北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新旧しらせ 横須賀基地吉倉桟橋に集合 ヴェルニー公園からの情景

2009-05-31 22:38:57 | 海上自衛隊 催事

◆舞鶴から横須賀へ

 新しらせ建造の様子を、舞鶴基地見学の際に撮影した写真から厳選して昨日掲載したが、その新砕氷艦しらせ、横須賀に停泊している様子を撮影したので本日はお伝えしたい。

Img_4295  本日、横須賀に行ったのを利用し、横須賀基地吉倉桟橋に隣接するヴェルニー公園より、新旧しらせ、の写真を撮影した。吉倉桟橋のヴェルニー公園側には、護衛艦うみぎり、護衛艦いなづま、ミサイル護衛艦きりしま、が停泊しており、その向こうに、しらせ、そしてさらにその向こうに前の、しらせ、がみえる。

Img_4303  ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが。米軍側の桟橋に停泊していた。本日、横須賀基地には呉基地から第4護衛隊群旗艦で、はるな型護衛艦二番艦の、ひえい、が入港していた。更に、護衛艦たかなみ、護衛艦はまぎり、護衛艦はるさめ、護衛艦むらさめ、護衛艦いかづち、が吉倉桟橋に停泊していた。

Img_4298  横須賀海軍施設をみる。米海軍のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦。ひゅうが、に並び第七艦隊旗艦ブルーリッジが停泊しているのが見え、更にロサンゼルス級原子力潜水艦の入港していたようで、出航している。放射能測定巡視船きぬがさ、で気づいた。手前には海上自衛隊の潜水艦が並んでいるのがみえる。

HARUNA

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海上自衛隊新砕氷艦しらせ日誌 “建造、進水、公試、そして就役へ”

2009-05-30 16:45:03 | 北大路機関特別企画

◆しらせ、はこうして建造された

 本日、そして明日、横須賀基地では、20日に就役したばかりの新砕氷艦しらせ、一般公開が行われている。そこで、本日は、ユニバーサル造船舞鶴工場にて、新しらせ、がどのように建造されたか、特集したい。

090520img_2644  除籍された元ヘリコプター搭載護衛艦はるな、その隣を、就役したばかりの砕氷艦しらせ、が母港横須賀に向けて出港してゆく。自衛艦にもフネとしての一生があり、初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、は、数々の任務を完遂し激変する国際情勢を背景によく、その責務を全うした。新砕氷艦しらせ、も檄浪の南氷洋に向かう艦で、幸多い生涯を祈りたい。

071231img_0199  2007年12月31日、大晦日に舞鶴基地北吸桟橋より撮影した新砕氷艦しらせ。当時はまだ艦名決定前であるので、当時の呼称は、AGB 12500t TYPE、12500㌧型砕氷艦である。まだ船体が完成した段階で、上部構造物の建造は始まったばかりという状況だが、砕氷艦のオレンジ色に塗られた船体の様子がよくわかる。

080202img_6953  2008年2月2日の情景。建造は進んでおり、上部構造物の姿が少しづつ組み立てられているのが見える。隣には定期整備中のミサイル護衛艦みょうこう、がみえる。みょうこう、は満載排水量9500㌧、世界でも有数の大型水上戦闘艦であるが、12500㌧型砕氷艦の満載排水量は22000㌧に達する。

080217img_8478  2008年2月17日、この日は舞鶴基地に練習艦隊が入港した日であるのだが、舞鶴をはじめ山陰地方は豪雪に見舞われていた。上部構造物は、2日と比べるとヘリコプター格納庫の姿がはっきりとわかるようになっている。CH-101輸送ヘリ2機と観測ヘリコプターを収容するかなり大きな格納庫だ。

080322img_1805  2008年3月22日の情景。青春18きっぷ期間中、在来線に自由に乗り降りできるということで舞鶴に足を運ぶと、ファンネルや艦橋を含む上部構造物が、少なくとも形状はかなり完成に近づいてきている。しかし、マストなどをみると電装品などは、まだまだこれから艤装が開始される、という段階であるのが見て取れる。

080726img_0844  2008年7月26日の様子。新砕氷艦12500㌧型砕氷艦は、AGB-5003、砕氷艦しらせ、として進水式を終え、舞鶴の水面に浮く。ユニバーサル造船舞鶴工場は手狭で、山を掘りぬいたトンネルを倉庫に使っているほどなのだが、進水式を終えて海に出ると、砕氷艦の印象が大きく変わってくる。

080726img_0851  上部構造物の艤装工事が進んでいる。この写真を撮影したのは7月26日、舞鶴ちびっこヤング大会実施日。四日後の7月30日には横須賀基地にて、砕氷艦しらせ、が自衛艦旗を返納、除籍されている。当初予算を負担する文部科学省が予算を中々通すことが出来ず、結局防衛省予算にて建造することとなったのだが一年遅れ、南極観測支援用砕氷艦の空白時代が始まった。

080906img_9668  2008年9月6日。内装の整備が進められているのだろうか、通常の砕氷艦と異なり、海上自衛隊の砕氷艦は、南極観測支援という任務を帯びて運用されるため、観測隊公室や専用の居住区を設けて設計されている。専用の事務室、寝室、隊長公室なども設けられており、特徴的な内装となっている。

081016img_4119  2008年10月16日。上部構造物は、艦橋周囲に取り付けられていた足場が取り払われており、進捗状況を端的に示している。他方で、艦橋前面やファンネル付近には足場が設置されており、マストでも電装品の取り付けが続けられている。ちなみに、新しらせ、の公試は12月から開始されている。

090203img_6688  2009年2月3日に撮影した、新しらせ。やや霞がかかっていることもあり、判りにくいがファンネルからは薄らと白煙が昇っており、機関が稼働していることを意味する。ディーゼルエレクトリック方式を採用しており、出力は30000馬力。旧しらせ、は三軸推進であったが、この新しらせ、は二軸推進を採用している。

090208img_7764  2009年2月8日の様子。全長138㍍、幅28㍍、砕氷艦は、いつでも就役できるような状況にみえる。もともと、20000㌧型砕氷艦となる予定が、予算の関係上、12500㌧となってしまい、ややがっかりさせられたが、ファンネルが舷側に配置された設計は力強い印象を与え、なるほど、出来上がってみると立派だ。

090317img_5416  2009年3月17日に撮影した様子。前島埠頭から長時間露光撮影に挑戦。夜の埠頭は、少し躊躇したが、実際行ってみると、前島埠頭は夜釣りの名所、多くの釣客が釣果を目指し、煌々と集魚灯を焚いていた。なかなか暗くならず、待ち続けて撮った一枚。新しらせ、のシルエットがくっきりと浮かんでいる。

