北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海上自衛隊護衛艦隊/護衛隊群編成への提案

2005-12-16 02:10:10 | 防衛・安全保障
 海上自衛隊は、機動運用部隊である護衛艦隊の運用を、八八艦隊と位置づけ、護衛艦八隻、ヘリコプター八機を基幹とする護衛隊群の四個体制整備を進めてきた。
 八八艦隊の内訳は、ヘリコプター護衛艦を旗艦として、ミサイル護衛艦二隻からなる護衛隊、そして汎用護衛艦からなる二個護衛隊によって構成されるものだ。
FH030021 この構想は、イージス艦『みょうこう』の就役を以てミサイル護衛艦8隻体制が確立し、ミサイル護衛艦『たちかぜ』を護衛艦隊旗艦とした為、イージス艦『ちょうかい』の就役を以て完結した。
 横須賀・佐世保・舞鶴・呉に配置された護衛隊群は、常時一個護衛隊群を洋上展開させ、一個護衛隊群を基地待機、一個護衛隊群を訓練待機として、最後の一個護衛隊群をドックでの重整備状態に置く構想であった。つまり、二個の即応部隊と二個の待機部隊に分けられるわけだ。
 この8隻からなる勢力は、ヘリコプターをアスロック対潜ロケットを搭載する艦艇により高い対潜戦闘能力を有し、イージス艦を中心とする防空能力により高度な防空能力を有する。各艦は艦齢も若く、データリンクにより連携して戦闘を展開させる事が出来るので、8隻による総合的な戦闘能力は中小国一国の海軍力にも相当する。加えて、わが国周辺海域における作戦任務であれば航空自衛隊による航空支援も期待でき、実力は大きいといえた。
FH030013 一方で、海上自衛隊には沿岸警備任務にあたる地方隊を編成に有しており、従来は小型護衛艦による二個護衛隊を横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊に配置していた。1995年の防衛大綱改訂により、地方隊の護衛隊は削減され、佐世保・大湊地方隊以外は護衛隊を一個削減された。しかし、削減される一方で、護衛艦隊から旧式化した(とはいえ、一番艦は1982年就役と比較的新しいのだが)『はつゆき』型護衛艦を配属させ戦力の維持を目指した。同艦はガスタービン推進、データリンクを可能とし、哨戒ヘリコプターと対潜・対空・対艦ミサイルを搭載する優秀艦だ。
 ここで問題となるのは、指揮系統の問題である。艦艇が削減された結果、個艦の任務は広くなり、結果的に1999年の能登半島沖不審船事案のように地方隊護衛艦を必要に応じて護衛隊群隷下に配属させ作戦任務に当たる事例も見られるようになった。即ち、任務の重複である。
FH020012 また、護衛艦隊でも、八八艦隊という、いわばタスクフォースを常時維持する事は艦艇の運用に大きな制約を与える結果となった。
 機動運用状態に置くためには同一の護衛隊群に所属する八隻が常時運用可能な状態となっている必要があるが、上記のように地方隊と護衛隊群の任務が重複している以上、地方隊任務地域には一定の護衛隊群艦艇が稼動していなければならないが、例えば第一護衛隊群と第四護衛隊群が重整備・訓練部隊に指定されている時期には太平洋ががら空きになってしまう。
 こうした運用上の支障を考えれば八八艦隊編成はもはや時代に適応していない実情を見る事が出来る。一方で、個艦の能力は著しく向上している、海上自衛隊最初のDDG『あまつかぜ』が搭載したターターSAMの射程は18kmであり、シースパローとほぼ同規模である事からもその能力の大きさが分ろう。
FH020016 また、20㍉高性能機関砲の搭載など、個艦防御能力も向上しており、独立した作戦能力も強化されただけではなく、ヘリコプターの運用機能は陸上航空基地のヘリコプターへ海上における作戦拠点を提供させる事となり、総合的には海上自衛隊全般の作戦能力も上がったわけだが、陸上航空基地のヘリコプターも護衛隊群隷下の護衛艦に着艦させ支援に充てれば、ますます地方隊と護衛隊群の運用上の重複が進む。
 稼動艦艇に関して柔軟性を付与させるべく、護衛隊群隷下の護衛隊に大規模な改編を行う構想が推進中である。
 従来までは護衛隊群を一個の作戦単位として行動していたのに対して、今後は作戦能力を分散させ柔軟性を向上させようという目的である。
 即ち、フォース編成からタイプ編成への移行である。
IMG_4254 具体的には、ヘリコプター護衛艦、ミサイル護衛艦各一隻と汎用護衛艦二隻によって一個護衛隊を編成、同時にミサイル護衛艦一隻と汎用護衛艦三隻によって一個護衛隊を編成させる方式への移行である。
 共通性を向上させる為にはヘリコプター護衛艦とミサイル護衛艦を中心に四隻体制とする編成を普遍化させれば互換性が向上すると思うのだが、ヘリコプター護衛艦は今後、16DDHのような大型艦に移行するためこうした編成に移行させられたのだろう。
 これならば、一個護衛隊群の内、どちらかを洋上待機か即応待機という運用状態にしておけば、半数の艦艇を使用する事が出来る。しかしながら、運用できる艦艇に関しては若干際が生じる事が問題点として挙げられる。
FH000001 こうした点を踏まえて、もう少し大規模な改編を提案したい。
 即ち、横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊という五個警備区に関する編成を改編する提案だ。
 横須賀と呉に関しては太平洋警備区として統合が可能だろう。佐世保は南西諸島の防衛が重視される為現行の体制を維持する。舞鶴と大湊に関しては日本海警備区として統合し、北朝鮮、そして脅威度は大きく減退したがロシアへの対応に当たる。こうして三個体制への移行を提案したい。
 警備区に関する改編は、旧帝国海軍の鎮守府以来の改編であり、現場には抵抗があるかもしれないが、護衛艦定数の削減や脅威の多様化という状況は、こうした部分にも本質的な変革が必要になったことを背景としてこうした改編案を提案した。
 三個に集約する事で幕僚機構を統合する事が出来、より幅広い作戦機能を獲得する事が期待できる。また、艦艇の性能向上は、任務範囲の拡大に充分対応できる事が期待でき、ヘリコプターと統合した運用により今まで以上の作戦能力整備も可能となる。
FH010001 この改編案には、中核部分として護衛艦隊と地方隊の統合が含まれていることをここに明示したい。
 すなわち、『はつゆき』型、もしくは『あさぎり』型護衛艦により護衛隊を構成する地方隊の戦力は、現行の護衛隊群隷下の汎用護衛艦による護衛隊と全く同じである(ただし、地方隊配備の護衛艦にはヘリコプター運用能力が一部制限されているが)。
 横須賀=第一護衛艦隊、佐世保=第二護衛艦隊、舞鶴=第三護衛艦隊、という編成である。
 ヘリコプター護衛艦(ヘリ空母)を旗艦として、イージス艦を中心とするミサイル護衛艦三隻で一個護衛隊を編成、常時一隻を運用可能状態に置く。汎用護衛艦三隻から成る護衛隊を三個ないし四個整備する。
 可能であれば従来型ヘリコプター護衛艦を多数配置し、対潜戦闘の中核艦として運用する事を提唱したい。無論無理な提案ではあるかもしれないが、従来型ヘリコプター護衛艦を護衛隊の旗艦に用いる意義は多少なりともある。
00110034 本論から若干脱線するが、三隻の汎用護衛艦であればヘリコプター三機を有し、一機を飛行、一機を燃料補給及び待機、一機を整備に当てる事が出来る。従来型のヘリコプター護衛艦があれば更に三機のヘリコプターを加える事ができる為、計六機で常時二機を戦闘行動に充てる事だ出来る。
 また、外洋におけるヘリコプター整備支援にも用いる事が出来、16DDHのような大型艦では不可能な柔軟な運用を可能にする。『たかなみ』型護衛艦の拡大改良型としてヘリ格納庫を拡大させれば、ヘリコプター護衛艦とすることも出来よう。ヘリコプター護衛艦を編成に含む場合は四隻の護衛隊三個、含まない場合は三隻の護衛隊四個を想定している。
 閑話休題。
 三個の艦隊に移行することで、地方隊、護衛隊群の八つあった幕僚機構を三つに集約できる利点は大きい。
FH000013 潜水艦も、三個に区分する事を提案する。
 潜水艦は16隻が配備されているが、潜水艦隊を独立させて運用すれば友軍狙撃の可能性を捨てきれず、任務分担区域ごとに運用する事は意義がある。掃海隊群に関しても、タイプ編成のまま三個に区分された護衛艦隊に編入して、艦隊独自の独立した作戦能力を付与させ、任務への達成能力を向上させる。
 一方で、海外派遣に関しては海外派遣担当艦隊を一個指定し、12ヶ月周期で交代させ、担当艦隊旗艦を中心として、各艦隊から稼動艦艇を抽出し、任務に当たることとなる。
 即ち、有事の際には実質的に本国艦隊と外洋艦隊に部隊を二分し、外洋艦隊を海外派遣担当艦隊中心に編成するという意味である。これにより、多種多様な事態にも対応できる事となろう。
FH020003 テロ、大量破壊兵器拡散という非対称型の戦いや、対米支援が任務に加えられようとも、海上自衛隊の任務は専守防衛が基本であり、アメリカが言うホームディフェンスを第一に任務を編成しなければならない。
 結論として、護衛艦隊と地方隊を統合し、日本周辺海域を作戦範囲に区分する。そして、シーレーン防衛やテロ対策任務、邦人救出の際には、新たにタスクフォースを編成し外洋艦隊として本国艦隊より切り離して運用する提案を行った。
 少々勝手ながら、海上自衛隊の一編成案を提示したが、現行の体制に比して、稼働率や作戦能力は向上しているはずである。
 大規模な改編でありながらも、今日の国際情勢は、こうした聖域なき構造改革が必要となっている、私はそう思うのである。

