北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ情勢-ウクライナ軍はMi-24攻撃ヘリコプターをシャヘド無人機対策に活用

2025-02-14 07:00:38 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 自衛隊のAH運用と自爆用無人機対策という視座を中心に。

 ウクライナ軍はMi-24攻撃ヘリコプターをシャヘド無人機対策に活用しているもようです。そしてロシア軍でもMi-24攻撃ヘリコプターをウクライナ軍無人機対策に運用しており、特にシャヘド無人機は空対空戦闘能力を持たない為、弾薬に余裕のある12.7mm多銃身機銃がシャヘド無人機に対してきわめて有効に活用されているもよう。

 無人機対策、2022年から2023年にかけ、大量にイランがロシアへ供給した自爆用無人機シャヘドに対してウクライナ軍は当初、欧米から供与された地対空ミサイルにより迎撃した為に膨大な地対空ミサイルを消耗し、本来地対空ミサイルでなければ迎撃できない巡航ミサイル等に対してミサイル払底危機に曝された事が有りましたが。

 Mi-24攻撃ヘリコプターは視線合致方式の機銃を装備しており、無人機迎撃に活躍しています。実際のところ、匍匐飛行をせず低空飛行するだけのヘリコプターは携帯地対空ミサイルの、また小型無人機の跳梁跋扈により低空飛行し待ち伏せるヘリコプターは格好の標的となっており、ロシア軍とウクライナ軍は攻撃ヘリコプターを十分活用できていません。

 こうしたなかで、無人機迎撃は今後のヘリコプター運用における一つの方向性を示すのでしょうか、それとも自爆用無人機に対しては攻撃ヘリコプターを用いずとも、ジェネラルアトミクス社が提案する様な、滞空時間の長いMQ-9リーパーの様な無人攻撃機に機銃を内蔵したガンポッドを追加してこの種の迎撃に充てるべきなのでしょうか。

 シャヘド無人機は迎撃が簡単ですが、一万数千機単位で飽和攻撃に用いられ、また航続距離は数千kmに達します。ロシアでは大量生産が進み、また北朝鮮へもロシアが技術供与している装備となっていますので、我が国周辺事態では相当数が使用されると覚悟せねばなりません。その場合の迎撃手段を講じるか、反撃能力で敵国首都を叩くのか、課題です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
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ウクライナ情勢-M113装甲車の再評価-軽装甲ながら不整地機動力と陣地変換で活躍

2025-02-03 07:00:21 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 73式装甲車の写真で代用しているのですがM-113装甲車のわだいをひとつ。

 地いき防護任務において、近年陳腐化したと思われてきたM-113装甲車がウクライナ軍において高く評価されているとのこと。M-113装甲車はトラック用エンジンをアルミ合金製は小型車体に搭載した装甲人員輸送車で、装甲防御は軽機関銃と砲弾破片に耐える程度、機動力は第三世代戦車に随伴できない水準となっていますが。

 M-113装甲車は第三世代戦車に随伴する機動力が無く、また防御力も劣る事から過去の装備であるとされた一方、ウクライナ軍は後世作戦を含めた多種多様の戦場に投入しています。その背景には供与された装甲車の中でM-113がもっとも数が多かった、派生型を含めて、という視点が有るのでしょうが、注視すべきは運用環境というもの。

 第三世代戦車が最大の速力を以て攻撃前進するものは、冷戦末期にアメリカ軍が構想して装備体系を整える事で具現化させたエアランドバトルに対応させるにはM-113は能力不足であり、かえてM-2装甲戦闘車が開発されているのですが、ウクライナ軍は70km/hで毎時数十kmを進むような後世作戦をそもそも実現させる計画がありません。

 エアランドバトルも、アメリカ軍は当初から欧州地形では河川など地形障害があるために、工兵を相当近代化する必要性を一部部内から指摘されていたものの具体的有効策を持っておらず、湾岸戦争のような地形障害の無い地域での成功例を過度に評価しているのではないか、とも考えられるのです。こうしたなかでM-113装甲車の利点がある。

