北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

小松基地航空祭 詳報

2005-09-29 13:32:52 | 防衛・安全保障
 前回予告通り、
 小松基地航空祭の詳報をお送りしたい。
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 航空祭は、F-15Jの機動飛行から開始された。
 F-15Jは、1981年より航空自衛隊に導入が開始された要撃機で、導入当時は為替レートで単価150億といわれたが、ライセンス生産やプラザ合意などにより単価が低下し、冷戦時代に開発された最も高性能な航空機を多数そろえるに至った訳だ。
 特に、空戦性能を重視し、出力に余裕のあるエンジンの双発機たるF-15Jはその様子を存分に披露した。
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 続いて、小松救難隊による救難展示が行われた。
 機体は、V-107に代えて導入が進むUH-60JAで、長大な航続距離と、高いエンジン出力が特色である。
 昨年までは、白・黄・黒の塗り分けによる被発見性を高めた救難機塗装であったが、今年度は実戦性高い迷彩塗装であった。青と黒を基調とした迷彩色は、特に日本海の海面色に近く、特に朝鮮半島有事が現実のものとなった際に、我が空空部隊のみならず同盟国たる米軍機墜落という事案が生じた際に、脅威度高き海域での捜索活動を考慮してのものといえよう。
 救難活動を髣髴とさせるBGMの下、救難展示はU-125救難機との見事な連携により無事要救助者を回収し終了となった。
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 さて、小松基地は要撃飛行隊基地であると同時に、民間飛行場たる小松空港という一面を有するため、日本航空や全日空機、また中国東方航空やシンガポール航空などの外国からの機体も利用している。
 従って、航空祭に華を添えるべく日本航空は、ポケモンジェットやムシキング塗装機などを特別ダイヤで定期便飛行させてくれ、日本航空フライトアテンダントの方がその都度、型式や出発地などを放送してくれ、航空祭の観客は、思わぬ来客を歓迎する眼差しで迎えていた。
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 さて、民間機の着陸が一段落した後、基地防空隊のVADS高射機関砲の空砲射撃が行われ、各250発、計750発の空砲が発射された。
 VADSは基地防空最後の装備とされ、有効射程は1800㍍、16門程度が基地防空隊に配備されている。この他、スティンガーや91式携帯SAM、そして陸海空で装備されている81式地対空短距離誘導弾などが基地防空の任についており、特にVADSはゲリラコマンド部隊による襲撃の際にも最大で毎秒50発という猛烈な火力を以てこれを文字通り粉砕する訳である。
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 VADSの仮想敵機を務めたのは、長躯岐阜基地より飛来した開発飛行実験団のF-2Bである。
 航空法により海岸線から50km以内は、米軍機を除き音速飛行が禁止されているが、それでも900km/hの速度であれば10分程度で岐阜より小松に飛来する事が可能である。
 同機はわが国航空産業が総力を結集して開発された機体で、特に翼に用いられている複合素材技術は世界から高く評価され、ボーイング社の新型旅客機の主翼生産は日本が執り行う事となった。
 CCV実験機での実験成果を見せるべく、第一回は750km/h、第二回は失速スレスレの低速飛行を展示し、拘束飛行背はシャッターチャンスを逃したカメラマンを喜ばせた。
 ちなみに、昨年、新聞各紙でF-2の早期調達中止が報道されたが、130機という調達目標が下方修正されるだけであり、実質的には18年度予算概算要求では要求数が一機増加しており、98~101機程度の調達は為される事はご存知だろうか。
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 さて、F-2Bの着陸後、要撃飛行隊としての本領発揮すべく、続々とF-15Jが滑走路脇に集結してくる。
 その数実に12機。
 小松基地航空祭は、他の千歳・百里・新田原と同じく、二個飛行隊のF-15J部隊を有する航空団ならではの、編隊飛行が売りである。
 即ち、一糸乱れぬ編隊飛行に臨むべく、展示機も続々と搭乗員乗り込み、大空へと向かう。
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 F-15Jの八機編隊飛行。
 この他、ダイヤモンド隊形やロッテ隊形など各種編隊飛行を観客に披露した。
 昨年の航空自衛隊創隊50周年記念では、“50”の文字を大空に描いたが、今年度の航空祭は、12機編隊ではく8機編隊であり、やや控えめという観は否めなかった。
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 見事な四機編隊飛行を展示するF-15J。
 なお、華やかな飛行といった航空祭を楽しむ多くの観衆は忘れがちであるが、こうした機動飛行の最中でも、第六航空団、そして全国七箇所の要撃飛行隊基地では万一の国籍不明機接近に備え、非公開区画にある滑走路脇のアラートハンガーでは二機のF-15Jが待機態勢にある。
