■90式戦車&16式機動戦闘車
平成最後の真駒内旅団祭は90式戦車と16式機動戦闘車が本邦初の同時展示となりました。第11旅団創設10周年記念行事速報、後篇を紹介しましょう。
真駒内駐屯地祭、第11旅団は総合近代化旅団です。総合近代化旅団とは旧称沿岸配備旅団、北海道においてロシア軍の着上陸に備え充実した火力と機動力を備え沿岸部において脅威を撃破する能力を有します。本州や九州四国には、総合近代化師団や旅団はありません。
総合近代化旅団、本州から見れば羨ましい編成です。74式戦車ではなく世界のどの戦車とも優位に戦闘を展開可能な90式戦車を装備、牽引式で39口径のFH-70榴弾砲に対し北海道では52口径の長砲身に最新の自動装填装置を備えた99式自走榴弾砲で統一しています。
装甲車も、本州では軽装甲機動車が漸く普通科部隊に配備されていますが北海道では96式装輪装甲車中隊、部隊によっては通信部隊や施設部隊にも装輪装甲車が揃う。軽装甲機動車は本部管理中隊装備、今回の観閲行進では28連隊の中隊本部所要にも配備が確認できた。
第11旅団は第11戦車大隊が90式戦車2個中隊を隷下に置き、もう一つの総合近代化旅団である帯広の第5旅団は3個中隊の90式戦車を有する戦車大隊を隷下に置きます、本土の即応近代化師団は、方面隊から派遣の第4師団と第8師団で10式戦車1個中隊が漸く揃う。
首都防衛の第1師団は10式戦車と74式戦車の混成編成、あとは全て74式戦車のみという。本州の師団や旅団は即応近代化師団と即応近代化旅団、即応性強化し必要に応じて他地域へ転地任務も担う部隊で、旧称戦略機動師団と旅団か政経中枢師団に区分されていました。
即応機動師団と即応機動旅団は本年新たに新編された緊急展開部隊です。現在は四国善通寺の第14旅団と北熊本の第8師団が改編を受けました。即応機動旅団への改編、第11旅団も改編を受けます。滝川駐屯地第10普通科連隊が即応機動連隊へ改編を受けるとのこと。
第10普通科連隊は道都札幌と旭川を結ぶ回廊、夕張山地と増毛山地の隘路という緊要地形を防衛する連隊で、第11旅団札幌防衛を左右する。第10普通科連隊の即応機動連隊改編、意外な印象でした、即応機動連隊は本州九州四国に配置するものと考えていましたから。
統合機動防衛力、という防衛省の新しい防衛戦略にもとづき、即応機動連隊は南西有事、勿論北方有事も含め、第一撃の着上陸を受ける蓋然性の低い本州に創設し、装輪装甲車主体の機動力を最大限活用し緊急展開を担う部隊で、初動に続く展開部隊という位置づけ。
統合機動防衛力とは、初動と即応部隊と重装備部隊の三段構えを期し、北海道の部隊が重装備、もっとも重装備の、これは演習場環境に恵まれると共に重装備の脅威が近いという意味で、強力な装備を有する北海道からの増援につなぐ、という想定が当初示されたもの。
即応機動連隊は、本部管理中隊、装輪装甲車装備3個普通科中隊、機動戦闘車隊は2個機動戦闘車中隊を隷下に置き重迫撃砲装備の火力支援中隊を隷下に置く、本部管理中隊にはミサイル装備の高射小隊や衛生小隊が常時配属され施設作業小隊には戦闘工兵装備も揃う。
戦車と火砲だけはありませんが、かなり重装備の部隊です。ただ、北海道の総合近代化師団や総合近代化旅団よりは装備は軽い、その分機動力は高い。16式機動戦闘車を主力装備とする即応機動連隊、しかし、16式機動戦闘車は元々、本州九州用と考えられてきました。
統合機動防衛力整備により戦車部隊が北海道の師団旅団と九州の方面隊直轄装備に集約されるという変容へ、10式戦車の代用として配備される105mm砲装備の戦車駆逐車です、だからこそ90式戦車と10式戦車で固める北部方面隊には配備されない、当初の構想です。