090318img_5510  翌3月18日の情景。この日、快晴に恵まれた舞鶴基地では、海上自衛隊最初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、が自衛艦旗を返納、その歴史に幕を降ろした。同じ日には横浜にて新ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、が就役しており、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦が世代交代を迎えた日である。

090404img_9480  2009年4月4日、北朝鮮の弾道ミサイル実験実施宣言が行われ、いよいよ発射か、という日、新しらせ、は再びドックに入渠していた。就役前の調整や整備、ということだろうか。当日は、舞鶴地方隊や護衛艦隊所属の護衛艦で出航準備をしている姿もみられ、いよいよ始まるのか、という印象だった。

090520img_2706  そして5月20日、就役。新砕氷艦しらせ、は、自衛艦旗を受領、高らかに掲げ、舞鶴を出発、母港横須賀へと向かった。舞鶴では、日本海までの海岸で、多くの市民や艦船ファンがカメラを並べ、また手を振っていた。起工式から足掛け三年、舞鶴で親しまれた新造艦ということもあり、見送りにも力が入っていたようだ。新緑を背景に、しらせ、は日本海、太平洋へ、旅立っていった。

HARUNA

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平成二十一年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報 第四報

2009-05-29 23:21:19 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 新型インフルエンザに振り回されたこの一ヶ月。幸い、重篤化した事例はわが国では生起せず、現時点では感染拡大は沈静化の方向にある。他方、中止、延期と並んだ自衛隊関連行事、本日は30日、31日の予定を掲載。

Img_4394  新型インフルエンザ、そして北朝鮮核実験。病原菌や放射性物質による攻撃から日本を護るのは、自衛隊化学科部隊である。その教育と対処法研究の一大拠点である化学学校は、大宮駐屯地に置かれており、その大宮駐屯地祭が31日に行われる。開門は1000時、新型インフルエンザの拡大が無ければ予定通り実施されるとのことだ。第32普通科連隊が駐屯しており、式典会場は狭いものの、化学科部隊ならではの戦闘訓練展示で有名。ちなみに、化学学校、32連隊(当時は市ヶ谷に駐屯)ともに地下鉄サリン事件除染へ出動している。

Img_2260 関西で猛威ふるう新型インフルエンザ。京阪神を中心とした近畿地方一帯の自衛隊関連行事に大きな影響が出ていることは先日お伝えしたが、31日実施予定の大久保駐屯地祭は中止となった。大久保駐屯地には中部方面隊直轄の第4施設団が駐屯しており、日本の国際平和維持活動の鏑矢となったカンボジア国連平和維持活動では派遣部隊の主力を編成した施設団で、興味深い展示が行われる行事なのだが、駐屯地は京都府宇治市、新型インフルエンザが原因とあらば致し方ない。

Img_8557  北海道の札幌市では、道南の防衛警備及び災害派遣を担当する第11旅団の創設記念行事が行われる。写真は第10師団の観閲行進であるが、第11師団から縮小改編を受けた第11旅団は、冷戦時代に北方からの脅威に備えた北部方面隊の行事ということで、かなりの重装備で知られる。札幌市内ではあるが、全国屈指の広さを誇る駐屯地とのことだ。第11師団は、特撮ファンには、ガメラ2に出演したことで有名。モータープールで撮影、雪の中カバーを被せられた74式戦車など並んでいた。

Img_0199_1  50周年行事ということで期待が高まるのは、武山駐屯地祭。武山駐屯地は、神奈川県横須賀市に所在し、少年工科学校と第1教育団、第31普通科連隊が駐屯している。後述するが、同日は横須賀基地で砕氷艦しらせ一般公開が行われ、東京港にはカナダ海軍の補給艦プロテクター、横浜港にはメキシコ海軍の練習艦クアウテモックが寄港しており、併せて足を運んでみるのも面白いかもしれない。

Img_2276_1  今年は、中部方面混成団、つまり前の第2教育団なのだが、その本部が置かれた大津駐屯地祭が、新型インフルエンザ発生により、感染拡大防止のための措置として、駐屯地祭は中止となった。教育訓練部隊の駐屯地祭ということで、武山駐屯地祭に足を運んでみるのもいいかもしれない。なお、ちなみに来週実施予定の京都、桂駐屯地祭も中止となっている。

Img_6672   海上自衛隊関連の行事として、もっとも大きなものは、千葉県房総半島の南端にある館山航空基地においてちびっこヤング大会が行われることだ。海上自衛隊回転翼航空機部隊発祥の地であり、加えてCH-101輸送ヘリコプターのように最新鋭の機体も展開している航空基地だ。千葉県といえども、やや行きにくい南端の行事ではあるが、注目の行事。

Img_2688  横須賀基地では、明日と明後日、新砕氷艦しらせ、一般公開が行われる。0930~1600(最終入場は1500時)で、JR横須賀線開業120周年祭の一環として行われる。首都圏からは東海道本線経由で京浜急行線よりも利便性の悪さが指摘される横須賀線だが、あえて横須賀線を利用して足を運んでみるのもいいかもしれない。最寄駅に、横須賀駅、汐入駅とあるので、吉倉桟橋で公開されるようだ。新旧しらせ、との並びも期待。

Img_7975  航空自衛隊関連としては、防府南基地と、防府北基地航空祭、30日と31日に実施されるというのが特筆される。防府南基地は、航空教育隊司令部が置かれ、第1教育群が航空自衛隊の新隊員教育にあたっている。熊谷基地と同様の基地で、北朝鮮テポドンミサイル発射試験の影響があった熊谷さくら祭りに対し、こちらは予定通り実施される模様。

