北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ヘリコプター護衛艦ひえい(DDH142 HIEI) 呉基地から神戸港へ入港(2010.03.22)

2010-03-31 23:47:59 | 海上自衛隊 催事

◆近海練習航海部隊神戸港入港

 本日は年度末ということですので、Weblog北大路機関のメイン記事、自衛隊関連行事の様子を掲載したいと思います。今回は、近海練習航海部隊神戸寄港の情景を紹介します。

Img_9949_2  ヘリコプター搭載護衛艦ひえい、は、はるな型護衛艦二番艦、最終艦ということなんですが、現在建造中のヘリコプター搭載護衛艦いせ、の就役とともに除籍される予定となっていますから、いよいよ来年度、明日からの新年度には除籍されるわけです。この、ひえい、神戸港に入港という一報とともに、撮りに行こう、という流れに。

Img_9739_2  海上自衛隊の近海練習航海については、海上自衛隊HPに情報が掲載されたのですが、この一報には寄港地と航海日程が掲載されています。それでは、この情報を得たらばどうするのか、もちろん、入港する港湾の入港情報や航路情報などが公開されているので、こちらから撮影に向かう時間を調べます。

Img_9759_2 今回は、0800時らしい、と教えていただいたので、いよいよ神戸港に向かいます。さて、困ったのは、入港が0800ということは、少なくとも一時間前には神戸港に到達したいのですけれども、困ったのは神戸と京都、何気なく離れています。70kmはあるのかな、新快速でもかなりの時間を要するのです。

Img_9779_2  時間が掛かるのですけれども、その前に0800から一時間引いた0700時に到着するような時間帯には新快速が運行されていないのですよ。そこで阪急です。阪急は0500から運行されてるんです。確かに速度ではJRの方が速いには速いんだけれども、阪急の方が市街地の中心部に駅があります。

Img_9789_2  駅までの地下鉄のことを考えると阪急の方が便利、ということになりました。つまり、京都駅よりは河原町駅の方が近いので、阪急の始発電車で向かうことにしました。それにしても、始発電車だから、特急や快速、快速急行や通勤特急は運行されていませんから、ゆったり京都本線普通電車の旅です。

Img_9799_2  河原町駅から十三駅まで普通電車で行くのですけれども、さすがは始発電車、西院駅を出て地下区間から地上に出てもまだまだ日の出までは時間があって、桂駅はじめ特急停車駅では、前日の終電が回送電車のまま留置されています。茨木市駅のあたりでようやく空が白ずんできました。

Img_9809_2  京都本線の車窓から見る夜明けです。良かった、本日は快晴みたいです。曇りの方が光り具合を、逆光を気にしなくていいのですけれども、空は蒼い方がいいです。十三駅に到着すると、そのまま神戸本線乗り換えです。神戸本線では特急の運行が始まっている時間でした。さすがに車内は空いてます。

Img_9829  三宮駅からはポートライナーに乗り換えます。ポートライナーは管制式の自動運転なんだけれども、初めての人は、ああ、運転士がいない、ということに、お約束ですね。神戸港は大阪湾展示訓練の時にお世話になったんだけれども、あのときは同じ神戸港とはいっても摩耶埠頭でした。

Img_9839  阪神基地も見学させてもらったことがあるのですけれども、今回の神戸港は考えてみれば、前回の練習艦隊入港行事以来。神戸には幾度も足を運んでも、神戸空港を利用することはありませんし、ポートライナーに乗車したのも久しぶりです。こうして一路ポートターミナルへと向かいます。快速は通過。

Img_9849  神戸港に降り立ったその瞬間から考えるのは撮影です。撮影位置は、どこから撮ろうか、考えたのですけれども、一つは旅客船ターミナルのところから撮るということですかね。ここは屋根があって、ポートターミナル駅から徒歩ですぐです。当日は雨が降る、という予報もあったので、屋根があるというのは重要です。

Img_9859  ポートターミナルには豊富な自販機と清潔なお手洗いもあるのですけれども、できればレストランがほしかった。今はもう営業をやめていたりするわけです。昼食は三宮までポートライナーで戻らなければ、かなり歩くことになります。前に練習艦隊が来たときは会食会場があったのですけれどもね。

Img_9869  撮影する候補としては対岸のタグボートが係留されている公園と埠頭から撮る、ということも考えられるのですけれども、天気の心配という酔いも、ここはやや距離があるような気がして、せっかく間近に停泊するのならば、距離のある場所から撮るのはもったいないかな、と考えました。

Img_9879  公園の区画、ここも自販機はあって、夜景を撮影するには理想的な場所なのですけれども、距離を越えていい写真が撮れるかといいますと、微妙。ただ、順光なのですよね。考えましたが、入港時間もどんどん近付いています、確認に行く時間は無いので安全柵を重視するのが失敗を避ける方策でしょう。

Img_9889  もうひとつは橋梁からの撮影。ポートターミナルからも非常に近い、と言いますかポートターミナルに隣接していて、そうだ、と思い立っていどうしても五分ほどで到着することが出来ます。かなり高い場所で、しかしその分艦船を眼下に、というかなり迫力のある写真を撮ることが出来ます。

Img_9899  唯一の難点は、有名な東京港の入り口、レインボーブリッジとちがって、護衛艦のような大型の艦船は橋梁の下を通るわけではないということで、角度的にいい写真を撮影できる、というわけなのですけれども、ここはポートターミナルの撮影ポイントが撮影者で満員だった場合に予備で使えるという位置づけですかね。

Img_9909  ポートターミナルで撮影ということになりました。ここ、橋梁なんで帽子とかカバーを落としたら下が海、というのも難点ですね。回想するが如く書いてみたのですけれども、回想というか、40Dで撮った早朝の阪急電車の写真、ここまでの道のりを思い出していて、考えているうちに入港予定の0800.

