リスペクト(事例紹介)コラムです。
今日はバスケです。現在、オフシーズン中ですが、先日、スポナビに「大河チェアマンが語るお金の話」というコラムが載りました。Bリーグ開幕シーズンの総括とともに、新たに出てきた課題や今後の展望を、大河チェアマンへのインタビューという形で、詳しく書かれてありました。少々長い記事になりましたが、本当によくわかるコラムです。以下、抜粋して紹介。
【Bリーグ初年度を振り返る 経営編】
〔B1クラブの平均年間収入は推定7億円前後〕
――各クラブの経営実績の見込みは?
(B1クラブの平均年間収入は)7億円前後と推定。最大と最少の比較では、1年単位で10億円くらいいったチームがあり、一番下は4億円くらいと想定。
――クラブごとの格差を指摘する声もあったが、B2はどうか?
鹿児島という例外はありましたが、他は(ライセンスの条件だった年間収入)1億円超えを達成。上は3億円くらいいっているのではないか。2倍、2.5倍の差は、ある意味で仕方がない部分がある。上がどんどん伸びていくと戦力差が拡大するから不公平という理由でサラリーキャップをかけたりすると、全く(成長とは)逆行してしまう話に。KBLは韓国人選手のサラリーキャップ(2億5,000万円)があり、韓国人選手の年俸は1人平均で2,000万円以上。サッカーや野球は日本の方が高いのに、バスケは逆であり、そこを解消するのが先決。
――J1とB1を比べると規模感はどれくらい違うか?
J1は(1クラブ平均収入が)おおよそ30億円半ばで、B1はその1/5くらい。「選手1人当たりの生産性」を一つの指標にしており、1人の選手が稼ぎ出す売上はサッカーが1億円、バスケは5,000~6,000万円。そこは日本人選手の平均年俸と強い因果関係が存在。日本人選手の平均年俸はJ1で大体2,000万円。B1の今季の平均年俸は1,000万円を少し超えるくらいの水準。
――Bリーグの収入に占める人件費比率は野球、サッカーと一致しているか?
似ており、選手人件費は大体3割前後。コーチやスタッフを入れると40%~45%くらい。選手人件費は30%くらいで、サッカーの世界もバスケの世界も一緒。
〔年俸をもらっている日本人選手は5,000万円強〕
――クラブの収入内訳はどうか?
一般的にはスポンサー料が40~50%、チケット収入が20~30%、合計70~80%いって、加えてリーグからの分配金やスクール、グッズの収入。自治体からの委託事業費などが入る感じ。
――Bリーグとして「東京五輪までに1億円プレーヤーを出す」という目標があるが、日本人選手で今一番高いプレーヤーの年棒は?
5,000~6,000万円。外国籍選手はもう少し高い例があります。年間売上が10億円を超えるチームで払おうと頑張れば1億円払える体力はあるが、1億円払える選手とみんなが思える選手が生まれるためには、代表での活躍も大切。
――旧リーグの時代に比べて、仮にB1でいうと年俸の総額はどれくらい増えたのか?
NBLは1億5,000万円のサラリーキャップで、キャップがかかっているのが基本給。勝利給などのインセンティブ給を多くしているチームは結構もらっていた。基本的には1.5倍くらいの事業規模になっているので、選手の年俸も大体同じで、2年前に比べたら倍。
――Jリーグのように、Bリーグも2年目、3年目の失速を懸念するファンが存在。Jリーグ開幕直後はお金も使い方が派手だったが、Bリーグはどうかか。
心配ない。Bリーグの各クラブはチケットを売るにしても(bj、NBL時代から)苦労してきたので、業績が2割3割と大きく減ってしまうことは絶対にないと思う。
――開幕前に「非連続の成長を目指す」と言っていたが、昨季の実績はそれを実現できたか?
総入場者数が40数%、B1に限ると約50%の増加。それから、B1は総収入が50%くらい増加と推定。そこは非連続と言っていいと思う。
――事前の予想値、目標値に比べるとどうだったのでしょうか?
どこに売上を置くか。漠然と前年の1.5倍くらいになればいいと思っていたので総入場者数はほぼ合格。ただ試合数が増えているので、1試合平均は2,800名弱くらいで、5割まで少し届かず。(B1が)3,000人くらいで成果だったので大成功ではない、ある程度の成功。
〔B1クラブへの分配金は3,000~7,000万円〕
――各クラブ(B1、B2)への分配金の金額は? どれくらいの傾斜をつけたのか?
