■令和時代も続く緊縮予算
毎年、富士総合火力演習が終わり、その同じころに防衛予算概算要求が発表されますと夏の終わりを感じます。
我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要、昨日8月30日に防衛省より発表されました。平成31年度予算は現在令和元年度予算となっていますが、概算要求に令和年間が明示されるのは今回が初めてとなります。来年度に向け要求された予算は5兆3222億円、人件費や糧食費を1.8%削減した上で物件費を12.6%増額した、厳しい構造となっています。
多次元統合防衛力の構築に向け防衛力整備を着実する、統合機動防衛力に代わる防衛力の整備、これが令和2年度予算の概要です。その具体的施策として実施領域横断作戦に必要な能力の強化、防衛力の中心的な構成要素の強化、大規模災害等への対応、日米同盟強化及び基地対策等、安全保障協力の強化、効率化・合理化への取組、等が挙げられました。
多次元防衛力は統合機動防衛力に代わり、従来の三次元を越えた宇宙空間や電子空間での防衛力優位を確保維持する視点から示されており、特に電子空間防衛は法執行機関始め多くの官庁も包括されるもので一見して分り難いものとなっていますが、今回は“我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要”公示翌日であり、その装備調達に重点化します。
航空機の調達は以下の通り。CH-47JA輸送ヘリコプターが3機、P-1哨戒機を3機、SH-60K哨戒ヘリコプターは7機、F-35A戦闘機を3機、F-35B戦闘機が新たに6機、KC-46空中給油輸送機を4機、UH-60J救難ヘリコプターは8機、以上となっています。KC-46空中給油輸送機が一挙に4機取得し、また新たにF-35B戦闘機取得開始も特筆できましょう。
F-35B戦闘機の導入により、当初よりF-35Bは九州新田原基地への配備が示されており、南西諸島へ近い南九州へ第五世代戦闘機の配備開始を意味します。しかし、F-35を各種9機という整備の裏で、陸上自衛隊のヘリコプター整備はCH-47JA輸送ヘリコプター3機のみとなっており、自然減が進む多用途ヘリコプター始め補填の見通しが全く立ちません。
護衛艦2隻、潜水艦1隻、掃海艦1隻、艦艇については以上4隻が取得されます。護衛艦は共に来年進水式を迎える30FFMと同型の3900t型護衛艦で5番艦と6番艦で、計画通り毎年2隻の建造が続く。意外であったのは掃海艦で、あわじ型掃海艦4番艦です。前型である掃海艦やえやま型が3隻整備されていましたが、後継艦は4隻を整備するのですね。
ミサイル及び火砲と車両や小火器の調達は以下の通り。03式中距離地対空誘導弾(改)1中隊、新小銃3283丁、新拳銃323丁、対人狙撃銃8丁、60mm迫撃砲6門、120mm迫撃砲6門、19式装輪自走榴弾砲7輌、10式戦車12両、16式機動戦闘車33輌、以上です。新小銃は89式小銃に代わるもので制式化間近とはいわれていましたが、一種意外ですね。
16式機動戦闘車33輌に一応の調達継続を感心する一方、際立っているのは軽装甲機動車と96式装輪装甲車の調達終了です。即応機動連隊の充足と共に戦車に代わる普通科部隊の機会か強化の必要性から共に毎年40輌程度から50輌程度の取得継続は必要で新型開発に関するメーカーとの摩擦はありますが、現状は敢えて従来型であっても増備は必要でしょう。
誘導弾関連についても、戦車は順調に除籍が進む中、対戦車装備である中距離多目的誘導弾は絶対に必要な装備ですが、調達は行われず、また81式短距離地対空誘導弾の後継となる11式短距離地対空誘導弾の調達も行われず、今後陸上自衛隊の野戦防空は整備されるイージスアショアへスタンダードSM-6の運用を見込んでゆくのか、という印象を受けました。
防衛予算に関しては過去最大の5兆3220億円、という部分が強調される印象がありますが、防衛予算は小泉内閣時代からの財政再建と共に厳しい状況が二十年近く継続しています。この一年の稼働率や厳しい運用状況の現場へのしわ寄せを我慢してほしいとの状況が、習慣化してしまいました。その背景に小泉内閣時代のミサイル防衛という部分にその始りが。
新しい任務が追加され、膨大な予算を必要とする新事業をその財政的裏付けのないままに部隊の細かな再編と部分縮小を繰り返しつつ二十年近くを続けているのですから、状況は深刻で、例えばヘリコプター数等にその深刻な状況は現示しています。例えば東日本大震災のような大災害が発生した場合には、我慢を強いられることになるでしょう。被災者が。
5兆3220億円という規模は大きなものですが、任務の幾つかを再編するか、もう少し現実的な予算規模を考えるか、自衛隊でなければできない任務へ集約する必要があるようにも。こう感じたのは、令和2年度概算要求には部隊改編に関する項目が曖昧となっており、確たる部隊編成の転換を明示できなくなっている点です。次回以降、細部を分析しましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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毎年、富士総合火力演習が終わり、その同じころに防衛予算概算要求が発表されますと夏の終わりを感じます。
