年度末特集最終回の第三回、今回は様々な私案と討議の末の防衛私観中間報告を本日も掲載しましょう。
防衛大臣直轄部隊について。現在、防衛大臣直轄部隊は中央即応集団や機甲師団である第7師団等が挙げられます。さて、広域師団(装甲機動旅団・航空機動旅団)という提案を中間報告第一回に、方面即応集団(方面即応機動群・方面対テロ即応群)をローテ-ションで待機させ有事即応の態勢を構築する提案を行っています。それでは、大臣直轄部隊はどうあるべきでしょうか。
今回提案するのは陸上自衛隊航空集団の創設です。陸上自衛隊航空集団という発想は1960年代から1970年代にかけ、航空部隊強化の一環として幾度か部内検討された、と言われています。ただ、今回提案する航空集団は、単純な機動力の集約ではなく、島嶼部防衛と重装備縮小という現状への一つの選択肢として、長期的に整備するものを提示します。
大臣直轄部隊。この私案が、この榛名防衛備忘録においてコンパクト化を極限まで追求し火力指数と打撃力を我が国周辺国と我が国の国際関係上突き付けられる状況へ対応できる防衛力を考えた際、第1空挺団と第1ヘリコプター団という機動力、第7師団という戦略予備の最重装備部隊を基幹とする現状こそ、もっとも友妥当なものでしょう。
航空集団。陸上自衛隊航空集団は、第1ヘリコプター団のMV-22可動翼機配備に合わせ、CH-47輸送ヘリコプター半数を広域師団航空機動旅団へ分散配備し、既存旅団ヘリコプター隊所要に加えて再編すれば各航空機動旅団へ8機のCH-47を配備できる、としました。
ここに近接航空支援を担う飛行隊を2個飛行隊程度有する部隊を配置し、有事の際、航空自衛隊が近接航空支援に忙殺される危惧を解消し、対地攻撃は航空自衛隊が装備する高度な航空機の場合、航空阻止任務に限定できるようする。もちろん、防空任務が切迫した際には、陸上自衛隊も航空自衛隊支援に加わります。
そこで、まず、第1ヘリコプター団を、MV-22可動翼機16機を装備する第101航空隊とUH-60JA等を装備する第102航空隊にCH-47JA輸送ヘリコプター16機を装備する第103航空隊、それにEC-225を装備する特別輸送航空隊の三個航空隊に再編します。
第1ヘリコプター団は、航空輸送の中枢として、第1空挺団の集中輸送支援や、指揮官の決心に依拠した戦略輸送に際し、最大の空輸能力を発揮するとともに、導入が開始されるMV-22可動翼機の集中運用による緊急展開能力、広域師団の航空機動旅団展開と伍する空挺部隊の緊急展開に寄与する航空科部隊最強部隊として維持する、という前提です。
第2航空団、として航空集団には第1ヘリコプター団と双璧を為す、近接航空支援任務に適した部隊を置くべき、こう考えるところです。具体的にはMV-22という高速度の進出力を持つ機体の導入により、その護衛と火力支援は従来の対戦車ヘリコプターや戦闘ヘリコプターでは不可能となるため、その支援に充てる航空部隊として想定しました。
第2航空団は、併せて陸上自衛隊の海兵隊化という政治要求を反映したものともなります。岩国の第1海兵航空団が運用するF/A-18CやAV-8Bの任務に当たる、砲兵火力を局限化した米海兵隊が戦闘攻撃機の航空打撃力へ依存した運用を念頭とした部隊、という事も出来るでしょう。
理想としては、岩国航空基地に岩国駐屯地を置き、米海兵隊の戦術運用を参考とした編成が望ましいのですが、岩国は厚木より空母航空団が移転する為、収容不可能です。そこで、近傍の防府分屯地、航空自衛隊の飛行教育部隊が展開している基地ですが、ここに一個飛行隊を置き、併せて十分な滑走路と飛行場機能を持つ九州の高遊原分屯地を駐屯地に格上げし、もう一個の飛行隊を此処に展開するべきと考えます。
高遊原配置の飛行隊は、水陸機動団との協同運用を重視しますが、併せて南西諸島での訓練基盤構築のため、可能であればキャンプシュワブ飛行場施設完成とともに返還される普天間航空基地を普天間駐屯地として陸上自衛隊へ移管し、一個飛行隊は普天間に置くべきと考えます。
なお、装備については、COIN機でなければどういった戦闘機でも問題ありません。中古か新造を問わないものとし、F-16C戦闘機やF/A-18C戦闘攻撃機,JAS-39戦闘機,ジャギュア攻撃機、ミラージュ2000、ハリアー攻撃機、トーネード攻撃機、問いません。
