■マドリードNATO首脳会談
NATO北欧拡大についてトルコが土壇場で賛同に回るとは思わず久々に驚かされました。
トルコがスウェーデンとフィンランドのNATO加盟へ賛同する姿勢を示しました、これは北欧両国の加盟申請の際にNATO加盟国で唯一反対していた姿勢を一転させたもので、非常に驚かされました。具体的に両国のNATO加盟の時期が示された訳ではありません、またNATO加盟には様々な制度や装備の改編が必要で時間は掛かりますが、可能となった。
会談はフィンランドのニーニスト大統領、スウェーデンのアンデション首相、トルコのエルドアン大統領が出席、北欧両国が、トルコ国内において武装闘争を展開しているPKKクルド労働者党について、トルコやEUとアメリカがテロ組織に指定しているが北欧二カ国は指定していない為、NATO加盟に反対する姿勢を示していました、それが一転します。
トルコ政府によれば、トルコ政府が求めるテロ対策政策をスウェーデンとフィンランドが容認、容疑者引き渡しについては双方可罰の問題から即座には行えないとしていますが、トルコ政府の要求が大きく通ったかたちです。NATO加盟は加盟国の全会一致が必要であり、唯一反対したトルコとの両国の合意はNATO北欧拡大を決定的に進めたといえます。
スウェーデンとフィンランドの両国がNATO加盟を事実上現実的に可能となった点について、大きな意味があります。これまではバルト海と大西洋を結ぶエーレスランド海峡やスカゲラク海峡などはスウェーデンが中立政策を維持する限り、NATOの域外となる海域が存在していましたが、両国のNATO加盟によりNATOの勢力圏航行が必須となります。
スウェーデンはバルト海中央部にゴトランド島が立地し、現在はスウェーデンは武装中立政策を維持していますが、ここもNATOの勢力圏となり、またフィンランドにはロシアとの間で1000km以上の陸上国境が接し、フィンランドはNATO軍を当面配置しないとしていますが、フィンランド軍がNATO指定部隊となればロシアにとり圧力となるでしょう。
トルコとの合意、しかし試金石となるのはトルコが両国へ“テロ容疑者33名引き渡し要求”を行ったことです。これはトルコのベギルボズダー法相が両国政府へテロ容疑者引き渡しを要求したとトルコの民放NTVの番組で述べた事にあります。今回要求したのはPKKクルド労働者党と2016年トルコクーデター未遂事件の容疑者に関する引き渡しです。
PKKクルド労働者党はEU欧州連合とアメリカ政府もテロ組織に指定していますが、今回、スウェーデンから21名とフィンランドから12名の引き渡しを求めることとなります。これはNATO加盟に関してトルコとの間での“武器輸出やエロ対策などトルコの懸念に対する覚書”として北欧二カ国と共に開かれた会談に際して署名された覚書が根拠となります。
マドリードでのNATO首脳会談に先んじて、トルコとスウェーデン及びフィンランドの政府間会談が行われ、トルコが求めたテロ対策政策に北欧両国が譲歩したかたちですが、もっとも特筆すべき点は、当初のトルコが示したテロ対策は、トルコとロシアの露土戦争後のセーヴル条約等の関係から別の思惑が在ったと考えられたのが実は杞憂だった点です。
トルコとロシアの関係は冷戦時代には陸上国境を接し、現在は黒海を挟んだ隣国です。この為に北欧二カ国の加盟申請に否定的な姿勢を示したのは、テロ対策は口実で目的は過度にロシアを刺激しない施策を行ったのだという穿った見方も成り立ったのですが、実際にはテロ対策だけが目的であり、NATOのロシア強硬という点での一致は果たされた構図だ。
在欧米軍は大幅に増強されており、欧州における米軍部隊はロシア侵攻後の2022年3月には、ドイツに3万8500名、イタリアに1万1500名、イギリスに1万1000名、ポーランドに1万0500名、ノルウェーに3000名、ルーマニアに2300名、スペインに2000名、トルコに2000名、ラトビアに1600名、スロバキアに1500名、ベルギーに1000名が。
バイデン大統領は在欧米軍について更に増強する姿勢を示しており、スペインに派遣しているイージス艦を4隻から6隻へ増強し、イギリスへの戦闘機前方展開を現在のF-15E戦闘爆撃機に加え第五世代戦闘機であるF-35戦闘機の前方展開を決定、また、ポーランドへ在欧米軍の常設司令部を配置するなどNATOの要請に応える施策を相次ぎ発表しています。
欧州への米軍増強は、冷戦時代以降一貫して削減されていた在欧米軍の再構築、冷戦時代でいう“リフォージャー”“リターンフォージャーマニイ”といえる規模のものですが、同時にNATOはアメリカの防衛負担とともに欧州加盟国への防衛負担の増額も求めており、冷戦後とテロとの戦いにより縮小軽武装化した欧州各国軍は軍の再編を求められる構図です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
