一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

昭和の将棋(前編)

2023-08-21 22:55:11 | LPSA麹町サロンin DIS
上川香織女流二段との指導対局が終わり、次は島井咲緒里女流二段との指導対局である。むかしのLPSA駒込サロンでは、2名の女流棋士に指導対局をいただけて3,500円だった。現在の麹町サロンは2名9,000円でだいぶ高騰しているが、イヤなら受けなければいいだけの話。
休み時間は、新宿通りをぶらぶらした。開始時間にサロンに戻った。島井女流二段は相変わらずエレガントだ。
島井女流二段は昨年12月4日の文化放送「志の輔の落語DEデート」に出演した。私はそれを拝聴したことを話し、島井女流二段にはそのときの裏話を聞いた。
というわけで、対局開始である。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△4三銀▲2五歩△3三角(第1図)

私の居飛車明示に、島井女流二段は角道を止める四間飛車。私は飛車先の歩を決め、次が作戦の岐路だ。

第1図以下の指し手。▲5七銀△5二金左▲6八銀上△8二玉▲5五歩△6四歩▲5六銀△6三金▲6六歩△7四歩▲4六歩△7三桂▲7七桂△7二銀(第2図)

第1図は居飛車の基本図みたいなもので、ここで構想を立てるのが居飛車の醍醐味である。私は上川女流二段戦と同じく、▲5七銀と上がった。しかし今回は作戦が違う。△5二金左に▲6八銀上とし、次に▲5五歩。温故知新の中央位取りである。
対して島井女流二段は早めに6筋を強化し、私に理想形を作らせない。
△7四歩には▲4六歩とした。これを怠ると、何かのときの△4五歩があり、▲同銀△5四歩と強引に戦端を開かれる恐れがある。よって、▲4六歩が指せたのは大きかった。
島井女流二段は△7三桂。この桂を跳ねれば穴熊はない。島井女流二段の得意を封じたことで、それだけでも中央位取りにした甲斐はあった。
△7二銀に、次の手はまあ、当然であろう。

第2図以下の指し手。▲6五歩△6二飛▲5七銀△5四歩▲6六銀△4五歩▲同歩△6五歩▲同桂△同桂▲同銀右△6四歩(第3図)

現プロ棋界は居飛車全盛で、いまや相掛かりか角換わりしか見ないが、この空間だけは、時代は昭和である。
私は▲6五歩と突いた。この戦法を指したからには当然であろう。対して△6二飛が振り飛車らしい手で、素直に△同歩とは応じてくれない
私は▲5七銀~▲6六銀と応援を出し、島井女流二段はついに△6五歩と取った。
△6四歩に次の手は。

第3図以下の指し手。▲5六銀△5五歩▲同銀左△5四金▲4四歩△同金▲同銀△同角▲5五金△3五角▲4四歩△5二銀▲5三歩△6三銀▲4三歩成△5七銀(第4図)

△6四歩には▲5四銀と摺りこみたい。しかし△同銀▲同歩△同金でまずいと思った。しかしそこで▲4三銀も相当で、もっと検討すべきだったかもしれない。
本譜△5四金に▲同銀は捌かれる。緩衝の▲4四歩が小粋な手。以下△4四同角には、手厚く▲5五金が一公流。島井女流二段も「おおー」とうなった。
△3五角に▲4四歩を利かし、歩の手筋でと金を作った。まだ難しいが、やや有利になったと思った。
△5七銀にはどうするか。

第4図以下の指し手。▲6七金△6五歩▲同金△6六歩▲同金引△同銀成▲同角△5四銀▲5二歩成△6六飛▲同金△3九角(第5図)

△5七銀には捨て置いてもいいのだろうが、大山康晴十五世名人の著書にあるように、なんとなく▲6七金と上がってみた。
島井女流二段は△6五歩と攻めを継続してきたが、私は丁寧に面倒を見る。
しかし△5四銀がと金取りと同時に飛車筋を通した手で、大きい。ここでは自信がなくなってきた。
▲5二歩成も△6六飛を誘発するので気が進まなかったが、ここを受け切れば勝利も見えてくる。
島井女流二段は飛車角交換をし、返す刀で△3九角。まことに迫力があるが、この手なら勝てるかもしれない、と読んでいた。