最低限、航空自衛隊とのデータリンク能力を確保し友軍相撃を防ぎつつ、取得費用と維持費用を考慮し、決定すべきでしょう。航空自衛隊ほど対戦闘機戦闘を重視せず、自衛戦闘に留め、航空自衛隊の要請に応じ対応する程度のものとします。一方、北大路機関では、航空自衛隊へ有事の際に補助戦闘機へ転用可能な高等練習機を提案しています。具体的にJAS-39を挙げているのですが、陸空で共通化できる部分があれば、行うべきでしょう。
ただし、簡単に示しましたが、陸上自衛隊には練習機がエンストロム480しかありません、T-7初等練習機に当たる機体もT-4練習機にあたる航空機もありません。独自の航空教育体系を構築するのは非効率ですので、航空自衛隊の支援を仰ぐか、米軍留学制度を構築するか、いずれにせよ何らかの対応が必要となります。
ですから、この第2航空団案は、十年単位で先の話となります。他方で、いつになろうとも必要である選択肢、とも考えるわけです。一方で教育訓練の問題、仮に将来、海上自衛隊がヘリコプター搭載護衛艦へF-35Bを搭載する、というような施策を仮に決定し、行う際、同様の課題が生じるでしょうね。
航空集団は、このほか、緊急展開部隊として第1空挺団を隷下に置き、統合運用を行うことが望ましいでしょう。実質的に、中央即応集団が現在果たしている位置を、航空集団が航空打撃力を持つ第二航空団と緊急展開能力を担う第1ヘリコプター団により担う、というかたち。
空挺団は現行編制の三個空挺大隊基幹が一つの理想形ですが、併せてC-2輸送機の配備により空輸能力が強化されるため、空挺特科大隊へM-777のような軽量砲を10門から16門程度配備する選択肢はありますし、理想としては空輸できる最強装備、機動戦闘車を中隊規模で配備し、各大隊へ小隊規模の機動戦闘車を増援に出せる事が望ましい。
このほか、現状の空挺団には少なくない大型車両が装備されているため、輸入車両であっても構わないので、空挺用の装備を増強すべきと考えます。特に例えばC-2輸送機10機でどれだけ展開できるか、MV-22やCH-47との連携を念頭に、トラックに空挺用の装備を導入する、スパキャット軽車両やムンゴ空挺軽装甲車等の導入は考えられていいでしょう。
このほか、海上自衛隊の中古KC-130R導入を参考に、仮に安価にC-130輸送機を中古で導入できるのであれば、その陸上自衛隊航空集団への導入を模索するのも一つの選択肢でしょう。このほか、米陸軍が国防費削減の影響で早期退役を検討しているC-27J輸送機等、打診してみる価値はあるやもしれません。
航空集団への輸送機導入案は、航空自衛隊の空輸能力への不安があるのではなく、平時訓練における利便性と、有事の際の輸送能力逼迫を想定し提案するものです。特に不整地輸送等、航空自衛隊は訓練を続けていますが、有事の際には、特に航空団の防空作戦能力維持への輸送能力が相当程度必要となりますので、検討の価値はあります、中古機を安価に取得できる場合に限りますが、ね。
他方で、安価に輸送機を取得できる場合、空挺団を簡素化した空挺連隊を西日本の何れか地域に配置する、第2落下傘連隊案というものを提示します。具体的には水陸機動団の拠点となる相浦駐屯地など、近傍に大村航空基地や佐世保基地もあり、水陸機動団との連携をおこなう上で有利です。
また、水陸機動団が米海兵隊と連携し両用作戦能力を整備する際にはどうしても第3海兵師団の展開する沖縄へ駐屯する必要が出てきます。広域師団構想に際しても、南西諸島管区の平時駐屯に水陸両用旅団を挙げていますので、相浦より沖縄へ水陸機動団が移転したのち、第2落下傘連隊を新編し、航空集団第二の機動部隊として、相浦に駐屯させる選択肢はあるでしょう。この場合、輸送機は高遊原か大村の海上自衛隊飛行場地区への駐屯が理想です。
戦車師団は航空集団とともに大臣直轄部隊の双璧を為します。もちろん、他の師団の改編として創設する広域師団構想そのものが全て機動運用部隊と位置付けるため、陸上総隊の直轄運用を受ける点に代わりは無いのですが、広域師団(装甲旅団・航空旅団)、この重装備機動装備の関係のように、機甲師団と航空集団は大臣直轄の重装備機動装備、という位置づけと考えて差し支えありません。
第7師団は、基本現状の編成を維持しつつ、戦車定数削減の影響を受け、戦車連隊を構成する戦車中隊数が削減されるであろうことは予測できます。戦車連隊隷下の戦車中隊は独立運用されることはなく、戦車連隊の指揮下で運用されるため、中隊本部機能を合理化することは、不可能ではないでしょう。