NATO北欧拡大についてトルコが土壇場で賛同に回るとは思わず久々に驚かされました。
トルコがスウェーデンとフィンランドのNATO加盟へ賛同する姿勢を示しました、これは北欧両国の加盟申請の際にNATO加盟国で唯一反対していた姿勢を一転させたもので、非常に驚かされました。具体的に両国のNATO加盟の時期が示された訳ではありません、またNATO加盟には様々な制度や装備の改編が必要で時間は掛かりますが、可能となった。
会談はフィンランドのニーニスト大統領、スウェーデンのアンデション首相、トルコのエルドアン大統領が出席、北欧両国が、トルコ国内において武装闘争を展開しているPKKクルド労働者党について、トルコやEUとアメリカがテロ組織に指定しているが北欧二カ国は指定していない為、NATO加盟に反対する姿勢を示していました、それが一転します。
トルコ政府によれば、トルコ政府が求めるテロ対策政策をスウェーデンとフィンランドが容認、容疑者引き渡しについては双方可罰の問題から即座には行えないとしていますが、トルコ政府の要求が大きく通ったかたちです。NATO加盟は加盟国の全会一致が必要であり、唯一反対したトルコとの両国の合意はNATO北欧拡大を決定的に進めたといえます。
スウェーデンとフィンランドの両国がNATO加盟を事実上現実的に可能となった点について、大きな意味があります。これまではバルト海と大西洋を結ぶエーレスランド海峡やスカゲラク海峡などはスウェーデンが中立政策を維持する限り、NATOの域外となる海域が存在していましたが、両国のNATO加盟によりNATOの勢力圏航行が必須となります。
スウェーデンはバルト海中央部にゴトランド島が立地し、現在はスウェーデンは武装中立政策を維持していますが、ここもNATOの勢力圏となり、またフィンランドにはロシアとの間で1000km以上の陸上国境が接し、フィンランドはNATO軍を当面配置しないとしていますが、フィンランド軍がNATO指定部隊となればロシアにとり圧力となるでしょう。
トルコとの合意、しかし試金石となるのはトルコが両国へ“テロ容疑者33名引き渡し要求”を行ったことです。これはトルコのベギルボズダー法相が両国政府へテロ容疑者引き渡しを要求したとトルコの民放NTVの番組で述べた事にあります。今回要求したのはPKKクルド労働者党と2016年トルコクーデター未遂事件の容疑者に関する引き渡しです。
PKKクルド労働者党はEU欧州連合とアメリカ政府もテロ組織に指定していますが、今回、スウェーデンから21名とフィンランドから12名の引き渡しを求めることとなります。これはNATO加盟に関してトルコとの間での“武器輸出やエロ対策などトルコの懸念に対する覚書”として北欧二カ国と共に開かれた会談に際して署名された覚書が根拠となります。
マドリードでのNATO首脳会談に先んじて、トルコとスウェーデン及びフィンランドの政府間会談が行われ、トルコが求めたテロ対策政策に北欧両国が譲歩したかたちですが、もっとも特筆すべき点は、当初のトルコが示したテロ対策は、トルコとロシアの露土戦争後のセーヴル条約等の関係から別の思惑が在ったと考えられたのが実は杞憂だった点です。
トルコとロシアの関係は冷戦時代には陸上国境を接し、現在は黒海を挟んだ隣国です。この為に北欧二カ国の加盟申請に否定的な姿勢を示したのは、テロ対策は口実で目的は過度にロシアを刺激しない施策を行ったのだという穿った見方も成り立ったのですが、実際にはテロ対策だけが目的であり、NATOのロシア強硬という点での一致は果たされた構図だ。
在欧米軍は大幅に増強されており、欧州における米軍部隊はロシア侵攻後の2022年3月には、ドイツに3万8500名、イタリアに1万1500名、イギリスに1万1000名、ポーランドに1万0500名、ノルウェーに3000名、ルーマニアに2300名、スペインに2000名、トルコに2000名、ラトビアに1600名、スロバキアに1500名、ベルギーに1000名が。
バイデン大統領は在欧米軍について更に増強する姿勢を示しており、スペインに派遣しているイージス艦を4隻から6隻へ増強し、イギリスへの戦闘機前方展開を現在のF-15E戦闘爆撃機に加え第五世代戦闘機であるF-35戦闘機の前方展開を決定、また、ポーランドへ在欧米軍の常設司令部を配置するなどNATOの要請に応える施策を相次ぎ発表しています。
欧州への米軍増強は、冷戦時代以降一貫して削減されていた在欧米軍の再構築、冷戦時代でいう“リフォージャー”“リターンフォージャーマニイ”といえる規模のものですが、同時にNATOはアメリカの防衛負担とともに欧州加盟国への防衛負担の増額も求めており、冷戦後とテロとの戦いにより縮小軽武装化した欧州各国軍は軍の再編を求められる構図です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)