Img_9965  しかし、時計は0800をどんどん過ぎてゆくのに、一向に護衛艦が入港してこない。・・・、お気づきでしょう、入港は0900だったのですよ。それなら、もう少しゆっくりと朝食と珈琲を満喫してから神戸港に行けばよかったかな、と。そうして一つ予定外がありますと、時計とともに、気になる事は徐々に増えて行きます。

Img_9975  ポートターミナル駅に到達すると、気になったのは防舷材の準備、一隻分しかないのですよね。そういえば、練習艦隊の出航に練習艦かしま、が参加していなかった、という話が聞こえてきたり、阪神基地に練習艦隊は入港する、という話もあったりして、どうなるのかな、と。

Img_9985  果たして、ひえい、は神戸港に来るのか、阪神基地に入港するのか、という話です。ここにこういう写真を掲載しているこの記事をご覧のみなさんは、もうどの艦が入港したのかは分かる訳なのですけれども、この写真を撮る前の段階にありました当事者の我々としては普通に来るのか分からずに不安なわけです。

Img_9995  ひえい、さわゆき、が神戸港に入港する、という話と一般公開の日程は阪神基地HPに発表されていたわけなのですけれども、これは予定なので変更もあり得るわけです。かしま、が参加していないかも、ということも今回の予定にはなかったことなのですし、不安は順調に膨らんでいきます。

Img_0046  しかし、こうなるともう運を信じるしかないんだ、と開き直りたくなる一方、今日が晴天な時点で運を使っているようにも思いました次第。思い起こせば今年度は幸運の連続でしたので、さすがに年度内の運は使い尽くしているだろう、と。2010年という意味では運は使っていないのですけれども、行事は2009年度。

Img_0056  あ、そうだ、神戸港にどの護衛艦/練習艦が入港したのか、わかったら教えてほしい、と名古屋支隊の要望事項がありましたので、とりあえず、0800、入港ナシ!の一報を入れます。さあてと、どうなるのでしょうか。名古屋支隊は順調に渋滞に巻き込まれています的な返信が来ました。なるほど。

Img_0057  ひえい、普通に考えれば入港歓迎行事が行われる訳なのですから、一番大きな、ひえい、が神戸港に入港すると考えるのは自然なのですけれども、これは理論上の話。もしかしたら、VIP専用の入港歓迎行事が阪神基地で実施されていたら、と考えたりもするわけで、困ってしまったわけです。

Img_0066  しかし、阪神基地へ入港する艦を撮影するために転進するにしても時間がありません。考えようによっては、一隻だけ入港、という可能性もある訳でして、ひえい、か、それ以外かの一隻が入港、という事はあるのでしょうか、入港歓迎行事を行っている以上、来ることは確かなのですが。

Img_0076  しばらくすると、ようやくマストが見えてきました。ファンネルとマストが一体化した、マック構造の、マックの形状から考えられるのは、はるな型、その一隻、ひえい、です。おお、ひえい、神戸港に予定通り入港ですね。入港は0900というのが正しかったようです。

Img_0086  今回、掲載した一連の写真は、どこにでもある護衛艦入港の情景なのですが、カメラを構えて、入港を待つ間は、こうしたことを考えつつ撮影していました次第。ひえい、は神戸港ポートターミナルに接岸しました。その様子は、これまでの悩んでいる文章とともに掲載した写真の通りです。

Img_0096  接岸するべく、ひえい、が近づいてくるとともに、入港作業の様子が見えてきます。艦橋、上甲板で手早く無駄な動きのない作業、こうした技術の高さは他の国の海軍艦艇を見るとよくわかります。どんな最新鋭の艦船でも出入港一つ、まともにできなければ、軍艦として以前にフネとして使い物になりませんからね。

Img_0106  そういう国の艦船を何隻か見た後で、やはり海上自衛隊の技術は高いと言い切れる訳です。組織とは人、人材を育てることこそが実力の起源、そのための幹部を育てるのが今回の近海練習航海、ということになるわけですね。そして高い技術が戦わずしての抑止力になるわけです。

Img_0116  そして船体も美しい、よく手入れされています。ひえい、は、はるな除籍後、海上自衛隊では最古参の護衛艦なのですけれども、整備は完ぺきと言える状況で、とても最古参と言う印象は与えません。流石は京都の霊峰比叡山の名を冠して先代の高速戦艦比叡の名を継ぐ一隻ですね。

Img_0126  ひえい、よくみてみると、はるな型ですが、はるな、とは若干かたちが違うようです。しかし、背負い式の5インチ砲、上部構造物、航空機格納庫と後部甲板の長大な飛行甲板、機能美を極めた一隻、という姿は変わりません、やっぱりDDHはいいですね。こうして、ひえい、以下近海練習航海部隊は神戸港に入港しました。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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本日で2009年度は幕を閉じまして、明日から2010年度が始まります

2010-03-31 23:43:33 | 北大路機関 広報

明日からの新年度、2010年度もよろしくお願いいたします。

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新輸送機XC-2川崎重工から防衛省へ本日納入! 2009年度内に実現した次期輸送機の納入行事

2010-03-30 23:55:21 | 先端軍事テクノロジー

◆高性能輸送機、北沢防衛大臣、輸出に意欲

 本日、岐阜県各務原市の川崎重厚岐阜工場において次期輸送機XC2が航空自衛隊に納入されました。今後はこれまで通り航空自衛隊岐阜基地において飛行試験を行うのですが、航空自衛隊飛行開発実験団が試験を行うこととなります。

Img_7272  今後の計画としては技術試験を終了した上で、運用試験、部隊配備、部隊運用試験、そして実任務への対応、というかたちになります。エンジンはアメリカ製を採用したことで、性能としては世界のどの輸送機と比較しても遜色なく、民間機用のエンジンを採用していますので、国際航空路線の航路をそのまま飛行することが出来、今後は、C130輸送機が担っている海外への輸送任務において大きな活躍が期待されます。そもそも、C130Hは、米空軍の巨大輸送機C5のような戦略輸送機が拠点基地に運んだ物資や人員を、第一線の飛行場に輸送することが目的の輸送機、つまり戦術輸送機なのですから、物資などを搭載して海外まで長距離を飛行するための任務には不向きの期待であった、ということが出来ます。ですから、C130Hを用いて中東やアフリカ、中米といった遠い地域に輸送任務を行う際には、搭載する物資を出来る限り少なくして、それでも何度も給油の他、絵に着陸を繰り返しながら現地に展開していました。しかし、XC2により、この天は大きく改善されます。物資などを搭載しないフェリー航続距離では10000km以上飛べます。また、先ほど書いたように国際航空路線を使えますから、従来の輸送機よりも高い高度を飛行できて、安定して迅速に輸送を行うことが出来るわけです。