B1が平均5,000万円。B2が1,500万円くらい。B2は(経営の)安定資金でもあるので、大きな傾斜をつけるつもりはなく、最低でも1,000万円以上はいくような仕掛け。一方でB1は有料入場者数、チケット単価のところが最大のインセンティブを働かせる部分。平均は5,000万円だが、3,000万円から7,000万円まで、配分金に倍以上の差がつく形。実績をしっかり出したクラブには報いるという事。
――SNSのフォロワー数なども評価の材料にすると聞いたが、金額の傾斜についてどういう要素を反映したのか?
もっとも大きな反映材料にしたのは入場者数、チケットの単価。それ以外にも細かいものをいくつか上乗せして、プラスαで評価する仕組み。小さな財源をいくつかの項目で競ってもらって、良かったところに「オン」していく(マイナス側の材料にはしない)やり方で、財源を2つに分けて加算。
――SNS以外の「細かい評価項目」はどういった内容なのか?
来季のカーディング(日程編成)をやるための予備節をどれくらい確保できるか、TVの放映回数など。
〔債務超過などの予防には2〜3年かかる〕
――経営問題でB2ライセンス不交付という鹿児島のようなクラブがまだある現状については?
Jリーグがクラブライセンス制度を'11年に導入を決めて、債務超過などが完全になくなったのは'15年の1月期決算で、4年ほどかかった。Bリーグも開始時にいくつか出る覚悟はあった。B1では監査法人の監査証明がないとライセンスを交付しない制度を'18年6月期決算から導入し、予防には2~3年かかると思われる。
――レバンガ北海道の経営問題も懸念。債務超過の解消に向けた見込みは?
株主が貸し付けているから資金が回っていたが、会社として黒字になったことがないというのが根本的な問題。利益が出る構図の継続する事、、増資を図ること。株主の貸付金の処理、株式の転換や債券放棄など、それらの債務超過の解消策を、リーグとクラブで共有。黒字での解消年数が掛かるので、増資が好ましい。再出発する時期を'18年6月期と設定。
〔リーグ運営法人は約50億円の収入見込み〕
――'15年4月の法人発足当初から、Bリーグ運営母体(公益社団法人)の規模はどのように推移しているのか?
今期の着地は50億円近くの収入になるとの見込み。
――ソフトバンクグループとの大型契約の効果、影響はどうか?
スポンサー料と放映権料が収入の中で2本柱あり、ソフトバンクグループの支援を受けて、放映権料でメドも立ったのは大きかった。
――ここは伸ばさなければいけない、収入を増やさなければいけないという分野はあるか?
当面は放映権料と協賛金、いわゆる広告料収入がメイン。自分達は映像を自ら制作し、著作権を保有。それを利用して、スポナビライブとうまく共存しながら、自分たちでメディアを持つようなビジネスをする発想。
――グッズの企画や販売を徐々に自前化していくということなのか?
現在のスポーツ産業のGDPが5.5兆円だが、スポーツをコンテンツとして持っている人の総売上が、5.5兆円のうちの1兆円も無い事は確か。スポーツ産業と言われている中で、収入が上がっている部分は、スポーツのシューズやウエア、スポーツ施設の利用料などといったコンテンツホルダーの周辺。本来はコンテンツを持っている我々が(周辺分野も)やればいいんのではないか。「Bマーケティング」という会社を作り、その部分の人材を増強し、我々自身で稼ぐ力をつけていく必要性がある。本業をしっかり行えば、周辺にビジネスチャンスがまだまだある。
――部門ごとの人材配置の現状と、今後についてはどうか?
これから投資していくのは稼ぐ分野。あとBリーグを核として(選手や指導者の)育成をしていく部分に注力する方針。各クラブの育成チームから選抜チームを作り、海外遠征や国際交流に本来はお金を投資したい。千葉から島田副理事長を招聘したが、各クラブが稼げる体質を作る狙い。クラブが自立できたら、リーグの資金は将来的な投資に回したい。自主自立へのサポートが2年目からの大きな課題の一つ。
〔アリーナの指定管理を取るクラブが出てくれば強い〕
――琉球、栃木は大型アリーナ建設の計画がすでに進行。施設の整備とBリーグの発展にはどういう関係があると思うか?
