北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ情勢-ウクライナ軍は無人地上車両とFPVドローンのみを使用した初の攻撃部隊による攻勢

2024-12-27 07:01:19 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 自衛隊も参考とすべき戦訓が多いのですが本日の話題はふたつ。

 クルスク戦線に関してイギリス国防省は12月21日付ウクライナ戦況報告に最新戦況を発表しました。これによれば、クルスク州ウクライナ占領地域へのロシアの反攻は継続中で、特に10日以降にも戦術的な進捗があった事をイギリス国防省は分析しています。その最大の接触は占領地の北西部となっていて、ロシア軍が南東へ4㎞前進したという。

 ロシア軍は北西部での戦闘でクルグレンコエ村を再掌握したとされ、またウクライナ占領地の南東部において、ロシア軍はプレホヴォの西へ2㎞にわたり前進するとともに、その北にあるマフノフカの郊外に駐留しているとのこと。ウクライナ軍は現在のところ、クルスク戦線における新しい占領地確保の計画は無く、攻勢限界にあるもよう。

 ウクライナ軍は、2024年8月には最大900平方㎞ものロシア領土を占領していましたが、この占領地は12月15日にはの510平方kmであり、これが21日までに占領地が480平方㎞となっています。この背景としてロシア海軍歩兵部隊及びロシア空挺軍に加え、北朝鮮軍が加わったロシア軍反攻作戦が大きく影響していると考えられています。

 ウクライナ軍は無人地上車両とFPVドローンのみを使用した初の攻撃部隊による攻勢を実施した模様、これはISWアメリカ世創研究所12月20日付ウクライナ戦況報告によるもので、地上作戦に技術革新を組み込んだウクライナの継続的な新技術開発の姿勢を端的に示すものとなりました。この運用は人的損耗を抜本的に提言するものです。

 無人地上車両とFPVドローンのみを使用した初の攻撃部隊による攻勢は、ハリコフ方面のウクライナ軍旅団報道官が20日に実施したもので、ハリコフ市の北リプシ近郊において、機銃装備のUGV無人戦闘車両数十両で攻撃を実施、同時にUGVを用い地雷敷設や地雷除去も実施、UGVだけによる世界初の地上攻撃で複数のロシア軍陣地を破壊したという。

 UGV無人戦闘車両は、世界では多種多様な装備が開発されていますが、従来のものはMUMチーミングという、有人車両の支援用に用いられるものが多く、無人車両だけの独立した攻勢は過去の戦史に例がありません。この種の殺人装備に否定的な意見もあることは確かですが、人的損耗をこれ以上重ねられないウクライナの事情も大きいのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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【防衛情報】航空自衛隊F-15戦闘機JSI近代化改修ボーイング社と新契約,航空自衛隊次期練習機T-6テキサンⅡ練習機を選定

2024-12-23 20:00:43 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は航空自衛隊関連の話題です。

 航空自衛隊F-15戦闘機JSI近代化改修についてボーイング社との間で新たな契約が結ばれました、これは1億2900万ドルを投じて改修されたF-15JSI戦闘機の運用支援を2030年まで継続するというFMS有償軍事供与に関する契約となります。航空自衛隊では老朽化するF-15J戦闘機の一部を大幅に能力向上させる計画を推進中です。

 F-15JSIはジャパンスーパーインスペクター計画といい、その主眼は射程1000㎞という新型精密誘導ミサイルAGM-158-JASSMの運用能力を付与させることにあります。原型機の初飛行から60年以上を経ているF-15戦闘機はステルス性能こそ有していませんが、莫大な搭載能力を有する為、航空打撃力の主柱を担う事が期待されています。

 F-15J戦闘機は三菱重工においてライセンス生産された航空機ですが、今回の延命と能力向上改修は当初、三菱重工とボーイング社の試案を比較検討したうえで三菱重工案よりも安価な費用を提示したボーイング社が選定され、その後の見積もり失敗により三菱重工案よりも大幅な費用超過となったという、難しい実情がありました。


 航空自衛隊は次期練習機としてT-6テキサンⅡ練習機を選定しました。決定によれば機体製造はライセンス生産は行われずアメリカのテキストロン社が製造を担当し、総合商社兼松が地上シミュレータ装置とあわせて自衛隊への納入を行います。この選定の最終選考にはスバルとピタラスの共同による国内生産型がありましたが、選ばれていない。

