■アメリカ-次の敗北の始り
アフガニスタン撤退を、アメリカ最長の戦争の終止符、と表現するようですが単に次に至る最長の敗北の始まりではないかと危惧する。
8月31日の撤収期限、アメリカ軍最後のC-17輸送機が8月30日深夜にアフガニスタンカブール国際空港を離陸し、撤退期限前に撤退しました。それも多数の同盟国民や現地協力者を討ち捨て、しかもバイデン大統領はアフガニスタン現地協力者の名簿がタリバーンに渡った事も認め、見捨てるというよりは売り渡すように叩きつけ、撤退を前倒ししました。
日本の戦いはこれから始まる、自衛隊は邦人輸送任務へ派遣した輸送機部隊の撤収を本日、岸防衛大臣が命令しました。しかし日本は500名の邦人及び現地協力者を残しています、こうした積み残しは、カナダが4300名、イギリスが1250名、インドも160名居るとのことで、今後は軍事的にではなく、国際信義と外交力によりこの人々を救わねばなりません。
これは理念の敗北だ、こう糾弾したい。正義というものは時と往々にしてその定義が移ろうものですが、アメリカについてはその整備を、原初状態における平等と公正を基調とした自由、ロールズ的観念から正義を形成しています。故に国籍は出生地主義であり、競争も全てが平等を結果ではなく機会に記すからこそ人種融和や男女平等を掲げるのですね。
アフガニスタンからのアメリカ撤退、軍事的な敗北ではないとしましても、アメリカがこれまでに掲げてきました自由と公正というものを根本から投げ捨てたという意味で、軍事的な撤退よりも遥かに影響は大きいのかもしれません、大統領が、アメリカの為の戦争は終わったとして、自ら同盟国友好国へアメリカへの奉仕を強要した事を自称したのだから。
理念の敗北、まじめに考えればわかる事ですが、アメリカが正義だ、と提唱された際に何故なのかという問いは、理念しかありません、アメリカは間違えないからと答えれば一笑され過去の歴史を突き付けられるでしょうし、アメリカが正義だからと答えればアメリ第一主義以前にアメリカとは哲学なのかという禅問答以前の問題となる、理念が回答です。
自由と公正、そして手段としての民主主義。アメリカにとり武器と云えるものは此れしかありません、F-22もドル札もイージス艦もハリウッド映画も、別のもので置換えられる余地はあるのですが、自由と公正、この理念はアメリカが推し続けるものであるとともに、これこそが代替の利かないアメリカの武器であり強みであったのですが、これを捨てた。
理念の敗北は恐ろしい、何故ならばアフガニスタンでのタリバーン統治により既に音楽の禁止や即決裁判による処刑と対米協力者への報復が、タリバーン末端戦闘員により既に始まっている事を無視しての撤退は、今後アメリカが中国に人権問題で畳みかけるとき、そうはいっても、中国の方がアフガン程ではない実情を突き付けられる事となるでしょう。
253兆円、アメリカの2001年からのアフガニスタン戦費は大きなものですが、同時にNATO同盟国の戦費も大きいもので、これが、アメリカの為の戦争であった事をバイデン大統領が自称した事は、同盟国との連携に楔を打ち込み、また、2009年から40000名以上のアフガニスタン人が戦闘に巻き込まれ死亡した事も、無駄になってしまったという構図になる。
中国への国防資源集中の為に、というバイデン大統領の施策ですが、そもそもアフガニスタンはトランプ政権時代、旅団規模の部隊を張り付けておくだけで安定とは言えずとも充分均衡は採れていました、これさえ出来ない国が中国に充てるのかという問題とともに、アメリカの理念ではなく利益の為に、有志連合へ参加する国が多いのかは、今後疑問です。
アメリカ第一主義を掲げたトランプ前大統領は、アメリカにとり全く利益の無い事は関与しないとしつつ、アフガニスタンやイラクにシリア、西太平洋に欧州正面とアフリカ、短期的な利益は無くとも長期的に利益が在れば関与するという、近江商人のような考え方で関与を続けました、これは側近やスタッフの助言の効果ともいえるものですが、留まった。
バイデン大統領は調和を掲げつつ、結局トランプ大統領のような周りに的確な助言を、政治に反映させられる立場のスタッフが不在なのかもしれません。しかし、今回のような致命的な判断ミスと、20年間アメリカが築き上げてきたものを撃ち捨てたのですから、今後有志連合を各国と組む際、志が違う、と友好国や同盟国に突き付けられる覚悟が必要だ。
日本。日本は今回見事にアフガニスタンで情勢変化の被害を受けた側、軍事作戦には参加していないものの現地協力者多数を置き去りとせざるを得なかった被害が在ります。しかし、憲法上一国平和主義を提唱し続ける我が国に唯一の同盟国がアメリカであり、アメリカの、今回の判断の長期的な大きな反発をどう受け止めるか、考える必要があるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
