京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

椿の花の空中回転

2021年03月01日 | 日々の暮らしの中で
休日は市中に出るのを控えてきた。もうちょっと考えたらよかったのに、またやってしまった。陽気のせいかなあ…。
月曜日は休館だということを失念したまま、東西線の東山駅に降り立った。細見美術館に行こうとしていたのだ。

どこへ行く当てもなかったので東を向いて三条通を歩きだしながら、南禅寺の境内を抜け、哲学の道へ出ようと決めた。法然院あたりまで歩いたら帰ろうと道をとった。定休日の店も多く、ほとんど人が歩いていない。ガマンを重ね、ようやくここにきて緊急事態宣言は解除された。不安もまだまだ大きいのに、この先、観光によるものだったり、年度替わりなどで人の移動が増えだす時が怖い。


一昨年に特別公開された折にたくさんの椿を拝見した霊鑑寺の前に出た。門扉は閉まるが門前の椿を拝見。今年の公開はあるのだろうか。


法然院の垣沿いを歩いていて椿の落花を目にし…、最近読んだ椿の話題が思い浮かぶのだが思い出せそうで出せないまま帰宅した。やはり佐伯一麦氏のものだった(「散歩歳時記」)。

椿の花が落ちる時、俯向きに落ち始めても空中で回転して仰向きになろうとするような傾向があるらしい。

 

そう気づいた寺田虎彦は観察を始め、
〈木が高いほど、仰向きの比率が高い。低い木だと、空中回転する間がないのでそのまま俯向きが通例〉という結果をエッセイに記している。
しかも、〈梅の花の空中反転作用から、花冠の特有な形態による空気抵抗のはたらき方、花の重心の位置、花の慣性能率〉などに思いを致している。

といったことを読んだのだった。科学者・寺田虎彦らしいところだ。「落ちさまに虻を伏せたる椿哉」夏目漱石。虻によって花の重心がずれるので虻を伏せるように落ちる。そうか、空中反転できぬままに、か。
ちょっとした気づきを得ることで、歩き慣れた散歩道の見慣れた光景の中に楽しみが新たに見出せる。明日からは椿の落花が気になりそう。
コメント (2)
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