北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

現代日本と巡洋艦(第七回):戦力投射任務に向かう巡洋艦が重視すべき能力

2015-05-31 22:43:30 | 防衛・安全保障
■必要な巡洋艦の艦形
今回から、大型水上戦闘艦という意味での巡洋艦について、見てゆく事としましょう。

自衛隊の活動範囲が1990年代には考えられないほど広域化した現状において、邦人保護と国際平和維持活動支援に海賊対処等平時の警備行動、有事の際における補助戦闘や両用作戦などへの対処を念頭に置きますと、海上自衛隊に必要な艦艇として巡洋艦の必要性は一定程度あり、活動海域の増大により小型艦艇により対応できるものではないとしました。

一方で、平時任務を重視した場合には従来の護衛艦でも対応できるものではありません。護衛艦ももともと長期間の運用は想定しているのですが、もともと想定している長期間の運用には現在行われているソマリア沖海賊対処任務のように、数ヶ月間の長期間を工場的に遂行しているかは疑問です。

さて、必要な能力について。邦人保護任務を念頭としますと、一にも二にも必要となるのは航空機です。航空機の進出速度は艦艇とは比較にならないほどに非常に大きく、また事態発生が沿岸部ならば艦艇による対処は可能となるでしょうが、内陸部の場合には艦艇での対応能力よりも、艦艇からの航空機運用能力がなければ、端的に言えば活動できる部分が非常に限られることとなるでしょう。

ただ、航空機運用能力をどの程度と見積もるかにより艦艇の船体規模が変わってきます。具体的には、全通飛行甲板を有するものであるのか、後部飛行甲板とするものか、というところです。全通飛行甲板型としますと、多くの航空機を同時運用可能となるのですが、その分で上部構造物、そして艦砲など固有装備の搭載能力が大きく制限されます。

また、全通飛行甲板型の艦艇は乾舷を大きくとらなければ飛行甲板が海水に洗われ航空機運用能力が大きく制限されてしまいますのでエレベータと艦内格納庫が必須となり、必然的に船体が大型化してしまいます。他方、後部飛行甲板を有する艦、としますと、あまり大型になりすぎません、これは維持費用や燃料消費にもかかわってくるもの。

巡洋艦とみますと、イタリア海軍がかつて運用したヘリコプター巡洋艦やフランス海軍の練習巡洋艦のようにもちろん格納庫の上に以降甲板を設置する方式もありますが、格納庫の後ろに飛行甲板を配置することである程度船体規模を抑えることも可能です。ただ、小さければよいというものでもありませんので、留意する部分の一つにすぎませんが。

北大路機関:はるな
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平成二十七年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.05.30-31)

2015-05-30 00:30:34 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
口永良部島新岳噴火により変更となりました掲載記事を早々に掲載いたします。

今週末の自衛隊行事は文字通り盛りだくさんの予定ですが、その中でも元も注目の行事は日曜日の東千歳駐屯地、第7師団創設記念行事でしょう。3個戦車連隊を基幹とする戦車師団は自衛隊の戦略予備、通常兵器による抑止力では最有力の部隊であり、観閲行進では戦車が五列に一斉に進み90式戦車五列250tの鋼鉄が一挙に進む、次々進む、その勇壮な姿と大地の鳴動は時際に体験しないとわかりません。

東北六魂祭、東北地方の東日本大震災からの復興などを願い東北六県が持ち回りで開催します祭事、本年は秋田県秋田市にて行われます、ここにはブルーインパルスが飛行展示を行う事で知られ、本年も予定されています。ただ、秋田空港には航空自衛隊秋田救難隊が展開していますが、秋田空港が救難航空機以外の発着を制限している関係上、ブルーインパルスの飛行展示が他の基地から展開する可能性があり、燃料の関係上飛行展示に影響が出る可能性があるとのこと。

鹿追駐屯地創設58周年記念行事、戦車部隊の行事となりますと、忘れてはならないのが鹿追駐屯地祭、第5戦車大隊が駐屯する北海道の駐屯地で、帯広駅から鹿追まで、非常に本数が少なく、そして時間もかかるのですがバスが運行されています。一方特科部隊行事ですが、首都圏の第1師団隷下にある第1特科隊の駐屯する北富士駐屯地も今週末創設55周年記念行事が行われます、FH-70榴弾砲、特科隊は規模は大きくありませんは空包の迫力は物凄いもの。