 スバルとピタラスの共同による国内生産型練習機は、ピタラス社がPC-7-Mk10を提示し日本仕様としてライセンス生産する方針が示されていましたが、今回のT-6テキサンⅡ練習機を選定したことで、T-3練習機とT-7練習機というかたちで連綿と継続された日本での初等練習機製造は終了、その製造能力もなくなることとなるでしょう。

 次期練習機選定ではのほかに第百商事提案がトルコのHURKUSを提案していましたが評価の結果は性能不十分が確認、さらに新東亜交易が提案したものは地上シミュレータのみというもので必須項目未達成となり、両社とも第一次選考において選外となっています。今後の課題はT-6練習機の高出力を初等練習機として最適化する事でしょう。


 航空自衛隊は次期練習機としてT-6テキサンⅡ練習機を選定した点について、意外に思われたのはT-6テキサンⅡが現行のT-7練習機よりも遥かに高出力の練習機であり、初めて操縦を経験する初等練習機として、この高出力は妥当なのかということです。実際現行のT-7練習機は420馬力であるのに対しT-6は1250馬力と三倍近いものという。

 T-6練習機の高出力は、一部の国では高等練習機として採用されている水準であり、この機体を練習機として採用されているアメリカはT-53A練習機という軽飛行機を初等練習機に乗るための練習機と位置付けています。また、高出力の初等練習機操縦の難しさは隣国韓国が開発したKT-1練習機による航空機事故などがある。

 T-6練習機、なお今回はピタラス社のライセンス生産提案が敗れたかたちですが、このT-6はもともとピタラス社が開発したPC-9高等練習機をアメリカのテキストロンアヴィエーションがライセンス生産したという経緯があります。ただ、高出力ですが、エンジンリミッターの搭載などがオプションとして可能であるとされています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【防衛情報】中華民国台湾へ初のM-1戦車が納入,M-60A3パットン置換えるM-1A2Tエイブラムス戦車

2024-12-17 20:11:33 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 エイブラムスがパットンに合流した、今回はまあ写真は手持ちという事で自衛隊の戦車になるのですけれども中華民国台湾の大きな防衛力整備の話題をお伝えしましょう。

 中華民国台湾へ初のM-1戦車が納入されました。これは台湾が長らく悲願としていた主力戦車の更新であり、これにより抑止力は少なくないが期待できるでしょう。今回台湾に納入されたのはM-1A2T、アメリカ陸軍に導入されたものと同等だ。

 M-1A2エイブラムス戦車は、過去1990年代に台湾が導入を構想しましたが、台中市などが被害を受けた台湾中部地震を受け、台湾本島での地形と特に地盤の問題から、重量が70tちかいM-1戦車を導入した場合でも運用が難しいと一時は断念していました。

 M-60A3戦車、愛称はパットン、しかし、中華民国陸軍を悩ませたのは台湾の主力戦車が第二世代のまま、という問題です。台湾のM-60戦車は1991年湾岸戦争を最後にアメリカ海兵隊が引退させたM-60戦車を本国に持ち帰らず、台湾へ譲渡したという歴史があります。

 M-1A2T戦車の導入によりどういった点が変わるのでしょうか。具体的には、漸く中国の99式G型戦車を相手に十分な戦車戦が展開できる目処がついた、ということでしょう。それは第二世代戦車であるM-60戦車からの大きな発展に他なりません。

 第三世代戦車と第二世代戦車、その最大の相違点は、戦車用高出力エンジンと複合装甲の有無にあります。第三世代戦車は1500hp前後のエンジンを搭載していますが、これは1980年代近くまで戦車用に小型化が実用化できなかったものでした。

 複合装甲は、いくつかの手法が開発されていますが、これも1970年代に真剣な脅威となった対戦車ミサイルに対し、特に圧延均一鋼板で500mmや600mmを軽々と貫通するミサイルに従来の装甲を厚くすることは重量が100tに迫り現実的ではありません。

 対戦車ミサイルの脅威に、一般的にはチタン合金と硬化セラミック、つまり衝撃に強い素材と高熱に強い素材を適度な緩衝材とともに複合化する装甲ならば、圧延均一鋼板換算で900mm相当とか1200mm相当の防御力を付与し、防ぐ見通しがついた、と。

 台湾で独自開発できなかったのか、という疑問符があるでしょうが、毎年戦車を生産し続けている日本や、多くの支援を受けて国産基盤を構築した韓国とちがい、世界の多くの国では戦車砲や戦車用エンジン、装甲板などを自国で生産は出来ません。