Img_5211  翌日実施される防府北基地航空祭は、T-7練習機を運用する第12飛行教育団が展開している。駐車場が防府南基地に用意され、徒歩で移動できるとHPに記載されていたので、詳しくは下のリンクを参照されたい。静浜基地航空祭と同じように、防府北基地は滑走路の関係上、戦闘機などは着陸できないものの、他の基地からリモートにて飛行展示を実施するとのこと。また、ブルーインパルスの飛行展示も予定されているとのことで、快晴を期待したい。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 五月三十日[航空自衛隊]:防府南基地開庁記念行事[山口県防府市]・・・航空教育隊、第1教育群が展開。新型インフルエンザ発生の場合は中止ないし変更予定とあるも、いまのところ実施予定。新隊員による観閲行進、音楽祭、展示飛行なをど予定。
  2. 五月三十日・五月三十一日[海上自衛隊]:砕氷艦しらせ一般公開[神奈川県横須賀市]・・・20日に引き渡された海上自衛隊の最新鋭砕氷艦しらせ、一般公開。
  3. 五月三十一日[陸上自衛隊]:第11旅団創立1周年・真駒内駐屯地創設55周年記念行事[北海道札幌市]・・・北海道道南地区の防衛警備及び災害派遣を担当する第11旅団の創設記念行事。師団から旅団への改編より一周年という節目の年。札幌市営地下鉄自衛隊前駅より徒歩すぐ。
  4. 五月三十一日[陸上自衛隊]:化学学校創立記念・大宮駐屯地創設52周年記念行事[埼玉県さいたま市]・・・化学科職種の教育訓練及び戦術、対処法研究を行う化学学校、第1師団隷下の第32普通科連隊が駐屯、市街戦訓練で有名。第1師団、中央即応集団HPには記載されていないものの、広報によれば、実施、とのこと。
  5. 五月三十一日[陸上自衛隊]:第1教育団創立50周年・武山駐屯地創設記念行事[神奈川県横須賀市]・・・東部方面隊の新隊員教育訓練などを担当する第1教育団の創設記念行事。少年工科学校も置かれ、第31普通科連隊が駐屯している。
  6. 五月三十一日[海上自衛隊]:館山航空基地ちびっこヤング大会[千葉県館山市]・・・第21航空群が展開。SH-60J,SH-60K,UH-60Jが展示予定。CH-101はしらせ、に搭載しているのだろうか。滑走路ウォークラリー、シュミュレーター開放などを予定。
  7. 五月三十一日[陸上自衛隊]:大久保駐屯地創設52周年・第4教育団創立記念行事[京都府宇治市]→中止
  8. 五月三十一日[航空自衛隊]:防府北基地航空祭2009[山口県防府市]・・・T-7初等練習機を運用する第12飛行教育団が展開する基地。ブルーインパルスなど外来機もリモートにて飛行展示を予定。

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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ソマリア沖海賊事案 アデン湾哨戒へP-3C部隊本日派遣

2009-05-28 20:15:52 | 防衛・安全保障

◆厚木からジプチへ

 本日、厚木航空基地より海上自衛隊のP-3C哨戒機がソマリア沖海賊対策事案での船舶警護を実施するべく出発した。

Img_2725  指揮官は福島博1佐、厚木航空基地。出発に際する式典では、自衛艦隊の泉司令官、北村防衛副大臣が出席し、派遣部隊を激励した。式典終了後、P-3C二機はソマリアの隣国ジプチに向け離陸した。P-3C部隊は、来月上旬にも既に派遣されている2隻の護衛艦とともに、哨戒任務を開始する。

Img_8270  固定翼哨戒機は、対潜・対水上の哨戒を行うべく高度な改修センサーを搭載するほか、長時間の洋上哨戒任務に対応するべく長い滞空時間と航続距離を有しており、これらの特性を活かし、今回の任務でも高高度から洋上の不審な船舶を索敵し、水上戦闘艦部隊に情報を通知する。

Img_8667  派遣される隊員は、砂漠迷彩やダークイエローのフライトスーツを装備していた。ジプチでの基地警備には陸上自衛隊の中央即応集団が、またジプチまでの物資輸送には航空自衛隊の輸送機が支援する。既に、ソマリア沖海賊事案では、米海軍がP-3Cを派遣しており、NATO諸国でも数か国が1機程度の哨戒機を派遣しているものの、5~6機程度であり、海上自衛隊のP-3C哨戒機2機は、アデン湾安全航行にとり、重要な役割を果たすこととなる。

HARUNA

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北朝鮮核ミサイルの脅威 その存在はどのように証明されるか

2009-05-27 22:31:16 | 国際・政治

◆上海万博には出せない核ミサイルの素朴な疑問

 イージス艦“みらい”が第二次大戦中にタイムスリップしてしまい、それにより歴史が狂うという状況下で、歴史に無い核開発を阻止しようと立ち向かう、かわぐちかいじ氏のコミック“ジパング”。

Img_5665  核兵器をどう使うか、これは難しい。連載では、あの手この手で入手した核関連物質と技術を総動員し、一発の原爆を製造した。その原爆を製造した元海軍少佐は、原爆を戦艦に搭載、歴史よりも早く生じたマリアナ攻防戦の第一線に原爆を持ち込んだ。原爆を日本が保有していることを示し講和の道を探すのか、大量破壊兵器として米海軍のただ中で使用し打撃力とするのか、第三の道が用意されているのか、SPY-1レーダーが破壊され満身創痍のイージス艦“みらい”は、原爆の使用を阻止出来るのか、連載はいよいよ佳境に差し掛かる今日この頃。現実世界の隣国では、自国は核保有国であり、核兵器を太平洋を越えて運搬できることを示そうと躍起だ。

Img_21811  北朝鮮の長距離ミサイル実験(人工衛星を搭載した飛翔体という表現から、最近は長距離弾道ミサイル試験と表現されることが多くなった)に続く一昨日の核実験、北朝鮮の脅威が高まっているとの指摘に反論は難しく、現在、真剣に策源地攻撃について、検討が進められている。この中で、日本にとっての最大の脅威は、ノドンミサイルに核弾頭が装備されることである。ノドンミサイルの弾頭は比較的小型で、核爆発装置を弾頭に収まる程度に小型化する技術が果たしてあるのか、あるとしたら、どの程度の精度で爆発させることが出来るのか、ということである。

Img_7051  核兵器は、例えば通常弾頭であればHE火薬にしても装甲の強化や構造物の堅牢性を高めることで対処でき、生物化学兵器にしても非戦闘員への攻撃の場合はともかくとして、防護服などの対NBC装備や除洗装備と併せれば、被害は局限化することが出来るものの、核兵器の熱線と放射線、衝撃波に関しては防ぐことが不可能に近い。また、運搬手段である弾道ミサイルは、小型目標が、宇宙を経由し高高度から極超音速で落下してくるため、迎撃は極超音速であり難しく、仮に成功しても落下を防ぐことは避けられない。巡航ミサイルや航空機による運搬手段であれば、既存の防空体制で阻止出来る。

Img_9799  かりに多数の航空機やミサイルによる飽和攻撃に際しても、要撃機、地対空ミサイルと早期警戒機などのデータリンクにより阻止できる要素はあるが、弾道ミサイル防衛は、今日、限定的にその可能性は高まっているものの、難題であることに変わりない。したがって、核弾頭を装着した弾道ミサイルは、迎撃及び防護が不可能に近い装備である、といえる。しかし、技術的にこれが可能となっていなければ、脅威度は低い。即ち弾道ミサイルに搭載できるまでの核弾頭の小型化、弾道ミサイルが落下する際、目標を破壊するための最適な高度で起爆させるための制御装置を実用化できるか、ということだ。

