
本書は、志賀さんという放送評論家によって、2年ぐらい前に発行された本。志賀さんの経歴を見ると、大学講師を経て、放送評論家とあるが、それで、食えたのだろうか。
まさに、TVの歴史と共に生きた人だ。たぶん今、80歳ぐらいの人。
難は、大著で重すぎる。5章に分かれているので、1章づつ、650円ぐらいの文庫で出してもらうとありがたかった。
自ら、テレビっ子と思っていた私だが、本書を読むと、全然そうでなかったことがわかる。私が、TVを見始める前から、全く知らない分野で、試行錯誤が繰り返されていたのだ。ただ、アニメの走りが、鉄腕アトムというから、アニメの分野では、私は、最初から、テレビっ子だった。
選別の基準は不明だが、テレビ文化の初期25年間の、歴史に残る番組について、深い洞察を加えている。
第一章の揺籃期は、本当に揺籃期。まだ自力で番組を作る力はほとんどなかった。かといって、外国から、番組を買う金もない。
”ジェスチャー”は、NHKと思っていたが、日テレでもジェスチャークイズをやっていたという。”何でもやりまショー”という番組では、早慶戦で、早稲田の応援席で、慶応がんばれという応援をしたという。”事件記者”という番組は、NHKで、放送が続かなくなって、民放が引き継いだという。
今から、見ると、考えられないことばかり。ムチャクチャである。
私の記憶に残るのは、チロリン村、ブーフーウー(声優に、大山のぶよ、黒柳徹子らがいる)ぐらいから。ついている年表を見ると、昭和39年からであり、幼稚園ぐらいからだったことが、わかる。我が家に、いつからテレビがあったのかは、今となっては、定かではないのだが。
”鉄腕アトム”は、日本初のテレビ漫画シリーズ。全て手作業の中、ほとんど滅茶苦茶な企画だっただらしい。海外でも放映され、利益は上げた。海外では、アストロボーイだが、アトムは、ONARAを意味したから、名前を変えたそうだ。
”ひょっこりひょうたん島”は、かぶりつきで見ていたが、単なるおとぎ話ではなく、社会を風刺した、高度な人形劇だった。井上ひさしさんの貢献が大きい。
ウルトラシリーズも当然出て来る。最初、アンバランスゾーンという企画だったが、当時のオリンピックの体操で、連発されたウルトラCのCを、クエスチョンのQにかえ、”ウルトラQ”で、スタート。その後の人気は、ご存知のとおり。
ゲゲゲの鬼太郎も名作。本書では、鬼や、目玉の妖怪など、おばけの分析も行っている。とにかく濃い本。
その後、発展期、成熟期に話は進むのだが、長くなるので、割愛。実は、その時期の方が、テレビをよく見ていたことがわかった。受験も近かったはずなのだが。
”遠くへ行きたい”に最も多く出演した、渡部文夫さんいい言葉があった。
「旅は中毒になるみたいで、行かないとおかしくなる。もう生活の一部ですね。好奇心は、普段は邪魔だから眠っている。旅に出ると、それがむき出しになる。さまざまなものを見聞きする内に磨かれ、鍛えられていく。だから、僕は変なことに詳しいですよ。」