 韓国のK-2戦車を例に挙げれば、エンジンが国産でき変速装置も国内生産できるようになったのはつい最近で、それまではドイツから輸入に依存、またK-2をライセンス生産すべく意気込んだポーランドも、工場設備の古さで生産見通しが立っていない。

 台湾では20mm機関砲までは国内製造できますが、105mm砲の国内生産を行うだけの冶金技術が無く、現在試験中の雲豹装甲車105mm機動砲型についても車体は国内生産するものの105mm砲についてはアメリカから輸入しているほど、生産が難しい。

 M-1A2T戦車の導入により台湾の防衛力は強化され、今後は既に納入待ちとなっているM-142HIMARS高機動ロケットシステムやハープーン沿岸防備システムの導入が続きます。また既にF-16V戦闘機の納入も始まり、ようやく近代化の目処がみえてきた。

 台湾の防衛政策で難しいのは台湾へ兵器を有償供与する際の中国政府からの圧力です。ただ、台湾は今後、中古でも好いのでイージス艦や、また中国の第五世代戦闘機に対抗しうるF-35戦闘機などの売却許可を、アメリカへ求めて行くことでしょう。

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【防衛情報】イージスグアムシステムAN/TPY-6レーダーと宇宙軍宇宙観測衛星サイレントバーカー運用計画

2024-12-16 20:01:07 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今週はアメリカ軍関連の最新のわだいです。

 アメリカ国防省ミサイル防衛局はグアムでの弾道ミサイル迎撃実験を実施しました。ミサイル防衛局が12月9日に発表したところによれば、グアムにおいてミサイル母上に関する実弾射撃実験が行われたのは今回が初となります。今回の射撃はAN/TPY-6レーダーシステムと新しく配備した地上配備型垂直発射オステムを用いたとしています。

 イージスグアムシステム、と呼ばれるこの一連のシステムはスタンダードSM-3blockⅡA迎撃ミサイルを発射、中距離弾道ミサイルの飛行特性を有する目標を捕捉し、グアムのアンダーセン空軍基地沖において撃墜に成功したとのことです。AN/TPY-6レーダーシステムはアラスカのクリア空軍基地に置かれている長距離レーダーの延長線上の装備です。

 グアムのアメリカ軍施設は日太平洋上の戦略拠点であり、アメリカと同志国が共有する“自由で開かれたインド太平洋”という秩序の維持において要諦と位置付けていて、一方で中国や北朝鮮とロシアの各種弾道弾が次々とグアムを射程に置いていることから、このグアム島を有事の際にかに維持するか、維持できないかが重大な課題となっていました。


 アメリカ国防総省はF-35戦闘機調達計画を一部修正します。もともと今年度の国防権限法ではアメリカ軍は2025年にF-35戦闘機68機を調達する計画でしたが、F-35戦闘機の幾つかの部分での問題が解決されていないとして、先ずメーカーであるロッキードマーティン社が改善計画を発表するまで一部の機体の受け取りを拒否するとしています。

 68機のF-35戦闘一機の内20機を受取保留するとのことでした。アメリカ軍が導入する計画では、空軍向けF-35A戦闘機が42機、海兵隊のF-35B戦闘機は13機、そして海軍のF-35C戦闘機が13機を要求していました。現在、F-35戦闘機は2023年7月にテクノロジーリフレッシュスリーバージョンのアップデートに問題が発生しそのまま。

 テキサス州フォートワースのロッキード工場にはTR-3アップデート問題発生以降、製造されたF-35戦闘機が出荷できないまま大量のF-35戦闘機が並んだままとなっていました、ただ、現時点ではTR-3ソフトウェア暫定仕様が開発、飛行運用は可能となっています、ただ、アメリカ政府は未完成機として一機当たり500万ドルの支出を拒否しています。


 アメリカ宇宙軍の宇宙観測衛星サイレントバーカー運用計画について、宇宙軍のスティーブンホワイティング大将の発言として、2023年9月に宇宙へ打ち上げられたサイレントバーカー衛星の運用を2025年にも開始するとしています。ただ、アメリカ宇宙軍がどれだけのサイレントバーカー衛星をどれだけ打ち上げたかは公表していません。

 サイレントバーカー衛星は、ただし、少なくとも2機を打ち上げたとしています。サイレントバーカー衛星とは、軌道上22000マイルの静止衛星軌道を警戒するもので、低軌道衛星のような地上からの警戒監視手段の届かない高高度目標に対する情報収集を行う事が任務となっていて、バスケットボール大のものを識別するのうりょくをもつ。