こうして、12両で中隊を構成した場合、4個戦車中隊に連隊本部車両を加え、50両で連隊を維持することはできるかもしれません。結果、最盛期286両から大幅に縮小、3個戦車連隊で150両という列国の戦車師団と比較した場合でも非常に小型ではありますが、陸上自衛隊の最後の機動打撃部隊として維持できることとなります。
他方、現状で師団隷下の普通科連隊は6個普通科中隊を基幹とする日本最大の普通科連隊を構成し、半数に89式装甲戦闘車を装備し、ほかは73式装甲車を配備し装甲化を達成しています。他方、縮小された戦車連隊は現実問題として一両として無駄に損耗を出さない運用が求められる。
戦車支援戦闘車、戦車連隊から戦車削減と共に第5中隊が廃止されますが、この第5中隊の代替に戦車支援戦闘車を装備する中隊を置くべきではないか、と考えます。戦車支援戦闘車とは、ロシアのBMPT戦車支援戦闘車、開発中止となりましたが、BMPTのような車両を想定します。
BMPTはロシアが戦車削減を欧州通常戦力削減条約に基づき要求された際、旧式化したT-72戦車の車体を利用し、30mm機関砲2A42二門と焼夷気化弾頭型9M133対戦車ミサイル多連装発射器を砲塔に搭載し、戦車を市街地や狭隘地域での近接攻撃から防護する車両です。航空攻撃を含め戦車が苦手とする攻撃から防護するこの種の車両は、戦車定数が削減されるからこそ求められるでしょう。
併せて、広域師団の提案に際し全方面特科部隊の廃止と装甲機動旅団への編入を提示しましたが、第7特科連隊に対しても、現行編制では全般支援火力を担う第5大隊は配置されてきませんでしたが、広域師団と同様に第7特科連隊に対してもMLRSを装備させ、全般支援火力を置くべきと考えます。
このほか、少数配備で終了したOH-1観測ヘリコプターを第7師団へ重点配備するべきと考えます。現状で教育所要を除けば30機ほどしかありませんが、OH-1は機甲師団、水陸機動団、首都旅団、こうした重要部隊へ10機づつ集中配備するべきでしょう。
首都旅団について。東京は絶対防衛しなければなりません。このため、首都旅団は駿河甲州地区を第12旅団管区に移管し、首都近郊を中心として市街地戦闘を念頭とした中央即応連隊型の普通科連隊を、東京神奈川千葉埼玉を中心に配置し、支援に直接火力支援能力を有する機動戦闘車を重点配備するべきです。
即ち首都旅団の編成は航空機動旅団の軽装備部隊を、装輪装甲車強化のかたちで充実させ、一方で航空連隊を機動砲連隊に置き換え、遠距離打撃能力を持つヘリコプターよりも機動戦闘車の直接火力支援を重視、一方で情報収集能力を強化すべく軽ヘリコプターと観測ヘリコプターを重点配備する、こういうところでしょうか。
なお、前回か前々回までに掲載すべきものでしたが、方面隊の方面戦闘支援集団、後方支援部隊の一案について。これを方面戦闘支援集団とし、方面重特科団、方面施設団、方面後方支援団、方面教育団、この四個団と方面補給処を集約する作戦支援集団として、構想します。
方面重特科団は、広域師団への編入が適切ではない、ホークミサイル/03式中距離地対空誘導弾の高射特科連隊、88式/12式地対艦誘導弾を運用する地対艦ミサイル連隊、この2個連隊を以て編成します。装備に火砲が皆無ですので、方面重特科団とは呼ばず、方面ミサイル団と呼称してもいいかもしれません。
方面ミサイル団/方面重特科団、名称はいろいろ考えられます。さて、これまで方面特科団といえば、203mm自走榴弾砲かMLRSを運用する部隊を示しましたが、将来の陸上自衛隊私案では、MLRSを装甲機動師団へ移管するため、方面隊は中距離地対空誘導弾と地対艦ミサイルを集中運用するのみとなります。なお、現在の移動監視隊や無人偵察機隊は、この方面重特科団に所属させるのが理想でしょう。
方面施設団は、主として建設工兵にあたる部隊を集約した2個施設群を以て編成します。現状では戦闘工兵装備に当たる装甲ドーザや地雷原処理車などが方面隊に集約されていますが、これらは装甲機動旅団へ再度集約し、第一線の障害除去などに充てます。方面施設団は後方策源地や補給処から広域師団か装甲機動旅団・航空機動旅団の策源地までの補給路全般の維持にあたります。