特科部隊行事、もう一つは美唄駐屯地創設38周年記念行事で、ここには第2地対艦ミサイル連隊が駐屯しています、日曜日ということで東千歳駐屯地祭など他の行事と重なりますので少々地味であることは否めませんが、88式地対艦誘導弾が次々と観閲行進を進む様子はなかなかです。若干駅から距離がありますし、駅からシャトルバスが運行されないため、タクシーなどを利用するのが望ましい所ですが、炭鉱町の現在を眺めつつ少々遠い散策、というのも興味深いかもしれませんね。

このほか、北海道では第3普通科連隊の壴屯する名寄駐屯地にて名寄駐屯地創設62周年記念行事が、昨年度は駐屯地工事中につき駅前で実施した名寄駐屯地祭が行われますし、第26普通科連隊の駐屯する留萌駐屯地にて留萌駐屯地創設62周年記念行事が行われます、北海道の普通科連隊は一個中隊に96式装輪装甲車が配備されており、訓練展示は迫力があるということでした。

施設科部隊行事、東部方面隊直轄の第1施設団が駐屯します古河駐屯地にて、古河駐屯地創設61周年記念行事が行われまして、施設科部隊は、特に方面施設科部隊は現在、戦闘工兵任務から建設工兵任務までを一手に担う改編が行われましたので観ることが出来る装備は盛りだくさんです。もう一つ施設科部隊行事としまして、和歌山駐屯地祭、日本で最も狭い和歌山駐屯地には第304水際障害中隊が駐屯していますが、近くの海浜公園にて行事が行われます。

大宮駐屯地祭、化学学校に中央特殊武器防護隊に対特殊武器衛生隊が駐屯するほか、第1師団隷下の第32普通科連隊が駐屯しています。中央特殊武器防護隊は液体散布車等、全国でもここにしか装備されていない、という装備品が観閲行進に参加しますし、近年まで訓練展示が地味との指摘があった駐屯地ですが第32普通科連隊が参加しての戦闘訓練展示も行われるようになっており、注目出来る行事の一つ。

航空自衛隊関連行事は、山陽山陰地方で二つ行われまして、一つが島根県松江市の高尾山分屯基地開庁記念行事、高尾山と云いますと中央線で一本という印象がありますがそちらではなく国宝指定なった松江城の松江市にありますのでご注意を。もう一つは防府南基地基調記念行事、飛行展示が予定されていますが航空祭が行われる防府北基地航空祭とは別の基地ですので、こちらもご注意ください。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・5月31日:名寄駐屯地創設62周年記念行事・・・ www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
・5月31日:留萌駐屯地創設62周年記念行事・・・ www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
・5月31日:鹿追駐屯地創設58周年記念行事・・・ www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/
・5月31日:美唄駐屯地創設38周年記念行事・・・ www.mod.go.jp/gsdf/nae/
・5月31日:第7師団創設記念行事東千歳駐屯地祭・・・ www.mod.go.jp/gsdf/nae/7d/
・5月30日:東北六魂祭秋田県秋田市・・・ www.rokkon.jp/
・5月31日:古河駐屯地創設61周年記念行事・・・ www.mod.go.jp/gsdf/eae/
・5月31日:化学学校創設記念大宮駐屯地祭・・・ www.mod.go.jp/gsdf/eae/
・5月31日:北富士駐屯地創設55周年記念行事・・・ www.mod.go.jp/gsdf/eae/
・5月31日:和歌山駐屯地創設53周年記念行事・・・ www.mod.go.jp/gsdf/mae/
・5月30日:防府南基地開庁記念行事・・・ www.mod.go.jp/asdf/hofuminami/
・5月31日:高尾山分屯基地開庁記念行事・・・www.mod.go.jp/asdf/wadf/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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口永良部島新岳噴火!29日0959時に爆発的噴火、鹿児島県が全島民へ避難指示

2015-05-29 12:48:16 | 防災・災害派遣
■口永良部島新岳噴火
 本日0959時、鹿児島県の口永良部島新岳いおいて爆発的噴火が観測されました。噴煙は9000mにまで達したのちに火砕流が発生、海岸まで到達した事が確認されました。