 安価であり数が揃えられるという利点は、また孤立した陣地防御への救援、陣地から陣地への陣地変換において過去の要塞線であれば地下鉄や軽便鉄道などを構築していたきょりの移動への装甲車の利用、不整地など徒歩機動が困難かつ敵砲迫火力の顕在地域における素早い移動手段、こうしたもろもろの運用にM-113が効果を発揮しているという。

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ウクライナ情勢-ポクロフスク攻防戦で示された小型無人機と戦車火砲協同運用の重要性

2025-01-27 07:17:23 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 戦車か無人機かという段階ではなくウクライナ軍の運用を見ますと戦車部隊OBが幾度も言う通り両方とも必要である事が示されていまして、また電子戦装備の末端までの普及という必要性を含め自衛隊が学ぶべき戦訓である。

 ロシア軍はポクロフスク方面において無人機不足に陥っている、ISWアメリカ戦争研究所1月15日付ウクライナ戦況報告によれば、ロシア軍はこのところ電子妨害による無人機運用の障壁にさらされており、この打開策として有線式の光ファイバー方式ドローンを投入していますが、この特性の違いによりドローンオペレーター不足に陥ったという。

 ロシア軍はげんざい、ポクロフスクを新しい焦点として攻勢を強化していますが、通常の無人機は電子妨害により充分性能を発揮出来ず、ロシア軍はこのため、ポクロフスク方面の天候が良好である事から、滑空爆弾を使用してウクライナ軍を圧迫しているという事ですが、無人機においてウクライナ軍が優位にある事から幾つかの新要素があるとのこと。

 電子妨害が有効に機能しており、ロシア軍が全線で多用している市販無人機の改造型はかなりの部分撃墜されているという。ロシア軍はこれを受け、電子妨害を受けない光ファイヴァー欲し着無人機を、ロシア軍司令部が必要と判断したときのみ、投入していますが、これが必要数を供給できておらず、運用能力も低く妨害に強くとも良く落ちているという。

 ウクライナ軍は無人機を有効に運用する事で、ロシア軍の戦車運用をかなりの部分で封じており、具体的には、前線付近の3kmから6kmの地域においてロシア軍は戦車や装甲車を運用した場合、かならずウクライナ軍無人機の攻撃を受け、これら装甲車両を運用出来ていないとのこと。またウクライナ軍は無人機により火砲の精度を相当向上させている。

 FRV無人機は、ロシア軍戦車を一撃で破壊する事はできませんが、5機から10機を連続して突入させるため、ロシア軍戦車は厳しい状況にあり、一方でこの状況を活かして、ウクライナ軍は戦車を自由に行動させ、逆に結果的に戦車を運用出来ない丸裸のロシア軍歩兵部隊に対してウクライナ軍戦車は戦車砲による直接火力支援に有用に機能しているとも。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-第一線火力として必須となりつつある25mm/30mm機関砲

2025-01-09 07:00:33 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 今回は装備面について。

 30mm機関砲の重要性について。ロシアウクライナ戦争は来月で開戦3年を迎える事となりますが、この戦争を通じて自衛隊が大きな戦訓としなければならない点として、第一線火力として25mm乃至30mm機関砲の装備は最早必須となっているという状況です。自衛隊には偵察警戒車などに僅かしか装備されていない装備でもあるのですが。

 30mm機関砲は、BMP-2装甲戦闘車の主武装であるとともに、ウクライナ軍は軽装甲車にも搭載し第一線火力支援に重宝しています。この30mm機関砲は、一撃では戦車等を撃破する事はできませんが、複数個所から同時に使用することでロシア軍のT-80戦車等に対しても有効長出来を加えた事例が多数あります、無論、装甲車にも有効ですが。

 固定陣地への30mm機関砲攻撃、歩兵部隊の陣地には重機関銃などで武装している事例は多いものの、射撃陣地などへ30mm機関砲を射撃した場合、土嚢などで厳重に部押している場合でも簡単に破壊される事例があり、ウクライナ軍はこうした状況に対応するために、例えばランドクルーザーなどを転用した軽装甲車であっても30mmを積むもよう。

