事例紹介コラムです。
毎年、この時期に某黄色いチームのサポカン(スタートミーティング)が行われており、きちんと公開される議事録を読んでいます。監督ほかクラブの体制が大きく変わった今年、内容が濃かったですね。J1柏のサポカン歴は長く、J1優勝するまでは「イエローハウス」という事で毎月のようにサポーターと対話をしていました。優勝した2011年から開催回数も減りましたが、あの毎月のようにイエローハウスをやっていた時代があるから、去年までの黄金時代があったと思います。今回、三度の監督の内部昇格という事で、議事録を読んでもお互いの緊張感が伝わってきました。質問する方も答える方もベテラン中のベテランという感じでした。以下、抜粋して紹介。
【概要】
・日時: 2015年1月17日(土) 18:30~20:40
・会場: 柏の葉カンファレンスセンター
・来場者数: 約350人
・登壇者: ㈱日立柏レイソル 萩原社長、寺坂GM、渡辺ダイレクター
【監督、ダイレクターの交代について】
寺坂GM:
吉田監督に替えた理由は、今までよりも、より良いチーム、より強いチームを作るために今回の体制を、我々が持つ基盤を基にしてこの体制にしたということ。後退的な、いわゆる経営状態とかクラブの持つ経済状況を気にして、やむを得ず育成型のクラブを目指すという訳ではない。より強くするためのイノベーションのつもり。我々が指標として持って、こういうクラブ作りをしようという、その指標の目標値に今到達したというところは思っている。
アカデミーからトップのチームまでシームレスな形で同じサッカーをやっていく。アカデミーの選手をたくさんトップチームに使ってそれで勝っていこうと単に考えているわけではなくて。アカデミーの選手だけで勝てるのか、吉田達磨で大丈夫なのかというご意見があったようですが、アカデミーの選手一点張りでなんて考え方はしていないし、吉田監督も、勝つためのバランスを考えた上での選手の編成というのを望んでいるので、とにかく数の問題ではない。
育てるというのは非常に難しくて自分たちが思っている選手を自分たちが任意でしっかり育てていくというのはなかなか難しいことだと思うし、当然そういう意味でトップチームの選手を揃えるためにアカデミーの選手を育てあげる中で、充足できないものというのは当然ヘッドハンティングで持ってこなければいけない。数を、アカデミー出身者をトップチームに揃えたからといって、アカデミーを主体にしたトップチームをやっていくという言い方には、当たらないと思う。
質問者A:
昨日あたりから練習見学で、バックスタンドの檻みたいなところに入れられて、選手の練習は遠くからは見えるが、ほとんど目では見えないという状況になっている。去年まで真横で見られるというのがファンにとっては素晴らしい環境だったが、いきなり、練習ゾーンから締め出されているので、どういう経緯でこうなったのか。
寺坂GM:
1つは監督の要望。現時点では、暫定的な形だと聞いている。不特定多数の来場者に門を開いているので、分からないという状況もあって、少し神経質になっている部分もあると思うが、クラブとしては現状は監督の意思を尊重したいと思う。現状ではとりあえず暫定という形で聞いているので、現場の意思を今は尊重して欲しい。
質問者B:
監督交代で内部から昇格という形は、どうしても2009年のことがあって不安な部分がある。他の監督候補もいて、比べた結果、吉田監督がベストだという決定だったのか、それとも吉田新監督ありきの話だったのか。
寺坂GM:
吉田監督ありきで決定した。 ネルシーニョ前監督からもレイソルの将来をどう考えているのかという話が数年前からあり、逆に自分からはネルシーニョに育成の話を色々して、5年間経った。そういう中で、まずは吉田達磨という人物が脈々とうちのアカデミーという組織を守ってきた旗頭と判断した。吉田達磨をレイソルの監督にするという前提は実は3、4年前から考えていた。
質問者C:
運営会社としては、収支を拡大して、観客動員を増やしていくという面でどういう考えがあるのか。スタジアムに来てくださいという姿勢が会社から、チームから感じられない実態だと思うが、レイソルとして企業努力が足りないんじゃないかという風に常々感じているが。どういう考えか。
萩原社長:
今このスタジアムをこれから拡大しようということは今のところ考えていない。このスタジアムが満杯になって、もうどうしようもないというくらいになって、はじめて将来的に拡大という話が出来ると思う。まずは今のスタジアムでもっと観客動員を拡大していくというのが我々のスタンスだと思っている。集客努力が足りないのではないかという点は、不十分だろうという事だと思うので、そこは我々もよく検討していきたい。
また、スタジアム自体の施設部分で細かく出来るところからファン・サポーターより観やすくなるようにしたいと思っており、やれるところからしっかりやっていきたい。
質疑応答で、まずは練習場の問題。去年までは間に何も隔てるもののなく、選手と近い位置で見学できたのに、チーム体制が変わって見学エリアの変更がありました。横の桜並木から、スタンド下のネットで遮られた空間に追いやられて不満が出ていたようです。フロントの説明では、暫定的なことのようなので、心配はないようですね。他のクラブでは、ネットで四方を囲われた練習場や試合会場が多いようですが、こちらの環境を見ると間には無いもないのが理想的な環境という事がよくわかりました。
他に一番気になる「内部昇格による新監督就任」の話題がありました。今シーズンはトップチーム27名中15名がアカデミー出身の選手という状態になり、育成型にどんどん特化していくという返答だと思っていましたが、予想に反して「アカデミー出身者をトップチームに揃えたからといって、アカデミーを主体にしたトップチームをやっていく訳ではない」という回答でした。当ブログでも、よそのチームのように「アカデミー閥」の弊害が生じるために、アカデミー組と移籍組のバランスだと思います。そういう面では良かったのではないでしょうか。
あと、3、4年前から吉田体制を考えていたという事ですが、結果が出ればいいが、出なかった場合はどうするのか、その部分はなかったですね。例えば前半で降格圏の順位に落ちてしまったら、後半は荒療治をする覚悟があるのか。それができなかったから2009年の2度目のJ2降格の憂き目を観る事になるではないでしょうか。
他に「他のクラブに比べて情報の発信の遅いために、ファンやサポーターを逃してしまうという風に感じている。情報発信についてどういう風に考えているのか」という質問もあったようですね。でも柏はSNSなどよくやっていると思います。広報ブログも一昔前は「毎日更新」していたし、ツイッタ―やフェイスブックもちゃんとやっている。限られた人しか情報を受け取れないLINEくらいしかやっていないところもある中で、情報化が進んでいる方だと思います。広報ブログのスキルも全然高いと思います。
興味がある人は、クラブ公式HPの議事録をお読みください。サポーターカンファレンスをきちんとやっているところ、やっていないところといろいろありますが、柏は歴史があります。ファン・サポーターとフロントがしっかり対峙して、実りある対話をして、一緒に肩を組みながら前進していっていると思います。いろいろ観ていると、サポカンはサポーターから開催を促すものではなく、本来はチームの管理人であるフロントから事業監査的に自主的に行うものだと認識しています。サポカンは当ブログでの評価基準「Jクラブの付加価値」のうちの一つ。各クラブのサポカンの状況はこちらの記事をご覧ください。
柏は、募金活動は毎月公式HPで報告があるし、サポカンをやればすぐに公式に議事録を載せるし、本当に付加価値の高いクラブだと思います。当ブログでの「カリスマの存在」ですね。
J1柏公式HP該当ページ:http://blog.reysol.co.jp/news/2015/013277.html