Img_2036  はたして、現時点で北朝鮮がこの能力を有しているかについて、既にノドンミサイルに配備している、という情報、そしてノドンミサイルに搭載できる技術を有している、とする情報、現段階では、その技術を有していないという情報、などなど錯そうしている。持っているのかいないのか、持つとすればいつ頃になるのか。これが重要だ。他方、北朝鮮にも難しい命題がある。仮にそうした技術を保有したとしても、これをどのようにして証明するかということだ。核弾頭を起爆させるのが最も早い手段であるが、これは無理だろう。地下核実験を実施したことでも包括的核実験禁止条約に抵触し、弾道ミサイルに搭載し、太平洋上の公海上で、起爆、核爆発を起こすのが最も手っ取り早いものの、実際にやれば部分的核実験禁止条約から国連海洋法条約、その他諸々の国際法に抵触し、放射性降下物により被害が生じれば、国連憲章でいうところの武力攻撃として、逆に被害国により平壌が核攻撃される可能性が生じる。

Img_4820  大気圏内で核実験を実施出来た50年代から60年代にかけて、核兵器国の中で弾道ミサイルを運搬手段とした国々は実際に弾道ミサイルを用いて核実験を億名うことで、その技術を誇示したが、今日では、これは無理である。しかし、北朝鮮は、核保有国となり、加えてアメリカへの運搬手段に搭載することが可能となったことを誇示し、抑止力とすると共に対米交渉の手段とする展望のもと、核開発を実施してきたとされている。何らかの手段にて、しかし、武力紛争に発展しない範囲内、政権や国家体制を維持できる範囲内で誇示しなくては、余り意味は無い。かといって、北朝鮮では、兵器見本市にあたる航空祭のような行事は行われておらず、パレードで展示したとしても通過するだけでは、実物であり、ダミーではない、という証明は難しい。

Img_2096  欧米や日本から専門家を招いて開発した弾道ミサイルと小型化に成功した核弾頭を分析してもらう、というのもナンセンスであるし、さりとて、一般大衆の世論を頼りに上海万博の北朝鮮ブースにて、北朝鮮国産核弾頭搭載型弾道ミサイル!として展示するわけにもいかず、もちろん、世界の兵器見本市に核兵器を出展するわけにもいかない。どのようにして、弾道ミサイルに搭載できる程度に核弾頭を小型化できたかを示すのか、ある意味興味がもたれる事例ではある。実態やいかに。恫喝に使おうにも、現在、向けた刃は竹光でないかが疑われている。一生懸命振ってみるが、竹光でない証明になりそうでならない。竹光では脅せないが、さりとて切りかかれば、逆に手痛い結果を招く。運搬手段と核兵器のみを以て国際政治の難題を万事解決、とは現実世界では、いかないようだ。

HARUNA

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策源地攻撃論に関する一考察 無人機は作戦機に含まれるか

2009-05-26 23:41:45 | 先端軍事テクノロジー

◆防衛大綱上の制約

 自民党において、策源地攻撃能力の付与を年末に制定される新防衛大綱に盛り込むかの議論がされているさなか、北朝鮮が核実験を強行し、その後散発的に短距離ミサイル試験を実施、日本の防衛力強化を強いる行動に出ている。

Img_7051  さて、策源地攻撃というと、筆頭に思い浮かぶのはF-2飛行隊に500ポンド爆弾やJDAM,クラスター爆弾を搭載し、ミサイル発射装置を虱潰しに撃破することだが、航空攻撃によるミサイルの無力化の難しさは、偽装や囮構造物により事実上任務達成に至らなかった湾岸戦争の事例や、加えて、航空自衛隊は、飛行隊の大半が要撃飛行隊で、要撃任務とともに対艦攻撃、付随的に近接航空支援を行う支援戦闘機による飛行隊が3個、という状況で、策源地攻撃任務にあたるには、F-2飛行隊を少なくとも五個飛行隊程度増勢しなくては、どうにもならない。これは基地面積や予算的、防衛大綱に明記された作戦機の上限からして、難しい。

Img_9654_2  策源地攻撃の手段として、ここ数日間マスコミをにぎわせているのが、自民党北朝鮮ミサイル核問題合同部会でも提示されたトマホーク巡航ミサイルの導入である。イージス艦や、むらさめ型、たかなみ型護衛艦のVLSに搭載することは可能で、強力な対地攻撃能力であるのだが、目標であるノドンミサイルの数量から考えると、最低でも数百発のトマホークが必要で、しかも、目標の位置、移動式ミサイル発射装置を如何にして発見し、座標データをトマホークに送信するか、解決しなくてはならない問題も多い。また、数百発のトマホークをどのようにして、イージス艦による弾道ミサイル防衛任務と運搬手段とを両立させるか、課題はあまりにも多い。

Img_7352_1  F-2では、目標の発見が難しく、トマホークでも戦果確認を含め難しい。いっそのこと、AH-64Dアパッチロングボウの配備を再開し、第1空挺団と第1ヘリコプター団を協同させて、ミサイル設備をヘリボーンで叩きつぶしては、とも思ったが、これも朝鮮半島へヘリボーン部隊を展開し、作戦任務を完遂するまで継続して後方支援を展開する、というのは、余り現実的ではないように思う。なによりも、この手段では、地上部隊を送ることになるので、当然地上戦を含むものとなってしまい、これは必然的に、日本側において人的被害が生じる、ということを覚悟しなくてはならない。

Img_4737  トマホークや航空攻撃では、一撃ですべてを撃破することは難しく、撃ち漏らしたノドンミサイルは、当然反撃のために使われるので、確実を期せば地上部隊侵攻ということが求められる。例えばヒズボラのロケット弾攻撃に手を焼いたイスラエル軍は、戦車を中心とした地上軍を越境させ、発射設備を文字通り踏みつぶして策源地攻撃としたが、陸上自衛隊が北朝鮮にミサイル設備破壊のために大規模地上部隊を侵攻させる、というのは、方法としては確実だが、あまりにも現実離れしており、極端な話、架空戦記でもシュミュレーション小説でも、そういった話はまだ発売されていない。

Img_9749  人的被害を避け、しかも、索敵と攻撃を同時に行い、防衛大綱の定数に囚われない装備となると、思い浮かぶのは無人機である。現在、技術研究本部では、“無人機システムの研究”として、航空機から発進し、任務完了後自力で基地へ帰還できる無人機を試験中で、昨年、岐阜基地航空祭で一般に公開された。そのスペックは、全長5.2㍍、全幅2.5㍍、重量0.75㌧。滞空時間などは公表されていないが、ジェットエンジンとアスペクト比の小さな主翼など、滞空時間よりも高速性を追求した機体であるということが見て取れる。

