事例紹介コラムです。
読者の方から、「下部リーグへの降格について、傾向を観たいので何か事例を調べて紹介して欲しい。黄色いチームとか」とリクエストが来ました。うーむ、そういうのを知りたい気持ちはわかりますが、某黄色いチームの昔の嫌な記憶を穿り出すようで迷いましたが、今や黄色いチームも3年連続3大タイトルを獲得している強豪の仲間入りをしています。基本的に読者の「知りたいリクエスト」は断らない方針なので、調べさせていただきました。カテゴリに限らず、何かの参考になればと」思います。
【降格チームのパターン】
①降格圏内に毎年顔を出し、危険シグナルが出ていたが根本的な改革ができていなかったパターン
②戦力はある程度整っているが、監督の交代のタイミングを間違えたパターン
③選手補強のタイミングを間違えたパターン
【①2005年J1柏のJ2降格】
①はこの前の年の2004年にJ1J2入れ替え戦に出場し、福岡さんに快勝してJ1残留を決めましたが、すでに根本的な対策が必要になっていました。入れ替え戦圏内に近づいても、「入れ替え戦でJ2に必ず勝てるから大丈夫」とタカをくくっていたのが間違いでした。当時初昇格を狙う甲府さんに、1-2と2-6という記録的な大敗を喫し、J2に沈みました。
当時の戦力は、玉田や明神など代表クラスもおり、決して選手レベルは低くなかったです。ただ、当時やんちゃ過ぎるサポーター側とチーム側との関係が今の「幸せな関係」ではなく、ホームで勝てない状況がずっと続いていました。降格後の2006年に岡山劇場のもと蘇生しました。この例は、昨年、フロント内の不祥事もあり、チーム・クラブとして一つになれていなかった印象のある鳥取さんも近いのかもしれません。
そして、個人的には「経営」などの構造的な部分も大きいと思います。下リーグに降格しないクラブ、100年続くクラブというのはホームタウン地域全体の幅広い支援を受ける経営構造になっていると思います。個人商店では「一時の出来事」にはなっても、「文化」には成りえないでしょう。
【②2009年J1柏のJ2降格】
この②のパターンは、経験豊富なベテラン監督でなく、生え抜きなど経験が薄い監督が就任したが、最初から結果が伴わず、交代論が出ていてもフロントの「育てたい」という思いが優先して、後半戦に入っても替えず、終盤に入ってやっと替えてもすでに遅かったパターンです。
この年7月に高橋監督からネルシーニョ監督に交代しましたが、次の年にJ1昇格即優勝した名監督でも降格を防げなかったケースになり、当時「もっと早く見切りをつけるべきだった」と言われていました。
【③2009年のJ1磐田のJ1残留】
これはタイミングを間違えなかった事例として磐田さんを紹介します。このシーズンは磐田さんが5試合未勝利で最下位だったチームがイ・グノ選手を補強し、デビュー戦でいきなり2ゴールを挙げて初勝利をもたらし、その後の8試合で6得点を挙げて、最下位から9位まで浮上させる原動力となった例です。これは今でも鮮明に覚えていますね。磐田さんは黄金時代から世代交代が上手くいっていないと言われ、結局4年後にJ2に降格。今年の神戸さんも近いかも。
あと、この③は怪我人続出のケースと重なります。突如、戦力が大幅にダウンして選手補強しようと動くが、シーズンに入っているため、思うように話が進まないという事。最も、すでに補強をしているのに・・・というパターンもあるようですが。
戦力がいいから、恵まれていないからという見方もありますが、最近のJ1を観ると鳥栖さんや甲府さんはどうでしょうか。エレベータークラブから見事にJ1定着クラブになっており、年間予算や戦力のみが明暗を分けるとは言えないでしょう。当ブログとしては、「監督」という部分が最も大きいと思います。つまり、いい素材があっても、シェフの腕次第という事でしょうか。
ナンバーWEBで、ガンバさん、磐田さんがJ2降格したように、監督交代は必ずしも低迷脱出の特効薬とはなりえないとありますが、当ブログでみれば②でなく①のパターン。監督云々ではなく、その前のシーズンくらいから降格シグナルが出ていたのではないでしょうか。
あと、前にも言いましたが、降格対象圏の一つ二つ手前に陥ると、そう簡単には上へ浮上できない傾向があります。なぜなら残留争いをしている他のチームも頑張るからです。自分ところのチームだけが頑張ればいいという訳ではありません。その位置にいる事自体が問題なのかも。
前半戦ならば間に合いますが、後半に入っても危険ゾーンにいれば本当に大変。アマかプロかの生存競争のように、激しい競争となります。入れ替え戦になったら比較的に、下のリーグのチームの方が勢いのまま勝ち切るケースが多いのではないでしょうか。昨年の讃岐さんのように。
あと、思い込みは禁物です。2009年の時がまさにそうでしたが、危険ゾーンにいて周りから「降格するんじゃないか」と指摘されても、まさか本当に落ちる事はないだろと信じ切っているパターンがありますが、2009年の時はそれでも降格しました。なので、まさかうちが降格する訳がないと思い込んでいるのは本当に危険です。
という事で、「降格」の事例特集でした。最後に、仮に下のリーグに降格しても、1年で復帰すれば逆にパワーアップしている傾向もある事を付け加えます。2011年のJ1柏、そういえば今年の神戸さんもそうですね。J1の現在のトップ10で、J2降格を経験しているチームは4チーム。うち復帰後J1優勝は2チーム。J1柏は昇格即優勝、広島さんは連覇してます。降格して、1年で戻れるかどうかが大きいと思います。