 やはりここは要撃飛行隊の基地であるということを一瞬よぎる瞬間である。
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 編隊飛行の後、機動飛行を披露する編隊。
 次々と旋回していく戦闘機、『空軍大戦略』『トラトラトラ』など戦争映画では馴染みのシーンであるが、中々日常生活では目にする事が難しい光景である。
 F-15Jは近接してのドックファイトの性能を重視した戦闘機であり、旋回性能に突出したものを有する。
 F-15Jは急旋回では7~9G、つまり自重の7~9倍の重力が掛かり、まさに気力体力充実した者でなければ戦闘機搭乗員にはなれないと言われる所以である。
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 さてさて、編隊飛行・機動飛行が終了し、ブルーインパルス飛行まで若干の余裕がある。
 飛行展示開始までのあいだ、基地内を見回してみよう。
 基地内では模擬店多数が出店し、まさに航空祭とは催事であることを再認識させられる。売店模擬店の数は富士総合火力演習の約七倍といったところだろうか、家族連れも多く、お祭り感覚で楽しむことも可能だ。
 格納庫ではF-15Jの機内が公開されている。黒山の人だかりの代名詞的情景であるが、並べばF-15Jのコックピットを除く事ができるという。こうした展示にも多数の機体が用いられており、思いのほか早く見学が出来るという。
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 地上展示機は端から順に列挙すると、三沢のE-2C、岐阜のF-2B、岩国のF/A-18E、F/A-18F(米海兵隊)、滑走路脇には岐阜のF-4EJ改、入間のU-4、岐阜のT-2、築城のF-1特別塗装機、小牧のT-1、百里のRF-4、そして第六航空団のF-15多数が並び、海上自衛隊のP-3CやSH-60J、航空自衛隊のC-1輸送機、CH-47、V-107、UH-60J、T-3が並んでいた。
 また、同基地所属のT-4練習機と並び、松島基地より飛来したブルーインパルスのT-4練習機も揃い踏みしていたことも、此処に特筆しておきたい。
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 また、陸上自衛隊からもAH-1SやOH-6D、UH-1Jなどの参加機があり、陸海空、そして在日米軍機までもが参加した、まさに自衛隊総出演という様子であった。
 OH-1が参加していないのが残念であったが、岐阜基地航空祭などでは、帰り際にOH-1が機動飛行を披露させ、観客を喜ばせる事で有名だ。
 尚、航空祭当日、九州佐世保に程近い陸上自衛隊相浦駐屯地祭において、訓練展示中のAH-1Sがローター接触により墜落するという事故があった、搭乗員の機転でエンジン停止が瞬時に行われ、火災発生を未然に防止でき、かつ観客には全く被害がなかったことは幸いであるが、旧軍において訓練と実戦に違いはないと言われたとおり、激しい訓練の一端を見せていた。
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 閑話休題。
 地上展示には移動警戒隊の装備品も展示されていた。
 移動警戒隊とは、有事の際に定点レーダーサイトが航空攻撃などによる目潰しで使用不能となった場合などに用いる、文字通り移動展開可能なレーダー施設であり、移動式とはいえ、高性能な三次元レーダーを装備し、バッジシステムと連携する事で要撃戦闘を有利にせしめたる能力を有している。
 また、前述の基地防空隊の各種装備も展示されていた。88式鉄帽や戦闘防弾チョッキを着込み携帯SAMを実際に触る事や、VADSに実際に乗り込み操作する展示もあり、多くの観客が体験し、防弾チョッキの重さに驚いていた。
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 ブルーインパルスの列機。
 7機あるが一機は予備である。
 わが国ではアクロバット飛行に関しては海軍航空隊時代以来の伝統があり、航空幕僚長まで登りつめた源田実氏が海軍時代に編隊宙返りなどの展示をした事が起源とされる。
 なお、太平洋戦史における最大の激戦といわれたラバウル航空戦では、撃墜王の名高い坂井三郎氏も敵前編隊宙返りを行ったことを、『大空のサムライ』において述べている。
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 ブルーインパルスの離陸。
 一番機を先頭に四機がまず離陸する。
 そして、五番機六番機がそれに続く。
 編隊は離陸すると、四機編隊を組み、第一にスモークを切り出し、観客上空をフライパスする。続いて離陸した二機と観客後方で合流する訳だ。
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 ブルーインパルスの自由な機動性を表した典型的な写真。
 F-15Jなど、戦闘機パイロットやT-4練習機などの教官から選抜され、松島基地の第四航空団に展開するブルーインパルスは、航空自衛隊の顔とも言うべき存在で、先の長野オリンピックやワールドカップ、浜名湖花博、そしてこのほど閉幕した愛地球博の開会式など、国家的行事の際にも飛行展示を行っている。
 また、こうしたアクロバット飛行の写真は瞬間を撮影するので、動きを表現するには非常な練度と経験を要する瞬間である。