(つづく)
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宮嶋健太四段誕生

2023-08-20 00:44:43 | 男性棋士
第73回奨励会三段リーグの15・16回戦が19日に行われ、宮嶋健太三段(24歳)が連勝し14勝2敗。2局を残して2位以上が確定し、四段昇段を決めた。
宮嶋新四段は大野八一雄七段門下。2011年に奨励会に入会し、苦節12年で大願を成就した。大野七段は多くの弟子を取っているが、棋士は初めて。大野七段もさぞ喜んでいると思われる。私も宮嶋四段とは面識があり、確か角落ちで1局教わったことがある。
前述のように、これまで多くの奨励会員が退会したので、私がその立場だったら素直に喜べないと思うが、大野門下にはそういうケチな性分の男はいないだろう。
宮嶋四段が、これから何が楽しみかといえば、三段リーグの残り2局を気楽に指せることだ。もちろん1位通過をすれば順位戦の順位が1枚上がるのだが、それは置いといても、こうした状況で指せる三段リーグはめったにない。伸び伸びと指して、リーグタイ記録の16勝を狙ってみようか。
宮嶋健太四段、おめでとうございます。
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第11回 勝手にマッカラン勝負 完結

2023-08-19 00:17:03 | マッカラン勝負
第31期倉敷藤花戦のトーナメント表をお借りして行っている「勝手にマッカラン勝負」。LPSAで唯一勝ち残っている礒谷真帆女流初段の対局が、17日に行われた。では、結果を書こう。

【1回戦】
○船戸陽子女流三段VS●相川春香女流初段
○渡部愛女流三段VS●鈴木環那女流三段
●上川香織女流二段VS○千葉涼子女流四段
○中倉宏美女流二段VS●脇田菜々子女流初段
●島井咲緒里女流二段VS○礒谷真帆女流初段
●堀彩乃女流1級VS○和田あき女流初段
○田中沙紀女流1級VS●山田久美女流四段

【2回戦】
●船戸陽子女流三段VS○西山朋佳女王・女流名人・女流王将
●渡部愛女流三段VS○今井絢女流1級
●中倉宏美女流二段VS○内山あや女流初段
○礒谷真帆女流初段VS●岩佐美帆子女流1級
●田中沙紀女流1級VS○長沢千和子女流四段

【3回戦】
○礒谷真帆女流初段VS●長谷川優貴女流二段

【4回戦】
●礒谷真帆女流初段VS○加藤結李愛女流初段

礒谷女流初段は、4回戦で加藤女流初段と対戦。惜しくも敗退し、今年の「勝手にマッカラン勝負」が終わった。
整理すると、礒谷女流初段3勝、船戸女流三段、渡部女流三段、宏美女流二段、田中女流1級各1勝の計7勝。よって、LPSA一口サポーターは7口21,000円の寄付となる。これは、18日にLPSAサイトから寄付させていただいた。
振り返って、礒谷女流初段の3勝は見事。来年の開催をどうしようか迷うくらいの、勝ちっぷりだった。礒谷女流初段には、今期以上の勝ち星を期待します。
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第64期王位戦第4局「名角」