Img_9787  他方、現在、米空軍で配備中の新型無人機MQ-9は、全長11㍍、全幅20㍍と大型。エンジンはプロペラ式のターボプロップエンジンで、巡航速度こそ300km/h前後と、ヘリより速い程度ではあるが、航続距離は5900km、滞空時間は最大で28時間に達し、APY-8レーダーを搭載している。MQ-9がRQ-1等、これまでの無人偵察機と比較した場合、最大の相違点は、無人攻撃機としての任務に対応していることで、レーザー誘導爆弾、ヘルファイヤー対戦車ミサイル、サイドワインダー空対空ミサイルなどを運用することが可能で、ペイロードは1.7㌧に達する。なお、航空機から発信する技本の無人機とは異なり、基地からの離発着により運用する。

Img_9747  MQ-9は、昨年、F-16を運用する第174戦闘飛行隊に配備され、F-16と入れ替わる形で、MQ-9飛行隊に改編された。無人機による飛行隊は稀有であり、戦闘飛行隊が無人機により編成されるというのは、米空軍史上、そしておそらく世界空軍史上初のことではないかと思われる。MQ-9は既にアフガニスタンやイラクにおいて実任務にあたっており、アフガニスタンでは戦闘任務に際して攻撃を成功させている。また、偵察任務を想定し、APY-8レーダーに加え各種センサーを搭載していることから、索敵と攻撃まで完結した任務を遂行可能であり、運用高度は7500㍍とされているため、高射機関砲や携帯式SAMの脅威外を飛行する。

Img_8727  MQ-9は無人機で、サイドワインダーを搭載しているとはいえ、戦闘機を相手とした空対空はリスクが大きいが、航空優勢確保であれば、既存の航空自衛隊に配備されているF-15JやF-2によって遂行することが可能である。他方で、現在の防衛大綱では、作戦機に無人機を含めるという明確な規定がなく、現時点で技術研究本部が開発中の機体について、その定数に含めるべきという議論は為されていないようだ。付け加えるならば、無人機であるため、策源地攻撃に際して、例えば航空機が撃墜され、人的被害が生じるというリスクを回避することが出来る。

Img_2818  人的被害を回避できるというのは重要である。仮に支援戦闘機が策源地攻撃任務にあたる途中、撃墜された場合、航空救難団が北朝鮮に救難ヘリコプターを派遣し救出するというのは、あまりにリスクが大きい。したがって、米軍のように、特殊作戦機を整備し、越境救出作戦のための特殊部隊を準備し、展開・待機させる必要がある。しかしながら、無人機の場合、もちろん、機体が回収されることで機密情報が流出しないよう、最大限の手段を取る必要はあるものの、救出作戦という大きなリスクを取らず済むことが出来る。これも無人機ならではの利点といえよう。

Img_6858_1  また、トマホークミサイルでは索敵を行う事が出来ず、戦果確認、目標の無力化も確認出来ないが、MQ-9のような無人偵察機により攻撃を加えるならば、確認を行った後、任務に当たることが出来る。

 もちろん、MQ-9のような無人機は防衛大綱の作戦機上限に抵触せず、配備することはできるかもしれないが、複数飛行隊分を配備、運用、整備などのコストは大きく、加えて大型の無人機を日本国内で運用する場合、現行の航空法との兼ね合いも問題になる。しかしながら、利点は以上のようにある訳で、一考察として今回、掲載してみた次第。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

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北朝鮮 咸鏡北道プンゲリにて核実験実施5月25日0954時 10~20キロトン

2009-05-25 22:25:19 | 国際・政治

 朝鮮中央テレビは、午後五時の放送で、“自衛的抑止力を強化する一環として、きょう再び地下核実験を成功裏に行った、今回の核実験は爆発力と制御技術において新たに高いレベルで行われ、核兵器の威力をさらに高めた”と報じた。

 核実験を行ったとされる時間帯、日本や韓国、ロシアの地震計は咸鏡北道のプンゲリを基点として、0954時に人工的な揺れを感知、中国の北朝鮮との国境に面した延吉市では、体感できる揺れを観測し、一部の学校では地震発生を想定し避難なども行われたとのことだ。

 日本の気象庁が観測した地震データは、通常の地震とは異なり、もともと地震の起こりにくい地域にあり、しかも、ほぼ地表近くで発生している点から、気象庁の関田康雄地震津波監視課長は、何らかの人為的な振動という可能性は否定できないとし、核実験による振動ではないかと分析している。震源地は北緯41.2°、東経129.2°。気象庁によれば、マグニチュード5.3と推定している。三年前の核実験の際に検知した地震波はマグニチュード4.9と推定されており、こんかいの規模は大きくなったといえる。

 日本政府は、首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置。河村官房長官は、仮に核実験を北朝鮮が行ったということになったら、明確に安保理決議違反で、断じて容認することはできない、と発言。

 麻生総理は、声明として、我が国の安全に対する重大な脅威であり、北東アジアと国際社会の平和と安全を著しく害する、断じて容認できず、厳重抗議・断固として非難する、拉致・核・ミサイルという懸案解決へ具体的行動をとるよう求める、と発言した。

 韓国大統領府も、国家安全保障会議を緊急招集。大統領府の李東官報道官は、六ヵ国協議の合意や国連安保理に明確に違反したもので、決して許すことのできない挑発行為だ、と声明を発表した。

 ハノイで柳外交通商相と中曽根外相が緊急に会談を行い、国連安保理で緊急に対応していくべきとの意見の合意をみた。麻生総理は韓国の李大統領と電話で会談し、麻生総理の、国際社会の平和と安定に対する脅威であり、断じて容認できないという発言に対し、李大統領は同様の考えであると示し、麻生総理が国連安保理を開くよう要請、李大統領も、安保理でしっかり対応が重要とし、アメリカを含め三か国で緊密連携をとることで合意した。また、アメリカのオバマ大統領も、国際社会で厳しく対応してゆかなくてはならないとの声明を発表。

 一方北朝鮮は、北京の北朝鮮大使館職員の話として、核実験を行うことはすでに発表していた、我々は言ったとおりに実施する、六ヵ国協議のことはもう忘れるべきだ、と発表。続いて、北朝鮮は短射程ミサイルを発射。韓国国防省は、今日、二度にわたり地対空短距離ミサイルを発射したと報道している。