 JLTV統合軽量戦術車輛などで30mmRWS遠隔操作銃塔を搭載するものが増えていますが、日本としても、今後導入する軽装甲機動車の後継車両には12.7mm機銃では威力不足で、エリコン25mm機関砲程度は標準装備としなければ、機関砲が普通科部隊の標準的装備としなければ、撃ち負けるという実情を理解しなければなりません。

 機関砲は同時に無人機攻撃や航空攻撃に対しても一定程度有用です。30mmRWSについては10式戦車近代化改修に際して搭載するという情報もあるようですが、パトリアAMVやハーケイ軽装甲機動車などに標準装備しなければ、ロシアウクライナ戦争での重要な戦訓を無視したといわれても仕方が有りません。

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ウクライナ情勢-ウクライナ軍は無人地上車両とFPVドローンのみを使用した初の攻撃部隊による攻勢

2024-12-27 07:01:19 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 自衛隊も参考とすべき戦訓が多いのですが本日の話題はふたつ。

 クルスク戦線に関してイギリス国防省は12月21日付ウクライナ戦況報告に最新戦況を発表しました。これによれば、クルスク州ウクライナ占領地域へのロシアの反攻は継続中で、特に10日以降にも戦術的な進捗があった事をイギリス国防省は分析しています。その最大の接触は占領地の北西部となっていて、ロシア軍が南東へ4㎞前進したという。

 ロシア軍は北西部での戦闘でクルグレンコエ村を再掌握したとされ、またウクライナ占領地の南東部において、ロシア軍はプレホヴォの西へ2㎞にわたり前進するとともに、その北にあるマフノフカの郊外に駐留しているとのこと。ウクライナ軍は現在のところ、クルスク戦線における新しい占領地確保の計画は無く、攻勢限界にあるもよう。

 ウクライナ軍は、2024年8月には最大900平方㎞ものロシア領土を占領していましたが、この占領地は12月15日にはの510平方kmであり、これが21日までに占領地が480平方㎞となっています。この背景としてロシア海軍歩兵部隊及びロシア空挺軍に加え、北朝鮮軍が加わったロシア軍反攻作戦が大きく影響していると考えられています。

 ウクライナ軍は無人地上車両とFPVドローンのみを使用した初の攻撃部隊による攻勢を実施した模様、これはISWアメリカ世創研究所12月20日付ウクライナ戦況報告によるもので、地上作戦に技術革新を組み込んだウクライナの継続的な新技術開発の姿勢を端的に示すものとなりました。この運用は人的損耗を抜本的に提言するものです。

 無人地上車両とFPVドローンのみを使用した初の攻撃部隊による攻勢は、ハリコフ方面のウクライナ軍旅団報道官が20日に実施したもので、ハリコフ市の北リプシ近郊において、機銃装備のUGV無人戦闘車両数十両で攻撃を実施、同時にUGVを用い地雷敷設や地雷除去も実施、UGVだけによる世界初の地上攻撃で複数のロシア軍陣地を破壊したという。

 UGV無人戦闘車両は、世界では多種多様な装備が開発されていますが、従来のものはMUMチーミングという、有人車両の支援用に用いられるものが多く、無人車両だけの独立した攻勢は過去の戦史に例がありません。この種の殺人装備に否定的な意見もあることは確かですが、人的損耗をこれ以上重ねられないウクライナの事情も大きいのです。

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【防衛情報】航空自衛隊F-15戦闘機JSI近代化改修ボーイング社と新契約,航空自衛隊次期練習機T-6テキサンⅡ練習機を選定

2024-12-23 20:00:43 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は航空自衛隊関連の話題です。

 航空自衛隊F-15戦闘機JSI近代化改修についてボーイング社との間で新たな契約が結ばれました、これは1億2900万ドルを投じて改修されたF-15JSI戦闘機の運用支援を2030年まで継続するというFMS有償軍事供与に関する契約となります。航空自衛隊では老朽化するF-15J戦闘機の一部を大幅に能力向上させる計画を推進中です。

 F-15JSIはジャパンスーパーインスペクター計画といい、その主眼は射程1000㎞という新型精密誘導ミサイルAGM-158-JASSMの運用能力を付与させることにあります。原型機の初飛行から60年以上を経ているF-15戦闘機はステルス性能こそ有していませんが、莫大な搭載能力を有する為、航空打撃力の主柱を担う事が期待されています。