 HARUNA

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AFV部隊比較論 陸上自衛隊北方旅団/ストライカー旅団 ①

2005-12-15 22:47:42 | 先端軍事テクノロジー
■部隊比較
 AFV比較という考え方がある、90式戦車とK-1戦車、M-1A2戦車とT-80U戦車、どちらが優れているかという考え方だ。
FH010030 しかし、例えばアジェンジャー野戦防空システムとZSU-23シルカ自走高射機関砲を比較したとしよう。当然、専用兵器のシルカに軍配が上がることとなろう。M-109A6パラディン自走砲と155㍉GCT自走砲では、射程で優位にある。MLRSとスメルチ多連装ロケットを比較すればスメルチの方が射程は二倍である。
 では、何故、個々の性能で優れたこれらの装備を有するイラク軍はアメリカ軍に惨敗したのか、 即ち、個々の兵器の優劣やスペックで比較するだけではなく、部隊編成や作戦運用で比較する必要もあろう。
IMG_0401 さて、イラクやアフガニスタンへアメリカ陸軍が始めて創設した装輪装甲車主体の作戦単位であるストライカー旅団が活躍している。筆者が昨年夏期研修に行った外交と安全保障関係の研究所でも主任研究員の方がストライカーを日本でも導入するべきだといっていたし、一部の雑誌や論文では『日本でもストライカーを導入するべきだ』との論調が見られる。
では、わが国の陸上防衛という観点から、陸上自衛隊の北部方面隊に新しく編成された旅団(以下北方旅団)とアメリカ陸軍のストライカー旅団を、どちらが有用であるかについて比較したい。

■陸上自衛隊北方旅団
 北方旅団とは、北部方面隊隷下の第五旅団・第11旅団を示す便宜的な名称である。
IMG_0693 北部方面隊隷下の部隊は、冷戦時代においてソ連軍の大規模な着上陸侵攻に対処すべく、戦車や装甲車、自走火砲等を優先的に配備されてきた。冷戦終結後の1995年に、陸上自衛隊の戦車数が1200輌から900輌に、特科火砲が1000門から900門に削減された影響で、北部方面隊の第5・11師団、東部方面隊の第12師団、中部方面隊の第13師団が旅団へと縮小改編されたことは周知であろう。
 こうした中で、“沿岸配備旅団”、つまり機動打撃力を有する旅団として、改編された訳である。
 従って、広島の第13旅団は戦車数が中隊規模まで減少し、相馬原の第12旅団に至っては、戦車部隊そのものが解散している。
IMG_2578 一方で、第五・第11旅団は、戦車大隊が戦車隊となり、78輌から54輌に減退し、特科火砲も40輌程度まで減退したものと思われる。
 しかし、普通科連隊が三個中隊基幹編成に縮小されたことから、逆に一個普通科中隊あたりの戦車数は増加したこととなり、連隊戦闘団編成時の作戦能力は、強化されたと見ることが出来る。また、2004年に第五師団は旅団に改編されたが、師団HPによれば、同時に軽装甲機動車や96式装輪装甲車、そして90式戦車の配備が為されたとされる。結果、89式装甲戦闘車や96式自走迫撃砲は保有しないものの、全体的に装甲化され、機械化された編成となった訳だ。96式装輪装甲車に関しては一個普通科連隊に集中配備するのか、それとも各連隊の一個中隊程度を96式装輪装甲車によって装甲化するのかについては定かではないが、参考までに同じ北方師団の第二師団(旭川)は、隷下の第三普通科連隊(名寄)が96式装輪装甲車により完全装甲化されている。
00270028 96式装輪装甲車は年間30輌程度が調達されている。また軽装甲機動車は年間150~200輌程度が調達されており、年間900~1100名程度を装甲化できる計算となる。
 北方旅団は、54輌の戦車と40輌の自走榴弾砲を装備しているが、90式戦車は年間18輌程度から15輌へと調達数を下方修正していて、読売新聞や中日新聞の報道などでは数年内に90式戦車の調達が中止となる見込みである。従って、北部方面隊の戦車すべてを90式戦車で統一化させる事は困難であるとみられ、第二戦車連隊、第一戦車群、第五戦車大隊の順に一個中隊程度を先ず90式戦車で編成し、74式戦車との混成編成を採っている。
 特科火砲も、最新の99式自走榴弾砲の装備かが遅々として進まず、75式自走榴弾砲との混成運用が為されている。75式自走130㍉ロケット発射機も12輌が配備されているが、これはMLRSと代替されるという話は聞かない。他方、陸上自衛隊は面制圧火力の量的充実を図る観点からHIMARS装輪式ロケット発射機の導入を検討中といわれ、これが師団特科火力と採用されれば、特科火力の暫定的充実に寄与しよう。