 先ほどの総務省消防庁発表としまして、口永良部島全住民の無事を確認したとの事で、これは昨年発生した小規模噴火により化案警戒レベル3として警戒に当たっていた為で、住民の多くは既に火山から最も離れた地区へ避難しているとのことです。口永良部島は屋久島の西方12kmに位置する鹿児島県の離島で38.04km²の面積があります。人口は137名、交通は島の中心部、本村港と屋久島を結ぶフェリーですが、本村港には降灰があり住民は火口から4.5km離れた番屋峰に退避しているとのことで、標高は291mあります。

 現在、海上保安庁測量船拓洋が口永良部島近海に展開しているほか、海上保安庁は現在2名の保安官を航空機により本村港に転回させており、巡視船の接眼が可能かを情報収集中ですが、国土交通省海上保安庁の発表として沖合に巡視船などを停泊させたうえで小型艇による住民の収容を検討しているとの事、ただ本村港と番屋峰は距離があるため、ヘリコプターなどが派遣されています。鹿児島県知事は1040時に陸上自衛隊第8師団に対し災害派遣要請が出され、1048時に鹿児島県の鹿屋航空基地よりP-3C哨戒機が情報収集へ発進、1112時には目達原駐屯地よりUH-60とUH-1が計2機、1115時には高遊原駐屯地よりUH-1が2機とUH-60が1機避難支援実施へ離陸、更に1123時に鹿屋航空基地よりUH-60は2機情報収集へ展開中で、併せて九州一帯の防災ヘリコプターが派遣準備中とのこと。

 鹿児島県島嶼部の薩南火山群島において口永良部島は古岳、新岳、三角点山、仁田尾山、と四つの火山が並ぶ最大規模の火山島で、このなかでも今回噴火しました新岳は山頂に直径200mもの火口があります。昨年8月3日に噴火が発生した場所が今回噴火した場所ですが、20世紀以降だけでも1914年、1931年、1933年、1945年、1966年、1968年、1972年、1973年、1974年、1976年、1980年、そして2014年に噴火が発生しています。

北大路機関:はるな
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将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第五回):単座型F-35要員養成の重責担う次期練習機

2015-05-28 23:35:32 | 先端軍事テクノロジー
■T-4後継機への重責
T-4練習機の生い立ちなどを前回紹介しましたが、今後の練習機について。

航空自衛隊のT-4練習機後継機ですが、その必要となる時期が近づいてきている一方、練習機の重要性はますます増してゆきます、そういいますのも航空自衛隊が次期主力戦闘機にF-35を選定したため、F-35は練習用に用いることができない単座型のみで構成されており、後部座席に教官が座る複座型が開発されていません、すると戦闘機での操縦訓練はすべて単座型のみ、となってしまうわけです。

航空自衛隊は創設以来、F-86,F-104,F-4E,F-15と戦闘機を運用してまいりましたが、航空自衛隊草創期の亜音速戦闘機F-86を除けば全て複座型が調達、F-4Eは複座型しかありませんでしたが、機種転換訓練に用いることが出来る航空機があり、草創期のF-86についても、同程度の練習機としてT-33,もともと戦闘機P-80の練習型、が配備されていましたので訓練環境は十分確保されていました、対してF-35は、大きく違う事が分かるでしょう。

米空軍では戦闘機シミュレータを多用することでF-35の要員を養成できる、としていますが、米空軍は超音速練習機T-38を運用中で、その後継機選定は進められていますが、少なくとも現段階で高性能な練習機を装備しているのです。T-38の単座型はF-5軽戦闘機、改良型のF-5Eを含め世界中に輸出されました。

F-5,我が国周辺では韓国空軍や台湾空軍、フィリピン空軍に採用、多くが輸出された傑作機の原型で、Tー38を運用する米空軍の例は必ずしも参考とはなりません。もっとも、T-38は老朽しており、延命改修を重ねていますが、延命に限界があるとして次期練習機を選定する動きと、予算に限界があるとして延命改修を重ねる施策と、動きはわかれています。