 静止衛星の軌道情報についてはこれまで、アメリカはオーストラリアとイギリスに配備されているDARC先進深宇宙監視レーダーシステム3基により宇宙の監視を行っていますが、地球上からの監視には限界があり、サイレントバーカー衛星が配備される事となりました。新しい戦場となっている宇宙領域では中国とロシアの進出が顕著である。


 アメリカ国防総省はV-22オスプレイの飛行一時停止を発表しました。この背景には金属部品の劣化が原因となり、墜落事故の可能性になるとのこと。この発表は先ず、全軍のオスプレイ計画を統括する海軍航空システム司令部カールチェビ中将が、十分な注意を払って運用を一時的に停止したといい、マーシャハート報道官も事実であるとした。

 飛行停止は少なくとも一週間としていて、これは過去五年間のV-22の事故を精査した結果機体の一部の金属部品が予想よりも早く劣化摩耗している事が判明していて、これは多くの事故に直接影響しているとしました。この事故に対し一部の連邦議会議員は飛行の長期停止をオースティン国防長官に要求したも伝えられています。

 V-22最近の事故では今年11月20日にニューメキシコ州キャノン空軍基地で発生した墜落事故で、事故原因を調査した結果、2023年11月の沖縄県での墜落事故と同様の原因が確認されたとしています。ただ、国防総省によればニューメキシコ州と沖縄県での事故の原因である摩耗した金属部品は同一カ所のものではないとも説明しました。

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ウクライナ情勢-ドローンの脅威!FRV無人機対策は結局小銃によるしかないのかもしれない-ウクライナ軍の研究

2024-12-13 07:01:45 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 無人機対策は本邦でも重要な課題ですがかなり高価なスマートスコープを陸上自衛隊が調達しようとしている現在にウクライナより参考となる事例が。

 FRV無人機対策は結局小銃によるしかないのかもしれない、ウクライナの第一線について猛威を振るっているなかにあって、その生存方法を模索した結果、電子妨害装置など様々な方法が模索されているものの、これら妨害システムは必ずしも有効に機能せず、特に兵員殺傷を狙う無人機を最後の100mで迎撃するには小銃しかなかった、という。

 ワシントンDCに所在する海軍分析センター顧問サムベンデット氏の研究によれば、結局小銃以外には兵士が身を守る手段はないものの、一方で最後の距離でFRV無人機を防ぐことができるかは結局小銃手の射撃技量に左右されるとしつつ、この状況でFRV無人機を正確に操縦できるかについてもドローンオペレータの技量によるとしました。

 手探りの検討の中で、ロシア軍では現在小銃に多用されている5.45mm弾薬に銃弾を取り外したうえで散弾銃の弾薬から取り出した散弾ペレットを再装填した自作の対無人機弾薬を造っているとのこと、またロシア軍は小型無人機対策に一般的な猟銃で多用される12ゲージ散弾の使用を強化しているともウクライナ情報機関の情報分析があるようです。

 ウクライナ軍はFRV無人機への散弾銃試験結果を発表しました。これは第一線歩兵部隊に対する脅威となっているFRV無人機へ、これまで電磁波による妨害などが試みられていますが、最後の100mの段階に入りますと、無人機を防ぐにはやはり小銃手は小銃をもちいるほかない、という状況が再確認された為です。

 散弾銃として、イタリアのベレッタホールディングス系列であるスウェーデンの弾薬製造企業ノーマが参加しており、AD-LER対ドローン長距離有効射程弾薬を提供、この試験では距離50mで使用した場合、通常の散弾銃を用いた場合でも飛行している7機の無人機のうち6機に致命的な損害を与えて撃墜する事が出来たとしています。

 FRV無人機に対して散弾銃が有効であると考えられる背景には、特にこの種の無人機の母体として用いられているのが中国のDJI社製無人機であり、機体を安価に収めるべく薄いプラスティック製部品を使用しているため、スポーツ用の12g程度の弾丸でも簡単に破壊され、特に飛行中の無人機は不安定であり、簡単に無力化できるとしています。

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スタンドオフミサイル/反撃能力の配備に関する政治的課題,SSM地対艦ミサイルとの明白な分水嶺

2024-12-11 07:00:37 | 先端軍事テクノロジー
■スタンドオフミサイル
 今回も12式地対艦誘導弾システム射程延伸型の話題を昨日とは少し角度を変えて考えてみましょう。