(続く)

執筆:HARUNA
構図:ASUKA

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憲法改正に際して 徴兵制・志願制に関する議論

2005-12-14 23:49:41 | 防衛・安全保障
 自民党の新憲法案が提出され、与党である自民党と第二勢力を誇る民主党との安全保障や国家体制への政策方針において共通点が見られることから、いよいよ憲法改正論議が本格化している。
IMG_3858 憲法改正について、最も大きなテーマとなるのは『憲法九条 戦争放棄』に関する記述であろう。折りしも、米軍の世界規模での再編が進み、わが国は米国の『戦略展開拠点』に位置付けられている。
 戦略展開拠点に位置付けられたのはイギリスと日本だけであり、日米同盟がアメリカの世界戦略に占めるポテンシャルの大きさがここからも見ることが出来る。
 さて、こうした中でかつて革新勢力といわれた勢力は、盛んに憲法改正により『日本が戦争できる国』へとなることを警戒しているようだ。これに関する議論の中で大きなウェイトを占めているのが徴兵制に関する論議である。
 憲法改正と徴兵制を同一視する議論に対して、小生としては大きな疑問を感じざるを得ない。NATO諸国は、冷戦終結と同時に脅威対象が減退した為、徴兵制から志願制に移行している。ただ一国、ドイツだけが軍機構の専門職化による閉鎖化を警戒するという観点から、民主的コントロールを行うべく徴兵制を堅持しているが、これ以外は志願制への移行過渡期にある。
 アメリカでは、イラク戦争の長期化により志願制ではなく徴兵制への移行が一部保守系議員により提唱されているが、大きな流れとしては志願制を維持するようで、選挙においても徴兵制に関する議論よりは、倫理的問題などに論議が集中している。
IMG_0648 RMA(軍事分野における技術革命)が叫ばれて久しいが、かつて、日本における徴兵制といえば、入営し、小銃の扱い方や帝國軍兵士としての心得を会得すれば兵員として認められたが(当時は自動車運転技術も特殊技能とみなされ、一般に教育されていなかった)、今日では小銃も複雑化し、他に装甲車による展開や空中機動などの技能を後期教育として学ぶ必要があり、訓練だけで半年は掛かってしまう。
 そして何よりも、歩兵(普通科)という職種よりも、今日では後方支援や特科、機甲科、施設科、通信科など多岐にわたる専門分野と教育があり、一朝一夕に学べるものではない。
 加えて、小銃の単価は約30万円、戦闘防弾チョッキ50万円、ヘルメット10万円、迷彩2型戦闘服2万円、という装備をした隊員10名で、一台1000万円近い高機動車に乗車し、または四名で一両3500万円の軽装甲機動車に乗車し、一発220円の小銃弾を各員30発単位で消費し、一発一千万円近い対戦車誘導弾(01式)を発射する訳である。
IMG_0620 今日において、徒歩歩兵を充実させるよりは、自動車化、若しくは装甲化を充実させ、極力短いペースで、電子戦装備を近代化するほうが懸命である。
 一方で、徴兵制の利点としては、戦時動員に際して戦闘に関する経験者を大量に養成できる点があるが、イラク戦争に見られるように、専守防衛に徹すれば今日の戦争は短期決戦であり動員よりも、現役人員の充実と錬度向上のほうが理にかなっているように思える。
 感情論やイデオロギー的な思い込みではなく、科学的に徴兵制と志願制を検証する必要があるように思う。
 徴兵制に関する問題は、近年のわが国における論調では、軍事とかけ離れた面で議論されている。北大路機関としては今後、志願制/徴兵制を建設的な面から検証し、何らかの方式で発表してゆきたいと思う。

 HARUNA

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自衛隊退役装備品保存展示に関する提言

2005-12-13 23:56:45 | コラム
 陸上自衛隊の駐屯地や航空自衛隊の航空機にへ赴いた方は、恐らく一度は基地に入り口や資料館の隣あたりで展示されている退役装備をご覧になっただろう。
IMG_3346 駐屯地祭や航空祭という現用の最新鋭装備が並ぶ中で、いかにも古めかしい61式戦車やF-86戦闘機といった見た目にも古めかしい装備品は、ある種牧歌的な雰囲気をかもし出している。
 退役装備品は、展示に当たって、“広報効果”というものが当然考えられ、耐用年数を過ぎ、本来は廃棄物となるものを配置している訳だ。
 自衛隊や日本の航空史、戦車装備史などを知るうえで、保存展示装備は大きな意義を有しているが、広報効果のほうが重要視される。
 当然、自衛隊は軍事機構であると同時に、一種のお役所であるから、装備品を展示する上でも予算措置が必要となる。したがって、航空機や戦車などを展示するということは当然、相応の広報効果を目的として予算措置が為された筈である。
 その一方で、装備品は長年風雨に曝され、風化や経年劣化が進んでいる。廃棄された自動車などを河川敷やスクラップ向上で見られた方は、エナメル塗装でも意外に早く退色することに驚かれただろう。自衛隊の装備品は、民生車輌よりも塗色変更が頻繁に行われる為、退色も早いのである。また、錆などによる侵食も大きな問題である。
IMG_4091 こうして、最近は破損が著しい展示品については撤去が進んでいる。
 日常的に整備できる予算、若しくは屋根などの保存環境が整備されれば、展示品の保存も容易になろう。
 ここで考えるのは、保存装備の展示によって生まれる広報効果である。広報効果というようなものは算定が難しい、特に即物的な思考を有する日本人にはこうしたソフト的な論理は理解されにくい。従って、広報効果は過小評価されているのではないだろうか。
 戦車など、現用のものであれば砲塔内部に入る事は一般の人には中々機会がないし、航空機に関しても写真撮影はコックピットに関して制限があるし、触ることも航空祭では難しい。
 数値として現れないだけで、広報効果というものは大きいはずである。
FH030026 難しいかもしれないが、各種装備品を多くの駐屯地に展示させると同時に、方面隊や航空方面隊規模で保存する大型の広報館を設置することは難しいだろうか?少なくとも、広報効果意外に装備史を知る上では有意義であると考えるし、戦車などは動く程度の整備を行う予算を付与すれば、普通科連隊だけの駐屯地では戦車との共同訓練の研究に用いる事が出来るし、航空自衛隊でも展示航空機を外見だけでも整備しておけば、F-86でもF-104でも、対テロ訓練や消防訓練などにも用いる事が出来るはずだ。
 現在、朝霞、浜松と佐世保には広報館があるが、なによりも日本という国の広さを考えれば数が少ない。
 保存される退役装備に関しては、もう少し予算措置は為されてもいいのではなかろうか。
 また、考えるに、海上自衛隊の退役護衛艦を広報用に用いる事も出来ないものだろうか、護衛艦に関しては放置しておくだけでは経年劣化で沈没する可能性もある為、多少の整備予算が必要となるが、艦の広報効果は大きい。
 例えば、2008年ごろに退役が始まるヘリコプター護衛艦『はるな』などは、大型のヘリコプター格納庫を有し、広報に用いるスペースも大きい。
 広報について、今一度再考してみるのはどうであろうか。
 