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 白煙を引きつつ編隊飛行するブルーインパルス。
 この後、展示飛行に移行する。
 東京オリンピックに花を添えたブルーインパルスであるが、これまでもT-2時代の浜松基地での墜落事故や編隊飛行訓練中の衝突事故など、幾多の試練とも言うべき事件事故を経て、今日に至る。
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 編隊宙返りや背面での相互通過、また大空へ空中傘下、大空に描かれる星やハートマーク、様々な飛行展示が見せ付けられた。
 また、ほぼ2㍍間隔で飛行する様子は簡単な訓練では為せざるものである。
 しかし、演技種目も技量を極めたということもできるが、一方で種目がどの基地に行っても基本的には同じであり、何度も観ると慣れてしまうというか、マンネリ化と言うべき状態であり、可能であれば新しい演舞種目の模索や、ご当地名物的な演舞の設定などを期待したい。
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 T-4練習機は、F-86、T-2に続き導入された機体で、約220機が航空自衛隊において運用されている。
 川崎重工と富士重工が協力し、石川島播磨重工のエンジンを搭載した純国産機である。初飛行は1985年で、1300kgまでの火器搭載量もあるとされる。これは開発当初に軽攻撃機としての性能が要求された名残で、IRSTのような装備品を搭載すれば、ホークのような軽攻撃機として運用する事も可能であろう。
 なお、ブルーインパルスが用いるT-4練習機は、塗装以外に強度などの面で所要の改修を行っているとされる。
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 ブルーインパルスの飛行展示終了と同時に飛行展示は全て終了となる。
 ここで、最後に地上展示機を撮影して帰ると言うのが、航空祭の定石とされる。
 写真はT-2練習機とF-1支援戦闘機である。
 同機は、三菱重工によってわが国初の超音速機として開発され、エンジンは英国製アドゥーアエンジン双発で、1967年にT-2が初飛行、96機が生産されている。25号機以降は火器管制装置や20㍉機関砲を搭載し、有事の際には補助戦闘機として用いる事ができる。
 T-2の後部座席を廃し(後方視界は悪化した)、爆撃コンピュータを搭載したのがF-1で、1977年に初飛行している。1980年からは空対艦ミサイルASM-1を搭載し、有力な対艦攻撃機として運用されたが、今年度を以て前期第一線から退き、用途廃止となる。
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 写真はC-1輸送機とP-3Cであるが、現在、川崎重工を中心にこれらの後継機が開発中である。
 C-1は31機、P-3Cは101機が調達され、現在、海空自衛隊の主柱の一つを担っているが、これらを大幅に能力向上させた北が開発中である。
 既に昨年、モックアップが川崎重工岐阜工場において公開され、開発は順調に進展していると聞く。いわば、これらの機体の後継機がわが国航空史の新たな一頁を開く事となるのだろう。
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 2004年度小松基地航空祭の観客は12万8000名であったということで、今年もそれとほぼ同数の観客来場であったという。ちなみに脚立は使用禁止という厳しいお達しがあり、私は脚立を用いず、東富士演習場で調達したイス付リュックに椅子突っ込んで行ったのだが、多くが脚立使用であり、転倒によるトラブルも私が見た限り三件ほどあったし、第一線というべき前の方で、ビニールシートを敷いて就寝中の方がいた、わが国の知的水準は下降気味ということは報道されるが、他者のことを考えぬ暴虐無人な振る舞いは、倫理水準の低下を端的に示すものであり、厳に誡めるべきと考える。
 少なくとも欧米の航空祭のような有料席でこうした事をやるのは自由ではあるが、航空自衛隊の第六航空団HPに定められたレギュレーションがあるならば、それに従うのが筋であり、寝たいのであれば家で、または格納庫付近の閑散区でねればいいのではないか、私はそう感じた訳である。
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 これが小松基地航空祭のレポートである。
 尚、駐車場から出るのに一時間掛かり、小松駅行きのバス乗り場も1キロ近い行列が出来ていて、航空祭景気ともいうべき状態であったが、これはタクシー送迎でもしなければ避けられぬ問題であり、許容するべきであろう。尚、小松インターの方は長い渋滞も無く順調に流れていた。高速道路のサービスエリアは150キロ先まで航空祭グッズ持った人が多く、混雑していた。ここも俄か景気という状態である。やはり小牧・岐阜基地航空祭では京都や小松、掛川のサービスエリアも混むのだろうか。ご存知の方ご一報いただきたい。
 まあ、人出は多いけれども航空愛好家であればそれなりに充実した一日を楽しめる事は確約できるので、諸兄、一度足をお運びになっては如何であろうか。
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 なお、完全に蛇足ながら、当日は中秋の名月、自宅バルコニーから撮影。
 以上が小松基地航空祭撮影の顛末である。
 お帰りはこちら。