Img_7343  26㌧の搭載が当初求められていたのですけれども、これをクリアしたうえで、最大搭載能力は37.5トン、と川崎重工が海外の国際航空宇宙展用のパンフレットに記載していますので、新戦車は残念ながら搭載することはできないのですけれども、それでも災害事の復旧に必要な施設車両や、野外手術システムなども搭載して輸送することが出来ますし、装輪装甲車や、装甲戦闘車なども輸送することが出来ます。輸送能力一つとってもかなり充実しているのですが、加えて飛行能力は上記の通りかなり先進的なものであるわけです。

Img_7246 防衛省に納入された、ということなのですけれども、開発では輸入リベットの不具合が発生してすべて取り替え、ということになりました、そしてその後、機体強度の面で、これは技術者の型から聞いたのですが、そんなことが起こったのか!、と驚くような強度不足が判明していまして、もう一度作り直さなくてはならないのでは、また、初飛行はさらに遅れるのではないか、という話をしていました。しかし、なんとか是正できたようで、本当に初飛行の際には、技術者冥利、という一言につきたのではないでしょうか、一月二日から作業を行っていたとのことで、本当に頭が下がります。

Img_7268  開発が開始された際には、次期輸送機と次期哨戒機を同時開発して、C1とP3Cの後継機を一度に開発することで、出来る限り部品を共通化して、そうした上で開発コストも低減しよう、という意欲的な試みだったのですけれども、そもそも全く仕様の異なる機体をどうやって共通化するのか、失敗するのではないか、といろいろといわれていました。正直に次期輸送機は開発が進んでいる欧州のA400を、次期哨戒機はアメリカ製のP8を採用したほうがいいのではないか、といわれていましたが、しかし蓋を開けてみますとA400は国際共同開発ということで、技術的な引継が難しく、各国が仕様に発言を繰り返して機体構造が複雑化した上に、止めが最大の顧客であるドイツがA400の構想がでた頃にはなかった大型装甲車を搭載できるように求めたことで構造が補強されて重量が過大に、そうした上で肝心の新エンジンの開発がどうしても上手くいかずに推力不足、昨年末になんとか初飛行を果たしたのですけれども、キャンセルする国がでている、という状況。初飛行して飛べることは証明できたのですけれども実用化はいつなのだろうか、という状況。P8についても旅客機であるボーイング737を改造したのですから飛行性能は高いのですけれども潜水艦を探すために海上を低空で低速飛行する能力は元々低く、仕方ないので対潜哨戒は副次的な任務で海洋監視と情報収集、戦域情報管理を行う機体だから対潜哨戒は無人機とともに実施すればいい、とお茶を濁しました。確かに、ソノブイを散布して潜水艦の音響情報を収集しつつ、磁気を感知するMADを搭載した無人機を多数飛行させて、それで上空から管制して潜水艦を探すのは、一つの方法ではあるのでしょうけれども、P8はその分高性能化を繰り返して高コスト化、無人機を含めたユニットコストは現段階で天井知らずという状況となっています。結論として日本はXC2とP1を開発して良かった、ということになったわけです。

Img_7286  国際共同開発は、一時期、開発コストとリスクを分散することが出来るので、これからは主流になる、といわれていたのですけれども、多国間で開発すれば出資額に応じて発言権が盛り込まれて仕様変更につながりますし、重要な技術は囲い込みを行われれば、当然こちらの面でも開発遅延の要素に。技術者が入れ替わる際に引継が上手くいかなければこれも開発が遅延する原因となりますし、開発が遅延すれば開発コストは上昇してしまいます。結果的に、自主開発を行って、これを国際市場に供給するか、既存の技術を導入する程度で外国の技術に依拠した、XC2がアメリカ製エンジンを導入したように、こういうかたちで開発を行えばリスクは低くなるのですよね。日米共同開発の弾道ミサイル防衛に関しては、アメリカがイニチアティヴを執っていますからこうしたことはないのですけれども、共同開発ではF2の際に大きなトラブルを繰り返していた日本は気づいていたのでしょう。欧州は、トーネードのようになんとかなったあとで、A400を開発したのが、不運だったのでしょうか。

Img_7304  エンジンはボーイング767をはじめ民生でも多く使われているアメリカ製を採用したということで、国際的にみて、この機体の輸送機としての価値はかなり高くなっています。このレベルの輸送機というものは意外と少ないのですよね。C17はいよいよ生産終了が近づいていますし、オーストラリアが導入したときには初期費用を含めたユニットコストがかなり高くなっていると報じられていました。A400は先ほど並べたように、いつ実用化できるのかわからないわけですし、C130シリーズの最新発展型、胴体を延長したC130J30といった機体は、これはこれで高コスト化に陥っています。旧東側のIl76やAn70といった機体は完成度が高いのですが、東側という縛りは大きいでしょう。輸出を考えれば、かなりいい線に行く機体といえるかもしれません。

Img_7344  こうした関係もあって、北沢防衛大臣は、本日のXC2納入行事において、民間転用を行って輸出を検討する、という発言を行いました。こうすることで、量産効果が高まって自衛隊への納入価格が低減することが出来るんではないか、という点。そして防衛技術基盤の維持にもつながるのでは、という発言を行っていて、P1哨戒機、それに救難飛行艇US2を民間転用して輸出する、という提案を行っています。XC2の場合、海外からかなりの数の発注があった場合川崎重工の生産能力で間に合うのか、という工場の規模の問題があります。P1の民間型、といいますが海上を低速で飛行するためにあの大きさの機体でエンジンを四基搭載しているのですけれども、旅客機に転用するには運用コストで失格です、哨戒機として運用するのならばともかく民間はホエールウォッチングでも使わないでしょうし、US2の場合、ヘリコプターでは対応できないような救難や森林消火の際には需要はあるのでしょうけれども、そもそも、この種の機体がロシアと日本でしか開発されていない状況で、ロシア製の飛行艇が売れていないことを考えると、かなり高コストで、しかも運用が難しく、海面近くで使うので機体寿命という縛りがある機体は輸出できるのかな、と素朴な疑問も持ってしまうのですけれども、防衛装備品の輸出に一歩を刻もうということは意義があるのでしょうね。