 HARUNA

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AIP(非大気依存動力)潜水艦の展望

2005-12-09 12:00:56 | 先端軍事テクノロジー
 かなり前になるが、かわぐちかいじ氏の漫画『沈黙の艦隊』という作品があった。日本初の攻撃型原子力潜水艦が公試中に突如反乱を起こし、独立国“やまと”と宣言、追撃するアメリカ海軍やソ連海軍と戦う海洋潜水艦作品であった。
FH000013 この作品中に、反乱した潜水艦“やまと”を追う海上自衛隊の潜水艦“たつなみ”(おそらく“はるしお”型潜水艦)が登場するが、副長が『たつなみは台湾沖バタリカン海峡で待機せよ』との命令を受け、航海長が『20ノットで本日15時には到着します』との旨を伝えると、艦長の深町二佐が、『10ノットで良い、電池がもったいないからな』と応じる場面があった。
では、潜水艦というのは、電池(バッテリー)を100%充電した場合で、どの程度の航行が可能なのであろうか。
 実はこれが驚くほど短いのである。潜水艦の行動限界に関するデータは防衛機密である為、外国艦艇のデータから引用する。ドイツ海軍の輸出用潜水艦ベストセラーで、世界12カ国で52隻が運用されている209型潜水艦(水中排水量1200t)の場合、20ノットの最大戦速では1.5時間30マイルでバッテリーが上がってしまう。
 4.5ノットの低速時では89時間の潜航が可能となるが、これでは小型漁船にも抜かれてしまう。
 バッテリーの上がった潜水艦の出来る事は、浮上し、バッテリーを蓄電することであるが、浮上した際に対潜哨戒機や駆逐艦がいればそれまでとなる。
IMG_4239
 海上自衛隊の潜水艦は船体規模が大きいことからバッテリー容量も若干大きい可能性があるが、船体が大きい為航行に必要なエネルギーもそれだけ大きい為、209型のデータと大きく異なるものでは無いだろう。
いうまでもなく、冒頭に述べた深町艦長の決断は、恐らく潜望鏡を上げて見える水平線を越えたあたりでバッテリーが残量ゼロになってしまい、追尾する“やまと”を捕捉出来ても前に進むことが出来ず、非常に悔しい思いをすることとなる。
FH000005  突如、魚雷により奇襲をかけ、攻撃が終わるとそのまま離脱するという優雅なイメージを描いた映画『U-ボート』や『眼下の敵』を見ていると気付かないが、このように、潜水艦というのは航続距離が限定されており、海流を利用して少しでも速力を稼ぐという切ない反面を持っている。第二次世界大戦の終結後しばらくは潜水艦は潜航を出来るだけ避け、浮上航行を実施し、各国は、天敵である駆逐艦から少しでも距離を開けようと、潜水艦の潜航航続距離を少しでも延ばす努力を続け、今日に至っている。
 この問題を解決すべく開発されたのが、原子力潜水艦である。原子力という大気に依存しない動力により行動し、空気さえも海水を電気分解することで供給でき、最大戦速で長距離を行動できる為、ディーゼル機関を用いる潜水艦を可潜艦とすれば、潜水艦というに値するものであるといえた。
 しかしながら、原子力潜水艦にも問題点は存在する。ディーゼル方式の潜水艦であれば、航行時にはバッテリーにより推進する為、原子炉を止めることが出来ない原子力潜水艦に比して、隠密性に優れた点がある。
 IMG_4343 原子炉により動力を得る原子力潜水艦は、減速ギアにより動力をスクリューに伝達する方式を用いているが、どうしてもギアから生じる雑音が潜水艦にとっては命取りとなりかねない。これを速力によって補っているのであり、原子力潜水艦が万能であるという結論に至るわけではないのだ。このガタピシ音は哨戒機に発見される要因となりうる。
 だが、ディーゼル方式の潜水艦はレーヤー(海水の温度層、これにより音の伝達に変化が生じるため、これを利用して潜水艦は水上艦から回避をしたりする)や塩分濃度を巧く利用しない限り、航続距離に限界がある為水上戦闘艦から逃げることができない為、原子力潜水艦の速力の大きさが頼りとなる。特に海上の時化や波浪は水上戦闘艦の行動を大きく制約するが、海中を潜航する潜水艦には、関係の無い話となる。水上戦闘艦の長い航続力は、ディーゼル方式の潜水艦に対して覿面な威力を発揮する一方、原子力潜水艦に限ればその限りではないわけだ。特に原子力潜水艦にはロシアの「シエラⅠ級」や「ヴィクターⅢ級」、アメリカの『ロサンゼルス級』『ヴァージニア級』『シーウルフ級』、イギリスの「トラファルガー級」のように30ノット以上の高速性能を有するものもあり対水上艦を考えれば優位に立ったように感じる事が出来る。
 だが、速力に関しては上には上がいるものだ。
IMG_3206 P-3Cやアトランティック、S-2のような哨戒機の存在だ。特に海上自衛隊が運用するP-3C哨戒機は6600kmの航続距離と、620km/hという速度を誇り、潜水艦の行動範囲内にソノブイを投下し、音響により潜水艦を発見しようと飛行する。また、水上艦にとうさいされる哨戒ヘリコプターの存在も潜水艦には頭の痛い存在となる。少なくとも、騒音を撒き散らしていては現代の潜水艦ハンターから生き残ることは出来ない。こうした脅威が予測される場合、原子力潜水艦も原子炉を止めバッテリーにより速力を6ノット程度に落とし、航行するということだ。
 即ち、潜水艦の最重要事項は隠密性にあり、これは原子力・ディーゼル、ともに究極的な場合においては変わらないということである。
■非大気依存動力
 第二次世界大戦中から、ナチスドイツは潜水艦の充電時の欠点について解決を試み、せめて浮上時の発見だけでも回避しようと、シュノーケルの改良などの努力を続けていた。
 他方、非大気依存動力として、水素による燃料電池に早くから着目していたことで知られる。
 だが、水素は可燃物であり、浸透圧が非常に高い特性を有しており、密閉空間である潜水艦内で万一流出という事態を招けば、重大な事故を引き起こすことから実用化は慎重に進められた。日本海軍も液体水素を動力とするロケット戦闘機“秋水”を実用化した際、水素漏れを防ぐ為に陶器製の常滑焼を容器に用いるなどの工夫を必要としており、水素漏れによる事故もあったようだ。また、水素という特殊燃料を補給艦や洋上補給艦で輸送する際、まさかドラム缶に詰めるわけにも行かず、支援という観点からも問題を内包した案であった。
 しかしながら、金属技術の発展は日進月歩で、1980年代には液体水素の密封に満足のいく容器の開発に成功したようで、これにより原子力以外の非大気依存潜水艦が実用化されることとなった。
 ドイツで建造が進められている『212A型』潜水艦は、船体後半部の内殻と外殻の間にチョバムするかたちで、液体酸素と金属収蔵水素を収め、ジーメンス社製ポリマー電解質膜燃料電池により電力に変換し動力とするものだ。
 水上排水量は1450tと、206型潜水艦の450tに比して大きく増加したが、乗員は5名増加の27名に抑えられており、増加分の多くが燃料電池区画に費やされている事がわかる。
 燃料電池は、300kwの電力を発し、水中速力8ノットで二週間の連続航行を可能としている。これは、従来のディーゼル方式の潜水艦と比して格段の航続力の進歩である。8ノットで二週間の連続航行というと、潜航したまま日本列島縦断が可能であり、通常動力での可潜艦から潜水艦への昇華である。
 他方で、燃料電池の残量がゼロとなれば、結果的に従来型の潜水艦と同じ状態になってしまう為、作戦行動は二週間に限られ、これを増加させるのは補給艦による水素補給のシステムを確立させねばならない。
 ドイツ海軍は、“ベルリン級”補給艦を新しく配備開始しているが、同艦が水素補給能力を有するかについて明確な資料は無いが、もし、可能であるならば、補給装備について現行の日本の“ましゅう”型補給艦と外見的に著しい相違点は無い為、その後方支援は容易であるという結論に至る。
 しかし、水素補給の方式が困難であったとしても、作戦海域までは洋上航行、もしくは海流を用いた従来の方式で展開すればいいだけのことで、AIP潜水艦の性能や戦略的価値そのものを大きく減じるものでは無いという事は言えるだろう。
■日本のAIP潜水艦
 AIP潜水艦については、過酸化酸素水を分解し酸素・水素を生成し酸素により機関を稼動させるワルタータービンを開発したスウェーデンのコックルムス社、212型潜水艦を開発したドイツのジーメンス社が有名であるが、我が海上自衛隊も、潜水艦の航続距離向上の観点から、技術研究本部が中心となりAIP潜水艦の研究を展開していた。
IMG_4249 技術研究本部は、金属マグネシウムに海水を加えると高温と酸素を発する点を利用し機関に用いる実験を試みた、この実験は成功し、当時、『うずしお』型潜水艦に600tの金属燃料指揮燃料電池を搭載することで600時間の行動が可能となる計算であった。
 しかしながら、先進的過ぎる設計により実用化は諦められる結果となった。
 また、AIP潜水艦はその複雑な構造から建造コスト高騰という結果を招き、前述の212型潜水艦で価格は4億600万㌦と、1000t台の潜水艦では異例の高価格となった。ちなみに満載排水量3500tの『おやしお』型潜水艦の価格は450億円前後である。ここからAIP潜水艦の高価格が覗えよう。
 価格は高いものの、その実用性に大きな可能性を内包するAIP潜水艦は各国で大きく評価されており、スウェーデンの『ゴトランド級』潜水艦が1996年から3隻就役しており、ドイツの212型はドイツのみならずイタリア、ギリシャ等に7隻の輸出が決定している。
IMG_4291 この流れに対応すべく、海上自衛隊も、『おやしお型』潜水艦に続く新潜水艦はAIP方式を用いており、1980年代から研究を続けていたスウェーデンのワルタータービン方式を用いる4200t(水中排水量)級潜水艦の開発を進めており2009年に一番艦が就役、二番艦の予算も認可されている。コックルムス社製スターリング機関を動力とし、長い航続距離を有するとされており、指揮管制ターミナルの導入により高い戦闘能力を有しているとされる。
 潜水艦は、海中を行動するというこの上ない隠密性を最大の利点とし、奇襲戦法により空母や補給艦、揚陸艦隊を攻撃する潜水艦の戦略的価値は極めて大で、その戦略性ゆえに潜水艦の輸出は大量破壊兵器に準じた慎重な取り扱いが為されている。日本は世界で数少ない潜水艦の国産能力を有する国であり、この技術ポテンシャルは大きい。
 他方、潜水艦の最も戦略性を活かした運用は潜水艦発射弾道弾(SLBM)の運用を前提とする戦略ミサイル原潜(SLBN)であり、この迎撃も、通常動力潜水艦の重要な任務とされている。伸びたとはいえ、やはりまだ航続距離に限界のあるAIP潜水艦にどの程度の任務が期待できるかは未知数ではあるが、戦略ミサイル原潜の迎撃や殲滅能力の拡大を大きく評価したい。
 また、潜水艦本来の奇襲性を活かした攻撃任務の可能性を大きく広げたのは紛れも無い事実であり、時代はAIP潜水艦の時代へと過渡期にあると将来は評価されよう、その先進性に逸早く着目した日本始め各国海軍の潜水艦部隊による健闘を祈りつつ、末尾に換えたい。

