◆概算要求+要望額は4兆7123億円
本日は速報というかたちで掲載。防衛予算概算要求が示されました。概算要求額と要望額の合計は4兆7123億円、前年度比298億円の0.6%増です 。
防衛費は2002年度の4兆9392億円から減少傾向にあり今年度は4兆6826億円だったのですが、今回は微増を要求しています。実際の予算として求められる総額は今後の動向により左右されるのですが、ね。一般物件費について維持費などは修理費が微減となった以外はほぼ前年度の規模を維持、在日米軍駐留経費負担、研究開発費は微減しましたが、全体では9423億円と前年度比198億円の増額となっています。物件費は、艦艇建造費が半分以下の777億円と前年度より986億円激減しているのですが、一方で航空機購入費は前年度比1765億円増の2474億円。
防衛関係費ですが、技術研究本部の予算が前年度比655億円の減額、実に38.4%のマイナスで、かなり厳しいです。理系や技術開発に無頓着な政治、という事を痛感するとともに、情報本部の予算も57億円減少、割合にして9.7%減額と情報の重要性を軽視して現実の分析を避け空想に走る政治ならではの予算配分、というべきでしょうか。予算配分では陸海空でみてゆきますと陸上自衛隊が1兆7907億円で2.7%増、海上自衛隊が1兆1110億円で5.6%増、航空自衛隊が10732億円で1.3%減、となっています。
人員ですが、陸上自衛隊では現役人員が151702名で61名増と即応予備自衛官8419名の60名減の実質1名増員、即応予備自衛官から現役自衛官へのシフトが進められており、海上自衛隊は45518名で増減0です。航空自衛隊は47211名で88名の増員。統幕は364名で5名の増員、情報本部も4名増の1911名で全体としては247933名の187名増となる見込みです。なお、定員に関しては、訓練期間が比較的長い即応予備自衛官は含まれているのですが、予備自衛官と予備自衛官補はこの数字には含まれていません。
装備品調達について列挙します。陸上自衛隊はUH-60JA×3(94億円)、CH-47JA×1(61億円)、AH-64D×1(54億円)、TH-480B×28(67億円)。海上自衛隊はP-1×3(551億円)、SH-60K×4(233億円)、T-5×5(12億円)、P-3C延命×1(6億円)、SH-60J延命×2(13億円)。航空自衛隊ではF-15J近代化改修×8(114億円)、F-15J自己防衛能力向上×2(48億円)、F-2空対空戦闘能力向上×3・改修×36(104億円)、F-2空対地JDAM機能付与×12(21億円)、C-2×2(384億円)、UH-X×3(169億円)。
航空機関連ではF-Xについて機種未定での調達費用計上が実現しなかったという点、調達中止により生産設備を調達したものが無駄になったとして損害補てんを求める訴訟となっていたAH-64D戦闘ヘリコプターの調達再開、練習ヘリコプターTH-480Bが一気に28機調達される事で現有の練習ヘリコプターを不足する観測ヘリコプターに充てられる可能性が出てきた事が注目でしょう。海上自衛隊では、SH-60Jの減耗にSH-60Kの新造が追いつかなくなったため延命措置が採られ、もうひとつ、航空自衛隊は新救難ヘリコプターとしてUH-Xの調達を開始する計画のようです。
艦船について、海上自衛隊が調達する艦船ですが、潜水艦×1(557億円)、掃海艇×1(163億円)、はつゆき型延命×1(7億円)、あさぎり型延命×4(88億円)、とわだ型延命×1(12億円)、エアクッション艇延命(1億円)。護衛艦の建造がありませんが、19DDが秋に進水式を迎えるという事なのですけれども現状の建造数では、はつゆき型を置き換えられない、という事で護衛艦の延命を行うようです。それなら、何故はるな、引退させたのかな、と。はるな、を練習艦に転用して、練習艦隊の、あさぎり型、はつゆき型を護衛艦に戻せば、護衛艦数を補えただろうに、と考えてしまいます。
誘導弾関係について。陸上自衛隊では03式中距離地対空誘導弾×1中隊(217億円)、短SAM改Ⅱ×1式(26億円)、96式多目的誘導弾システム×4セット(49億円)、中距離多目的誘導弾×12セット(49億円)。航空自衛隊では地対空誘導弾(93億円)、基地防空用SAM×教育用1(15億円)。いよいよ81式短SAMの改良型である改Ⅱの調達が開始されるようです、短SAM-Cよりも能力が向上しているとのことで、巡航ミサイル対処等を期待したいです。航空自衛隊の基地防空用SAMは、新型を教育用で取得するのか、ということも注目です。
火器・車両について。9mm拳銃×137(0.3億円)、89式小銃×10033(30億円)、対人狙撃銃×91(1億円)、5.56mm機関銃MINIMI×265(5億円)、12.7mm重機関銃×118(7億円)、81mm迫撃砲L16×5(1億円)、120mm迫撃砲RT×4(2億円)、99式自走155mm榴弾砲×8(76億円)、10式戦車×16(161億円)、軽装甲機動車×107(32億円)、96式装輪装甲車×11(13億円)、87式偵察警戒車×1(3億円)、NBC偵察車×11(71億円)、車両・通信機材・施設機材(753億円)。航空自衛隊用では軽装甲機動車×9(3億円)。そしてミサイル防衛関連ではペトリオットシステム改修と定期修理現用予備機材取得に211億円が要求されています。
概算要求は、合計で前年度を上回る規模のものとなっているのですけれども、総合的に見て現用装備の除籍を置き換える所要数も充足できない、という状況に変わりはありません。一方で、周辺情勢の緊迫化は進んでおり、この規模で対応できるのか、延命にしても近代化にしても限度はあり、限度を超えて実施すれば費用対効果には見合わない事は言うまでもありません。次回は、今回掲載しなかった施策面について、また、概算要求の要点をもう少し別の角度から分析しようと思います。
HARUNA
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