 スタンドオフミサイル、反撃能力整備について、陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾射程延伸型の実験成功を昨日紹介しましたが、スタンドオフミサイルの水化しさについて、今回は少し考えてみたいと思います。持論として、過去に特集しましたが、反撃能力は日本としては潜水艦など海上プラットフォームからの運用が最適であると考えていました。

 老朽潜水艦にトマホークミサイル運用能力を、潜水艦あさしおAIP区間追加のように、船体延長により20発程度搭載能力を付与し、普段は小笠原近海など、日本の聖域、つまり第三国潜水艦が接近しにくい海域に遊弋させるという持論を過去掲載しました。今考えてみると、必要な反撃能力は数千発から一万数千発ですので、とても数が足りないのですが。

 航空自衛隊が反撃能力整備を行った際には、輸送機からのミサイル運用というものを真剣に検討し、戦闘機の搭載能力の限界というものを輸送機からの数の投射能力で補う持論を展開しましたが、自際防衛装備庁が同様の研究を行っていたと知った際には、なるほどアメリカが実施している方法は王道なのだなあ、と実感したものでした。

 重要なのは、スタンドオフミサイルは相手にとり脅威なので、逆に最優先目標となる、ということです。潜水艦であれば、最優先目標であっても簡単に位置が暴露しませんし、なにより、相手が強引な手段を用いた場合でも、目標が海洋であれば、少なくとも周辺住民への付随被害はありません。航空基地ならば基地防空とミサイル防衛がこれを阻止しえる。

 けれども、地対艦ミサイルの延長線上として、仮に離島に配備する場合はこの限りではありません、離島が航空攻撃を受けた場合は付随被害が大きくなります、なにしろ掩砲所さえ構築するのに制限がある地域なのですから。離島には純粋な地対艦ミサイル、ミサイル艇に装備しているような装備を超えるものは、逆に住民の不安をあおるのではないか、と。

 防衛用、といえば聞こえはいいのかもしれませんが、北朝鮮の核ミサイルも自称は防衛用であり、中国の空母も自称は防衛用です。問題は相手がどのように受け止めるかで、まあたとえばスタンダードSM-6のように対空ミサイルが照準によっては対艦用に使えるというものは純粋に防衛用と云い得るのでしょうが、スタンドオフミサイルは配備に配慮が必要なのです。

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防衛装備庁-12式地対艦誘導弾射程延伸型初の発射試験実施を発表,離島防衛の根本を変える装備

2024-12-10 07:00:48 | 先端軍事テクノロジー
■試験は東京都内で実施
 射程1000km級の地対艦ミサイル開発が漸く終盤となる発射試験までたどり着きました。

 12式地対艦誘導弾射程延伸型の発射試験が10月から11月にかけ防衛装備庁の東京都にある新島試験所において実施されたとのことです。今回の試験は地対艦型と艦対艦型が地上発射装置から試験され、所要の性能を満たしたとされています。日本国内の報道機関ではそれほど大きく扱われませんでしたが、従来の自衛隊地対艦ミサイルと比し、長射程だ。

 射程延伸型、という名称ではありますが、発射装置は4連型までとなっており、現在の6連装型と比較しミサイル本体が大きくなり、また形状も大きく変容しています。この背景には射程が現在の200km前後から1000kmと大きく延伸し、防衛装備庁は射程の詳細を公表していませんが自衛隊は最終的に2200kmから2500kmまで射程を延伸させるかまえ。

 反撃能力整備の一環とされる装備開発ですが、同時に射程を大きくすることで、南西防衛における地対艦ミサイル配置にも大きな影響を及ぼす可能性があります、それは射程の延伸により離島に直接配備せずとも、離島防衛を、例えば九州から直接日本の離島に迫る脅威を排除できるようになるかもしれない、という運用の冗長性の確保、という視点です。

 南西防衛では、現在、離島には警備隊と地対空ミサイル中隊及び地対艦ミサイル中隊という、アメリカの海兵沿岸連隊が参考にしたのではないかというくらいの編成の部隊を駐屯させていますが、強力な装備である一方、地対艦ミサイルそのものが中国軍の攻撃目標になるのではないかという懸念を持つ住民不安が、少なからず存在することは否めません。