Img_7355  輸送機としてみた場合XC2はかなり有力な輸送機としての性能を持っているのですから、今後日本は国際貢献任務に、後方支援の一つの方法として空輸支援というものを位置づけて、輸送航空団を将来的に拡充してみては、とも考えてみます。航空総隊を本土防空集団と航空輸送集団の基幹に改編する、という方向性で、人員と規模を拡大してみては、と考えるわけです。現状ではC130Hでのこうした支援には限界があるのですけれどもXC2が数を揃えれば、国際平和維持活動や人道復興支援任務などに航空自衛隊の輸送機を充当する、ということが出来るわけです。

Img_7363  XC2による輸送支援は、そもそも日本ではロジスティクスの重要性がそこまで正確に政治の面で認識されていないのですけれども、ロジスティクス無しに軍隊は任務を遂行し継続することは出来ません。これは民間でも同じなのですけれども、ね。しかし、諸外国ではこうした面の重要性はしっかりと認識されている一方で、どこの国でも正面装備に予算を回したい傾向はありますので、輸送という面で日本が支援を行う、ということは相応に意味があるわけです。日本の輸送機が世界中で人道支援を行う、そして国際平和維持活動を輸送で支える、国際貢献のあり方としてはかなり理想的とおもえるのですが、このために予算や人員の面で配慮する、というのは意義があるのではないでしょうか。本日は年度内にXC2が納入できた、ということでこういうことが浮かんできました次第。

HARUNA

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ソマリア海賊対処第三次派遣隊の護衛艦たかなみ・はまぎり、3月18日に帰国

2010-03-29 23:36:12 | 国際・政治

◆第120回任務完了

 横須賀軍港めぐりの写真がまだ整理できていないところなのですが、こちらの写真はおいおい予備ブログの方に掲載することとしましょう。

Img_7450  横須賀軍港めぐりの途中、吉倉桟橋にやや船体に錆を浮かせた護衛艦たかなみ、の姿が見えました。そこで、朝雲新聞を開いてみますと25日付記事に、2009年11月7日から今年2月20日まで、34回にわたり283隻を護衛、号英距離1万7000マイルもの任務を無事完遂し、3月18日に帰国した、とありました。

Img_7464  海賊対処任務は、派遣当時に当時野党であった民主党が提案しながら一方で派遣には反対したり、社民党は海上保安庁を派遣するべき、という個性的な意見を出していたのですが、政権に就けば、海賊対処任務への派遣はもとより、議論にさえ挙げなくなりましたのは、やはりか、という印象でした。

Img_9368  防衛省HPによれば、第120次護衛任務が無事終了したということですが、海賊を祖ぷ籐するのではなく、船団を確実に護衛する方法は、大井篤氏の著書、海上護衛戦の教訓は生きているのかな、と妙に感心するとともに、政府は出口戦略、例えばソマリアへPKO部隊を派遣するなど、何故もう一歩進んだ議論に歩みださないのか、と考えてしまいます。

Img_9787  一度結論に至り、一度過ぎれば議論から外す、という事は過去にもあった事なのですけれども、状況は変化するのですし、そもそも一回開始した事をそのまま継続し続ければ、どうしても任務そのものは拡大します。海賊対処任務は重要なのですが、政治は、海賊そのものを低減させるPKOや人道復興支援などの議論に進むべきでしょう。

HARUNA

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防衛力とは継続こそが重要 対岸の教訓、Tu160領空侵犯と韓国哨戒艦事故

2010-03-28 22:47:47 | 国際・政治

■物事は急いては事を仕損じる

 普天間問題がなかなか進まない中、インド洋海上阻止行動給油支援にかわる日本のテロとの戦いへの支援態勢への議論はいつの間にかなくなっていて、あたかも日本の安全保障上の最大の問題が普天間問題のように誤解されているようです。

Img_0229 こうした中で、F2生産終了後の戦闘機の国内生産・支援能力についての議論も忘れられているようですが、F2の生産終了は刻一刻と迫ってきています。こうしたなかで、イギリスにロシアのTu160爆撃機が接近し、領空侵犯を行ったとのことです。これは空軍の予算体系が不充分になっているイギリスへの防空の能力の評価、という一面があったのではないでしょうか。イギリス空軍はトーネードを要撃に展開させたのですが、報道では領空侵犯、とありますね。イギリスはアフガニスタン戦費が高騰していて、今後は戦闘機部隊や基地を縮小し、アフガニスタンでは使いにくい大型の装甲車両を削減して小型装輪装甲車の調達を行い、海軍も空母整備計画を見直す可能性があることを示唆しています。

Img_3159 これに加えて、イギリスが参加しているF35計画が順調に遅れていまして、重ねるように開発費用は追加に追加を重ねて上昇、一機あたりの単価に跳ね返っているという状況です。F35Bは、垂直離着陸に成功しましたけれども、まだそういう段階です。イギリス海軍がハリアーの後継機にF35Bを採用する予定で、今更引けないのが現状、FA18Eかタイフーン艦載型にしておけばよかった、といわれているところでしょうか。過去にはタイフーンが実戦配備された直後にもロシアのTu95がイギリスに異常接近する事案がありましたので、今回は少なからずイギリスの防空能力を計る目的があったのでしょう。航空自衛隊の時期戦闘機計画について、一部の識者にはF4そのものを純減という選択肢もあるのではないかという声もあるようですけれども、二個飛行隊が抜けるのならば、相当慎重に例えば稼働率を高めるための補給整備体系の再編や、飛行隊の配置転換などを実施しなければ、対領空侵犯措置の需要が増加した場合に対処することができなくなってしまいます。

Img_8753 加えて、一度二個飛行隊所要の要員や施設、運用体系を省いてしまいますと、今度は現状復帰させるためにまたかなりの労力を必要とすることになります。日本の領空は日本列島が広大であることから非常に広く、北海道北端から南西諸島南端までは、北欧コペンハーゲンから地中海はアフリカ大陸北部アルジェにいたるまでの地域に匹敵します、このあたり、もっと慎重に考えるべきでしょう。ある意味、次世代の日本の航空安全保障を担う重大な問題でその重要性は普天間問題に勝るとも劣りません。

Img_1761  一方で、防衛力は、決して無理をしてはいけません、背伸びをしても屈み続けてもいけないということです。韓国海軍の哨戒艦が黄海で沈没した事案がありました。沈没したのは天安、1200トンのコルベットです。先日、韓国海軍艦艇舞鶴入港の際の記事が急にアクセス増大となっていたのですが、この関係なのでしょうか(ちなみに、昨夜は米軍のKC130に関する記事にアクセスが集中していました、なんでも嘉手納で地上衝突事故があった関係らしく)。韓国海軍では、新型の強襲揚陸艦独島を建造、イージス艦の建造などを急ピッチで実施した結果、ほかの水上戦闘艦への整備補給などが後回しとなっている状況があります。