北大路機関広報:本論はJNSRが本年一月に作成した“先端軍事技術研究会”定例会用資料を一部改訂したものです。
 執筆:HARUNA
 構図:ASUKA

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開戦記念日 大陸国家から海洋国家へ模索すべし

2005-12-08 23:50:24 | 国際・政治

 12月8日は、帝國海軍が第二次世界大戦に制式に参戦した真珠湾攻撃・マレー半島上陸の日である。
 同時に、小生の誕生日である。
 閑話休題、開戦記念日ということでわが国の長期的対外政策、即ち国家戦略について少々述べたい。
 わが国は、兵法においてドイツからの影響も多々あったが、憲法体制や統治機構などに関してもドイツからのものが大きく、地政学分野もドイツからの影響が大きかった。
 国家戦略を画定するには、第一に海洋国家的か大陸国家的かの区分が必要であるが、海洋国家は海洋交通・貿易・物資交流の自由を考えこれを重視する戦略を立てる。対して大陸国家は閉鎖的な自給自足(Autarky)と生存圏としての一定領域の占拠を考える。
 こうした点から、海洋国家的類型にあたるのはアメリカ・イギリスであり、大陸国家的には欧州連合・ロシア・中国が区分される。しかし、政治的に見て日本のかつての食糧管理法(廃止)や輸入食糧への関税障壁に見られる食糧自給への拘り、そして実態はどうあれ憲法に認められた専守防衛という防衛戦略は多分に大陸国家的発想であり、大陸国家を矮小化した“小陸国家”という様相である。
 一方、経済的には農業を除き貿易立国としての地位を有し、海洋交通・物資交流により経済を運営する日本は海洋国家的であり、大平内閣の総合安全保障理論、鈴木内閣の1000浬シーレーン防衛構想以降部分的に政治の海洋国家化は進み、食糧に関する関税障壁はWTOとの交渉を介して部分開放が徐々に進展し、専守防衛に関しても憲法の範囲内でありながらも国連平和維持活動・緊急人道支援・テロとの戦いとして海洋国家へ転換しつつある。
 日本が小陸国家を志向した最大の要因は、戦前ではドイツ地政学理論に基づく大陸進出(満州国と朝鮮半島を緩衝地帯として自給自足の生存権確立を目指した)、戦後では戦中の飢餓作戦によるシーレーン途絶の教訓からといえるが、前者に関しては明治維新からの軍隊の編成体系を介したドイツとの交流、後者に関しては元海軍参謀大井篤氏の著書『海上護衛戦』に戦略の失敗としてシーレーン防衛の軽視が挙げられており、現代では杞憂である。食糧確保に関してはリスク分散により脆弱性を軽減でき、必ずしも小陸国家を志向する必然性は無い。
 従って、国家戦略は“海洋交通・貿易・物資交流の自由”を第一に画定されるべきである。即ち、アルフレット・マハンが『海上権力行使論』に述べたような大海軍を目指す政治的安全保障論的発想が必要となろう。
 近年、漸く憲法改正に関する建設的議論が為されるようになったが、国家戦略画定に関しても、今一度振り返る必要があろう。

