阿久悠さん死去 歌謡曲黄金期の作詞家(共同通信) - goo ニュース
普段、
「私は阿久悠が大好きだ。」と自覚する方は居ないと思うのだが、「ああ、この歌いい歌だなあ。」と思うと、阿久悠氏の作詞であったと言う事は、誰でも経験があることなのではないだろうか。
私は歌のジャンルの中では演歌と言うものが苦手で、なぜかみんな同じ歌詞、同じメロディに聞こえてくる。そんな私でも、何作かは知っているものもある。いずれも大ヒット曲ばかりだ。その中の「北の宿から」「津軽海峡冬景色」「舟歌」は、彼の作品である。
とりわけ、「舟歌」は好きな曲である。
しみじみ飲めば、しみじみと、
ほろほろ飲めば、ほろほろと、
ぽろぽろ飲めば、ぽろぽろと、
酒の肴なんてどうでも良くて、男は思い出を肴に酒を飲んでいる。店の明かりはぼんやりと灯り、遠くで霧笛がかすかに聞こえてくる。
思わずその空間に引きずりこまれてしまうような歌だと思う。
その「舟歌」の歌詞はコチラ
ところでタイトルにした「さらば涙と言おう」は、青春の巨匠(訳の分からないニックネームだが)と言われている、森田健作氏が歌ってヒットした曲である。この歌を歌っていた頃の彼は、ハンサムだったので、私はかなりのファンだった。先日インタビューに答えて、その彼が、いろいろな場面で、自分のこの歌を口ずさみながら頑張ってきたというようなことを、言っていた。
このときの森田氏の言い方のどこかが、私の気に触って嫌な気がしてしまったのだが、言った内容には頷いていた。
阿久悠氏の歌詞は、苦手な演歌であっても一度ちゃんと目を通すと、なぜだかすんなり頭に入ってきて覚え易い。それは、曖昧ではない確かな日本語で出来ているからではないだろうか。
歌詞と言うものを、あまり国語の教科書では見た事がないが、(本当は皆無、あるかもしれないので、「あまり」にしておこう。)詩として、捉えてみるのも良いのではないかと思う。
確かに、載せても良い詩を見つけるのも、難しいかも知れない。だけど、この「さらば涙と言おう」はどうだろう。森田氏ではないが、青春時代、私はこの歌を結構口ずさんだが、時代に色あせない歌もあれば、忘れられていく歌もある。この歌も後者なのかも知れないが、歌自体はそんな曲ではない。
さよならは誰に言う
さよならは悲しみに
雨の降る日を待って
さらば涙と言おう
・・・・・・・・・・
中略
恋のため愛のため
真っ直ぐに生きるため
泣ける事もあるけど
さらば涙と言おう
あまりにもたくさんの歌の中に、人それぞれの思い出があるのだと思う。凄い人だったのだとしみじみと思う。
彼のHPに行ってみた。その「あんでぱんだん」の中の「あまり売れなかったが、なぜか愛おしい詩」を読み出すと止められない。かぐや姫のデビュー曲の話や吉田拓郎との仕事の話など、興味深い内容が盛りだくさんだ。
ところで、この―あんでぱんだんーの意味だが、語源はフランス語で「自主・独立を意味する。」。
8月1日、阿久悠氏が亡くなられたその日、たまたま、私はアンリ・ルソーのことを書いて「アンデパンダン展」に触れた。今、阿久悠氏のHPの名前が、同じだと知って少し驚いている。
本当は、何も関係はないことなんだと分かっている。だけど、それでも人はそこに何かあると感じてしまう習性を持っているのかも知れない。
逝く人を想う日であるのだと。