 今回の核実験はロシアでも観測され、ロシア国防省は、核実験の規模は三年前よりも大きく、10~20キロトン程度であると発表。

 核実験について、東京大学の阿部勝征名誉教授は、標準的な岩盤で行われたと考えると、少なくとも通常火薬2000トン分相当の威力があっただろう、としている。爆発の威力が大きくなった点について、東京大学公共政策大学院の鈴木達二郎客員教授は、北朝鮮のプルトニウム保有量は限られているので、実験に使うプルトニウムの量を増やしているとは考えにくい、今回は同じプルトニウムの量を使っていると考えれば、核爆発装置の精度はあがったと考えられる、との分析を示した。

 環境についての影響は、放射線医学総合研究所の山田祐司部長によれば、北朝鮮の地下核実験を閉じ込める能力の水準について、報道が無く定かではないが、恐らく密閉性について大きな漏れはないのではと考えている、密閉性が保たれているのであればまず日本への影響は可能性は極めて低い、と意見を述べている。

 文部科学省と各自治体は、可搬式放射線モニタリングポストを用いて検知を行っているが、今のところ大気中の放射性物質について、大きな変化はないとのことだが、政府は異常が無いか監視を強めることにしている。

 航空自衛隊は、百里基地など三か所の基地より放射性物質集塵器を搭載したT-4練習機を発進させ、高空における放射性物質の監視を実施している。

 この時期に核実験が行われた点について、朝鮮半島問題が専門の防衛研究所武貞秀士統括研究官は、核保有国と認めさせるためのメッセージではないかとの見解をしめしている。北朝鮮は核を保有してアメリカと対等な交渉を望んでおり、それにはワシントンに届く大陸間弾道弾、そして核弾頭の小型化をしなければならない。先月5日にテポドンミサイルの発射試験を実施したが、先月のミサイル発射と対米交渉という関係性をみているようだ。3200km以上飛んだ弾道ミサイル実験から50日後、この時期に核実験をしたということで、相乗効果があるということである。核保有国であると早く認めてくれよというメッセージであり、オバマ政権が核廃絶の演説を行った直後であるから、核技術を移転しないよう、外国に流出させないようにするにはどうするかについての力点をおきながた米朝協議を進めるという目的があるのではないかとのことだ。

 また、静岡県立大学の伊豆見元教授は、その目的についてこう述べた。いま北朝鮮はとにかくいそいでいる、ある意味で焦っているという切迫感が感じられる。金正日総書記の健康問題、体制からスムーズに後継に移してゆく場合、アメリカの脅威がなくなって安心して後継させるかたちをつくらないと不安でしょうがない、ということだと思う、とし、総書記の健康問題があるとなるとますます急がなければならないと分析、2006年10月に北朝鮮は核実験を行ったが、その後国際社会が非常に強く反応したか、中国が強く出てきたか、韓国が強く出たかというとそうではなかった、リスクはあるが、うまくいくのではと楽観的に考えている可能性が高い、しかし、今度は制裁措置の面で言うと中国は踏み込んで北朝鮮に圧力をかける可能性は十分あると思う、とした。

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旧国鉄の拠点福井駅&旧名鉄市内線の余生福井鉄道

2009-05-24 23:17:18 | コラム

◆福井県の鉄道

 奈良基地祭、大津駐屯地祭、新型インフルエンザ流行につき中止。代わりに行こうと考えた近江鉄道ミュージアム、同じ理由により公開中止。

Img_3351  そこで旧国鉄型が多数残る北陸本線、全廃された名鉄市内線の車両が頑張る福井鉄道を撮影するべく福井県に向かった。福井駅にて最初に驚かされたのは、食パン電車として親しまれている419系電車が二編成並んでいた。もともと、寝台電車として運用されていた583系、これは寝台急行きたぐに号で有名だが、その583系を普通電車用として改造したもの。春のパン祭だ。

Img_3512  北陸本線を代表する特急、485系雷鳥号。先頭車部分に前面展望が可能なよう改修を加えたパノラマグリーン車が先頭で、北陸本線を湖西線、そして東海道本線を経て大阪に向かうL特急。同じく大阪に向かうサンダーバード号、名古屋行しらさぎ号なども次々に到着、北陸本線特急の活気を感じた次第。

Img_3393  この福井駅では、北陸新幹線開業を見越した新幹線設備の整備も開始されていた。ただ、485系が新型の683系派生形に置き換えられ、他方、北陸新幹線の延長は現在、金沢以西の路線建設計画が未定であることから、スーパー特急方式でも十分なのでは、と思ったりもする。在来線の高速化を介して、日本の鉄道水準全般を高速化することは出来ないものだろうか。

Img_3415  413系電車。近郊型電車で、クロスシートを有し、デッキなどにより乗降に時間を要した急行型電車による通勤輸送を近代化する目的で導入された車両。導入開始は1986年と比較的新しい。寝台電車を改造した419系とくらべ、車内はクロスシートのみのすっきりした内装となっている。

Img_3455  福井駅を通過する485系回送電車と413系電車。413系電車は芦原温泉行きで、福井駅にて特急待ち合わせなど、かなり長い時間停車していた。485系電車は、大阪方面の先頭車に貫通扉を有する編成であった。なお、福井駅はこのように、完全シェルター方式の構造を採用しており、北陸地方の豪雪を想定した駅舎となっていた。

Img_3970  福井鉄道は、福井駅・田原町と武生駅を結ぶ路線距離21.4kmの福武線を運行する鉄道会社。もともと、他にも2路線が運行されていたのだが、赤字路線ということで、残念ながら廃線となり、福武線のみが生き残っている。写真は旧名鉄美濃町線用880形と旧名鉄岐阜市内線用800形電車。福井鉄道の塗装は、800形の名鉄時代と、やや共通点がある。

Img_3926  880系電車。美濃町線運行時代は、通常型のパンタグラフであったが、現在はシングルアーム式パンタグラフに改修されている。また、当時のスカーレット塗装から福井鉄道塗装に変更されたほか、名鉄時代は、600vの美濃町線から1500vの各務原線へ乗り入れるべく変圧器を搭載していたが、現在は取り外されているようだ。

Img_3615  800形、名鉄が部分低床車として2000年に導入して、2001年に鉄道友の会よりローレル賞を受賞している。日本車両が開発した国産車両で、低床車としては日本でも初期の車両といえる。車両の中央部分が低床車となっており、車端部分は、従来の軌道車と同程度の高さとなっている。したがって、車内は斜面のようになっている。クロスシート車。