Img_8372 日本の自衛隊では、現状ではこういうような状況は生じていませんが、将来の脅威に関する見積もりを誤ると、後に無理をしなければならない状況に陥ります。無理というのはどうしても細部で表面化しますので、どこかで重なった部分が集約され、事故につながります。今回の韓国海軍の事故は、機関爆発か、船体の老朽化か、三角波による浸水かは現時点で調査中とのことですが、出先にて聞いた情報だけでも現時点で行方不明者がいるとのこと。無事を祈るとともに、韓国海軍上層部は今後、もう少し規模に見合った予算の体制に移行するよう努力し、事故が起きないようにすることが望まれます。一方で、日本政府も、これを対岸の火事としてみる、ということはあってはならないことです。

Img_0606 鳩山政権は子供手当の費用捻出をはじめとした、一連の公約実現に必要な費用を捻出するための手段として、防衛費の削減に取り組む姿勢を表明しています。鳩山首相が防衛大学校の卒業式での訓辞で述べたことなのですが、自衛隊の装備・部隊体系は現状の予算体系に依拠しての規模で構成されています。先日、沖縄県の那覇駐屯地で第1混成団が第15旅団に改編されたという記事を掲載しましたが、こうして実現した9個師団・6個旅団体制は、1995年に防衛大綱改訂の案として、13個師団・2個混成団体制の縮小案として出されたものが、十五年を経て実現したものということを留意する必要があるでしょう。

Img_0066_1 財源捻出のために2020年代を目処に大きく削減する、というのならばともかく、現時点で短期的に予算を削るというのはあまりに短絡的で無責任です。もっとも、民主党が昨年の衆議院総選挙で示したマニフェストも本来は十年単位で組み替えるべき予算再編による福祉向上を、あたかもすぐに出来るが如く発言して、実行しようとしたために生じたことなのですけれども、ね。さて、防衛力、もちろんほかの物事もそうですが、継続こそ力、といいますか、重要です。

HARUNA

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FF-57ルーベンジェイムス(O,Hペリー級)、ハワイから横須賀へ寄港中!

2010-03-27 22:30:54 | 世界の艦艇

■ミサイルフリゲイトからフリゲイトへ改修

 アメリカ海軍のフリゲイト、ルーベンジェイムスが横須賀に寄港しています。聞くところでは、一週間ほど前に入港して、そのまま停泊しているとのことでした。

Img_1949  明日は横須賀基地一般公開ということなのですが、それに併せて、ということでもないのでしょうけれどもルーベンジェイムスの寄港です。現在、アメリカ海軍横須賀海軍施設に前方展開している水上戦闘艦はすべてイージスシステムを搭載したイージス艦で構成されているのですけれども、アメリカ海軍にはOHペリー級というミサイルフリゲイトが運用されています。ルーベンジェイムスは、このOHペリー級ミサイルフリゲイトの一隻として建造されたわけです。

Img_1950  ミサイルフリゲイトとして建造されたOHペリー級は、はたかぜ型ミサイル護衛艦、たちかぜ型ミサイル護衛艦と同じスタンダードミサイル発射機Mk13を搭載するミサイルフリゲイトとして建造されました。これは、空母機動部隊を上空からの脅威に対応するべく搭載したもので、反面、その他の対艦装備や対潜装備では、海上自衛隊の護衛艦と比べても見劣りする部分がありました。これを補うために、後部にはヘリコプター二機の運用能力を付与させていたわけです。

Img_1921  しかし、東西冷戦が終結して、少なくともアメリカ海軍の空母機動部隊に大胆な航空攻撃を仕掛けるような脅威、というものがなかなか考えにくくなってきました。一方で、垂直にミサイルを収容するVLS方式とくらべて、一発一発を下部の弾薬庫から装填して発射するMk13発射機は、可動部分が多く、保守整備の面で厳しいものがありました。そこで、アメリカ海軍では、このMk13を取り外すこととしたのです。もし私がアメリカ海軍作戦部長の立場にいたならば、Mk13を取り外して、そこにMk41VLSを配置して、任務に当てたでしょう。しかし、アメリカ海軍は前述のように上空からの脅威の相対的減少を背景に、Mk13をはずして、そこに機関砲を搭載する、という改修を行うこととしたのです。

Img_1912  OHペリー級は、満載排水量3600~4000トンという比較的小さな船体にスタンダードミサイルの関連設備を搭載した上で、さらにヘリコプター二機を搭載するという設計を採用したので、搭載されている76ミリ単装砲は上部構造物の中央部分に配置するという独特の設計を採用しています。これはこれで使い勝手は悪くない、という話もあるのですけれども、アメリカ海軍を始め各国海軍の水上戦闘艦に、これに追随する設計を採用する事例がでていませんので、厳しいものがあったのでしょう。それならば、76ミリ砲を前に移設しては、と思ったりもしたのですが、機関砲を搭載する、という改修に落ち着いたようです。

Img_1928 機関砲の追加搭載ですが、ごらんの通り、艦内部からの管制式ではなく砲員が操作するタイプのもののようです。揚弾機などの設備がみられませんので、ふつうに水上戦闘艦が近接防備用に搭載している25ミリ機関砲のようです。やや、上部の形状が違うようなのですけれども、砲塔式ではないことは確かです。この足場のようなものを、そのままMk13発射機の撤去跡地に搭載、いや、これはもうほとんど載っけていつろいう表現が正しいのでしょうか。

Img_1904  ミサイルフリゲイトから、やや強引にフリゲイトとなったOHペリー級は、Mk13から対空ミサイルであるスタンダードミサイルに加えてハープーン対艦ミサイルを運用していました。しかし、MK13を撤去したことで、OHペリー級は、三連装短魚雷発射管、76ミリ単装砲、20ミリCIWSと機関砲を搭載しているだけのフリゲイトよなりました。レーダーなどはミサイルフリゲイト時代のものを踏襲している部分が大きく、センサーとしては大丈夫なのでしょうが、やや力不足にも感じます。

Img_1963  しかし、そこはアメリカ海軍の運用体系が少し見えてくるようにも感じます。まず、アメリカ海軍は艦隊がデータリンクで結ばれていますし、脅威度の高さに応じて部隊を展開させます。OHペリー級が発見した脅威情報は、すぐにデータリンクにより艦隊で共有されることとなるわけです。そしてもう一つは、テロのと戦いを含めて、ヘリコプター二機のプラットフォームとなれる、つまりOHペリー級はその航空機運用能力が評価された、ということが今回の改造により現役に残った背景として考えられるでしょう。個艦の優越ばかり図るのではなく、一国の政策を反映させるための軍事力、その一翼を担うことが求められている、ということができるのかもしれません。・・・、しかし、個人的にはVLSにESSMを搭載して運用しては、と思うのですけれどもね、とってつけたような機関砲は少し違和感があります。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文および写真は北大路期間の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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第15旅団那覇駐屯地に新編 南西諸島の防衛警備能力を強化!

