事例紹介コラムです。
現在、日本のバスケ界は大変な事になっており、五輪予選出場に向けて、タスクフォースを招いて改革の真っ最中です。そんな中、「万策尽きた。NBL和歌山、経営難で活動停止」というNBLのショッキングなニュースが飛び込んできました。和歌山が破たんしたのです。NBLといえば、日本協会の直轄の組織で日本選手権も主体的に実施している国内トップリーグなのに、所属クラブが破たんした訳です。これは一時の悲劇か、それとも崩壊へのプロローグなのか。以下、抜粋して紹介。
NBL和歌山は7日に活動停止を発表。 休部したパナソニックを引き継ぐ形で、'13年にプロチームとして発足。NBLがスタートした昨季から参戦し、初年度は準優勝を達成。経営悪化を理由に昨年6月には運営会社の社長などを刷新して今季に臨んだものの、ホームゲームの平均入場者数が昨季の1,247人から622人と低迷。未払い報酬の支払いを求めて、元所属選手らが提訴。昨年12月に和解が成立したが、経営難で存続の危機にあったとか。
毎日新聞該当ページ:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150107-00000035-mai-spo
NBL和歌山公式HP該当ページ:http://www.trians.jp/news/detail/2015-01-07/3038
NBLでは昨年にも、つくばロボッツが経営破綻し、新法人が運営を始めるなど経営問題が相次いで表面化。NBL理事長は、経営難に陥った理由として「収入減が大きい」と説明。平均入場者数の減少で入場料収入が大幅に減り、スポンサーも昨季の五十数社から数社まで激減。また、和歌山県協会を中心に、地元企業などを含めて新運営組織を設立してチームを存続する動きがあるそうです。
つくばのニュースも聞いていましたが、バスケ界はトラブル続きですね。そんな中で毎日新聞で去年12月に、分裂している日本のバスケ界に関して興味深い記事が出ていました。以下、抜粋して紹介。
【男子統合、財政問題が障害 bjリーグ、累損15億円 NBL、プロに経営不安】
NBLとbjリーグの統合協議の中で「両リーグの財政に関する議論を真っ先にやらないといけない」と日本協会丸尾副会長はコメント。 現実的に統合を進める障壁となっているのは理念ではなく財政状況。「互いに財布の中身を見せないとは本気ではなかった証拠」と文科省幹部は指摘。焦点に浮上しているのがbjが抱える約15億円の累積損失。
bjによると、リーグ創設の際、株式会社化して約200社から資本金と資本準備金として約15億4千万円を保有。bjは今季、10年目のシーズンを迎えたが、当初は赤字続きだった所属運営会社も最近では単年収支で黒字もあるが、各チームへの支援名目で資金を分配したため、資本金などは約4千万円にまで減少。bjリーグの阿部専務は、減った約15億円を「借金や負債でもない」と強調したうえで「チームを育てるための投資が必要だった。『10年、20年の長い目で見てほしい』と出資者には理解してもらっている」と、分配金の意義を説明。
この数字にJBA側は疑心暗鬼であり、「(統合した新法人に)15億円をどう補填するのかは大きな問題で、新法人が肩代わりする事も収益で賄う事も不可能。6チームで創設したbjリーグの今までの拡大路線も内実は、新たなチームのリーグへの参加費(2,500万円)を頼りに運営する自転車操業ではないのかとも言われているとか。
一方のJBA傘下のNBLも人ごとではなく、実業団チームは堅実経営だが、プロチームは運営が苦しい。JBA内部からも「丼勘定」と批判。
タスクフォースのバウマン事務総長は両リーグの統合論議を「JBAは頑固頭で問題の解決策を見いだせず、bjの態度も責任感がない」とコメント。両リーグの財政状況こそが最大の障壁と、FIBAは財務部長をタスクフォースのメンバーとして送り込む意向。しかし、ビジネスと割り切って解決を目指すバウマン流が、両者の感情的なしこりをほぐすのは容易でなく、一筋縄ではいかないと文科省幹部も懸念。
【FIBA、市場拡大へ強権】
今回のFIBAの強権発動について、事務総長を知る関係者は「FIBAの収益を上げようと考えている」とも見られており、米国は世界最高峰のプロリーグ(NBA)が発展し、バウマン事務総長のお膝元の欧州でもスペイン、フランス、イタリアなどが五輪でメダルを獲得して定着。リオ五輪翌年からの新たな世界戦略で、目をつけたのが日本を含めたアジア市場という事になるとか。
日本のバスケ人口(約62万人)は多く、学校教育にも採用されて人気は高い。国際的に知名度のある企業もあって市場拡大も見込まれ、将来的に日本、中国、韓国を中心とする「アジア・リーグ構想」も存在。
また、東京五輪に向けて、文部科学省も仲裁に乗り出し、「政府の介入」との国際的な批判をかわすためにタスクフォースにオブザーバー参加。日本オリンピック委員会はJBAからの事情聴取や警告にとどまっているが、バスケ界の混乱は国主導を加速しかねないとしています。
五輪予選が困難な状況で、東京五輪招致の際に宣言した「アスリートファースト(選手最優先)」の理念は揺らいでおり、ようやく選手達も、自立とは与えられるものではなく、自らが手にしていくものに気付いたのなら、嵐の中で芽吹いた希望のつぼみとなるかもしれないと締めくくっています。
いやぁ、根が深いですね。一見地方都市まで今まで順調に拡大路線を続けてきたbjリーグもそんな裏事情があったとは知らなかったです。bjはリーグそのものの財務体質、NBLはプロクラブの脆弱な経営体質と、それぞれに弱点があるようです。
タスクフォースも文科省も、今回の改革でねじり鉢巻きを引き締めて取り組まなければなりませんね。素人の発想ですが、両リーグの統合というよりは一度全部解消(発展的解散)して、一から新たにプロリーグを立ち上げていってはいかがでしょうか。タスクフォースの今後の苦労も目に見えるし、FIBAのアジア戦略も結構ですが、とにかく選手が五輪に参加できないという事は絶対に解決しなければならないと思います。
明治安田生命Jリーグも、今の戦略が通用しなくなって今後全体的に頭打ちになれば、FIFA主導でタスクフォースを組んでもらって、ブンデスリーガをお手本に大改革を行ってはいかがでしょうか。自助努力の限界が見えてくれば、早く気付いて対応しないと。バスケの選手は五輪に出られない状況に対して、サッカーの選手は今後W杯に出られなくなる危険性が出てくるかもしれません。
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