 HARUNA

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方面隊直轄部隊が有する日本型緊急展開部隊構想

2005-12-07 18:24:49 | 防衛・安全保障
 先日、中国の大阪総領事講演会に出席する機会を得、改めて日中の基本的思考体系の隔たりを痛感させられた。
 さて、日中問題に関して最大のネックとなるのは東シナ海資源開発を通じた島嶼部防衛であろう。島嶼部の一部でも占領される事態となれば、わが国排他的経済水域は否応無く縮減され、海洋国家日本にとりこの問題は死活的である。
IMG_0884 しかしながら、わが国の領海警備については北海道北部の沿岸監視隊や対馬警備隊、第一混成団など語句限られた部隊しかなく、その展開能力はヘリコプターの不足や艦艇の能力から非常に限られている。
 海上自衛隊は大型輸送艦三隻を有し、必要となれば逆上陸により島嶼を奪取する事は容易であるが、コリンズパウエルが湾岸戦争後に述べたように『マスメディアを制さなければ戦争に勝ったという事にはならない』というように、我が方が“係争地”に上陸し、仮に形ばかりのものであっても守備隊を駆逐すれば国際世論の反応は必ずしも有利となる保障は無く、中国はここぞとばかりにマスメディアを通じてメディア攻勢をかけるであろう。
IMG_3954 一方で、予防的にわが国が守備隊を常駐させれば、メディア戦略は我に有利となる事は疑いなく、加えて01式軽対戦車弾のような携帯性に優れ高度な性能を有する火器は抑止のみならず限定侵略の撃退にも期待が出来、仮に少数でも緊急展開部隊を創設し防衛を行うことは検討に値する命題だ。
00270030 さて、島嶼部防衛だけではなく、北朝鮮拉致事案が分析されるにつれ、日本海沿岸海域は文字通りゲリラコマンドの浸透を受けやすい事が今更ながら確認され今に至っている。その一方で、日本海沿岸の陸上自衛隊駐屯地は上越の第2普通科連隊、新発田の第30普通科連隊、金沢の第14普通科連隊、米子の第8普通科連隊と長大な海岸線に比して限られており、固有のヘリコプターを有しない普通科連隊としては頭の痛い問題である。
 対して、たとえ少数の普通科部隊であっても観測機器や通信機を駆使しゲリラコマンド浸透地域に対して監視拠点を隠密裏に構成し、その動静を見守る事は秘匿性を唯一の武器とする敵には大きな脅威であり、特にその意義は大きい。
IMG_3822 確かに近年では師団飛行隊にUH-1Jなどの多用途ヘリコプターが配属され、従来の師団であっても限定的ながら空中機動能力を有するに至ったが、その数量は限定的で、師団飛行隊の総力を挙げたとしても二個小銃小隊の輸送が限度であり、加えて師団飛行隊は師団長直轄であり災害派遣や急患輸送に備え全国に広範に配備されており、数量的には不充分である事は否めない。
00120025 新潟や小松に展開する航空自衛隊の救難隊が運用する救難ヘリコプターに近傍の普通科部隊が搭乗し空中機動を支援し緊急展開を行う事も一案であるが、救難隊には航空救難という第一任務があり、恒常的に空中機動の訓練を行う余裕があるかに関しては疑わしい面も多い。
00280014 ここで考えられるのが現行の第12旅団の空中機動部隊を拡充し、本格的空中機動旅団に昇華させる提案だが、編成上は東部方面隊の隷下にあり、間もなく新編される中央即応集団に配属されるとの話は聞かないし、何よりも本州島だけでもその面積は広大で、海岸線も長くUH-1Jといった多用途ヘリでも途中給油無しに展開は不可能である。
 従って、方面隊の方面ヘリコプター隊の利用という案が最後に浮かぶ。
IMG_0286 方面ヘリコプター隊とは何か?
 方面ヘリコプター隊とは、多用途ヘリコプター約20機と若干の観測ヘリコプターを有し、有事の際には第一線師団に配属され、その空中機動能力を補完する用途で編成されている。また、各方面隊には一個対戦車ヘリ隊が編成されており、西部方面隊のようにCH-47JA大型ヘリコプターが配備されている事例もある。
 その総力は、ヘリコプター40機にも達し、縮小編成の普通科中隊を同時に空輸可能である。
IMG_3643 しかしながら、課題も存在する。西部方面隊を除き、編成上方面隊直轄の普通科部隊は存在せず、緊急展開しようにも普通科連隊駐屯地から部隊の到着を待たなければならないという点で、加えてヘリボーンの練度も部隊ごとでまちまちであり、即応性や実戦性双方から問題があるのが現状である。
 当然、各方面隊に方面普通科連隊を新設し、方面ヘリコプター隊として空中機動旅団化するという発想に結びつくが、予算面や人的配置から五個方面隊全てが直轄の普通科連隊を新設するのは一朝一夕に出来るものではない。
IMG_2429 従って、方面普通科連隊を新設するまでの間の、繋ぎとして何らかの措置が必要となる。
 こうして提案したいのが、方面隊隷下にヘリボーンの戦術や展開要領を一般師団に対して教育支援する空中機動教導隊の新設である。多用途ヘリの数量から一個普通科中隊の空中機動が限度である為、教導隊は最低限の一個中隊で対応する事となる。不足分としては必要に応じて教育中の普通科部隊を参加させるしかないが、現実的には後期教育としての教導部隊を方面普通科部隊新設までの繋ぎとするのが限度であろう。
IMG_3705 ゲリラコマンド対策・島嶼部防衛の一案として空中機動旅団を方面隊直轄として新編する提案を行い、現実的にそれまでの繋ぎとして後期教育を担当する空中機動教導隊の新編を提案した。何分、本格武力侵攻よりも現実的な脅威であることは確かで、何らかの対応は必要であると考える。
FH000032 なお、本格的な沖縄県・鹿児島県の島嶼部防衛に関しては、空中機動旅団だけでは不充分であり、第一混成団の改編分散配置や地方隊の位置づけ、ミサイル艇や高速輸送艇、特殊部隊の運用などで更に複合的なアプローチが必要であり、これに関してはまたの機会に譲りたい。