2010-03-26 23:32:17 | 防衛・安全保障

■第1混成団から改編

 本日、陸上自衛隊那覇駐屯地において第1混成団が第15旅団へと改編され、改編記念行事には北沢防衛大臣も出席しました。

Img_0824  第15旅団新編記念行事では、第1混成団長反怖謙一陸将補が新しく初代第15旅団長に着任、北沢防衛大臣、火箱陸幕長が出席し、北沢防衛大臣は、地理的特性をふまえ、ゲリラや特殊部隊による攻撃などに実効的に対処することが求められている。国民の理解と信頼を求められるよう土井力してほしい、と訓辞しました。新編行事には、隊員700名が参加、車両150両が参加しての観閲行進が行われたとのことです。

Img_0477 これまで、那覇駐屯地には、第1混成団が駐屯して、沖縄県の防衛警備及び災害派遣に当たってきましたが、1996年に混成団を旅団へと改編することが決定していて、今回、この改編が実現した形となりました。南西諸島の防衛力を強化するために旅団へ改編となった第15旅団は、旅団本部を中心に、第51普通科連隊、第6高射特科群、第15施設中隊、第15偵察隊、第15飛行隊、第15後方支援隊、第101不発弾処理隊、第15化学防護隊、第15音楽隊を基幹として編成されています。人員は2100名、戦車部隊や野戦特科部隊は編成に組み込まれていないのですが、空中機動力が高く、沿岸監視などを想定した部隊編成となっています。

Img_6433_1  第1混成団は、第1混成群に第301普通科中隊、第302普通科中隊、第301重迫撃砲中隊を置いて基幹戦闘部隊としていたのに加えて、沖縄県の防空を担うためのホークミサイルを運用する第6高射特科群、第101後方支援隊、そして不発弾の多い沖縄県に対応するべく編成された第101不発弾処理隊、急患を航空搬送することを大きな任務とする第101飛行隊から編成されていました。不発弾処理、防空、急患輸送、この三つが大きな任務であったわけですね。

Img_1675  今回新編された第51普通科連隊は、三個普通科中隊を基幹とする旅団普通科連隊で、本部管理中隊に重迫撃砲小隊を置く編成を採っているものとおもわれます。公開された新編行事での写真では、軽装甲機動車が多数写っていまして、推測ですが併せて01式軽対戦車誘導弾を装備、離島防衛を背景として高い抑止力が発揮できるだろう、ということができます。一方で、四国は善通寺の第2混成団が第14旅団に改編される際には二個普通科連隊を基幹とする編成に改編されていますので、将来的には沖縄県内に第52普通科連隊が新編される、ということもあるかもしれません。

Img_4820  第8高射特科群は、ホークミサイルを運用する部隊です。ホークミサイルは基本的に方面隊のもとで直轄運用されるのですけれども、飯塚駐屯地に司令部を置く西部方面隊の第二高射特科団の指揮下ではなく、沖縄のホークミサイル部隊は混成団に直轄運用されるというかたちをとっています。白川分屯地の第323高射中隊、勝連分屯地の第324高射中隊、知念分屯地の第325高射中隊、南与座分屯地の第326高射中隊、そして第306高射搬送通信隊から成る編成を採っています。北海道東千歳の第七師団に所属する第7高射特科連隊と並び、直轄部隊を除く高射特科部隊としてはもっとも強力な部隊なのですけれども、中射程のホークミサイル以外の野戦高射装備を有していないのも特色です。

Img_4265  第15飛行隊は、UH60JA多用途ヘリコプター、CH47J/JA輸送ヘリコプター、そしてLR2連絡偵察機などを運用している部隊で、航続距離が非常に大きい陸上自衛隊のヘリコプターは、民間の防災ヘリコプターやドクターヘリの能力では展開することのできない遠隔地への緊急救急搬送を行う任務を有しています。これは第101飛行隊から続いているもので、有事の際には離島への空輸任務にあたることもできるでしょう。ただし、第15旅団は、第1混成団時代も含めて野戦特科部隊を持っていませんのでOH6やOH1のような観測ヘリコプターを持っていません。付け加えれば、離島防衛にあれば非常に大きな能力を発揮するだろう戦闘ヘリコプターや対戦車ヘリコプターも配備されていません。

Img_8549  第15偵察隊は、第1混成団時代にはなかった部隊で、87式偵察警戒車や沿岸監視装置などを運用しているとのことです。那覇駐屯地に展示保存されているものを除けば、陸上自衛隊の装甲車両が沖縄に持ち込まれるのは初めて、となるのでしょうか。沖縄戦で第32軍が戦車隊を配置して以来かもしれません。沖縄県内には陸上自衛隊の演習上はなく、第1混成群も駐屯地のグラウンドのとなりにて訓練を行っていたのですが、普天間飛行場返還を含めた米軍再編にともなう一連の変革の中で、沖縄県内の米軍演習上を陸上自衛隊と共同使用するという計画ですから、87式偵察警戒車の射撃訓練を含めた様々な訓練も実施できることとなるでしょう。対戦車隊を編成して、96式多目的誘導弾システムを配備すれば、ヘリで空輸ができて万全だったのですけれどもね。