 HARUNA

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小松基地航空祭2005

2005-09-27 20:27:17 | 防衛・安全保障
 9月18日、航空自衛隊小松基地航空祭が、石川県の小松基地において行われた。
 小松基地には、要撃部隊である第六航空団が展開し、隷下の第303飛行隊、第306飛行隊が約40機のF-15Jを運用している。
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 同基地は、日本海を隔て、北朝鮮と対峙しており、事実1999年3月の日本海不審船事案においては、防空識別圏周辺を飛行する我がP-3Cに対抗して出撃した北朝鮮空軍のMiG-21に対して、スクランブル発進を行い、2機のF-15Jを戦闘空中哨戒させ、航空優勢の維持に務めた部隊である。
 いうなれば、中部日本空域の防空を一手に担う部隊である。
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 オープニングフライトに続き航空祭が開始された。

 詳報 次回
 HARUNA


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小松・今津

2005-09-20 21:24:51 | 防衛・安全保障
 先週日曜日には今津駐屯地、今週日曜日には小松基地航空祭に行って来ました。
 PHS方式の泣き所で、写真掲載や文章掲載すらも難しい状況ですが近く掲載したいと思いますのでお楽しみに。
 HARUNA

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衆議院総選挙 分析

2005-09-12 20:40:59 | 国際・政治
 昨日、9月11日の総選挙に関して、小生なりの分析を掲げたい。
 
 結果的に自民党は15年ぶりの単独過半数を達成し、民主党は大きく議席数を削減した。そして民主党は自民党の半数議席を確保する事ができなかったが、第三勢力となる与党の公明党には三倍以上の議席差をつけ、社民・共産・国民新党・新党日本の合計数も民主党にははるか及ばなかった。しかし、民主党の岡田党首は責任を取って職を辞し、鳩山乃至小沢氏が次期党首となる見込みと報道されている。

