
本書は、高木彬光さんのずいぶん前の本だが、2009年に文庫本で出た。横浜開港150周年を記念して出たのだ。
明治維新から、日露戦争頃までの歴史を描いた本は、面白いものが多い。
本書は、あまり知られていないが、江戸から明治に生きた高島嘉右衛門の生涯を描いた本だ。
この時代は、日本がコペルニクス的に展開し、あれよあれよという間に、世界の列強に仲間入りしていった時代。まさに、前しか見ていなかった。後ろを見る気もなかったし、見る必要もなかった。
1832年生まれで、1914年に亡くなった高島さんは、まさにこの時代に生き抜いた人だ。
高島さんと言えば、今は亡き東急の高島駅。今は、みなとみらい線の新高島駅で知られるが、この一帯が、高島さんが埋め立てた土地だ。
日本最初の新橋ー横浜間の鉄道建設にも、大きく貢献した。当時、陸の孤島だった横浜への鉄道建設には、埋め立てが必要で、それを行ったのが、高島さんなのだ。高島さんがいなかったら、神奈川止まりになっていたかもしれない。
さらに、文明開化のころの横浜の諸プロジェクトには、ほとんど絡んでいる。今の横浜を作った人と言っても過言ではない。
東海道五十三次を見るとわかるが、神奈川の宿の次は、保土ヶ谷で、今の横浜と呼ばれている一帯は、海だったのだ。
もっと面白いのは、実は、その前の部分なのだが、まさに波乱万丈。作り話ではないかと思うぐらい。
明治維新前後の歴史に興味のある人、横浜に興味のある人向け。
面白い本だ。