Img_0969  南西諸島の防衛警備を考えるのならば、こうした旅団とともに、中隊規模での警備隊、対馬警備隊のような部隊を広範に配置する方法が一つ考えられるかもしれません。一個中隊規模では、フォークランド紛争におけるイギリス軍警備中隊のように、相手が大隊規模で上陸をすれば万事休す、となるかもしれませんが、対馬警備隊の場合、中隊は山間部での遊撃戦を展開する訓練を実施してきました。これは九州からのヘリコプターによる増援が到達するまでの時間を稼ぐことが目的でしたけれども、フォークランド諸島とイギリス本土ほど、南西諸島の島々は分散していませんので、対戦車ミサイルや迫撃砲を持って普通科中隊が駐屯することには意義があるでしょう。

Img_9234  また、海上自衛隊と協同して、50~100トンクラスの高速艇、スウェーデン水陸両用戦団、昔の沿岸砲兵が運用しているような強襲艇を運用する事ができれば、こちらも機動力を発揮でき、大きな抑止力となります。こうした部隊が沖縄にて任務に当たっている、ということも大きな意義があります。自衛隊が全くいない状況であれば、小隊規模の特殊部隊が上陸して、日本以外の国旗を掲げ既成事実を構築しようとする危惧もあるのですけれども、一個小隊でも89式小銃と携帯式ミサイルを手に隠れて状況を通信機にて那覇や東京に送ることは大きな意義があります。

 沖縄県、南西諸島は、大陸から太平洋までを通じる中間にあります。そして東シナ海には天然ガスを算出する関係上、排他的経済水域の中間線に関して、日本と中国、韓国との間で国際紛争が既に勃発しています。この国際紛争が武力紛争に展開しないという保証はどこにもないわけで、特に大陸からの圧力を押さえるのに第15旅団2100名への重責はもの凄いことになるのですけれども、平和と安定のために新しい旅団が寄与してくれることは確かです。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十一年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報3

2010-03-25 23:04:38 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 平成二十一年度もいよいよ終了ですが、本日は潜水艦うんりゅう就役、年度末はこうした動きがあります。このあたりも加えて、今年度最後の行事紹介を行います。

Img_65312  沖縄県の防衛警備及び災害派遣を担う陸上自衛隊第1混成団ですが、明日、遂に第15旅団への部隊改編を受けます。空中機動力と不発弾処理、防空能力を重視した混成団は、人員を増強し、年々強まる南西諸島への軍事的圧力に応える部隊へと改編されることとなります。行事は非公開ですが、北澤防衛大臣が式典に出席するべく沖縄入りをしたとのことです。

Img_5285  善通寺駐屯地に駐屯している第50普通科連隊が、新設された新高知駐屯地に移駐した記念行事が行われます。これまでの高知駐屯地は第二営舎として当面は維持されるようですが、新しい駐屯地での一般公開は今回が初めてとなります。一般公開では、第50普通科連隊による観閲行進が行われるとのこと。写真は第49普通科連隊の観閲行進。

Img_5270  日米親善よこすかスプリングフェスタが日曜日に行われます。飛行展示や体験航海はありませんが、米軍施設が開放され、護衛艦いかづち、ミサイル駆逐艦ステザムの一般公開が行われるとのことです。このほか、第七艦隊バンドによる演奏も行われるとのことで、艦船公開のある花見、という行事のようですね。

Img_0103  このほか、全国の駐屯地では、桜前線に併せて駐屯地の桜並木を一般に開放する行事が行われます。夕方から開放され、式典などはありませんが、桜並木は見事なところが多いです、最寄りの駐屯地などに足を運ばれてみてはいかがでしょうか。毎日行われている訳ではありませんので詳細は、地本や部隊HPをご覧ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 3月28日:日米親善よこすかスプリングフェスタ・・・http://www.cocoyoko.net/base/index.html
  2. 3月28日:新高知駐屯地開設記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/14b/

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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潜水艦うんりゅう引渡式・自衛艦旗授与式 川崎造船神戸工場にて明日開催

2010-03-24 23:49:20 | 先端軍事テクノロジー

◆そうりゅう型二番艦明日就役!

 防衛省海上自衛隊によれば、明日1130時から1430時、神戸の川崎造船神戸工場において最新潜水艦うんりゅう、が自衛艦旗を授与され、海上自衛隊に引き渡されます。

Img_5721  式典へは、川崎造船社長と、呉地方総監武田海将が執行者として執り行われ、防衛省からは海上幕僚長の赤星海将、海幕装備部長の矢野海将補、装備施設本部の岡崎本部長が出席する予定です。川崎造船神戸工場は、現在練習艦隊の近海航海訓練に参加している護衛艦ひえい、さわゆき、が停泊しているポートターミナルとは反対側にあり、ポートライナーのポートターミナル駅から見ることが出来ます。なお、明日0900時に、ひえい、さわゆき、は次の寄港地佐世保基地に向けて出航する予定です。

Img_6701_1  自衛艦旗授与式・引渡式は、1130~1135に引渡式、続いて1135~1215に自衛艦旗授与式が行われ、1250~1345には祝宴、そして1420~1430に出航見送り式が行われます。うんりゅう初代艦長には、杉山治2佐が就き、新しい潜水艦が抑止力の一翼を担えるように訓練と戦術研究を行います。なお、式典へは招待客のみが立ち入ることが出来るのですけれども、川崎造船神戸工場からやや距離はありますけれども、前述のポートターミナル周辺やポートアイランドからも出航は望見することが出来ます。

Img_57111  うんりゅう、は、そうりゅう型潜水艦の二番艦で、そうりゅう、が三菱にて建造されていて、二番艦が川重において建造されています。そうりゅう、は呉基地の第一潜水隊群第五潜水隊に所属していますから、うんりゅう、も同じく第五潜水隊に配備され、そうりゅう、とともに隊を編成することになるのでしょうか。海上自衛隊の実用潜水艦としては、二隻目の非大気依存推進:Air Independent Propulsion、AIP潜水艦となります。これにより、従来のディーゼル発電機により蓄電池に電力を蓄えて行動する潜水艦よりも水中行動力が工場しています。

Img_6682  基準排水量2950㌧、満載排水量4200㌧。全長84㍍、全幅9.1㍍、喫水8.4㍍。機関として、ディーゼルエンジン二基とスウェーデンのコックルムス社が開発したスターリング方式AIP機関二基を搭載、ディーゼルスターリングエレクトリック推進方式で一軸推進を採用しています。出力は8000馬力、水中速力は20ノット。武装は533㍉魚雷発射管6門で、これまでの海上自衛隊潜水艦と同じく20発の魚雷もしくは対艦ミサイルを搭載していると考えられ、乗員は65名。既に五番艦までが建造中となっています。