Img_3957  名鉄では、岐阜市内線・黒野線直通の急行運行についていた770系電車。名鉄が、岐阜市の支援を打診したものの受け入れられず、600v線を全廃したのが2005年。その後、名鉄が運行していた高性能車は、豊橋鉄道や福井鉄道に譲渡され、車両の老朽化に悩む地方私鉄の近代化に大きく貢献した。

Img_3961  200形。こちらは福井鉄道が1960年に急行用車両として導入した車両で、車内は、ボックス式クロスシートとロングシートを合わせたセミクロスシート車となっている。二両編成で運行され、導入当初は急行用車両として運行された。当時、国鉄北陸本線は普通電車の運行本数が少なく、北陸本線にほぼ並行する福井鉄道福武線では、よく活躍した。写真は、その初期塗装。

Img_3937  200形電車の福井鉄道塗装。写真の200形電車は、小さなトンネルのような構造物を潜っているが、これは積雪時に、重要な線路のポイント部分を防護するためのシェルターで、北陸本線などでも、同様に重要なポイントを防護するための構造物がみられる。北陸という積雪地ならではの配慮といえよう。

Img_3909  610形電車。名古屋市交通局名城線で運行されていた電車を二両編成として、福井鉄道で運行しているもの。ほかにもう一編成、名古屋の地下鉄から福井に場所を移して活躍している車両がある。路面電車や、同部分低床車と、従来型の電車を併用している鉄道であるが、元名鉄の譲渡車両が、今なお活躍するなど、興味深い鉄道線を見ることが出来た。

HARUNA

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パノラマカー名称列車カルテット1DAY やながせ号&ブルーインパルス号&鬼岩号

2009-05-23 13:02:08 | コラム

◆名鉄パノラマカー団体列車

 パノラマカーカルテット運行を先週土曜日に撮影した。パノラマカー名称列車を一度に多数撮影できる機会ということで足を運んだのだが、本日は、パノラマカー特集としてその様子をお伝えしたい。

Img_8682  パノラマカーカルテット運行とは、名鉄パノラマカーが団体列車として運行し、目的地毎にヘッドマークを切り替えるというイベント運行で、カルテットという名前の通り、四つのヘッドマークを付け替えて運行される。今なお人気の名鉄7000形、その特別列車運行ということもあり、展望席はいつも通りの活気だ。

Img_8648  パノラマカーやながせ号。やながせ、とは岐阜市の繁華街柳ヶ瀬に由来する。田神駅を通過を撮影。名称列車カルテット1DAY切符は3500円、募集人員は230名とのこと。白帯7000形は、座席指定席特急専用運行を想定して車内をリニューアルしたのだが、座席は、転換クロスシートでリクライニングシートではなく、扉も客室部分と直結しており、冬季の暖房、夏季の冷房の機能には影響が考えられる。

Img_8653  指定席券を必要としない急行車としては、展望席を有しており、京阪のテレビカーと並んで、特別料金不要の車両としては、サービスは最高峰にあったと言い切れるのだが、他方で7000形に頼り過ぎ、旧3700形のような支線車両の近代化が置き去りにされたのでは?という批判もあったようだ。他方、展望車を有する急行車というもの自体、消えてしまうのは残念。

Img_8704  座席指定席の表示が出ていた。名鉄では、特別車、ミューチケットという呼称を用いているが、昔は座席指定席車、座席指定券という名称で運行されていた。指定席特急運行開始当時は、そのまま無改造のパノラマカーが充当されたこともあったが、その後、座席を新しくするなど改修を行った。

Img_8674  細畑駅を通過する7000形パノラマカー、ブルーインパルス号。ブルーインパルスとは、もちろん、航空自衛隊のブルーインパルスを意味する名称列車で、沿線に十万人以上の来場者を集める岐阜基地、そしてC-130輸送機を運用する小牧基地があり、航空祭輸送の目的で運行された名称列車だ。

Img_8679  ブルーインパルス号ヘッドマークには、T-4練習機が描かれている。航空自衛隊のブルーインパルスは、F-86戦闘機、超音速のT-2高等練習機、そして現在のT-4練習機を運用して展示飛行を実施してきたが、名鉄の航空祭輸送も過去にはF-86やT-2を模ったヘッドマークで運行している。三柿野駅は、岐阜基地の最寄駅。

Img_8683  パノラマカーは、岐阜基地航空祭2008の時点では、ブルーインパルス号はもちろん、多くの車両が解体されてしまっており、その運行も非常に限られている状況ではあったが、名古屋から新鵜沼までは運行されているダイヤが組まれていた。ちなみに今年の岐阜基地航空祭の時点では、パノラマカーは完全引退した後となる。

Img_8714  三柿野駅に停車するブルーインパルス号。三柿野駅で停車時間が長く設定されており、方向幕を団体から特急に切り替えたうえで、時々ヘッドマークを換える、というようなサービスを実施していた。当日は、輸送機が飛んでいたようだが、平日のように盛んに岐阜基地から戦闘機が発着する、というようなことは無かった。

Img_8711  三柿野駅のホームであるが、パノラマカーが停車しているホームは、団体列車乗車券の専用ホームとなっており、入手することができなかった人は反対側のホームから撮影していた。当日は撃てんで、傘をさしていなければ撮影もままならない状況ではあったが、かなりのファンが足を運んでいた。

Img_8708  展望席を隣から撮影。パノラマカーは、運転台を二階に上げているということで眺望も良好、安全確認をしやすい視程の良さに加え、連結器を緩衝器として機能するよう設計されているので、過去に踏切を塞いだダンプカーに衝突した際も乗客の安全は確保でき、鋼製車であるので、過去に可燃物を満載したトラックが突っ込んで来た際にも乗客の安全は守られた。

Img_8792  7700形四両編成による急行運行。下手なパノラマカーよりも、今は貴重となった7700形の連結運行。7700形は、支線にもパノラマカーを!、という構想のもと導入された電車で、1973年に導入された電車。7000形の導入が1961年であるから、やや後でデビュー。車内は展望席を除きパノラマカーと同じだ。

Img_8795  白帯車と同じ転換式クロスシートを採用しており、特急運行にも充当された。7000形白帯車とともに7700形は六両編成の特急に充当されたこともあるのだが、同時に普通電車として運行されることも多い。とっ急に利用される電車が普通電車として運行、いわゆる乗り得列車として頑張っていた。

Img_8806  7700形は、現在、知立駅を起点として三河線の普通列車運行に充当されているが、この場合、二両編成で運行される。しかも三河線は基本的に普通電車しか運行されていないので、二両編成の7700形が四両編成で、しかも急行として運行されているのは、非常に貴重なのでは、と思った次第。