 自民党の小泉首相は、自信を持って郵政民営化に挑む構えだ。

 さて、
 55年体制の下では、自民党と社会党による二大政党制若しくは1:0.5大政党制がひかれていたのは周知であろう。
 自民党は、特に軽武装・経済発展重視の政策を行った事が、わが国の持続的経済発展を支えたといえよう。同じ西側諸国であり、かつ、日本と同じように冷戦構造の最前線に位置していたドイツでは徴兵期間が二年近くあり、貴重な若年労働力を防衛に多く割いていた点、NATOとの同盟体制に深くコミットしたことで独自の外交体制が行使しにくくなり、ブラント外交以降、ドイツの国力はフランスの外交力に政治的利用されるままであった事が大きな負の要因として作用していた。

 対して、わが国の場合は、革新政党である社会党との協調が自民党の国内政治にとり重要なポテンシャルを占めさせており、密約、若しくは非公式協力の下で合議制をとり日本コーポラティズムと言う事も不可能ではない国内政治を行っていた。

 特に、朝鮮戦争(1950~1953)、ヴェトナム戦争(1963~1975)には米国から日本に対して軍事的支援を要望する動きがあったことは確かであるが、わが国のタテマエとして、一応の勢力を有する『社会党が反対している』、『憲法九条がある』という言い分により、平和を維持する事ができたというのが日本戦後外交史の見方である。

 しかし、55体制の崩壊と、村山内閣の後、社会党が社会民主党となる頃には勢力を完全に失い、自民(西側)社会(東側)という国内政治における冷戦構造も集結してしまったわけだ。
 これにより、日本は『追従外交』と揶揄されるような状況に陥っており、貴重な防衛力を本来の国土防衛ではない任務に提供している。イラク復興人道派遣は、陸上自衛隊に対し実戦的環境の下での戦闘訓練を行わせるまたとない機会となり、事実イラク派遣を契機にわが国の陸上防衛力は質的に大きく向上したといえよう。一方で、インド洋対テロ艦隊派遣は、少ない補給艦(現在、ときわ型3隻、ましゅう型2隻の計5隻)を遠くインド洋に派遣する状態が、海上防衛にこの上ない負担としてのしかかっているのも事実だ。また、弾道ミサイル防衛は米国との共同開発を進めているため、予算は多く掛かり遅々として進まない状況に陥っている。

 国際貢献の主眼が国連安全保障理事会常任理事国への加入が目的とされるが、それに対しては投機的という程の労力が費やされており、55年体制のような独自色が溢れた外交政策が実施できない事は、明らかに社会党(社民党)の衰退によるものであり、加えてその要因が、グローバリゼーションの進展に伴う一国社会福祉政策が事実上不可能となった事である為、今後の再興の見通しは全く無い。

 従って、自民党と民主党による保守二大政党制に移行し、外交政策では若干の温度差、国内政治においてはできるだけ協調、時事的な重要政策によって政権交代が為されるというような状態としなければ、現行の不具合を是正する事は難しいと言えるわけだ。
 同時に、自民党政権にあっては米国から過剰な要求があった場合には『民主党の同意が受けられないので実行不可能だ』、民主党政権では『自民党が首を縦に振らない』というタテマエを展開する事ができるようになり、専ら国益に沿った外交政策も可能となろう。

 結果的に民主党は議席を減らしたが、自民党に対しての第二勢力であり、第一野党としての勢力を有している事に変わりは無く、ゼロサムゲームとして議会を見れば、減ったものの大きな問題ではない(54議席以上の民主党の半分以上の勢力を有する野党が生まれれば群雄割拠確固撃破状態になり問題だが、準自民党の国民新党に自民から議員が流れる可能性は無いし、社民・共産は論外的勢力しかない)。

 大河ドラマの巌流島の決闘や池田屋騒動、屋島の戦いのように日本人は一騎打ちを好む傾向がある。従って、自民党の郵政民営化という決闘状に対して、民主党が子育てや年金と言う逃げを使った事が支持を得られなかった要因といえよう。

 そして、これは本学客員教授であるK教授が仰った内容であるが、『国民に聞こう!』の殺し文句には勝てなかったようだ。首相は歌舞伎が好きなようだが、ただ見ているだけではない点がわかる。

 自民案には、民営化した後にサービスを維持できなかった場合どうするかの規定が無かったわけで、トニー・ブレアのように、授権的民営化、達成目標の決定と失敗時の人事刷新若しくはオプションとして再国有化という代案を盛り込んだ独自の民主党案を制定してマニフェストに大きく掲げれば、自民流郵政民営化VS民主流郵政民営化として台頭に戦えたであろう事を考えると非常に残念で仕方が無い。