 上陸させない為の防備であれば、韓国軍は離島に自走榴弾砲を配備しているように自衛隊も99式自走榴弾砲を配備すれば上がらせませんし、スウェーデンのゴトランド島警備の主役はレオパルト2戦車となっていますので、多少非合理でも戦車を小隊規模で分散配置し、荒天時に漁業補償を行いつつ海上へ射げき訓練を行うという選択肢もある筈です。

 九州から南西諸島全域に届く装備の開発という意義は、離島地域の生活に有事の際、影響を及ぼさない体制というものを示すものです。ただ、現在のロシアウクライナ戦争を観た場合、ミサイルの所要数は相当多く成る事も現実であり、可能ならば一万発近いミサイル、最低でも六千発程度は、この種のミサイルを揃えなければならない課題があります。

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【防衛情報】国際航空宇宙展2024,三菱重工CCA無人戦闘機構想とGCAP次期戦闘機,Fixed-Wing-VTOL-UAV

2024-12-03 20:11:00 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は少し間が開きましたが2024国際航空宇宙展の続報について。

 イギリスと日本及びイタリアが開発中のGCAP次期戦闘機について、2024国際航空宇宙展にその十分の一規模の模型が公開されました。GCAPグローバル航空戦闘プログラムは航空自衛隊のF-2戦闘機後継機を模索するとともに、イギリスとイタリアのユーロファイター2000タイフーン戦闘機の後継機を開発するものです。

 GCAP次期戦闘機について、三菱重工とBAEシステムズ社およびレオナルド社が参加していますが、今回公開されたものは十分の一水準の模型であり、実物大モックアップを展示できる状況ではない事が一つの象徴的出来事であるのかもしれません。事実、2024年7月にはイギリスのスターマー新政権が計画参加を見直す可能性を示唆しました。

 モックアップは、実際、イギリスは独自開発を模索していた時代、テンペスト戦闘機の実物大モックアップを早々に公開しています。イギリスはサウジアラビアの開発参加を示唆している一方、第三国輸出に消極的な日本の方針があり、具体的な機体形状をモックアップで示すことができないという現状を示唆しているのかもしれません。■

 三菱重工はCCA無人戦闘機構想を発表しました。これは東京ビッグサイトで開催されました国際航空宇宙展において模型とともにその運用の方向性を示すCG画像が公開されたもの。機体形状はいわゆる滞空型無人機ではなくステルス性に配慮したもので、ボーイングオーストラリアが開発したロイヤルウィングマン無人僚機をおもわせるもの。

 CCA無人戦闘機の運用として、有人戦闘機からの指示を受けミサイルを発射する、という運用が示されていました。これはステルス戦闘機がミサイルを発射する際、ウェポンベイを解放した瞬間にRCSレーダー反射面積が顕著に増大し敵対勢力に発見される懸念があったものを、管制は有人戦闘機、危険な発射は無人機、と任務を分けた構図といえる。

 CCAは一種の無人僚機として運用されるようですが、三菱重工が展示した模型ではエンジン部分に推力偏向用のコンダイノズルが設置されている様子が確認されることから、一直線に飛行するのでは無くある程度有人戦闘機に随伴することを想定した機動力が付与されることが前提とされ、日本版MQ-28ゴーストバットを目指す機体といえるでしょう。■

 日本飛行機は自衛隊V-BAT無人機導入を支援するもよう。東京ビッグサイトにおいて行われました国際航空宇宙展2024では航空機部品製造や航空機定期整備を担当する日本飛行機が、アメリカのシールドAI社が開発したV-BAT垂直離着陸型無人機の運用支援、予備部品製造やシステム維持と教育支援などの面で自衛隊に役務を提供出来ることを示した。

 V-BATはテイルシッター型VTOL無人機といわれ、全幅の大きな主翼を有するもののロケットのように発着は垂直に倒立して行うといい、これによりVTOL型無人機の課題であった滞空時間の短さを主翼により大きく解消するとともに、カタパルトのような発着装置を必要とせず、20分程度で発進準備が可能となる利点、自衛隊では艦上試験も行われている。

 V-BATの性能は巡航速度98.2km/hで滞空時間は10時間、全備重量は56.7kgで11.3kgまでの各種センサー搭載能力があり、テリリウム社製赤外線センサーやホダッチ社製複合光学装置、IMSAR社製NSP-3合成開口レーダ装置、またシールドAI社が開発中のAIシステムを搭載することで自律飛行などが可能になるもよう。■