Img_8830  パノラマカー鬼岩号。御嵩に向かう特急で、鬼岩とは、日本ライン川下りと関係した名称。四両編成なのだが、出来れば他にも7000形の編成は生き残っているので、8両編成ということで長大な編成を走らせたり、もしくは二本同時に走らせ、待機駅で7000形を追い越し、追い越され、というのも見てみたい気がする。

Img_8832  鬼岩号。このあと、御嵩駅で、パノラマカー木曽川鵜飼号として新鵜沼駅まで運行された。木曽川鵜飼号も撮影は考えたのだが、戻ってくるまで非常に時間がかかるのと、西可児トンネルや犬山橋は大盛況とのことで、今回は、カルテットの四列車のうち、三つを撮影に成功したので、状況終了となった。

Img_8833  今回のパノラマカーカルテットは、名鉄パノラマカーさよならイベント第三弾として企画されたもので、今後名鉄では、一ヶ月に一回という規模で、パノラマカーによるイベント運行を実施するとのこと。8月30日に最終運行が予定されているパノラマカーの文字通りラストスパートを、今後もできる限り見守ってゆきたい。

HARUNA

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特急まいづる号(Limited Express MAIZURU) 原色特急183系からの情景

2009-05-22 23:26:43 | コラム

◆特急で東舞鶴へ

 新砕氷艦しらせ就役、そして元ヘリコプター搭載護衛艦はるな、を見るべく、特急にて舞鶴に向かった。本日は、その際の内容。

Img_2331  二条駅に滑り込むように到着する特急たんば1号・まいづる1号。複線化工事するむ嵯峨野山陰線、その高架部分を進む特急。古都京都をゆく高架路線というのも、妙な取り合わせのようだが、ここからしばらく進むと、保津峡のあたりをさかいに嵯峨野山陰線の車窓に映る風景は一変する。

Img_2313  京都駅で撮影した特急雷鳥。この485系で湖西線を北陸本線の敦賀まで行って、そこから小浜線に乗り換え、日本海の景色を堪能しながら舞鶴へ向かう、というのも考えたのだけれども、所要時間が倍以上かかるので、今回は断念。ちなみに、蛇足だが確か前回と前々回、その前も断念した経路だ。

Img_2336  二条駅の特急まいづる号。この高架路線を進んでくる特急を撮影するべく、一本前の普通亀岡行きで京都駅から二条駅に向かった、・・・、と言いたいのだが、それ以上に、特急料金は京都駅からだと自由席利用で1360円、しかし、二条駅からだと距離の関係上、特急料金は950円で利用することができる。

Img_2324  特急はしだて。京都行き。同じく二条駅にて撮影。二条駅から特急まいづる号を利用する場合、まいづる号は三両編成。そのうち二両が指定席で自由席は一両のみ。グリーン車は設定されていない。自由席を利用する場合、眺望の良い窓側が空いているかがポイントだが、ここ数回、利用するときには二条でも窓側に座る事が出来た。

Img_2347  保津峡の情景。もともと嵯峨野山陰線は、この保津峡の険しい情景の真っただ中を走っていた。現在の嵯峨野山陰線は、トンネルにより整備された、いわゆる短絡線だ。旧山陰線は、トロッコ列車として線路が今も利用されている。風光明媚な路線で、鉄道写真の被写体としても、トロッコ列車は親しまれている。

Img_2350  この保津峡を越えて、亀岡に至ると、景色は開けてくるのだが、トンネルを越えて絶景、またトンネルに入り、トンネルを抜けると絶景、こういうのが何度か繰り返す。ちなみに、この絶景を楽しめる保津峡川下りというものがあるのだが、更に川下りの終着、嵐山では夏季には鵜飼も行われる。

Img_2351  しばらく進むと、183系が回送電車として停車していた。よくみると、先頭車には貫通扉が取り付けられている。北近畿をゆく特急は、利用者の数に限界があり、短い編成で運行されることが多い。したがって、こういった貫通扉は必須なのだが、もともと無かったところに貫通扉を設置する改造には、巧の技を感じる。

Img_2354  この183系、なぜか、中間車が旧国鉄塗装、いわゆる“こだま色”だった。これは、JR西日本塗装から、こだま色にリニューアルするのか、その逆か、113・115系電車でやっているように、新旧塗装が混在して運行されているのか、ちょっと疑問に思った。ご存じの方、ご教授いただければ幸い。

Img_2372  山陰線にしても、舞鶴線にしても同じなのだが、線路と、その沿線の木々はかなり距離が近い。たまに、これは車体に枝があたっているのでは、と思う。ただ、183系の窓は、それほど大きくはないので、眺望には、もうすこし窓の縁を下げてくれる設計ならばなあ、と、まいづる号に乗るたびに思う。

Img_2373  183系は、個人的に好きな特急。路線もそうなのだが、リクライニングシートに身を沈め、車窓の大自然を眺めつつ、折畳テーブルを出し、弁当を広げると、景色と相まって、デパートの駅弁大会なんかで売られていて、自室の景色とともに食す駅弁とは、比較にならないような移動の醍醐味を感じることができる。

Img_2387  ただ、サンダーバード号や、しらさぎ号に使われている681系や683系と比べると、どうしても見劣りしてしまう。シートからして、バケット式で乗り心地が段違い、読書燈が付いていて、車内も間接照明で、なんというか、その居住空間としての質が段違いというか、世代の差というものを感じさせられる。

Img_2359  それにしても、先ほどの通過した反対側にいた回送電車。あの新旧塗装の183系は、何だったのだろうなあ、と考えて油断していると、行き違いの駅にて、反対側に特急まいづる号が停車していた。急いでカメラを取り出したものの、残念ながら“まいづる号”のヘッドマークは写らなかった。

Img_2382  特急はしだて号との行き違い。こだま色の特急。北近畿タンゴ鉄道が運行しているタンゴディスカバリー号や、タンゴエクスプローラ号は世代の違う特急なのだが、タンゴディスカバリー号が京都駅から東舞鶴へ発車する時間はもう少し後なので、便利を考えると、やはり183系の、まいづる号を利用するしかなかったり。

Img_2390  綾部駅の手前。綾部から山陰線と舞鶴線に分かれてゆく。余部鉄橋ほどではないが、これは降りたら凄い情景なのでは、という橋梁も途中にあったりして、一度はじっくりとカメラ片手に歩いてみたいのだが、あの場所、駅から凄く遠そうだなあ、という、これも毎回思うこと。ちなみに、綾部は、梅の写真が凄い、と憲法とデジカメのお師匠様からお教え頂いた次第、いつか下車してみよう。

HARUNA

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