興亡の世界史シリーズの中で、本書は、まだ紹介していなかったと思う。
イスラームというと、9.11以来すっかり悪者。ただ、日本人からはやや遠い感じでよくわからないというのが、大体のイメージだろう。
私も、受験の時、世界史の中で勉強して以来、ほとんど縁がなかった。
イスラームという言葉に再会したのが、シンガポールでの生活だろう。国内でも、3割ぐらいの人がイスラム教信者だし、マレーシア、インドネシアというイスラム教国の中でも、重要な二国に完全に取り囲まれている。
表面では、民族対立はないが、9.11の時も、イスラム教の人々は、陰で喝さいしていたと聞く。
それだけ、世界的に、根深い対立が続いてしまっている。
解決のためには、やはりお互いを知るところからという意味で、本書は、まさにイスラムの起こりから、その発展と衰退、そして将来の姿まで予測してくれていて、うってつけの書と言える。
そのキーとなるかもしれないのが、「ジハード」という言葉の捉え方。何となく、聖戦という意味と捉えられているが、本書によれば、三つの側面があるという。「内面のジハード」と、「社会的ジハード」と、「剣のジハード」だ。
イスラム→十字軍→ジハード→9.11という思考回路になっていないか?
それにしても、何もなかったアラビア半島に生まれ、ヨーロッパを飲み込まんとした大帝国を築き、帝国は消えたが、イスラム教は、今も絶大な力を誇っている。仏教とはえらい違いだ。これも、「ジハード」の多面性によるものだろう。イスラム教は、政治と深く結びついているケースが多い。
本書で、思い知ったのは、イスラムの高い文明性だ。例えば、アラビア語源の英語がいかに多いことか。コーヒー、レモン、キャンディー、バナナ、ブラウス、ジャンパーetc. 日本で、当たり前に使われている片仮名言葉にもたくさん紛れているのだ。
もっと、お互い知りあおう!