真田はなんだって利用する。生き延びて前に進むためには。
だんだんそれに慣れて来てしまった。
だからあの時、きりに向かって思ってしまった。
― このバカ女。何をするのだ !
と。
祝言を利用して浜松に行った室賀の真意を確かめるために呼び出すなど、信繁には酷い事だと兄の信幸も思ったのだろう。だから信繁と梅には、陰で起きている事、起きる事を知られたくなかった。
その信幸の命(めい)を命(いのち)を張って(たぶん)、こうは舞って、兄を探しに行こうとする信繁を部屋に留めさせたのに、きりによってその配慮も台無しになってしまった。
だから私は「あーぁ」と思ってしまったのだった。
だけど信繁は言う。
「梅の為に泣いたのは私ではなかった。」
それはきり。
そうか。
その感覚が普通なんだ。
一生に一度の祝言さえも利用するなんて酷い。そしてその場を血で染めるなんて酷い。
でも信繁と同じように、もう私もそうは思えない。
※ ※ ※
信繁は梅に身分の問題で側室にはなってしまうけれど、他には妻は取らない。だから唯一の妻としてちゃんと祝言をあげると言った。すかさずこの時に、信繁には正妻を含めて四人の妻がとナレが入る。でもこの時の信繁の気持ちは真実だったと思う。私は「フラグ」と言う言葉は、あまり好きじゃないが、その気持ちが真実ならばこそ、どうしてもフラグが立ってしまう、でなければ四人の妻と言うナレには結びついていけない。
それはそうと兄や父は賛成してくれると思うけれど、体裁などに拘る母は難しいと踏む。だけれど策に失敗し、母は決して梅との結婚は許さないとむきになる。それを父は私に任せろと言うが、もとより昌幸は妻に弱いのだ。結局は結婚は許せても祝言の許可は下りず。
きりは精一杯に頑張って、梅と信繁との結婚を祝う。
信繁はきりにそう言ってもらえると嬉しいと、ホッとするような事を言う。ちょっと不思議。
傍から見ても、本当はきりと一緒になるのかと思ったなどと言う言葉が出るように、二人の間にはまだはっきりとは見えない何かがちゃんとあるのだなと、見ているこちら側がホッとしたのだった。
だけれど強がっているだけのきりは席を外すと、我慢できなくなって泣く。その泣いているところに信幸がやって来るが
「源二郎は居るか?」しか言わず、「なぜ泣いている?」と言う一言もない。
たぶんテレビ前・・・・
「おいおい!!」と思った人多数かと思われる。
一方、浜松の家康に会いに行った室賀を呼び出し、彼の顔色を窺う真田勢。
昌幸父ちゃんは信幸兄ちゃんにいきなり室賀への質問をしろとフル。
「ワタクシですか~?」と戸惑ったように見えたお兄ちゃんだったが、その質問は見事だった。
「室賀殿の肌はツヤツヤ」→「お肌にはウナギが良い。」→「ウナギには浜松」→「浜松に行ったんじゃないの?」
真実を隠す室賀。
それでも室賀は真田暗殺には迷っていたのだった。真田は幼馴染でもあり国衆のリーダーだと認めていたからだ。
だけれど結局は家康側近の本多正信に言い含められ、昌幸暗殺に手を出してしまうのだった。
いったんはやらないと言った祝言を室賀を呼び出すために行う事にした昌幸。
真田の館は、隠し扉や隠し穴が楽しい。
祝言の宴の場から室賀を連れ出しともに碁を打つ昌幸。
とうとう碁の勝負では、昌幸は室賀には勝てなかった。
昌幸に襲い掛かった室賀は返り討ちに遭い、この物語から退場して行った。
たぶん視聴者全員に惜しまれながら。