要するに、「仕事人」と言うのは殺し屋集団のお話なので、これの感想を書き続けるのもどうかと思うのですが、東山・松岡さんたちが必殺に参加し、引き継いでからも15年が経っていて、もちろんこのシリーズは、私が10代の時からあるわけで、なんと人気のあるシリーズなのかが伺えるのではないかと思います。
世相反映の皮肉が込められた物語展開なども人気の秘密だと思いますが、これは毎回言っている事ですが、光と影の陰影美と絶妙な所で流れる儚げな音楽など、私などはそんな所に惹かれているひとりです。
今回も「ころし」のシーンと言う恐ろしい場面でしたが、スローにして美しい雨粒を見せる演出は見事だなと思いました。
ラスト近くの、才三のシーン。
壁に血の手形を残す虫の息の彼に、涼次は
「これで終わりか。これほどの才能がありながら、どこで間違えちゃったんだろうな。」と、彼を抱きかかえながら優しく語りかけるのです。
才三は涼次の事を、恋のような気持ちで慕っていました。
「やっぱり涼次さんは優しいや。」と微笑む才三。
愛する人の腕の中で息絶える事が出来たのは、せめてもの救いだと思ってもいいのでしょうか。
実はこのシーン、ちょっとジワーッと来てしまいました。
「必殺」で泣く・・・・・あまりない事です。
西畑さんは、ファンの人には叱られそうな言い方かもしれませんが、時間が経ってくると、そんなに名演技だったようには思えなかったような気がするのです。だけど本当に汚れを知らない少年のような人を演じきったと思いました。
その真逆、追いつめられてどんどん狂ってダークサイドに落ちていく人を、才三の兄の亥ノ吉を岸優太さん頑張りましたね。
今回のドラマは、言うなれば二本立てのようなものだったと思いました。
前半は「いかにもの悪」。
同情する余地もない人ばかり・・・・。
後半は、かなり切ないような話になってしまいました。
小五郎の岡っ引きだった亥ノ吉。
正義感も強く、そして小五郎を慕っていました。
「俺は真っすぐ行くだけですから。」と言っていたのに・・・・・
自分の正体がばれる事を恐れて、小五郎の妻を殺害しに行く亥ノ吉。
だけどそこには小五郎が待っていて
「真っすぐ進んで辿り着いたのがここか?」と聞くのです。
そして「どこで横道にそれたんだ。」と。
そのきっかけは、自分が捕まえた男を身分だけで世に放ち、そしてその男に大事な人を殺されてしまっては、他人の正義などは信用しなくなっても当たり前ですよね。
だけど「正義」の暴走と、そして何よりも保身に走ったところから、闇落ちしてしまったと言えるでしょうね。なんたって弟を手に掛けたり、自分の罪を仲間に押し付けたりしてしまうようになってしまったのですから。
今回はレギュラーたちのお話は少なめで、そこは少々物足りなかったと思いました。
しかし小ネタが多くて笑えました。
ウーバーイーツのような人が走っていたり、変な風邪が流行っているからと、お店がみんな早じまいをしたりとか。
今回の「晩来」、バンクルって言ったら、やっぱりバンクシ―を連想しますよね。よく考えていますよね。
人々がただ噂だけで走ったり・・・・なんかね。SNSの無い時代にも後ろ指を指すと言うような人指し殺人はあるなと思いました。
だけど最後にそれも怖いなと思ったのは、
「世直し隊と言うのもあったわよね。」と叔母のてんが言うと
「なんでしたっけ、それ。」妻のふくが言いました。
騒がれて、だけどあっと言う間に忘れ去られていく・・・・風が通り過ぎていくように。
今回、凄く面白く感じました。それでもきっと一部の人には、ジャニタレのドラマで云々とか言われちゃうんだろうなと思いました。確かにメインにレギュラーからゲストまで多いなとは思います。
だけど他の脇も手堅かったと思いました。
仕置きされちゃう側が悪逆な人でなければ、面白くない必殺の世界。
後半、確かにひとりひとりのシーンが少なくて、世直し組の残り3人には、「どうしてそうなったんだ。どこで間違えたんだ。」と同情したくなる部分がないわけではありません。ちょっと「悪」の説得力がなかったかも。だけどそんな役を、これからの若手さんが頑張ってくれたのですよね。
前半の、バカ息子も木村了さんが演じたわけですが、口をニヒルに曲げて、本当に嫌な奴にしか思えなかったです。
光と影の陰影の美は、こんな俳優さんたちにもあるのかも。
あっ、そうそう。
襖絵は素敵でしたね。
・前回の時の記事は→必殺仕事人2020
その記事内に、以前の必殺の記事をリンクしています。