 さて、憲法問題であるが、そもそも、ヤルタ体制・東京裁判史観に基づいて書かれた日本国憲法は、“賞味期限切れ”である。しかし、役所は変革を嫌い、革新政党が地方議会や労働組合で大きな勢力を有しているため、変革、もしくは改革に当たる憲法改正が行えないだけである。

 憲法9条改正という点では、自民も民主も同じであり、程度の問題となり次回の衆議院選挙においても再び負ける可能性が生じる。最悪なのは民主党の分裂である。
 憲法9条を改正するために、他の条項(まあよく言われるのが89条とかあとは、95条ですな)を改正するか、24条はどうするのか、1条に皇室典範を盛り込むのか、といった事で二大政党がしのぎを削る事となろうが、個人的には民主党には日本国憲法を維持しつつ、憲法の根幹部分となる改正方法があり、その点を突いてもらいたいように思う訳だ。

 何となれ、政治は常に流動的であり、今後の動静にも注視する必要があろうし、終戦60周年、日露戦争百年の本年には、山積する各種課題に挑まなければならず、有権者として、興味が尽きず、主体的に見て行きたい。

 HARUNA

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89式装甲戦闘車

2005-09-09 00:50:50 | 防衛・安全保障
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 18年度概算要求では調達数が0となったようだが、実質的には同じく要求数が0であった昨年度も一両の調達が為されているようだ。
 車体の足回りがMLRSと同じであり生産に互換性があるためといえるだろう。
 一方でつけ加えるならば、戦車に随伴するには装軌式装甲車が必要であり、89式が高価であるとすれば、砲塔を87式偵察警戒車のものに換装して性能を低減させてでも、価格低下を目指し、可能ならば年間7~9輌の調達が望ましい。新大綱下でも北部方面隊隷下の部隊は重装備が維持されるようで、戦略機動性よりも機動打撃能力が重要と言う判断であろう。北部方面隊に配備を限定すれば、年間7~9輌の調達でも210~270輌の装甲車を維持でき、第11普通科連隊と3~5個中隊を完全にFVにより装甲化可能となろう。
 結果、師団直轄のFV中隊として重点配備すれば戦略予備として師団の運用に柔軟性を増させる事が期待できよう。
 HARUNA

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18年度防衛予算概算要求

2005-09-06 18:21:29 | 防衛・安全保障
 防衛庁は、18年度防衛予算概算要求を公表した。
 17年度の4兆8301億円から1.2%増額された4兆8857億円が18年度予算として要求された。
 内容としては、P-3C哨戒機の派豪訓練の新規開始や、国際平和協力演習、自衛隊統合指揮所演習の新規実施などが盛り込まれ、今年度の共同転地演習にならぶ動向といえる。
 また、弾道ミサイル対処統合伝達演習も開始され、弾道ミサイルへの防衛著運も真剣な取り組みが見て取れよう。また、海上保安庁とのデータ交換装置の新設など、いままで行われなかった分野に漸く進展が見られるようになった。
 グアムにおける日米共同訓練では、今年度に続きF-4EJ改戦闘機の派遣が為されるようで、アラスカでのコープサンダー演習ではF-15Jが派遣される。加えて、米空軍との空中給油演習も継続して行われるようだ。
 続いて海上自衛隊であるが、護衛艦3隻、航空機6機と海軍大国としての面目が立たなかった今年度のリムパックに対して、来年度は護衛艦5隻、航空機9機が派遣される見通しである。
 陸上自衛隊要求数を挙げると、90式戦車×11、96式装輪装甲車×23、軽装甲機動車×203、99式自走榴弾砲×8、AH-64D戦闘ヘリ×1、UH-1J多用途ヘリ×5、OH-1観測ヘリ×2が要求された。
 海上自衛隊では、13500t型DDH×1、潜水艦×1、掃海艇×1が要求された他、SH-60K哨戒ヘリ×5、US-2救難飛行艇×1が要求された他、むらさめ型護衛艦の短SAM装置換装が3隻分要求され、むらさめ型が全てESSMを運用する事となる。
 航空自衛隊を挙げると、F-15Jの近代化改修予算×6、そして調達中止が決定されつつも一機増加したF-2×6、また基地警備用に軽装甲機動車が20輌要求される。また、C-130Hへの改修も盛り込まれていた。
 組織改編では、陸上自衛隊では、第一空挺団などを隷下に置く中央即応集団の新編、中央情報隊の新編。海上自衛隊では、第27護衛隊・第6潜水隊の廃止、第1海上補給隊の新編、第1輸送隊の自衛艦隊から護衛艦隊直轄への移転、航空自衛隊では機動衛生隊の新編が為される。
 人員は全体で262名の削減となる。
 防衛大綱の改編に伴い、日本自衛隊は任務の多様化、そして有事の現実化に全力で対処しようと組織改編、そして装備の普遍的近代化へまい進中であり、この動静を見守りたい。
 HARUNA