さて、超音速練習機、アメリカのT-38に当たる機体、航空自衛隊の超音速練習機は2005年までに全て退役したT-2練習機のみ、少数が博物館に残り、基地に野外展示される機体をのぞけば廃棄航空機として裁断され野積となっている状況ですので、さすがに再生させることはできませんし、生産ラインは遙か昔に閉鎖されていますので再生産も絶対にできません。

すると、練習機に複座戦闘機を用いた教育訓練を行い、練習機での基本訓練とFー35戦闘機の能力のギャップを埋めるよう努力するのか、シミュレータ多用の訓練体系を構築するのか、と選択肢は限られます。F-35はかなり自動化が進んだ航空機であり、機動性や機転よりも操縦難易度は、という指摘もありますが、人が乗る航空機として極限状況にも投入されるもの、シミュレータだけでの錬成には問題も残ります。

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本日は海軍記念日 日露戦争110年前の二つの偉業と和解へ想いを馳せる

2015-05-27 23:26:50 | 世界の艦艇
■海軍記念日
 本日は海軍記念日、1905年に対馬沖において戦われた日本海海戦の記念日です。

 日本海海戦は日本海軍が戦艦勢力において劣勢の状況下、万全の準備と情報収集体制に戦術運動と戦技を尽くし、ほぼ完勝に近い形で勝利し、併せて海上決戦が陸上において戦われる戦争の勝敗をも左右し得る、海上権力行使論を実証した形となりましたが、併せて世界初の戦艦同士の艦隊決戦となり、あれだけの規模の大艦隊を欧州から極東へ回航したロシア海軍も、一つの偉業を成し遂げたといえるやもしれません。

 一方、日本海海戦委は日露戦争後の続きがあります。日本海海戦において日本海軍はロシア海軍の艦艇多数を鹵獲しましたが、戦艦ポルタワの後身戦艦丹後、戦艦ペレスウェートの後身戦艦相模は完全に整備を終えて一時期日本海軍戦艦として運用されていましたが、その後勃発した第一次世界大戦に際し、ドイツと戦うロシアへ和解なった日本よりこの二隻は返還されロシア戦艦として復帰した訳です。

 本年も日本海海戦慰霊式が行われていますが、日本海海戦と続く日露戦争の、辛うじてではありましたが勝利を経て、しかし日ロ関係はその後和解に向かい、鹵獲艦艇の返還も行われている、という部分は、戦争をひとたび行えば永遠の仇敵、というような事は無く、その後の太平洋戦争と続く良好な日米関係と重ね、特筆すべきところでしょう。

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豪州新潜水艦技術移転、防衛装備移転三原則の運用指針合致と国家安全保障会議が決定

2015-05-26 23:41:29 | 国際・政治
■豪州へ潜水艦輸出検討
 潜水艦に関する話題について、若干遅れましたが紹介を。

 オーストラリア海軍が模索するコリンズ級潜水艦後継艦計画について、大きな前進がありました。潜水艦の共同開発生産の実現可能性の調査のための技術情報の移転について、防衛装備移転三原則の運用指針に合致するかとの討議は、合致するとして国家安全保障会議が決定しました。外洋での長期間の行動と長大な航続距離を有する潜水艦、海上自衛隊は長らく広い太平洋における潜水艦作戦を想定し、大型で且つ静粛性の高い潜水艦の開発を続けてきましたが、これが同じく原子力潜水艦以外で広大なオーストラリア大陸を防衛警備する潜水艦の設計要求と合致しています。

 ただ、日本側からの技術移転の水準が不明あくであり、潜水艦の建造を担当するオーストラリア造船界の反対があり、より有利な条件を出し得るフランス製及びドイツ製潜水艦の導入と入札方式を採るとの方針が示され、日本側はこの種の競争を行うならば辞退する旨を示してきましたが、もともとドイツ製潜水艦とフランス製通常動力潜水艦にオーストラリア海軍が求める水準の大型艦が存在しないことから、新規設計艦をリスクとともに進める方針を避け、再度我が国への協力を求めてきました形です。

 現時点では我が国が輸出し得る、との方針を示しただけなのですが、技術移転の可能性が国家安全保障会議に認められたことは、我が国防衛産業における大きな一歩です。技術移転には、漏洩防止措置等の課題があり、仮に技術移転を行うとして我が国での生産供与部分があるとして、海上自衛隊向け潜水艦建造を維持しつつ資材を供給できるかなどの課題ものこりますが、ドイツフランスとの競争入札が提示された際に我が国からの輸出は頓挫したかに見えた事業が、前進に転じた事は確かでしょう。