2023-08-18 00:50:08 | 男性棋戦
第64期王位戦第4局が、15日・16日に行われた。ここまで藤井聡太王位の3勝。佐々木大地七段は文字通り後がないが、ここから4連勝をしようと思うと気が遠くなる。1局でも多く対局数を増やし、主催者への面目を保つつもりで頑張れば、道はわずかに開ける。
第4局は佐々木七段の先手で、相掛かりになった。今年度藤井王位は17勝3敗と「平常運転」だが、この3敗は後手番でのもの。よって本局、いつもよりは佐々木七段への勝利期待値は上がっている。
初日は藤井王位が動き、最終手は佐々木七段が飛車取りに金を上がった。これに藤井王位が時間を掛け、封じる。飛車を切れば大決戦。横に逃げればじっくりした展開、というところ。藤井王位には飛車切りや、飛車のタダ捨てのイメージがあるが、それはハッキリ勝利を確信したときに限られる。今回は飛車を切ったとしても後手に明快な勝ちはないし、そこまで精査するには時間がなさすぎる。それなのに封じたということは、飛車を横に逃げたのではないか?
果たして藤井王位の封じ手は、飛車を横に逃げる手だった。そこから何手か進み、藤井王位は飛車をさらに横に動かした。
これに対しては、飛車の横に角を打つのがABEMA AIの推奨手となった。その心は、飛車の動きを遮断したあと、銀を上げて飛車を取りに行くのだ。
それはそうなのだが、飛車の横に角を据える手に違和感がありすぎて、佐々木七段は指さないと思った。
ところが、佐々木七段はタイム5分で角を打った。これには本当に驚いた。このとき、ひょっとしたら佐々木七段が勝つのではと思った。
藤井王位は47分の熟考で角を合わせる。その2手前の消費時間が2分だったから、藤井王位が意表を衝かれたのは明らかだ。
だが不思議なのは、佐々木七段がこの角を取るのに47分考えたことだ。私なぞは、すぐに角交換し、再度角を打てばいいのではと思うが、そう簡単な話でもないのだろう。
だが実戦はやっぱり佐々木七段が角を打ち直し、有利になった。……というのは、私が形勢バーを見ていたからで、それがなければどっちがいいかまったく分からない。
事実、その後は藤井王位に形勢の針が触れたこともあったのだ。だが、AI推奨の異筋の桂を藤井王位が逃し、はっきりと佐々木七段が優勢になった。
この後は佐々木七段が徐々に差を拡げ、最後は好点に角を打って、藤井王位、がっくりとこうべを垂れて投了。勝ち将棋鬼のごとしで、中盤、飛車の横利きに打った角が、最後は詰みの重要なピースとなった。
佐々木七段は、待望のシリーズ初勝利。同じ負けるにしても、0勝4敗と1勝4敗はえらい違いだ。ストレート負けは誰でもできるが、藤井王位から勝ちをもぎとるのは、同じプロでもなかなかできないことだからだ。
第5局は22日・23日。藤井王位の絶対的優勢に変わりはないが、次も落とすようだと、第6局は三度後手番になり、あれあれ?ということになる。これだから番勝負は恐ろしい。
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竜王戦初登場の棋士の成績

2023-08-17 00:33:28 | 将棋雑記
15日に行われた第36期竜王戦挑戦者決定戦第2局・永瀬拓矢王座VS伊藤匠六段戦は、伊藤六段が苦戦の将棋を勝ち切り、タイトル戦初登場を決めた。
ランキング戦5組からの挑戦権獲得は、竜王戦36期の歴史で初めて。伊藤六段は竜王挑戦につき、七段に昇段した。ちなみに竜王挑戦においての特別昇段は、伊藤七段で7人目。
藤井聡太竜王と伊藤七段は同学年である。第1局開始が10月6日・7日なので、藤井竜王21歳4ヶ月、伊藤七段20歳11ヶ月となり、合計41歳は、1990年・第57期棋聖戦の屋敷伸之棋聖(18歳10ヶ月)VS森下卓六段(24歳5ヶ月)の42歳を上回る、最年少記録となる。
また「竜王戦がタイトル戦初登場」は、伊藤七段で9人目となる。当然若手が多いので、さすがに「八段」はいない。
では、過去8人の成績を記してみよう。分かりやすいように、初登場側から見た勝敗にした。

第1期 島朗六段○○○○米長邦雄九段
第2期 羽生善治六段●持●○○○●○島朗竜王
第10期 真田圭一六段●●●●谷川浩司竜王
第11期 藤井猛七段○○○○谷川浩司竜王
第12期 鈴木大介六段●●●○●藤井猛竜王
第15期 阿部隆七段千千●●○○○●●羽生善治竜王
第18期 木村一基七段●●●●渡辺明竜王
第27期 糸谷哲郎七段○○●○○森内俊之竜王
第36期 伊藤匠七段 ? 藤井聡太竜王

初登場側の4勝4敗。個別の勝敗も20勝20敗で、いい勝負だ。
藤井竜王と伊藤七段の対戦成績は2局あり、藤井竜王の2勝。しかしこれはあくまでも参考にすぎない。藤井竜王はたしかにタイトル戦無敗だが、伊藤七段には底知れない強さがある。藤井竜王も最大限の警戒をしているに違いない。七番勝負が楽しみである。
コメント (2)
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