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米新型火砲

2005-09-05 14:49:30 | 防衛・安全保障
 陸上自衛隊が使用する99式自走榴弾砲は、本ブログでも写真を扱ったが、砲身の長さ(口径)は一貫して増加を続け、75式自走榴弾砲が30口径であったのがFH-70では39口径、そして99式自走榴弾砲では遂に52口径にも達した。
 ドイツのPHz-2000も52口径で、イギリスのAS-90も39口径から52口径へ換装を計画しており、フランスもその流れに続こうとしている。スイスでは米国製M-109A6自走砲を39口径から52口径に近代化改修する案が出ており、最大射程は30~40kmに達している。
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 各国では特にトランスポーターなどによる輸送の面で長砲身となった自走榴弾砲の運用に苦慮しているようで、99式は砲身を砲塔に格納できる構造を有している。
 こうした中で、米国が開発中のFCS(将来戦闘システム)として開発中の新型自走砲は、38口径という、現用のM-109A6パラディンよりも砲身が短いのが現状である。これは被輸送性を考慮した結果といわれるが、新型砲弾により最大で94kmの射程を実現したという。ATACMS(陸軍戦術ロケット、MLRS発射機を用いる)の射程300kmを考えるならば考えられうる範囲内といえるかもしれないが、やはり野砲の射程としては驚きである。
 かつて第一次大戦中に射程100kmのパリ砲というものをドイツ軍が使用し、パリ市民を大混乱に陥れたが、今回は各部隊に配備される自走榴弾砲として開発されたわけだ。
 アブダビでの試験では、PHz-2000が86kmの最大射程を記録しているが、米軍の場合はミサイルというべき砲弾をもしいて出された記録である。コスト面は大丈夫か、陸自が運用するFH-70のRAP弾で生じているという命中精度の低下などはあるのか、まだまだ不可解な点が多いが、野砲も現行の52口径から62口径に拡張する事は砲身が余りにも長くなりすぎ非現実的であろう。これが米国のように新型砲弾の使用で代替されうるものなのか、また米国の新型砲弾が陸自で使用される155㍉榴弾砲でも使用は可能なのか、興味は尽きず展開を慎重に見守りたい。
 HARUNA

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米国台風災害報道に想う

2005-09-03 22:31:51 | 国際・政治
 五日前に米南部へ上陸したハリケーンカスリーンは、ニューアリンズ周辺に多大な被害を及ぼし、CNNやABCは言うまでも無くフランスのF2ほか多数の海外メディアが最大のニュースとして放送しているが、わが国の報道は冷ややかである。
 思えば昨年末のインド洋津波災害においてもわが国の最初のトップニュースは津波ではなく、新幹線の硝子にヒビが入ったというニュースであった。
 アラバマ州知事がいうには死者は一万の大台を超える見込みであり、加えて暴動鎮圧の為に一部の地域では戒厳令が発令、しかし州兵がイラク派遣のため足りず衛生環境の悪化は更なる犠牲者を生もうとしている中で、わが国の報道は法人の安否情報を中心とするほかは衆議院選挙、そして殺人事件や暴行事件などである。
 衆議院選挙は重要なテーマではあるが、もう少し海外事情について報道するべきではないだろうか、私はそう想うのである。
 HARUNA