 F-15J戦闘機は三菱重工においてライセンス生産された航空機ですが、今回の延命と能力向上改修は当初、三菱重工とボーイング社の試案を比較検討したうえで三菱重工案よりも安価な費用を提示したボーイング社が選定され、その後の見積もり失敗により三菱重工案よりも大幅な費用超過となったという、難しい実情がありました。


 航空自衛隊は次期練習機としてT-6テキサンⅡ練習機を選定しました。決定によれば機体製造はライセンス生産は行われずアメリカのテキストロン社が製造を担当し、総合商社兼松が地上シミュレータ装置とあわせて自衛隊への納入を行います。この選定の最終選考にはスバルとピタラスの共同による国内生産型がありましたが、選ばれていない。

 スバルとピタラスの共同による国内生産型練習機は、ピタラス社がPC-7-Mk10を提示し日本仕様としてライセンス生産する方針が示されていましたが、今回のT-6テキサンⅡ練習機を選定したことで、T-3練習機とT-7練習機というかたちで連綿と継続された日本での初等練習機製造は終了、その製造能力もなくなることとなるでしょう。

 次期練習機選定ではのほかに第百商事提案がトルコのHURKUSを提案していましたが評価の結果は性能不十分が確認、さらに新東亜交易が提案したものは地上シミュレータのみというもので必須項目未達成となり、両社とも第一次選考において選外となっています。今後の課題はT-6練習機の高出力を初等練習機として最適化する事でしょう。


 航空自衛隊は次期練習機としてT-6テキサンⅡ練習機を選定した点について、意外に思われたのはT-6テキサンⅡが現行のT-7練習機よりも遥かに高出力の練習機であり、初めて操縦を経験する初等練習機として、この高出力は妥当なのかということです。実際現行のT-7練習機は420馬力であるのに対しT-6は1250馬力と三倍近いものという。

 T-6練習機の高出力は、一部の国では高等練習機として採用されている水準であり、この機体を練習機として採用されているアメリカはT-53A練習機という軽飛行機を初等練習機に乗るための練習機と位置付けています。また、高出力の初等練習機操縦の難しさは隣国韓国が開発したKT-1練習機による航空機事故などがある。

 T-6練習機、なお今回はピタラス社のライセンス生産提案が敗れたかたちですが、このT-6はもともとピタラス社が開発したPC-9高等練習機をアメリカのテキストロンアヴィエーションがライセンス生産したという経緯があります。ただ、高出力ですが、エンジンリミッターの搭載などがオプションとして可能であるとされています。

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【防衛情報】中華民国台湾へ初のM-1戦車が納入,M-60A3パットン置換えるM-1A2Tエイブラムス戦車

2024-12-17 20:11:33 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 エイブラムスがパットンに合流した、今回はまあ写真は手持ちという事で自衛隊の戦車になるのですけれども中華民国台湾の大きな防衛力整備の話題をお伝えしましょう。

 中華民国台湾へ初のM-1戦車が納入されました。これは台湾が長らく悲願としていた主力戦車の更新であり、これにより抑止力は少なくないが期待できるでしょう。今回台湾に納入されたのはM-1A2T、アメリカ陸軍に導入されたものと同等だ。

 M-1A2エイブラムス戦車は、過去1990年代に台湾が導入を構想しましたが、台中市などが被害を受けた台湾中部地震を受け、台湾本島での地形と特に地盤の問題から、重量が70tちかいM-1戦車を導入した場合でも運用が難しいと一時は断念していました。

 M-60A3戦車、愛称はパットン、しかし、中華民国陸軍を悩ませたのは台湾の主力戦車が第二世代のまま、という問題です。台湾のM-60戦車は1991年湾岸戦争を最後にアメリカ海兵隊が引退させたM-60戦車を本国に持ち帰らず、台湾へ譲渡したという歴史があります。

 M-1A2T戦車の導入によりどういった点が変わるのでしょうか。具体的には、漸く中国の99式G型戦車を相手に十分な戦車戦が展開できる目処がついた、ということでしょう。それは第二世代戦車であるM-60戦車からの大きな発展に他なりません。