北海道の即機連、第18普通科連隊が、即応機動連隊へ改編されるのだろうと思っていたのですが、第10普通科連隊だったというのも意外でした。第18普通科連隊は真駒内駐屯、そして冷戦時代は全中隊に73式装甲車を集中配備し装甲化普通科連隊となっていました。
73式装甲車を集中配備、北海道の師団は冷戦時代必ず一個普通科連隊を装甲化し戦車部隊とともに機動運用を行う構想だったわけですね。第10普通科連隊よりも第18普通科連隊のほうが装甲車運用に長けているわけでして、こうした連隊が改編されるのだろうと、ね。
第18普通科連隊の方に実際聞いてみますと、もちろん73式装甲車の時代と比較したならば96式装輪装甲車に転換してから時間が経ちますので一概にはいえないのですが、装甲車操縦や戦車との協同では第18普通科連隊の方が手慣れている印象はある、とのことでした。
機動運用部隊と近接戦闘部隊の混成運用は北海道がソ連軍の軍事圧力を強く受けていた冷戦時代に必要とされた為の施策ですが冷戦後の新時代、2000年代に入ってからの部隊改編により、全部の普通科連隊に一個中隊を装甲化させる、という運用に転換した構図です。
装甲車の分散配置は、推測ですが冷戦時代は自動車化普通科連隊には地形防御を活かして強靱な防御戦闘を展開、防衛線に当面の敵を凝集させたうえで、戦車部隊と装甲部隊が普戦協同の機械化部隊により一挙に反撃する、という運用を考えていた、と構図が成り立つ。
しかし、全ての普通科連隊に装甲車中隊を配置し、装甲車と高機動車を混成編成する背景は、有事の際に南西方面に一個連隊ごとに連隊戦闘団を編成し逐次戦闘加入させる運用に、つまり旅団や師団が一体として運用する状況だけでなく分散し転地運用へ転換していった。
連隊戦闘団一個単位で緊急展開する、師団一個そのまま展開するよりは身軽であるし、本州や九州沖縄への緊急展開は、北海道の重装備部隊が加わる事で、本土師団が抑えた前線を北方の増援部隊が機動打撃により一挙に撃破する、という運用に転換したからでしょう。
連隊戦闘団単位の逐次投入、という表現は、戦術上の禁忌である戦力逐次投入にほかなりませんが、師団一個、それも総合近代化師団を全部北海道から南西方面へ移動するには、海上自衛隊が誇る精鋭おおすみ型輸送艦が1個機械化普通科中隊を同時輸送が可能だ。
一個連隊戦闘団輸送に7隻、師団一個分の連隊戦闘団輸送に21隻、特科連隊や後方支援連隊を輸送するには更に15隻必要になります、ただ、おおすみ型が必要となるのは上陸戦という作戦輸送のみですので、南西方面へといっても一旦策源地まで通常船舶が必要となる。
民間の高速フェリーやRORO船やチャーター船と貨物列車などで輸送することで代用できますが、それにしても一個師団を丸ごと輸送するとなりますと、膨大な車両数と物資資材数です。現実的に連隊戦闘団規模で順次移動するほか輸送力が成り立たないわけですね。
90式戦車の戦車中隊、2個の高機動車化普通科中隊、1個の96式装輪装甲車化中隊、99式自走榴弾砲の特科中隊、ここに施設小隊と通信小隊に高射小隊、後方支援部隊として本部管理中隊と支援に当たる普通科直接支援中隊、これが総合近代化旅団連隊戦闘団陣容だ。
即応機動連隊と比較しますと、機動戦闘車よりも戦車を装備し特科火砲の有無でも優位に立つ。この重装備は頼りになります、敢えて北海道に即応機動連隊を増勢するよりは、本州に一つでも多くの即応機動連隊を、そして普通科部隊の装甲化を実現するための多数の装甲車を量産するほうが必要なのかな、と思いました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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平成最後の真駒内旅団祭は90式戦車と16式機動戦闘車が本邦初の同時展示となりました。第11旅団創設10周年記念行事速報、後篇を紹介しましょう。