 HARUNA

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開発中の新装備 “近接戦闘車”に関する一考察

2005-12-02 04:49:36 | 防衛・安全保障
 現在陸上自衛隊では、主力装甲車として軽装甲機動車の配備が急速に進展している。
IMG_0318 年間100輌以上の調達が為される軽装甲機動車は高機動車と同じように大量配備が為され、全国の普通科部隊装甲化を迅速に進展させている。乗車戦闘を第一に開発された軽装甲機動車は、5.56㍉機銃MINIMIや01式軽対戦車誘導弾を駆使し、降車戦闘を主とする高機動車と連携する事により大きな効果が期待できる。
IMG_0758 しかしながら、防衛大綱改訂に伴い戦車定数が削減される中で、普通科の火力戦闘を補完する装備として、現在技術研究本部を中心として“近接戦闘車”というものが開発されている。
 さて、現段階では全く不透明なこの新装備を、様々な公開情報から情報の断片を摘出複合化し、出来る限り真相に迫ってみたい。
 まず、開発開始の本格化は18年度(試作開発開始)、重量は15~20㌧、ファミリー化によりコストダウンを目指す、ということだ。
FH040021 自衛隊は発足以来、ボフォースやエリコン、ラインメタル(試製器材用)というように長らく機関砲に関しては輸入に頼ってきたが、現在、次期戦闘車用として国産の80口径50㍉機関砲が開発中である。テレスコープ弾(薬莢に弾頭が内蔵されており体積などが縮小、携帯が容易になっている)機関砲であり、研究試作では初速1100㍍/秒、発射速度毎分313発、外部駆動部分や砲架を除く重量は3.35㌧とされている。
FH040028 さて、この将来戦闘車たる近接戦闘車とは、87式自走高射機関砲や89式装甲戦闘車の後継装備として開発が進められ、現在では更に広範に自走榴弾砲・人員輸送車・対戦車自走砲・指揮通信車・偵察警戒車・弾薬運搬車としてファミリー化が目指されている。現段階で主力となる近接戦闘車の搭載機関砲としては同時にボフォース社製70口径40㍉機関砲なども想定されており、重量の関係から国産の50㍉機関砲ではなくボフォースの40㍉機関砲を支持する向きも大きいと聞く。現段階では機関砲は地上設置により実験が進められているというが、今後は装輪車において運用試験が為されるという。他方、陸上自衛隊内部では不整地突破性能に優れた装軌式を推す声も依然として高く、装軌式か装輪式かは、ほぼ装輪式で決定しつつあるが、装軌式装備の開発研究も継続される事となろう。
FH040026 現代の装輪式車輌は制振性能に優れ、調達コスト面や運用コスト、稼働率に関して装輪装甲車が優れている事が証明されている。
 ここで一つ装軌式装甲車を弁護する意見を述べれば、イラク戦争を見る限り、砂漠地帯という難所にあっても装軌式は進軍を続け、クウェート国境から600㌔以上離れたバクダッドに展開している。戦線に向かう戦略機動能力においては確かに路上機動が第一となる以上、装軌式は装輪装甲車には敵わないものの、戦線から一たび攻撃前進に移ったならば装甲防御力や火力に勝る装軌式装甲車は反撃を想定しつつ攻撃前進が可能であるが装甲脆弱性の高い装輪装甲車では反撃を警戒しつつの前進となる為その路上機動能力は著しく制限される。
 また戦略機動性というものは、特に日本海など道路が制限される地域では、高速道路高架部分のような非正規戦に脆弱性を曝している為、逆に機動性を損なう可能性があり、この場合はLoLo船や貨物船などによる海上輸送のほうが戦略機動能力は大きい事が挙げられる。
FH010025 対戦車自走砲であるが、これは戦車戦力の補完というよりも60式自走無反動砲のようなものを想定していると考えてよい、イギリスのスコーピオン軽戦車やフランスのAMX-10のような火力支援に用いる装備品が陸上自衛隊装備体系には欠如しており、その必要性からということであろう。火力支援任務にはコスト面から火砲が誘導弾よりも優れており同時に携行弾数も多い。これに国産の大口径機関砲が充当されるか、若しくは120㍉低圧砲が採用されるかは未知数である。
FH020004 こうしてみると、徹底したファミリー化という点でアメリカのFCS(将来戦闘車輌)構想を彷彿させるが、自走榴弾砲というと果たして15~20㌧という車体に52口径155㍉榴弾砲が搭載できるかが疑問となる。背負い式であれば39口径155㍉の現用FH-70榴弾砲が搭載可能にも思えるが日本自走砲の特徴である自動装填装置が搭載できるかは疑問である。重装輪回収車のような大型車体にスウェーデンのA25Cトラック車載方式やフランスのカエサルのように車載する方式が現実的ではないだろうか、少なくとも装輪装甲車の車体に搭載すればチェコのズザナ155㍉自走砲(28㌧)、南アフリカのG6ライノ(47㌧)のように大幅な重量超過となる事は否めない。
IMG_2521 また、偵察警戒車にしても威力偵察を行うには火力が必要であるものの、さすがに車体が大きすぎるのではないかといえる。対戦車火力の発達に伴い、威力偵察は命取りとなりうるため、各国はオランダのフェネク、スイスのイーグル、トルコのアセルサンのように隠密を目的とした斥候車に移行しており、C4I性能が優れた米軍では戦車部隊が発見した情報をデータリンクにより共有している。結果的に、斥候員を多数乗車させる大型の装甲戦闘車を偵察に当てるという方式もありうるかもしれないが、軽装甲機動車を元にした偵察車の開発の方が現実的に思われる。
IMG_0833 加えて、自走高射機関砲を挙げると、機関砲と火器管制装置を同一車体に搭載すれば、重量もさることながら容積も必然的に大きくなり、果たして搭載できるかは疑わしい、前述のように重装輪回収車をベースに装甲トラックを開発し後部に搭載する方式の方が自走高射機関砲としては有利であろう。キャビンだけの装甲化であればそれ程予算を必要としないし、03式中距離地対空誘導弾や重装輪回収車とのファミリーも構成できる。無論、戦車に随伴するには八輪式でも不整地突破能力に支障を来たす事は言うまでも無く、装軌式ベース車体に搭載する方式が模索されてしかるべきと考える。つまりはハイローミックスの必要性である。
IMG_0174 さて、このようにして展望を俯瞰したかぎりでは、近接戦闘車に関しては未知数ながらも思い切りすぎたファミリー化が大きな弊害となる可能性を有しているという事だ、人員輸送車や指揮通信車、NBC偵察車、弾薬運搬車(多用途装甲輸送車)のファミリー化に加え機動砲(対戦車自走砲)、自走迫撃砲、対戦車ミサイル運搬車の範囲であればファミリー化が期待できるものの、これ以上の範囲では逆に運用に支障を来たすものではないかと思う、何故なら根本的に用途が異なるからである。
IMG_3620 何が何でもファミリー化が良いという訳ではない、現行のC-X(次期輸送機)とP-X(次期哨戒機)のように可能な部分は共通化する(操縦機器、エンジン、タイヤ)という以上には現実的に不可能であると考える訳だ。技術者はNOと言う事を忘れてはならない、そして共通化を叫びすぎ、失敗した事例は枚挙に暇がないということも忘れてはならない。
 火力支援には効果を期待したいものの、無理をし過ぎることなく、“使える装備”となる事を心から期待したい。

