長い間、藤原竜也の舞台を観るということに憧れていましたが、8月22日に、その願いが叶いまして、「天王洲銀河劇場」にて「ヴェニスの商人」を観てまいりました。
法廷劇は、いつ見ても面白いものがあります。「ヴェニスの商人」はその原点。そんな感じがしていました。と言うよりも、なぜかそこしか知らないのです。かなり有名なはずのその話なのに、、よく考えてみると、どんな話だったのだろうとその欠片も浮かんできません。
―貸したお金の利子代わりに、そのことを記載した証文を盾に、胸の肉一ポンドよこせという高利貸しのユダヤ人シャイロック。夫の親友を救うべく男装したポーシャはその裁判に法学博士と称してもぐりこみ大岡裁きを行うというものです。
「肉はシャイロック、お前のものだ。きっかりとそぎ落とすがいい。だが、血の一滴も出してはならぬ。」―
子供の時に読みました。でも、後は何にも覚えていません。なので、そのストーリーも楽しみにしていました。
でもそこで観たものは、悪役であるはずのシャイロックの悲しいまでの絶望でした。なぜ、シャイロックはそのような恐ろしい証文の実行にこだわってしまったのか。それこそが演出が伝えたい趣旨だったようです。後で、感動して買ったプログラムの中にもそのことが書いてあって、それは観ることに努力せずとも伝わってきました。
差別する側の者は、差別される側の苦痛に鈍感です。
ヴェニスの商人、アントーニオのシャイロックへの罵倒は耳を塞ぎたくなります。まるで人間ではないものかのような接し方です。ヴェニスの人々もユダヤという外国人に対して、常に小突き、その肩を引っ張るのです。
積もり積もった憎しみが晴らせるチャンスが巡ってきた時、シャイロックは、そのチャンスに固執してしまいます。法学博士に化けたポーシャが、如何に慈悲の美徳を説いても、もはや貸す耳を持ち合わせてはいません。それが自分の首を絞めることになるとは思わずに。
シャイロックを、ユダヤ人であり高利貸しであることから罵倒する事をはばからぬアントーニオは、友情に厚く、困っている人にも善意の手をさしのべる事を厭わない人徳者として描かれています。
我が愛する藤原竜也演じるバサーニオは容姿端麗、明るくて優しく人の心を捉えるのに長けています。ですが見方を変えれば、ある意味彼はベラミ。その生まれは良くても、持てる財産以上の派手な生活がたたり、借金で首が回りません。又、アントーニオの友情をいい事に、その金を使いまくり、又新たな借金の保証人にアントーニオがなることによって、今回の悲喜劇が生まれてしまうわけです。その借金と言うのも、莫大な財産を受け継いだ、美しいポーシャを得ることによって、恋とお金の悩みを一挙に獲得するための準備金なのです。
それでも、彼は好青年に描かれています。
法廷でシャイロックを容赦なく、打ち負かしてしまい一番厳しかったのは、最後まで繰り返し慈悲を説いたポーシャでした。倍のお金を投げつけたり、元金を罵声と共に返そうとする男達を尻目に、それらの行為を止め、彼の財産すら奪い、挙句、彼にとっては異端の教えであるキリスト教に改宗させてしまうのです。沸きあがる法廷、打ちのめされるシャイロック。なんと惨めな、あまりにも悲惨な姿です。
だからと言って、市村正親の好演に騙され、シャイロックを哀れむ事があっても、決してエールなど送ってはならないのだと、自分に言い聞かせなければならぬほどでした。
なぜなら、悪徳商法で人を苦しめている者を、その生い立ちに同情できるものがあったとしても、その行為を擁護をしないのと同様。又、如何に積年の恨みだと分かっていても、多くの面前で公開殺人をしようというものに容赦などいらないからです。
ポーシャの事、シャイロックの娘のジェシカの事、、今なら思う事は山のようにあります。それだけ、一人ひとりが丁寧に描かれているのです。人と言うのは多面体。決して一面だけで見る事は出来ないのだと、しみじみと再確認してしまいます。
他にポーシャの父の遺言である、箱の選択による婿選び、指輪を巡っての諍いのエピソードも楽しめました。
ただ、又しみじみ感じた事は、シェイクスピア劇は役者さんたちにとっては拷問のような芝居だなと思うのです。あのセリフの山は橋田壽賀子も真っ青です。たぶん、せりふを覚えた段階で80パーセントの完成を見せる事が出来る人でなければ、この舞台は務まらないのではないかとまで思ってしまいました。
藤原竜也はもちろんですが、市村正親、寺島しのぶの大ファンになってしまいました。
結構、真面目に書いてしまいましたね。なんて言っても「ヴェニスの商人」は思っていた以上に、奥行きのあるストーリだったものですから。
でも、本当は竜也君のミーハー記事を期待なさっていた方の方が多いのではないでしょうか?
でも、何も言う事ないですね。
私にとっては、想い願っていた事が叶ったという「真夏の夜の夢」・・・・だったのかもしれません。~☆
<画像は、お買い物好きなので買ったT-シャツの胸のロゴです。婿選びの箱に書いてある言葉です。>