真駒内駐屯地祭、第11旅団は総合近代化旅団です。総合近代化旅団とは旧称沿岸配備旅団、北海道においてロシア軍の着上陸に備え充実した火力と機動力を備え沿岸部において脅威を撃破する能力を有します。本州や九州四国には、総合近代化師団や旅団はありません。
総合近代化旅団、本州から見れば羨ましい編成です。74式戦車ではなく世界のどの戦車とも優位に戦闘を展開可能な90式戦車を装備、牽引式で39口径のFH-70榴弾砲に対し北海道では52口径の長砲身に最新の自動装填装置を備えた99式自走榴弾砲で統一しています。
装甲車も、本州では軽装甲機動車が漸く普通科部隊に配備されていますが北海道では96式装輪装甲車中隊、部隊によっては通信部隊や施設部隊にも装輪装甲車が揃う。軽装甲機動車は本部管理中隊装備、今回の観閲行進では28連隊の中隊本部所要にも配備が確認できた。
第11旅団は第11戦車大隊が90式戦車2個中隊を隷下に置き、もう一つの総合近代化旅団である帯広の第5旅団は3個中隊の90式戦車を有する戦車大隊を隷下に置きます、本土の即応近代化師団は、方面隊から派遣の第4師団と第8師団で10式戦車1個中隊が漸く揃う。
首都防衛の第1師団は10式戦車と74式戦車の混成編成、あとは全て74式戦車のみという。本州の師団や旅団は即応近代化師団と即応近代化旅団、即応性強化し必要に応じて他地域へ転地任務も担う部隊で、旧称戦略機動師団と旅団か政経中枢師団に区分されていました。
即応機動師団と即応機動旅団は本年新たに新編された緊急展開部隊です。現在は四国善通寺の第14旅団と北熊本の第8師団が改編を受けました。即応機動旅団への改編、第11旅団も改編を受けます。滝川駐屯地第10普通科連隊が即応機動連隊へ改編を受けるとのこと。
第10普通科連隊は道都札幌と旭川を結ぶ回廊、夕張山地と増毛山地の隘路という緊要地形を防衛する連隊で、第11旅団札幌防衛を左右する。第10普通科連隊の即応機動連隊改編、意外な印象でした、即応機動連隊は本州九州四国に配置するものと考えていましたから。
統合機動防衛力、という防衛省の新しい防衛戦略にもとづき、即応機動連隊は南西有事、勿論北方有事も含め、第一撃の着上陸を受ける蓋然性の低い本州に創設し、装輪装甲車主体の機動力を最大限活用し緊急展開を担う部隊で、初動に続く展開部隊という位置づけ。
統合機動防衛力とは、初動と即応部隊と重装備部隊の三段構えを期し、北海道の部隊が重装備、もっとも重装備の、これは演習場環境に恵まれると共に重装備の脅威が近いという意味で、強力な装備を有する北海道からの増援につなぐ、という想定が当初示されたもの。
即応機動連隊は、本部管理中隊、装輪装甲車装備3個普通科中隊、機動戦闘車隊は2個機動戦闘車中隊を隷下に置き重迫撃砲装備の火力支援中隊を隷下に置く、本部管理中隊にはミサイル装備の高射小隊や衛生小隊が常時配属され施設作業小隊には戦闘工兵装備も揃う。
戦車と火砲だけはありませんが、かなり重装備の部隊です。ただ、北海道の総合近代化師団や総合近代化旅団よりは装備は軽い、その分機動力は高い。16式機動戦闘車を主力装備とする即応機動連隊、しかし、16式機動戦闘車は元々、本州九州用と考えられてきました。
統合機動防衛力整備により戦車部隊が北海道の師団旅団と九州の方面隊直轄装備に集約されるという変容へ、10式戦車の代用として配備される105mm砲装備の戦車駆逐車です、だからこそ90式戦車と10式戦車で固める北部方面隊には配備されない、当初の構想です。