 HARUNA

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悲劇の国産擲弾銃 日本装備開発システムの問題点

2005-12-01 13:56:43 | 防衛・安全保障
 某駐屯地の資料館に“それ”はあった、第二次大戦中の英国製対戦車火器PIATにも似たその展示品は、試製てき弾銃と銘打たれていた。これが“あの”擲弾銃か、思わず夢中でシャッターを切った。
 さて、冷戦時代において、陸上自衛隊の最重要課題は、北海道北部、石狩湾、小樽方面、若しくは新潟県など日本のいずれかに上陸してくるであろうソ連軍機械化部隊を如何に撃退するかであった。
00280026 機甲戦力は、脅威正面とみられた北海道に集中されていたが、航空優勢確保に失敗すれば機甲部隊の戦略機動が制限される事から戦域的に戦力が集中できない地域は当然生まれ、一点を鉄槌のピストンのように往復して損害を省みず撃砕するという過飽和戦術を用いるソ連軍に対して苦戦は免れない点があり、特に戦車と共に前進するBMP-1やBMP-2、BTR-80といった装甲車に乗車する機械化歩兵(自動車化狙撃兵)の脅威も侮りがたいものであった。
IMG_0623 陸上自衛隊は1970年代当時14個の普通科連隊を配置し北海道防衛に当たっていた、対して戦車連隊(群)は三個、戦車大隊は四個、特科連隊は七個であった為、戦力的な主力はやはり普通科であった。
 しかしながら、普通科部隊における重火力とは、107㍉重迫撃砲、81㍉迫撃砲で対戦車火力として89㍉ロケット発射器と少数の106㍉無反動砲だけであった。特に迫撃砲や無反動砲は専門の中隊・小隊規模で運用されており、第一線の普通科火力は89㍉ロケット発射器だけであった。この通称バズーカとよばれる対戦車火器は、T-34に歯が立たなかったという朝鮮戦争時代の2.35inバズーカよりは強力なものであったが、T-55や当時主力となっていたT-62といったソ連製主力戦車の正面装甲を貫徹することはとても不可能で、50㍍まで肉薄し、キャタピラーを狙うという運用方法が為されていた。
IMG_4014 さて、89㍉ロケット発射器は発射時に後方爆風が噴出するという問題点がある。これを解決するべく開発されたのが国産擲弾銃(写真)である。
 軍事アナリストの小川和久氏の著書『戦艦ミズーリの長い影』によれば、開発には陸上開発官として61式戦車、74式戦車の開発にイニシアティヴをとったことで知られる近藤清秀氏があたった。擲弾銃の概念というのは小銃擲弾として小銃の先端に擲弾を装着し空砲により発射するという方式が第一次世界大戦から用いられ、陸上自衛隊でも小銃擲弾として運用されているが、初速が著しく遅く空気抵抗も大きく、照準方法が曖昧である事から(発射ガスが顔に掛からない様に射手は標的方向を直視せず、後方の要員が口頭で角度修正をするというもの)、実用性は著しく低いといわれる。
 国産擲弾銃は口径66㍉、威力は40㍉擲弾から推測すると破片半径は8~12㍍、手榴弾に匹敵する威力が期待できた。射程は形状から推測する事は困難であるが、米軍の40㍉擲弾を目指し開発されたということで400㍍程であろう。発射実験は富士で行われ、仮に射程が短かったとしても手榴弾と他の火力とのギャップを補うものがなく、これが開発されるということの意義は大きかった。
 しかし、装填方法が複雑で(装填が難しいというあたりが第二次大戦中のイギリス製対戦車火器PIATとも似ているが、PIATは発射方式がスプリングという点で異なった)、20%ほどは高い命中精度を記録するのだが、80%は変則的な命中精度しか記録できず、技術研究本部では開発継続路線と開発中止路線に分かれた。
IMG_4009 技術研究本部25年史によれば、1972~74年にかけて『てき弾銃及び対戦車用弾薬を開発する為の技術的資料を得る』とあり、技術開発件一覧では陸上開発案の名で1972年から終了予定は1979年といわれている(資料の発行は1977年であるため)。
 日産自動車の航空宇宙部門が開発を請け負ったあたりから命中精度は著しく向上し、80%に迫るものとなった。対戦車用弾薬を期待していたことからもわかるように地域制圧だけではなく限定的な対戦車戦闘にも用いるものであった。66㍉という口径である、小銃班に各一門配備させれば降車戦闘に移る機械化歩兵を無力化することや、戦車の照準を妨害し、機能低下を期待することも出来たし、小銃小隊が一斉に発射すれば地域制圧にも期待できる装備であった。
IMG_4311 しかし、この国産擲弾銃は内局により開発が中止させられる。実験装置が擲弾銃の形状をしていた事で研究所が製品を開発するとは何事か、と激怒し開発を中止させたという。
 言わずもがな、発射は射手が受ける風圧や気圧変化、命中精度向上に必要な砲身口径、初速、反動相殺の為の重量などが重要になる為、必然的に発射機の形状をしていた。外見は銃でもあくまで研究用の装置、と反発したが受け入れられず、基礎研究が不充分なまま製品開発に移行し、曖昧な要求性能の下で開発は難航、開発は中止となった。
 実は開発に至る前、若しくは開発したものの要求性能が曖昧であった為、73式装甲車機関砲搭載型やT-1B練習機、ちくご型護衛艦など、結局ものにならなかった、若しくは現場が運用に大変苦労したという装備品は無数に存在する。また、現場不在の開発の為に実戦性能を損なった装備品などは多い、81式短SAMの点火コネクターや戦車に搭載された後ろを狙えない車長用機銃などがそうである。
 幸いというべきだろうか、1980年代より84㍉無反動砲の配備が開始され、重量が大きく後方爆風も大きいものの、射程が大きく延伸し、装甲貫徹力も著しく向上したばかりか、HE弾の他、照明弾や煙幕など各種弾薬が使用でき、対戦車戦闘、地域制圧、拠点撃破も可能な新装備により、普通科の火力は大きく向上した。
00290022 ここで、国産擲弾銃開発失敗の深層分析を行いたい。
 第一に、基礎研究への投資が不充分である点だ、財務省(当時大蔵省)、会計検査院の審査査定により、即物的な研究開発は認められるものの、ソフト開発分野では大きく立ち遅れざるを得ず、また装備評価施設や実験場の整備も不充分であり、これの整備行わないままに装備品開発を行う事から稚拙なミスが多くなる事、そして開発での失敗は左遷の対象となる事から失敗に関するデータは即座に抹消されるという問題がある。
FH000023 では、装備開発に関する問題は、今日どうなったか、最後に記述したい。
 防衛庁内局の藤島正之氏は、その著書『防衛にかけたロマン』において、SH-60Jの対潜戦闘ソフトの開発にあまりにも予算がかかり、予算担当者であった藤島氏が直接尋ねたところ、とにかく見て欲しいといわれ館山からSH-60J試作機に搭乗し対潜戦闘の様子を視察、ソフトウェア開発の重要性を強く知ったという。
 このようにして、1980年代後半からまだまだ先進国の中では最低レベルではあるもののソフトウェア開発が重視されるよう改善されつつある。
IMG_5040 また、ソフトウェア開発の重要性が更に認識されたのは、日米共同開発の次期支援戦闘機開発計画FSX(現F-2)の開発において、米国側から操縦に不可欠なフライバイワイアのソースコード提供が拒否された事も大きな影響を及ぼした事は想像に難くない。
 その一方で、次期レーダーに関する評価施設や由良の電磁気測定所などが少しづつ整備されてはいるものの、未だ不充分であるという事は確かで、絶え間ない研究開発への投資が必要である、こうした認識への理解が再び欠如した時、この悲劇の国産擲弾銃と同じ状況が、再現されるであろう。

 HARUNA

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