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防衛産業現勢 05.8 一報

2005-09-01 09:26:28 | 防衛・安全保障
■富士重工:UAV試作継続/陸自用無人偵察機システム試作一式19億1331万円、納期18.1.31
■三菱重工:F15近代化改修継続発注/一式、28億1893万円、納期19.2.28
■三菱重工:ペトリオット地上機材改修受注/一式390億6619万円、納期20.3.30
■東芝:ミサイル光波妨害構成要素研究試作受注/9億6537万円、納期18.3.31
■新キャタピラー三菱:海自ブルドーザーD5型/一両、1170万円、納期17.7.29
■東急車輛:海自消防車MB1改2型/一両、7530万円、納期17.7.29
■日産自動車:海自高規格救急車/一両、1475万円、納期17.7.29
■日産ディーゼル:海自人員輸送車中型/一両、1325万円、納期17.7.29
■日産ディーゼル:空自2000G型燃料補給車/五両、1億3694万円、納期18.3.28
■アルティア:海自給水車/二両、2520万円、納期19.2.28
■いすず:陸自92式地雷原処理弾運搬車/二輌、2671万円、17.10.26
■三菱重工:海自MK41VLS一式/31億9641万円、納期19.8.31
■三菱重工:90式SSM一式/12億7272万円、納期19.1.31
■三菱重工:89式魚雷一式/16億4529万円、納期18.3.28
■三菱重工:97式魚雷一式/46億4990万円、納期19.2.28
■三菱重工:対艦ミサイル艦上装置2型/一式1億7178万円、納期19.2.28
■三菱重工:陸自普通科戦闘射撃訓練シュミレータ/一式2億3625万円、納期18.2.28
■三菱重工:海自SH60K航空機系統実習装置/一式3億4587万円、納期17.7.29
■三菱重工:陸自OH1用初度品/四式785万円、納期18.3.17
■三菱重工:陸自UH60JA用初度品/一式5017万円、納期18.2.28
■三菱重工:陸自UH60JA用初度品/一式1億7016万円、納期19.1.31
■三菱重工:陸自UH60JA用初度品/一式1億2956万円、納期19.1.31
■三菱重工:空自04式AAM/一式39億8316万円、納期20.2.28
■三菱重工:空自04式AAMテレメーター弾/一式11億9593万円、納期20.2.28
■三菱重工:空自04式AAMキャプティヴ弾/一式9554万円、納期20.2.28
■三菱重工:空自93式ASM/一式20億8262万円、納期19.2.28
■三菱重工:空自80式ASM/一式1億8367万円、納期18.2.28
■横浜ゴム:陸自OH1用初度品/四式1923万円、納期19.3.31
■日本飛行機:陸自OH1用初度品/一式3289万円、納期19.1.31
■日本エアロスペース:空自航空機用維持部品/輸入/三十八式4804万円、納期18.1.20
■日本エアロスペース:空自航空機用維持部品/輸入/八式3633万円、納期17.7.29
■木村洋行:空自航空機用維持部品/輸入/十一式1632万円、納期18.2.28
■富士重工:UH1J用初度品/十四式4320万円、納期18.2.28
■富士重工:UH1J用初度品/一式923万円、18.9.28
■富士重工:94式水際地雷ヘリ用敷設器一セット8806万円、納期18.2.28
■富士重工:陸自航空機用整備部品/国産/一式3億2763万円、納期18.2.28
■富士重工:陸自AH64D機体用整備初度品/国産/二式2125万円、納期20.1.31
■極東貿易:陸自AH64D期待初度部品/一式1921万円、納期20.1.31
■三井物産:UH-1J用部品/輸入/7321万円、納期17.3.31
■三菱プレンジョン:陸自ドプラー速度センサーJSP-1型二台4141万円、納期18.7.14
■三菱プレンジョン:陸自ドプラー速度センサーJSS-P2型二台2171万円、納期18.7.14
■三菱プレンジョン:陸自慣性航法装置JASN-S24型一式2125万円、納期18.6.15
 以降続報

 HARUNA

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