北海道の即機連、第18普通科連隊が、即応機動連隊へ改編されるのだろうと思っていたのですが、第10普通科連隊だったというのも意外でした。第18普通科連隊は真駒内駐屯、そして冷戦時代は全中隊に73式装甲車を集中配備し装甲化普通科連隊となっていました。
73式装甲車を集中配備、北海道の師団は冷戦時代必ず一個普通科連隊を装甲化し戦車部隊とともに機動運用を行う構想だったわけですね。第10普通科連隊よりも第18普通科連隊のほうが装甲車運用に長けているわけでして、こうした連隊が改編されるのだろうと、ね。
第18普通科連隊の方に実際聞いてみますと、もちろん73式装甲車の時代と比較したならば96式装輪装甲車に転換してから時間が経ちますので一概にはいえないのですが、装甲車操縦や戦車との協同では第18普通科連隊の方が手慣れている印象はある、とのことでした。
機動運用部隊と近接戦闘部隊の混成運用は北海道がソ連軍の軍事圧力を強く受けていた冷戦時代に必要とされた為の施策ですが冷戦後の新時代、2000年代に入ってからの部隊改編により、全部の普通科連隊に一個中隊を装甲化させる、という運用に転換した構図です。
装甲車の分散配置は、推測ですが冷戦時代は自動車化普通科連隊には地形防御を活かして強靱な防御戦闘を展開、防衛線に当面の敵を凝集させたうえで、戦車部隊と装甲部隊が普戦協同の機械化部隊により一挙に反撃する、という運用を考えていた、と構図が成り立つ。
しかし、全ての普通科連隊に装甲車中隊を配置し、装甲車と高機動車を混成編成する背景は、有事の際に南西方面に一個連隊ごとに連隊戦闘団を編成し逐次戦闘加入させる運用に、つまり旅団や師団が一体として運用する状況だけでなく分散し転地運用へ転換していった。
連隊戦闘団一個単位で緊急展開する、師団一個そのまま展開するよりは身軽であるし、本州や九州沖縄への緊急展開は、北海道の重装備部隊が加わる事で、本土師団が抑えた前線を北方の増援部隊が機動打撃により一挙に撃破する、という運用に転換したからでしょう。
連隊戦闘団単位の逐次投入、という表現は、戦術上の禁忌である戦力逐次投入にほかなりませんが、師団一個、それも総合近代化師団を全部北海道から南西方面へ移動するには、海上自衛隊が誇る精鋭おおすみ型輸送艦が1個機械化普通科中隊を同時輸送が可能だ。
一個連隊戦闘団輸送に7隻、師団一個分の連隊戦闘団輸送に21隻、特科連隊や後方支援連隊を輸送するには更に15隻必要になります、ただ、おおすみ型が必要となるのは上陸戦という作戦輸送のみですので、南西方面へといっても一旦策源地まで通常船舶が必要となる。
民間の高速フェリーやRORO船やチャーター船と貨物列車などで輸送することで代用できますが、それにしても一個師団を丸ごと輸送するとなりますと、膨大な車両数と物資資材数です。現実的に連隊戦闘団規模で順次移動するほか輸送力が成り立たないわけですね。
90式戦車の戦車中隊、2個の高機動車化普通科中隊、1個の96式装輪装甲車化中隊、99式自走榴弾砲の特科中隊、ここに施設小隊と通信小隊に高射小隊、後方支援部隊として本部管理中隊と支援に当たる普通科直接支援中隊、これが総合近代化旅団連隊戦闘団陣容だ。
即応機動連隊と比較しますと、機動戦闘車よりも戦車を装備し特科火砲の有無でも優位に立つ。この重装備は頼りになります、敢えて北海道に即応機動連隊を増勢するよりは、本州に一つでも多くの即応機動連隊を、そして普通科部隊の装甲化を実現するための多数の装甲車を量産するほうが必要なのかな、と思いました。
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