方面後方支援団は、方面後方支援隊と基地通信を担う方面通信隊に方面会計隊や方面衛生隊を集約します。人員規模としては、特に駐屯地施設を後方支援の重整備施設として充てることが出来、加えて国内防衛産業の整備支援施設を防衛力の後方支援能力として応用できるため、海外の軍団支援能力ほど、規模は必要ありませんが、弾薬整備や重整備などを包括し行い、師団が前進を続けた場合でも対応できる体制の構築が求められます。
方面教育団は即応予備自衛官指揮隊、方面指揮所訓練支援隊、評価支援大隊、教育支援隊、陸曹教育隊、機甲教育隊、特科教育隊、以上を基幹とします。教育支援隊は全国の普通科連隊管区へ教育分遣隊を派遣し、連隊管区で実施される教育訓練を連隊の指揮下に入り教育支援します。
方面教育団は有事の際、予備師団を編成します。有事の際には即応予備自衛官指揮隊師団司令部機能とし、を中心として、方面隊の7個予備自衛官大隊を包括指揮し、評価支援大隊と機甲教育隊の教育用戦車2個中隊を予備戦車大隊へ再編、陸曹教育隊と特科教育隊の重迫撃砲と榴弾砲を予備特科大隊へ再編、実質的に旧式装備主体の予備師団としての任務を方面教育団は担います。
この予備師団は、即応予備自衛官7個大隊2800名に予備の重装備大隊を併せ教育用戦車20両と火砲10門を加え4000名、続いて予備自衛官と教育中の自衛官を主体とした大隊が地域警備部隊として2100名、後方支援部隊は予備自衛官と駐屯地業務隊のみですが、7000名程度の小型師団となります。
教育団の一員として仮設敵を務める評価支援大隊の戦車と装甲車がほぼ唯一の重装備で、このほか、教育隊の教官と陸曹教育隊も重要な防衛力ですが、併せて教育要員としての教官たちは広域師団の部隊が戦闘により消耗した際に、予備要員として第一線にある広域師団へ支援に回ります。
なお、仮に予備自衛官部隊の防護する後方へ侵攻された際、予備自衛官大隊が駐屯地近傍で拡大阻止として食い止めている際に、重装備で駆け付けます。全体として、後方支援部隊がほぼ皆無なので機動打撃など不可能、完全な張り付け師団ですが、広域師団が機動展開したのち、基盤的防衛力を構成できるでしょう。
普通科連隊の位置づけについて。管区普通科連隊を、常備自衛官の第一大隊、即応予備自衛官の第二大隊、予備自衛官共通教育中隊混成の第三大隊、そこに常備自衛官主体の本部管理中隊と重迫撃砲中隊と対戦車中隊を混成した火力中隊を以て普通科連隊は1400名を基幹とます。
これは即応予備自衛官運用に関する特務即応予備自衛官制度案の論議を行った際に派出した理論ですが、普通科連隊を1400名とします。このうち、第1大隊と本部管理中隊と重迫撃砲中隊の700名が装甲機動旅団・航空機動旅団に配置されます。残る700名が予備自衛官主体となるもの。
実質普通科連隊ではなく普通科大隊ではないか、という指摘についてですが、常備自衛官と即応予備自衛官や予備自衛官など1400名の人員を以て管区を受け持つのですから、大隊ではなく連隊です。それでは、旅団に配備される部隊は700名程度なのですが、これは規模の上から大隊ではないのか、という視点について、その通り。
例として京都を警備管区とする第7普通科連隊を念頭に考えてみます。機動旅団配備の大隊は7-1大隊(第7普通科連隊第1大隊)です。そして平時に連隊指揮下にあり、有事にも連隊が機動展開前では連隊指揮下にあり、方面隊が方面教育団を中心に方面予備師団を編成する際に初めて第2大隊は連隊指揮を離れ7-2大隊(第7普通科連隊第2大隊)を構成します、第7-3大隊(第7普通科連隊第3大隊)は訓練を強化する、こういうかたち。
普通科連隊としたのは、機動旅団配置に際し、第1大隊と共に連隊旗を奉じる本部管理中隊と火力中隊が機動旅団と共に行動する為、7-1大隊は、連隊として旅団に配属されるわけです。普通科連隊の位置づけについて、大隊ではなく連隊としたのは、こうした運用を想定したためです。
以上、中間報告としてこれまでの記事掲載と共に多くの討議により構築した陸上自衛隊の将来防衛に関する編成案を提示しました。年度末特別企画ということで三回にわたり掲載しましたが如何でしたでしょうか、少々飛躍が行きすぎましたが、当方の視点の一部分を示しました。本日は年度末、明日からの新年度もみなさまよろしくお願いいたします。
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