 第三世代戦車と第二世代戦車、その最大の相違点は、戦車用高出力エンジンと複合装甲の有無にあります。第三世代戦車は1500hp前後のエンジンを搭載していますが、これは1980年代近くまで戦車用に小型化が実用化できなかったものでした。

 複合装甲は、いくつかの手法が開発されていますが、これも1970年代に真剣な脅威となった対戦車ミサイルに対し、特に圧延均一鋼板で500mmや600mmを軽々と貫通するミサイルに従来の装甲を厚くすることは重量が100tに迫り現実的ではありません。

 対戦車ミサイルの脅威に、一般的にはチタン合金と硬化セラミック、つまり衝撃に強い素材と高熱に強い素材を適度な緩衝材とともに複合化する装甲ならば、圧延均一鋼板換算で900mm相当とか1200mm相当の防御力を付与し、防ぐ見通しがついた、と。

 台湾で独自開発できなかったのか、という疑問符があるでしょうが、毎年戦車を生産し続けている日本や、多くの支援を受けて国産基盤を構築した韓国とちがい、世界の多くの国では戦車砲や戦車用エンジン、装甲板などを自国で生産は出来ません。

 韓国のK-2戦車を例に挙げれば、エンジンが国産でき変速装置も国内生産できるようになったのはつい最近で、それまではドイツから輸入に依存、またK-2をライセンス生産すべく意気込んだポーランドも、工場設備の古さで生産見通しが立っていない。

 台湾では20mm機関砲までは国内製造できますが、105mm砲の国内生産を行うだけの冶金技術が無く、現在試験中の雲豹装甲車105mm機動砲型についても車体は国内生産するものの105mm砲についてはアメリカから輸入しているほど、生産が難しい。

 M-1A2T戦車の導入により台湾の防衛力は強化され、今後は既に納入待ちとなっているM-142HIMARS高機動ロケットシステムやハープーン沿岸防備システムの導入が続きます。また既にF-16V戦闘機の納入も始まり、ようやく近代化の目処がみえてきた。

 台湾の防衛政策で難しいのは台湾へ兵器を有償供与する際の中国政府からの圧力です。ただ、台湾は今後、中古でも好いのでイージス艦や、また中国の第五世代戦闘機に対抗しうるF-35戦闘機などの売却許可を、アメリカへ求めて行くことでしょう。

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【防衛情報】イージスグアムシステムAN/TPY-6レーダーと宇宙軍宇宙観測衛星サイレントバーカー運用計画

2024-12-16 20:01:07 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今週はアメリカ軍関連の最新のわだいです。

 アメリカ国防省ミサイル防衛局はグアムでの弾道ミサイル迎撃実験を実施しました。ミサイル防衛局が12月9日に発表したところによれば、グアムにおいてミサイル母上に関する実弾射撃実験が行われたのは今回が初となります。今回の射撃はAN/TPY-6レーダーシステムと新しく配備した地上配備型垂直発射オステムを用いたとしています。

 イージスグアムシステム、と呼ばれるこの一連のシステムはスタンダードSM-3blockⅡA迎撃ミサイルを発射、中距離弾道ミサイルの飛行特性を有する目標を捕捉し、グアムのアンダーセン空軍基地沖において撃墜に成功したとのことです。AN/TPY-6レーダーシステムはアラスカのクリア空軍基地に置かれている長距離レーダーの延長線上の装備です。

 グアムのアメリカ軍施設は日太平洋上の戦略拠点であり、アメリカと同志国が共有する“自由で開かれたインド太平洋”という秩序の維持において要諦と位置付けていて、一方で中国や北朝鮮とロシアの各種弾道弾が次々とグアムを射程に置いていることから、このグアム島を有事の際にかに維持するか、維持できないかが重大な課題となっていました。


 アメリカ国防総省はF-35戦闘機調達計画を一部修正します。もともと今年度の国防権限法ではアメリカ軍は2025年にF-35戦闘機68機を調達する計画でしたが、F-35戦闘機の幾つかの部分での問題が解決されていないとして、先ずメーカーであるロッキードマーティン社が改善計画を発表するまで一部の機体の受け取りを拒否するとしています。