我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要、昨日8月30日に防衛省より発表されました。平成31年度予算は現在令和元年度予算となっていますが、概算要求に令和年間が明示されるのは今回が初めてとなります。来年度に向け要求された予算は5兆3222億円、人件費や糧食費を1.8%削減した上で物件費を12.6%増額した、厳しい構造となっています。
多次元統合防衛力の構築に向け防衛力整備を着実する、統合機動防衛力に代わる防衛力の整備、これが令和2年度予算の概要です。その具体的施策として実施領域横断作戦に必要な能力の強化、防衛力の中心的な構成要素の強化、大規模災害等への対応、日米同盟強化及び基地対策等、安全保障協力の強化、効率化・合理化への取組、等が挙げられました。
多次元防衛力は統合機動防衛力に代わり、従来の三次元を越えた宇宙空間や電子空間での防衛力優位を確保維持する視点から示されており、特に電子空間防衛は法執行機関始め多くの官庁も包括されるもので一見して分り難いものとなっていますが、今回は“我が国の防衛と予算-令和2年度概算要求の概要”公示翌日であり、その装備調達に重点化します。
航空機の調達は以下の通り。CH-47JA輸送ヘリコプターが3機、P-1哨戒機を3機、SH-60K哨戒ヘリコプターは7機、F-35A戦闘機を3機、F-35B戦闘機が新たに6機、KC-46空中給油輸送機を4機、UH-60J救難ヘリコプターは8機、以上となっています。KC-46空中給油輸送機が一挙に4機取得し、また新たにF-35B戦闘機取得開始も特筆できましょう。
F-35B戦闘機の導入により、当初よりF-35Bは九州新田原基地への配備が示されており、南西諸島へ近い南九州へ第五世代戦闘機の配備開始を意味します。しかし、F-35を各種9機という整備の裏で、陸上自衛隊のヘリコプター整備はCH-47JA輸送ヘリコプター3機のみとなっており、自然減が進む多用途ヘリコプター始め補填の見通しが全く立ちません。
護衛艦2隻、潜水艦1隻、掃海艦1隻、艦艇については以上4隻が取得されます。護衛艦は共に来年進水式を迎える30FFMと同型の3900t型護衛艦で5番艦と6番艦で、計画通り毎年2隻の建造が続く。意外であったのは掃海艦で、あわじ型掃海艦4番艦です。前型である掃海艦やえやま型が3隻整備されていましたが、後継艦は4隻を整備するのですね。
ミサイル及び火砲と車両や小火器の調達は以下の通り。03式中距離地対空誘導弾(改)1中隊、新小銃3283丁、新拳銃323丁、対人狙撃銃8丁、60mm迫撃砲6門、120mm迫撃砲6門、19式装輪自走榴弾砲7輌、10式戦車12両、16式機動戦闘車33輌、以上です。新小銃は89式小銃に代わるもので制式化間近とはいわれていましたが、一種意外ですね。
16式機動戦闘車33輌に一応の調達継続を感心する一方、際立っているのは軽装甲機動車と96式装輪装甲車の調達終了です。即応機動連隊の充足と共に戦車に代わる普通科部隊の機会か強化の必要性から共に毎年40輌程度から50輌程度の取得継続は必要で新型開発に関するメーカーとの摩擦はありますが、現状は敢えて従来型であっても増備は必要でしょう。
誘導弾関連についても、戦車は順調に除籍が進む中、対戦車装備である中距離多目的誘導弾は絶対に必要な装備ですが、調達は行われず、また81式短距離地対空誘導弾の後継となる11式短距離地対空誘導弾の調達も行われず、今後陸上自衛隊の野戦防空は整備されるイージスアショアへスタンダードSM-6の運用を見込んでゆくのか、という印象を受けました。
防衛予算に関しては過去最大の5兆3220億円、という部分が強調される印象がありますが、防衛予算は小泉内閣時代からの財政再建と共に厳しい状況が二十年近く継続しています。この一年の稼働率や厳しい運用状況の現場へのしわ寄せを我慢してほしいとの状況が、習慣化してしまいました。その背景に小泉内閣時代のミサイル防衛という部分にその始りが。
新しい任務が追加され、膨大な予算を必要とする新事業をその財政的裏付けのないままに部隊の細かな再編と部分縮小を繰り返しつつ二十年近くを続けているのですから、状況は深刻で、例えばヘリコプター数等にその深刻な状況は現示しています。例えば東日本大震災のような大災害が発生した場合には、我慢を強いられることになるでしょう。被災者が。
5兆3220億円という規模は大きなものですが、任務の幾つかを再編するか、もう少し現実的な予算規模を考えるか、自衛隊でなければできない任務へ集約する必要があるようにも。こう感じたのは、令和2年度概算要求には部隊改編に関する項目が曖昧となっており、確たる部隊編成の転換を明示できなくなっている点です。次回以降、細部を分析しましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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