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陸上防衛作戦部隊論(第七回):機動旅団機械化部隊へ何故装甲戦闘車が必要か一

2015-05-25 23:42:08 | 防衛・安全保障
■何故装甲戦闘車が必要か
戦車部隊が本土にはまだ必要である、と前回までに視座を示しました。

自衛隊の師団と旅団を全て一旦旅団に改編し、旅団は戦車部隊を有する装甲機動旅団、方面隊の空中機動装備を一手に引き受け軽量装備を主体とする航空機動旅団、この二つを以て航空機動力を活かした迅速な展開能力を有する部隊と、強靭な戦闘能力を装甲車両により展開可能な装甲機動旅団を合わせ、各方面隊に一個の広域師団を置き、機動運用する、この視点の上での戦車の必要性をしめしました。

装甲機動旅団については併せて装甲戦闘車の多数配備の必要性を提唱します。機械化大隊、戦車中隊に装甲化普通科中隊2個を配属する編成、滝ヶ原駐屯地のFTC評価支援隊第一機械化大隊に範を採ったものですが、非常に有力な編成の部隊です。この部隊を基幹として普通科連隊を編成するならば、部隊の人員規模は縮小されることとなりますが、能力全般では機動打撃能力が根本から強化されますので、むしろ向上するでしょう。

さて、装甲化普通科中隊ですが、可能な限り装甲戦闘車を装備し戦車を支援できる体制が必要と考えます。装甲戦闘車は機関砲などを装備し戦車と協同、積極的に戦車を火力支援しつつ戦車が必要とする状況下で降車戦闘を行い得る車両で、整備費用などの面で装甲戦闘車が不可能である場合は、これは装甲車が96装輪装甲車を流用した場合にも含めてですが、暫定的なものであっても、数km先の目標を識別し対処可能な遠隔操作銃塔、いわゆるRWSを標準装備として搭載することが最低条件です。

戦車が縮小する、という状況下にあって、逆に脅威対象からみた我が戦車は最優先目標として激しい対戦車火器の攻撃にさらされるのは必定ですので、まず敵対戦車兵を確実に制圧できる装備の搭載と、対戦車兵へ接近し降車戦闘を展開するまでに普通科隊員が無力化されない機動力と防御力を付与することが重要となりますので、その手段の整備です。

また、協同する装甲車は、敵対戦車火器の照準機識別能力の能力次第では戦車と混同する可能性があり、逆に貴重な戦車を敵攻撃から防護する、協同能力が求められます。ここが装輪装甲車ですと、不整地突破能力が限定されるため、地形によってはカメとなり一方的に撃破される危険があり、不整地を回避し路上を一列縦隊で突撃しますと今度はカモとなります、装甲戦闘車、としたのはここ。

もちろん、装甲戦闘車を広く装備することはいくつかの問題があります、取得費用は、少なくない部分ですが戦車を削減する以上その戦車を防護する手段は絶対必要ですので、この点は、例えば89式装甲戦闘車の車体に87式偵察警戒車の砲塔で妥協するなど火器管制装置の能力妥協や対戦車火器の携行式への簡略化などで努力するしかありません。

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現代日本と巡洋艦(第六回):戦力投射任務とアメリカ沿海域戦闘艦計画

2015-05-24 21:45:25 | 防衛・安全保障
■沿海域戦闘艦の戦力投射任務
今回もやや小型の艦艇に関する話題を引き続き。巡洋艦という事で、10000t級の護衛艦を想像された皆様、今しばらくお待ちいただければ、と。

さてLCS計画と前回のスタンフレックス300について。米海軍はLCS計画の際に、一応スタンフレックス300を参考とし、デンマーク海軍への要員派遣なども行っていましたが、米軍の後方支援力の大きさと基本は航空機の積み替えで対応し、57mm砲を中心とした能力で対応する、との視点でLCS計画を進めたようです。57mm砲についてはスウェーデン海軍のステルスコルベットヴィズヴィ級を参考とし、十分な性能を有する、と判断したようです。