 68機のF-35戦闘一機の内20機を受取保留するとのことでした。アメリカ軍が導入する計画では、空軍向けF-35A戦闘機が42機、海兵隊のF-35B戦闘機は13機、そして海軍のF-35C戦闘機が13機を要求していました。現在、F-35戦闘機は2023年7月にテクノロジーリフレッシュスリーバージョンのアップデートに問題が発生しそのまま。

 テキサス州フォートワースのロッキード工場にはTR-3アップデート問題発生以降、製造されたF-35戦闘機が出荷できないまま大量のF-35戦闘機が並んだままとなっていました、ただ、現時点ではTR-3ソフトウェア暫定仕様が開発、飛行運用は可能となっています、ただ、アメリカ政府は未完成機として一機当たり500万ドルの支出を拒否しています。


 アメリカ宇宙軍の宇宙観測衛星サイレントバーカー運用計画について、宇宙軍のスティーブンホワイティング大将の発言として、2023年9月に宇宙へ打ち上げられたサイレントバーカー衛星の運用を2025年にも開始するとしています。ただ、アメリカ宇宙軍がどれだけのサイレントバーカー衛星をどれだけ打ち上げたかは公表していません。

 サイレントバーカー衛星は、ただし、少なくとも2機を打ち上げたとしています。サイレントバーカー衛星とは、軌道上22000マイルの静止衛星軌道を警戒するもので、低軌道衛星のような地上からの警戒監視手段の届かない高高度目標に対する情報収集を行う事が任務となっていて、バスケットボール大のものを識別するのうりょくをもつ。

 静止衛星の軌道情報についてはこれまで、アメリカはオーストラリアとイギリスに配備されているDARC先進深宇宙監視レーダーシステム3基により宇宙の監視を行っていますが、地球上からの監視には限界があり、サイレントバーカー衛星が配備される事となりました。新しい戦場となっている宇宙領域では中国とロシアの進出が顕著である。


 アメリカ国防総省はV-22オスプレイの飛行一時停止を発表しました。この背景には金属部品の劣化が原因となり、墜落事故の可能性になるとのこと。この発表は先ず、全軍のオスプレイ計画を統括する海軍航空システム司令部カールチェビ中将が、十分な注意を払って運用を一時的に停止したといい、マーシャハート報道官も事実であるとした。

 飛行停止は少なくとも一週間としていて、これは過去五年間のV-22の事故を精査した結果機体の一部の金属部品が予想よりも早く劣化摩耗している事が判明していて、これは多くの事故に直接影響しているとしました。この事故に対し一部の連邦議会議員は飛行の長期停止をオースティン国防長官に要求したも伝えられています。

 V-22最近の事故では今年11月20日にニューメキシコ州キャノン空軍基地で発生した墜落事故で、事故原因を調査した結果、2023年11月の沖縄県での墜落事故と同様の原因が確認されたとしています。ただ、国防総省によればニューメキシコ州と沖縄県での事故の原因である摩耗した金属部品は同一カ所のものではないとも説明しました。

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ウクライナ情勢-ドローンの脅威!FRV無人機対策は結局小銃によるしかないのかもしれない-ウクライナ軍の研究

2024-12-13 07:01:45 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 無人機対策は本邦でも重要な課題ですがかなり高価なスマートスコープを陸上自衛隊が調達しようとしている現在にウクライナより参考となる事例が。

 FRV無人機対策は結局小銃によるしかないのかもしれない、ウクライナの第一線について猛威を振るっているなかにあって、その生存方法を模索した結果、電子妨害装置など様々な方法が模索されているものの、これら妨害システムは必ずしも有効に機能せず、特に兵員殺傷を狙う無人機を最後の100mで迎撃するには小銃しかなかった、という。

 ワシントンDCに所在する海軍分析センター顧問サムベンデット氏の研究によれば、結局小銃以外には兵士が身を守る手段はないものの、一方で最後の距離でFRV無人機を防ぐことができるかは結局小銃手の射撃技量に左右されるとしつつ、この状況でFRV無人機を正確に操縦できるかについてもドローンオペレータの技量によるとしました。