 三菱重工は二機種のFixed-Wing-VTOL-UAVを発表しました。東京ビッグサイトにて開催された国際航空宇宙展2024の会場においてモックアップを公開、大型機と小型機を発表しています。興味深いのは大型機も小型機も航続距離と巡航速度が同じという点で、航続距離1000km、巡航速度100km/hにより移動することが可能となっています。

 機体形状は胴体後部に推進装置を搭載し逆V型尾翼構造を採用、一見バイラクタルTB-2の後部形状を彷彿とさせるものですが、この逆V型尾翼構造の桁部分に垂直離着陸用の補助ローターを設置しており、狭隘地域での発着が可能という。小型VTOL-UAVについては既に名鉄海上観光船を利用した後部特設甲板への発着試験に成功しています。

 名鉄海上観光船への発着は、発着地にQRコードを描いた発着パッドを無人機が認識して自動着陸するというもの。なお、航続距離も巡航速度も同じ大型機と小型機ですが、相違点はペイロードで、小型機にはペイロード5kg、大型機のペイロードは20kgとなっています、これは輸送能力の多寡というよりも搭載センサーというべきなのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【防衛情報】防衛装備庁技術シンポジウム,FTB無人実証機研究試作2025年11月初飛行予定とHPM電磁波装備早期実用化

2024-12-02 20:08:53 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 防衛装備庁技術シンポジウムの話題を。

 防衛装備庁はAI搭載FTB無人実証機の研究試作を推進中である、これは防衛装備庁が開催した防衛装備庁技術シンポジウムにおいて発表されたもので、三菱重工が主契約企業として2025年末の初飛行を目指し開発しているとのこと。この無人機は2022年より防衛装備庁が、無人機へのAI搭載技術の研究試作、としてすすめられていたもの。

 FTB無人実証機は、戦闘型と偵察型を開発していると好い、防衛装備庁技術シンポジウムにおいてはイメージ図が公開、双発型でエンジンはフェアチャイルド社製A-10攻撃機のように胴体上部に離隔して二基のエンジンをそのまま搭載している構図、戦闘型と偵察型は胴体部分とエンジン部分を共通モジュールとして開発し共用するという。

 防衛装備庁が発表したイメージ図には、FSX初号機のような白地に赤色の試作機塗装を採用している。主翼部分と尾翼部分をモジュール化しており、双方の取り替えも可能、具体的には偵察型については主翼を大きくとり、滞空時間を延伸、戦闘型については機動性を重視する、ただ、管制システムを司るAI人工知能については双方ともに共通させる。■

 防衛装備庁のAI搭載FTB無人実証機について。防衛装備庁によれば全長については3mを超える程度、戦闘型は全幅が2m、偵察型は全幅が3mを超える程度、これはTACOM多用途小型無人機が全長5.2mと全幅2.5mであったことと比較するとかなり小型となっていて、TACOMのように戦闘機などに搭載し長距離を進出するのかについては不明です。

 戦闘型と偵察型は、ともに機首部分にEO/IR電子光学/赤外線センサーを搭載し、偵察型についてはSAR合成開口レーダーを搭載することも視野に開発を進めているという。令和六年現在の開発状況は細部設計段階、令和七年度にはFTB無人機製造と管制装置の製造を行い、11月には初飛行を予定、続いて機能確認を令和七年内に行うという。

 飛行試験が所内試験として令和八年から令和九年に掛け実施される。三菱重工は戦闘支援無人機を国際航空宇宙展において模型として展示させていますが、防衛装備庁技術シンポジウムにおいて公開されたイメージ図とは形状が大きく異なる。防衛装備庁はAI自立型無人機としてアメリカでF-16を無人化したX-62Aなどの事例を併せて紹介しました。■

 防衛装備庁防衛技術シンポジウムにおいて、防衛装備庁が開発を進めている無人機迎撃用HPM電磁波装備の開発状況が発表されました。現在は管制装置および空中線装置と運搬車の研究施策が令和8年までの計画で進められています。無人機への対策は攻撃手段だけでは無くISR情報収集警戒監視偵察任務に用いられ、情報優位を脅かします。

 ロシアウクライナ戦争ではウクライナ軍がブコベルAD電子妨害装置や同志国から供与されたアメリカのIXI-EW社製ドローンキラー、リトアニアのNTサービス社製EDM4Sなどが使用されており、またロシア軍もR-330BMV電子妨害装置やR-330Zhジテリ電子妨害装置が使用されていますが、これらは管制用電波を妨害する電子妨害装置となっている。