アリーナは親会社も含めて自分で保有が可能。100億円弱で十分に1万人近いアリーナは作れる。ぜひ自分たちで、民間の活力で。プロ野球団やJクラブのように、バスケにも指定管理を取る、事業運営をクラブが任せられるところが出てくれば強い。アリーナを運営している会社が逆にクラブを持つという発想もあり、そうなると日本のバスケ界は飛躍的に成長。サッカーは天然芝のピッチが毎日稼働しないから苦しいが、野球とバスケは稼げるハコ。ドーム球場やバスケのアリーナであれば、毎日活用でき、事業を大きくするチャンス。
――今は首都圏のアリーナ問題が深刻で、需要に供給が追い付いていない状況。Bリーグがカーディング(試合の編成)に苦労している一因。
アンバランス。どこも厳しい。特に北海道とA東京。都内の主要施設がすべて改修に入った状況。
〔アリーナの予備節確保が難しい〕
――'17-18シーズンは交流戦を6試合増やす「地域間格差」の調整を実施。3地区制をどうするかの理想像は別にして、そもそもアリーナ確保と絡んで実務的に変えられなかったようだが。
それがアリーナの予備節確保。B1とB2の入れ替えがあり、西地区から中地区に移る事態が発生し、ホーム&アウェーの組み換えが必要。30試合ずつホームを設定しているが、30試合のうち何試合かは予備節を使ってホームとアウェーを反対にしてくださいという調整を実施。
今までは同一地区内は釣り合っていたが、H&Aで狂いが発生。 もっと予備節が増えれば、60試合のうち「ホームでできない」試合は10試合以内に設定可。それくらいに体育館が取れれば、もっと(日程編成の)自由度は増加。Bリーグはホームでできない日が多すぎ。
――Bリーグは60試合、昨年なら32節。多いクラブだとどれくらい「ここはホームでできない」という要望が出ていたのか?
60試合ならば多くて10日、少なければ7日か8日を除いてあとは(アリーナを)取れますと言ってもらえれば助かる。
――地区制の組み替えや撤廃という意見もあるが、地区制についてはどう考えるか?
1地区制という考え方もあるが、その中でのチャンピオンシップ(CS)は、やる意味がない。カンファレンス制で勝ち残ったチームから本当のチャンピオンを決めるべき。リーグ戦が完全に公平には終わっていないからこそ、CSの意義もあるという考え。
〔日本代表の活躍は来季の一つのカギ〕
――2年目以降の難しさについてはどう考えているか?
2年目もどこまでクラブが営業努力をして、リーグもプロモーションをして、プラスになれるかという事。1試合平均が、何とか3,000人に届くようにやっていきたい。不安要素はあるが、、集客を増やすチームが半分以上になって欲しい。
――来シーズンはより良くなると期待している部分はどういうところか?
一番期待しているのは代表。W杯予選が始まっている。メディアも含めた注目度が集まることを期待。何としてもテレビ放映も含めてメディア露出をして、そこで選手が活躍する事が特に大切。Bリーグはわりとオシャレになって、ちょっとしたブランド力を持ちつつやれるようになってきたが、代表はまだ古い印象なので一新したい。代表チームの活躍は一つのカギ。
もう一つは、クラブ自身の経営力をアップしていく事。千葉の動員が2年で1,900人が4,500人になった。仕組みをしっかりやっていけば、そこまで延びる可能性のあるチームはたくさんあるはず。
という内容でした。長かったですね。この中で目に留まったのは、まずは年間売上が10億円行ったクラブがあるという事。千葉さんかどこかわかりませんが、J2岡山とほぼ変わらず。これはすごい数字ですね。J2岡山は10年かかった数字を、Bリーグクラブは1年目で達成している事。来場者数が方や9千人程度で、方や4千人前後。ただ、サッカーは天然芝の事もあって毎日は興業できないが、バスケは2日続けて興業できる。
あと、驚くべき話が年棒1億円払えるチームがすでに出て来ているのに、世間的に難しい。日本代表がもっと活躍すれば払える環境が整うという話。これは未来が広がっているという事。どのみち代表が強くならないと、リーグ全体が盛り上がらないというのはJリーグも同じですね。
あとは個人的にはカンファレンス制と、プレーオフ制の弊害が気になります。いろいろと不都合が少し出てきているようですね。でも、バスケはアメリカ発祥の得点をどんどん重ねていくスポーツ。当ブログとしてはそれ以上の意見はありません。ファン・ブースターが納得して、会場に足を運んでもらえるように上手くやって下さいと。あと、露出もっと欲しいですね。そして、地域に根差す選手による地域・社会貢献活動は全体に怠らないように。いくら数字が良くても地域の公共財になりえず、浸透せずに何十年か経ったら消えてしまう事がないように。
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