるな
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