しかし、元々LCSは中東アフリカ地域での対テロ戦争全盛期に仕様は研究されたものですから、LCSが十分な数量そろう頃に米海軍が大きな脅威とした北東アジア地域沿岸部での任務へはLCSの装備、57mm砲と個艦防空システムでは対応できない状況が現出します、特に中東アフリカ地域では潜水艦を運用する国は非常に少なく、短期間で無力化できる程度でした、しかし北東アジア地域は甘くありません。

LCS計画の艦艇は多用途性の面では多少利点はあります、艦内に多目的区画を有しており、陸軍のストライカー装甲車を一個中隊程度収容できますし、航空機運用能力ではMH-60を2機搭載可能、無人機の運用能力も重視されています。57mm砲を搭載していますし、掃海任務へも転用することが出来ます、米海軍は佐世保基地へ掃海艦の後継として配備する計画ですが、実際、哨戒任務を含めれば従来の掃海艦とは比較にならないほどの性能を持ちます。

ただ能力不足は大きいところで、実際問題、LCSとして設計されたフォートワースが先日南シナ海を航行中に中国海軍のフリゲイト塩城より威嚇を受け一定時間追尾されました、塩城は江凱II型フリゲイトで満載排水量4000t、フォートワースよりも一回り大型艦であり、LCSと異なり対水上戦闘と対潜戦闘を含む汎用艦として建造されており、フォートワースは速力とステルス性以外で完全に打撃力が劣っているものでした。

LCSへの不満は、57mm砲と個艦防空システム、それ以外に艦対艦ミサイルを運用する場合には57mm砲モジュールを取り外す必要があり、せめて艦砲とミサイルを同時に運用できる能力が必要、LCSはイージスシステムの延長上にある多機能レーダーを搭載するのだからせめてその探知能力に見合うシースパローミサイルが必要、北東アジア地域には多数の潜水艦脅威が存在するため、対潜ヘリコプターだけの搭載では不十分、など。

巡洋艦の定義からはどんどん艦艇の大きさで異なるものですが、海上自衛隊はコンパクト護衛艦、としてLCSに似た印象の護衛艦を建造する計画がありますが、LCSよりは余裕が盛り込まれるようで、計画が示される度に船体規模には余裕が持たれ、基準排水量は3000t前後、3000t級とも呼ばれもう少し大きくなる余裕を残しています。満載排水量で4000tから4500t程度、これならば無理はありません。

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ネパール国際緊急援助隊自衛隊派遣任務終了、自衛隊緊急援助医療援助隊・国際緊急援助空輸隊撤収

2015-05-23 22:54:25 | 防災・災害派遣
■自衛隊ネパール派遣任務完了
 防衛省によればネパール国際緊急援助隊自衛隊派遣任務が終了した、とのこと。

 4月25日にネパールで発生しました巨大地震に際し自衛隊は27日より行動命令に基づき110名、ネパール国際緊急援助空輸隊、160名のネパール国際緊急援助隊自衛隊派遣任務自衛隊緊急援助医療援助隊が編成、派遣されネパールの首都カトマンズを中心に活動を展開してまいりましたが、ネパール政府の要請により自衛隊の任務が完了し撤収しました。

 自衛隊の活動は五か所の診療所を設営し実に2860名の患者を治療してきまして、加えて医療関係のトリブバン大学への支援を実施、更にネパール統合運用調整所を設営し、自衛隊の支援活動を支援してきました、更にC-130輸送機による輸送支援を二回に渡り実施、医療支援、輸送調整、復旧支援、広く実施しています。

 自衛隊のネパール国際緊急援助空輸隊、ネパール国際緊急援助隊自衛隊派遣、270名は順次撤収を開始し22日までに任務を完了しました。まだまだネパールの被害は甚大であり復興への端緒さえも見えない状況ではありますが、厳しい環境の中でよく任務を完遂したといえるでしょう。

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平成二十七年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.05.23-24)

2015-05-22 23:12:09 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
奄美大島で震度五弱、気になる報道が先ほど飛び込んできましたが幸い津波の心配はないとの事です、では、今週末の自衛隊関連行事を。

福岡駐屯地祭、今週末最大の陸上自衛隊行事は福岡駐屯地に置かれている第四師団の創設記念行事です、第4師団は西部方面隊の隷下部隊で九州北部及び壱岐対馬を防衛警備管区とする師団です。対戦車誘導弾の装備を重視した部隊で、74式戦車とFH-70榴弾砲の空包射撃を頂点とする訓練展示など。

