CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】まち

2023-10-07 21:08:26 | 読書感想文とか読み物レビウー
まち  作:小野寺史宜

以前に読んだ「ひと」とよく似た話だったように思う
実直純粋な青年が都会で一人暮らしをしていく
そういう情景を描いた小説で、青年の成長まではいかない変化、
それを丁寧に描いていて、気持ちの良い作品だった

小3の時に火事で両親を亡くした主人公が、おじいさんと暮らしてきて、
高校卒業を機に東京へ出ていくというお話で、
別に就職するから出ていくのではなく、村ではないところに住むという経験をと
おじいさんが促したという感じなのだが、
そこから5年して、その間に様々なことがあったり、
だんだんと「まち」に馴染んできていたりとか、そういう些細なところと
バイト暮らしでも、つつましく過ごして、そこに住んで生きて、隣人との関係ができ、
そこでの事件がありといったお話

物語で、終始主人公がいい人であることが丁寧に描かれていて、
それがよいとするこではなく、ただ、働いて生きていて、
別に大きな何かがあるわけでもない、ぼんやりと毎日を過ごしてはいるものの
足るを知るというか、むしろ、色々な慾から解放されすぎてて
若干心配な人柄ではあるんだが、それがよいと受け入れられ
そこに自分の居場所ができていくという物語で、まぁゆるり、居心地の良い世界が堪能できた

少しばかりの事件はあるんだが、それもさしたる衝撃ではなく
日常にある諍いというか、いざこざといった程度でもあるんだが、
読んでいる方には、結構な事件のようにも思えるし
それを乗り越えるだけの力が、当然のように備わってしかるべしとも思うしと
そういう意味で期待を裏切らない世界観で、そこを十分に楽しませてくれるものだったと思う

穏やかな小説だが、
主人公の浮世離れたというのか、この感じは小説だと嫌いではないが
現実と観たとき心配になってしまう