 自衛隊も導入を検討するイスラエルIAI社製ハロップ徘徊式弾薬などはレーダーなどを逆探知する自爆用務神亀となっていて、この種の航空機は管制電波を妨害するだけでは阻止できない、こうした背景から防衛装備庁ではHPM電磁波を利用した対無人機システムの開発を進めているとのこと。最終的には単一車両の自己完結化を目指している。■

 防衛装備庁はHPM電磁波装備の早期実用化を目指している、防衛装備庁技術シンポジウムでは、近年、自爆型無人機の広範な使用が脅威となっている現状を紹介し、電磁波装備、高出力マイクロ波による迎撃能力の開発を急いでいます、具体的には令和4年から研究を進め、また令和6年からは無人機にHPM発生装置を搭載する技術研究を進めている。

 計画では車両搭載HPM研究は令和9年までに完了し、令和10年よりHPM車両搭載型の開発を実施、令和13年までに完成させる見通しであり、またドローン搭載HPM発生装置も技術研究を令和10年までに完了し、令和11年よりドローン搭載HPM技術の実証に進むという。現在は、複数のHPM発射装置と電源車及び管制装置を地上展開させる構想です。

車両搭載HPMは重要施設防護を念頭としていて、HPM発射装置は牽引式のものと車載型と複数の発射装置を開発、発射には電力のみで対応できるために低コストであるとともに弾薬補給の必要が無いということ、また光速で瞬時に制圧できるという。ドローン搭載HPM装置は近距離用で地上配置式との併用を想定しているとされています。

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ようこう,艦名は“ようこう”広島県尾道市内海造船にて建造の中型船舶1番艦進水式挙行

2024-11-29 07:01:26 | 先端軍事テクノロジー
■ようこう-基準排水量3500t
 写真については流石に広島は遠かったものですから輸送艦のと型で代用しているものですが最新の話題を。

 陸上自衛隊は昨日、広島県尾道市の内海造船において建造されていた中型船舶の1番艦進水式を挙行しました。艦名は“ようこう”、陽光を意味する艦名と思われます。先行して進水式を迎えていた小型船舶の1番艦は、にほんばれ、という過去にない艦名であったことから、中型船舶の艦名に関心が集まっていましたが、ようこう、まあ、軟着陸か。

 ようこう、基準排水量3500tとなっていて、陸上自衛隊が運用する艦艇ではありますが、海上自衛隊が過去保有した輸送艦と比較した場合、初代おおすみ型、あつみ型、みうら型よりも遥かに大きく、あつみ型の倍以上、カンボジアPKOなど海外派遣に活躍した輸送艦みうら型で基準排水量2000tですので、現行おおすみ型の8900tに次ぐ大型艦となる。

 2027年までに、ようこう型輸送艦2隻、にほんばれ型輸送艦3隻、そして更に小型舟艇4隻を就役させる方式です。陸上自衛隊は戦車など重戦力の主力を北海道に配備し、しかし南西有事などの事態に際しては北海道から機動展開させる方針でしたが、戦車は狭軌貨物列車では輸送不可能で新幹線貨物輸送は未整備であり、その為の輸送手段が課題でした。

 にほんばれ型輸送艦、ようこう型輸送艦、これまでの海上自衛隊輸送艦と比較した場合でも小型ではありませんが、根本から任務が異なります、それは輸送艦おおすみ型などは有事の際に戦闘地域へ輸送する作戦輸送を想定し、武装やデータリンク装置と指揮通信能力や電子戦能力を相応に有しているのに対し、陸上自衛隊の輸送艦は主任務が単なる輸送だ。

 陸上自衛隊輸送艦は、艦首部分に観音扉を有していますが、これらも海上自衛隊輸送艦のようなビーチング、海岸に直接揚陸する為のものではなく、あくまでカーフェリーのように港湾施設における揚陸を行うためのものです。海上自衛隊では戦闘を伴う作戦輸送と平時における輸送を業務輸送と分けていますが、この場合は高射に当るといえるでしょう。

 ただ、世界では有事の際の外交的協力、同志国を増やすべく、陸軍訓練を強化しています。現在フランスとカタールが訓練中ですし、インドもオーストラリアや東南アジア諸国との訓練、韓国は先日戦車を史上初めて中東に派遣しました。日本の輸送艦も、もう少し大型の全通飛行甲板型輸送艦を導入し、こうした用途に充てることも検討すべきでしょう。

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