アフガニスタン撤退を、アメリカ最長の戦争の終止符、と表現するようですが単に次に至る最長の敗北の始まりではないかと危惧する。
8月31日の撤収期限、アメリカ軍最後のC-17輸送機が8月30日深夜にアフガニスタンカブール国際空港を離陸し、撤退期限前に撤退しました。それも多数の同盟国民や現地協力者を討ち捨て、しかもバイデン大統領はアフガニスタン現地協力者の名簿がタリバーンに渡った事も認め、見捨てるというよりは売り渡すように叩きつけ、撤退を前倒ししました。
日本の戦いはこれから始まる、自衛隊は邦人輸送任務へ派遣した輸送機部隊の撤収を本日、岸防衛大臣が命令しました。しかし日本は500名の邦人及び現地協力者を残しています、こうした積み残しは、カナダが4300名、イギリスが1250名、インドも160名居るとのことで、今後は軍事的にではなく、国際信義と外交力によりこの人々を救わねばなりません。
これは理念の敗北だ、こう糾弾したい。正義というものは時と往々にしてその定義が移ろうものですが、アメリカについてはその整備を、原初状態における平等と公正を基調とした自由、ロールズ的観念から正義を形成しています。故に国籍は出生地主義であり、競争も全てが平等を結果ではなく機会に記すからこそ人種融和や男女平等を掲げるのですね。
アフガニスタンからのアメリカ撤退、軍事的な敗北ではないとしましても、アメリカがこれまでに掲げてきました自由と公正というものを根本から投げ捨てたという意味で、軍事的な撤退よりも遥かに影響は大きいのかもしれません、大統領が、アメリカの為の戦争は終わったとして、自ら同盟国友好国へアメリカへの奉仕を強要した事を自称したのだから。
理念の敗北、まじめに考えればわかる事ですが、アメリカが正義だ、と提唱された際に何故なのかという問いは、理念しかありません、アメリカは間違えないからと答えれば一笑され過去の歴史を突き付けられるでしょうし、アメリカが正義だからと答えればアメリ第一主義以前にアメリカとは哲学なのかという禅問答以前の問題となる、理念が回答です。
自由と公正、そして手段としての民主主義。アメリカにとり武器と云えるものは此れしかありません、F-22もドル札もイージス艦もハリウッド映画も、別のもので置換えられる余地はあるのですが、自由と公正、この理念はアメリカが推し続けるものであるとともに、これこそが代替の利かないアメリカの武器であり強みであったのですが、これを捨てた。
理念の敗北は恐ろしい、何故ならばアフガニスタンでのタリバーン統治により既に音楽の禁止や即決裁判による処刑と対米協力者への報復が、タリバーン末端戦闘員により既に始まっている事を無視しての撤退は、今後アメリカが中国に人権問題で畳みかけるとき、そうはいっても、中国の方がアフガン程ではない実情を突き付けられる事となるでしょう。
253兆円、アメリカの2001年からのアフガニスタン戦費は大きなものですが、同時にNATO同盟国の戦費も大きいもので、これが、アメリカの為の戦争であった事をバイデン大統領が自称した事は、同盟国との連携に楔を打ち込み、また、2009年から40000名以上のアフガニスタン人が戦闘に巻き込まれ死亡した事も、無駄になってしまったという構図になる。
中国への国防資源集中の為に、というバイデン大統領の施策ですが、そもそもアフガニスタンはトランプ政権時代、旅団規模の部隊を張り付けておくだけで安定とは言えずとも充分均衡は採れていました、これさえ出来ない国が中国に充てるのかという問題とともに、アメリカの理念ではなく利益の為に、有志連合へ参加する国が多いのかは、今後疑問です。
アメリカ第一主義を掲げたトランプ前大統領は、アメリカにとり全く利益の無い事は関与しないとしつつ、アフガニスタンやイラクにシリア、西太平洋に欧州正面とアフリカ、短期的な利益は無くとも長期的に利益が在れば関与するという、近江商人のような考え方で関与を続けました、これは側近やスタッフの助言の効果ともいえるものですが、留まった。
バイデン大統領は調和を掲げつつ、結局トランプ大統領のような周りに的確な助言を、政治に反映させられる立場のスタッフが不在なのかもしれません。しかし、今回のような致命的な判断ミスと、20年間アメリカが築き上げてきたものを撃ち捨てたのですから、今後有志連合を各国と組む際、志が違う、と友好国や同盟国に突き付けられる覚悟が必要だ。
日本。日本は今回見事にアフガニスタンで情勢変化の被害を受けた側、軍事作戦には参加していないものの現地協力者多数を置き去りとせざるを得なかった被害が在ります。しかし、憲法上一国平和主義を提唱し続ける我が国に唯一の同盟国がアメリカであり、アメリカの、今回の判断の長期的な大きな反発をどう受け止めるか、考える必要があるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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