 手探りの検討の中で、ロシア軍では現在小銃に多用されている5.45mm弾薬に銃弾を取り外したうえで散弾銃の弾薬から取り出した散弾ペレットを再装填した自作の対無人機弾薬を造っているとのこと、またロシア軍は小型無人機対策に一般的な猟銃で多用される12ゲージ散弾の使用を強化しているともウクライナ情報機関の情報分析があるようです。

 ウクライナ軍はFRV無人機への散弾銃試験結果を発表しました。これは第一線歩兵部隊に対する脅威となっているFRV無人機へ、これまで電磁波による妨害などが試みられていますが、最後の100mの段階に入りますと、無人機を防ぐにはやはり小銃手は小銃をもちいるほかない、という状況が再確認された為です。

 散弾銃として、イタリアのベレッタホールディングス系列であるスウェーデンの弾薬製造企業ノーマが参加しており、AD-LER対ドローン長距離有効射程弾薬を提供、この試験では距離50mで使用した場合、通常の散弾銃を用いた場合でも飛行している7機の無人機のうち6機に致命的な損害を与えて撃墜する事が出来たとしています。

 FRV無人機に対して散弾銃が有効であると考えられる背景には、特にこの種の無人機の母体として用いられているのが中国のDJI社製無人機であり、機体を安価に収めるべく薄いプラスティック製部品を使用しているため、スポーツ用の12g程度の弾丸でも簡単に破壊され、特に飛行中の無人機は不安定であり、簡単に無力化できるとしています。

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スタンドオフミサイル/反撃能力の配備に関する政治的課題,SSM地対艦ミサイルとの明白な分水嶺

2024-12-11 07:00:37 | 先端軍事テクノロジー
■スタンドオフミサイル
 今回も12式地対艦誘導弾システム射程延伸型の話題を昨日とは少し角度を変えて考えてみましょう。

 スタンドオフミサイル、反撃能力整備について、陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾射程延伸型の実験成功を昨日紹介しましたが、スタンドオフミサイルの水化しさについて、今回は少し考えてみたいと思います。持論として、過去に特集しましたが、反撃能力は日本としては潜水艦など海上プラットフォームからの運用が最適であると考えていました。

 老朽潜水艦にトマホークミサイル運用能力を、潜水艦あさしおAIP区間追加のように、船体延長により20発程度搭載能力を付与し、普段は小笠原近海など、日本の聖域、つまり第三国潜水艦が接近しにくい海域に遊弋させるという持論を過去掲載しました。今考えてみると、必要な反撃能力は数千発から一万数千発ですので、とても数が足りないのですが。

 航空自衛隊が反撃能力整備を行った際には、輸送機からのミサイル運用というものを真剣に検討し、戦闘機の搭載能力の限界というものを輸送機からの数の投射能力で補う持論を展開しましたが、自際防衛装備庁が同様の研究を行っていたと知った際には、なるほどアメリカが実施している方法は王道なのだなあ、と実感したものでした。

 重要なのは、スタンドオフミサイルは相手にとり脅威なので、逆に最優先目標となる、ということです。潜水艦であれば、最優先目標であっても簡単に位置が暴露しませんし、なにより、相手が強引な手段を用いた場合でも、目標が海洋であれば、少なくとも周辺住民への付随被害はありません。航空基地ならば基地防空とミサイル防衛がこれを阻止しえる。

 けれども、地対艦ミサイルの延長線上として、仮に離島に配備する場合はこの限りではありません、離島が航空攻撃を受けた場合は付随被害が大きくなります、なにしろ掩砲所さえ構築するのに制限がある地域なのですから。離島には純粋な地対艦ミサイル、ミサイル艇に装備しているような装備を超えるものは、逆に住民の不安をあおるのではないか、と。

 防衛用、といえば聞こえはいいのかもしれませんが、北朝鮮の核ミサイルも自称は防衛用であり、中国の空母も自称は防衛用です。問題は相手がどのように受け止めるかで、まあたとえばスタンダードSM-6のように対空ミサイルが照準によっては対艦用に使えるというものは純粋に防衛用と云い得るのでしょうが、スタンドオフミサイルは配備に配慮が必要なのです。

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