事例紹介コラムです。
12月中旬にスポーツ欄に「Jの成長戦略」という特集が載っていました。上中下と3回シリーズになります。まずは「上」の「デジタルで攻める」というメディア面での戦略論です。以下、抜粋して紹介。
11月22日のJ1での浦和」対G大阪のNHK生中継の視聴率は前半がわずか2.2%、後半が3.0%を記録しJリーグ関係者に衝撃。「ファンや関係者間だけでの盛り上がりで、社会一般の関心は高くないという事。ファンが固定化し、広がりがないのが現状」と中西常務のコメント。Jリーグは「魅力的なサッカーの追求」と、「いかに社会に広く伝えるか」が発展のカギと強い認識。
2015シーズンからの2ステージ制とチャンピオンシップの導入で10億円の増収を見込み、その増収分を未来に向けた戦略投資として、Jリーグの魅力を伝えるためのデジタル事業と選手育成に毎年5億円ずつ使う事を決定。
デジタル事業の手始めが、各クラブの公式サイトのプラットフォームの統一化。チケッティング、グッズ類のオンライン販売の決済等を共通実施で可能にし、各クラブ」のコスト削減、取得できる膨大な顧客データの活用、Jリーグのブランドの統一感の創出を狙うとか。更にサイトでの動画配信の強化を構想。
【MLBを参考に】
Jリーグが参考にしているのが、MLB(米メジャーリーグ)で、MLBは2000年に30球団が約1億円ずつ投資して、ネットビジネス会社のMLBアドバンスト・メディアを設立。パソコンやスマフホ、タブレット等のデジタル機器向けの逐次放送などを始め、ドル箱化に。
もはやスポーツ観戦はTVだけでなく、場所を選ばずデジタル機器で手軽に楽しむ時代。「メディア環境が変わった今、後れを取ってはならない」と中西常務のコメント。
欧米の有力プロスポーツは動画配信でJリーグのはるか先を行く。ブンデスリーガは独自の映像製作会社を設立。リーグの魅力はコンタクトの激しさである事から、「痛いシーン」の特集等を編集、配信し、ファン獲得に活用。MLBアドバンスト・メディアは投球・打撃シーンだけをすべて見せるダイジェスト放送が人気。
日本でもいち早くJ1鹿島はカシマスタジアムに最先端の鬼気を備えた放送用スタジオを設置し、スカパー!中継向けの映像を独自で製作。「クラブが主体性を持って、ファンに見せたい映像を作る。もちろんクラブスポンサーの看板もしったり映せる」と事業部長のコメント。
しかし、Jリーグのネットでの動画配信の権利はスカパー!が持つため、リーグやクラブが公式サイトで許可なしに配信できる映像は過去のものに限定。jりーぐはスカパー!の理解を得られれば、映像の配信を充実させる意向。
【IT人材を確保】
動画情報はネット上で拡散。近い将来にデジタル事業が重要な位置を占めるのは確実。「しかし、各クラブにはまだテクノロジーの変化に対応できるITエンジニアもネット上の個人情報を管理するセキュリティーのプロもいない」と村井チェアマンのコメント。
そこで、そういた人材を確保し、デジタル事業の関連会社の設立が視野に。来シーズンはスウェーデンのカイロンヘゴ社の「トラキャプ」というシステムを導入し、選手とボールの動きを追い、走行距離や速度等のデータをスマホ等にリアルタイムで配信。機材のレンタル料等で年間9千万円がかかるが、選手のパフォーマンスを印象ではなく、数値やグラフィックで示す事で試合の楽しみ方の幅を広げるそうです。
Jリーグは今まで時代の流れに余りにも鈍感であり、この事業の加速が人の目を向けさせるのが困難な時代になっておると締めくくっています。
雑感になりますが、まずはドイツでなく、商業主義の象徴であるアメリカ、しかもMLSでなく大リーグをお手本にしようという動きに首をかしげます。視察にも誰だったか行ったようですね。確かに最近は、若いファン・サポーターを中心にスマホやタブレットで、スカパー!の動画を観る時代。各クラブの公式サイトのプラットフォームの統一化はいい事だと思います。現在は、各クラブで内容もスキルもバラバラな状態で、コンテンツもこんなに違うのかとうなる位に差が開き過ぎ。個人的にはぜひ、「ホームタウン活動」とか「地域・社会貢献活動」のページの充実を必須にして欲しいですね。あと、SNSの活用状況もバラバラ。特に公式フェイスブックはやっていないところがほとんど無くなりましたが、この辺りはぜひ統一して、未利用のところには情報発信・開示を義務付けて欲しいですね。
独自の動画配信といえば、なでしこリーグ(なでしこTV)が先駆者ですね。もっとも認知度向上が最優先されているからでしょうが。明治安田生命Jリーグには「スカパー!依存体質」が重く引っかかってくるのではないでしょうか。明治安田生命Jリーグで独自にやろうとすればするほど、スカパー!の優先性が脅かされる訳なので、絶対に抵抗が出ると思います。「来季からの分配金の半減を考えている」という風に。その辺りはアメリカではなく、ドイツを参考にすべきと考えます。スカパー!とうまく共存できたらいいですね。
ただ、思い出しましたが、この映像ビジネスは将来的に無料化すると聞いています。昔の報道で、動画配信の無料化が近々やってくるという記事を読んだ事があります。(探してみます) つまり、現在はスカパー!に加入しなければ、明治安田生命Jリーグの試合動画は視聴できませんが、そのうちに広告付きの動画を観られる時代が来るというもの。そうなると、現在の放送ビジネスは完全に瓦解しますね。
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