ちょっと年末のお話ですが、我が家のルート君12月31日に「冬コミ」に行こうか行くまいか迷っていました。どうも軍資金が足りないらしい。でも、お小遣い日も過ぎたばかりで、密かにへそくりも持っているのも、なぜか母は知っているのです。ところが、その二日前の夜、やたら私の前にやってきては「ハァー」と言います。
―どうもあいつは、この溜息を母に聞かせたいんだな―
「一度行くの諦めて、お金使っちゃったんだよね。まぁ、今もっているお金でも、少しはね。。ああ、交通費はいくらかかるのかナァ。。ぶちぶち」
「じゃぁさ、新年に返してくれればいいから、お金貸してあげようか? 」
「いや、俺は人に金を借りるなんてことは好きじゃないんだ。」
「ふーん、じゃあさ、私の仕事手伝う?山のようにあるんだけど。」
「今はそういう気分じゃないんだな。」
「えー。じゃあさ、お年玉を前渡してあげようか?」
「いや、それじゃぁ、新年の楽しみが減ってしまうからいやだなぁ。」
「・・・・・・・」
「ハァー 」
―おぬしの考えている事は、まるっとぐるっとお見通しじゃ(もう古いね)― だけど、この母は砂糖水より甘い母なのじゃ。子供の寂しげな後姿にもの凄く弱いのです。しかも、ルート君、いつもはほとんど我侭無しの自己主張なしの少年なので、よけい気にかかります。
「不景気だし、もう大きいからクリスマスの時には無視していたんだけど、あげようかな。三千円。」
「あげたらいいじゃない。」とだんなは笑いながら言います。
甘いと自分でも分かっているので、自分より大甘の人にお伺いを立て後押しして欲しいのですね。小心者ですから。何で、三千円なのかはまた話が長くなるので、またクリスマスの頃にでも・・(だいぶ先ですね)
翌日ランチの時にサッとラッタ君とルート君の前にお金を置くとその金額を見て、ラッタ君は言いました。
「おお、サンクス。だけど、なんで今頃?」
「ルート君に感謝したら。」と昨日の会話のいきさつを言うと、
「お前、それしょっぱすぎ。恥ずかしくないの。」
「いや、俺はそんなつもりでは・・・」
「つもりでもないのに、その態度。罰としてその金も俺様によこせ。」
理不尽この上ない恐怖のラッタ魔人を後にルートくんは自分の部屋に退散して、お買い物リストを検討中。交通費の心配はなくなったでしょ。
机の上にグループ名をチェックしたのか、同人誌が2冊置いてありました。今の同人誌って綺麗ですよね。彼の机の中にはびっちりと並んでいますよ。
「ねえ、ルート君。こういうモノにはまると言う事は、夢のようなものでござるよ。そして、その夢はいつか覚めるものでござる。」
「うん、知ってる。」
―知っていて、つぎ込んでいるのなら、いいけどね。
年明けて、ふと聞いて見ました。いくら使ったの?・・・聞くんじゃなかった・・・
1月2日にラッタ君はお部屋の大掃除を始めました。さすが私の子供だけあってマイペース。「動かざる事山の如し」だった、机の上が片付きました。
「筑波山が崩壊したぞ。」とか言っているけれど。廊下がゴミ袋の山じゃない。見ると、中学・高校と嵌っていたカードが、一袋にぎゅうぎゅうに入っていました。ラッタ君の夢の残骸です。
―過ぎた日の 夢のむくろは 御美になり―