大湊マリンフェスタ、今週末海上自衛隊最大の行事はこちらでしょう。マリンフェスタといいますと体験航海の展示訓練という印象が強いのですが本年は観艦式が行われるため、展示訓練は行われません、が、ヘリコプター搭載護衛艦いずも、が入港し桟橋からその様子を見ることが出来るでしょう。

美保基地航空祭、航空自衛隊最大の行事はこちら。昨年は豪雨の翌朝の視界不良により、飛行展示が全く行えませんでした、本年も天気予報は少々気になるところではありますが、実施されますとC-1輸送機の編隊飛行やYS-11など要人輸送機にT-400練習機の飛行等、期待できるところ。

北宇都宮駐屯地祭、航空学校宇都宮分校が置かれる駐屯地で、これまでOH-6観測ヘリコプターを用いて教官が編隊飛行を行うスカイホーネットが有名でした、基本操縦訓練体系は現在OH-6から新型のTH-480に機種転換されており、小型ではあるのですがこちらの編隊飛行等が期待できます。

武山駐屯地の東方混、東部方面混成団創設記念行事、東部方面隊隷下の新隊員教育と陸曹教育を行うとともに、即応予備自衛官部隊の教育訓練を行い、平時にあっては方面隊の基幹教育を担うのですが、有事の際には即応予備自衛官を招集し予備部隊として機能します、機甲教育隊も隷下にあり、戦車が配備されています。

静浜航空祭、第11飛行教育団の展開する静岡県の航空自衛隊基地です、静岡県と云いますと航空自衛隊は浜松基地が有名ですが静浜基地に配備されているのはT-7練習機、初等練習機で航空自衛隊の操縦要員は戦闘機も輸送機もヘリコプターも全員この初等練習機から始まります。

大久保駐屯地の第4施設団創設記念行事、京都府宇治市、京都アニメーションの某アニメーションが現在放映中で有名となりつつある宇治市ですが、中部方面隊の直轄施設部隊である第4施設団が駐屯しています、道路補修等建設工兵としての任務から第一線の障害除去や野戦築城を担う戦闘工兵まで、装備は一通りそろっており中々の迫力の行事です。

青野原駐屯地祭、兵庫県のこの駐屯地には中部方面隊の直轄防空部隊である第8高射特科群が駐屯、少々山奥ですが行事が行われます。03式中距離地対空誘導弾は射程が60km程度あり、師団や旅団の高射特科部隊を補完し師団や旅団の後方策源地の防空を担う部隊です。

えびの駐屯地祭、中々興味深い駐屯地です、えびの駐屯地は元々第24普通科連隊の駐屯地ですが、この連隊は北海道の第7師団が機械化師団から機甲師団に改編された1981年に第7師団から第8師団へ管理替えで移駐しました、が、2005年に即応予備自衛官主体編成に改編されたため駐屯地を維持できなくなったため、第8特科連隊第3大隊が移駐した駐屯地です。

大村航空基地祭、西日本の海上自衛隊ヘリコプター部隊総元締めという第22航空群が展開する海上自衛隊の航空基地で、基地には哨戒部隊である第22航空隊と救難部隊である第72航空隊が展開、基地は大村湾に面しておりUS-2救難飛行艇の発進も可能です、今年は諸般の事情でUS-2は厳しそうですが、海上自衛隊の最新鋭輸送機C-130の展示が期待されます。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・5月24日:大湊マリンフェスタ・・・http://www.mod.go.jp/msdf/oominato/
・5月24日:北宇都宮駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/
・5月24日:東部方面混成団武山駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/
・5月24日:静浜航空祭2015・・・http://www.mod.go.jp/asdf/shizuhama/shizuhama.html
・5月24日:第4施設団大久保駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/
・5月24日:青野原駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/
・5月24日:美保基地航空祭2015・・・http://www.mod.go.jp/asdf/miho/
・5月24日:第4師団創設記念福岡駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/
・5月24日:大村航空基地祭・・・http://www.mod.go.jp/msdf/22aw/
・5月24日:えびの駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/8d/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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