Img_6697  AIP推進方式が注目される、そうりゅう型ですが、X字舵を採用して水中機動力の向上と接岸作業時の安全性を高めている点、舵の制御にはコンピュータを採用していて、主電動機に永久磁石方式を採用していて、潜望鏡には非船殻貫通方式のタレス社製オプトロニクマストCM101を三菱電機がライセンス生産したものを搭載するなど、これまでの海上自衛隊潜水艦とは技術的に進んだものが盛り込まれています。今回は、そうりゅう、の写真を掲載しましたが、明日、姉妹艦うんりゅう、が自衛艦として海へ歩みを始めることになります。

HARUNA

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防衛計画の大綱改訂に関する一視点:今回の改訂に関する注目点

2010-03-23 23:32:30 | 国際・政治

■防衛大綱の位置づけと今回の改訂

防衛大綱改訂について、自民党から政権を引き継いだ民主党は一年の遅れとともに本年末を目処に新防衛大綱を画定させるべく意見を集約しています。

Img_9380  防衛大綱とは、日本の防衛政策や軍事分野を含めた安全保障政策を示すもので、これに基づいて具体的な部隊編成や装備の定数を定めて行くものです。自衛隊、というと毎年の防衛予算と予算に基づく装備品の調達などが注目されるのえすけれども、その防衛装備品の調達や教育訓練、演習、隊員の数といったものは、数年を区切って中期防衛力整備計画というもので大まかに決められています。

Img_6951  かつては、第一次防衛力整備計画、第二次防衛力整備計画、というように、略して3次防、4次防、というように示されていたのですけれども日本の防衛力がアメリカと協力して一定の事態に対応できるようになった1976年、その防衛力を維持し、新しい脅威に対応できるように大綱を定めることとなった、これが防衛計画の大綱、つまり防衛大綱です。

Img_8210  そして、防衛大綱が定めた水準に防衛力を維持するために中期的な計画を定める、つまり、大綱と毎年の予算の中間を担うものが必要となりました。これが70年代から中期業務見積、今日の中期防衛力整備計画となります。中期業務見積は、通称:中業、制定された年度ごとに例えば昭和53年中期業務見積は略して53中業といわれたのですが、中期防衛計画は中期防と略されています。

Img_4306  今年度までの中期防衛力整備計画は平成17年度のもので、五年間で23兆6400億円の予算が計画されていました。23兆6400億円というと、かなりの費用にみえるのですけれども、子ども手当の満額支給を行えば五年間で22兆5000億~25兆円となりますので、見方は変わってきます。 さて、防衛大綱は、この中期防衛力整備計画の大本になる基本計画を示すものですから、基本的に日本はどの分野での脅威をそうていしているか、ということをしめした上で、陸上自衛隊であれば、師団や旅団といった基幹となる部隊の規模を示した上で、主要装備はどの程度必要か、という視点を示します。具体的な装備の調達計画は中期防衛力整備計画が示し、年間にどの位の割合で調達するかは毎年の防衛予算において明示します。

Img_0183  海上自衛隊の場合は、こちらも基幹部隊と護衛艦や潜水艦、作戦機の規模を明示した上で、実際に何隻を建造するかは中期防衛力整備計画があたり、型式などは毎年の防衛予算が当たります。航空自衛隊も、海空自衛隊と同じように作戦機や地対空ミサイルの部隊規模が定められた上で、中期防衛力整備計画、毎年の防衛予算が細部を積めてゆく構図となります。 それでは、今回の防衛大綱改訂はなにを注目するべきなのでしょうか。

Img_8924  まず、これまでの防衛大綱は、冷戦型の装備体系を改めて、基盤的防衛力を維持しつつ、部隊のスリム化を行う、という指針で90年代に改訂が行われ、2000年代に基盤的防衛力を維持しつつ財政難を背景に思い切った削減を実施、こうした上で弾道ミサイルやゲリラコマンドーといった新しい脅威に対応する体制を構築する、という内容でした。今回の改訂において注目するべきは、これまで二回の改訂にさいして、削るに削られた基盤的防衛力により実際には様々な不都合が生じている現状を是正する試みが行われるのか、という一点が注目されます。

Img_9383  そしてもう一つは、これは基盤的防衛力の維持とも重なるのですけれども、防衛装備品の国産能力を維持するのか、という点です。この一点は装備品の稼働率の問題と直結していて重要な問題です。もう一つは、西方シフトについて。これは北方重視の体制を冷戦時代に構築して戦車部隊を中心に整備してきた方針を、演習場の環境に恵まれた北海道を中心に部隊を展開させ、必要に応じて全国に展開させる、という方式がとられてきました。これが北方以外からの日本への圧力を想定すれば、南西諸島の防衛を重視するために機甲部隊から空中機動部隊に体系を転換する、というような選択肢も出てくるかもしれません。 現在の日本の防衛力は、削ることのできる無駄な部分はすべて省かれた状況になっています。

Img_8350  一時期無駄といわれた北海道の戦車部隊は、削りすぎた本土の機動打撃部隊を補うとともに、ゲリラコマンドー対処では戦車の位置づけが見直されています、そしてこれ以上削減すると戦車の国産能力が失われてしまい、大柄な外国製戦車を無理して使う必要が出てきます。相手が戦車を持っている以上こちらも戦車が必要になりますので装備しない、という選択肢はありません。もっと削れるのではといわれていた護衛艦は、海賊対処をはじめとして海外での任務が増える中で隣国の海軍力が増強されていて、日本近海での活動も回数が増加していますから現状では不足している状況です。

Img_7843  航空自衛隊の戦闘機は、日本列島の非常に広い空域を非常に少ない機体に国産能力を維持していることによる企業の支援、これに依拠しての高い稼働率で支えているのですけれども、対領空侵犯対処任務は一定で推移していますから、削減するということは難しそうです。無駄な部分はない中、削りすぎた部分が大きくなっていますから、これを復元の方向で調整できるのか、ということが問題となるでしょう。 個々の部分は、このほかにも多くの命題があるのですけれども、新防衛大綱の画定まで時間がありますので、こちらは追々、列挙し掲載してゆくこととします。

HARUNA

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